4 rheJapaneseS◎cユetyforDentaユMateziaユsandDevices(JSDMD) 一 歯科材料・器械Vol、28No.3161−167(2009) 調査研究報告 ノンクラスプ用デンチャー材料の基礎的物性 高橋英和''7河田英司2.7玉置幸道a7 寺岡文雄4,7細井紀雄5.7吉田隆一6,7 B a s i c p r o p e r t i e s o f t h e r m o p l a s t i c r e s i n s f o r d e n t u r e basematerialreferredto"nonclaspdenture” e ザ HidekazuTAKAHAsHI1.7,EijiKAwADA27,YukimichiTAMAKI3,7, FumioTERAOKA4‘7,ToshioHOSOI5,7andTakaichiYOSHIDA6,7 Keywords:Denturebasepolymer,Thermoplasticresin,Basicproperties B a s i c p r o p e r t i e s o f t h e r m o p l a s t i c r e s i n s f o r d e n t u r e b a s e p o l y m e r ( n y l o n r e s i n : V L P , p o l y c a r b o n ‐ ateresin:PCB,acetalresin:ACT,polyethyleneterephthalateresin:EST),whichisreferredto"non c l a s p d e n t u r e , ' , w e r e e x a m i n e d t o c o m p a r e w i t h t h o s e o f h e a t c u r e d a c r y l i c r e s i n ( P M M A ) . T h e f l e x u r a l strengthsandmoduliofPCBandEST,andthepropertiesofVLPandACTweretwo-thirdsand one-thirdofthoseofPMMA,respectively、Theabrasionlossesofthermoplasticresinswerelessthan one-fifthofthatofPMMA・TheshearbondstrengthsofachemicalcuredacrylicresintoPCBand ESTwere1.5timesgreaterthanthatofPMMA,butthoseofVLPandACTwereverysmall・Thecolor differencesbeforeandaftercoffeeimmersionofallspecimenswerelessthan5,whilethosebetween beforeandaftercurrysolutionofVLPandESTweregreaterthanlO、ThewatersorptionsofVLP andESTweregreaterthanthoseoftheotherproductsandone−thirdofthatofPMMA,Thewater solubilitiesofthermoplasticresinsweresmallerthanthatofPMMA. キーワード:義歯床用材料,熱可塑性樹脂,基礎的物性 いわゆる「ノンクラスプデンチャー」と称される熱可塑性樹脂(ナイロン系樹脂:VLP,ポリカーボネー ト樹脂;PCB,アセタール樹脂:ACT,ポリエチレンテレフタレート系樹脂:EST)の基礎的物性を加熱重 合アクリルレジン(PMMA)と比較して評価した.曲げ強さ,曲げ弾性係数はPMMAと比較してPCBと ESTは約2/3,VLPとACTは約1/3であった.歯ブラシでの摩耗量はPMMAと比較するといずれの製品 もl/5以下であった.化学重合型アクリルレジンとのせん断接着強さはPMMAと比較してPCBとESTは1.5 倍であったが,VLPとACTはほとんど接着していなかった.着色試験ではコーヒー浸潰の色差はいずれの 試験片も5以下であり,カレー浸潰ではVLPとESTの色差は10以上を示した.吸水量はVLPとESTは他 の製品より大きいもののPMMAの約1/3であった.