月刊新医療

機 器、情 報 シ ス テ ム、設 備 ─ 明 日 の 病 院 イン フラを 考 え る
月
刊
2016 年 4 月 1 日発行(毎月 1 回 1 日)
/第43 巻第 4 号/ ISSN0910-7991
新医療
◉ 総特集
経営戦略ツールとしての画像診断装置
病院の成長に必須の条件となってきている高性能画像診断装置。新しい視点で意欲的な導入を図った施設トップの証言を紹介する
◉ 特集
今、最も新しい手術室のかたち
岐阜大学医学部附属病院では、本年1月より第3期病院情報システムが稼働を開始。仮想化と診療支援システム等の開発によりデータの可視化や
診療の効率化を一層向上させている(詳しくはグラビア頁)。左から小倉真治病院長、飯田宏樹副病院長、紀ノ定保臣医療情報部部長
[特別企画]
がん登録と病院情報システム
国際医用画像総合展 注目の展示ブースガイド
I n t e r v i e w
岐阜大学医学部附属病院
医療情報部 部長
るなど、強固なセキュリティと高い機能
行い、当時最先端の指静脈認証を導入す
そして、仮想化技術を全面的に取り入
れ、サーバの仮想化と病院情報システム
たね。
していたので、難しくはありませんでし
療連携を実現し、大学間や広域間での共
当院では、 年4月から第3期中期計
画が始まります。大学病院として地域医
みや、それを統括する医療情報部門の開
す。例えば、データを中央管理する仕組
準備=環境構築をしておく必要がありま
仮想化技術の導入が盛んに議論されて
いますが、そのためには、さまざまな下
同 研 究 を実現 するためにはクラウド化・
びソフトを全面的に再構築した第3期シ
︱︱3期目となる、新システムの特徴に
ステムを稼働させました。
ルチベンダーの協調が創る新たな診療&
﹁ SystemGifu_3G
﹂と呼んでいますが、シ
ステム構築における基本コンセプトは﹁マ
ていましたので、1年で仮想化に関する なお、医療情報部は病院経営にも参画
し、病院の年間売上は年率7%伸ばして
仕様書を作成し、わずか半年でシステム
上を計上しています。病院経営を健全化
おり、現在では旧病院の倍以上の年間売
条件ができていたということです。
医事会計システムやオーダリングシステ
を開発してアプリケーションの載せ替え
で一元管理する体制がすでに出来上がっ
ムにとらわれることなく、
〝新しい器に新
やデータの移行を実施できました。
用に参加していることから、全ての診療
全職種間での診療データ共有環境を構築
情 報の統 合・データベース化 と 全 部 署・
たのです。4機能とは、①保険診療の質
し、4つの機能を強化することを目指し
的向上と適正化、②災害時バックアップ
システムの運用とBCP︵事業継続計画︶
築・運用、④臨床研究の推進・治験の推
への対応、③地域医療連携システムの構
進です。
拡充を図りました。まず、ネットワーク
システムの更新です。従来、1端末に1
1954 年大阪府生まれ。1983 年東海大学大学院工学研究科光工専攻 博
士課程(後期)修了。医学博士、工学博士。同年東海大学医学部
ME 学教室助手、1989 年三重大学医学部放射線医学教室助手、96 年
京都府立医科大学放射線医学教室講師、99 年岐阜大学医学部教授、
現在に至る
29
本の光ファイバーを接続していましたが、
紀ノ定保臣(きのさだ・やすとみ)氏
しいワインを〟という感じで、自由な発
支援環境の構築﹂です。当院の病院情報
せん。幸いなことに、当院ではその前提
それらは一朝一夕にできることではありま
設、
システム間でのデータ共有です。ただ、
その 際 に 院 内の 情 報 ネットワ ーク を 光
を構築しました。
ジタル化した第1期の病院情報システム
ファイバーで結び、全ての診療データをデ
端末の仮想化を実現しました。
︱︱仮想化技術の導入で苦労された点は
これを
︱︱岐阜大学医学部附属病院における病
の通信速度を維持したメタ
1Gbps
感しています。
想に基づいたシステムを構築できたと実
岐阜大学医学部が岐阜市郊外の現在の地に移転してきたのは2004 年のことであったが、
その際、なによりも驚かされたのは、その余りにも先進的な病院情報システムであった。
それから12年。システムは3回目の更新が行われ、本年1月から稼働を開始している。
その構築を主導したのは、12年前と同じく医療情報分野の泰斗、紀ノ定保臣教授。
