企業の 4 割で正社員が不足

2016/3/29
大宮支店
住所:さいたま市大宮区桜木町 1-11-9
ニッセイ大宮桜木町ビル 7 階
TEL:048-643-2080(代表)
URL:http://www.tdb.co.jp/
特別企画 : 人手不足に対する埼玉県内企業の動向調査
企業の 4 割で正社員が不足
~「建設」「運輸・倉庫」などで不足感が増加~
はじめに
安倍内閣の経済政策(アベノミクス)における成長戦略を進めるなかで、人手不足が大きな懸
念材料となっている。また、マイナンバーへの対応に追われる情報サービスや、訪日旅行客や国
内旅行の増加による飲食店、娯楽サービスで人手不足が急激に深刻化するなど、人手不足におけ
る業種の違いが顕著に表れている。有効求人倍率の上昇や失業率の低下など労働市場がひっ迫す
るなかでは、求職者にとっては明るい材料となる一方、企業は人件費上昇などのコストアップに
つながり、今後の経済活動における足かせともなりかねない。
そこで、帝国データバンク大宮支店は人手不足に対する埼玉県内企業の見解について調査を実
施した。
※ 調査期間は 2016 年 1 月 18 日~31 日、調査対象は県内企業 921 社で、有効回答企業数は 389
社(回答率 42.2%)
調査結果(要旨)
1. 企業の 40.5%で正社員が不足していると
回答。業種別では「建設」が 52.3%にのぼ
ったほか、
「運輸・倉庫」や「金融」が 5 割
を超えており、東京オリンピック・パラリン
従業員が「不足」している企業の割合
40.5%
ピックに向けた建設需要や県南の人口増に
30.1%
伴う住宅建設に関連する業種で人手不足が
深刻となっている。また、従業員数の多い
大手企業ほど人手不足を感じる傾向があっ
た。アベノミクスの恩恵が届きやすい大手
企業において、人手が不足している状況が
うかがえる
2. 非正社員では企業の 30.1%が不足してい
正社員
非正社員
ると感じており、特に「小売」
「建設」
「不
動産」などで高い。
©TEIKOKU DATABANK,LTD
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特別企画:人手不足に対する埼玉県内企業の動向調査
1. 企業の 40.5%で正社員「不足」、「建設」「運輸・倉庫」の不足感高まる
現在の従業員の過不足状況を尋ねたところ(
「該当なし/無回答」を除く)
、正社員について「不
足」していると回答した企業は 40.5%で、企業の約 4 割が正社員の不足を感じていた。正社員が
不足している企業の割合は前回調査(2015 年 7 月時点)から 2.3 ポイント増加した一方、現在の
正社員数が「適正」と判断している企業は 44.9%(同 0.4 ポイント減)
、
「過剰」と判断している
企業は 14.5%(同 2.0 ポイント減)となり、人手不足感は高まっている。
「不足」していると回答した企業を業種別にみると、
「建設」が 52.3%(前回調査比 5.5 ポイン
ト増)で最も高くトップとなった。以下、
「運輸・倉庫」51.9%(同 1.9 ポイント増)
、
「金融」50.0%
(同横ばい)が 5 割台だったほか、
「サービス」
(47.6%)や「不動産」
(40.0%)
、
「製造」
(35.7%)
が続いている。
企業からは、
「東京オリンピック・パラリンピックまでは仕事面で多少の恩恵はありそうだが、
人手不足のため仕事をこなせるかどうかが課題」
(中小企業、運輸・倉庫)といった声が挙がった。
従業員の過不足感
「不足」計
正
社
員
非
正
社
員
適正
「過剰」計
2015年1月
37.1
51.2
11.7
2015年7月
38.2
45.3
16.5
2016年1月
40.5
44.9
14.5
2015年1月
28.3
64.3
7.5
2015年7月
28.7
61.7
9.6
2016年1月
30.1
61.4
8.5
注1:「不足」計は、「非常に不足」「不足」「やや不足」の合計
注2:「過剰」計は、「非常に過剰」「過剰」「やや過剰」の合計
注3:正社員の母数は「該当なし/無回答」を除く385社。2015年7月調査は406社。2015年1月は383社
注4:非正社員の母数は「該当なし/無回答」を除く319社。2015年7月調査は342社。2015年1月調査は342社
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特別企画:人手不足に対する埼玉県内企業の動向調査
また、従業員の不足状況を従業員規模別にみると、従業員数が「1000 人超」の企業では 66.7%