溶解量はPMMAより小さな値であった. 原稿受付2009年4月30日,受理2009年5月1日 ゴ '東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科先蝋材料評価学分野(〒113.8549,東京都文京区湯島1-5-45) 2東京歯科大学歯科理工学調座(〒261-8502千葉県千葉市美浜区真砂1丁目2-2) 3昭和大学歯学部歯科理工学講座(〒142-8555品川区頗の台1-5-8) ‘大阪大学大学院歯学研究科先端顎口腔バイオマテリアル学(〒565-0781大阪府吹田市山田丘1-8) s鶴見大学歯学部歯科補綴学第1調座(〒230.8501神奈川県横浜市鶴見区鶴見2-1-3) ‘日本歯科大学生命歯学部歯科理工学講座(〒102-8159東京都千代田区富士見1-9-20) 7日本歯科理工学会ノンクラスプデンチャー検討委員会委員 ' A d v a n c e d B i o m a t e r i a l s , G I 君 d u a t e S c h o o l o f M c d i c i n e a n d D e m t i s t r y , T o k y o M e d i c a l a n d D e n t a l U n i v e 応 i t y ( L 5 4 5 Y u s h i m a , B u n k y o k u , T o k y o l l 3 8 5 4 9 ) 2 D e p a r t m e n t o f D e n t a l M a t e r i a l s S c i e n c e , T o k y o D e n t a l C o l l e g e ( l 2 2 M a s a g o , M i h a m a k u , C h i b a 2 6 1 8 5 0 2 ) 3 D e p a r t m e n t o f O m l B i o m a t e r i a l s a n d T e c h n o l o g y , S c h o o l o f D e n t i s t r y , S h o w a U n i v e r s i t y ( l 5 8 H a t a n o d a i , S h i n a g a w a k u , T o k y o l 4 2 8 5 5 5 ) ‘ D e p a r t m e n t o f O r o M a x i I l o f a c i a l R e g e n a r a t i o n , O s a k a U n i v e r s i t y G r a d u a t e S c h o o l o f D e m t i s t r y ( l 8 Y a m a d a O k a , S u i t a , O s a k a 5 6 5 0 8 7 1 ) 5 F i 鱈 t D e p a r t m e n t o f P m s t h o d o n t i c s , T s u r u m i U n i v e 鱈 i t y S c h o o l o f D e n t a l M e d i c m e ( 2 1 3 T s u r u m i , T s u m k i . k u , Y o k o h a m a 2 3 0 8 5 0 1 ) 6 D e p a r t m e n t o f D e n t a l M a t e r i a l s S c i e n c e , T h e N i p p o n D e n t a l U n i v e r s i t y , S c h o o l o f L i f b D e n t i s t r y a t T o k y o ( 1 9 2 0 F u j i m i , C h i y o d a ‐ k u , T o k y O l O 2 8 1 5 9 ) 7 C o m m i t t e e m e m b e r f o r N o n c l a s p d e n t u r e m a t e r i a l s o f t h e J a p a n e s e S o c i e t y f o r D e n t a l M a t e r i a l s a n d D e v i c e s NエエーEユectr◎nicLibrarvSezvice rheJapaneseS◎ciety量orDentaユMaterialsandDevices(JSDHD) 162 歯科材料・器械Vol、28No.3 1.