海外調査報告(フランス)

資料2-2
海外調査報告
(フランス)
平成28年4月15日
経済状況
○ リーマンショック後に落ち込んだ実質GDP成長率は、その後一時的に回復したものの、2012年には再び悪
化。2014年まで低迷したが、2015年は回復する見込み。
○ 失業率は10%程度で高止まり。
(%)
リーマン・ショック ギリシャ危機
(2008年9月) (2009年10月)
12
失業率:
10.2%(2015年)
10
8
10年物国債金利:
1.0%(2015年12月末)
6
実質GDP成長率:
1.2%(2015年)
4
2
0
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
-2
-4
1
1995.5-2007.5
2007.5-2012.5
2012.5-
シラク大統領
サルコジ大統領
オランド大統領
共和党連合→国民運動連合
国民運動連合
社会党
(出典)実質GDP成長率、失業率、経常収支対GDP比についてIMF「World Economic Outlook」。10年物国債金利についてBloomberg。
2015 (年)
リーマンショック後の経済対策
○ 2008年12月にサルコジ大統領(当時)は、金融危機を受け、企業の投資促進に焦点をあて
た260億ユーロ(対GDP比1.3%)規模の経済活性化プランを表明した。
○ なお、当該プラン等によって財政赤字が拡大するものの、2012年には財政収支対GDP比
が▲1.1%まで改善すると見込んでいたが、実際には達成できなかった。
ニコラ・サルコジ
大統領(当時)
○雇用対策、低所得者対策(20億ユーロ)
2
6
0
億
ユ
ー
ロ
の
経
済
対
策
○金融危機の影響が大きかった住宅、自動車産業への支援(20億ユーロ)
○公共・民間投資の促進(105億ユーロ)
(交通・運輸、高等教育、研究開発、文化遺産、防衛分野での公共投資の促進、「投資戦略
基金(FSI)」の拡充、中小企業への金融支援、中古車の買換え促進 等)
○企業の財務改善支援(116億ユーロ)
(職業税減税(加速度償却)、付加価値税還付の月払い化、法人税債務の支払い延長、研究
開発税額控除の即時還付 等)
⇒ さらに、自動車産業への貸付けや低所得者対策などの追加措置をあわせ、340億ユーロ規模
の対策を実施
(上記の経済対策の効果によって、)フランス
は他のOECD諸国と比較して、2009年の経済
成長率が▲2.5%と、影響が小さくてすんだ。
~パトリック・ディヴィジャン再生プラン担当相(当時)
楽観的な経済効果予測
1.3%の対策規模に対する経済効果は
+0.5%(会計検査院)(←企業の内部留保の増加等)
財政収支目標の未達成
2012年の目標(▲1.1%)を達成できず(▲4.8%)
2
財政状況
○ 財政収支対GDP比はリーマンショックの影響で2009年に▲7.2%まで悪化したものの、歳出・歳入両面の健
全化により着実に改善。
○ 債務残高対GDP比は足元で約97%と高水準であるものの、その伸びは緩やかになっている。
リーマン・ショック ギリシャ危機
(2008年9月) (2009年10月)
(%)
4
(%)
120
実質成長率
(左軸)
2
100
95.6
92.3
0
81.5
78.8
-2
57.9
59.8
63.9
65.5
67.0
64.2
64.2
85.0
97.1
89.4
80
67.9
60
-4
40
PB対GDP比
(左軸)
-6
債務残高
対GDP比
(右軸)
財政収支対GDP比
(左軸)
20
-8
0
2001
3
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
1995.5-2007.5
2007.5-2012.5
2012.5-
シラク大統領
サルコジ大統領
オランド大統領
共和党連合→国民運動連合
国民運動連合
社会党
(出典)IMF「World Economic Outlook」。
財政健全化①(国民負担率)
○ フランスの国民負担率はOECD加盟33か国中3位(2013年)と極めて高い水準にあり、更なる負担増は困難
