世界の原子力と電力改革の経験

世界の原子力と電力改革の経験
第49回原産年次大会
2016年4月12日~13日
エドワード・キー
このNECGスライドは、本プレゼンテーションおよび議論の完
全な記録ではない。スライドに掲載された意見および議論は
包括的なものではなく、NECGの顧客または他の職員の意見
を反映するものではない。
© 2016 NECG
2016年4月12日
原産年次大会
世界の原子力と電力改革の経験
 原子力は、電力産業改革および組織的な電力市場に
関連する問題に直面している
– 経済的な理由に伴う既存炉の早期廃止
– 許可された新規炉への投資不足
 私の願いは、日本の電力産業改革が、米国などで生
じた原子力への悪影響を避ける形で実施されること
である
2016年4月12日
原産年次大会
議題
 産業構造
 長期および短期フォーカス
 収益の確実性および不確実性
 原子力特性および公益に対する価値
 市場の失敗および政府の役割
 ケーススタディ
2016年4月12日
原産年次大会
重要な産業構造
 従来の電力産業構造:
原子力発電と電力系統および顧客とのつながりが強い
– 投資を促進する
– 系統と顧客に長期的な利益の流れが生じる
 再編された電力産業および市場:
系統および顧客から発電が切り離される
– 投資が困難である
– 長期的な利益を調整することが難しい
2016年4月12日
原産年次大会
公営電力会社
政府
発電所
電力省
卸売
国民および
納税者
$
送電
MWh
配電
$
小売サービス
消費者
2016年4月12日
原産年次大会
規制電力会社
投資家
発電所
電力規制機関
卸売
送電
配電
消費者
MWh
小売サービス
$
2016年4月12日
原産年次大会
電力市場
投資家
発電所
市場の監督
電力市場
電力規制機関
送電
配電
MWh
消費者
$
2016年4月12日
原産年次大会
小売サービス
電力市場
投資家
発電所
市場の監督
電力市場
電力規制機関
送電
配電
MWh
消費者
小売サービス
$
2016年4月12日
原産年次大会
長期 vs 短期
Before
10年以上
長期:需要を満たすため
に発電ポートフォリオに投
資する - 系統の合計長期
費用を最小限に抑えるこ
とに重点を置く
発電投資
物理的
契約と
金融的
契約
年
予備力
および
補助
サービス
月
週
事前給電
時
給電
および
市場決済
秒
Real
time
スポット
市場価格
時
月
契約決済
年
10年以上
リアル
タイム
系統制御
リアルタイム:需要を満た
すために給電する - 短期
限界費用を最小限に抑え
ることに重点を置く
投資利益
After
2016年4月12日
原産年次大会
収益の確実性
投資家および融資機関
垂直統合された電力会社
原子力発電所オーナー
(公営または規制)
経済的な電力規制機関
最終的な信用源:電力使用者および納税者
2016年4月12日
原産年次大会
収益の不確実性
投資家および融資機関
商用原子力発電
電力市場や契約により、
系統と需要から発電が分離される
電力小売事業者
最終的な信用源:電力使用者および納税者
2016年4月12日
原産年次大会
電力市場での不確実な収益
 投資利益が将来の収益に基づく
 将来の電力市場収益を予測しづらい
– 幅広い想定とシナリオ(新規参入、燃料価格、需要など)
による市場シミュレーション
 電力契約が将来的に市場から外れる可能性がある
 新規建設スケジュールにより電力市場収益予測が非常に
困難になる
– 収益化はCOD(送電後:プロジェクト開始から10年後)か
ら始まる
– プロジェクトは60年(以上)続く
2016年4月12日
原産年次大会
電力市場では重要な原子力特性および
公益に価値がない
電力市場
での純利益
2016年4月12日
報酬を伴わない
成果
(排出ゼロや
燃料多様性など)
原産年次大会
プラスの経済影響
(雇用やGDPに貢献
など)
市場の失敗および政府の役割
 電力市場は、既存または新規の原子力を支えられな
い(以下のケーススタディを参照)
– 資産への投資には、資産所有者と電力の最終使用者と
の利害関係、趣旨、その他の要因が必要である
– 発電は長期的な公益となる
 政府または電力規制機関などの準政府機関だけが
原子力資産と電力系統/顧客に適切な関係をもたらす
ことができる
2016年4月12日
原産年次大会
ケーススタディ
 米国の商用原子力発電所
– キウォーニーおよびバーモントヤンキー
– フィッツパトリックおよびピルグリム
– 早期廃止のおそれがあるその他のユニット
– 新規ユニット
 英国
– ブリティッシュ・エナジー
– ヒンクリー・ポイントC
2016年4月12日
原産年次大会
米国の電力改革
 米国の電力産業の構成:
– 垂直統合され、州の経済規制機関の規制下に置かれる投資
者が所有する電力会社
– 公営電力(地方公営企業、協同組合、連邦電力取引機関な
ど)
 米国の一部での電力改革
– 投資家が所有する電力会社の発電資産の売却が要求された
– 正式な電力市場が実現した
– 新規の商用発電事業者が生まれた
2016年4月12日
原産年次大会
米国の電力市場
2016年4月12日
原産年次大会
キウォーニー
556 MWe PWR
元の運転許可は、2013年12
