(カナダ)(参考資料)

参考資料2-3
海外調査報告
(カナダ(参考資料))
平成28年4月7日
一般概況
【カナダ国旗】
【カナダ】
●正式名称:カナダ(Canada)
●首都:オタワ(Ottawa)
【一般事情】
●面積:998.5万平方キロメートル(世界第2位、日本の約27倍)
●人口:3,540万人
●言語:英語、仏語(どちらも公用語)
●宗教:ローマン・カトリック(国民の約半分近く)
【政治体制・内政】
●政体:立憲君主制
●元首:エリザベス二世女王(総督が女王を代行)
●議会:二院制
上院・・・105議席、首相の助言により総督が任命(75歳定年)
下院・・・338議席、小選挙区制(任期5年)
●与党:自由党
●内閣(2015年11月4日発足)
首相:ジャスティン・トルドー(自由党)(2015年11月就任)
財務相:ウィリアム・モルノー(自由党)(2015年11月就任)
●内政:2015年10月19日に下院総選挙が実施され、自由党が単独過半数
を獲得。約10年ぶりに、ハーパー首相率いる保守党から自由党に
政権交代。
<2015年下院総選挙における各党の獲得議席(括弧内は選挙前の議席数)>
184
(36)
自由党
99
(161)
保守党
新民主党
44
(95)
1
その他
11
(14)
【カナダ国章】
【経済】
●GDP総額:1兆9,748億加ドル/1兆7,854億ドル(2014年、IMF)
(日本の約0.4倍)
●一人当たりGDP:5万5,642加ドル/5万304ドル(2014年、IMF)
(日本の約1.4倍)
●経常収支 (対GDP比):▲2.1%(2014年、IMF)
●主要産業:金融・保険・不動産などのサービス業、製造業、
建設業、鉱業
●貿易
輸出(実額)5,289億加ドル(2014年、カナダ産業省)
(主な品目)原油、乗用車、金属製品
(主要相手国)米国、中国、 英国、日本、メキシコ
輸入(実額)5,243億加ドル(2014年、カナダ産業省)
(主な品目)産業機械、乗用車、自動車部品
(主要相手国)米国、中国、メキシコ、ドイツ、日本
【二国間関係】
●対日輸出(実額)1兆1,900億円
(主な品目)金属鉱、菜種、石炭
●対日輸入(実額)8,458億円
(主な品目)輸送用機器、一般機械、電気機器
連邦政府の歳出・歳入構成(2016年度予算計画)
○ 歳入面では、個人所得税と法人所得税で歳入総額の5分の3(63%)を占める。
○ 歳出面では、社会保障関係が歳出総額の半分近く(44%)を占める。
【歳出】
【歳入】
44%
63%
その他
物品税
111(4%)
その他歳入
雇用保険・ 277(10%)
保険料収入
224(8%)
関税
50(2%)
付加価値税
335(12%)
非居住者
所得税
63(2%)
債務償還費
257 (8%)
2,877億加ドル
(対GDP比:
14.4%)
高齢者給付
484(15%)
雇用保険
給付
211 (7%)
個人所得税
1,439(50%)
直接プログ
ラム支出
1,313 (41%)
3,171億加ドル
(対GDP比:
15.9%)
児童給付
219 (7%)
医療・社会
福祉給付
494 (16%)
法人所得税
379(13%)
2016年度名目GDP(見通し)
1兆9,960億加ドル
財政調整等192
(6%)
(出典)カナダ財務省 「Budget 2016 “Growing the Middle Class”」(2016年3月)
(注1) カナダの会計年度は4月~翌年3月まで。2016年会計年度は、2016年4月~2017年3月。
(注2) 付加価値税は、連邦税(5%)と州税(7~10%、州ごとに異なる)に分かれる。オンタリオ州は、連邦税と州税を統合した「Harmonized Sales Tax」を導入し、税率は13%。
2
金融危機後の経済・財政面における対応
金融危機後の対応
○ 2008年9月のリーマン・ショックを契機とした経済金融危機に対応するため、2009年1月、2009年度予算計
画において、2009年度に227億加ドル(対GDP比1.5%)、2010年度に172億加ドル(対GDP比1.1%)の総額400
億加ドル(対GDP比2.6%)の景気対策の実施を発表。
・ 雇用保険の拡充と職能訓練の強化(83億加ドル)
・ インフラ投資の加速(118億加ドル)、住宅投資の促進(78億加ドル)
