第 期わかやま塾(第 期わかやま塾(第

平成28年 4月 4日
資 料 提 供
担当課
企業振興課
担当者
柏木、城(じょう)
電話
073-441-2760
3月18日開催
第3期わかやま塾(第9回)の概要
第 3 期わかやま塾(第 9 回)を仁坂塾長、中野塾頭(中野BC(株)代表取締役
会長)、宮本師範(中小企業庁 次長)、志賀師範((株)産業革新機構 代表取締役
会長CEO・日産自動車(株) 取締役副会長)、塾生 85 名が出席し、アバローム紀
の国において開講しました。
つきましては、知識編講義、心掛け編講義の概要を報告します。
概
要
○知識編講義「 最近の内外経済情勢と中小企業・小規模事業者施策について」
< 中小企業庁 次長
宮本
聡
師範>
・日本経済の概況についてであるが、アベノミクスによる好循環が着実に進展し
ている状況である。名目GDP・企業収益・株価等の数字は大幅に改善してきて
おり、中小企業の企業収益や倒産件数の数字も改善されている状況である。ただ
し、東証一部上場企業の昨年の 10-12 月期は増収減益の状況である。業種にもよ
るが、新興国の需要減や中国等の供給過剰などが理由として考えられる。
・原油価格下落により 2015 年のエネルギー輸入金額は 2014 年と比べて 9.5 兆円
減少している。それにより、貿易収支の赤字幅も縮小しており、2016 年には黒字
化の可能性もある。
・民間機関による日本経済の今後の見通しについてであるが、2016 年 1-3 月期の
実質GDP成長率は前期比年率+1.4%と予測されているが、予測低位平均では+
0.3%と弱い成長が見込まれている。
・世界経済は、先進国の債務問題→先進国の財政問題→中国をはじめとした新興
国の債務問題へと進展してきた。また、新たな局面として、米国の利上げ開始の
影響や、中国発の危機の連鎖、資源国の停滞などのいくつかのリスクを抱えてい
る状況である。
・将来の不安として大きいのは原油価格の下落の問題である。米国でのシェール
オイルの増産や制裁解除後のイランの増産見通しなどが原因であるが、原油価格
の下落により、資源国の一部でソブリンリスクが高まっている。
・米国の景気変動と利上げに伴うリスクについてであるが、80 年代以降、米国の
利上げ局面では、約半年後に新興国から資本が流出し、通貨危機が生じている。
そのため米国のFRBは利上げに対し慎重であり、場合によっては世界経済に大
きな影響を及ぼす可能性がある。また米国の景気拡張期間は、既に 6.5 年経過し
ており、戦後以降の平均(約 5 年)を超過している。そのため、そろそろ景気後
退の局面に入るのではないかという観測も出ている。
・中国経済は、昨年、製造業を中心にデフレ状況にある。実質GDP成長率も 7%
を目標としてきたが、2015 年は 6.9%と発表され、2016 年の目標は 6.5~7%、今
後 5 年間の目標についても 6.5%以上とし、引き下げてきている。その背景として
は不動産開発投資の落ち込みが大きいことがあげられる。
・また過剰債務・過剰投資により、民間(非金融)部門の債務が約 2,500 兆円へ
急拡大している。GDP比は、先進国や新興国を上回り、200%を越える水準とな
っている。そのうち、企業部門の債務は、日本のバブル期を越える水準まで拡大
している。ただし、中国政府の一般政府債務残高比GDP比は 41%で、他国と比
べて財政出動の余地は大きいので、過剰債務・過剰設備を処理する間、財政出動
で景気を一定程度下支えすることは可能である。
・日本の全事業者数の 99.7%が中小企業で、全就業者の約 70%が中小企業に就業
している。中小企業は日本経済を支える存在である。
・中小企業の収益状況について、経常利益は拡大傾向であるが、中小企業の売上
は伸び悩んでおり、従業員の減少もあって利益を確保している状況である。黒字
の中小企業は全体の 3 割程度である。
・中小企業では資本ストックに対する新設設備投資の比率が大企業よりも少な
く、古い設備を使い続ける傾向があり、設備の老朽化が進んでいる。設備投資額
の推移を見ると、伸びてきてはいるものの、リーマンショック前の水準までは戻
っていない。
・経営者の高齢化が進展している。また、日本の新たな企業の開業率は5%程度
と米英に比べ半分程度の水準である。
・近年、中小企業・小規模製造業者は減少が続き、最近の 5 年間で約 40 万者減
少している。最近、企業の倒産件数は減少しているが、休廃業・解散が増加して
いる。不景気というより、高齢化・後継者がいないという理由が大きい。
・TPPでは日本の主な輸出先を含む 11 カ国全体で、工業製品の 99.9%の品目
で関税が撤廃される。関税撤廃・削減により、現地での販売価格が低下し、日本
製品の競争力が強化される。また取引先企業の輸出拡大による二次的な生産拡大
効果も期待できる。
・中小企業・小規模事業者の海外展開を支援する施策は、「調査・情報収集段階」
から「計画・準備段階」、「海外進出の段階」でそれぞれの支援策があり、初めて
海外を考える方、初めて海外に出られる方、既に海外に出られている方に対し、
様々な支援がある。また、海外進出だけでなく、インバウンド対応への取組につ
いても支援がある。
・中小企業・小規模 事業者施策の今後の 主要課題は、「稼ぐ力 」の強化である。
生産性の向上のための予算措置や税制措置の他に、中小企業等経営強化法案を提
出している。生産性 の向上と取引条件の 改善により、「稼ぐ力 」を上げ、稼ぎ、
さらに次の生産性向上に繋がっていくことになる。
○心掛け 編講義「 やっちゃ え和歌山 イノベーションを起こせ! 」
