資源のない日本、将来のエネルギーの姿に関するシンポジウム in 福井 化石、 再エネ、 原子力エネルギーの ベストミックスの実現に向けて 原子力発電所の稼働停止や輸入燃料への依存度などを背景に、 不安定な供給状態が続く日本のエネルギー問題について考える 「資源のない日本、 将来のエネルギーの姿に関するシンポジウム in 福井」 (経済産業省資源エネルギー庁主催) が、 去る3月16日、福井市の福井県民ホールで開催されました。 経済評論家・勝間和代氏による基調講演やパネルディスカッションが行われ、約150人が参加しました。 24 22 2030年度 見通し 石炭 26 原子力 20~22 25 92 22 20 石油 3 LNG 27 再エネなど 22~24 石油 11 LNG 46 原子力 0 56 石炭 31 再エネなど 12 主催者説明 「3E+Sの実現に向けた エネルギーミックス」 吉野恭司 2014年度 実績 ( Economic Efficiency )、環 ) と安 全 性 境( Environment )の 「3E+S」を 基 本 ( Safety 方 針として、「エネルギー基 本 計 画 」と「 長 期エネルギー需 給 見通し」 を策定した。 2030年 度の電 源 構 成は、 水 力や太 陽 光、風 力などの再 生可能エネルギー ~ %、L NG(天然ガス)や石炭などの 火 力 %、原 子 力 ~ %と している。原子力への依存度は、 可 能な限 り 低 減 する方 針だ が、 徹 底 した 省エネや 再 生 可 能エネルギーの最 大 限の導 入、 火 力 発 電の高 効 率 化などを進 めても、2割 を 少 し 超 える程 度は必要になると考えている。 ●現在と2030年度の電源別発電電力量の構成比 (%) 経済産業省資源エネルギー政策統括調整官 6.2 ◉エネルギーの〝あるべき姿〟は 東 日 本 大 震 災 後、 原 子 力 発 電の運 転が停 止し、代 替 と なる火 力 発 電 用の燃 料 輸 入が 増加した。 追加燃料費は年間 3兆 円 前 後かかり、国 富が中 東などへ流 出している。 この燃 料 費の増 加 と 再 生 可 能エネル ギーの賦課金等によって、電気 料 金は家 庭 用で %ほど、 産 業用で4割近く上がっている。 化石燃料への依存度は、エネ ルギー 全 体で %、 発 電では %に達 している。 ま た、 国 際 統 計 上、 国 産エネルギーと 位 置 付 け られている原 子 力に よる発電が停止したため、エネ ルギー自給率は2010年の約 2割から %にまで低下した。 これは、OECD( 経 済 協 力 開 発 機 構 ) 加 盟 国の中でも 最 低レベルである。 火 力 発 電の増 加は、温 室 効 果ガス排出量の増加にもつなが り、 電 力 分 野では、 年 間に日 本の総排出量の8~9%に当た る約1億トン増加している。 こうしたエネルギー情勢を背 景に、 政府は安定供給( Energy ) 、経済効率性の向上 Security 88 基調講演 「電気料金のジレンマ」 氏 エネルギーは経済と密接な関 係があり、 GDP(国内総生産) に対し1%の影響があると言わ れる。 今後も経済成長をする には、安価なエネルギーの安定 供給が不可欠である。 資 源のない日 本では、そのエ ネルギーの供 給 を 分 散 する必 要がある。 金 融でも 分 散 投 資 が大 切だが、エネルギーもこの 先何が起こるか分からずリスク 管理はできないので、可能な限 り分散しなければいけない。 リスクはどこにあるか分から ず、正しい決断もどこにあるか 分 からない。 だから、 多 様 な 人たちが多 様な価 値 観で、議 論をしていくことが大切だ。 「電気は足りている」 と言う 人 がいるけ れ ど、 電 気 料 金の 値 上がりによる家 庭や 企 業の 負 担は大 き く、日 本の景 気の 足を引っ張っている。 発 電 設 備 も、 休 止 していた 火 力 発 電 を 立ち上げて使うなど、かつかつ の状態で電気を供給している。 長期にわたって継続可能な状 態にもっていけるよう、皆が視 野を広げて話し合っていく必要 があると思う。 勝間和代 経済評論家 ◉広い視野で多様な話し合いを 毎 月 支 払っている 電 気 料 金 は、目に見 えるものだけれど、 電気に含まれているさまざまな リスクは、見 えづらい。 そのリ スクとは、 「3E+S」のことで、 安全につくれるか、安定して手 に入るか、コストはどれくらい かかるか、環境への影響はどう か、といったことである。 例 えば、安 定して発 電でき る火 力に頼 れば、二酸 化 炭 素 の排 出 量が増 え、燃 料の輸 入 費の増 加といったリスクも 高 ま る。 原 子 力は安 定 供 給 性や経 済 性に優 れ、発 電 時に二酸 化 炭 素 を 出さないけ れど、 安 全 上のリスクがあり、実際に重大 な事故が起こっている。 では、再生可能エネルギーは どうかと言 う と、枯 渇の心 配 がない国 産のエネルギーだが、 供 給が不 安 定でコストが高い。 また、クリーンであっても、太 陽 光で発 電でき ない夜 間に火 力で発電をバックアップすれば、 二酸化炭素が出てしまう。 こうしたさまざまなジレンマ を、ど う 解 決 するか 考 えてい くことが重要である。 