になってきている。
○ このため、近年の財政健全化は、歳出抑制が主体となっている。
【国民負担率(対国民所得比)の国際比較(OECD加盟33カ国)】
(%)
80
100
70
~
~
67.6
60
50
41.6
40
30
20
10
0
4
財政健全化②(財政健全化の内容)
○ 2013年までの財政健全化は歳入改革主体だが、高い国民負担率を背景に、2014年以降の財政健全化は
歳出抑制に重点。
【財政健全化規模とその内訳の推移】
(%)
2.0
歳出抑制
歳入改革
財政健全化規模(構造的財政収支の変化分対潜在GDP比)
1.5
1.0
1.3
1.2
0.5
0.0
▲ 0.5
2012
項目
2013
規模
富裕税の引上げ
23
大手銀行への一
時課税
項目
規模
0.5
0.6
0.5
2014
2015
2016
項目
規模
40
所得税N分N乗
方式の上限額
引下げ
40
6
大企業法人付
加税の利子負
担控除に上限
32
石油製品在庫へ
の一時課税
6
資産所得の
総合課税化
医療保険支出
削減(薬価等)
10
大企業向け法人
税の引上げ
2
欠損繰越控除
上限額引下げ
地方向け補助
金削減
防衛費の削減
22
国家公務員数削減
10
項目
規模
項目
(年)
規模
地方向け補助
金削減
37
地方向け補助
金削減
35
医療保険支出
削減(薬価等)
32
医療保険支出
削減(薬価等)
34
32
国家公務員人
件費の抑制
14
補助金支出の
抑制
27
10
(単位:億ユーロ)
(参考)税金の数
○ フランスでは、2010~2014年において、ヨット停泊税、セカンドハウス税など44の新しい税金を創設(うち2012年に15、2013年に12)。
○ これらの税金は徴収のコストパフォーマンスが小さいため、オランド大統領は、既存を含めた192にのぼる小さな税金の一部を廃止することを表明したが、例えば
2015年には4つの税金の廃止にとどまるなど大きく進んでいない。
(出所)France 2
5
オランド大統領の経済・財政運営①(歳出抑制公約)
○ 2015~2017年の3年間で500億ユーロの歳出抑制を公約(自然増との差額で計算)。企
業・家計の負担軽減を図る「責任・連帯協定」の財源確保と財政赤字の削減のために行わ
れるもの。
○ 具体的には人件費、福祉手当の抑制、社会保障制度改革など、国民が広く負担する歳出
改革となっている。
5
0
0
億
ユ
ー
ロ
の
歳
出
抑
制
フランソワ・オランド
大統領
福祉費の抑制
110
110億ユーロ
○社会保障機関の効率化(IT化、簡素化等)
○基礎・補足年金、住宅・家族手当のインフレ調整凍結(1年間) 等
医療費の抑制
100
100億ユーロ
○入院から通院へのシフト(かかりつけ医の充実等)
○ジェネリック医薬品の普及 等
地方による抑制
110
110億ユーロ
国による抑制
180億ユーロ
○国から地方への移転である経常交付金(DGF)の見直し 等
○庁費の抑制(行政機関の効率化(雇用・大学関連除く。))
○人件費の抑制(公務員給料のインフレ調整凍結、人員削減(教育、治安関連
除く。)) 等
⇒ 2015年度においては186億ユーロの歳出抑制を達成。
今回の歳出改革は正当なもの(juste)となるだろう。
なぜなら国民の共同努力によるものだからだ。
また、国民に均等に負担が求められるからだ。
そして、全ての人に恩恵が及ぶものとなるからだ。
~マニュエル・バルス首相(2014年4月16日)
6
オランド大統領の経済・財政運営②(「責任・連帯協定」)
○ オランド大統領の歳出抑制公約によって確保される一部の財源を用いて、企業の競争力の強化と雇用の
創出のため、総額460億ユーロに及ぶ「責任・連帯協定」が実行されている。
○ 具体的には企業の負担軽減・雇用と投資促進策に基づく「責任協定」、家計の財政的負担軽減策に基づく
「連帯協定」の2つの柱からなる。
【負担軽減規模の推移(億ユーロ)】
2014
競争力及び雇用のための税額控除(CICE)
2015
▲100