はじめに 2.調査した材料 従来は部分床義歯の維持装置としては主に金属製のク 本調査報告では日本補綴歯科学会から依頼のあったノ ラスプが使用されていた.近年,補綴装置に対し今まで 以上の審美性が求められるようになってきており,前歯 部においては従来の金属クラスプを用いるのが容易でな いとの報告もある.さらに,金属に対してはアレルギー の不安もあり,義歯床用材料として金属以外の材料への 期待が高まってきている.最近,クラスプを維持装置と せず,義歯床用材料の弾性を利用して義歯の維持に応用 したいわゆる「ノンクラスプデンチャー」が広く知ら れるようになり,臨床でも使用されつつある.平成20 年に日本補綴歯科学会より日本歯科理工学会にこれら 「ノンクラスプデンチャー」に用いられている材料の歯 ンクラスプデンチヤー用材料であるナイロン系樹脂1製 科理工学的見地からの特徴について見解を求められた. 「ノンクラスプデンチャー」に用いられている材料は熱 可塑性樹脂であり,日本で義歯床材料として認可されて からの期間は比較的短い.文献調査を行ったところ,い わゆるナイロン系樹脂材料に関する報告はいくつかある ものの' '2),日本で認可されている製品に関しては少 ない.アセタール系樹脂'3 '5),ポリカーボネート系樹 脂16)に関する研究は少ない特にこれらのいくつかの 樹脂を同一条件で検討した研究報告は極めて限られてい る.そのため,理工学的な見地からの評価をするには十 分な資料がないのが現状と考えられた.そこで日本歯科 理工学会では「ノンクラスプデンチャー検討委員会」を 組織し,日本補綴歯科学会の協力の下,これら材料の基 礎的物性を調査することとした.本報告はこの調査結果 品(バルプラスト,バルプラストジャパン;vLP),ポ リカーボネート樹脂l製品(レイニング,東伸洋行; PCB),アセタール樹脂(Acetal,ウエイブレングス; ACT)の3製品に加え,ポリエチレンテレフタレート 系樹脂1製品(エステショット,ニッシン;EST)と, 比較対照として加熱重合アクリルレジン1製品(アクロ ン,ジーシー;PMMA)の合計5製品について検討 ' した.これらの材料はISO20795-1Dentistry‐Base p o l y m e r s P a r t l : D e n t u r e b a s e p o l y m e r s 1 7 ) で 規 定 さ れる義歯床用レジンの中でType3:Thermoplastic ロ blankorpowderに相当する.試験片はあらかじめそれ ぞれの試験に必要な大きさのステンレス製金属原型を作 製し,これをそれぞれのメーカーもしくはメーカー指定 の技工所にて作製を依頼し,作製された試験片を耐水研 磨紙により成形し、最終的には#1200により規定の寸 法に仕上げた.これらの略号,販売者,射出成形条件を 表1に示す.また,これらの樹脂の基本的な構造式を図 1に示す.なおPMMAは70℃90分,100℃30分の湿 式重合で作製した.試験は原則として異なる2機関で 行った.試験項目は曲げ試験,歯ブラシ摩耗試験,せん 断接着試験,着色試験,吸水・溶解試験であるが,上記 のISO規格で採用されている試験項目についてはでき るだけISO規格に準じて試験を行った. 3.曲げ試験 の報告である. 曲げ試験には65×10×2mmの板状試験片を用いた. これを37℃精製水中で48±2時間保管後に,支点間距 表1本研究で検討した熱可塑性樹脂 素材 略号 商品名 販売者 射出成形条件 ナイロン系樹脂 VLP バルプラスト バルプラストジャパン 288℃ ポリカーボネート樹脂 PCB レイニング樹脂RP-01 東伸洋行 アセタール樹脂 ACT A c e t a l * ウエイブレングス ポリエチレンテレフタレート系樹脂 EST エステショット ニッシン 300℃/6秒 230℃/15分 230℃/20分 加熱重合アクリルレジン PMMA アクロン ジーシー ・国内では義歯床用材料としては認可されていない. 試験片は販売者もしくは販売者指定の技工所にて作製した. 