資源のない日本、将来のエネルギーの姿に関するシンポジウム in 福井 パネルディスカッション 化石、 再エネ、 原子力エネルギーの ベストミックスの実現に向けて ◉パネリスト 勝間和代 氏(経済評論家) 砂田八寿子 氏(NPO法人関西消費者連合会理事・消費者相談室長) 十市 勉 氏(日本エネルギー経済研究所・研究顧問) 吉野恭司 (経済産業省資源エネルギー政策統括調整官) 東の警 察 官 という 役 割から手 を 引 けば、日 本の安 全 保 障に 大きな影響が出る。 温暖化防 止に向け二酸 化 炭 素 排 出 量の 大幅な削減も必要で、化石燃 料は効率よく使うべきだ。 吉野 石炭火力の効率化を進 め、また、二酸 化 炭 素の排 出 を管理するルールをつくること が、国の課題だと考えている。 ──将来に向けた再生可能エ ネルギー導入の課題は 砂 田 再 生 可 能エネルギーは 国産だし、枯渇しない、クリー ンというメリットがある一方で、 コストが高い、発電が不安定と いうデメリットが ある。 ま た、 太陽光 パネル が突 風 で飛ば さ れて 氏 (フリーアナウンサー) ◉コーディネーター とまるあきこ 火力依存には多くのリスク 再エネは、より良い制度に ──今、日本の電気は9割近 くが火力発電でつくられてい る。 高い依存度による影響は 砂田 多 くの産 油 国がある中 東では内 戦が激 化しているし、 日 本へ化 石 燃 料 を 運ぶ海 路の 南シナ海では中 国が軍 事 的な 活 動 を 活 発 化させている。 日 本への化 石 燃 料の輸 入 が 止 ま らないか心 配だ。 輸 入 先 を 多 様 化し、温 暖 化 防 止のために も 化石 燃 料の使 用は減 らすべ きだと思う。 勝間 化石燃料の輸入費が増 えると、企業は人件費を抑え ようとするので、雇用の減少に つながるという問題もある。 十 市 シェール革 命で世 界一の 産油国になったアメリカが、中 砂田八寿子氏 近 くの民 家に当たる事 故 も 起 こっている。いろいろな 視 点 か ら考えるべきだと思う。 勝間 固定価格買取制度によ る賦 課 金の負 担が大 きい。 再 生可能エネルギーの価格を引き 下げるような技 術 革 新にお金 をかけるほうがよい。 十 市 期 待は大 きいが、再 生 可能エネルギーだけでは、エネ ルギ ー 供 給 を ま か な え ない。 た だ し 技 術 革 新の 余 地 は あ り、特に安 価で大 量の電 気 を 貯められる蓄電池ができれば、 弱点をかなり 解消できる。 そ れ と、 太 陽 光や 風 力や 地 熱、 バイオマスなど、それぞれの特 徴 を 活 かせる再 生 可 能エネル ギーのベストミックスも必要だ。 吉野 固定価格買取制度を見 直 す 法 案 を 出している。 太 陽 光への偏重やコスト負担を改善 したい。 また、買 取 価 格 を 入 札で決める制 度の導 入 も 検 討 している。 地 熱やバイオマスな どは計 画から発 電 までに時 間 がかかるので、 数 年 先 まで買 取 価 格 を 決める制 度への変 更 を考えている。 資源小国の日本には、エネル ギー供給の多様な手段が必要 ──原子力の役割や安全性に ついては 砂田 「原子力は、すぐにやめ たほうがいい」 という声もある が、そう 簡 単なことではない。 震災後、東電管内では計画停 電によって不自由な生活を強い られた。 関 西では厳 しい節 電 の要 請があ り、工場の作 業 を 中断した。 大変な苦労をした ことを忘れてはいけない。また、 国として早 急に、最 終 処 分 場 を確保していただきたい。 勝間 原子力をやめて電気料 金 が 上 が る と、付 加 価 値 が 減 り、 働く人の給料が減ってしま う。 では、 原子力を動かせば解 決 す る か と 言 う と、そ う もい かない。 時間をかけて落としど ころを話し合う必要がある。 十 市 原 子 力 をやめるにしろ 続 けるにしろ、 廃 炉の問 題 な どがあるので、若い人たちが原 子 力の 技術を 継承し てい く 必 要が ある。ビル・ゲイツが人口増や 温暖化防止を見すえて小型の 原 子 炉 開 発に投 資 しているよ うに、 原 子 力に夢 を もって も らうことが大切だ。 吉野 原子力規制委員会の規 制 基 準 を 満 た す だ けでな く、 残るリスクも 減 らせるよう 事 業者に継続的な努力を促すこ とが国の責任と考えている。 十市 勉氏 ─ ─ 最 後 に、ベスト ミック ス の実現に向けてのお考えを 砂田 化石 燃 料、再 生 可 能エ ネルギー、 原 子 力、どれも 安 全が第一。 国や電 力 会 社には、 事 故 を 起こさない決 意 と万 全 の対 策 を お 願いしたい。 電 気 は不可欠なインフラなので、国 民の命 と財 産 を 守るため、最 適 なエネルギーミックスの実 現 に取り組んでほしい。 勝 間 日 本はこれからも、化 石燃料を海外から輸入し続け るしかない。 化 石 燃 料 がない からこそ、さ まざまな 人の知 恵 を 集めて、 再 生 可 能エネル ギーや原 子 力の上 手な活 用な ど、エネルギー問題の解決策を 考えていく必要がある。 十市 資源に乏しい日本では、 どのエネルギー 源 も 可 能 性 を 排除せず、エネルギー供給の多 様 な 手 段 を も ち、 何 か あって も 迅 速、柔 軟に対 応できる体 制にしておく必要がある。 吉野 国でも、 化石燃料や再生 可能エネルギー、 原子力など、 将 来の選 択 肢 を 確 保 し、 そ れ ぞ れの 問題点を克 服 していく ことが 大 事 だと考 えて いる。
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