2016
2017
▲175
▲185
▲195
社会保険料事業主負担軽減
▲55
▲90
▲100
法人連帯社会税(C3S)の廃止
▲10
▲20
▲55
▲25
▲45
▲5
▲10
▲10
▲15
▲30
▲50
▲50
▲115
▲270
▲380
▲460
法人付加税廃止、法人税率引下げ
中小・零細企業対策
家計向け対策(所得税減税)
合計
○フランスの1時間あたり労働コストは36.8ユーロとなり、ドイツ(38.5ユーロ)を下回る。
○2015年において、1四半期あたり2万人の雇用増が見込まれる。
○企業は若者を中心とする雇用確保と職業訓練の充実が課題。この進捗をフォローアップするものとして首相を議長とする「政
府支援フォローアップ会議(Comité de suivi des aides publiques)」を設立。
各産業界において労働・訓練・実習契約が進捗(下記は2015年5月時点の例)
7
(例1)自動車業界においては、2017年までに35,000件の若者との雇用・労働訓練契約を締結。
(例2)観光運輸業界においては、3年間で1,200件の終身雇用契約を締結。
(例3)金属業界においては、2020年までに46,000件の雇用・訓練契約、うち10%は女性と締結。
財政運営を規律するルール
○ 財政の均衡原則を定めた憲法の理念を具体化するとともに、EUの財政規律と整合性のとれた予算手続き
を定めるため、2012年に「財政計画・管理基本法」が制定された。
○ また、憲法に基づき「複数年財政計画法」が制定されている(最新は2014-2019年法)。計画法は毎年度の
予算法に劣後するものであるが、今後の財政戦略の中心として重要なツールとなっている。
フランス共和国憲法第34条(2008年改正)
財政に関する複数年の方針は、計画化法律により定める。この方針は、財政における会計均衡の目標の中に位置づけられる。
財政計画・管理基本法(2012年)
上記の憲法の理念の具体化とともに、EUにおける財政協定(2013年~)と整合性のとれた予算手続きを定めることが目的。具
体的には、以下の内容が定められている。
①「複数年財政計画法」に盛り込むべき事項
②一般政府の構造的財政収支対GDP比の明確化
③マクロ経済や財政健全化の見通しについて意見を述べる財政高等評議会(HCFP)の設置
④財政健全化パスから外れた場合の是正の方法
※是正の方法
①決算法案の提出時に、財政高等評議会が「複数年財政計画法」の健全化パスからの重大な乖離の是非を特定。必要に応じ報告書を作成。
(「重大な乖離」とは、1年間の健全化パスからの乖離が0.5%以上、または2年間の平均で0.25%以上の乖離と定められている。)
②乖離が認められた場合、政府は乖離の要因について決算審議時に説明。
③その後の6月の財政の基本方針の議論時に、政府は健全化を提案、来年度予算等に反映。
(当該健全化は、少なくとも2年以内に、健全化パスが計画法に定められたパスまでに改善するものでなければならない。)
8
最近の複数年財政計画法と予算
○ 2014-2019年複数年財政計画法において2019年までの中期目標を設定。財政収支対GDP比▲3.0%目標
については、2017年の達成を見込む。
○ 2016年予算法では、 公約に基づく歳出抑制等により、計画法を上回る収支改善を見込む。
【2014-2019年複数年財政計画法の概要】
○ 2017年における財政収支対GDP比▲3.0%、2019年における構造的財政収支対GDP比▲0.5%の達成を見込む。
○ 上記の財政健全化は、以下の2つの柱によって達成するとしている。
・ 歳出抑制による構造的財政赤字の削減(オランド大統領の歳出抑制公約の達成等)
・ 競争力及び雇用のための税額控除(CICE)その他の「責任連帯協定」の施策など雇用と投資の促進策
(%対GDP比)
2013
2014
2015
2016
2017
2018
2019
財政収支
▲4.1
▲4.4
▲4.3
▲3.8
▲2.8
▲1.8
▲0.8
構造的財政収支
▲2.5
▲2.4
▲2.2
▲1.9
▲1.4
▲0.9
