電力システム改革について -電力の小売全面自由化は、電力システム改革の一部と して位置づけられています。ここでは、自由化の背景としての 電力システム改革について、概要をご説明します。 2015年11月 経済産業省 資源エネルギー庁 1 1-1.電力システム改革の全体像 ○電力システム改革は、①広域的な送電線運用の拡大、②小売の全面自由化、③法的分 離による送配電部門の中立性の一層の確保、の3つを大きな柱としています。 ○3つの柱は、それぞれ以下のスケジュールで進んでいきます。 第1弾改正 第2弾改正 第3弾改正 2013年 臨時国会 提出・成立 2014年 通常国会 提出・成立 2013年 2013年4月2日 2013年 2月15日 閣議決定 11月13日 改 革 の 柱 ① 総 合 資 源 報 エ 告 ネ ル 改書 ギ 革を ー の 取で 調 柱り 査 ②ま 会 と の め 専 門 改 委 革 員 の 会 柱 ③ 電 力 シ ス テ ム に 関 す る 改 革 方 針 第 1 弾 改 正 法 案 成 立 定に 第 つ2 い段 て階 も、 方第 針3 を段 規階 2015年 通常国会 提出・成立 2014年 6月11日 2015年 6月17日 【第1段階】 【第2段階】 2015年4月2016年4月1日 設立 に実施 【第3段階】 2020年4月1日 に実施 2015年 4月1日 広域的運営 推進機関 の設立 改 正第 法2 案弾 成 立 小売全面 自由化 料金規制の 経過措置期間 料金規制 の撤廃 法的分離と同 時期かそれ以降 (参入自由化) (国が競争状況をレビュー) (経過措置終了)のタイミング 改 正第 法3 案弾 成 立 (※2015年9月:電力取引監視等委員会の設立) 送配電 部門の 法的分離 1-2.電力システム改革の目的 1 2 3 安定供給を確保する 震災以降、多様な電源の活用が不可避な中で、送配電部門の中立化を 図りつつ、需要側の工夫を取り込むことで、需給調整能力を高めるとともに、 広域的な電力融通を促進。 電気料金を最大限抑制する 競争の促進や、全国大で安い電源から順に使う(メリットオーダー)の徹底 、需要家の工夫による需要抑制等を通じた発電投資の適正化により、電気 料金を最大限抑制。 需要家の選択肢や事業者の事業機会を拡大する 需要家の電力選択のニーズに多様な選択肢で応える。また、他業種・他地 域からの参入、新技術を用いた発電や需要抑制策等の活用を通じてイノベ ーションを誘発。 2 2-1.広域的な送電線運用の拡大(電気事業法第1弾改正) 3 ○ 第1弾の改正電気事業法に基づき、2015年4月に「広域的運営推進機関」(認可 法人)を創設しました。同機関には、全ての電気事業者が加入します。 ○広域的運営推進機関を司令塔として、地域を越えた電気のやりとりを容易にし、災害などに よって電力が不足した時に、地域を越えた電力の融通などを指示することで、停電が起こりに くくします。 ○また、全国大で需要・供給の調整をする機能の強化などにより、再生可能エネルギーなど、出 力変動の大きい電源の導入拡大等に対応します。 広域的運営推進機関 電気が余っている地域 電気の供給 電気の供給 電気が余っている地域 電気が「不足」している地域B 広域的運営推進機関の業務内容 ①災害等による需給ひっ迫時において、電源の焚き増しや電力融通を指示することで、需給調整を行う。 ②全国大の電力供給の計画を取りまとめ。送電網の増強やエリアを越えた全国大での系統運用等を進める。 ③平常時において広域的な運用の調整を行う。(周波数調整は各エリアの送配電事業者が実施) ④新規電源の接続の受付や系統情報の公開に係る業務や、発電と送配電の協調に係るルール整備を行う。 2-2.小売の全面自由化(電気事業法第2弾改正) 4 ○現在、一般家庭向けの電気の販売は、各地域の電力会社(東京電力、関西電力等、全国 10社)が独占的に担っています。電力をどの会社から買うか選択はできません。 ○2016年4月1日から一般家庭向けの電気の小売業への新規参入が可能となり、家庭も含 む全ての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選択できるようになります(=電力の小 売全面自由化)。 ○同時に、消費者保護のため、自由化後も一定期間は、現行と同じ料金メニューも選べるよう になっています。