水性ビニルウレタン系接着剤に関する研究 (第 4 報): イソシアネート

SURE: Shizuoka University REpository
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水性ビニルウレタン系接着剤に関する研究(第4報) : イ
ソシアネート化合物による木材の接着
滝, 欽二
木材学会誌. 31(7), p. 573-578
1985-07
http://hdl.handle.net/10297/4607
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573
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日論文)
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水性 ビニル ウ レタ ン系接着剤 に関 す る研 究 (
第 逮報)†
イ ソシアネー ト化合物 に よ る木材の接着
*1
欽二 *2
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O
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C
・
水性 ビニ ル ウ レ タ ン系接 着 剤
(
APIレ ジ ン)の架 橋 剤 の イ ソ シア ネー ト化合物 を接 着 剤 と して,
木 材 の 接 着 試 験 を行 な っ た O ま た, 木 材 と イ ソ シ ア ネ - ト基 との 相 互 作 用 を示 差 走 査 熱 量 計
(
DSC) 測 定, 赤外線 (
I
R) スペ ク トル分 析 に よって検 討 した O
イ ソシア ネー ト基は 水 お よ び 木 枕 セ ル ロー ス と反 応 す る こ とが DSC サー モ グラム, l
R分 析
に よ,て 確認で きたo 木 材 と イ ソ シア ネ- ト基の 反 応 は, 26 0 2
8
0
o
C 付近 に 発熱 反応 が現 われ,
セ ル ロ- ス と イ ソシ ア ネ- ト基 の それ は 2
7
0㌦ 290o
C に 発熱 ピー クが認 め られ たL
l
0
-
イ ソシ ア ネー ト化 合物 を接 着 剤 と した本 村 の接 着 試験 に よ る と,接 着 温度 が 6
0℃ 以上 に な る と
接 粛 強 さが増 加 しは じめ , さ らに 高 温 の 方 が 接 着 強 さは 大 き くな る 接 着 強 さの 温 度依 存性 試験
。
の 結果,O
q
C 付 近 を境 と して低 温 域 と高 温域 で は接 着 強 さの 数 値 に段 差 が 脊在 し,低 温側 の接 着強
さが 大 き くな る。 ク ロ ス ラ ップ 引 張 強 さはせ ん断 強 さの 約 1
/1
0程 度 しか ない。
接 捌 離 日二は イ ソ シ ア ネー ト基 と木 材 との 間 に 生 じる ウ レ タ ン共 有結 合が 当然 関 与 して い る
が , イソ シア ネ- ト基 と水に よ って生 成 す る イ ソ シア ネ- 卜誘 導 体 が クサ ビ効 果 を働 き,接 着性
能 を増 強 させ るO
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これ まで水 性 ビニ ル ウレ タ ン系接 着 剤 (
APIレジ
ン)に 関 して種 々検 討 した結 果 1ト 6), この接 着 剤 は皮
滝
57
4
膜 形 成 過程 お よび皮 膜 が 形成 され たあ とに も 未反 応
イ ソ シア ネ- ト基 が 残 存 して い るこ とが 認 め られ
た(
) この未反 応 イソシア ネ- ト基 はユ リア残 基 , ビ
欽二
[
木材学 会誌
Vol
.
31
,No.
7
2
.
3 接 着 強 さの 温度 依 存性 試験
供 試 材 は既 報4
)と同一のマ カンパ (
含 水率 釣 J
2%,
全 乾 比 重 0.
5
6-0.
