成 瞑 大 学 理 工 学 研 究 報 告
J.Fac.Sci.Tech.,SeikeiUniv.
Vol.52No.2(2015)pp.13-18
複 雑 系 モ デ ル に よ る分 散 型 太 陽 光 発 電 普 及 シ ミュ レー シ ョン
村上
朝 之*1
ComplexSystemSimulationonthePenetrationofDistributedPhotovoltaics
TomoyukiMURAKAMI*1
ABSTRACT:Wepredictthesaturationphaseofbuilding-integratedphotovoltaics(PV)fbrwhichcomplexsystemmodelcoupledwithelectricpowerflowanalysisarecarriedout.Thedetailedpowerflowanalysis
determinestheprobabilityofreversecurrentoccurrenceduetotheadditionalPVinstallationinatwodimensional6.6kV-scaledistributionnetworkconsisting2500grid-connectedindividualcustomers.The
agent-basedsimulationincludingthecustomeragentandgovemmentagentdescribesthetime-dependent
behaviorofthePVpenetrationinanartificialsociety.Growthofthebuilding-integratedPVisassistedbya
batteryinstallationasareservoirfbrthereversecurrent.However,theexcessivepromotionfbrthePV
penetrationbythegovernmentresultsinincreaseinthecostofreversecurrentcare.
Keywords:Complexsystem,agent-basedmodel,photovoltaics,powerflowanalysis
(ReceivedSeptember29,2015)
1.は
こ こで は,分 散 型(家 庭 用)太 陽 光発 電 の 普 及 問題 を
一 つ の切 り 口 と して ,電 気 ・電 力 工学 等(便 宜 上"ハ ー ド"
じめ に
近 年,世 界 的 に,地 球 温 暖 化 を防 止 す る観 点 か ら再 生
な科 学 と呼 ぶ)と 社 会 学 等(便 宜 上"ソ フ ト"な科 学 と呼
可 能 エ ネ ル ギ ー が 注 目 され て い る。 我 が 国 にお い て は,
ぶ)と
2030年
報 伝 達 構 造 ・社 会 心理 構 造 等 に着 目す るシ ミ ュ レー シ ョ
時 に 再 生 可 能 電 源 導 入 量 の 大 幅 引 き上 げ が 目標
され て い る(電 源 比 率 目標 値20%台
可 能 電源 とはCO2排
ネル ギ ー ネ ッ トワー ク構 造 ・情
ン モデ リン グ を行 う。
半 ば)1)。広 義 の 再 生
あ る住 宅地 域 に 局所 集 中 的 に 大 量 に(例
出 を増 大 させ な い もの を指 す が,日
本 に お い て は 太 陽 光 発 電(以
を組 み合 わせ,エ
降 本 稿 で は,PV
えば 数 百 数 千
軒 単位 で)家 庭 用 太 陽 光 発 電 装 置 が 系 統 連 系 され た場 合,
太 陽光 発 電 装 置 を持 つ需 要 家 か ら送配 電 系 統 に 対 して 大
(photovoltaics)と 記 す)へ の期 待 が 特 に 高 い。
太 陽 光発 電 を は じめ 再 生 可 能 エ ネ ル ギ ー の 大 量 普 及 し
量 の電 力(余 剰 電力)が 供 給 され る可 能性 が あ る。 この
た 先進 的 な エ ネ ル ギ ー ・社 会 シ ス テ ム を設 計 す るた め に
場 合,通
は,設 計者 は 極 め て 複 雑 な 系 を取 り扱 わ な くて は な らな
か ら需 要 家 へ と電力 供 給 が 為 され る)に 対 して,逆 向 き
