【Global Talent Management】①海外での労働基準法の適用

Social Insurance Consulting Firm
EOS
Firm News
Firm News Vol. 73 Apr’16
Contents
 【法改正】 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大について
 【Global Talent Management】①海外での労働基準法の適用
 【人事課題の考察】
女性、シニア活用における取り組み課題
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【法改正】 短時間労働者に対する社会保険の適用拡大について
2016(平成28)年10月より、健康保険及び厚生年金保険の適用範囲が拡大されます。
これは、2012(平成24)年8月22日に公布された、「公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律」
に基づくものとなっておりますが、これにより、労働条件に関係なく全事業所の全従業員が健康保険及び厚生年金保険の適用を受けることになるというので
はなく、一定の要件に該当した労働者が、一定の要件に該当する事業主に雇用されている場合についてのみ、新たに健康保険及び厚生年金保険の適用を
受けることとなってまいります。
以下では、新たに適用を受けることとなる要件を確認した後、各要件の詳細を説明させて頂きます。
1.要件
今回の法改正により、新たに健康保険及び厚生年金保険の適用を受けることとなる労働者及び企業の要件は、以下の通りとなります。
①
②
③
④
⑤
1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
当該事業場に継続して1年以上使用されることが見込まれること。
報酬の月額が88,000円以上であること。
学生等でないこと
通常の労働者及びこれに準ずる者が常時500人を超える事業所であること。
現状、短時間労働者の健康保険及び厚生年金保険の適用については、「1日又は1週の所定労働時間及び1月の所定労働日数が当該事業所において同種
の業務に従事する通常の就労者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上である就労者については、原則として健康保険及び厚生年金保
険の被保険者として取り扱うべきものであること。(昭和55年6月6日各都道府県保険課(部)長宛内かん )」という4分の3ルールの下に、加入するか否かの判
断が行われておりますので、現状の要件と比較すると、今回の改正により、多くの短時間労働者が、健康保険及び厚生年金保険の適用対象になることが、想
像出来ます。
以下では、上記各要件の現時点における考え方等の詳細について、見て行きたいと思います。
2.各要件における具体的内容
(1) 1週間の所定労働時間が20時間以上であること
当要件の原則としては、雇用保険における取扱いと同様とすることとされております。
そして、「 1週間の所定労働時間が20時間以上」という適用基準を満たすか否かは、「所定労働時間」により判断することとされており、具体的には、「就業規
則、雇用契約書等により、その者が通常の週に勤務すべきこととされている時間をいう」とされております。
また、次のような週の所定労働時間が算出しがたい場合においても、雇用保険における取扱いと同様とするとされております。
① 所定労働時間が月単位で決定されている
→ 1ヶ月の所定労働時間を12分の52で除して算出する
② 特定の月の所定労働時間に例外的な長短がある場合
→ 特定の月を除いた通常の月で上記により判断する
③ 所定労働時間が1年単位で決定されている
→ 1年間の所定労働時間を52で除して算出する
④ 1週間の所定労働時間が短期的かつ周期的に変動する場合 → 加重平均により算出
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(2)当該事業場に継続して1年以上使用されることが見込まれること
「1年以上使用されることが見込まれること」とは、次の場合をいうこととされております。
① 期間の定めがなく雇用される場合
② 雇用期間が1年以上である場合
③ 雇用期間が1年未満であるときは、次のいずれにも該当する場合を除き、被保険者となる。
(a) 雇用契約書その他書面においてその契約が更新される旨又は更新される場合がある旨明示されていないこと
