設計図書を作成する

 第
1
章
設計図書を作成する
設計図書には CAD やパソコンなどを使い、システマチック
に能率よく作成されるものと、配管レイアウトのように多様な
エンジニアリングと他部門との調整のため、多大の工数を要す
るものとがあります。
作成する文書には配管仕様書、ラインリスト、
各種計算書(耐
圧強度、熱膨張応力、圧力損失、他)など、作成する図面には
配管レイアウト、配管組立図、アイソメ図、配管スプール図
などがあります。
VG-27
E101
T1
T1
LL
LT
3B-V-12091-C683-H6
VG-16
88-D-10133-C6B3-HC
SV-205
E103
VG-14 CV-321VG-15
第1章 設計図書を作成する
ポイント
1
多大の工数と期間を
要する配管設計
プロセス設計
配管設計は、仕事の流れから見ると、一般に基本設計と詳細設計に分け
ることができます(図 1-1)
。
配管基本設計より上流の仕事は、石油精製、石油化学、肥料など化学
プロセスプラントの場合、プロセス設計部門で行われます。
化学プラントの場合、プロセス設計部門は化学工学の専門家が主体で、
原料受け入れから製品出荷までのプロセスユニット(一連の製造工程)
を詳細に策定、プロセスごとに物質 / 熱収支計算を行い、それらは物質 /
熱収支シート、ブロックフローダイアグラム(BFD)
、プロセスフローダイア
グラム(PFD)にまとめられます。PFD は構成機器、制御思想、機器間
配管基本設計
プロセス部門
プロットプラン、機器配置図
P&ID
ラインリスト(ラインインデックス)
配管基準書(配管クラス含む)
PFD/UFD
物資 / 熱収支シート
機器リスト
機器データシート
ラインデータシート
配管ルート計画⇒配管レイアウト図
機器配置修正
管強度評価
圧力損失(管サイズ評価)
配管フレキシビリティ評価
耐震設計
主要サポート計画
原単位集計
出 図
入 手
土木・建築図
空調ダクト図
ケーブルダクト図
機器計画図
ベンダー見積図
配管詳細設計⑴
配管レイアウト図
ローディングデータ(床、ラック)
ノズルオリエンテーション
床・壁貫通孔明図
埋込金物図
プラッ
トフォーム/ラダー図
配管詳細設計⑵
配管詳細計画図⇒配管組立図⇒配管アイソメ図
サポート計画⇒配管サポート配置図⇒配管サポート製作図
原単位集計
P&ID 修正フィードバック
製作(プレファブ)
据付
図 1-1 プラント配管の設計手順
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出 図
入 手
土木・建築図(詳細図)
機器外形図
ベンダー外形図
配管組立図
配管アイソメ図
P&ID 修正依頼
各種施工図
ポイント1 多大の工数と期間を要する配管設計
の繋がり方などを示しています。さらに、機器、配管、計装の個々のデー
タを示す、機器プロセスデータシート、ラインデータシート、計器プロセ
スデータシートなどが作成されます。
配管基本設計
これらの図面・図書を受けて配管基本設計が行われます。
PFD、各種データシートなどを元にしてさらに詳細な P&ID を作成し
ます。P&ID( ポイント 2)は以後、配管・計装設計のバイブルとなり、
プラントを運転するオペレータにとっても欠かせぬものとなります。
プロットプランはユニット(一つのまとまったプラントの単位)の配置、
ユニット内の機器、配管ラックなどの配置を示したもので、原料の受入れ
から製品の払出しまでプロセスの流れに沿って機器を配置します。プロッ
トプランをより詳細に、ブレークダウンしたものが機器配置図です。
配管基準書はそのプラントにおいて遵守すべき配管装置全般の基準とな
るものを示す図書で、エンジニアリング、使用する材料、管継手、スペシャ
ルティ、サポートなどに対する要求事項、配管クラス(ポイント4)など
を規定し、ベンダー(製品メーカー)に対する購入仕様書も含まれます。
ラインリストはラインデータシートを元に作成され、配管各ラインの仕
様をライン No. 順に表にしたものです(ポイント 3)
。
配管詳細設計
機器配置図、P&ID などを元に配管レイアウト(ポイント7)を計画し
ます。近年、2D/3D CAD を使って作成されるようになりました。
配管レイアウトの進捗に平行して、内圧に対する管の強度計算、配管
フレキシビリティ解析、
耐震設計を行い、
圧力損失計算により管サイジング
の妥当性を確認します。配管のサポート計画も進めます。
配管レイアウト、サポート計画が固まると、いよいよ製作、検査、据付
けに使用する 3 面図方式(平面図、側面図、からなる)の配管組立図また
は鳥瞰図方式の配管アイソメ図(アイソメトリックの略)を作成します。
配管設計業務は非常に多くの工数と期間を要する仕事です。
11
第1章 設計図書を作成する
ポイント
2