等
○ 2007年に導入した「Strategic Review」に加え、リーマン・ショックによる財政悪化を受けて、均衡財政の達成
に向けて更なる歳出の見直しを行うため、2011年に「Strategic and Operating Review」を導入。
カナダが抱える課題
35%
○ リーマン・ショック後の2008年11月、議会予
算局(PBO)は経済・財政に対する評価報告
書を発表したが、主な点は下記。
・ リーマン・ショックによる経済・財政状況の悪化を受け
て、予算均衡目標、2011年度の連邦政府の債務残高
対GDP比25%目標の見直しが必要。
・ 長期的課題として高齢化の進行、低成長による生活
水準への悪影響、所得格差の拡大への対応が必要。
15歳未満の割合
30%
25%
26%
20%
高齢化の進行
15%
15%
10%
65歳以上の割合
5%
1953 1963 1973 1983 1993 2003 2013 2023 2033 2043 2053 2063 (年)
(出典)「Population Projections for Canada (2013 to 2063), Provinces and Territories (2013 to 2038)」(2015年5月)
3
経済成長に向けた取組
○ カナダは、2015年度までに均衡予算を達成するという財政目標に資する経済成長への取組として、「雇用
創出・経済成長の促進・低税率の維持」によるGDPギャップの解消を進めてきた。
○ 中長期的には、「教育投資・能力開発、技術革新、海外への市場開放」などを通じた経済成長の促進と生
活水準の向上を目指している。
G20包括的成長戦略(カナダ)
○ カナダの成長戦略は、財政健全化を大きな柱の1つとしている。これは、財政の持続可能性を高めることは、国債の金利
低下、消費者や企業からの信認確保などに繋がり、翻って経済成長と雇用創出に寄与するとの考えによるもの。
○ その他、インフラ投資、雇用促進、競争力強化、研究開発投資、自由貿易の促進などにより中長期的な成長を高める取
組を進めている。2014年11月のG20における成長戦略の内容は以下のとおり。
①公共投資
・インフラと輸送サービスに対して追加的な戦略投資を実施(2年間で13億ドル)
②雇用のミスマッチ解消及び国立雇用銀行の近代化
・求職者に対して近代的で信頼性の高い求職ツールの提供
③情報通信部門における競争力強化
・通信市場におけるローミングの卸売料金に上限を設定し、通信価格の引下げ、罰則強化などにより、通信市場における
競争を促進
④研究開発・技術革新の促進
・世界的に優れた研究分野の研究を促進するための基金(Canada First Research Excellence Fund)を創設
⑤自由貿易の促進
・カナダとEU間の包括的経済貿易協定(Canada-EU Comprehensive Economic and Trade Agreement)
・カナダと韓国間の自由貿易協定(Free Trade Agreement)
(出典) 「G20 Comprehensive Growth Strategy (Canada)」(2014年11月14日)
4
経済状況の見通しと実績及び評価
○ 「2009年度予算計画」による見通しよりも、2013年度と2014年度の名目GDPの実績が低くなっているが、
「2010年度予算計画」による見通しよりも高い実績を達成しており、正確で慎重な経済成長の推計が行われ
ているといえる。
経済の見通しと実績
<名目GDP>
(兆加ドル)
2.1
2
実績
2009年度予算計画(2009年1月)
1.9
2010年度予算計画(2010年3月)
1.8
1.7
1.6
1.5
2009年度
(09.4-10.3)
2010年度
(10.4-11.3)
2011年度
(11.4-12.3)
2012年度
(12.4-13.3)
2013年度
(13.4-14.3)
2014年度
(14.4-15.3)
(出典)「2009年度予算計画」(2009年1月)、「2010年度予算計画」(2010年3月)、カナダ統計局HP
見通しと実績に対する評価
<カナダ財務省へのヒアリング>
○ カナダでは、予算計画における経済財政見通しの作成にあたり、前提となるGDPに関して、民間エコノミストの平均値から一
