IFRSを巡る 世界と日本の動向 2015年11月 Contents 1. はじめに 3 2. IFRSを巡るこれまでの動向 4 2-1.国際会計基準審議会(IASB)等の動向 5 2-2.米国の動向 7 2-3.日本の動向 9 3. 日本の最新動向 – 任意適用の積上げに向けた取組み - 4. 日本における今後の動向 13 19 Appendix: Appendix1:G20各国における上場企業のIFRS適用状況 20 Appendix2:日本のIFRS適用済・適用決定会社一覧 (2015年11月10日現在) 21 Appendix3:IASB公表基準・公開草案等 Appendix4:当法人のナレッジ 23 25 IFRSを巡る世界と日本の動向 | 2 1. はじめに 企業会計審議会から「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方 針」が公表された2013年6月以降、任意適用の積上げに向けた動きが加速していま す。2013年10月には連結財務諸表規則等が改正され、任意適用要件が大幅に緩和さ れました。また、一部基準を削除または修正して採択するエンドースメントの仕組 みを設けることが提案されたことを受け、2015年6月には、企業会計基準委員会 (ASBJ)から「修正国際基準」が公表されました。こうした流れを背景に、IFRSの 任意適用を検討する企業が増加しています。2015年9月に東京証券取引所が公表し た「『会計基準の選択に関する基本的な考え方』の開示内容の分析」によれば、 IFRSを適用済みの会社、今後の適用を決定している会社及び適用予定の旨を決算短 信で記載している会社は合計で112社になっています。 本冊子は、IFRS適用の動向を短時間で振り返ることを目的として、日本を中心とし たIFRSを巡るこれまでの動きと最近のニュースを中心にご紹介しています。また、 各ニュースに関連する当法人の追加の解説記事については、ウェブサイトへのリン クを掲載しています。IFRSの検討をこれから始める企業や中断していたプロジェク トを再開する企業の皆さまなどが、IFRS対応の方針を検討する際にご活用いただけ ると幸いです。 2015年11月 IFRSを巡る世界と日本の動向 | 3 2. IFRSを巡るこれまでの動向 IFRSは、2005年から欧州連合(EU)加盟国を中心に採用されたのを皮切りに、今では世界120以上の国や法域で採用され ています。2008年11月のG20ワシントン・サミットでは「単一で高品質な国際基準を策定する」ことが提唱され、日本も これにコミットしています。 IFRS適用国が増加する中、IFRSを取り巻く環境には様々な変化が起きています。 <IFRSを巡るこれまでの主要な動き> IASB等 1973 主要国の会計士協会により、IASCが発足 2000 IOSCOがIASを承認 2001 IASCがIASBに改組 2002 2005 米国 ノーウォーク合意:FASBとIASBが 米国基準とIFRSの将来的なコンバージェンスに向けた合意を公表 ASBJとIASBによるコンバージェンスの合意 EUがIFRSを上場企業に強制 2007 SECがFPIにIFRSを認める 2008 SECがロードマップ案公表 2009 日本版ロードマップ公表 2010 SEC声明・ワークプラン公表 スタッフ・ペーパー公表 2011 SECスタッフ最終報告書公表 金融担当大臣声明 中間的論点整理公表 強制適用判断延期 モニタリング・ボードメンバー選定要件決定 企業会計審議会当面の方針、自民党提言公表 会計基準アドバイザリー・フォーラムの設置 任意適用要件緩和 2014 2015 4 任意適用開始 強制適用判断延期 2012 2013 日本 | IFRSを巡る世界と日本の動向 政府の成長戦略で任意適用企業拡大促進 修正国際基準公表 政府の成長戦略で任意適用企業の更なる拡大促進 2-1. 国際会計基準審議会(IASB)等の動向 モニタリング・ボード メンバーの選定要件を決定 IFRSの使用: 総則 2012年2月にIFRS財団のガバナンス改革に関する最終報告 (a) IFRSの適用及び単一かつグローバルな会計基準の推進を確 書が公表されましたが、そこでは、モニタリング・ボード 約すること (b) 適用されるIFRSは、ピュアIFRSと実質的に同一であること (IFRS財団のモニタリングを行う機関)のメンバーは、その 定量的要素 資本市場においてIFRSを適用しているか、IFRSの適用を確 (c) 国際的な観点から資金調達の主要な市場であること 約しており、かつ、IFRS財団に資金を拠出している国・地域 定性的要素 の代表者に限定するとされていました。モニタリング・ボー (d) IFRSの開発に関し、継続的に資金拠出していること ドは、2013年3月に、そのメンバーの選定要件と、その要 件に照らしたメンバーの定期的評価を行うこと等について合 メンバー評価は3年ごとに行うとされており、次回は2016 意したことを公表しました( * 1) 。 年にメンバーの見直しが行われます。現メンバーには日本の 2013年3月のモニタリング・ボードのプレスリリースでは 「IFRSの使用」の結果、その資本市場においてIFRSが顕著 に適用されていなければならないとし、また、メンバーを評 価する要件として、次の要件に合意したと公表しました。 金融庁も含まれます。日本のIFRS適用会社数は2015年9月 末現在、適用決定会社も含め91社であり、IFRSを顕著に使 用している、と判断されるかは不透明です。「IFRSの顕著 な使用」がどの程度の使用を想定しているのか、日本はそれ までにどこまで適用企業数を拡大できるか、今後の動向が注 目されます。 <IFRS財団評議員会とモニタリング・ボード> 監視・評議員 の指名の承認 IFRS財団評議員会* 22名(うち日本人2名) モニタリング・ボード IASBメンバー等の 指名・資金調達等 国際会計基準審議会(IASB) 16名(うち日本人1名) (モニタリング・ボードのメンバー) • 金融庁(日本) • 欧州委員会(EC) • 米国証券取引委員会(SEC) • 証券監督者国際機構(IOSCO) • 代表理事会 • 新興市場委員会 • ブラジル証券取引委員会* • 韓国金融委員会* *2014年1月に新たに選任 (*1)IFRS Developments 2013年3月臨時号で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-developments/2013-03-01.html IFRSを巡る世界と日本の動向 | 5 会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)の設置 なお、ASAFのメンバーの選定にあたっては、専門的な能力、 IFRS財団は会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF) ASAFのメンバーとして活動するために利用可能なリソース を設置し、2013年3月にメンバーを公表しました。