淵{嘩斗汁:州附 ナイロン12ポリカーボネートポリアセタールポリエチレンテレフタレートポリメチルメタクリレート 図1それぞれの樹脂の基本的な構造式 NエエーElectronicLibrarvService ? Q FheUapaneseS◎ciety造orDentalMateziaユsandDevices(JSDMD) ノンクラスプ用デンチヤー材料の基礎的物性 163 曲げ試験ではPMMA以外の試験片は破折しなかった 離50mm,クロスヘッドスピード5mm/minで3点曲 げ試験を行い,曲げ強さと弾性係数を求めた.試験数は ため,最大荷重より曲げ強さを求めた.また,試験機関 それぞれの試験機関で5ないし7個とした.試験機関l 2ではACT,PCB,VLPで明確な荷重減少が認められ では小型卓上試験機(EZtester,島津製作所),試験機 なかったため,試験機関1で多くの試験片が最大曲げ応 関2では万能試験機(1125,インストロン)を用いた. 力を示した曲げひずみが4.5%での応力を曲げ強さとし た . 得られた代表的な応力一ひずみ曲線を図2に,曲げ強 ︵画豊︶R些羊室 ひ 帥帥如加0 1 0 0 さと曲げ弾性係数を図3に示す.応力一ひずみ曲線より 今回検討した熱可塑性樹脂は従来のPMMAより小さな 応力で大きくたわみ,また,大きくたわんでも破折しな いことがわかる. 曲げ強さ,曲げ弾性係数はPMMAと比較してPCB とESTは約2/3,VLPとACTは約1/3であった. ISO規格でのType3の要求値は曲げ強さ65MPa以上, 曲げ弾性係数2.OGPaである.VLPとACTは,いず れの要求値よりも小さな値であった.試験機関による曲 0 1.02.03.04.0 5.0 曲げたわみ(%) 次に,弾性変形の目安として試験機関2のデーターに 図2代表的な応力一ひずみ曲線 ■ ●●●●■■■●●■ ’ ’ ’ ● ● ● 由 ① ■ ● ; 『 ● ● ● ● ● 0 ● 。 321 ● ● ■ ︵③﹂。︶熱迷撃誕第一租 由 ● 湯 F 腕 4 ワ﹄〒 ● 一●●●●●●●。●■●■●●●、●●●●●●■●●● ︵犀室︶刊漂造租 工 一●●●■。● 加加帥帥如加0 11 ロ試験機関1田試験機関 一 げ特性の違いは,3点曲げ分析に用いた試験のジグの形 状やソフトの違いによると考えられる. ロ試験機関1 国試験機関2 ● ● ● ’ ■ ● 。 ● 、 0 VLPPCBACTESTPMMA VLPPCBACTESTPlnIA 0 ︵ま︶鮪予診peや侭虐雷。.。 ︵画室︶R蔭憲。.。 ざ 03 02 01 0 4 5 0 52 01 51 00 50 2 0 図3曲げ強さ(左)と曲げ猟性係数(右)の結果 ー 髪 菱髪雲菱髪 B 諺 3 顔 豚 弱 国 ;#;;’ VLPPCBACTESTPMMAVLPPCBACTESTPlIMA 図40.05%耐力と0.05%耐力でのひずみ NエエーEユectrOnicT.1h重rvService & EheJapaneseSociety玉OrDentaユMateria1sandDevices(JSDMD) 164 歯科材料・器械Vol,28N0.3 ついて0.05%耐力と,その時のひずみを求めたものを図 4.歯ブラシ摩耗試験 4に示す.0.05%耐力はほぼ曲げ強さと同じ傾向を示 した。また,弾性変形できるひずみ堂は大きい順に 歯ブラシ摩耗試験はさらにアルミナ砥粒(粒径 0.3#m,0.0印、)をⅢ]いてパフ研磨機にてイl身上げた EST,PCB.VLP,PMMA,ACTであった.弾性変 20×10×1.5mmの板状試験片を用いた.37℃精製水巾 形できるエネルギーの目安である0.05%耐力とそのひず みの積は大きい順にEST,PMMA,PCB,VLP,ACT で1週間保管して電堂を測定後に,歯ブラシ(#411, バトラー)に2Nを負荷し,歯膳剤(セッチマア,サ ンスター)259に精製水を10ml加えたものを介在させ て30,000回往復したときの体枝減少量を際粍景(mm3) であった. として求めた.試験機関1では試験片を刷毛面より 1.0mm突出させ,そこに歯磨剤全量を填入して所定回 数の摩耗試験を行った.試験機関2では試験片上面と刷 3 0 口試験機関1国試験機関2 ︵”旨︶趨蕊鎧 01 51 0 2 2 5 : ? 毛面は同一平面であり,刷毛5,000同往復ごとに歯磨剤 の混和物を19静置して試験を行った.測定数は3個ず つとした. 50 ; 歯ブラシ摩耗試験の結果を脚5に示す.