6
9)で, Fi
g.1の 引張せ ん断 試片 と
ウ レ ッ ト残 基 と結 合 した まま, あ るいは主 剤 成 分 の
ポ リビニ ル ア ル コー ル と連結 した もの な ど, 種 々の
複雑 な形態 で 残 存 して る と推 定 され たO また, 著 者
らは さ きに, イ ソシア ネ- 卜化 合物 に増粘 剤 と して
砥 の 粉,炭 酸 か レシ ウム な どを添加 して接 着 剤 と し,
室 温 で レ ッ ドメ ラ ン チ 材 を接 着 した 試 験 を 発 表 し
た7㌧ これ に よる と,常 態,煮沸 くり返 し後 の 接 着 性
T
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訂 SPeCi
men
能 もレ ゾル シ ノ- ル樹 脂 の場 合 と同等 であ ったO す
なわ も, イ ソ シア ネー ト化合物 のみ を接 着 剤 と して
木 材 を接 着 す るこ とが 可能 で あ る
。
実 際 に はパ - テ イ クル ボー ドや ウエ- - 求- ドの
製造 に, イ ソ シアネー ト接着 剤 を結 合 剤 と して使 用
され て い る8卜1
2
)
。 これ らの ボー ドの 製造 時 の 温 度 は
高 く, パ ー テ ィ クル ボー ドでは 1
8
0ロ8)9)-205
o
CIO)l
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)
,
ウエ- - ボー ドでは 1
5
0
0
-1
6
0℃ 1
2
)付近 で あ る。
本研 究 で は, 水性 ビニ ル ウ レ タン系接 着 剤 の架 橋
剤
Cr
ossL
apspeci
men
であ る イソシア ネー ト化合物 を接 着 剤 と して 木 材
の接 着 を試 み, 接 着 温度 が接 着 強 さに与 え る影 響 ,
接 着強 さの 温 度依 存性 の実験 を行 った。 また, 示 差
走
査熱 鼠計 (
DSC)曲線, 赤外 線
(
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HR)吸 収 スペ ク
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トルの解 析 に よ って, 木 材 とイ ソシア ネー ト基 との
相 互 作用 につ い て検 討 した。
クロ ス ラ ップ 試 片 を準備 したQ 供 試 剤 には イ ソシア
2. 実 験 方 法
光 洋産 業㈱ )を用 い, 両 面
ネ- ト化 合物 で あ る AE(
2
.
1 DSC測 定
塗付 した。接 着 条件 は既 報 4) と同様 で あ る。ただ し,
マ カ ンパ の木粉 (
含水率 5
%)
,また はセ ル ロー スパ
ウダー (
同 l
O
/
o未満 )に ミリオ ネ- ト MRl
o
o(
ポリ
メチ レン ポ リフ ェニ ル イ ソシア ネー ト, 日本 ポ リウ
レ タン工 業 K
K
, 以下
MRと略 す )を種 々の割 合 で混
合 した。この 混合物 を聞 いて,昇 温速 度 1
0
o
C/m
i nで
示差 走査熱 量 計 (
DSC)曲線 を測定 した. MRに 水
AEは粘 度 が 小 さ く (
0.
2-0.
4Poi
s
e
,2
5
℃ ), 木材 を
接 着 す る と きは室 温硬 化 では長 時 間 を必要 とす るの
で,硬 化 を促 進 す るため,6
0
0±2
℃ の恒 温器 内に,
せ ん 断 試片 は
3時間, クロ スラ ップ 試 肌 よ5時 間保
持 した。 そ の 後,2
0
o
C,65
%RH室 内 で 1日静 置 し,
解 圧 した あ と 2ヶ月間放 置 したo測 定 方 法 等 は既 報4)
C 曲線 を求
を混 合 した 系 につ い て も同様 に して DS
と閣 様 , 恒 温 槽 を備 えつけ た引 張 試験 機 を用 いで行
め た。 た だ し, 測定 は い ずれ も大気 中 とし, 試料 を
な った。 試 片 数 は各 条件 5-7個 と した。
入れ たア ル ミパ ンは オ-プ ン状 態で実 施 したQ 測 定
2
.
4
DSC標 準 型 (
理 学電 機 K
K
)を
には差動 熱 量天 秤 TG用いた
。
マ カ ンパ の 引 張せ ん 断 試 片 を MRを接 着 剤 と し
て作 製 したO接 着 温度 を2
0
0
,4
00
,6
0
0
,8
00
お よび 1
00o
C
2
.
2I
R スペ ク トル 分析
上 記 と同一 の セ ル ロー スパ ウ ダ- ,木粉 に
接 着 温度 試 験
MRを
0
%添加 した。混 合 した あ と,室
重量 比 で そ れ ぞれ 4
と し,2
4時 間 庄 締保 持 したo解 任 後,20
o
C,65
%RH
室 内 に 1ヶ月放 置 した 。 引張 試験 は 同室 内 で実 施 し
たO 試 片数 は 各 条件 1
0個 とした0
温 で 8日間放 置 し,硬 化物 を粉 末に して KBr錠 剤 法
3
. 結 果 お よび考 察
l
R)吸収 スペ ク トル分 析 を宥 な っ
に よ って 赤外線 (
たo 測 定 に は t
R-400㈱ 島 津 製 作 所 ) を 用 い た。
MRのみ の I
R分析 に は液膜法 (
Na
C】
)を用 い たo
3.