ASAFは の規模、程度、専門性等を考慮することとされていますが、 各国会計基準設定主体及び地域団体12名で構成され、メン そのメンバー要件も2年に1回の見直しが行われることとなっ バーには日本の企業会計基準委員会(ASBJ)や米国財務会 ており、ASBJは2015年6月に第2期メンバー(第2期より任 計基準審議会(FASB)も含まれます。従来行っていたASBJ 期3年)として再任されました。ASAFにおいては主要な論点 とIASB、あるいはFASBとIASBといった2者間協議は、ASAF が活発に議論されており、ASBJがASAFを通じて関係者に日 という形に置き換わることになり、各国会計基準設定主体 本の意見をインプットすることが期待されています。 とIASBとの関係に変化をもたらすことになります。 <ASAFの概要> ASAFの目的 • 国際的に認められた財務報告基準の単一のセットの開発に貢献すること • 基準設定プロセスにおける各国会計基準設定主体及び地域団体とIASBの集合的な関係を公 式かつ効率的にすること、それにより、IASBの基準設定に関する主要な技術的論点に関す る広範囲の各国及び各地域のインプットが議論され考慮されることを確保すること • 基準設定上の論点に関する効果的な専門的議論を促進すること ASAFの参加メンバー(2015年6月現在) 地域 • 南アフリカ財務報告基準評議会 • • • • アジア・オセアニア基準設定主体グループ(AOSSG) 企業会計基準委員会(ASBJ) オーストラリア会計基準審議会 (AASB)−ニュージーランド会計 基準審議会(NZASB)と協働 中国会計基準委員会 (CASC) 欧州 (「世界全体」枠の1議席を 含む) • • • • 欧州財務報告諮問グループ(EFRAG) ドイツ会計基準委員会 (DRSC) フランス会計基準局(ANC) イタリア会計基準設定主体(OIC) 米州 • • • ラテンアメリカ基準設定主体グループ(GLASS) カナダ会計基準審議会 (AcSB) 米国財務会計基準審議会(FASB) アフリカ アジア・オセアニア (「世界全体」枠の1議席を 含む) 6 メンバー | IFRSを巡る世界と日本の動向 2-2. 米国の動向 米国では、上場している外国登録企業(FPI)については2007年からIFRSの使用が認められていますが、米国国内の上場企 業については、任意適用、強制適用のいずれも結論が出ておらず、現時点ではIFRSの使用は認められていません。 米国のこれまでの主要な動きは以下のとおりです。 IFRSロードマップ案の公表(2008年) 米国証券取引委員会(SEC)が2008年11月にロードマップ 案を公表しました(*2)。ロードマップ案では、一定の要 件を満たす米国国内の上場企業に対し2009年から任意適用 を認めること及び企業の規模に応じて2014年から段階的に IFRSの使用を義務付けること(強制適用)が提案され、強 制適用の判断は2011年中に行うとしました。 のグローバルかつ高品質な会計基準の達成という目標が再 確認されるとともに、米国基準とIFRSのコンバージェンス を引き続き支持することや2011年にIFRS導入の判断を行う 方針に変更がないことなどが示されました。一方、ロード マップ案で提案されていた2009年からの任意適用の開始は 見送られました。同時に公表されたワークプランでは、 IFRSを米国の財務報告制度に組み込むべきか否か、仮に組 み込む場合の時期と方法についてSECが決定するにあたって IFRS 適 用 等 に 関 す る 声 明 と ワ ー ク プ ラ ン を 公 表 判断に資するように、懸念事項となる特定の要因や分野、 (2010年) 特に、①IFRSの十分な開発及び均質適用 ②投資家の利益 のための基準開発の独立性 ③IFRSに関する投資家の理解と SECが2010年2月に、IFRSに対する方向性を再確認する声 明とワークプランを公表しました(*3)。声明では、単一 教育 ④米国の規制環境 ⑤企業への影響 ⑥人的資源の準備状 況、について検討することがSECスタッフに指示されました。 (*2)IFRS Outlook増刊号 第20号(2008年11月)で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-outlook-supplement/pdf/ifrs-outlook-supplement-20.pdf (*3)IFRS Outlook 2010年2月増刊号で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-outlook-supplement/pdf/ifrs-outlook-supplement-2010-02-J.pdf IFRSを巡る世界と日本の動向 | 7 ワークプランに基づく活動報告:SECスタッフ・ペー SECスタッフ最終報告書以降 パーの公表(2011年) 上記のように、SECのスタッフによる報告書以降、SECは ワークプランに基づく取組みの一環として、2011年5月に IFRSの導入について明確にしていませんが、SEC委員や 米国の財務報告制度にIFRSを組み込むための一つの方法論 FASB議長等による発言を考慮すると、米国が今後数年のう をまとめたスタッフ・ペーパーが(*4)、同年11月には ちに米国企業にIFRSを強制適用することはないと言ってよ 「実務におけるIFRSの分析」及び「米国会計基準とIFRSの いでしょう。 比較」の2つのスタッフ・ペーパーが公表されました(*5)。 一方で、SECは2007年11月に米国上場している外国登録企 なお、IFRSロードマップ案で予定されていた2011年中の強 業(FPI)に対し、米国基準との調整表なしでIFRSによる 制適用の判断は行われませんでした。 ファイリングを認めており、この結果、2014年末までに、 ワークプランに関するSECスタッフ最終報告書の公表 (2012年) NYSE上場のFPIのうち約3分の2がIFRSによるファイリング を選択しているようです。 最近では、SECは、米国企業にIFRSの任意適用を認めるか否 2012年7月、ワークプランで特定された領域に関するSECス かも検討した模様ですが、現在のところ、任意適用を認め タッフの調査結果をまとめた最終報告書が公表されました ないという姿勢を崩していません。現時点で世界最大の資 (*6)。この報告書は、SECが米国の財務報告制度にIFRS 本市場を有する米国の今後の動向が注目されます。 を組み込むか否かを判断する際の情報を提供することを主 な目的としており、IFRSを組み込むべきか否か、仮に組み 込む場合にはどのような方法で行うかなどのSECに対する提 言は含まれていません。 (*4)IFRS Developments第4号(2011年6月)で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-developments/pdf/ifrs-developments-2011-06-01-04-J.pdf (*5)IFRS Developments第19号(2011年11月)で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-developments/pdf/ifrs-developments-2011-11-02-19-J.pdf (*6)IFRS Developments第36号(2012年7月)で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-developments/pdf/ifrs-developments-2012-07-02-J.pdf 8 | IFRSを巡る世界と日本の動向 2-3.