月に期限切れとなった
2011年、2033年12月を新規
の期限として許可が更新され
た
2013年5月にプラントが廃止
された
 Dominion Energyが所有者である
 キウォーニーはMISOで市場収益を上げていたが、利益
がO&Mおよび燃料コストを下回っていた
 その結果として財務上の損失が生じ、2033年まで操業
が許可されたにもかかわらず、早期廃止となった
2016年4月12日
原産年次大会
バーモントヤンキー
605 MWe BWR
元の運転許可は、2012年3月
に期限切れとなった
2011年、2032年3月を新規の
期限として許可が更新された
2014年12月にプラントが廃止
された
 Entergyが所有者である
 バーモントヤンキーはNE ISOで市場収益を上げていた
が、利益がO&Mおよび燃料コストを下回っていた
 その結果として財務上の損失が生じ、2032年まで操業
が許可されたにもかかわらず、早期廃止となった
2016年4月12日
原産年次大会
フィッツパトリック
816 MWe BWR
元の運転許可は、2014年10
月に期限切れとなった
2008年、2034年10月を新規
の期限として許可が更新され
た
プラントは稼働中だが、2017
年に廃止予定となっている
 Entergyが所有者である
 UBSの予測によると、フィッツパトリックのユニット所有者は、
NYISO市場で年間2,900万ドルの損失を出していた
 2017年にプラントを廃止する予定である
 ニューヨーク州はプラントを維持すべく努めている(CESなど)
2016年4月12日
原産年次大会
ピルグリム1号機
690 MWe BWR
元の運転許可は、2012年6月
に期限切れとなった
2012年、2032年6月を新規の
期限として許可が更新された
プラントは稼働中だが、2017
年に廃止予定となっている
 Entergyが所有者である
 ピルグリムのユニットは、NE ISO電力市場で損失を出し
ている
 2019年6月までにプラントを廃止する予定である
2016年4月12日
原産年次大会
ジーナ
556 MWe PWR
元の運転許可は、2009年9月
に期限切れとなった
2004年、2029年9月を新規の
期限として許可が更新された
プラントは稼働中である
 Exelonが所有者である
 ジーナは、NY ISO市場で財務上の損失を出している
 短期の信頼性確保契約
 信頼性確保契約が満了したら、早期廃止の可能性がある
2016年4月12日
原産年次大会
Exelonイリノイ州ユニット(PJM)
ブレイドウッド1号機および2号機は、
2016年に2046/2047年まで延長され
た
10基、10,649 MWe
ブレイドウッド1号機および2号機、PWR、2,360
MWe
バイロン1号機および2号機は、2015
年に2044/2046年まで延長された
バイロン1号機および2号機、PWR、2,353 MWe
ドレスデン2号機および3号機、BWR、1,824 MWe
ドレスデン2号機および3号機は、2004
年に2029/2031年まで延長された
ラサール1号機および2号機、BWR、2,288 MWe
ラサール1号機および2号機は、
2022/2023年まで延長された
クアド・シティーズ1号機および2号機、BWR、
1,824 MWe
クアド・シティーズ1号機および2号機
は、2004年に2032/2032年まで延長さ
れた
 ExelonのPJMユニットは電力市場で損失を出し、発電
容量市場から付加収益を得ていた
 イリノイ州は2015年に新規の低炭素電源構成基準を検
討したが、承認が得られなかった
 これらのユニットは、早期廃止の候補である
2016年4月12日
原産年次大会
クリントン1号機
1.065 MWe BWR
元の運転許可は、2026年12
月に期限切れとなる
プラントは稼働中である
 このExelonユニットはイリノイ州のMISO部分にある
 最近の発電容量市場でいくらかの付加収益が得られた
 早期廃止の候補と見なされる
2016年4月12日
原産年次大会
デービスベッセ1号機
894 MWe PWR
元の運転許可は、2017年4月
に期限切れとなる
2015年、2037年4月を新規の
期限として許可が更新された
プラントは稼働中である
 FirstEnergyが所有者である
 デービスベッセは市場の課題に直面している
 オハイオ州公共事業委員会は2016年3月31日に差額
契約の手続きを完了させており、一部では再規制と言わ
れている
2016年4月12日
FERCと裁判所で、課題が予想される
原産年次大会
フェルミ3号機COL
1,600 MWe ESBWR
既存のサイトに配置される
2,700 MWe
2008年にCOLを申請した
2013年4月にCOLが承認され
た
プロジェクトは保留されている
 Detroit Edisonが所有者となる見込みである
 NRCの承認を取得する米国初の商用原子力ユニットである
 プロジェクトは収益性に関する市場の課題に直面している
 プロジェクトに投資する計画は立っていない
2016年4月12日
原産年次大会
サウステキサスプロジェクト3号機および4
号機
2基のABWRユニット
既存のサイトに配置される
2,700 MWe
2007年にCOLを申請した