各種先進機能を搭載した「System Gifu_3G」名のHISは、今また最前線に躍り出た。
紀ノ定氏に加え、今般 HIS の目玉「クリニカルフロー」の主導者、長瀬 清氏らに話を聞いた。
ありましたか。
ル に 置 き 換 え、 2.4GHz
/ 5GHz
共用の
アンテナを増設して無線環境を充実 当院は、前述の通り仮想化技術導入に
WiFi
不可欠なデータの一元管理をすでに達成
させました。
年に更新した、第2期のシステムで
は、全てのシステムでバージョンアップを
院情報システム構築の経緯からお聞かせ
性を保ったシステムとしました。そして、
氏に聞く
仮想化や高速ネットワーク採用により、
データの可視化と効率化を大きく実現。
第3期HISはまたもや先進的であった
仮想化に対応する必要があったのです。
年、ネットワークも含め、ハードおよ
ください。
紀ノ定保臣
2016 April
岐阜大学医学部附属病院
ついてお聞かせください。
岐阜大学医学部附属病院は2004年、
現 在の地に 新 築 移 転 を 果 たし ま し たが、
岐阜県
年1月1日より稼働を開始した第3
なお、第1期、2期のシステムにおいて、
期 目 の 病 院 情 報 シ ス テ ム を、 私 た ち は
診療データは全て電子化され、中央部門
16
システムには ものベンダがその構築・運
年は、国立大学が独法化された年で
あり、病院の新築と相俟って、旧病院の
16
16
これらの機能を強化するため、第3期
のシステムにおいては、更なるシステムの
岐阜大学医学部附属病院 第 3 期病院情報システムで強化した 4 つの機能性に
ついて。同院のシステムは、1 期∼ 2 期の過程で 29 に及ぶマルチベンダー・シス
テムによるデータの中央管理と共有化を実現し、3 期目で更なる機能強化を図る
新 医 療 2016年4月号 ( 8 )
( 9 ) 新 医 療 2016年4月号
10
岐阜大学医学部附属病院は 2004 年、現
在の地に新築移転を果たす。特定機能
病院の承認を受けるほか、
臨床研修病院、
高度救命救急センター、
災害拠点病院(基
幹災害医療センター)に指定されている。
9 階 建 て の 建 物 で あり、 床 面 積 は
61,000m²。1 階から 3 階が外来、中央診
療部。4 階から 9 階が病棟となっている。
病床数は 614 床を数える
04
ました。仮想化技術の導入は、このよう
今回最新の仮想化技術の導入を実現でき
の理 解 を 得 る と と もに 予 算 も 確 保で き、
することで、医療ITに投資する経営側
クすれば患者の詳細情報画面を展開する
できるよう工夫され、ボタンを1つクリッ
一覧画面では診療の進捗状況が一目で理解
指した統合診療支援システムです。患者
ジェット構造によるフリーレイアウトを実
現しており、あらゆる診療の場面で、自
こ と が 可 能 で す。 詳 細 情 報 画 面 は、 ガ
︱︱4つの機能強化に関するシステム更
置することができます。
分自身やチームで必要な情報を自由に配
に段階を踏んで進めていかない限り、た
新における取り組みについて具体的にお
いへんな作業となるでしょう。
聞かせください。
と期待しています。
同機能活用によって診療の進捗状況の
特に保険診療の質向上と最適化につい 可視化や保険診療の適正化が可能になる
ては、手術部の長瀬 清先生が中心となっ
飯田宏樹氏に聞く
1985 年岐阜大学医学部卒。2000 年香
川医科大学附属病院救急部助教授を経
て 2003 年より岐阜大学大学院医学系
研究科救急・災害医学教授。2004 年
岐阜大学医学部附属病院高次救命治療
センター長、2014 年岐阜大学医学部附
属病院長(兼務)
1981 年岐阜大学医学部卒。同大病院、
総合大雄会病院、関東逓信病院等を経
て、2010 年 5 月より医学系研究科 病
態制御学講座 麻酔・疼痛制御学分野
教授、2014 年より岐阜大学医学部附属
病院副病院長(兼務)
「CITA Clinical Finder」の患者情報画面。患者単位で詳細のデータを参照する画面で、
ガジェット構造を採用したことにより、病名や診療の場面、操作者自身の業務内容に応じて、
必要な診療情報を組み合わせた画面を設定できる
日本全国の大学、研究機関等の学術情報
基盤である学術情報ネットワーク﹁SI
NET︵サイネット︶
﹂が平成 年度から
﹁SINET5︵サイネット ファイブ︶
﹂
に移行するに当たり、当院でもSS MI
