Volume 20 SPIDERFLASH-t AFIB にて診断しえた 非持続性心室頻拍(incessant型)の症例 向井 靖 先生 九州大学病院 循環器内科 SPIDERFLASH-t AFIB にて診断しえた 非持続性心室頻拍(incessant 型)の症例 向井 靖 先生 九州大学病院 循環器内科 不整脈診療においては、Documentation が困難なた た。近医でホルター心電図を施行されたが、単発の心室性期 めに正しい診断治療に結びつかないことを良く経験する。 外収縮を少数認める程度で、病的所見は得られなかった。症 SPIDERFLASH-t AFIB は数日から数週間にわたり患者の日 状を繰り返すため、平成23年7月に当科を受診した。通常 常の心電図波形をモニタリングすることで、正確な不整脈 の心電図検査や心エコーでは特記事項は認めず、運動負荷心 診断を得ることができる画期的な診断ツールである。今回、 電図で右室流出路起源の心室性期外収縮を認め、期外収縮 SPIDERFLASH-t AFIB が診断に有用であった非持続性心室 感を伴ったが、病歴上の重症度は感じられなかった。そこ 頻拍の症例を経験した。 でSPIDERFLASH-t AFIB を2週間貸し出し、日常生活およ び勤務中の心電図波形を観察した。職場での会議中や、プ 01 症 例 レゼンテーション中に症状が出ることがわかっていたので、 SPIDERFLASH-t AFIB を装着した上でこれらの活動を行っ ていただいた。すると会議で発言中に、Figure 1に示すよ 既往歴のない33歳女性。数年前から日中活動中の動悸と うなincessant型の非持続性心室頻拍を認め、病歴の症状と それに伴う倦怠感、ひどい立ちくらみを自覚するようになっ 一致していた。この結果を受けカテーテルアブレーションを Figure 1 SPIDERFLASH-t AFIB で記録された incessant VT 1 New Hear topics, Vol. 20 Volume 20 行った。運動負荷の結果とあわせ、右室流出路起源の特発 ころ、顕著な反応性心室応答とともに、心室性期外収縮の出 性心室頻拍/心室性期外収縮を考えた。心カテ室ではイソプ 現を認めなくなった(Figure 3) 。6ヶ月後のフォローアッ ロテレノール負荷にて心室性期外収縮が少数出現する程度 プ時には、患者は症状なく職場でも存分に活躍されていると であったが、右室流出路前中隔にて良好な早期性とperfect のことであった。 pace mapが得られた(Figure 2) 。ここで通電を行ったと Figure 2 右室流出路の通電部位と、ペースマップ所見 Figure 3 通電中に認めた反応性心室応答 SPIDERFLASH-t AFIB にて診断しえた非持続性心室頻拍(incessant 型)の症例 2 Volume 20 02 考 察 日常の心電図波形を観察することで、適切な診断に至る症例 は少なくないであろう。今回の症例では、活動性が高い若年 例は日常生活の強い緊張(負荷)状態においてのみ不整脈を ホルター心電図その他の検査を行っても不整脈発作を捉え 起こしていることがあり、既存の検査法では再現が難しく、 られず、ずいぶん後になって波形が捕まり、やっと診断に至 なかなか不整脈診断に至らないことも痛感させられた。問診 ることはめずらしくない。 諸検査が正常で診断がつかないと、 から不整脈を積極的に疑うことも重要であった。以上のよう 神経症として扱われたり、無用な冠動脈CTや冠動脈造影を に、SPIDERFLASH-t AFIB は非侵襲的で大変強力な不整 行われ異常なしと扱われることもあり得る。不整脈を疑う状 脈の診断ツールであり、日常診療に有用と考えられた。 況であれば、SPIDERFLASH-t AFIB である程度の長期間、 ●経歴/ 1996 年 2001 年 2001 年 2003 年 2009 年 2011 年 九州大学医学部 卒業 九州大学大学院医学研究院 修了 広島赤十字・原爆病院 循環器科 米国ハーバード大学ブリガム・ウィメンズ病院 九州大学病院 循環器内科 助教 九州大学病院 循環器内科 講師、心カテ主任 向井 靖 先生 九州大学病院 循環器内科 講師 2013-01-20-01
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