が不足している一方、最も少ない「51 人~100 人以下」の企業では 34.0%となっており、32.7 ポ
イントの差があった。正社員は、従業員数が多くなるにつれて人手不足の企業割合が多くなると
いう傾向がみられる。
TDB 景気動向調査では、企業の景況感は従業員数「1000 人超」が「5 人以下」を 10 ポイント以
上上回っていることもあり、アベノミクスの恩恵が届きやすい大手企業において、人手不足感を
抱いている様子がうかがえる。
現在の従業員の過不足感(正社員)
「不足」計
(構成比%、カッコ内社数)
非常に不足
不足
適正
やや不足
「過剰」計
全国
39.5 (4,063)
1.7
(170)
6.0
埼玉
40.5
(156)
2.6
(10)
8.1
(31) 29.9
(115) 44.9
(173) 14.5
大企業
52.7
(29)
0.0
(0) 18.2
(10) 34.5
(19) 34.5
(19) 12.7
中小企業
38.5
(127)
3.0
(10)
6.4
(21) 29.1
(96) 46.7
45.2
(57)
6.3
(8)
7.1
(9) 31.7
-
-
うち小規模
-
-
やや過剰
(614) 31.9 (3,279) 48.1 (4,941) 12.4 (1,275) 11.2 (1,151)
-
該当なし/
無回答
合計
非常に過剰
1.0
(101)
0.2
2.3
(240)
(51)
0.5
(2)
0.8
(3) 100.0
(385)
1.0
(4)
9.1
(5)
0.0
(0)
3.6
(2) 100.0
(55)
0.0
(0)
(154) 14.8
(49) 13.9
(46)
0.6
(2)
0.3
(1) 100.0
(330)
1.2
(4)
(40) 43.7
(55) 11.1
(14) 11.1
(14)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
(126)
1.6
(2)
-
-
-
-
-
-
-
50.0
(1)
0.0
(0)
0.0
(0) 50.0
(1) 50.0
(1)
0.0
(0)
0.0
(0)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
(2)
0.0
建設
52.3
(34)
7.7
(5) 15.4
(10) 29.2
(19) 43.1
(28)
4.6
(3)
4.6
(3)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
(65)
1.5
(1)
不動産
40.0
(2)
0.0
(0)
0.0
(0) 40.0
(2) 60.0
(3)
0.0
(0)
0.0
(0)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
(5)
0.0
(0)
製造
35.7
(56)
1.9
(3)
5.1
(8) 28.7
(45) 45.2
(71) 19.1
(30) 18.5
(29)
0.0
(0)
0.6
(1) 100.0
(157)
0.6
(1)
卸売
34.6
(27)
0.0
(0)
7.7
(6) 26.9
(21) 50.0
(39) 15.4
(12) 14.1
(11)
1.3
(1)
0.0
(0) 100.0
(78)
2.6
(2)
小売
25.0
(2)
0.0
(0)
0.0
(0) 25.0
(2) 50.0
(4) 25.0
(2) 12.5
(1)
0.0
(0) 12.5
(1) 100.0
(8)
0.0
(0)
運輸・倉庫
51.9
(14)
7.4
(2)
3.7
(1) 40.7
(11) 37.0
(10) 11.1
(3) 11.1
(3)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
(27)
0.0
(0)
サービス
47.6
(20)
0.0
(0) 14.3
(6) 33.3
(14) 40.5
(17) 11.9
(5)
7.1
(3)
2.4
(1)
2.4
(1) 100.0
(42)
0.0
(0)
その他
0.0
(0)
0.0
(0)
(0)
(1) 100.0
(1)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
(1)
0.0
(0)
(0)
0.0
-
(7)
(0) 100.0
-
-
-
(23) 100.0 (10,279)