X2による災害時用医療情報バックアッ
︱︱地域医療連携システムへの取り組み
プシステムの充実化を進めています。
についてはいかがでしょうか。
第3期システムでは、院内ネットワークを
地域医療連携に当たっては、セキュリ
ティの高いシステム構築が鍵となります。
定することにより、インフラ面から高度
論理的に分割して相互の通信を厳密に規
なセキュリティを実現する〝エリア別ネッ
分の仕方としては、まず外部接続をルー
トワーク〟を構築しました。エリアの区
を大きく以下の4つに分けました。①イ
ル化して安全性を担保するため、エリア
ンターネットを介して外部施設等と接続
リアとソースデータエリアの間に中継の役
を行うエリア1、②インターネット公開エ
能と有用性を大幅に高めています。
に電子署名とタイムスタンプを実施する
ました。これにより、全ての診療データ
︱︱第3期の病院情報システムに対する
ことが可能となっており、新システムの機
評価をお聞かせください。
割を持った装置を置くエリア2、③デー
ピーを蓄積するエリア3、④データの真
してあります。このような高いセキュリ
した。今回の更新では、今後
タイミングで更新を迎えることができま
年 を想 定
ティ対策を講じた上で、一般病院、医科
2年、大学病院を取り巻く環境
ア3とエリア4は外部に直接接続するこ この1、
は激変しています。当院はたまたまよい
とはなく、高いセキュリティ強度を確保
正性を担保するためのエリア4です。エリ
タの2 次 利 用 を 前 提 と し た デ ー タのコ
第 3 期病院情報システムでは、仮想化技術を大規模に導入。病院情報システム端末上では、Microsoft Office を含む、50 近いアプリケー
ションを仮想化サーバ上で動かし、端末のシンクライアント化を推進。地域医療連携システムも仮想化技術の活用により、構築されている
診療所、歯科診療所、薬局、訪問看護ステー
だと評してよいでしょう。
した際に求められる機能全てを盛り込ん
ます。
︱︱4つ目の臨床研究・治験の推進につ
現し、それが岐阜大の病院情報システム
のスムーズなデータ共有および連携を実
中央による一元管理、マルチベンダー間で
針﹂が厚生労働省から出されたことから、
も進んでいる病院の1つであると自負し
データの利活用に関しては、全国でも最
れています。そして、その成果物である
更新にもそのカルチャーが大きく反映さ
に対する〝カルチャー〟を育み、今日の
大学病院では患者さんのデータを使った
ています。
機能強化こそ、新システムの目玉と言え
はデータ移行や臨床研究、地域連携への
れていかなければなりませんが、その際
運用しなければなりません。当院のシス
柔 軟 性 を持った組 織 とシステムを構 築・
テムには、そうした点に対応したさまざ
携など、診療データの相互通信を円滑か
つ迅速に推進するため、これまで医療分
療情報システム担当者の参考にしていた
まなアイデアが詰まっています。日本の医
だきたいと願っています。
発センター︵MEDIS︲DC︶にのみ置
かれていた認証局を岐阜大学内に設置し
野では日本医師会と医療情報システム開
当院では、地域医療連携や研究事業等
のための臨床研究中核病院とのデータ連
対応等、社会的な情勢の変化に対応する
るでしょう。
システム化に併せて対応しました。この
また、病院の電子化は今後も進展し続
る必要に迫られましたので、当院でも新
けます。当然、システムは新しく更新さ
整前後の記録が残っている環境を構築す
医学系研究では、そのデータについて修
理研での問題を受けて2015年に﹁人
を対象とする医学系研究に関する倫理指
いては、非常に意欲的なものと聞いてい
つながっています。
年から病院情報システムの運用を続
e bカルテ﹂と呼ぶ連携システムによって
け、改良を重ねてきたことで、データの
ション、介護事業所 等と、私たちが﹁W
10
て開発した﹁クリニカルフロー﹂に期待し
小倉真治氏に聞く
新 医 療 2016年4月号 ( 10 )
( 11 ) 新 医 療 2016年4月号
いいだ ひろき
おぐら しんじ
チーム医療に携わる医療スタッ
フ全員が共有することができる
ので、保険診療の面も含めて効
率よく医療を提供することが可
能となります。
――クリニカルフローは手術用
のシステムとして応用可能でしょ
うか。
クリニカルフローは本来、入
院患者の現状把握のために構
築されたシステムですが、このシ