試験機関に よって絶対値は異なっていたがPMMAと比較すると今 回検討した製品の値はl/5以下であった.試験機関に 産 錫 = − 雨 鰯 VLPPCBACTESTPMMA 図5歯ブラシ摩耗試験の結果 VLP よる違いは試験片と刷毛繊維の配侭,歯磨剤の填入方法 の違いによるものと考えられる. 歯ブラシ摩耗試験後の試験片表面のSEM像を閃6に 示すが,PMMAでは刷毛線維による大きな摩耗条痕が 観察されるが,他の試験片では明確な違いは認められな PCB ACT 閃 E S T P M M A 図6歯ブラシ摩耗試験後の試験片のSEM像 ■ Nrr−E1ectronicr、うhrarvSe工vユCe ● 0● PheJapaneseS◎cietyE◎rDentaユMateriaユsandDevices(JSDMD) ノンクラスプ用デンチヤー材料の基礎的物性 165 水で余剰のコーヒーを流し,キムワイプで水分を完全に Q試験機関1田試験機関2 拭い測色を行った.カレーはS&Bの粉カレー89を 一T 士 〒 「 1’ ’ 〃 水で余剰のカレーを流し,キムワイプで水分を完全に拭 〒 iI !I; ; 一一 弱 : : を振溌しながら浸漬し,24時間後に試料を取り出し,流 うだけで測色を行った.測色には試験機関1では白色板 ’ 〒 700mlの温水で溶き浸漬液とした.37℃で24時間試料 Z 1 2 リ ; ’ 甲■ 令皇︶把無獅箪 0 53 02 52 01 51 050 43 ある.24時間後にコーヒー液から試料を取り出し,流 痔涜易! ' VLPPCBACTESTPMMA 図7せん断接着強さ に試験片を静置して色彩計(MCR-A,ラックオフィー ス),試験機関2では無彩色の板(灰色の板)に試験片 を静置して分光式色差計(SE2000,日本電色工業株式 会社)を用いた.各試料3箇所測色し,その平均をそれ ぞれの測色値(L*,a*,b*表色系で定量化)とした. 浸漬前の値と浸漬後の値から以下の式で色差を求めた. 4E*ab=〔(4L*)2+(』a*)2+(』b*)2〕l/2 かつた. 5.接着せん断試験 接着せん断試験は直径10mm厚さ2mmの試験片を 5試料の平均を求め,コーヒー,カレー浸漬による変 色とした. アクリル樹脂に包埋し,接着面積が直径4mmになる 測色による色差を図8に示す.試験機関による違いは ように規定し,常温重合レジン(ユニファーストトラッ 測色方法,浸漬条件の違いによると考えられた.コー ド,ジーシー)を直径6mm高さ6mmになるように ヒーではいずれの試験片も色差は5以下であったが,カ 盛り上げた.これを37℃の精製水に24±1時間保管後 レー浸漬ではVLPとESTの色差は10以上を示した. にせん断試験をクロスヘッドスピード1mm/minで行 い,接着強さを求めた.試験機関1では万能試験機(1125, インストロン),試験機関2では万能試験機(1123,イ 7.吸水量,溶解量 吸水量,溶解量はISO1567に準じて行った.直径 ンストロン)を用いた.試験片数はそれぞれで5個ずつ 50mm,厚さ0.5mmに仕上げた円板試料を試験片とし た.試験片の直径は3か所の平均,厚さは中央と円周部 とした. を4等分して計5か所測定して平均を求め各試料の体積 試験結果を図7に示す. PCB,EST,PMMAでは破壊面を観察すると包埋し (V)を求めた. 試験片を37±1℃の恒温器中のデシケータ中で24時 ている義歯床用材料に凝集破壊が認められたが, 間保存後,23±1℃に保ったデシケータ中で60分間保 VAL,ACTでは義歯床用材料と常温重合レジンとの界 存後秤量しこの質量を(ml)とした.0.2mg以内の恒 面破壊を示していた. 量になった後37±1℃の水中に7日間浸漬後試料を取 PMMAのせん断強さと他の試験片を比較すると, り出し,ガーゼで水分を拭き取り15秒間空中で振り, PCBとESTは1.5倍であったが,VLPとACTはほと 水中から取り出してから60秒後秤量し,この時の質量 んど接着していなかった. 着色試験は30×10×2mmの板状試験片を用いた. を(m2)とした.その後37±1℃の恒温器中のデシケー タにいれ恒量にした質量を(m3)とし,以下の式で吸 水量および溶解量を求めた.それぞれの製品について3 37℃のコーヒーもしくはカレーに24時間浸漬前後の試 回,各々の試験機関で試験し平均値を求め,吸水量 験片を,白色板上に測色計にてCIELabを求め,浸漬前 (#g/mm3),溶解量(似g/mm3)とした。 