(現行と同じメニューを継続する場合には、特段の手続は不要です。) <電力の小売販売の自由化の歴史> 【契約kW】 (電圧V) 【2000kW】 (20000V) 2004年4月~ 2000年3月~ 自由化部門 ・大規模工場など 電力量 26% 規制部門 2005年4月~ 自由化部門 自由化部門 2016年4月~ 自由化部門 ・中規模工場/ スーパーなど 電力量 40% 規制部門 ・小規模工場など 電力量 62% 全面自由化 (大口向け) 現在でも自由に 参入可能。 自由な料金設定 が可能。 (2013年度時点) 【50kW】 規制部門 (6000V) ・家庭/コンビニなど (100~ 200V) 電力量 74% ・家庭/コンビニなど 電力量 60% ・家庭/コンビニなど 33% 電力量 38% (2013年度時点) 規制部分 (経過措置) ※ 2020年 以降解除 (家庭・コンビニ等) 現在は一般電気 事業者が独占。 2016年4月から 自由化。 5 2-3.送配電部門の中立化(電気事業法第3弾改正) ○ 電力市場における活発な競争を実現する上では、送配電ネットワーク部門を中立化し、誰 でも自由かつ公平・平等に送配電ネットワークを利用できるようにすることが必須です。 ○中立性を高めていくためには送配電部門の「法的分離」(送配電部門の分社化)が必要 です。 ○ 主要な先進国においても全面自由化の際には発送電分離をしているのが通例であり、全面 自由化と発送電分離を車の両輪として、一体で進める必要があります。 (分社化を円滑に行うには様々な事前準備が必要なため、法的分離は原則として小売の全面自由化から4年後の、 2020年4月に行われます。) 発電(競争部門) 既存電力会社A 競争相手 発電事業者B 送配電(独占の規制部門) 同一主体 既存電力会社A 小売(競争部門) 同一主体 既存電力会社A 競争相手 新電力C 6 3.改革後の電力の安定供給の確保(詳細) 1.送配電事業者(一般電気事業者の送配電部門)による措置 (1) 需給バランス維持を義務付け(周波数維持義務) (2) 送配電網の建設・保守を義務付け (3) 最終保障サービス(需要家が誰からも電気の供給を受けられなくなることのないよう、 セーフティネットとして最終的な電気の供給を実施)を義務付け (4) 離島のユニバーサルサービス(離島の需要家に対しても、他の地域と遜色ない料金水 準で電気を供給(需要家全体の負担により費用を平準化))を義務付け これらを着実に実施できるよ う、現行と同様の地域独占 と料金規制(総括原価方 式等:認可制)を措置 2.小売事業者による措置 需要を賄うために必要な供給力を確保することを義務付け(空売り規制) ※①参入段階・②計画段階・③需給の運用段階、それぞれにおいて、国や広域的運営推進機関が確認を行い、実効性を担保。 3.広域的運営推進機関による措置 将来的に日本全体で供給力が不足すると見込まれる場合に備えたセーフティネットとして、広域的運営推進機関が発電所 の建設者を公募する仕組みを創設 4.ファイナンスに関する措置 (1) 法的分離の後も、グループ一体的な資金調達やグループ会社間での資金融通を認める。 (2) 一般担保付社債の発行について経過措置を設け、新規発行も可能に。 5.事業者間連携、現場力の維持・強化 (1) 発電・小売と送配電の間の業務連携(業務委託)を可能とする。 (2) 送配電と発電の間の人事異動について、双方の現場を経験することで優れた技術・人材の蓄積を可能とする。 (3) 災害時等における発電と送配電の協調に係るルールの整備。 4.電力取引監視等委員会の設立(詳細) 7 ① 電力取引監視等委員会の業務 ○ 2015年9月1日、自由化後の電力市場の厳正な監視を行う組織として、外部有識者5名を委員とする「電力 取引監視等委員会」を設立しました。(従来にない権限を有する最も強い8条委員会) ⅰ)小売全面自由化等を踏まえた電力取引の適切な監視 • 説明義務の履行状況等に係る立入検査、事業者への業務改善勧告、経過措置料金の審査実務、大臣への意見具申等 ⅱ)電力のネットワーク部門の中立性確保のための厳格な行為規制の実施 • 差別的取扱い・グループ内の取引規制等に係る立入検査、事業者への業務改善勧告、託送料金の審査実務、大臣への意見 具申等 ② 特徴 ○ 監視・規制の対象者である電気事業者等から「独立」し、電気事業者等と伍することができる「高度の専門性 (『規制の虜』とならないようにする)」を有する組織としています。 (1)独立性 ○ ○ ○ ○ 経済産業大臣直属の組織とする(資源エネルギー庁には設置しない)。 委員は、個々の職務遂行について誰からも指揮監督を受けないこととする。 委員会に、専属の事務局を設置する。 