日本の動向 日本では、2010年3月期から一定の要件を満たす企業についてIFRSの任意適用が容認されました。さらに、2013年10月に は任意適用の要件が大幅に緩和され、資本金20億円以上の海外子会社を有しない企業や新規株式上場(IPO)企業でもIFRS を適用することが可能となりました。なお、強制適用の是非については未だ結論が出ていません。 日本のこれまでの主要な動きは以下のとおりです。 日本版IFRSロードマップの公表(2009年) 企業会計審議会が中間的論点整理を公表(2012年) 金融庁が2009年6月に「我が国における国際会計基準の取扱 2012年7月、金融担当大臣声明後に再開された企業会計審 いについて(中間報告)」(日本版IFRSロードマップ)を公 議会における議論の内容を整理した「国際会計基準 表しました(*7)。日本版IFRSロードマップでは、一定の要 (IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中 件を満たす企業に対し、2010年3月期の年度から任意適用を 間的論点整理)」が公表されました。中間的論点整理では、 認めること、強制適用の判断の時期については、2012年を目 最終的な結論が出ているわけではなく、さらに審議を継続し 途とすること、強制適用に当たっては、強制適用の判断時期 て議論を深める必要があるとし、IFRSの任意適用の積上げを から少なくとも3年の準備期間が必要になるものと考えられる 図りつつ、IFRSの適用のあり方について、その目的や我が国 こと(2012年に強制適用を判断する場合には、2015年また の経済や制度などにもたらす影響を十分に勘案し、最もふさ は2016年に適用開始)などが示されました。 わしい対応を検討すべきである、とされていました。 金融担当大臣が声明で強制適用について言及(2011年) なお、日本版IFRSロードマップでは、強制適用の判断の時 2011年6月、当時の民主党政権の金融担当大臣が、少なく とも2015年3月期についての強制適用は考えておらず、仮 期については、2012年を目途とするとされていましたが、 2012年に結論は出ませんでした。 に強制適用する場合であってもその決定から5-7年程度の十 分な準備期間の設定を行うこと、2016年3月期で使用終了 とされている米国基準での開示は使用期限を撤廃し、引き 続き使用可能とすることを表明しました。 (*7)IFRS Outlook増刊号②(2009年6月)で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-outlook-supplement/pdf/ifrs-outlook-supplement-2009-06-J.pdf IFRSを巡る世界と日本の動向 | 9 IFRSへの対応について、企業会計審議会が「当面の 対応のあり方に関する当面の方針」(当面の方針)を公表 方針」を、自民党が「提言」を公表(2013年6月) しました(*8)。「当面の方針」では、任意適用の積上げ を図るための対応策が示されましたが、強制適用の是非等 企業会計審議会は、中間的論点整理で示された課題を中心 については未だその判断をすべき状況にないとしています。 に議論を行い、2013年6月に「国際会計基準(IFRS)への <「当面の方針」の概要> 任意適用要件の緩和 • IFRSに基づいて作成する連結財務諸表の適正性を確保する取組・体制整備の要件は維持 • 「上場企業」及び「国際的な財務活動・事業活動」の要件は撤廃 IFRSの適用の方法 • ピュアなIFRSは維持 • 「あるべきIFRS」あるいは「我が国に適したIFRS」といった観点から、個別基準を一つ一つ検討し、必要があれば一部 基準を削除または修正して採択するエンドースメントの仕組みを設ける • エンドースメントの手続については、まず、会計基準の策定能力を有するASBJにおいて検討を行い、さらに、現行 の日本基準と同様に、ASBJが検討した個別基準について、当局が指定する方式を採用することが適当である 単体開示の簡素化 • 金商法における開示制度では、連結財務諸表と単体財務諸表の両方の開示が義務づけられているが、連結財務諸表の 開示が中心であることが定着した現在においては、制度の趣旨を踏まえ、単体開示の簡素化について検討することが 適当である • 単体開示のみの会社については基本的に見直しを行うべきではない (*8)IFRS Developments2013年6月臨時号で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-developments/pdf/ifrs-developments-2013-06-01-J.pdf 10 | IFRSを巡る世界と日本の動向 また、自民党が2013年6月に「国際会計基準への対応につ いては「IFRSの顕著な適用」を実現するために、2016年末 いての提言」(提言)を公表しました(*9)。この「提 までに300社程度の企業がIFRSを適用する状態になるよう 言」は、企業会計審議会が公表した「当面の方針」と整合 にあらゆる対策を検討すべきであることを提言するなど、 していますが、安部首相が表明した「集中投資促進期間」 「当面の方針」よりも踏み込んだ内容となっています。 である今後3年間のできるだけ早い時期に、強制適用の是非 や適用に関するタイムスケジュールを決定するよう、各方 面から意見を聴取し議論を深めるべきこと、任意適用につ <自民党の「提言」の概要> 姿勢の明確化 • 「単一で高品質な国際基準」を策定するという目標にわが国がコミットしていることを改めて国際社会に表明すべき • 安倍首相が表明した「集中投資促進期間」のできるだけ早い時期に、強制適用の是非や適用に関するタイムスケジュールを決定するよう、 各方面からの意見を聴取し、議論を深めることが重要 • 「IFRSの顕著な適用」を実現するために、2016年末までに、国際的に事業展開をする企業など、300社程度の企業がIFRSを適用する状態に なるよう明確な中期目標を立て、その実現に向けてあらゆる対策の検討とともに、積極的に環境を整備すべき 任意適用の拡大 • 早急に任意適用企業数の拡大を図ることが重要。具体的には、 ①IPO促進の観点も踏まえ、上場企業要件を撤廃し、また、②海外子 会社を有する企業等に限定しないこととすべき • IFRS適用拡大に向けた実効性のあるインセンティブの検討を進めるべき。