い。 これ は 人 間 社 会 の 営 み が,そ の 多 様 性 ・反 応 性 の 高
の電 力 潮 流(逆 潮 流)が 発 生 す る。 過 度 の 逆 潮 流 現 象 に
さゆ え に,本 質 的 に詳 細 な予 測 が 困難 で あ る た め で あ る。
起 因 して,需 要 家 の受 電 点 電圧 が 電気 事 業 法 で 定 め られ
対 象 とす るシ ス テ ム を都 市 レベ ル に 限 定 した と して も,
た規 定電 圧 の 上 限値107Vを
関 連 す るす べ て の利 害 関係 者,す べ て の 工 学 的 知 識 を包
ンバ ー タ が 出力 を 自動 的 に抑 制 し電圧 を超 過 しな い よ う
含 す る よ うな 設 計 の試 み は 現 実 的 で は な い 。した が っ て,
にす る,す な わ ち需 要 家太 陽 光発 電 か らの 送 配 電 系 統 に
複 雑 シ ス テ ム を 記 述 す る上 で 適 切 な 粗 視 化 ・モ デ ル 化 を
対 す る 出力 電 力 が抑 制 され る可 能性 が あ る。 出 力 抑 制 下
行 うこ とが 重 要 で あ る2)。
で は,需
*1:シ
ステ ムデザイ ン学科
常 の"順 方 向"の 電 力潮 流(大 規模 集 中発 電 所
超 過 す る場 合,発 電機 の イ
要 家 は 売 電 を行 うこ と が で き な い 「
機 会損 失
(opportunityloss)」を被 る こ とに な る。
一 般 に太 陽 光発 電装 置 の設 置者 は 地域 の 電 気 事 業者 と
准 教授
逆 潮 流 に よる 売 電 契約 を締 結 し投 資 コス トの 回 収 を図 る
([email protected])
一13一
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
Vol.52No.2(2015.12)
が,上 記 の よ うな 出 力 抑 制 が 生 じる場 合 には,太 陽 光 発
ヨ ン 」 と を 融 合 させ た ハ イ ブ リ ッ ト数 理 モ デ ル を構 築 す
電 の 実 質 的 な稼 働 率 の 低 下 に つ な が り,稼 働 率 の 低 下 は
る 。 図1に,モ
デル の概 念 図 を示 す 。
投 資 コス ト回 収 期 間 の 不 可 実 性 を高 め る こ と にな る。 こ
の こ とは設 置者 の 不 満 に つ な が り,社 会 全 体 が 抱 く太 陽
2.1電
力潮 流 解 析
光発 電 に 対 す る信 頼 性 を 損 ね る可 能 性 が あ る。 ま た 同 時
対 象 とす る配 電 系統 は,電 気 の流 れ で 考 え る と電 力 系
に 潜在 的 な 太 陽 光 発 電 導 入 者 に 対 す る心 理 的 ・経 済 的 な
統 の 中 で は 下流 に位 置 し,設 備 数 が膨 大 で あ る とい う特
障壁 とな りか ね ず,太 陽 光 発 電 そ の もの の 普 及 が 大 き く
徴 を有 す る。 住 宅 地域 や 商 業 地域 へ の エ ネ ル ギ ー 供 給 を
阻 害 され る こ とが 懸 念 され て い る。
役 割 と して担 い,我 々 の 日々 の 生活 と巨 大 な 電 力 シ ス テ
ム との イ ン タ ー フ ェ ー ス に あ た る。 配 電 系 統 は1フ
上 述 の 問題 を 取 り扱 う上 で は,電 力 送 配 電 系 統 網 ・家
ィー
庭 用 太 陽 光発 電 装 置 ・系 統 連 系 補 助機 器 等 に関 す る主 に
ダ あ た りの低 圧 需 要 家 の数 は2000軒,柱
電 気 電 力 工 学 の 知識 に よ り記 述 され る 「
工学的要素」の
だ け で100を
み な らず,対 象 とす るシ ス テ ム(こ
流 計 算 に お い て は,全 て の柱 上 変圧 器 接 続 点 等 を考 慮 す
こで は 街 レベ ル)を
上 変圧 器 の数
超 え る場 合 が あ る。 した が っ て,通 常 の潮
構 成 す る各 需 要 家 が 太 陽 光 発 電 を許 容 して い く様 相 な ら
る こ とな く,配 電線 を い くつ か の 区 間 に 分 けて,そ の 区
