DC-DC コンバータ・アプリケーションノート AN-003-PS 《 冗長電源回路の構成とコンバータの並列接続 》 冗長電源は、負荷への電力の供給が一時たりとも断たれることが許されない、すなわち負荷へ供給される電力が常に「生きて」いな ければならないような用例に有用です.DC-DC コンバータのようなモジュール電源では、電子部品を集積して構成されている以上そ の稼動時間(寿命)には限りがあります(MTBF:平均故障時間).コンバータの信頼性を示す尺度とされるこの稼動時間は、印加さ れる電気的ストレスや動作温度など多くの要因によって決まります. 実際上は設計における配慮やアプリケーション技術によって信頼性を かなり向上することもできます.しかし、いつかは故障するのは避けら れません. 要求の厳しい負荷環境に電力を供給する場合、冗長電源システムを 使うことにより電源を遮断することなく稼動させることができます.この 電源システムの故障許容性を向上させる方法として2つの基本的な 方法があります.1つは、図 1 のように2N の冗長構造で電源システ ムを実現する方法です.この方法では N ワット出力のモジュール電源 1台を使う代わりに、おのおの単独で N ワットを供給できる2台のコン バータを使用します.各コンバータの出力段にダイオードを直列に挿 入することで、一つのコンバータが故障した場合にそのコンバータを 切り離すことができ、もう一方のコンバータで全負荷電力を供給できる ようにします.これにより単一コンバータで稼動する時より高い信頼性 が得ることができます. 2つ目の方法は、図 2 のように N+1 の冗長電源を使うことです.この N+1 の冗長構成においては電力供給を多数のコンバータでより細か く分けて分担し、一個のコンバータが故障しても他の N 個のコンバー タがそれぞれ全負荷電力の1/N ずつを供給できるようにします.この 方法では個々の素子に小型で安価なコンバータを使用しながら高い 信頼性を実現することができます. 冗長電源系に使用する OR 接続ダイオード OR 接続ダイオードは、冗長電源システムが正しく機能するために極 めて重要な機能素子です.ただ、これらのダイオードはコンバータの 故障によるシステムの機能停止を防止する反面、電源部における電 力損失を増大させます.この損失によって電力供給機能全体の効率 1/2 DC-DC コンバータ・アプリケーションノート AN-003-PS を悪くすることにもなるため、ダイオード素子の選定には細心の注意が必要です.言うまでもなく、ダイオードの順方向電圧降下(VF) を低く抑えることが設計の重要なポイントとなります.この目的にはショットキーダイオードが適切です. またあるコンバータが故障した場合、その出力部のダイオードは動作しているコンバータ群の出力電圧に等しい逆電圧(VR)で逆バ イアスされます.このときダイオードは過度の逆方向漏れ電流(IR)を流してはなりません.IR が大きいとこれによる電力消費 P=VR ×IR がダイオード素子に生じ早期故障(通常は短絡モード)を引き起こすことがあります.こうしたダイオードの短絡は他のコンバータ やシステム全体に甚大な被害を及ぼすことになります.したがって逆方向耐圧(VR)が充分高くかつ逆方向漏れ電流(IR)の小さい ダイオードを選ぶ必要があります. パワーコンバータの並列接続 アプリケーションによっては、負荷側の要求電力が単一のモジュール電源の出力電力容量を超えてしまうことがあります。このような 用例では、必要な全電力を得るために複数のコンバータの出力を並列に接続することがあります。しかしその場合、特に並列動作に 対応できるように設計されたコンバータでない限り、単純にパワーコンバータを並列で使用することはできません。各コンバータの出 力電圧の不均衡や、デバイスが本質的に低出力インピーダンスであることなどにより多くの問題が生じます。 並列接続された二つのコンバータが全く同じ出力電圧であれば、その出力インピーダンスに応じた負荷電流量を各々が分担して供 給するでしょう。しかしそれは現実にはありえません。出力電圧が全く等しいということはありえず、実用的な負荷/電流の分担がなさ れる保証もありません。 しかし、並列コンバータに外部回路を追加することでうまく負荷を分担させることも可能です。よく行われている方法の一つは、各コン バータの出力の「平衡をとる」やり方です。「平衡をとる」には各コンバータ出力に抵抗を直列挿入し他のコンバータ出力からのデカッ プルを行います。これらの抵抗は、適切な電流分割ができるようできるだけ低い抵抗値でなければなりません。抵抗の温度係数も低 いものを用い、また互いの抵抗比が1%以下となるようマッチングする必要があります。 この方法を用いる欠点として、コンバータの制御帰還ループの外に直列抵抗を追加することにより負荷変動率特性が劣化する、各抵 抗における電力損失が発生する、部品要素が増えるなどが挙げられます。 2/2
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