▲0.4
債務残高
92.2
95.3
97.2
98.0
97.3
95.6
92.9
国民負担率
44.7
44.7
44.6
44.5
44.4
【2016年予算法の概要】
○ 財 政 収 支 対 G D P 比 に つ い て 2016 年 ▲ 3.3 % 、 2017 年
▲2.7%を見込んでいる。
○ 歳出面ではオランド大統領公約に基づき160億ユーロの歳
出抑制を盛り込む。人件費、交付金・補助金の抑制、
ONDAM(1.75%)の遵守、家族手当の合理化等により対応。
○ 歳入面では「責任・連帯協定」を踏まえ減税等を推進。
9
○ 2016年予算法は国民との約束を守ったものだ。すなわち、家計と企業
のための経済再生、歳出の重点化と抑制、赤字削減、負担軽減である。
~ミシェル・サパン財務相
○ われわれの財政政策は、財源の確保なくして新たな歳出を認めないと
いう理念に合致したものだ。これは足かせとなるものではない。常に必
要な歳出を認めると同時に、その分の歳出抑制を行ってきたのだ。
~クリスチャン・エケルト予算担当長官
社会保障制度の見通し
○ 社会保障の分野でも、収支改善に向けた改革を実施。社会保障会計の財政赤字は、医療を中心に全体と
して急速に縮小の見通し。
これまでの主な取組
■ 医療費の著しい増加に直面するなか、その抑制に向けた取組等を実施。
○ 医療保険支出目標(ONDAM)の設定(1996年)と機能強化。特にリーマンショック後の2010年には医療機関側による目標
超過を抑制する改革を行ったこともあり、以降、目標が遵守されている。
■ また、高齢化の進展を踏まえ、長期的な年金財政均衡に向けた年金制度改革を実施。
○ 支給開始年齢の段階的な引上げ(60→62歳)(2010年)
○ 老齢年金の満額受給に必要な保険料拠出期間(満額拠出期間)の段階的引上げ(2014年等)
将来の見通し
○ 2016年社会保障予算法によれば、社会保障制度の部門別財政収支は医療を中心に今後急速に改善の見通し。老齢につ
いては既に赤字幅は小さく、2016年に黒字転換を見込む。
【社会保障制度の部門別財政収支見通し】
(億ユーロ)
30
0
7
▲ 12
▲ 30
▲ 27
▲ 60
▲ 35
▲6 6
▲ 16
5
▲58
6
11
▲3
▲ 37
▲ 36
▲ 38
▲ 29
▲ 62
▲ 90
▲ 75
▲ 120
▲ 65
▲ 132
▲ 128
▲ 150
2014
2015
15
4
▲ 31
▲ 47
▲ 41
▲ 69
▲ 97
2016
2017
2018
家族
0
19
3
▲ 10
▲ 28
▲3
老齢
▲1
医療
労災
老齢連帯基金
家族
老齢
合計
2019
(出典)2016年社会保障予算法
10
医療保険支出目標(ONDAM)
○ 毎年、社会保障予算法において、医療保険支出目標(ONDAM)を設定。
○ 導入以来長らく目標が達成されなかったが、2010年に医療費の一部を留保する等、ONDAMの実効性を強
化する制度改革を実施。同年以降は6年連続で目標を達成。
○ 2016年は医療保険支出の自然増が3.6%のところONDAMを1.75%に設定し、これに沿った予算を策定。
○ 毎年の社会保障予算法において、歳出伸率抑制目標である、医療保険支出目標(ONDAM)を設定。部門ごとに細分化した
目標を定め、支出抑制策を併せて規定。
※
2016年度社会保障予算法では、自然増が3.6%のところONDAMは1.75%。総額34億€の抑制が必要とし、支出抑制策として、医療機関
の効率化(7億€)、通院治療の充実(5億€)、薬剤費等の抑制(10億€)、過剰診療の抑制(12億€)。
○ 1997年におけるONDAM導入以降、目標を著しく超過すると予想される場合に支払いを一定程度減額するなどの目標遵守に
向けた取組を実施。とりわけ、2010年にはONDAMの実効性を強化する以下のような改革を実施しており、同年以降、6年連続
で目標を達成。
① 関係各省等が医療支出を月次でモニター。
② 医療費の0.3%が留保され、目標達成が見込まれない場合には支払われない。