び に社 会 的 な 導 入 奨 励 施 策 の 寄 与 等 の 「
社会学的要素」
間 内 の負 荷 を 区 間 の 両端 ノー ドに集 中負 荷 と して集 約 す
を組 み 合 わせ る必 要 が あ る。
る手 法 を とる。 と ころ が,太 陽 光発 電 に加 え,将 来 的 に
導 入 が予 想 され る蓄 電池,燃 料 電 池,小 型 風 力 な ど,多
2.モ
デ リング
様 な需 要 家 の 考慮 や それ らの相 互 作 用 を 考 え る と,負 荷
を集 約 せ ず に 一 軒 一 軒 取扱 い,正 確 な 挙 動 を再 現 す る こ
家 庭 用 太 陽 光発 電 装 置 大 量 導 入 に 対 して,あ
とが必 要 に な る(図2)。
る特 定 の
目標 普 及 率 を 掲 げ,そ の達 成 に 関す る検 討 を行 う上 で は,
対 象 とす る領 域(こ
こで は街 レベ ル の住 宅 地)内 の含
分 散型 電源 の 参 入 を 許 容 す る電 力 ネ ッ トワー クの 工 学 的
まれ る個 々 の低 圧 需 要 家 を す べ て 考 慮 した 住 宅 地 とい う
側 面,お
面 的 に広 が る場 の 電力 需 給 状 況 と,電 力 送 配 電 ネ ッ トワ
ー ク に お け る 送 電 端 か ら需 要 端 ま で の 多 数 の構 成 要 素
よび 当 該 分 散 型 電源 を導 入 す る人 々(社 会)の
心 理 的側 面 の 両 方 を 考 慮 す る必 要 が あ る。こ こで は,「工
学 的 要 素 を 記 述 す る電 力 潮 流 シ ミ ュ レー シ ョン」 と 「
社
「高圧 配 電 線 」 「
分岐個所」 「
柱 上 変圧 器 」 お よび 「家 庭
会 学 的 要 素 を模 擬 す るマ ル チ エ ー ジ ェ ン トシ ミュ レー シ
用 太 陽光 発 電 装 置 」「出 力 抑 制 に伴 う機 会 損 失 を補 償 す る
罫 搬
行動 規 範
への 反 映
釦ii
》
》・
齢マ
エ ー ジ ェン ト自律 的 行 動 と
電 力 ネ ットワ ー ク状 況 の
8
8
888
8'
8'8
8
◎=_聾
8 9
8 ・
ε 8 ・8
住 宅地 規模(含 数千 軒)
エネル ギー ・
社 会システム
リン ク
蝋
一
号
軸
配 電 網 電圧
非抑 制 電力 量等
物理 量 の空 間分 布
1勧
嚇回
ヰ
帖 回il
粘 匝]1・
醐.
十
醐.
蝋.
帖 匝]
粘L巫 」 蝋・匝]
十
嚇{
塩
肌 匝]
帖 匝]
潮 流シミュレー シ・ン1
図1ハ
イ ブ リ ツ トモ デ ル概 念 図
一14一
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
機 器 」の 連 携 モ デ ル を開 発 す る(図1下
方,図2参
照)。
Vol.52No.2(2015.12)
図3に 人 工社 会 の エ ー ジ ェ ン ト相 関 モ デ ル概 念 図 を示
ま た,配 電 用 変 電 所 と住 宅 との 幾 何 的 な 位 置 関 係 を考 慮
す 。ま た 後 述 す る図4に,正 方 形 の二 次 元 空 間 の 中 に2500
に入 れ る。
軒 の需 要 家 工 一 ジ ェ ン トが規 則 正 し く隣接 した 幾 何 を示
す 。 画 面 上 に状 態 が表 示 され るの は 需 要 家 工 一 ジ ェ ン ト
2.2エ
ー ジ ェ ン トシ ミュ レー シ ョン
の み で,為 政 者 工 一 ジ ェ ン トは概 念 と して のみ 存 在 す る。
複 雑 系 モ デ ル の ひ とつ で あ るマ ル チ エ ー ジ ェ ン トシ ミ
需 要 家 工 一 ジ ェ ン トは 次 の4つ の状 態 を もつ。
ュ レー シ ョ ンを 用 い た モ デ リング を 行 う。 図1に 示 す よ
●So:PVを
設 置 して い な い。
うに,主 な エ ー ジ ェ ン トは 多 数 の 需 要 家 で あ り,2次
元
●Sl:PVを
設 置 。 出力 抑 制 は発 生 してい ない 。
電 カ ネ ッ トワー ク空 間 に お い て 生 活 し,家 庭 用 太 陽 光 発
●S2:PVを
設 置 。 出力 抑 制 が発 生 してい る。
電 装 置(図 中PVと
●S3:PVと
蓄 電 池 を設 置 。