特に、取引所において、IFRSの導入、独立社外取締役の 採用など、経営の革新性等の面で国際標準として評価される企業から構成される新指数(「グローバル300社」<仮称>)の創設を 早期に実現すべき わが国の発言権の確保 • IFRS策定に関わるポストの確保、日本の主張を明確にした上での積極的な意見発信、サテライトオフィスの有効活用に努め、わが国の貢献と 重要度を世界各国に十分知らしめるべき • 現行の指定国際会計基準制度のほかに、わが国の会計基準設定主体であるASBJにおいて、IFRSの個別基準を具体的に検討し、わが国の会計 基準として取り込むシステムについても検討を進めるべき 企業負担の軽減 • IFRS適用に伴う実務負担の軽減に努めるべき。特に、企業において開示負担が過剰になることを避けるため、開示負担の軽減策を 検討すべき • 金融商品取引法における単体開示は簡素化を図るべき (*9)IFRS Developments2013年6月臨時号-2で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-developments/pdf/ifrs-developments-2013-06-24-J.pdf IFRSを巡る世界と日本の動向 | 11 政府が「『日本再興戦略』改訂2014」で「任意適用 2014年6月に閣議決定された、政府の新成長戦略「『日本 企業の拡大促進」を掲げる(2014年6月) 再興戦略』改訂2014 -未来への挑戦-」では、金融・資本市 場の活性化の施策として、「IFRSの任意適用企業の拡大促 進」を掲げています。 <成長戦略の概要> IFRSの任意適用企業の拡大促進 • 2008年のG20首脳宣言において示された、会計における「単一で高品質な国際基準を策定する」との目標の実現に向け、IFRSの任 意適用企業の拡大促進に努める • IFRSの任意適用企業がIFRS移行時の課題をどのように乗り越えたのか、また、移行によるメリットにどのようなものがあったのか、 等について、実態調査・ヒアリングを行い、IFRSへの移行を検討している企業の参考とするため、「IFRS適用レポート(仮称)」 として公表するなどの対応を進める • 上場企業に対し、会計基準の選択に関する基本的な考え方(例えば、IFRSの適用を検討しているかなど)について、投資家に説明 するよう東京証券取引所から促す 政府が「『日本再興戦略』改訂2015」で「任意適用 また、2015年6月に閣議決定された、「『日本再興戦略 』 企業の更なる拡大促進」を掲げる(2015年6月) 改訂2015 -未来への投資・生産性革命-」においても、引き 続き、「IFRSの任意適用企業の更なる拡大促進」を掲げて います。 <成長戦略の概要> IFRSの任意適用企業の更なる拡大促進 • 2008年のG20首脳宣言において示された、会計における「単一で高品質な国際基準を策定する」との目標の実現に向け、引き続き IFRSの任意適用企業の拡大促進に努める • IFRS適用企業やIFRSへの移行を検討している企業等の実務を円滑化し、IFRSの任意適用企業の拡大促進に資するとの観点から、 IFRS適用企業の実際の開示例や最近のIFRSの改訂も踏まえ、IFRSに基づく財務諸表等を作成する上で参考となる様式の充実・改訂 を行う • 決算短信の「会計基準の選択に関する基本的な考え方」について、東京証券取引所と連携して分析を行い、各上場企業のIFRSへの 移行に係る検討に資するよう、IFRSの適用状況の周知を図る 12 | IFRSを巡る世界と日本の動向 3. 日本の最新動向 – 任意適用の積上げに向けた取組み - 企業会計審議会から「当面の方針」が公表されて以降、任意適用の積上げに向けて各関係団体が取組みを進めています。 任意適用要件を緩和する連結財務諸表規則等の改 新指数「JPX 日経インデックス400」の公表(2013 正・施行(2013年10月) 年11月) 2013年10月28日に連結財務諸表規則等が改正され、IFRS 日本取引所グループと東京証券取引所(JPXグループ)及び の任意適用要件が緩和されました。今回の改正によって、 日本経済新聞社は、新指数「JPX 日経インデックス400」 IFRSに基づいて作成する連結財務諸表の適正性を確保する を共同開発し、2013年11月6日に内容を公表しました。対 取組・体制整備要件のみを残し、上場企業であること及び 象銘柄の選定にあたっては、「IFRSの採用」が定性的要素 国際的な財務・事業活動を行っていることという要件は撤 として加味されます。新指数は、自民党の「提言」でIFRS 廃されました。この結果、新規株式上場(IPO)企業や資本 の導入、独立社外取締役の採用など、経営の革新性等の面 金20億円以上の海外子会社を有しない企業等の連結財務諸 で国際標準として評価される企業から構成される新指数 表についてもIFRSの適用が可能となりました。 「グローバル300」<仮称>の創設が提案されていたことを 受けたものです。 <連結財務諸表規則等の改正のポイント> 新指数は2014年1月6日から算出・配信が開始されています。 ①IFRS任意適用要件の緩和(連結財務諸表規則第1条の2) a)及びd)の要件を撤廃 a)上場企業であること b)有価証券報告書において、連結財務諸表の適正性を確 保するための特段の取組みに係る記載を行っていること c)IFRSに関する十分な知識を有する役員または使用人を 置いており、当該基準に基づいて連結財務諸表を適正 に作成することができる体制を整備していること d)国際的な財務活動・事業活動を行っていること(外国 に資本金が20億円以上の連結子会社を有しているこ となど) ②IFRS適用時期の制限の緩和(四半期連結財務諸表規則第1条の2) <新指数の概要> 新指数の狙い 資本の効率的活用や投資者を意識した経営観点など、グローバ ルな投資基準に求められる諸要件を満たした、「投資者にとっ て投資魅力の高い会社」で構成される新しい株価指数を創生し、 日本企業の魅力を内外にアピールするとともに、その持続的な 企業価値向上を促し、株式市場の活性化を図ること 銘柄選定方法 • 3年平均自己資本利益率(ROE) 東証上場銘柄の中から、売買代金や時価総額等をもとに上位 改正前は年度末または第1四半期からのみIFRSを任意適用で 1000銘柄を選定した上で、定量的指標と定性的要素によって、 定量的指標 • 3年累積営業利益 きるものとされ、第2・第3四半期からの適用は認められて 上位400銘柄を構成銘柄として選定 • 選定基準日の時価総額 いなかったが、この制限が廃止され、各四半期からIFRSを 任意適用できる 定性的要素 • 独立社外取締役の選任 • IFRS(ピュアIFRSを想定)の採用 または採用を決定 • 決算情報の英文開示 IFRSを巡る世界と日本の動向 | 13 単体開示の簡素化を図る財務諸表等規則等の改正 庁は、連結財務諸表作成会社を主たる対象として単体開示 (2014年3月) の簡素化を図る財務諸表等規則等の改正について2014年3 月26日に公表しました。2014年3月期決算から適用が開始 企業会計審議会が公表した「当面の方針」を踏まえ、金融 されています。 <財務諸表等規則等の改正のポイント> 主な改正の内容 対象会社 簡素化の概要 ► 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、有形固定資産等 明細表、引当金明細表について、会社法の要求水準に合わせるため 新たな様式を規定 ► 開示水準が大きく異ならない項目について、会社計算規則による注 記をもって行うことができる(重要な会計方針の注記、担保資産の 注記、偶発債務の注記、他) ► 連結財務諸表で十分な情報が開示されている項目について単体ベー スの開示を免除(リース取引に関する注記、一株当たり情報の注記、 主な資産及び負債の内容、他) セグメント情報を注記している連結財務 諸表作成会社 ► 製造原価明細書の開示免除 別記事業会社等を除く財務諸表提出会社 ► 有価証券明細表の作成免除 連結財務諸表作成会社のうち、会計監査 人設置会社(別記事業会社等を除く) (= 特例財務諸表提出会社) 連結財務諸表作成会社 ASBJが「修正国際基準」を公表(2015年6月) 企業会計審議会が公表した「当面の方針」で、エンドース メント手続については、まずはASBJにおいて検討を行うと ました。ASBJは、公開草案の公表を経て、寄せられたコメ ントについて審議を行い、2015年6月30日に「修正国際基 準(JMIS)」の公表に至りました(*10)。 されたことを受けて、ASBJは「IFRSのエンドースメントに 関する作業部会」を設置し、2013年8月より検討を開始し (*10)IFRS Developments2015年7月臨時号で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/issue/ifrs-developments/pdf/ifrs-developments-2015-07-01-J.pdf 14 | IFRSを巡る世界と日本の動向 <「修正国際基準(JMIS)」の概要> エンドースメント手続の必要性 • 現在の指定国際基準の仕組みにおいても、IASBにより公表された会計基準等の一部を指定しないことも可能だが、その一部を修正す る手続を念頭に置いた制度となっていない • ピュアなIFRSを適用している会社もあるため、ピュアなIFRSの適用は維持する必要がある • エンドースメント手続は、指定国際基準の指定とは別の制度として行われる 「削除又は修正」の判断基準 • 我が国における会計基準に係る基本的な考え方と合わない場合 • 実務上の困難さがある場合 • ただし「削除又は修正」は必要最小限に エンドースメント手続の意義 • IFRSをより柔軟に受け入れることが可能となる • 我が国の考え方を意見発信することが可能となる IASBが公表するIFRSとの関係 • 「削除又は修正」については、将来的な我が国及びIASBの議論次第では解消され得るものであると考えられ、当面の取り扱いとする のが適当 ASBJによる修正会計基準 2012年12月31日現在でIASBにより公表されている会計基準等について、我が国における会計基準に係る基本的な考え方及び実務上の 困難さの観点からなお受け入れ難いとの結論に達したもののみを「削除又は修正」することとし、「のれん」及び「その他の包括利 益」の2項目が対象とされています。 ASBJによる修正会計基 準第1号 「のれんの会計処理」 ASBJによる修正会計基 準第2号 「その他の包括利益の 会計処理」 ► IFRSではのれんの償却が禁止されている(IFRS第3号「企業結合」)が、のれんは、投資原価の 一部であり、企業結合後の成果に対応させて費用計上すべきものと考え、のれんの非償却処理に ついて「削除又は修正」し、企業結合で取得したのれんは、耐用年数(上限は20年)にわたって、 定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する ► IFRSでは、以下の項目について、その他の包括利益に計上した後に、当期純利益に組替調整しな い会計処理(ノンリサイクリング処理)を採用しているが、当期純利益の総合的な業績指標とし ての有用性が低下すると考え、以下のノンリサイクリング処理について「削除又は修正」し、リ サイクリング処理する ► 「その他の包括利益を通じて公正価値で測定する資本性金融商品への投資の公正価値の変動 (IFRS第9号「金融商品」)」 ► 「純損益を通じて公正価値で測定する金融負債の発行者自身の信用リスクに起因する公正価値 の変動(IFRS第9号「金融商品」)」 ► 「確定給付負債又は資産(純額)の再測定(IAS第19号「従業員給付」)」 適用日 2016年3月31日以後終了する連結会計年度に係る連結財務諸表から適用することができる IFRSを巡る世界と日本の動向 | 15 成長戦略における提言を踏まえた取組み 「『日本再興戦略』改訂2014-未来への挑戦-」および、 「『日本再興戦略』改訂2015-未来への投資・生産性革命-」 における「IFRSの任意適用企業の拡大促進」についての提言 を踏まえ、金融庁及び東京証券取引所は、以下の取組みを 行っています。 「日本再興戦略」改訂2014 金融庁 東京証券 取引所 「日本再興戦略」改訂2015 ► IFRSへ移行を検討している企業の参考とするため、 「IFRS適用レポート」を公表(2015年4月) ► IFRSに基づく(四半期)連結財務諸表の開示例の改 訂作業に着手 ► IFRS任意適用(予定)企業65社に対するアンケート、 28社に対するヒアリング結果を取りまとめたもの ► 開示例の改訂にあたり、実際の開示例やIFRSの改訂 状況を調査・分析 ► 「決算短信の作成要領」の改訂版を公表し、「会計 基準の選択に関する基本的な考え方」を開示するこ とを上場会社に要請(2014年11月) ► 決算短信における「会計基準の選択に関する基本的な 考え方」の開示内容の分析結果を公表(2015年9月) ► 例えば、IFRSの適用を検討しているか(その検討状 況、適用予定時期)などを記載することが考えられ るとしている 16 | IFRSを巡る世界と日本の動向 金融庁が「IFRS適用レポート」を公表 IFRSの任意適用を決定した理由・経緯 金融庁は、2015年4月15日、「IFRS適用レポート」を公表 「IFRS適用レポート」のアンケートの結果、任意適用を決 しました。このレポートは、2014年6月に閣議決定された 定した理由又は移行前に想定していた主なメリットについ 「『日本再興戦略』改訂2014」の中で、IFRSの任意適用企 ては、「海外子会社等が多いことから、経営管理に役立 業に対する実態調査やヒアリングを通じて、移行時の課題 つ」が65社中29社と最も多く、続いて「同業他社との比較 や移行のメリット等を調査し、今後IFRSへの移行を検討し 可能性の向上に資する」を挙げた会社が15社ありました。 ている企業の参考にするため、『IFRS適用レポート(仮 また、IFRSへの移行による実際のメリットとしては、60社 称)』として公表することが提言されていたことに伴うも 中54社が、任意適用を決定した理由又は移行前に想定して のです。 いた主なメリットにおける回答と同順位を回答しており、 本レポートは、IFRSの移行に際しての課題やメリットなど につき、IFRS任意適用(予定)企業65社に対するアンケー IFRS任意適用企業の多くが、移行前に想定していたメリッ トを実際に享受していると考えられます。 