< ( 株 ) 産業革新機構 代表取締役会長CEO・
日産自動車 ( 株 ) 取締役副会長 志賀俊之 師範 >
・残念ながら日本の産業の競争力は世界的に見て、落ちてきている。
・70 年代に日本は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と言われて、世界中には日本
の製品が溢れかえっていた。70 年代・80 年代にイノベーションを世界で起こしてい
た日本が、だんだん弱くなった。かつて日本のイノベーション指標の順位は世界の 3
番目くらいだったが、今や 27 位になっている。もう日本ではイノベーションは生ま
れないのだろうか。
・(株)産業革新機構では、ベンチャー投資をしており、スタートアップベンチャー
を応援している。実際に投資を行った 3 つのベンチャーの例を紹介する。
・(株)NejiLawという会社。社長が道脇さんという方だが、彼は小学校を中
退し、中学校・高校にも行っていない方であるが、いわゆる天才で、この方が、あ
る時、車を運転していると、タイヤが外れて前の方にころころと転がった。その時
に「なんでネジが外れるんだ?緩まないネジを作ろう。」とひらめいて、緩まないネ
ジを開発した。
・次は(株)ASTROSCALE。宇宙上にはいっぱい使わなくなったロケット衛
星があるが、それがぶつかってどんどん細かくなり、宇宙上にゴミのようになって
いる。この宇宙ゴミを除去するための技術開発を行っている。代表は岡田さんとい
う元財務省のお役人の方であるが、子どもの頃から宇宙が好きで、財務省の役人を
辞めて、ベンチャーを立ち上げた。
・次は、WHILL(株)。代表の杉江さんは友人から、20m先のコンビニに行くの
に、その間に段差があるので、手の車いすだと段差が上れなくて、必ず助けを求め
なくてはならず、助けて下さいというのも恥ずかしいので諦めたという話を聞き、
何とかしてあげたいと思って、電動車いすを開発した。
・これらの例を見ると、社会の課題にぶつかった時に、こういうことで解決出来な
いかなと考えている。大企業の人間は、自分達が持っている技術・製品・サービス
から入って、後で何か社会の役に立たないかと考えるケースが多いが、ベンチャー
をやる人たちは、何も技術を持っていないので、発想で勝負してくる。
・今、学校の教育を小・中学校から変えていこうとしている。大学のセンター試験
も変わる。どのようにやろうとしているかというと、「正解を知識として覚えるので
はなく、何故、そうなるのかを考え、自ら判断し、表現する能力(思考・判断・表
現力)を育てること」が重視されることになる。昔は一生懸命、正解を記憶し、記
憶したところで点数がついてくる。そして偏差値の高い大学に入れて、有名な会社・
大きな会社に入れる。このストーリーで日本は負けてきている。そういうところで
イノベーションは起こらなくなっているのだと思う。
・目標もなく人生を送るのではなくて、何でもいいので、1 年先、5 年先、こういう
ことをやれるようになりたいという目標を持ってほしい。だらだらといろいろなも
のが普通に通過してしまい、見落としてはいけないものを見落としてしまう。目標
を持つと非常にわかりやすくなる。その目標となることが出来るようになるために
「知識」、それから「スキル・技術」、それから「コンピテンシー(行動特性)」が必
要となる。ギャップは必ず出るが、ギャップを是非埋めていってほしい。
・このままずっと人生を送っていったら、ここらへんだろうなという自分と、通常
の努力をしている先の自分はなんとなく見える。次になりたい自分をしっかり自分
でイメージをして、そしてその間のギャップを明確にして、埋めていくという努力
が必要である。さらに、イノベーションを生み出す人財。これを私はチェンジリー
ダーと呼んでいるが、彼らは世の中の何気なく動いていることに対して、流してい
かず、疑問を持つ。常識に対して、何かひっかかる、なんでこんなことやってるん
だろうと疑いを持って、そこにエネルギーをかけて変えようとする。「これは制度だ
から」、「ルールだから」、「慣習だから」と言って止めてしまうとイノベーションは
起こらない。
・先ほどの例の 3 人は皆、チェンジリーダーである。世の中に無いものを作ろうと
している。そういう苦労する道、リスクがある道に、あえて飛び込む。失敗しても
いいじゃないかというくらいの気持ちで飛び込んでいく。
・どうしたらそのような人になれるのかということで、一つアドバイスがあるのは、
人から能力的に自分ではきついなということを頼まれた場合に「これは俺に無理。」
と瞬間的に頭にひらめくと同時に「はい、私やります。」と言う。これをずっとやっ
てみる。最初のうちは必ず失敗するし、苦労もする。そして、だんだん上手く行く
ようになり、成長していく。イノベーションを起こす人というのは、失敗を恐れな
い。
・スティーブ・ジョブス氏も順風満帆なわけではなかった。アップルをクビになっ
ている。順風満帆では今のアップルを作れなかった。実は今日の心掛け編は、「イノ
ベーションを起こせ」ではなくて、「失敗を起こせ」である。
・中村俊輔氏、長友佑都氏、本田圭佑氏。みんな有名な選手だが、みんなやっぱり
失敗している。でも志をみんな持っている。志を持ってチャレンジをしている。挫
折を越えて、そして大きくなる。だから夢を持つ。イノベーション起こす人も全く
同じである。
・この和歌山という場所が、地方創生の中で一番失敗を許す風土で、一番チャレン
ジをする人が多い県で、さらにイノベーションが生まれる、そういう県になってほ
しいという思いを込めてお話しをさせて頂いた。「やっちゃえ、和歌山」という精神
でぜひ頑張って頂きたい。