記 述)導 入 に 関す る 固有 の意 思 ・行 動
様 式 を 持 つ。 そ の 他 に,国
・自治 体(為 政 者)エ ー ジ ェ
ま た,需 要 家 工 一 ジ ェ ン トは3つ の抽 象 的概 念 「印 象
ン トが 存在 す る。 国 ・自治 体 工 一 ジ ェ ン トは,需 要 家 工
値 」,「電 力 環 境 状 態 値 」 お よび 「状 態履 歴 」 をパ ラメ ー
一 ジ ェ ン トの よ うに 相 互 作 用 ・自律 行 動 を 行 わ な い 。
タ と して 有 す る。 印象 値 はPVを
導 入 す る欲 求 の 大 き さ
需 要 家 工 一 ジ ェ ン トの モ デ リン グに あ た っ て は,図3
を表 わ し,周 囲 か らの影 響 に よ り増 減 す る。 図3に 正負
右 上 部 に 示 す よ うに,家 庭 用 太 陽 光 発 電 装 置 導 入(購 買
の影 響 効 果(黒 矢 印 に対 応 した数 値)の 相 互 作 用概 念 図
意 思 決 定)動 機 と して の コス ト意 識 ・宣 伝 効 果 ・環 境 意
識 な どを モ デ ル 化 し,エ ー ジ ェ ン トの 意 思 ・行 動 様 式 に
を示 す 。 印象 値 が増 加 す る作 用 と して,周 囲 の 需 要 家 工
一 ジ ェ ン トか らの影 響 お よび 為 政者(政 府)エ ー ジ ェ ン
反 映 させ る。 さ らに 家 庭 用 太 陽 光 発 電 装 置 既 設 近 隣 へ の
トか らのPV設 置 促 進 宣 伝 効 果 が あ る。前者 は,状 態Slに
シ ン ク ロ願 望 ・機 会 損 失 が もた らす 導 入 へ の 抵 抗 感 ・こ
あ る需 要 家 工 一 ジ ェ ン トか らの(PV設
れ に 対 す る補 償機 器(こ
影 響 で あ る。これ は,隣 家 がPVを
こで は 蓄 電 池)導 入 に よ る機 会
置 に向 けた)正 の
設 置 した こ と に対 す る
損 失 回避 法 ・国 や 自治 体 に よ る導 入 奨 励 キ ャ ンペ ー ンの
模 倣 欲 求 や,PVの
存在 を モ デ ル 化 す る。 この モ デ リン グに よ り,ネ ッ トワ
ー ク 系 統 全 体 の 電 力 需 要 バ ラ ンス ,需 要 家 工 一 ジ ェ ン ト・
ェ ン トか らみ た視 野 半径(周
政府 工 一 ジ ェ ン トの 挙 動 に 拠 る社 会 心 理 ・消 費 心 理 動 向
トか ら影 響 を受 け るか)を 意 味 す る。 一 方,後 者 は 政府
の 変遷,情 報 の 規 模(近 隣 需 要 家 同 士 の 交 換 す る"狭 い"
が 家 工 一 ジ ェ ン トに 対 しPV導
情 報,国
して い る。 そ の 際,政 府 は 電 力 会社 工 一 ジ ェ ン トか ら家
・自治 体 が 提 供 す る"広 い"情 報)に 応 じ,ボ
普 及 を後 押 しす る ロコ ミ効 果 を 表 現
して い る。図 中のFOV(Fieldofview)と
は,被 影 響 工 一 ジ
囲何 軒 の 需 要 家 工 一 ジ ェ ン
入 を促 す 宣 伝 効 果 を 表 現
トム ア ップ 的 相 互 作 用 に よ り創 発 され るマ ク ロな 挙 動 が
工 一 ジ ェ ン ト毎 の 出力 抑 制 の発 生 条件(電 力 環 境 状 態 値)
定 量 的 に把 握 可 能 とな る。
に 関す る情 報 を得 る もの と した。 な お 前 述 した よ うに,
政 府 工 一 ジ ェ ン トは概 念 と して 存在 す るた め,宣 伝 効 果
Detailofalowvoltagebanknetwork
を 与 え る範 囲 は視 野 半径 と して 定 義 す るの で は な く,社
Qustomeragent×15
r,E-一 一一 一 一一 一一 一 一一 一一 》I
会 に 存 在 す る状 態Soか
Pole-mounted
t「ansfo「…
らあ る確 率 で ラ ン ダ ム に抽 出す
る もの と した。 印象 値 を低 下 させ る(PV導
Σ ⑥
入 の 意欲 を低
,、9erviceline
6750/105
Customeragent×5
.●1
Power
distribution
δ 萄
蔦
▼萄
萄
蕊
trans.
