第 23 回卒後教育セミナー COPD の“肺外”疾患管理の新知見 室 繁郎 京都大学大学院医学研究科呼吸器内科学 COPD は、典型的には比較的高齢の喫煙経験者に発症する疾患で、安定期でも、血中 TNFα 、IL-6、高感度 CRP などが高値である。これら全身炎症の影響もあってか併存症を複数 持つことが多く、また、気流閉塞と動脈硬化、肺気腫と骨密度、GERD 症状と COPD 増悪、海 外データでは消化性潰瘍と COPD の死亡リスク上昇の関連が報告され、COPD と併存症の相互 連関が次々と明らかになってきている。 一般的に併存症の治療方針は COPD の有無に左右されず、かつては禁忌とされたβ遮断薬 も、併存する心血管系疾患で適応があれば、投与が予後に良好な影響を与えることが報告さ れた。本邦の COPD ガイドラインでは、上記に加えて、睡眠障害、骨格筋機能障害、抑うつ、 心・血管疾患、などの併存頻度も高いことも指摘されてきたが、不眠に対するジアゼパン系 薬剤導入投与が COPD 増悪に関連するという報告も近年なされた。 京大病院 COPD 外来通院患者 130 名の最近の横断調査・予後調査でも、多彩な併存症が存 在し、COPD の予後は合併症・併存症に大きな影響を受けていた。その中で、最も強い予後 関連因子は身体活動性関連指標であることが示唆され、COPD を全身性疾患として診療する ことの重要性を再確認させる結果であった。このような“肺外”新知見が近年になって増え ており、COPD 診療における併存症の管理指針は今後もアップデートされていくと思われる。
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