定額を減らす「リスク調整」(Risk Adjustment)を行う算出方法を採用している。
○ 財務省独自の推計を行わず、民間エコノミストの平均値を利用することで、政府が意図的に介入したという印象を与えない
とともに、リスク調整により慎重な財政運営につながるため財政健全化にも一定の効果がある。
5
財政状況の見通しと実績及び評価
○ 2009年度の財政収支対GDP比の実績は▲3.5%で、2008年9月のリーマン・ショック後の「2009年度予算計
画」(2009年1月)による見通し▲2.2%よりも悪化。
○ 翌年の2010年度の財政収支対GDP比の実績は▲2.0%で、予算計画(2010年3月)による見通し▲3.1%よ
りも改善した。2011年度以降の歳出抑制の取組により、2014年度に財政黒字を達成。
財政収支の見通しと実績
<財政収支対GDP比>
0.6%
0.0%
-0.6%
2014年度:財政黒字を達成
-1.2%
-1.8%
▲2.2%
実績
-2.4%
-3.0%
▲2.0%
▲3.1%
2009年1月時点の見通し
▲3.5%
2010年3月時点の見通し
-3.6%
2009年度
(09.4-10.3)
2010年度
(10.4-11.3)
2011年度
(11.4-12.3)
2012年度
(12.4-13.3)
2013年度
(13.4-14.3)
2014年度
(14.4-15.3)
(出典)「2009年度予算計画」(2009年1月)、「2010年度予算計画」(2010年3月)、カナダ統計局HP
見通しと実績に対する評価
○ 2009年度の財政収支対GDP比が見通しよりも悪化した主な要因は、リーマン・ショックの影響が想定以上に大きく、失業率
の上昇による雇用保険給付の増加、給付期間の一時的な延長措置などの財政出動の追加により、歳出総額が見通しよりも
膨らんだことによる(約190億加ドル)。
○ 2010年度は、想定よりも歳入が増加(約95億加ドル)したこと、失業率の改善による雇用保険給付の減少、一部の景気刺激
策の実施の先送りなどにより、見通しよりも財政状況が改善。
(出典)「2009年度予算計画」(2009年1月)、「2010年度予算計画」(2010年3月)、「2011年度予算計画」(2011年6月)、「Fiscal Reference Tables」(2015年9月)
6
Canada Health TransferのCap制
○ カナダの医療及び社会福祉は、州政府の管轄であり、連邦政府は、交付金により州政府に対する財政的
支援を実施。
○ 2011年12月、カナダ政府は、「医療支出交付金」(Canada Health Transfer)及び生活保護、子育て支援・
児童教育などに支出される「社会福祉支出交付金」(Canada Social Transfer)に関する改革方針を発表。
・「医療支出交付金」に関し、
①2016年度までは6%増を維持。
②2017年度以降、名目GDP成長率の3年間移動平均を伸び率として設定(3%を最低基準)。
・「社会移転支出交付金」に関し、
③毎年3%増を維持。
医療制度
○ カナダでは、憲法上、年金制度が連邦政府の管轄とされる一方、その他の社会保障のほとんど(保健医療、公衆衛生、
福祉等)は州政府の管轄とされている。
○ カナダの医療は、2階建て構造となっており、メディケアと呼ばれる1階部分の大部分を公的財源で負担しており、原則
無料。居住要件を満たせば本医療保険の対象となる。なお、2階部分に当たる在宅ケアや薬剤、歯科等については一部
を民間保険や自己負担により対応。
<PBO(議会予算局)の分析>
○ 医療支出交付金を名目GDP成長率に連動させたことにより、長期的な持続可能性を考えるうえで重要な要素ではなく
なった(inconsequential)。「社会福祉支出交付金」は3%ずつ増加していくが、長期的なGDP成長率よりも低いため、歳出
抑制につながる。
(出典)PBO「Renewing the Canada Health Transfer : Implications for Federal and Provincial-Territorial Fiscal Sustainability」(2012年1月12日)