↑1(F・V・1)
/
Tr
Tr
一〉
轍ゆv
ノ
TrTr
囲
Tr
PV設 置
出 力抑制 未発生
50m50m50m50m50m
図26.75kV一
系 統12500需
図3
要家送電網回路
一15一
■
＼ 一
竺
畠 、
66/66kV
Branchpointノ
.5-40[}[1
鱗← 一
a6kV…e＼
0
為政者介入
PV未 設 置
㍉て
鱗
Outputrestriction
還
PV設 置
出力抑制発 生
●
_●
一
＼
＼
吊》
withPV+Battery
(nointeractioneffect
toparameter1)
囲 円
PV設 置
蓄電池設置
エ ー ジ ェ ン ト行 動 ル ー ル
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
Vol.52No.2(2015.12)
下 させ る)作 用 と して,出 力 抑 制 を被 っ て い るS2が,周
る機 会 損 失 を補 うた め の付 加 的 な 蓄 電 池 を設 置 して い な
囲 のSoへ 負 の影 響 を与 え る。電 力環 境 状 態値 は,自 分 の
い需 要 家 を示 す 。 こ こで 当該 需 要 家 が過 去 の 時 点 で 出 力
周 りのPVの
抑 制 被 っ て い た 可能 性 あ るい は 将 来 出 力 抑 制 を被 る可 能
設 置 密 度 を表 す概 念 で あ り,こ の値 が 高 い
ほ ど出 力 抑 制 が発 生 しや す い こ と を意 味 す る。 ま た エ ー
性 が あ る こ とに 注意 が必 要 で あ る。薄 灰 プ ロ ッ トは,PV
ジ ェ ン トの行 動 は そ の 状 態 履 歴 に 影 響 を受 け る。 これ ら
を設 置 し,現 時 点 で 出力 抑 制 ・機 会損 失 を被 っ て い る需
三 つ の概 念 を 用 い て 以 下 の よ うに エ ー ジ ェ ン トの 行 動 ル
要 家 を示 す 。 黒 プ ロ ッ トは,PV設
ー ル を 定 め る(詳 細 は 参 考 文 献3)) 。
制 に起 因す る機 会 損 失 を被 り,そ れ を補 うた め の 蓄 電 池
●So:PVに
を設 置 して い る需 要 家 を示 す 。
対 す る印 象 値 が 上 昇 す れ ばSlに 遷 移 す る
(閾値 を与 え る)
●Sl:周
図5はPV普
囲 の 印象 値 を 上昇 させ る。電 力 環 境 状 態 値 を
置 を行 い,か つ 出 力 抑
及 率 に関 す る諸 量 の 時 間 変 化 を示 す 。横 軸
(時 間 の経 過)は,計
算 ス テ ップ を示 す が,モ デ ル 全 体
算 出 し,こ れ が 上 昇 す れ ばS2に 遷 移 す る(閾 値 を与
の イ メ ー ジ捉 え るた め に は例 えば 「日」 の 単位 で 置 き換
え る)。
え て も よい 。(a)に お い て,ま ずPV普 及 率 が徐 々 に 上 昇
●S2:周
囲 の 印象 値 を低 下 させ る。電 力 環 境 状 態 値 を
す る こ とが わ か る。 これ に 遅 れ て 出 力抑 制 が発 生 し始 め
算 出 し,こ れ が 低 下 す れ ばSlに 遷 移 す る(閾 値 を与
(b),続 い て 蓄 電 池 を導入 し始 め る需 要 家 工 一 ジ ェ ン トが
え る)。状 態 履 歴 に依 存 しS3に 遷 移 す る(閾 値 を与
増 え て い く(c)。最 終 的 に はPV普
え る)。