ト、28社に対するヒアリングを実施し、その回答を取りま とめたものです(*11)。 IFRSの任意適用を決定した理由又は移行前に想定していた主なメリットとして 1位に順位付けした項目別の企業数(回答社数65社) 4社 5社 6社 29社 6社 海外子会社等が多いことから、経営管理に役立つ 同業他社との比較可能性の向上に資する 海外投資家に説明がしやすい 他の会計基準に比べて、IFRSの方が自社の業績を適切に反映する 海外における資金調達の円滑化に資する 15社 その他 (*11)IFRS Developments2015年4月臨時号で解説しています。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/issue/ifrs-developments/pdf/ifrs-developments-2015-04-01-J.pdf IFRSを巡る世界と日本の動向 | 17 東京証券取引所が「『会計基準の選択に関する基本 IFRS適用状況別会社数・時価総額 的な考え方』の開示内容の分析」を公表 分析結果によると、分析対象会社2,374社のうち、①IFRS適 「『日本再興戦略』改訂2015」における、「IFRSの任意適 用済会社は68社、②IFRS適用決定会社は23社であり、③ 用企業の更なる拡大促進」についての提言を踏まえ、東京 IFRS適用予定会社21社を合わせると112社となり、東証上 証券取引所は、2015年9月1日に、「『会計基準の選択に関 場会社の時価総額に占める割合は24%となります。 する基本的な考え方』の開示内容の分析」を公表しました。 分析は、2015年3月決算会社を中心とした2,374社を対象 として行われました。 2015年3月31日決算会社 (2015年8月31日までに開示) 及び早期適用会社 合計 (社数・時価総額) 左記以外の会社 ①IFRS適用済会社 60社 8社 ②IFRS適用決定会社 17社 6社 21社 - 194社 - 194社(106兆円) 2,068社 - 2,068社(272兆円) 2,360社 14社 2,374社(525兆円) ③IFRS適用予定会社 ④IFRS適用に関する検討 を実施している会社 ⑤その他の会社 合計 68社(101兆円) 112社 23社(15兆円) (147兆円) 21社(31兆円) 分析対象外 82兆円(1,097社) :13% ①IFRS適用済会社 101兆円(68社):17% ②IFRS適用決定会社 15兆円(23社):3% ③IFRS適用予定会社 31兆円(21社):5% ④IFRS適用に関する検討 ⑤その他の会社 を実施している会社 272兆円(2,068社): 45% 106兆円(194社): 17% ①~③計 147兆円(112社):24% 「『会計基準の選択に関する基本的な考え方』の開示内容の分析」の詳細は東京証券取引所の以下のウェブサイトでご覧いただけます。 http://www.jpx.co.jp/news/1020/20150901-01.html 18 | IFRSを巡る世界と日本の動向 4. 日本における今後の動向 企業会計審議会の「当面の方針」で提案された、IFRS任意適 世界最大の経済と資本市場を有する米国においてIFRS適用 用企業拡大に向けた3つの取組み((1)任意適用要件の緩 が遠のいたことで、会計基準の世界的趨勢は、IFRS一辺倒 和、(2)IFRSの適用の方法、(3)単体開示の簡素化)は、 ではなくなったという見方もあるかもしれません。しかし、 上述のようにすべて手が打たれたことになります。こうした その米国ですらIFRSとの大きな乖離が生じないように留意 取組みの結果、本資料作成時点(2015年11月)でのIFRS任 せざるを得ない状況であり、中国も実質的にはIFRSを用い 意適用企業は100社を超えることが見込まれています。 ているとも言える状況にあります。経済が単一化する中で、 諸外国では上場企業にはIFRSを強制している国がほとんど です。こうした中、日本の「任意適用促進」という取組み により100社を超える会社がIFRSを適用することが確実視 されている現状は、世界各国から非常に注目されています。 会計基準が将来的には世界的に収斂していく大きな流れは 変わらないでしょう。この流れが変わらない以上、世界各 国が自国の意見を反映できる枠組みを持った唯一の会計基 準であるIFRSの重要性は無視できません。 しかしながら、自民党の「提言」で目標とされていた 経済のグローバル化が進む中で、日本企業、ひいては日本 「300社程度」という目標には達していません。 の資本市場における会計基準のあり方について、今一度考 えてみる必要があると言えるでしょう。 IFRSを巡る世界と日本の動向 | 19 Appendix 1. G20各国における上場企業の IFRS適用状況 国名 導入時期や導入方法 日本 2010年より任意適用 韓国 2011年より強制適用 中国 コンバージェンスされた自国基準を適用 インドネシア コンバージェンスされた自国基準を適用 インド コンバージェンスされた自国基準を適用予定 サウジアラビア 銀行及び保険会社は強制適用 それら以外は2017年よりコンバージェンスされた自国基準を適用予定 オーストラリア 2005年より強制適用 トルコ 2008年より強制適用 ロシア 2012年より強制適用 南アフリカ 2005年より強制適用 欧州連合(EU) 2005年より強制適用 イギリス 2005年より強制適用 フランス 2005年より強制適用 ドイツ 2005年より強制適用 イタリア 2005年より強制適用 カナダ 2011年より強制適用 アメリカ 国内企業は米国基準、外国登録企業は2007年より米国基準との調整表なしでIFRSを使用可能 メキシコ 2012年より強制適用 銀行及び保険会社は自国基準を適用(コンバージェンスされた自国基準を適用予定) ブラジル 2010年より強制適用 アルゼンチン 2012年より強制適用 銀行については自国基準を適用(2018年よりコンバージェンスされた自国基準を適用予定) 保険会社については自国基準を適用 (IFRS財団実施の調査「世界のIFRSの使用」を基に作成) IFRS財団が公表している各国のIFRS適用状況についての調査結果は、IASBの以下のウェブサイトよりご覧いただけます。 http://www.ifrs.org/Use-around-the-world/Pages/Jurisdiction-profiles.aspx 20 | IFRSを巡る世界と日本の動向 Appendix 2. 