【ONDAMと実績(医療支出の伸び)】
8%
7.1%
7%
実績
6%
5.6%
5.6%
目標達成
5.3%
4.9%
5%
4.0%
4%
4.0%
4.0%
3.5%
3%
2%
目標
6.4%
2.3%
2.6%2.6%
4.0%
3.2%
2.5%
4.0%
3.5%
3.2%
2.5%
2.6%
3.6%
3.3%
2.8%
3.0%
2.6%
2.9%
2.7%
2.6%
2.3%
2.4%
2.2%
2.5%
2.6%
1.7%
1.5%
2.1%
2.0%
1.75%
1%
0%
11
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
(出典)ONDAMについてOECD「Fiscal Sustainability of Health Systems」等。
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
(年)
最近の年金制度改革
○ リーマンショック後の2010年には、支給開始年齢の引上げ等の年金制度改革を実施。
○ さらに、2014年には、保険料率の引上げや給付額の抑制等の年金制度改革を実施。
2010年改革
○ サルコジ大統領は、財政赤字・公的債務に対する市場の懸念を払拭するため、財政改革を継続する意思を明確で分かりや
すく示すことが必要であるとの認識から、長期的に確実な歳出削減を行うことが可能な年金改革に取り組む意思を表明。
○ 改革の主な内容は以下のとおり。
① 支給開始年齢を60歳→62歳(2018年)に段階的に引上げ。
② 老齢年金の満額受給に必要な保険料拠出期間(満額拠出期間)を40.5年(2010年)→41.5年(2020年)に延長。
③ 配偶者が65歳未満の場合に加算する配偶者加給を廃止。(2010年時点の受給者については継続。)
2014年改革
○ 平均余命の伸長や、ベビーブーム世代が年金受給者になることを踏まえ、世代間の公平と年金制度の持続可能性を確保
するため、改革を実施。
○ 改革の主な内容は以下のとおり。
① 2020年までの財政均衡を確保するため、2014年から2017年にかけて段階的に保険料を引き上げ。
② 2040年までの財政的持続可能性を維持するため、満額拠出期間を41.5年→43年(2035年)に引上げ。
(参考:年金額算定式)
年金額=A×B×(実際の拠出期間/ 満額拠出期間 )
2010年改革前:40.5年(2010年)
2010年改革後:41.5年(2020年)
A:実際の拠出期間のうち、上位25年分の平均賃金。
B:実際の拠出期間と本人の受給開始年齢に応じ37.5%~50%の間で決定。
2014年改革後:43.0年(2035年)
12
経済成長に向けた取組(マクロン法、労働法改正)
○ 中長期的な経済成長に向けて、2015年7月に様々な分野における規制改革等が盛り込まれた通称「マクロ
ン法」が、国会における長時間に及ぶ議論の末に成立。
○ 近年では労働規制の緩和が盛り込まれた労働法改正案について、世論の反対が根強い中で国会での議
論が進められている(2016年3月末時点)。
【経済活動における成長・活性化・機会均等のための法律(マクロン法)の概要(施策例)】
○司法分野における事務所開設の自由化、依頼経費・報酬の減額改訂・一定の値引きの許容
(背景)司法関係者の85%は50歳以上の中高年であり若者参入が不可欠な状況。
○長距離バス路線の開設の促進に資する規制改革
(背景)法律成立まで地域圏(Region)間の長距離バスの運行は海外路線以外認められておらず、国内長
距離バス利用者は11万人。ドイツ800万人、イギリス3,000万人と大きな乖離があった。
エマニュエル・マクロン
経済産業情報相
(参考)マクロン法の国会審議
マクロン法は、313条にのぼる大
きな法律であり、2014年12月から
翌年7月までに412時間に及ぶ審議
が行われ、その間に1万を超える修
正事項が提案された。
○高速料金の軽減、高速道路市場の競争力向上のための担当部局の機能強化
○小売業に対するシェア占有、物価の抑制に向けた担当部局の機能強化