6.着色試験 後の色差(4E)を求めた.試験片数は5個ずつとした. 着色は飲み物による影響をコーヒー(インスタント コーヒー)で,食品による影響をカレーで調査した.試 験片は両面とも#1200の耐水研磨紙で研磨し測定面と した.測定面は浸漬前後で同一とした. インスタントコーヒー(ネスカフェー159)を1リッ トルの温水で溶き浸漬液とした(コーヒー約29で 140mlの割合).コーヒーへの浸漬は37℃で24時間で 吸水量=(m2−m3)/V □ 溶解量=(ml−m3)/V 各試験は3回繰り返した.なお,ACTは水より密度 が小さいために,浮き上がらないように重しを負荷して 保管した. 試験結果を図9に示す.吸水量はVLPとESTは他 ● NエエーEユect工onieT.i肘垂rvServ垂② rheJapaneseSOcietyEo工DentalMateriaユsandDevices(JSDMD) 166 歯科材料・器械Vol、28No.3 5 0 I ヨ 巨 鰯 IF元弱I VLPPCB 鋤 !−壷 ︵四一、︶測釦e瓢症廻哩 0 ‘=鰯 03 02 01 0 4 ︵国、︶柵組e巡程遅哩 0 0 40 30 21 5 0 ロ試験機関1画試験機関2 口試験機関1 田試験機関2 0 ACTESTPMMAVLPPCB ACTESTPMMA 図8コーヒー(左)もしくはカレー(右)浸漬後の色差 5 0 ロ試験機関1圃試験機関2 ︵箔巳へ画。︶咽終寄 00 4 30 20 1 ︵ぬ昌一へ、1︶咽鍵鍵 0 40 30 20 1 5 0 口試験機関1四試験機関2 鰯 王 ● ■ − 毎 列 、 面 0 − . ‘ = 可 ロ 同 弱 , 0 肩 髪FyZリ 雪 ■■■ 巳● ●●■ 0 ● I , & VLPPCBACTESTPMMAVLPPCBAC1、ESTPMMA 図9吸水量と溶解量 の製品より大きいもののPMMAの約1/3であった.溶 また,今回検討した製品の歯ブラシ摩耗は小さく,常温 解量はPMMAより小さな値であった.また,ISO規格 重合レジンとの接着は材料によっては殆ど接着しない. でのType3の要求値は吸水量が最大32に/mm3,溶 また,興味深いことに材料によっては着色しやすいが, 解量が最大1.69/mm3,である.吸水量はいずれの製 吸水と溶解は少ない.今回の測定結果ではノンクラスプ 品の規格の要求値内であったが,溶解量は試験機関1の デンチヤー材料といっても製品により性質が大きく異 PMMAが要求値よりも大きく,他の製品も要求値に近 なっていた. い値のものがあった. 今回の調査項目はあくまで単純形態の試験片を用いた 8.まとめ 短期的な評価結果であり,実際の義歯床の形態とは異 義歯床用材料は咳合時に変形しないように剛性が重要 なっている.臨床使用においては作製した義歯の適合性 は重要であるが今回は検討していない.また,本報告の とされていた.この考えに基づけば,今回調査した製品 と同じ剛性を求めるのであれば義歯床の厚みが必要とな 曲げ試験は単純な静的試験の結果である.繰り返しの負 荷や,取り外しによる変形を考えると動的な機械的性質 や粘弾性的性質の評価も必要と考えられる.また,熱可 る.ノンクラスプデンチャーでは歯頚部のアンダーカッ 塑性樹脂は環境温度により容易に物性が変化することが トに維持を求めるが,維持力は歯頚部の義歯床の厚さ, 考えられるので,この点についても今後の検討が必要で 歯頚部のアンダーカット量,義歯床用材料の弾性係数に あろう. より予想することは可能である.しかし,どの程度の維 今回の結果から臨床応用の是非を直ちに判断すること は難しいと考えているが,本報告がノンクラスプデン は今までのPMMAよりは弾性係数が小さく変形しやす いものの破断しなかった.今回検討した製品にPMMA 持力が適切であるのかは今後の検討が必要と思われる. ● Nエエ.--ElectzOnicT.ihra工vse工vice ● rheJapaneseS◎cietyE◎工DentalMate工ia1sandDevices(JSDMD) ノンクラスプ用デンチャー材料の基礎的物性 チャー用材料の基礎的物性を理解する上での参考になれ 1 6 7 Prosthodont2004;13:83-89. 