安 全な社 会基盤 の上に 健全な コミュ ニティ が存在 する 地震工学会や土木学会に所属する土木工学科中村晋教授は, 「柏崎原発 の教訓を踏まえ,原子力施設の耐震設計の見直しや土木構造物の安全基 準のガイドラインを作成していた矢先に,この度の大震災が起こってし まった」と無念さを滲ませていました。地盤学会の調査団として,同学 科仙頭紀明准教授,梅村順専任講師とともに,福島県の被害調査に携わ った中村教授。被災経験が生かされず,改善されないままに,以前と同じ 被害を受けた建物もあったと言います。 「地震の被害を受けた建物を今ま で通りに修復しても意味がない。なぜ壊れたのかその原因を明確にし, 強化復旧しなければ,同じことの繰り返しになります」。厳密にいえば, 地盤の揺れ方の違いにも目を向ける必要があります。中村教授は福島県中通り地域の被害の特徴を次のように まとめています。 ●北部と南部の地震動強さの差異は,震源の広がりに起因 した影響が見られる ●斜面崩壊の数は多くないが,火砕流堆積物の風化部やそ の上の火山灰質土にて崩壊が生じている ●被災した造成/盛土構造物,その支持地盤は,谷埋め盛土 や軟弱地盤が多い。盛土材は火砕流堆積物や火山灰質土 が多い ●構造物基礎や下水管路の埋め戻し砂の液状化 ●古い市役所などの防災拠点施設が被災し,原発災害避難 への対応なども加わり,応急・復旧対応が麻痺 地点毎の地盤や揺れの特性を把握し,それに応じて構造物の補強を行うことが必要不可欠であると言えるで しょう。 脆弱な社会基盤の上に,健全なコミュニティは生まれません。地震に対しても地域の安全安心を守ることが 土木工学の果たす役割です。これから求められるのは高い防災力を持ち,安いコストの技術開発を促進する制 度の構築だと話す中村教授。「地域の安全を守るために,今こそ立ち上がらなければならない」と決意を新た にしていました。
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