日本のIFRS適用済・適用決定会 社一覧(2015年11月10日現在) 任意適用済会社68社 会社名 適用開始時期 会社名 適用開始時期 日本電波工業 2010年3月期 HOYA 住友商事 2011年3月期 日本板硝子 2012年3月期 第1四半期 日本たばこ産業 2012年3月期 ディー・エヌ・エー アンリツ SBIホールディングス 2013年3月期 第1四半期 2015年3月期 マネックスグループ 双日 2013年3月期 トーセイ 2013年11月期 第1四半期 中外製薬 楽天 ネクソン 2013年12月期 第1四半期 丸紅 ソフトバンク 2014年3月期 第1四半期 トリドール 電通 参天製薬 日本取引所グループ コニカミノルタ 日立製作所 日立化成 日立金属 日立建機 日立工機 日立国際電気 クラリオン 日立ハイテクノロジーズ 日立キャピタル 日立物流 デンソー コナミ 本田技研工業 ユタカ技研 エフ・シー・シー ショーワ 八千代工業 旭硝子 すかいらーく 2013年12月期 クックパッド DMG森精機 2015年12月期 第1四半期 武田薬品工業 アステラス製薬 小野薬品工業 第一三共 そーせいグループ リコー 伊藤忠商事 三井物産 三菱商事 伊藤忠エネクス 2016年3月期 第1四半期 2014年3月期 住友理工 KDDI ネクスト 日信工業 ティアック ノーリツ鋼機 テクノプロ・ホールディングス 2014年6月期 エムスリー エーザイ ヤフー 伊藤忠テクノソリューションズ 富士通 セイコーエプソン 日東電工 ケーヒン 2015年3月期 第1四半期 ファーストリテイリング 2014年8月期 IFRS適用済・適用決定会社一覧は日本取引所グループの以下のウェブサイトでもご覧いただけます。 http://www.jpx.co.jp/listing/stocks/ifrs/index.html IFRSを巡る世界と日本の動向 | 21 任意適用決定会社24社(適時開示済) 会社名 適用開始時期 フュージョンパートナー 2016年6月期第1四半期 ジーエヌアイグループ ホットリンク 2015年12月期 セプテーニ・ホールディングス 2016年9月期第1四半期 LIXILグループ インフォテリア Jトラスト 2016年3月期 花王 2016年12月期 第1四半期 三菱ケミカルホールディングス 日本合成化学工業 田辺三菱製薬 アサヒホールディングス JXホールディングス 大陽日酸 コロワイド クレハ 2017年3月期 第1四半期 東芝 西芝電機 東芝テック パナソニック 2017年3月期 スミダコーポレーション 2017年12月期 第1四半期 三浦工業 2018年3月期 第1四半期 サントリー食品インターナショ ナル 2017年12月期 日本ハム 2019年3月期 第1四半期 IFRS任意適用・任意適用予定会社一覧は日本取引所グループの以下のウェブサイトでもご覧いただけます。 http://www.jpx.co.jp/listing/stocks/ifrs/index.html 22 | IFRSを巡る世界と日本の動向 Appendix 3. IASB公表基準・公開草案等 2014年以降公表の基準・公開草案等と当法人の解説記事は以下のとおりです。 2014年以降公表の基準等と当法人の解説 公表時期 基準等 当法人の解説 2014年1月 IFRS第14号「規制繰延勘定」 IFRS Developments 第72号 2014年3月 公開草案「開示イニシアティブ」(IAS第1号の修正案) 2014年4月 ディスカッション・ペーパー「マクロヘッジに対するポートフォ リオ再評価アプローチ」 2014年5月 IFRS第11号「共同支配の取決め」の修正 2014年5月 IAS第16号「有形固定資産」及びIAS第38号「無形資産」の修正 IFRS Developments第78号 2014年5月 IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」 IFRS Developments第80号 2014年6月 公開草案「投資企業:連結の例外規定の適用」(IFRS第10号及び IAS第28号の改訂) IFRS Developments第82号 2014年6月 IAS第16号「有形固定資産」及びIAS第41号「農業」の修正 IFRS Developments第84号 2014年7月 IFRS第9号「金融商品」の公表 IFRS Developments第86号,第87号 2014年8月 公開草案「未実現損失に係る繰延税金資産の認識」(IAS第12号の 修正案) 2014年8月 IAS第27号「個別財務諸表」の修正 2014年9月 IFRS第10号「連結財務諸表」及びIAS第28号「関連会社又は共同 支配企業に対する投資」の修正 2014年9月 公開草案「市場価格のある子会社、ジョイント・ベンチャー及び 関連会社に対する投資の公正価値測定(IFRS第10号、IFRS第12号、 IAS第27号、IAS第28号及びIAS第36号の改訂案、ならびにIFRS第 13号の設例案)」 IFRS Developments第90号 2014年9月 年次改善(2012-2014年サイクル) IFRS Developments第91号 IFRS Developments第77号 IFRS Developmentsは当法人の以下のウェブサイトでご覧いただけます。 http://www.shinnihon.or.jp/services/ifrs/ifrs-commentary/ifrs-developments/index.html IFRSを巡る世界と日本の動向 | 23 公表時期 基準等 当法人の解説 2014年9月 ディスカッション・ペーパー「料金規制の財務上の影響の報告」 2014年11月 公開草案「株式に基づく報酬取引の分類及び測定(IFRS第2号の修 正案)」 2014年12月 「投資企業:連結の例外の適用(IFRS第10号、IFRS第12号、及び IAS第28号の改訂)」 IFRS Developments第97号 2014年12月 IAS第1号「財務諸表の表示」の改訂 IFRS Developments第98号 2014年12月 公開草案 2015年2月 公開草案「負債の分類(IAS第1号の修正案)」 2015年5月 公開草案 「IFRS第15号の発効日(IFRS第15号の修正案)」 2015年5月 公開草案 「財務報告に関する概念フレームワーク」 2015年6月 公開草案「制度改訂、縮小又は清算時の再測定/確定給付制度から の返還の利用可能性(IAS第19号及びIFRIC第14号の修正案)」 2015年7月 公開草案「IFRS第15号の明確化」 2015年8月 公開草案 「IFRS第10号及びIAS第28号の修正の発効日」 2015年9月 「IFRS第15号の発効日」 2015年10月 解釈指針案「法人所得税上の取扱いに係る不確実性」(IAS第12号 における会計上の取扱いに関する解釈指針案) 2015年10月 解釈指針案「外貨建取引及び前払・前受対価」(IAS第21号におけ る会計上の取扱いに関する解釈指針案) 2015年10月 公開草案「実務記述書:財務諸表への重要性の適用」 24 | IFRSを巡る世界と日本の動向 IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」の改訂案 IFRS Developments第93号 IFRS Developments第98号 IFRS Developments第107号 IFRS Developments第111号 IFRS Developments第115号 Appendix 4. 当法人のナレッジ 当法人は、ホームページやメールマガジンといった媒体を通して、IFRSに関する様々な情報をタイムリーに配信しております。 