ステムを手術患者用に応用でき
れば、術前の準備状況も全て
把握することができ、医療過誤
等の削減に大きく貢献できるの
ではないでしょうか。
――手術部 部長である飯田先
生のお立場から、新病院情報シ
ステムに期待している点をお聞
かせください。
手術部 副部長の長瀬先生が
中心となって開発を進めたクリ
ニカルフローは、色や形で直感
的に情報を把握できるインター
フェイスによって、診療の進捗
状況がとても確認しやすくなっ
ており、その点がとても優れて
いると感じています。高度な医
療を進めていく上では、術前検
査や同意書等の書類の漏れが
最も困ります。それらの有無を
病 院 情 報システム 端 末 上で、
――救急医療の権威のお立場
から見て、救急医療に医療 IT
を役立てるには、どのような要
件が必要でしょうか。
救急医療の現場で電子カル
テに必要な要件としては、信頼
性と即時性が挙げられます。特
に即時性という点で、IT は救急
医療には向かないと話す人が多
いですが、私は、救急医療に
必要な診療情報に限って IT を
活用すれば、スピードを上げな
がら、精度の高い救急医療を
展開できると考えています。
この観点は、救急医療だけ
でなく、地域医療連携をする上
でも、重要なのではないでしょ
うか。
――病院長のお立場から、更
新した病院情報システムに対す
る期待をお聞かせください。
稼働が開始してからまだ月日
が経っていませんが、今後は臨
床に対してよい影響が出てくる
だろうと期待しています。
当院では、ERだけでなく、
重症患者に対する治療を中心
に取り組んでいますが、新しい
システムで導入されたクリニカル
フローという機能を活用するこ
とで、治療を実施するにあたっ
て必ず実施されていなければな
らない検査や書類上の手続き
等の抜けがなくなり、適切な医
療の推進に役立つだろうと感じ
ています。
04
災害時バックアップシステムの運用とB
ています。これは、富士フイルムが提供
CP︵事業継続計画︶への対応については、
岐阜大学医学部附属病院
副病院長
28
する統 合 診 療 支 援プラットフォーム
Interview
岐阜大学医学部附属病院
病院長
﹂を活用したもの
﹁ CITA Clinical Finder
で、チーム医療推進と保険診療対策を目
Interview
岐阜大学医学部附属病院
▼
到達できません。そのために、医療情報
医療は、最善と思われるプロセスを積
み重ねることでしか、最善のアウトカムに
4つが挙げられます。
く、分かりやすい医療を提供する︱この
保し、医療過誤を予防する④透明性が高
準化や効率化を推進する③医療安全を担
としては、①医療の質向上を目指す②標
﹁医療情報システム構築が果たすべき理想
目指す理想について、
つぎの4点を挙げる。
いる長瀬 清氏は、システム構築によって
マルチベンダーによるデータ共有とシステム間連携で診療の進捗管理と
適正な保険診療を実現する革新的な診療支援システムを開発
I n t e r v i e w
岐阜大学医学部附属病院
手術部 副部長
感情や理解や共有できるコンセプト、価
同システムは、検査画像やバイタル情
報、処方など病院内の各システムで管理
あくまで〝情報〟しか伝えないシステム
ションとなります。医療情報システムは
フォームに集約して表示。さらに、入院
されている診療データを1つのプラット
値観などが加わってはじめてコミュニケー
、 PDCA
サイク
Evidence-Based Medicine
ルやクリニカルパスの導入、チーム医療の
中の患者や、自身が担当する登録患者を
シ ス テ ム を 用 い て、 業 務 の 標 準 化 や
手術部は、2008年に高次救命治療セ
リスト化し、診療のプロセスにおける検
査や文書作成の進捗状況、保険請求に必
です。残念ながら医療〝コミュニケーショ
要な検査や文書記載に関する状況を一目
システムとなっている。
院全体の診療支援・経営支援に貢献する
施設基準の遵守、保険請求対策など、病
患者横断的に医療従事者間の情報共有や、
で把握することができるのである。部門・
題を改善し、チーム医療を推進するため
ン〟システムではありません。こうした課
〝チーム医療〟という概念は、
中でも、
複雑化する医療において非常に重要な意
統合診療支援プラットフォーム
カルフローなのです﹂
のシステムとして私が提案したのがクリニ
推進のための診療情報の共有などが行わ