計 普 及 率)が90%に
●S3:本
状 態 に遷 移 後,他 の 状 態 へ の 遷 移 は しな い(出
合
これ らの結 果 は,需 要 家 のPV導 入 行 動 様 式 ・社 会 の ダ
力抑 制 は解 消 され る)
3.結
及 率(S1+S2+S3の
到 達 す る(d)。
イ ナ ミク ス が,電 力 潮 流 シ ミ ュ レー シ ョ ンに よ り記 述 さ
果
れ る2次 元 幾何 的(空 間 的)な 配 電 系 統 状 況(図4)に
よ
り大 き く影 響 され る こ とを示 唆 す る。す な わ ち,PVを
設
置 す る 上 は,変 電所 近 隣 に お い て 大 き な メ リッ トが あ る
図4は,PVお
よび 蓄 電 池 設 置 状 況 に対 応 した 社 会 構 造
(出力 抑 制 を被 りに く く,蓄 電 池 の設 置 が 要 され る可 能
の 例 を 示 す。 社 会構 造 の ダ イ ナ ミ クス は エ ー ジ ェ ン トの
性 が よ り少 な い)こ
挙 動 に 依 存 して 時 々刻 々 と変 化 す るた め(後 述 図5),同
図 は,あ
る時 点 に お け る構 造 の ス ナ ップ シ ョッ トで あ る
は詳 細 を省 くが,国
図4左 側 中央 部 に は 変 電 所 が 設 置 され て い る。 白プ ロ
は,PV購
・自治 体 工 一 ジ ェ ン トの施 策(電 力
買取 制 度 等 の様 々 な普 及 方 法)の 強度(需
設 置 の需 要 家 を示 す 。 この 需 要 家 に とって
要家の意思決
定 に 与 え る影 響 の 強 さ)も 社 会構 造 の成 り立 ちに 大 きな
入 設 置 に 至 る意 欲 が 不 十 分 で あ った こ と を示 す 。
濃 灰 プ ロ ッ トは,PV設
こで はPVの 普 及 率)は
様 々 な様 相 を伴 い,ダ イ ナ ミ ッ クに 変化 し得 る。 こ こで
と解 釈 で き る。
ッ トは,PV未
とを示 す 。
エ ー ジ ェ ン ト社 会 の 構 造(こ
影 響 を 与 え る。ま た,社 会 コス ト(PV普 及 の 対 費 用 効 果)
の観 点 か らは 「PVの普及 に 際 して 何 らか の 対 策機 器 が 必
置 を行 い,か つ 出 力 抑 制 に起 因 す
要 で あ る と した場 合,付 加 的 な機 会損 失補 償 機 器,こ
こ
で は 蓄電 池 の 導入 費 用 さ らに は 系 統 改 善 費 用 を含 め,い
か に社 会 コス トを低 減 す るか 」とい うこ とが論 点 とな る。
,V設 置家庭(書1駆
PV未 設置需 要家
導入意 欲不十分
の割合
一 一
PVの み で満 た され
る需要 家 割 合 は
35%
冨60
翻
(b)0
出力抑制を
被る家庭
演1器
冨 器
⊂uSlOmerundgrOUtpUtreStnctlOn
社 会構 造 の ダ イナ
ミックな 揺 らぎ
あ 碧
PV十
pv設 置 需 要 家
、
レ
(c)100
蓄 電 池 ぎ80
股置家庭
麹
,V未設置(畿
出 力 抑 制 を被 る
、
レ
補償機器 設置
(点 線)T60is
CustomerVIIヒhPV◇batterソ
PV十 蓄 電 池 導 入
に 至 る割 合 は
65%
冨60
一
PV普 及率
100%を 達 成
差
40
欝 家庭哩
図4PVお
よ び 蓄 電 池 の 設置 状 況 の例
1。2。3。
図5PV普
一16一
馳
誌
・5。
60
時間 の経過
及率の変遷
成 践 大 学 理 工 学 研 究 報 告