PBO「Fiscal Sustainability Report 2015」(2015年7月21日)
7
予算編成の流れ(2016年度)
○ カナダでは、TBS作成の「歳出見積もり」(Estimates)に基づく「歳出法案」が国会で審議される。
○ 会計年度は4月からであるが、財務省は2~3月に予算計画を発表するため、TBSが2月に作成する「歳出
見積もり」(Main Estimates)には、予算計画に記載された新制度の内容は盛り込まれず、4月以降、予算計
画の内容を盛り込んだ補正見積もり(Supplementary Estimates)を3回に分けて作成し、補正見積もりに基づ
く歳出法案が提出されるため、合計5本の法案が国会で審議される。
2016年度
予算計画
(財務省)
Main Estimates
Supplementary Estimates A
Supplementary Estimates B
Supplementary Estimates C
2016年度
歳出見積もり(TBS)
2016年度
補正見積もりA(TBS)
2016年度
補正見積もりB(TBS)
2016年度
補正見積もりC(TBS)
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7
月
8
月
9
月
10
月
11
月
12
月
②Mains Estimates full supply bill
①Mains Estimates
interim supply bill
暫定歳出法案
歳出法案
③Supplementary Estimates A
supply bill
補正歳出法案A
④Supplementary Estimates B
supply bill
補正歳出法案B
1
月
2
月
3月
⑤Supplementary
Estimates
C supply bill
補正歳出法案C
<カナダ財務省へのヒアリング>
○ 予算計画に盛り込まれた新制度は、補正歳出法案AからCまでのいずれかに盛り込まれるため、議会で十分な時間をとっ
て審議できる仕組みになっているが、現行制度では、Estimatesの数がかなり多いので、予算計画の後にMain Estimatesを提
出する仕組みに変更できないか検討している。また、総督(Governor General)に緊急時の歳出権限が与えられているので、
アメリカのようにガバメント・シャットダウンが発生することはない。
8
経済・財政状況(データ)
(単位:%)
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
実質
GDP
成長率
5.1
1.7
2.8
1.9
3.1
3.2
2.6
2.0
1.2
▲2.7
3.4
3.0
1.9
2.0
2.4
1.0
1.7
10年物
国債金利
5.9
5.5
5.3
4.8
4.6
4.1
4.2
4.3
3.6
3.2
3.2
2.8
1.9
2.3
2.2
1.5
1.7
経常
収支対
GDP比
2.5
2.1
1.7
1.2
2.3
1.9
1.4
0.8
0.1
▲2.9
▲3.5
▲2.7
▲3.3
▲3.0
▲2.1
▲2.9
▲2.3
失業率
6.8
7.2
7.7
7.6
7.2
6.8
6.3
6.0
6.2
8.4
8.0
7.5
7.3
7.1
6.9
6.8
6.8
インフレ率
2.7
2.5
2.3
2.7
1.8
2.2
2.0
2.1
2.4
0.3
1.8
2.9
1.5
1.0
1.9
1.0
1.6
PB対GDP
比
5.9
3.6
2.5
1.8
2.5
2.6
2.4
2.0
▲0.2
▲3.7
▲4.3
▲3.3
▲2.5
▲2.3
▲1.3
▲1.3
▲1.0
財政
収支
対GDP比
2.9
0.8
0.0
0.1
1.0
1.7
1.8
1.5
▲0.3
▲4.5
▲4.9
▲3.7
▲3.1
▲2.7
▲1.6
▲1.7
▲1.3
債務
残高
対GDP比
81.0
82.2
80.5
76.6
72.5
71.2
70.4
66.7
70.8
83.0
84.6
85.3
87.9
87.7
87.9
90.4
89.4
(出典)IMF「World Economic Outlook」。但し、10年物国債金利についてOECD「Economic Outlook 98」。
9