新日本有限責任監査法人 IFRSサイト www.shinnihon.or.jp/ifrs IFRSに関するリソースを紹介する総合サイトです。多彩なコンテンツを参照いただけます。 IFRSメールマガジン 変化し続けるIFRSの最新動向や基準の解説などを、多角的にタイム リーにお伝えします。定期配信は2週間に1回で、号外配信もあります。 ニュースレター • IFRS Developments 公開草案や新基準、審議会の状況など企業に重要な影響を及ぼす案件 の解説をタイムリーに提供しています。 IFRS教材 • IFRS eラーニング 「図を見て」「耳で聴く」効果的なIFRS eラーニング教材です。IFRS の主要25テーマの概要と日本基準との違いを重点的に学べて、短時間 で効率的にIFRSの全体像を把握できます。貴社グループのIFRS教育に すぐにお役立ていただけます。 IFRSアプリ「EY IFRSリンク」 • EY IFRSリンク IFRSに関する最新動向や会計基準の解説など、IFRSを適用している企 業や適用を検討している企業の皆さまのお役に立つ情報を、スマホや タブレットなどのモバイルデバイスで、いつでも手軽にお読みいただ けます。 Apple社のiOS用(iPhone/iPad)のアプリになっており、 iOS6からiOS9についての動作確認を行っております。 本アプリはApp Storeから無料でダウンロードいただけ ます。(「EY IFRSリンク」等で検索) ぜひご活用下さい。 IFRSを巡る世界と日本の動向 | 25 IFRS関連の刊行物 日本基準と国際財務報告基準 (IFRS)の比較 IFRS連結財務諸表記載例 日本基準とIFRSの二つの基準の相違点 について、現在の実務において一般的 と考えられる相違点にできる限り焦点 を絞り、会計分野ごとに解説していま す。 IFRSに基づく連結財務諸表の日本語によ る記載例です。 2014年8月31日現在で公表され、2014 年1月1日以後開始する事業年度に適用さ れるIFRSに基づいています。 IFRSクイックガイド IFRS開示チェックリスト IFRSの任意適用を行うにあたり、日 (2015年版) (2015年版) 本基準を適用している多くの一般事 IFRSの開示規定に従った財務諸表の作成 業会社で重要な影響が生じる可能性 を支援することを目的とした資料です。 が高い項目の概要、それが財務及び 2014年8月31日までに公表され、2014 ビジネスに与える影響、並びに想定 年12月31日以降に終了する事業年度から される課題をコンパクトに解説して 適用されるIFRSに基づいています。 います。 IFRS関連書籍 国際会計の実務 国際会計基準の初度適用 (レクシスネクシス・ジャパン) (清文社) EYのIFRSグループによるIFRS解説書 効果的かつ効率的なIFRSの導入に向けて、 の日本語版です。実務上の論点やそ IFRS第1号の概要のほか、会計テーマご の対応、実際の企業の開示例、今後 とに、概要・初度適用時の論点と具体的 の動向に至るまで詳細に解説してい な処理・欧州での実務対応を詳解してい ます。また、日本語版の作成に当 ます。 たっては、日本企業によるIFRS適用 時に想定される論点を取り上げ、そ れらに対する解釈を加えております。 完全比較 国際会計基準と日 本基準(清文社) 完全解説 IFRS国際会計基準 表示・開示の実務(清文社) 日本基準とIFRSの差異をできる限り 企業がIFRS財務諸表を作成する際に直面 詳細に効率的に把握できるように解 すると思われる具体的な論点を取り扱っ 説を行っています。また、IFRSの各 ており、開示例も多数紹介しています。 基準の背景にある考え方、ならびに またFortuneGlobal500から厳選したIFRS 個別規定の趣旨、さらに企業がIFRS 適用企業30社の表示・開示を徹底分析し、 を適用する際に留意すべき実務上の 適用の傾向を知るための手がかりを得ら 諸問題についても解説しています。 れるよう試みるとともに、海外の規制監 (最新第3版は2016年1月発刊予定) 督機関の指摘も紹介し、海外で生じた論 点や陥りがちな事例も含めています。 26 | IFRSを巡る世界と日本の動向 IFRSを巡る世界と日本の動向 | 27 EY | Assurance | Tax | Transactions | Advisory EYについて EYは、アシュアランス、税務、トランザクショ ンおよびアドバイザリーなどの分野における世 界的なリーダーです。私たちの深い洞察と高品 質なサービスは、世界中の資本市場や経済活動 に信頼をもたらします。私たちはさまざまなス テークホルダーの期待に応えるチームを率いる リーダーを生み出していきます。そうすること で、構成員、クライアント、そして地域社会の ために、より良い社会の構築に貢献します。 Contact 新日本有限責任監査法人 アカウンティングソリューション事業部 IFRS推進オフィス Tel: 03 3503 3508 E mail: [email protected] EYとは、アーンスト・アンド・ヤング・グローバル・ リミテッドのグローバル・ネットワークであり、単体、 もしくは複数のメンバーファームを指し、各メンバー ファームは法的に独立した組織です。アーンスト・ア ンド・ヤング・グローバル・リミテッドは、英国の保 証有限責任会社であり、顧客サービスは提供していま せん。詳しくは、ey.com をご覧ください。 新日本有限責任監査法人について 新日本有限責任監査法人は、EYの日本におけるメ ンバーファームです。監査および保証業務をはじ め、各種財務アドバイザリーサービスを提供して います。詳しくは、www.shinnihon.or.jp をご覧く ださい。 EYのIFRS(国際財務報告基準) グループについて 国際財務報告基準(IFRS)への移行は、財務報告 における唯一最も重要な取り組みであり、その影 響は会計をはるかに超え、財務報告の方法だけで なく、企業が下すすべての重要な判断にも及びま す。私たちは、クライアントによりよいサービス を提供するため、世界的なリソースであるEYの構 成員とナレッジの精錬に尽力しています。さらに、 さまざまな業種別セクターでの経験、関連する主 題に精通したナレッジ、そして世界中で培った最 先端の知見から得られる利点を提供するよう努め ています。EYはこのようにしてプラスの変化をも たらすよう支援します。 © 2015 Ernst & Young ShinNihon LLC All Rights Reserved. 本書は一般的な参考情報の提供のみを目的に作成され ており、会計、税務及びその他の専門的なアドバイス を行うものではありません。新日本有限責任監査法人 及び他のEYメンバーファームは、皆様が本書を利用し たことにより被ったいかなる損害についても、一切の 責任を負いません。具体的なアドバイスが必要な場合 は、個別に専門家にご相談ください。 ED:None IFRSを巡る世界と日本の動向 | 28
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