1
DS
Cサ ー モ グラム と IRスペ ク トル分 析
Fi
g.
2は MRに水 を添加 した 混 合 物 の DSCサ モ グ ラ ム を示 す。 これ に よる と, MRのみの 場 合 は
1
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水性 ビニ ルウ レタン系接着剤 に関 す る研究 (
第 4報 )
5
75
- に MR を混 合 した ものの
DS
Cサ - モ グラム を示
℃までサ - モ グラムにほ
0
す。 木粉 のみ の場 合 は 3
0
E 王0X山 E LaLjlO
とん ど変 化 が認め られないが,3
3
00
-35
0
℃ に木村の
L
山
熱分 解 14)に よ る発熱 ピー クが現 われ て い る -万,
0
MR と木 材 を混合 した もの の サ ー モ グ ラム をみ る
と,26
00
-27
0℃ 付近 にブ ロー ドであ るが,小 さい発
熱 ピー クが認 め られ る セル ロー スパ ウ ダー に MR
O
を混合 した系 にな る と,その発熱 ピ- クが MR木粉
混 合 糸 よ りもやや 高 温側 の 2
70
0
-290℃ 城 に現 われ
て い るO これ らの両 者の ピT クは木材成分, と くに
PU 山
セ ル ロ- ス とイソシアネ- 卜基 との反 応に由来す る
と思 われ る
。
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rらは 木粉 とポ リイ ソ シア ネ- ト化 合物 の
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0
1
2
0
混 合物 の DSCサ ー モ グラムの測定 を した結 果,普
C
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0
-28
0
℃ 付近 に発熱 ピー クの存在 を
者 と同様 に 26
Temper
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認め て い る12)が, そのほか に 4
00
-7
0℃ の低 温域 に
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ブ ロー ドな発 熱反応 があ る と述べ て い る。 彼 らが用
い た ポ リイ ソ シア ネ- トに は, クルー ドMDIの ほ
0
0o
C以上
40`
、
}
-2
00℃ まで DSC 曲線 は なだ らか で,2
か に純粋 な MDⅠが含 まれてい るの で,この MDl(
融
点 370
-38
o
C)が低 温域のサー モ グラムの ピー クに関
に な る と熱 分 解 に よる吸熱 が認 め られ る。 MR に水
与 した もの と推察 され る。 Fi
g.
3では,低温域 (と く
00
を 混合す る と, その 水 の 添加 量が 多 くな るほ ど 6
-7
0
o
C付近 ) でサ - モ グ ラム のベ ー スライ ン
に 40
-90o
C の 温域 に大 きな吸熱 反応 が み られ る これ ら
がや や不 安 定 な うらみはあ るが, この温城 に発熱 ピ
の 温 度域 の 大 きな吸熱 ピ- クは水分 の蒸発 に ともな
ー クが存 在 す る形 跡 は認め られ ない。
。
0
-1
4
0o
C 域 に, 余 り大 き くないが
う挙 動 で あ る。 90
0
Fi
g.
4は セ ル ロー スパ ウ ダー と MRの 混 合物 を
発熱 の ピ- クが存在 して い る。 これ らの小 さ
i
R分 析 した結果 を表 わす。MR のみ の スペ ク トル に
な吸, 覚 熟 ピ- クは水 とイ ソシア ネ- ト基 の反応に
は イ ソシア ネ- ト基の吸収 が 2
28
0c
m-1付近 に大 き
吸軌
よ って 生 ず るェ リア な どの イ ソシアネー ト誘導 体 6)
く認め られ る0 -万,セル ロ- スの スペ ク トルには
が, 熱分 解 す る こ とに よ って生 じた ものであ ろ う。
3
400c
m∼1付 近 に OH 基 に 基 づ く吸 収 が 認 め られ
これ らの イ ソシア ネ- ト誘 導体 は 1
20
-1
40
o
C城 で
0
熱分解 して晩
発 熱 す るこ とが知 られてい る13)0
Fi
g.3は マ カンパ の粉 末 お よびセ ル ロー スパ ウダ
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76
飲二
[木材学 会誌
Vol
.
