1.研究目的 2.研究目標 3.研究方法

東京財団プロジェクト
「納税者番号制度導入の具体的提言」
研究員
森信茂樹
1.研究目的
納税者番号制度の導入には、次のようなメリットがある。
第 1 に、税務行政の高度化、効率化を通じた適正・公平な課税の実現である。所得税の
確定申告や還付申告が急増し、金融取引が複雑化・高度化する中で、税務当局がコンピュ
ーターを活用し効率的に税務執行することは、徴税コストを引き下げ国民(納税者)利益と
して還元される。また、納税者にけん制効果を与えるので、タックス・コンプライアンス
の向上につながり、より適正・公平な課税が期待される。
第 2 に、金融税制を簡素・効率的にする必要があるが、納税者番号があれば、利子・配
当・株式譲渡益といった金融所得の一体化が適正・効率的に行われる。この場合、広く国民
に付番する「納税者番号制度」でなく、金融所得に限っての番号で十分ともいえる。
このように、番号の導入はさまざまなメリットがあり、また、番号を活用しつつ IT の成
果を税務行政に生かし、適正・公平な課税の実現を図るということは、近代国家にとって
きわめて重要なことである。また、基礎年金番号や住民基本台帳ネットワークシステムと
いう、生涯変わらぬ番号が個人に割り当てられており、社会保障番号導入の具体的作業も
政府部内で行われて、番号の整備は進みつつある。にもかかわらず、納税者番号に限って
は、導入に向けての機運の盛り上がりは見られない。
その理由としては、プライバシーの問題、導入に伴うコストの問題等々があるが、なん
のために番号を導入するのか、その意義・メリットがはっきりしないことも導入議論を盛
り上がらせない大きな要因となっている。
そこで、番号を導入することにより、税制にどのようなメリットが生じるのかという観
点から、議論の現状を整理しつつ、具体的な課題を検証するとともに、導入に向けての具
体的戦略を考えてみたい。
2.研究目標
番号制度は、納税者の利便に役立つ新たな税制の導入を可能とするという点について具
体的な提言をしたい。
たとえば、カナダで導入されている、消費税の逆進性対策としての、低所得者への必要
消費にかかる消費税相当額の税額控除(GST 控除制度)や、米国・英国等で導入されてい
る 税 と 社 会 保 障 の 一 体 化 を 図 る 勤 労 税 額 控 除 制 度 ( Earned
Income
Tax
Credit
EITC)、金融所得一体化のための番号制度等における納晩の必要性と課題を検討する。
3.研究方法
わが国における番号制度の現状、プライバシー、導入コスト等の課題を、それぞれの分
野における専門家にヒアリングをしつつ、具体的な制度設計について研究を進めていく。
最終年度末には具体的な制度設計を試みる。
4.研究スケジュール
4 月から月1,2回のペースで、具体的な課題をヒアリングしつつ検討する。手法として
は、各分野の専門家を招き、当方との質疑応答を重ねつつ、内容を深めていく。
夏前に、成果を踏まえたコンファランスを開催。秋以降、欧米等の状況も研究しながら、
20 年 3 月までに中間報告書(平成 20 年度報告書)を作成する。
その後シンポジウム等も行ないながら、平成 21年度最終報告書の作成。
5.成果物
具体的な制度設計を含む報告書の作成