P&IDは隅々まで読み解く
P & ID とは
P&ID(Piping and Instrument Diagram)は、流体に必要な状態量を示
した PFD(Process Flow Diagram)を元にして、一般にはプロセス設計部
門(あるいは技術部門)で作成されます。
P&ID には、プラント内の、機器間の配管ラインによる連結の仕方、配
管ラインを開閉、制御するバルブ、スペシャルティ、また流体の状態量を
計測監視する計器の種類、計測箇所、データの扱い方などが示されていま
す。これらにより、原料がどの機器に受け入れられ、どのような機器を通
過し、処理されて、製品化されていくかを知ることができます。
このようにして P&ID は、プラントの建設に携わるエンジニアが必要
図 1-2 P&ID の例(部分)
12
ポイント2 P&ID は隅々まで読み解く
とする情報のうち、運転圧力・温度、機器の位置、配管ルート、通常の
管継手、サポート、構造物、基礎、を除くすべての情報を示しています。
(注:運転圧力・温度はラインリストに示されます)
。
P & ID の見方
初心者にとって、P&ID は多数の特別な記号が使われているため、とっ
つきにくいところがあります。
P&ID は一般にその最初のシートに、使われる記号の説明がされていま
す。配管や計装のラインは定義されたさまざまな種類の線で表されます。
各配管ラインには設計、建設、運転、保守の際の便のため、ライン No. が
付され、一般にライン No. には、そのラインの口径、材質、流体の種類、
保温の種類、などの情報が組み込まれています(ポイント 3)
。
P&ID 上の機器の位置はプロットプランの位置と関係ありませんが、距
離的に近い機器同士は P&ID 上でも近くに配置され、かつ、シートの上
部にはエアフィンクーラーや凝縮器など気体を扱う機器を、シート下部に
はポンプのような液体を扱う機器を、そしてシートの中程には、塔や槽の
ような気体と液体の両方を扱う機器が来るように考慮します。
P&ID に従って配管設計、とりわけ、配管レイアウトが進められますが、
P&ID には、さまざまな要求が極めて簡潔に記されているので、これらを
見落とさず、かつ、適格に意味を理解し、レイアウトに反映しなければな
りません。例えば、寸法線上に数値がなく、Min. とか、Max. とあれば、
その長さや距離、あるいは、高さ、レベル差、などをできるだけ大きく、
あるいは、小さくとりなさい、という意味です。例えば、Min.1,500 と
あれば、「距離を 1,500 mm 以上とりなさい」という意味になります。
P&ID は配管設計者にとってバイブルのようなもので、配管レイアウト
が P&ID に従うことは、
いうまでもありません。しかし、
配管レイアウト上、
P&ID のとおりに配管すると、非現実的になる場合があります。例えば、
配管分岐の仕方、ヘッダへ繋ぎこむ順序、圧力計の位置などは、変更でき
る場合もあるので、そのような場合は、P&ID の設計部門の承認をとって
から変更します。P&ID そのものの変更は P&ID 担当部門で行われます。
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第1章 設計図書を作成する
ポイント
3
ラインリストは配管の戸籍簿
ラインリストとは
ラインリストはラインインデックスとも呼ばれ、プラント配管のライン
1 本 1 本に固有の、表 1-1 のような仕様が示されており、ラインの戸籍簿
のようなものといえます。
ラインリストはプロセス部門で作られるラインデータシートなどを元に
作成されます。
プラントのすべての配管につき、それぞれの始点から終点まで(すなわ
ち、ある機器または配管から他の機器または配管まで)の配管を一区切り
のラインとして区分し、それにライン No. が与えられ、P&ID の各ライン
に、このライン No. が付されます。このライン No. はすべての図面図書
にその配管の ID として使われます。
表 1-1 パイプラインリスト
下の表へ続く
パイプ ライン インデックス
系統名 □□□□□系統
Rev
No.
設計
圧力
From
To
流体
MPa
3B-CS-10052-A5B2-HC 水 4B-CS-10051-A5B2-HC
E-203 0.60
3B-CS-10053-A6B2-HC 水
E-203 4B-CS-10051-A6B2-HC 0.60
ライン No.
用 役
上の表より続く
設計
圧力 温度
MPa ℃
0.60 110
0.60 160
14
運転
管厚
非破壊試験
試験圧力
溶接後
圧力 温度 継目 継目
水 空気
腐れ代 PT
RT 熱処理
MPa ℃
MPa MPa
無
有
0.45 90 S/40
R
NR NR 0.9
0
0.45 140 S/40
R
NR NR
0