2016年2月にCOLが承認され
た
プロジェクトは保留されている
 NRGが所有者であり、東芝が関与する
 ERCOT市場の商用原子力ユニットであり、市場の課題
に直面している
 2016年初めにNRCの承認を取得した
 投資を進める計画は立っていない
2016年4月12日
原産年次大会
サマー2号機および3号機
2基のAP1000ユニット
既存のサイトに配置される
2,034 MWe
2008年にCOLを申請した
2012年3月にCOLが承認され
た
2013年3月/2013年11月に着
工した
 SCE&GおよびSantee Cooperが所有者である
 建設中の規制電力会社プロジェクトである
 サウスカロライナ州法および公益事業計画アプローチに
より、十分な収益性がもたらされる
 米国の融資保証は行われない
2016年4月12日
原産年次大会
ボーグル3号機および4号機
2基のAP1000ユニット
既存のサイトに配置される
2,034 MWe
2008年にCOLを申請した
2012年2月にCOLが承認された
2013年3月/2013年11月に着工した
 Southern Companyおよび公営電力会社が所有者である
 建設中の規制電力会社プロジェクトである
 ジョージア州法および公益事業計画アプローチにより、十分
な収益性がもたらされる
 建設開始後の米国融資保証
2016年4月12日
原産年次大会
英国の電力改革
 英国は1989/1990年に電力部門を改革した最初の国の1
つである
 改革の主な推進力
– サッチャー政権による市場の重点化
– 英国電力産業の民営化に向けた要求
 原子力は他の資産の後に民営化された
– British Energyは、英国唯一の原子力企業として設立された
– British Energyは、8カ所の原子力発電所を運営した
2016年4月12日
原産年次大会
 1996年に株式公開により民営化された
 British Energyは、2002年に財政難に直面した
– 卸売りエネルギー価格の想定を下回った
– 一部の原子炉に問題が生じて停止した
 2003年~2005年に、英国政府はBritish Energyを再
編し、政府の所有および管理に戻した
 2009年、British EnergyはEDFに売却された
2016年4月12日
原産年次大会
EMR
 英国の「電力市場改革(EMR)」プロセス
– 2010年の大臣声明および文書で開始された
– EMRでは、英国政府が電力市場の新規原子力にインセ
ンティブを提供することができる
– 拘束力のある炭素排出量削減を満たす必要があった
 EMRインセンティブには、以下のものがある
– 差額契約(長期)
– 炭素下限価格
– 容量メカニズム
– 融資保証
2016年4月12日
原産年次大会
ヒンクリー・ポイントC
 ヒンクリー・ポイントは、2009年にEDFがBritish
Energyを買収したことで取得した既存の原子力発電
所サイトである
 EPR原子炉は、2012年に英国GDA承認を取得した
 EMR原子力プログラムの最初のプロジェクトである
– 長期の審査を経てEUに承認された
– EDFの金融投資決定を待っている
 電力市場における原子力の課題が明らかになった
2016年4月12日
原産年次大会
結論
 既存および建設中の原子力発電所は、いずれも従来
の電力産業構造のもとで建設されている
 電力市場での原子力の失敗は深刻である
– 米国の商用原子力が早期廃止されている
– 米国のCOL承認は投資につながっていない
– 英国はBritish Energyを救済する必要がある
– ヒンクリー・ポイントCでは、遅れと課題が生じている
 電力市場は原子力に適合しない
2016年4月12日
原産年次大会
NECGコメンタリー
 私は、本プレゼンテーションに含まれるトピックについ
て、適宜コメンタリーを発表している
http://www.nuclear-economics.com/commentary
 JAIFは、最初の12のNECGコメンタリーを日本語に
翻訳した
http://www.jaif.or.jp/necg-commentary-series/
2016年4月12日
原産年次大会
米国原子力学会
特別委員会ツールキット
 私はこの取り組みに参加し、ツールキットの筆頭作成
者を務めた
 原子力発電所のさらなる閉鎖を阻止し、新規原子力
を推進する政策および市場手段
– 米国市場に焦点を合わせる
– 各国にアイデアを提供する
– 詳細情報:
http://www.ans.org/pi/news/article-514/
http://nuclearconnect.org/wp-content/uploads/2016/02/ANS-NIS-Toolkit-download.pdf
2016年4月12日
原産年次大会
Edward Kee
Nuclear Economics Consulting Group
+1 (202) 370-7713
[email protected]
www.nuclear-economics.com
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12 April 2016
JAIF Annual Conference