ことから、副病院長が手術部長を兼務し
味を持っています。しかし、病院全体の
くの医療機関で叫ばれているものの、独
課題や目標としてチーム医療の推進が多
立した職種、多様な職制、そして特有の
なく、病院経営方針に合わせて迅速に対
術部の提案を受け、病院情報システムの
統合データファインリングシステム
﹁ CITA Clinical Finder
﹂
推進です。そのためには、臨床業務の進
﹁クリニカルフローの目的はチーム医療の
価値観を背景に持つ専門家が多くいる医
を担当している富士フイルムが﹁クリニカ
1機能として開発されたのが﹁クリニカル
ニケーションを支援することは、既存の医
ルフロー﹂構築のために開発したのが、同
フロー﹂である。同機能開発の経緯とコン
セプト、およびその有用性について、開発
療情報システムでは想定されるものでは
捗状況を可視化、適切な保険診療の担保、
担保する安全機構の確保、中央診療部門
務の標準化や効率化の推進、医療安全を
療プロセスの各ステップでの確認漏れの防
ジェット配置を設定することによって、診
ま ざ ま な 診 療 場 面 に お い て、 異 な る ガ
り、入院時や術前、術中、術後など、さ
状です。このチェックリストをクリニカル
い、それを持ち寄って確認しているのが現
在はこれらのチェックを各スタッフが行
チェックリストの内容は膨大なもので、現
す。 例 え ば、 周 術 期 管 理 チ ー ム の 術 前
層の業務連携が整うでしょう。
ム医療推進により、多職種協働など、一
ことが考えられます。目標を共有したチー
ステムとしてクリニカルフローを活用する
﹂である。
Clinical Finder
多職種と協働しやすい環境の構築、手術・
デ ー タファ イ ン リ ン グ システ ム﹁
CITA
カテ・内視鏡など専門医療への支援、業
社の統合診療支援プラットフォーム 統合
ありませんでした。
いた。
えば、
〝体重 ㎏ 〟は情報ですが、そこに
善といった各機能が備わることが求めら
への支援、医療マネジメントの導入や改
フローで表示して、周術期管理チームの
うになればよいと考えています。
スタッフ全員が進捗状況を把握できるよ
れます。クリニカルフローの導入により、
また、コミュニケーションも支援するマ
ネジメントの導入により、成果も共有さ
おける適正な保険診療の実施と保険指導
が進むはずです。加えて、病院経営面に
準化や効率化だけでなく、医療の質向上
プロセスが可視化・最適化され、業務標
自分自身やチームで必要な診療情報を自
フが1人の患者情報を共有するとともに、
由に配置することが可能となっている。
る入院から退院に至るまでの診療情報を
並べて表示します。ここでは、患者の治
富士フイルムには〝仏〟を作ってもらっ
たので、今後我々はそれに〝魂〟を入れ
たいと思っています﹂
る医療の質可視化や臨床指標導入による
ついて、長瀬氏はつぎのように話す。
﹁クリニカルパスが多くの医療機関で導入 長瀬氏は、さらにクリニカルフローの新
たなニーズを模索している。
されていますが、これは主に〝将来〟の
ベンチマーキングなどにも使えるのではな
﹁クリニカルフロー﹂というネーミングに
須とされる文書だけでなく、入院患者へ
﹁医療の質向上のために、保険診療等で必
療計画を経時的に表示し、現在の進捗状
治療計画を提示したシステムです。それ
した﹂
クリニカルフロー
〝 現在 〟 の医療の進捗管理を実現
さまざまな医療場面での応用が可能
視点だけでなく、患者の視点で医療に対
リニカルフローを用いることで、専門家の
ど、マネジメントやコミュニケーションも
務効率化・標準化や医療安全への配慮な
するニーズを解決してほしいですし、業
援、リソースナースと言われる認定看護
他にも、詳細情報画面を活用してのカ
ンファレンスやプレゼンテーションへの支
改善してほしいと願っています﹂
しょうか。
ナンスを可視化する上で必要ではないで
の質問票や術前カンファ文書、そして死 クリニカルフローが、クリニカルパスに
呼応する概念に育ってほしいですね。ク
亡カンファ文書などは医療安全上のガバ
いでしょうか。
対策だけでなく、ビッグデータ活用によ
に対し、
〝現在〟の進捗状況を可視化し、
無を確認することで保険診療の担保もで
無、体温、安静時と体動時の疼痛やせん
き、さらには日常生活自立度や摂食の有
妄スコア、看護必要度など、全ての患者
把握するためのシステムであることから、