金融
0.0
-
(56) 13.2
農・林・水産
0.0
-
過剰
-
-
(0)
注1:網掛けは埼玉県全体以上を表す
注2:全国の母数は有効回答企業のうち「該当なし/無回答」を除く1万279社。埼玉は385社
2. 非正社員「不足」回答、全体で 1.4 ポイント増加、「小売」が 37.5%で最も高い
非正社員が「不足」していると回答した企業(
「該当なし/無回答」を除く)は 30.1%となり、
前回調査に比べ 1.4 ポイント増加した。
また、
「適正」
と考えている企業は 61.4%で 6 割を超えた。
他方、
「過剰」と回答した企業は前回調査より 1.1 ポイント減少し 8.5%となった。
非正社員について、最も人手が不足していると感じている業種は「小売」で 37.5%、ほかに「建
設」(35.6%)、「不動産」(33.3%)が 3 割を超えている。以下、「卸売」(29.5%)、
「サービス」
(29.4%)
、
「製造」
(29.0%)と続いているが、業種間に大きな差はない。
従業員規模別にみると、従業員数が 1000 人超の企業では、不足の割合が 66.7%と最も高くなっ
ている一方、小規模の 5 人以下では 28.6%、最も少ないのは 301~1000 人で 12.5%にとどまって
おり、非正社員においては規模間格差はなく、当該企業の業績などの事情によるものと考えられ
る。
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特別企画:人手不足に対する埼玉県内企業の動向調査
現在の従業員の過不足感(非正社員)
「不足」計
(構成比%、カッコ内社数)
非常に不足
不足
適正
やや不足
「過剰」計
過剰
該当なし/
無回答
合計
非常に過剰
全国
26.2 (2,149)
1.2
(100)
4.5
9.2
(751)
8.1
(667)
0.8
(68)
0.2
(16) 100.0
埼玉
30.1
(96)
2.2
(7)
5.0
(16) 22.9
(73) 61.4
(196)
8.5
(27)
6.9
(22)
0.9
(3)
0.6
(2) 100.0
(319) 21.9
大企業
32.7
(16)
0.0
(0)
8.2
(4) 24.5
(12) 61.2
(30)
6.1
(3)
2.0
(1)
0.0
(0)
4.1
(2) 100.0
(49) 12.2
(6)
中小企業
29.6
(80)
2.6
(7)
4.4
(12) 22.6
(61) 61.5
(166)
8.9
(24)
7.8
(21)
1.1
(3)
0.0
(0) 100.0
(270) 23.7
(64)
うち小規模
農・林・水産
36.1
-
(35)
4.1
-
-
(4)
-
(365) 20.5 (1,684) 64.6 (5,295)
やや過剰
6.2
-
(6) 25.8
-
金融
0.0
(0)
0.0
(0)
建設
35.6
(16)
2.2
(1) 13.3
0.0
(0)
(25) 56.7
(55)
7.2
-
-
-
-
(7)
-
6.2
-
(6)
-
1.0
-
(1)
-
0.0
(0) 100.0
-
-
-
-
(70)
(31)
-
0.0
(0) 100.0
(1)
0.0
(0)
0.0
(0)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
(1) 100.0
(1)
(6) 20.0
(9) 62.2
(28)
2.2
(1)
2.2
(1)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
(45) 46.7
(21)
(2)
33.3
(1)
0.0
(0)
0.0
(0) 33.3
(1) 66.7
0.0
(0)
0.0
(0)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
製造
29.0
(42)
2.1
(3)
2.1
(3) 24.8
(36) 59.3
(86) 11.7
(17)
9.7
(14)
1.4
(2)
0.7
(1) 100.0
卸売
29.5
(18)
0.0
(0)
8.2
(5) 21.3
(13) 63.9
(39)
小売
37.5
(3)
0.0
(0)
0.0
(0) 37.5
(3) 50.0
運輸・倉庫
27.3
(6)
4.5
(1)
4.5
(1) 18.2
(4) 63.6
(14)
サービス
29.4
(10)
5.9
(2)
2.9
(1) 20.6
(7) 64.7
