ノ ー ト 14.5 が ん 診 断 薬 フ ル オ ロ デ オ キ シ グ ル コ ー ス : ク リ プ タ ン ド を 用 い た SN2 反 応 がんの診断に用いられる新しい技法の一つにポジトロン断層法(positron emission tomography, PET)がある.これは陽電子を用いるコンピューター断層撮影技術であり, 陽電子を出す放射性同位体として 18 F が用いられる.このフッ素同位体が陽電子を放 出すると近傍の原子の電子と衝突して対消滅し,γ線を発生する.これが PET 装置で 検知され,コンピューター画像処理によって 18 F が体内のどこにあるかわかる. フッ素同位体は 2–フルオロ–2–デオキシ–D –グルコース (FDG) としてグルコースに 組み込まれる.FDG をグルコースとともに摂取すると,増殖速度の大きい腫瘍細胞に 多く取り込まれるので,がんの検査に用いることができる. OH OH O HO HO OH 18F 2–フルオロ–2–デオキシ–D–グルコース–18F (FDG) HO HO O OH OH D–グルコース 放射性同位元素の 18 F の半減期は約 110 分なので内部被爆の危険は少ない.しかし, FDG をすばやく合成して,直ちに用いることが重要になる. 18 F は H18 O2 のサイクロ トロン放射によって K18 F 水溶液の形で製造され,次の反応式に示す方法で合成される. テトラアセタートとして保護されたグルコースの 2–トリフルオロメタンスルホナー トの SN 2 反応を促進するためにクリプランドが用いられている.非プロトン性溶媒中 で [2.2.2] クリプタンドが K+ を取り込んでいるので,F– は溶媒和されず活性が高い. AcO AcO OAc OAc OSO2CF3 [2.2.2]クリプタンド HCl/H2O CH3CN O O AcO OAc OAc AcO 18F –OSO CF 2 3 18F– FDG 1,3,4,6–テトラアセタート O N O O O K+ O N O [2.2.2]クリプタンド FDG
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