別添 研究機関が行った調査結果(概要)

東京大学における科学研究費補助金による研究活動の不正行為について
1.案件概要
平成24年1月、東京大学に同大学分子生物学研究所 加藤 茂明 元教授を責任
著者とする24編の論文に対し、ねつ造、改ざんの疑いがあるとの申立があった。
これを受け、大学が調査委員会を設置し調査を行った結果、33編の論文において
ねつ造、改ざんがあると認定され、これらの論文には複数の研究者が関与していたと
判断された。
2.調査経過等
平成24年 1月18日
平成25年
9月30日
平成26年 8月 1日
平成26年12月26日
平成28年 1月 6日
東京大学分子生物研究所において学外者4名を加えた5
名による分生研予備調査委員会設置(以降、平成24年
12月3日までに委員会を計13回開催)
東京大学において第1回大学科学研究行動規範委員会に
おいて本調査を行うことを決定(以降、平成26年12
月5日までに委員会を計25回開催)
大学において調査報告(第一次)公表
大学において調査報告(最終)公表
調査報告書提出
3.調査結果の概要
【不正行為について】
(1)加藤 茂明 東京大学元教授
加藤元教授が、論文に掲載する画像の捏造・改ざんを自ら直接行ったという具体
的な事実は確認できなかったが、科学的に不適切な図を含むと判断される30編
の論文の責任著者を務めるなど、当該研究に対して重い責任を負うべき立場にあ
り、かつ、論文作成の過程において強い影響力を行使し得る立場にあったところ、
元教授が研究室の教員・学生に対して、その技術レベルを超える実験結果を過度
に要求し、強圧的な態度で不適切な指示・指導を日常的に行ったため、一部の教
員・学生をして元教授が捏造・改ざんを容認している、もしくは教唆していると
認識するに至らしめたことが問題の主たる要因・背景となっており、元教授がこ
のような環境を作り上げたことが、元教授の主宰する研究室における不正行為を
大きく促進していたものである。また、2編の論文について、捏造・改ざんの疑
いを把握していながら、当該論文の撤回を回避するためにその隠蔽を図り、関係
者に画像や実験ノートの捏造・改ざんを指示し、事実と異なる回答をするなど、
極めて不当な対応をとっていた。
(2)栁澤 純 東京大学元助教授
栁澤元助教授が筆頭著者である1編の論文においてねつ造、改ざんを行った。
(3)北川 浩史 東京大学元特任講師
北川元特任講師が筆頭著者である3編の論文においてねつ造、改ざんを行った。
(4)武山 健一 東京大学元准教授
武山元准教授が共著者である1編の論文においてねつ造、改ざんを行った。
(5)高田 伊知郎 東京大学元助教
高田元助教が筆頭著者である1編の論文においてねつ造、改ざんを行った。
(6)藤木 亮次 東京大学元助教
藤木元助教が筆頭著者である2編の論文においてねつ造、改ざんを行った。
(7)古谷 祟 東京大学元研究員(アステラス製薬)
古谷元研究員が筆頭著者である1編の論文においてねつ造、改ざんを行った。
(8)金 美善 東京大学元研究員(ERATO)
金元研究員が筆頭著者である2編の論文においてねつ造、改ざんを行った。
(9)須澤 美幸 東京大学元研究員
須澤元研究員が筆頭著者である1編の論文においてねつ造、改ざんを行った。
【研究計画調書及び研究費の支出について】
① 加藤元教授を研究代表者とする科学研究費補助金のうち、不正認定された論文が研究
実績報告書または研究成果報告書に含まれたものは9課題あり、平成20年度~平成
22年度科学研究費補助金(基盤研究(A))において、不正行為と直接関連があっ
たと認められた論文掲載料、カラーチャージ料、別刷料の合計588,040円が支
出されていたものの、不正行為があると認定された論文掲載料、カラーチャージ料、
別刷料の支出以外は、研究目的及び研究計画に基づき適正に使用されていた。
② 栁澤元助教授を研究代表者とする科学研究費補助金のうち、不正認定された論文が研
究実績報告書または研究成果報告書に含まれたものは2課題であり、不正行為と直接
関係のある支出はなかった。
③ 北川元特任講師を研究代表者とする科学研究費補助金のうち、不正認定された論文が
研究実績報告書または研究成果報告書に含まれたものは1課題であり、不正行為と直
接関係のある支出はなかった。
④ 武山元准教授を研究代表者とする科学研究費補助金のうち、不正認定された論文が研
究実績報告書または研究成果報告書に含まれたものは3課題であり、不正行為と直接
関係のある支出はなかった。
⑤ 高田元助教が研究分担者とする科学研究費補助金のうち、不正認定された論文が研究
実績報告書または研究成果報告書に含まれたものは4課題であり、不正行為と直接関
係のある支出はなかった。
⑥ 藤木元助教、古谷元研究員、金元研究員、須澤元研究員については、科学研究費補助
金を受けていない。
(関係研究課題)
※関係研究課題(15課題)については別紙資料のとおり。
不正行為と直接関係がある支出の課題のみ掲載。
・研究課題名
・課題番号
・研究種目
骨代謝制御因子としての核内ステロイド受容体群の機能
20249014
基盤研究(A)
配分額
平成20年度 17,160千円
平成21年度 15,600千円
平成22年度 15,600千円
計
48,360千円
・不正行為と直接関連がある支出
588,040円
4.機関による措置
(1)不正行為があったとされた論文の取り下げ
不正行為があった論文33編のうち31編は取り下げられており、残り2編につ
いては現在撤回要請中である。
(2)機関における処分の状況
加藤 茂明
元 東京大学教授
処分内容については現在審議中
※平成24年3月31日付退職
栁澤
純
元 東京大学助教授
処分内容については現在審議中
※平成14年3月31日付退職
北川
浩史
元 東京大学特任講師
処分内容については現在審議中
※平成21年10月31日付退職
武山
健一
元 東京大学准教授
処分内容については現在審議中
※平成24年8月31日付退職
高田
伊知郎
元 東京大学助教
処分内容については現在審議中
※平成21年3月31日付退職
藤木
亮次
元 東京大学助教
処分内容については現在審議中
※平成25年3月31日付退職