31
,No
.
7
る セル ロ- スの OH基 とイ ソシア ネー ト基 に よる
o
-NHCOO-)
の
ウレタン結合 (
る吸 収 は 1
7
09- 1
739cm
1
C-0伸縮 振動 に よ
に 存 在 す る と思 わ れ る
が,MRのみの場 合 に も 1
720cm
l
付近 に鋭 い吸 収
が認め られ るの で塵 な り合 って その 吸収 は明瞭 で な
い
。
c
m
しか し,ウレタン結 合の
1
C-O伸 縮振 動 が 1230
にわずか で あ るが現 われ て い る。大 野 ら15ト 17)
。
この吸収 は
0
。
0
消失 している
(J
スペ ク トルには 1
640cm-1付近 に鋭 い吸収 がみ られ
るが,加熱処理 を した混合物 のそれ にはその吸収 が
...
室温処理 を したセル ロー ス と MRの混 合物 の I
R
0
比べ て温度が低 い (1
05
0
-11
0o
C)ため に ウ レタ ン結
合反応は少 な く,その I
R吸収 が小 さい と思 われ る
(
U
処理 を した混合物 の場合にお いて, 大 野 らの実験 に
二(
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F
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J
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..."
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1
200
-1
5
3
℃ )を行 なって, ウ レタン結合 に基づ く明
瞭な I
R吸収 の存在 を確 認 して い る。 本実験 の加 熱
(U バ
リ
はセ ルロー ス とイソシア ネ- 卜基の 反 応 (
反応 温度
C-0基 の伸縮振動 に よ
る ものであるが, セル ロー スパ ウダー 中の水分 , め
-1
00 -60 -2
0 2
0
るいは MR とパ ウダ-の混合時に,空気 中の水分 と
幻
(
氾1ム0 180 220
1
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MRの反応に よって生 じたユ リア結 合 が,熱処 理 に
よって分解 した こ とに よって消失 した もの と考 え ら
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以上 のよ うに, DS
C サー モ グ ラムや I
R スペ ク ト
ルの分析によって,木材 とイソシア ネー ト基 の相 互
O
o
C付近の接着強 さの段 差 を無視 す る と,接 着 強 さ
作用 を検討 した結果,木材 とイソシア ネ- ト基 との
問 に ウレタン共有結合 が存在 す る こ とが確 認 で き
にはその測定温度の影響 は あま りみ られ な くなる。
この現 象は硬 い熱硬化性樹脂 であ る レゾル シ ノ- ル
た
接 着剤 の場 合1
8
)の それ と類 似 した傾 向 で あ る
。
。
3.
2 イソシアネー ト化 合物 で撞 着 した木 材 の 接 着
強さ
ま
た,木部破 断は全般 に少 ないが, いずれの温度 条件
の場合 もほ とん ど同等に発現 してい る
。
イソシアネ- ト化合物 (
AE)を接 着 剤 として マ カ
Fi
g・
6の クロスラ ップ試験 の結 果 をみ る と, 木 部
ンパ を接着 した場合の,広 い温度域 にわた る引張せ
破 断は一部 に発現がみ られ るものの,ほ とん ど無 いO
ん断強 さとクロスラ ップ 引張 強 さ を Fi
g.5
,6に示
そ してせ ん断強 さに比較 して全体 に接着強 さはか な
す
り小 さい数値 となる
o
。
Fi
g.5のせ ん断試験の結果 に よる と,既報 5)の モデ
ル APIレジンの場 合にみ られ た よ うない くつ か の
接 着強 さの ピー クは存在 しないO そ して, 同一 試験
温度 ではそれ ぞれの接着強 さにバ ラツキがみ られ る
また, この クロス ラ ップ法の
場合に も低温域 と高温域 で接着強 さの数値 に明 らか
)
5
)の結 果や 秦野 19),本
な差が あ る。 す なわち,既報4
橋 20)
らの報告 と同様 にせ ん断 法 の場 合 に 比べ て わ
ずかに高温側-ずれてい るが,0
0
-1
0℃ 付近 を境 に
ちのの,各々の平均値 は O
o
C付近 を境 として高 温域