○日曜及び夜間営業の拡充
(背景)日曜営業は最大年5日から12日まで拡大された。既に日曜営業は43%増加し、4分の1の事業者は
最大値(12日)の営業を認可されている。なお、法律成立まで日曜営業についての労働者への報酬義務に
関する規定は存在しなかった。
【労働法の改正】
○ 賃金、労働時間、休暇、解雇など労働に係る分野における規則について、関係者の交渉により多くを委ねることなどを趣旨とする労働
法改正案が、3月31日に下院において審議入り。
○ 他方、改正案の内容について、とりわけ解雇規制の緩和(「経済的理由」について「注文数、売上額について4半期連続の減少」など解
13 釈を明確化)について世論の反対が強く、フランス全土でデモが発生している(2016年3月末時点) 。
今後の経済・財政に関する見通しと当面の財政課題
○ 財政収支対GDP比▲3.0%目標達成は、政府の見通しでは2017年に達成可能。ただし、2016年以降の歳
出抑制の予定は2015年よりも大きくなっており、これを着実に実施できるかが鍵。
今後の経済・財政に関する見通し
○ 2015年安定化プログラムは、2016年の実質GDP成長率は1.5%と見込む。(2016年予算法でも同様。)
また、2016年予算法案によれば、財政収支対GDP比は▲3.3%(2016年)、▲2.7%(2017年)と改善し、EUとの間で期限と
なっている2017年には▲3.0%基準を達成する見通し。
○ 財政高等評議会によれば、2016年予算法による2016年の経済成長の見通しは「prudent(慎重)」とはいえないものの、国
内・EUの需要の支えによって「achievable(達成可能)」であるとの評価。2017年の見通しは各国際機関よりも保守的。
【安定化プログラムと各機関の経済予測における実質GDP成長率】
(%)
1.8
1.6
1.4
安定化プログラム(2015.4)
EU(2016.2)
OECD(2015.11)
IMF(2015.10)
1.2
1.0
0.8
2015
2017 (年)
2016
当面の財政課題
○ 国民負担が高い水準にあり、国民の不満が高まってきていることから、歳入増加による財政健全化が困難。
○ 2016年も引き続きオランド大統領公約(3年間で500億ユーロの歳出抑制)を実施。ただし、2015年は低インフレ等により、
210億ユーロの目標に対し186億ユーロの抑制にとどまる。2016年・2017年は抑制予定を積み増し。
2015年
2016年
2017年
2015年予算法の予定
210億ユーロ
145億ユーロ
145億ユーロ
2016年予算法の予定
186億ユーロ
160億ユーロ
154億ユーロ
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ポイント
○ リーマンショック後の景気後退と経済対策により、財政状況が急速に悪化し、2009
年に過剰財政赤字是正手続を開始。2013年までは歳入の増加策を中心として財政
健全化を図っていた。
○ その後、国民の負担増は限界に近づき、諸外国と比較して政府の規模が大きいこ
とから、近年、歳出抑制中心の財政健全化を推進。「財政計画・管理基本法」の制定
など財政規律ルールを整備するとともに、2014年に、オランド大統領は総額500億ユ
ーロの歳出抑制を公約。
○ 社会保障について、目標(Objectif)を設けた歳出抑制を推進。医療保険支出目標
(ONDAM)については、支出抑制に向けた取組を背景に6年連続で目標を達成。
2016年度は、自然増が3.6%であるところ1.75%に目標設定。
○ 他方、経済成長に向けて、高い国民負担率に対処するため、企業の負担軽減を
進めるとともに、規制改革によって生産性の向上を図っている。
○ 2009年に▲7.2%だった財政収支対GDP比はその後着実に改善し、政府見通しで
は、2017年には▲2.7%とEUの基準(▲3.0%)を達成。
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