(b) 当該事業所において同様の雇用契約に基づき雇用されている者について更新等により1年以上雇用された実績がないこと
(3)報酬の月額が88,000円以上であること
「報酬の月額が88,000円以上であること」とは、週給、日給、時間給を一定の計算方法により月額に換算した額が、88,000円以上である場合をいい、
以下に掲げるものは除くこととされております。
① 臨時に支払われる賃金及び1月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与等)
② 所定時間外労働、所定休日労働及び深夜労働に対して支払われる賃金(割増賃金等)
③ 最低賃金法において算入しないことを定める賃金(精皆勤手当、通勤手当及び家族手当)
(4)学生等でないこと
大学、高等学校、専修大学のほか、各種学校(修業年限が1年以上の課程に限る)、各資格職の養成学校などの教育施設に在学する生徒又は学生は
適用除外とされており、一方、以下に掲げる者は、被保険者になるとされております。
① 卒業見込証明書を有するものであって、卒業前に就職し、卒業後も引き続き当該事業に勤務する予定の者
② 休学中の者
③ 大学の夜間学部及び高等学校の夜間等の定時制課程の者
(5)通常の労働者及びこれに準ずる者が常時500人を超える事業所であること
まず、「通常の労働者及びこれに準ずる者が常時500人を超える事業所」を「特定適用事業所」といい、特定適用事業所に使用され、既に説明させて頂
きました①から④の要件に該当する短時間労働者の方については、今回の社会保険の適用拡大に該当することとなります。
この「特定適用事業所」とは、①事業主が同一である一又はニ以上の適用事業所であって、②通常の労働者及びこれに準ずる者の総数が、③常時、
500人を超えるもの、とされております。
上記「特定適用事業所」の要件の②に記載した「通常の労働者及びこれに準ずる者」は、現行の適用基準による被保険者とするとされております。そ
のため、現状、短時間労働者を含む全従業員数が500人を超える場合であっても、直ちに、特定適用事業所に該当するわけではありませんので、注意
が必要となります。
なお、現在国会において、この「500人を超える場合」の適用を「500人以下の場合であっても、労使の合意に基づき、企業単位で短時間労働者への適
用拡大を可能」とする法案が審議されている状況となっております(法案成立の場合の施行日は、2016(平成28)年10月1日予定。)。
現在の国会における審議状況や既に適用が決定されている企業及び短時間労働者に対するより詳細な取扱い等は、法施行日が近づくにつれ、明確
になるかと思われますので、その際は、必要に応じ、ご紹介させて頂きます。
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【Global Talent Management】 ①海外での労働基準法の適用(日本から海外へ)
経済のグローバル化に伴い、中小企業の中でも海外へ進出する企業も増加し、それに伴い海外で勤務する労働者も増加しています。
そこで、今回から、Global Talent Managementとして、日本から海外へ、そして海外から日本へ出向し勤務する労働者の労務管理の実務対応について、
ご説明させていただきます。
第1回目として、日本から海外へ行き勤務する労働者への労働基準法の適用についてご説明させていただきます。
まずは、事例としていわゆる海外出張の場合、出張中に労働基準法は適用されるでしょうか。この場合は、原則として、日本の労働基準法が適用され
ます。
海外での勤務態様はいくつか考えられますが、①海外出張者、海外研修者のように日本国内の事業主の指揮命令を受け海外で用務を遂行する場合
と、②海外の就労場所で日本の事業主から随時指揮命令を受けることなく、現地の実情に合わせて用務を遂行する海外勤務(海外派遣、海外駐在員や
海外子会社での勤務など)に大別できます。海外派遣労働者に関しては、海外の就労場所が「独立した一の事業」として認められるか否かが適用を受
けるかどうかの大きな判断材料となります(参考資料)。
海外出張の場合、国内の事業主の指揮命令により海外において出張用務を遂行し、その期間中はその用務遂行の方法等において、国内の事業主の
指揮命令を包括的に受けることとなり、海外の就労場所が独立した一の事業として認められる余地が少ないことから、日本の労働基準法の適用を受け
るものと解されます。