して低 温側 の接着強 さは高温側 の それ の 2-3倍大
と低 温域に分 け ると,一部 を除 き, 両 温度域 でそれ
きい。 しか し, 引張強 さは全体 に小 さな値 なの で,
ぞれ一定 した横 着強 さが あるこ とが 認め られ る
低温域 のそれは大 き くて も 7-8kg/cm2 に達 す るだ
。
す
なわ ち,1 0
0
℃ のみのプ ロ ッ ト値 を除い て, O
o
C以
けであるo クロスラップ引張強 さはせ ん断 強 さの l
/
3
下 の温度域 の接 着 強 さは既 報 5)の PVA-SBR-イ ソ
-1
/
4程度で あるこ とを既報 で詳述 した5)。 しか し,
本実験 の ように イソシアネー ト化合物 を接着剤 とし
シア ネ- ト系 モデ ル APIレ ジ ンの 場 合 の そ れ よ り
も小 さいが,約 6
0kg/cm2 を示 して い る。 O
o
C 以上 の
塩城 の接着強 さの値 をみ る と, 1
80o
C 以上 の結 果 を
除 い て,接 着 強 さは低 温域 の場 合 の それ よ り も 3
0
-40%低 くな り,約 45kg/c
m2 とな る。しか し,この
た場合 には クロスラ ップ強 さはせ ん断強 さの約 1
/1
0
とな った。
この よ うに, イソシア ネー ト化合物 で木材 を接着
した場合 のせ ん断お よび引張試験 に よる接着強 さの
1
985牛 7月]
5
77
水性 ビニルウレタン系接着剤に関す る研究 (
第 4報)
0
0
6
0
4
2
(
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50
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てい る22)。す な わ ち,イ ソシア ネー ト化合物 を接 着剤
1
0
0 16
02
0 2
0 6
0 1
0
0 仏0 1
8
0
Temper
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L
(
Oc)
と して 木 材 を接 着 す る場合 は, 高 温 の方 が接 着 が増
強 され るQしか し,MRのみ に よ るカバ接 着 ではみか
Fi
g・6・Tempe
r
a
t
ur
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t
e
m・
け以上, いずれの場 合 も木部破 断 は認 め られ なか っ
た。
さて, 前節 で木粉 や セル ロー スパ ウ ダー とイソシ
温度依 存性 試験 の結 果 に は,Ooまたは00
-1
0o
Cの 温域
R
ア ネー ト化合物 との 混合物 を用 いた DSC測定や I
をは さん で 高塩個Uと低 温 側 の接 着 強 さの数 値 に 明 ら
スペ ク トル分 析 に よ り, イ ソ シア ネー ト基 と木 材 と
か な差 が 存 在し, Oo
C 以 下 の 塩 城 の接 着 強 さの 方 が
の 間 に ウ レタン共 有結 合が 存在 す る こ とを述べ た。
大 き くな るO 接 着 強 さの この段 差 が 生 ず る原 因 は現
kは イ ソ シア ネ- ト基 は木材
しか し, た とえば Boc
在の とこ ろ明 らか で な い。しか し,木 材 自身 は Oo
C以
の よ うな反応性 水素 を もつ場 合 に は共 有結合 す る可
卜に な る と曲 げ 強 さ な どの機 械 的性 質 が直 線 的 に増
能性 が あ る として い るが, 他 の説 では イ ソシア ネー
人す る性質 が あ る21
)の で, O
o
C 城 をは さん で 木 材 自
ト基 の大 部分 は 自分 同士 で固化 して しまって共 有結
身 の 凝 集 力 の違 いが接 着 強 さに作 用 して い る こ とも
合 は無 い とす る見方 2
3
)があ る。 実 際 に接 着強 さには
考 え られる0
この共 有 結合 が存在 して当然 関 与 して い る と考 え ら
3.
3
れ るが, 接着 強 さ を破 壊す る方 法 に よ って行 な う現
接着温 度 の影 響
ミ リオ ネ - 卜 MR を接 着 剤 と したせ ん 断 試 片 に
試験 方 法 にお い て, これ を証 明 す る こ とは極め て 困
つ い て, 接 着 温 度 とせ ん 断 強 さの 関係 を Fi
g.7に示
難 で あ るO イ ソシア ネー ト化 合物 を結 合 剤 として,
0C 一 定 で あ る0 40o
C以
す.
