【提言1】年に1度「国際発信大賞」を設けて、英字メディアの論説欄で日本

日本のパブリック・ディプロマシー研究―国益情報を効果的に発信するために―
戦略国際問題研究所
渡部恒雄
ヘンリー・スティムソンセンター
辰巳由紀
【提言1】年に1度「国際発信大賞」を設けて、英字メディアの論説欄で日本の立場を効
果的に発信した人間を表彰し、100 万円の副賞を与えて日本の発信力を高める。
日本からの発信を質量ともに高めるためには、英語で日本の政策について書き・話すこ
とができる人材の育成が急務である。そのためには、若手にどんどん、執筆やプレゼンテ
ーションの機会を与えるべきで、外への発信を干渉する日本の組織のあり方も見直さなく
てはならない。
【提言2】日本国内で、日本の将来の戦略を活発に議論し、外に向けて発信せよ。
広報外交としての明確なメッセージを発するためには、そもそも日本の外交戦略のゴー
ルがコンセンサスとして形成されていなくてはならない。そして世界とアジアに日本のク
リアな戦略ゴールを発信することが、余計な誤解を解く、最善の方法である。
【提言3】継続は力なり。日本の対外発信は長期的な戦略と継続性を持ち、一時の感情に
流されず根気強く、日本人専門家以外にも説明を積み重ねる努力をする必要と覚悟を日本
のリーダーは自覚すべきである。
国際的なメッセージ発信には長期的な戦略性と継続性がいる。一度きりの議論の勝ち負
けではない。Op-Ed 記事, 議会公聴会、雑誌記事、TV 出演など複合的なメディア戦略も必
要だ。日本の骨太の国家戦略を発信することと同時に、細かい事実誤認の訂正など、継続
した議論をしていくことも必要で、継続は力となる。
【提言4】日本の中でオープンな議論ができ、様々な意見が闘わされる環境こそが、有効
な国際発信の大前提である。
日本の外交戦略のあり方や発信メッセージの質に切磋琢磨が行われるような、国内議論
の透明性とオープンさこそが民主国家の武器である。どのような意見にも、隠蔽された政
治的圧力ではなく、オープンな意見をぶつけあって論争しなくてはならない。日本社会が
自由な言論を保障しないかぎり、日本の発信力の質は向上しない上に、日本の民主主義へ
の疑念をおこさせることは、最大級の国益の損失となることを自覚しなくてはならない。
【提言5】在外公館の広報活動を見直し、日本の政策に関する基本的なデータについての
整備と人材の配置を図るべきである。
ワシントンの議会においても、日本の政策の基礎的な情報が米国人に伝わっていない。
日本の存在感のアピールに繋がる活動であれば、必要なリソースを思い切って与えること
が必要である。日本の政策に関する基本的なデータについては、日本広報文化センターの
ような場所に行けば分かるよう、各種政府刊行物の蔵書を充実させる必要もある。大使館
員が積極的な広報活動ができるような体制の見直しも急務である。