その他
-
-
-
-
(97) 32.0
-
不動産
-
(8,195) 28.4 (2,324)
-
-
-
-
6.6
(4)
6.6
(4)
0.0
(0)
0.0
(0) 100.0
(4) 12.5
(1)
0.0
(0)
0.0
(0) 12.5
(1) 100.0
9.1
(2)
9.1
(2)
0.0
(0)
0.0
(22)
5.9
(2)
2.9
(1)
2.9
(1)
0.0
-
-
-
-
-
-
-
-
(3) 66.7
(145)
(2)
9.0
(13)
(61) 31.1
(19)
0.0
(0)
(0) 100.0
(22) 22.7
(5)
(0) 100.0
(34) 23.5
-
-
(8)
-
-
(8)
-
注1:網掛けは埼玉県全体以上を表す
注2:全国の母数は有効回答企業のうち「該当なし/無回答」を除く8,195社。埼玉は319社
従業員が「不足」している企業の割合 ~従業員規模別~
(%)
66.7 66.7
70
60
50
43.1
42.5
40
30
50.0
45.2
37.5
28.6
36.7
34.0
33.3
25.0
23.7
20
12.5
10
0
5人以下
6~20人
21~50人
51~100人
正社員
101~300人 301~1000人
1000人超
非正社員
まとめ
「TDB 景気動向調査」
(帝国データバンク)によると、1 月以降の国内景気は、年初からの海外
金融市場の影響を受けて株価が一時大幅に下落したうえ、日銀が打ち出した「マイナス金利政策」
もまだ実効は伴わず、1 月、2 月と連続して景況感が悪化した。生産・消費活動の弱含みが懸念さ
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2016/3/29
特別企画:人手不足に対する埼玉県内企業の動向調査
れる局面で実施した今回の調査では、県内企業の 40.5%で正社員の不足感を抱いている結果とな
った。とりわけ「建設」
「運輸・倉庫」
「金融」では 5 割以上の企業で正社員が足りていないほか、
「サービス」
「不動産」などでも正社員が不足している実態が浮き彫りとなった。
従業員数の多い大手企業ほど正社員の不足感を抱く傾向にあった。また、引き続き好調なイン
バウンド消費の恩恵を受ける業種で人手不足感を感じる企業が多くなっており、急激に人手不足
に見舞われる業種では、成長余力が削がれる懸念もある。
2016 年はアベノミクスの成果が問われる 1 年となるが、人手不足により受注を逃すことによる
機会損失を最小限とするためには、短期的な就業支援のみならず、中長期の社会・人口情勢を見
越した労働市場の改革が重要となろう。
企業規模区分
中小企業基本法に準拠するとともに、全国売上高ランキングデータを加え、下記のとおり区分。
大企業
中小企業(小規模企業を含む)
小規模企業
製造業その他の業界
業界
「資本金3億円を超える」 かつ 「従業員数300人を超える」
「資本金3億円以下」 または 「従業員300人以下」
「従業員20人以下」
卸売業
「資本金1億円を超える」 かつ 「従業員数100人を超える」
「資本金1億円以下」 または 「従業員数100人以下」
「従業員5人以下」
小売業
「資本金5千万円を超える」 かつ 「従業員50人を超える」
「資本金5千万円以下」 または 「従業員50人以下」
「従業員5人以下」
サービス業
「資本金5千万円を超える」 かつ 「従業員100人を超える」
「資本金5千万円以下」 または 「従業員100人以下」
「従業員5人以下」
注1:中小企業基本法で小規模企業を除く中小企業に分類される企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが上位3%の企業を大企業として区分
注2:中小企業基本法で中小企業に分類されない企業のなかで、業種別の全国売上高ランキングが下位50%の企業を中小企業として区分
注3:上記の業種別の全国売上高ランキングは、TDB産業分類(1,359業種)によるランキング
【内容に関する問い合わせ先】
株式会社帝国データバンク 大宮支店 情報部
TEL 048-643-2146
FAX 048-645-7578
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当レポートはプレスリリース用資料として作成しております。報道目的以外の利用につきましては、著作権法
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