日豪着 強 さの 測 定 温度 は 2
00
o
C程 度の高
パ - テ イ クル ボー ドの製造 の よ うに 2
D
卜の 温 度 で 接 着 した場 合 に は 接 着 強 さ は 平 均
3
0
温 度 で庄 締接 着 す れ ば, この 共 有結 合 の 生成割 合 は
多い と推 定 され る。 庄 締温 度 が これ よ り低 温
とく
kg/
cm2 の値 を示 す が, 60o
C碩 化 に な る と接 着 強 さ
0
o
C 硬 化 の場 合 の 接 着 強
は 増 人 しは じめ る さ らに 8
に室 温付 近 であれ ば イ ソシア ネー ト基 の 大部分 は 自
o
C 以 T の 場 合 の そ れ の 2倍 近 くの 60kg/
さ は 40
己縮 合や ユ リア な どの イソ シア ネー ト誘 導体 の生 成
。
00℃ 硬 化 に な る と 80o
C の場 合 よ
cm2程 度 に な る。 1
に消 費 され る。 これ らの イ ソンアネ- ト誘導体 は一
り も接 着 強 さはや や 増 大 す るが, 60
0
→ 8
0℃ の とき
般 の接 着 剤 と異 な り,皮膜形 成 しないoLたが って,
.A.
の よ う な 大 き な 増 加 傾 向 は み ら れ な い。 J
イ ソ シア ネー ト基 と木材の 共 有結合 が 存 在すれば接
Gal
l
agherは イ ソ シア ネ ー トと木 材 の OH 基 (
水も
0-45
Q
C で は 非常 に ゆ っ く りと反 応 し,
含 む ) とは 4
着 強 さは通常 の オー ダー よ りは るか に大 き くな るは
これ よ り高 温 に な る と急 激 に 反 応 が促 進 す る と述べ
よ うな誘 導体 とな って木材 の 道管 な どに侵 入 して ク
ず で あ るが, ほ とん どの イ ソシアネー ト基が上 述 の
滝
578
サ どの役
目を して い るO こ の 誘 導 体 は 非常 に 硬
い 6)
欽ニ
[木材学 会誌
料 化 学 教 室 の 皆 さ まに謝 意 を表 します O
が, 脆 い物 質 で あ るo Lたが って, 接 着 強 さは接 着
文
面相 全体 で破壊 力 を除 算す るため , 結 果 と して その
値 は大 き くな らな い と推 察 され るn ただ し,接 着 温
度 を上昇 す れば, 木 材 とイ ソシア ネ- 卜基 との 共 有
結 合の割 合が高 ま るこ とが 予想 で き るの で, この 結
栄,破壊 強 さが増 大す る と考 え られ るo
この よ うに, イ ソシア ネ- ト化 合物 を接 着 剤 と し
て木 材の接 着試験 を行 な った結 果 に よ り次 の こ とが
予想 で きるoPVA を含む エ マ ル ジ ョンに イソ シア ネ
ー ト化 合物 を添 加す る水性 ビニ ル ウ レ タン系接 着 剤
の場 合に も, イ ソシア ネー ト基 と木 材 との 共 有結 合
が 当然 存在す る と思 わ れ るが,接 着 剤 には 多義 の 水
分 が 存在 し, イ ソシア ネー ト基 は その ほ とん どが接
着 剤 の主 剤成分 お よび 水との反応 に消 費 され る もの
と考 え られ る。 そ して, これ らに よ って生 成 す るユ
リア な どの イ ソシア ネ- 卜誘導 体 は 固 い物 質 とな っ
て 木材組織 内 に侵 入 して クサ どの働 きをす る と考 え
られ る
Vol
.31
,No.
7
献
I
)滝 欽 二 水町 浩 ,山岸 祥恭 :木 材学 会 鼠
23十242 (1
978).
24〔
4)
,
2)滝 欽 二 水町 浩 ,川岸 祥恭 :同上 ,25 (
3)
,21
6224 日97
9ト
3)滝 飲 二 八 本繁 札 L
購 当閏 旨.
・r
q
6
1JI
.
,26 (
2),81
-86 日98
0).
-郎,水町 浩:
同 上,
28 (
3),1
43
4)滝 欽 二 富 田文-
-1
49 (1
982)
.
5)滝 欽 二,富 川文- 那 ,水 町浩 :同上,2
8 (3),1
5
0
-1
5
5 (1
982)
.