一方、海外勤務の場合には、その就労場所が独立した一の事業所であると認められることから、原則として、日本の労働基準法の適用は受けないと
解されます。
しかし、労働基準法の適用について、実務的には、例えば、日本で10年間の勤務実績があり、有給休暇も年間20日ほど付与されている社員が、海外
赴任先では新入社員だからという理由で10日ほどの有給休暇しか与えられないようでは、感情的な問題やモチベーション低下に繋がってしまう場合が
ありますので、実際には、給与や有給休暇については最低でも赴任前の条件を保証する契約で海外赴任させるケースが一般的のようです。
また、仮に労働基準法が適用されない事業であっても、契約当事者が日本の法律によると定めた場合は、労働基準法の効力が及ぶものとされており、
国外における労働基準法違反についての罰則適用はなくとも、労働者は使用者の民事上の責任を追及することは妨げないとされていることから注意が
必要です。
<参考資料>
海外派遣労働者に対する法の適用(昭25.8.24基発776号)
(イ)日本国内の土木建築事業が国外で作業を行う場合で当該作業場が一の独立した事業と認められない場合には、現地における作業も含めて当該
事業に労働基準法は適用される。
(ロ)労働基準法違反行為が国外で行われた場合には、刑法総則の定めるところにより罰則は適用されない。ただし日本国内にある使用者に責任があ
る場合にはこの使用者は処罰される。
(ハ)前記(ロ)に述べた如く使用者が国外において労働基準法違反行為をしても罰則の適用はないが、その場合でも労働者は使用者の民事上の責任
を追及することを妨げない。
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【人事課題の考察】
女性、シニア活用における取り組み課題
女性
では、女性やシニアを如何に活用していけばよいか!前回号ま
でで確認してきたそれぞれの現在の活用状況から紐解き、検討し
女性活用のための企業の取組課題
ていく必要があります。検討のポイントとしては、女性については、
・育児休業復帰へ向けた円滑な復帰施策、早期復帰支援
『育児からの復帰後の活用』、シニアについては、『継続雇用の評
・女性の働き方への労働時間制度整備(短時間勤務など)
価やシニアとしての役割の明確化』といったところが中心になりま
・時短勤務者および同じ職場の同僚への配慮
す。それでは、それぞれ確認します。
・育児休業復帰後の女性が同僚・部下として引き続き働くことへの
社内風土・社員意識改革、教育
女性活用における企業の取組課題としては、出産・育児以降の
育児休業復帰へ向けた円滑な復帰施策、早期復帰支援がまずは
重要です。育児休業はしっかり取得してもらい、早く復帰して活躍
シニア
することを志せるような施策を検討することがポイントです。また、
高年齢者活用のための企業の取組課題
女性の働き方への労働時間制度 (短時間勤務など)の整備や、
・職務の再設計によるシニア層が活躍できる職務・役割の創出
時短勤務者および同じ職場の同僚への配慮(お互いに不信感が
・シニアな働き方への労働時間制度整備(短時間勤務など)
生まれないような配慮)によって、育児休業復帰後の女性が、同
・安全衛生・健康管理面の配慮
僚・部下として引き続き働くことについて、当たり前のことであると
・定年再雇用後のシニアが同僚・部下として引き続き働くことへの
いった社内風土の醸成や社員意識改革、そのための教育が必要
社内風土・社員意識改革、教育
です。
一方、シニア活用における取組課題としては、継続雇用期間にお
いて、職務の再設計により、シニア層が活躍できるような、職務・役 【ダイバーシティーマネジメントの思考スキーム】
割を作ることです。シニアとしての特性を活かすことが肝要です。ま
た、労働時間制度 (短時間勤務など)の整備や、安全衛生・健康
管理面の配慮、定年再雇用後のシニアが同僚・部下として、引き続
き働くことが当たり前であるといった社内風土の醸成や社員意識改
革、そのための教育が必要になります。
昨今では、ダイバーシティマネジメントという考え方、つまり女性・
シニアの特性を戦略的な経営資源として積極的に活用して、企業
価値向上に繋げることを、経営戦略に掲げるような企業も出てきて
います。そのためには、働き甲斐のある職場環境の構築こそが、
基盤になりますので、この要素を考慮に入れた各人事施策を検
討・実施することが重要になります。
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