4.む
す び
蓄 電 池 の 高 度利 用 が都 市 規模 の 電 力 負 荷 平 準 化 に寄 与
す るケ ー ス と して,1フ
ィー ダ 規 模 で 電 力 供 給 され る住
宅 地 に お け る家 庭 用 太 陽 光 発 電 の 普 及 プ ロセ ス につ い て
検 討 を行 っ た 。 そ の 結 果,変 電 所 付 近 は 太 陽 光 発 電 装 置
設 置 が 容 易(特 別 な 逆 潮 流 対 策 が 不 要)で あ り,距 離 が
離 れ るに つ れ て そ れ が 困 難 に な る とい う電 力 系 統 の 状 況
の 問題 点 を 明 らか に した 。 ま た,普 及 率 の 数 値 目標 の 達
成 の み を 考 え,安 易 な 補 助 金 の ば らま きや 宣 伝 に よ り太
陽 光 の 導 入 を 急 ぐ と,達 成 時期 を早 め る こ とは で き る が,
結 果 と して 蓄 電 池 の よ うな 対 策機 器 が よ り多 く必 要 にな
る こ とを 示 唆 した。一 方 で,系 統 条 件 を考 慮 す る こ とで,
蓄 電 池 の利 用価 値 が 高 ま り,太 陽 光 発 電 の 効 率 的 な 普 及
が 実 現 で き る可 能性 を も示 唆 した 。 こ こで 得 られ た 知 見
は,太 陽 光 導 入 施 策 に 対 し重 要 な 示 唆 を与 え,蓄 電 池 の
高 度利 用 の 可 能性 を 広 げ る。
現 実社 会 に お け る不確 定 要 因(機 器 購 入 の 意 思 決 定 主
体 で あ る個 々 の 需 要 家(世 帯)の 心 理 的 作 用 ・分 散 型 電
源 太 陽 導 入 政 策)を 考 慮 す る場 合 の よ うな 「
小 さな 要 素 ・
互 い に リンク しあ う要 素 」 が 支 配 的 とな る系 にお い て は
トップ ダ ウ ン型 の シ ミ ュ レー シ ョンは 容 易 で な い 。 これ
に 対 し,要 素 間 の 局 所 的 相 互 作 用 をモ デ ル 化 しシ ミュ レ
ー トす る方 法 ,す な わ ち,複 雑 系(ボ トム ア ップ 型)シ
ミュ レー シ ョンア プ ロー チ が 有 効 で あ る こ とを 示 した 。
参考文献
1)例
え ば,総 合 資 源 エ ネ ル ギ ー 調 査 会
長 期 エ ネ ル ギ ー 需 給 見 通 し小 委 員 会
基 本 政 策 分 科 会
・第8回(平
成
27年4H28日)等
2)村
上 朝 之,「 先 進 的 エ ネ ル ギ ー ・社 会 シ ス テ ム の 具 現
化 に 資 す る ハ ー ド な 科 学 と ソ フ トな 科 学 と の 融 合 シ
ミ ュ レ ー シ ョ ン 」,日
本 設 計 工 学 会 誌,マ ル チ エ ー ジ
ェ ン ト シ ミ ュ レ ー シ ョ ン に よ る 複 雑 系 の デ ザ イ ン,
Vol.47,No.12,pp.573-576,2012.1
3)T.Murakami,"Agent-basedsimulationsoftheinfluence
ofsocialpolicyandneighboringcommunicationonthe
adoptionofgrid-connectedphotovoltaics",Energy
ConversionandManagement,Vol.80,pp.158-164,2014.
2.
一17一
Vol.52No.2(2015.12)

9月議会 in 2011

民意の正体