6)YunusN,RashidAA,AzmiLL,Abu-HassanMI・Some ば幸甚である. flexuralpropertiesofanylondenturebasepolymer、J OralRehabil2005;32:65-71. 謝 辞 7)佐藤吉則,丸尾貴之,永井栄一,大谷賢二,秋田尚典,江 間誠一郎ほか.義歯床用スーパーポリアミドに関する研究 本報告にあたり試験片の作製にご協力いただいたバル プラストジャパン,東伸洋行,ウエイブレングス,ニッ シン,ジーシー,和田精密ならびに日本補綴歯科学会の ご担当の服部正巳教授(愛知学院大学)と竹内一夫准教 授(愛知学院大学)に感謝いたします. 表面粗さについて.日歯医療管理誌2005;39:352-357 8)勝俣友樹,北燥了,井野智,演野奈穂,渡辺智良, 近藤永ほか.高弾性ナイロン樹脂による床用レジンの色 調安定性.神奈川歯学2007;42:140-145 9)KatsumataY,HojoS,InoS,HamanoN,WatanabeT, SuzukiYetal,Mechanicalchamcterizationofaflexible nylondenturebasematerial,BullKanagawaDentCol 文 献 1)LaiYL,LuiHF,LeeSY、Invitrocolorstability,stain T e s i s t a n c e , a n d w a t e r s o r p t i o n o f f O u r T e m o v a b l e g i n g i v a l flangBmaterials、JPmsthetDent,2003;90:293-300. 2)林克哉,横山菜穂子,町博之,内田多恵子,小野高裕, 野首孝詞.義歯用高分子材料としてのポリアミド樹脂(ナ イロン系)の物性について(第1報)吸水特性及び寸法 変化.日歯技工誌2004;25:80-86. 3)横山菜穂子,町博之,林克哉,内田多恵子,小野高裕, 2007;35:177-182. 10)細井紀雄.2008年度歯科器材調査報告ポリアミド系合 成樹脂(ナイロン系)義歯の理工学的性質について.日本 歯科医師会2008 11)細井紀雄.ノンクラスプデンチヤー.DE2009;168:1-4. 12)根本君也,西山典弘.ノンクラスプデンチャーの素材につ いて.DE2009;168:13-16 13)TunerJW,RadfordDR,MartynS、Flexuralproperties andsurfacefinishingofacetalresindentureclaspsJ Prosthodondl999;8:188-195. 野首孝詞.義歯用高分子材料としてのポリアミド樹脂(ナ 14)WuJC,LattaGHJr,WicksRA,SwordsRL,Scarbecz イロン系)の物性について(第2報)表面硬さならびに M,Invitrodeformationofacetylresinandmetalalloy 引張り強さ.日歯技工誌2004;25:87-92 removablepartialdenturedirectretainers,JProsthet 4)町博之,林克哉,横山菜穂子,内田多恵子,小野高裕, 野首孝詞.義歯用高分子材料としてのポリアミド樹脂(ナ イロン系)の物性について(第3報)曲げ特性ならびに 疲労特性.日歯技工誌2004;25:93-99. 5)ParviziA,LindquistT,SchneiderR,WilliamsonD, BoyerD,DawsonDV、CompaIisonofthedimensional accuracyofinjection-moldeddenturebasematerials tothatofconventionalpressure-packacrylicresin.』 Dent、2003;90:586-590. 15)吉田隆一.2007年度歯科器材調査報告クラスプ用材料 の維持力と疲労ならびに変色試験.日本歯科医師会2007 16)清水友.軟性樹脂によるノンクラスプデンチャー.DE 2009;168:5-8 17)ISO20795-l:2008,Dentistry‐Basepolymers‐Partl: Denturebasepolymer NエエーEユectronicT,ihrarvSeェviee
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