委員会の単独行使権限として、事業者に対し業務改善勧告等を行う権限を付与する(最も強い権限を有する8条委員会)。 (2)高度の専門性 委員 事務局職員 ○委員は、法律、経済、金融又は工学の専門的な知識と経験を有し、その職務(市場監視等)に関し公 正かつ中立的な判断をできる者のうちから、経済産業大臣が任命。 ○5名の委員を非常勤とすることで、非常勤でしか勤務できない者も含め幅広い層の中から委員を任命。 ただし、委員のうち少なくとも常時2~3名が出勤する勤務形態とする。 ○外部の専門人材(弁護士、公認会計士等)を積極的に採用。 5-1.発電、送配電、小売の各事業者の改革後の姿① 水力発電所 A 発電事業者 【届出制】 B 送配電事業者 【許可制】 火力発電所 8 原子力発電所 風力等発電所 発電事業者 小売事業者へ の卸売契約 多様な発電事業者から 超高圧変電所 の電気を受け入れ 地域独占・ 料金規制等 送配電事業者 ①地域独占・料金規 制、②料金による投資 回収の保証、③供給 責任を措置(最終保障 サービス提供、需給バ ランスの維持義務等) 一次変電所 配電用変電所 託送契約 小売事業者 C 小売事業者 【登録制】 送電 配電 メーター メーター メーター メーター メーター 設備を保有す る必要は無い 需要家への 小売契約 需要家 大工場・ 大ビルディング ビルディング・ 中工場 小工場 商店 住宅 8 9 5-2.発電、送配電、小売の各事業者の改革後の姿② 発電事業 LNG、石炭火力については今後、発電事業者の新規参入が見込まれる。 資源確保を有利に進めるためには、発電事業における企業・業種を超えたアライアンスによる バーゲニングパワーの発揮が重要。 今後の課題は、①ベース電源をはじめ必要な電源をいかに確保するか、②新規参入の発電事 業者に対し送配電網への公平なアクセスをどう確保するか。 電源種別 電源の特性 LNG火力 石炭火力 石油火力 原子力 水力 再生可能エネルギー等(水力以外) ミドル・ピーク電源、CO2排出量小 ベース電源、CO2排出量大 ピーク電源、CO2排出量大 ベース電源、CO2排出ゼロ ベース電源(揚水はピーク電源として使用)、CO2排出ゼロ 固定価格買取制度により導入が拡大、CO2排出ゼロ 送配電事業者 小売事業者 発電電力量割合 震災前(H22年度) 震災後(H24年度) 29.3% 42.5% 25.0% 27.6% 7.5% 18.3% 28.6% 1.7% 8.5% 8.4% 1.1% 1.6% 送配電事部門については引き続き地域独占・料金規制(総括原価方式等)が残る。 送配電ネットワークの建設・保守は送配電部門が行い、今後の人口減少下においても、過疎地 も含めて安定供給を確保する。 小売事業者の撤退・破綻時に備えた「最終保障サービス」や、離島へのユニバーサルサービスを送 配電事業者が提供することで、最終的な供給保障が確保される。 多様なプレーヤーの参入により、「電気を選べる」ようになるとともに、ピークシフト料金など多様な 料金メニューの提供も期待される。 【具体例】 ①他地域の一般電気事業者の参入、②電気と他の製品・サービスとの「セット販売」、 ス・石油など他のエネルギー企業による参入 スマートメーターの導入で需要家の選択によるスマートな消費が実現し、省エネが進む。 ③ガ 10 (参考)小売参入全面自由化に伴う電気事業類型の見直し ○小売参入の全面自由化により、従来の「一般電気事業」や「特定規模電気事業」といった、電気の供 給先に応じた事業類型の区別がなくなります。 ○それに代え、発電事業、送配電事業、小売電気事業という機能ごとに、必要な規制を課します。 (発電事業は届出制、送配電事業は許可制、小売電気事業は登録制とします。) 現行制度(部分自由化) 既存電力会社 (一般電気事 業者) 「一般の需要」への供給を行う。 家庭等の規制部門への供給は、 供給義務・地域独占・料金規 制(総括原価方式による認可 制) 小売参入全面自由化後 3事業を兼業(現行の体制と同様) 発電事業 新電力 自由化された大口需要(「特 定規模需要」)への供給を行 (特定規模電 う。 気事業者) 発電事業 電源開発、日本 原電、製鉄・製 一般電気事業者・特定規模 電気事業者への供給を行う。 紙メーカー等 発電事業 【届出制】 送配電事業 小売電気事業 小売電気事業 【許可制】 公的インフラとして運営。 地 域 独 占・ 料 金 規制 (総括原価方式による認 可制) 【登録制】 全需要家に自 由に供給
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