6)滝 軟 二,富 川 文一
凋弓
,水町 浩 :同上 ,2
9(
2)
,1
45
-1
5
2(
1
983).
7)山岸 祥恭,
滝欽 二 ほか :木 材工 業 ,
36 (
61
)
,272-
).
277 (1
981
8)元 本英生 , 矯 間雅 :木 材 と技 術 , No.3
6, 6-9
(1
97
9上
。
4. 結
請
水性 ビニ ル ウ レ タン系接 着 剤 (
APIレジ ン)の架
9)元 木英生 ,鷺 閑雅 :同上 ,No.39,9-1
4 日980).
1
0) Wi
l
s
on,∫.B.
:Pr
o
c1
4t
h P.
B.Symp W SU
Pul
l
man,WA,1
85193 日98
0).
橋 剤 であ る イ ソシア ネ- 卜化 合物 を接 着剤 と して本
ll
)Adams
,A.D._
・Z
'
b
z
.
d,1
95-2
05 日980).
村接 着試験 を したO また, イ ソ シア ネ- ト基 と木材
1
2) St
ei
ne
r
,P.
R.;Chow,S.
;Vadi
a,S.:Fo
r
e
s
t
の相互作 用 に 関 して, 示差 走査 熱 量 (
DSC)測定,
赤外線 (
I
R) スペ ク トル分 析 を行 な った。
7)
,2卜27 (
1
98
0).
Pr
o
d J,30 (
1
3)岩 出敬 治 .
・私 信
イソシア ネ- ト基 は水 お よび 木 材, セ ル ロ- ス と
1
4)有 馬 孝 礼 :木 材学 会 誌 ,1
9(
9),435442(
1
973)
.
R分 析 に よ っ
反応す るこ とが DSC サ ー モ グラム ,I
1
5)大 野 泰 雄 ,内本岩宏 :工 業 化 学 雑 誌,73∴2527-
て確 認 で きた。 と くに, 木 材 と イ ソシア ネ- 卜基 と
の反応 は 2
60
-28
0℃ 付 近 に DSC 発 然 ピ- クが 現
0
われ るO
2530 (1
97
0上
1
6)大 野 泰雄 ,内本岩 宏 :日本 化 学 会 誌 ,3,5
08-511
(1
976上
イ ソシア ネー ト化 合物 を接 着 剤 とす る木 材接 着 試
験 の結果,室 温 よ りも高 温 で接 着 す るほ ど接 着 強 さ
1
7)佐藤 俊 彦,大 野泰雄 ,甜村 敏 雄 ,同上 ,5,76
0764
(1
978).
が増 大す るO 接 着 強 さに は イ ソ シア ネ- ト基 と木材
1
8)滝軟 二 :未 発 表 .
成分 との 共有結 合 が 当然関 与 して い る と考 え られ る
1
9)秦野 恭 輿 ,富 江1
文 -都 ,水町 浩 :木 材 工 業 ,37
が, ほ とん どの イ ソシア ネ- ト基 は木相 中お よび大
(
4) 1
81
-1
8
4(
1
982).
,
気 中の 水分 と反応す る。 その結 果 生 成 す るユ リア な
20) Mot
oha
s
hi
,K.
;Tomi
t
a,B.;Mi
zuma
ch工H∴
どの碩 い イ ソシア ネ- ト誘導体 が木 村組 織 内へ 侵 入
Woo
dandnb
e
rSc
z
'
,16 日)
,72-85 日984).
21
) Mi
s
hi
r
o,A.;As
ano,l
∴ Mo
ku
z
aiGakkai
s
hF
'
,
して, これ らが投錨 効 果 の働 き を して い る こ とを示
唆 した。
30 (
3),207-21
3(
1
98
4)
.
謝
辞
イ ソシア ネ- 卜化 合物 を提 供 して頂 い た光 洋産 業
㈱, 日本 ポ リウ レタ ン工 業㈱ お よび実験 装 置 を使 用
させ て い ただ い た東 京 大学 農 学 部 林産 学科 高分 子 材
22) Gal
l
ag
h er
,J.A.:Fo
r
e
s
tPr
o
d J,32 (
4),2633 (1
98
2).
23) 日本 接 着 協 会 編 , 井 本 稔 :…接 着 - ン ドブ ッ
ク",日刊工 業 ,1
98
0.p.8.