になっています﹂
クリニカルフローでは、ホーム画面上の
ボタンをクリックすることで、当該患者の
詳細情報画面を開くことができる。
同院の病院情報システムでは、マルチベ
ンダーによるデータの一元管理と情報共
師の活動の可視化など、マネジメントシ
所 在 地:岐阜県岐阜市柳戸 1 番 1
病 床 数:614 床
外来患者数:1324.3 人/ 1 日(2014 年度)
入院患者数:472.4 人/ 1 日(2014 年度)
有がほぼ完全な形で達成されており、複 クリニカルフローの今後の拡張につい
て、長瀬氏は院内での進捗状況の把握だ
きるチェックリストの機能を盛り込めない
けでなく、院外を含む多職種間で共有で
か、検討していると話す。
﹁チーム医療においては、
関与する全スタッ
岐阜大学医学部附属病院は岐阜県下
唯一の医学部附属病院、特定機能病院
として東海地方でも屈指のレベルとなる
質の高い医療を提供している。中でも高
次救命治療センターは、多発外傷や熱
傷など最も高度な三次救急患者を受け
入れることのできる高度救命救急セン
ターに中部地方で 2 番目に指定され、
2011 年からはドクターヘリの基地病院
に指定され、2014 年度は約 400 回の
フライト実績を有する。
また、2011 年 10 月には岐阜県総合
医療センターとともに県の基幹災害拠点
病院に指定され、自院だけでなく県や他
の医療機関とも緊密な連携を取りながら
災害対策を推進するなど、高次救命治
療センターから始まり、難病、肝疾患、
エイズ、がんなどの診療拠点病院となっ
ており、救急医療、災害医療など、全て
の領域において岐阜県の中心的な役割
を担っている。
数 のシステ ムか ら 診 療 デ ー タ を 取 得 し、
詳細情報画面に表示できる。
また、情報の表示についてはガジェット
構造によるフリーレイアウトとなってお
述べましたが、それを支援するために多
フによるコミュニケーションが必要と先に
職種共有チェックリストを作成し、職種
部署の関係が把握できるようにすればよ
を超えた進捗管理と、全体の流れと担当
いのではないかと、現在院内で検討中で
岐阜大学医学部附属病院
このシステムには、
〝フロー〟と名付けま
の基本的な情報を一目で把握できるよう
況を可視化するとともに、診療文書の有
クリニカルフローのホーム画面では、列
に患者リストを表示し、行に患者におけ
れます。
技師等、異なる職種・職制の医療スタッ
手術部副部長の重職にありながら、病
院情報システム構築に積極的に携わって
情報とコミュニケーションは全く異なり
ます。情報とは、あくまで記号です。例
を主導した手術部副部長の長瀬 清氏に聞
長瀬氏の提案を受け、岐阜大学医学部
クリニカルフローの目的について、長瀬
療現場において、チームスタッフのコミュ
附属病院における統合診療支援システム
氏はつぎのように話す。
処できる業務体制を整えている。この手
ており、安全面や標準化への配慮だけで
阜大学医学部附属病院の基幹部署である
れてきました。
氏に聞く
クリニカルフローの利用者ホーム画面。利用者が必要とする対象患者の
一覧だけでなく、診療プロセスの進捗情報やその漏れ等の確認ができ、
診療状況の可視化やチーム医療に貢献するだけでなく、適正な保険診
療の実施確認や入院基本料算定の担保等、経営支援にも貢献する
署である。手術部は急性期医療を担う岐
長瀬 清
クリニカルフローの連携データ種。病院情報システム内の各システムと
データを共有、
大量データの検索・表示に適したテーブル構造で、
パフォー
マンスを維持するとともに、全患者を対象とした自由検索も可能である
ンター手術部門から分離・新設された部
長瀬 清(ながせ・きよし)氏
止等に有効である。また、医師、看護師、
50
新 医 療 2016年4月号 ( 12 )
( 13 ) 新 医 療 2016年4月号
1969 年岐阜県生まれ。1994 年岐阜大学
医学部卒。1996 年同大学附属病院麻酔
蘇生科助手、同年県立岐阜病院、2002
年岐阜大学大学院医学研究科卒。同医
学部附属病院麻酔蘇生科助手、2004 年
同院高次救命治療センター助手、2006
年同講師、2008 年より同院手術部副部長
入院病棟で使用されているクリニカ
ルフロー画面。同システムは、入
院患者の診療プロセスや検査・手
術に対する同意書の有無等、保
険診療を実施する上で診療の進
捗管理と、チーム間での情報・デー
タ共有に貢献している