柳井市中小企業振興基本条例 多島美を誇り波静かな瀬戸内海に面した

柳井市中小企業振興基本条例
多島美を誇り波静かな瀬戸内海に面した柳井市は、海と深いかかわりを持ちながら多彩で豊
かな歴史を紡いできた。市内には、縄文、弥生時代から人々の営みがあったことを裏付ける多
くの遺跡や日本最大級の大鏡が出土した茶臼山古墳などが残されている。また、日本三大潮流
として知られる大畠瀬戸は、万葉集にも詠まれている。
中世に入ると瀬戸内の良港であった柳井津は、周防国における海上交通の要衝として重要視
され、江戸時代には瀬戸内屈指の商都として繁華を誇っていた。
その後、明治期から戦後を通じても卸売業や小売業、醸造業、食品業、織物業、農漁業など
を中心に発展を続けてきた本市は、昭和30年代に金属製品・機械器具製造業、化学工業など
の都市型工業が定着し、産業の近代化が図られた。
こうした歴史の中で、人の動き、物の流れに活気があった本市には、進取の気性と多様な文
化が根付き、甘露醤油や柳井縞などの伝統技術、金魚ちょうちんなどの民芸品が継承されてい
る。
市内事業所の大多数を占める中小企業は、長い伝統に培われた企業家精神を受け継ぎ、これ
までの経済活動を通して、本市を発展させる原動力になるとともに、地域の歴史、伝統、文化
を育み、地域社会の担い手として重要な役割を果たしてきた。
今日、経済のグローバル化や少子高齢化の急速な進展、人口減少社会の到来など、中小企業
を取り巻く環境は大きく変化し、その事業活動は厳しさを増している。
しかし、そうした中にあっても、本市経済の基盤をなしている中小企業は、自らが経営基盤
の強化や創意工夫による経営革新を図り、将来にわたって市民の雇用や暮らしを支え、豊かな
地域社会の実現に努めていく必要がある。
あわせて、中小企業が社会の変化に対応し、更なる発展をするためには、市、企業はもとよ
り、市民が中小企業の振興は本市の発展に欠かせないことを認識し、それぞれが果たすべき役
割を踏まえながら緊密に連携し、市を挙げて中小企業を支えていくことが重要である。
よってここに、中小企業の振興を市政の重要な柱と位置づけ、地域経済を活性化し、豊かで
住みよいまちの実現に寄与するため、この条例を制定する。
(目的)
第1条 この条例は、中小企業が地域経済に果たす役割の重要性に鑑み、中小企業の振興につ
いて、基本理念及び基本的施策を定めるとともに、市、中小企業者、商工団体、商店街で事
業を営む者、大企業者及び金融機関の役割並びに市民の理解及び協力を明示することにより、
中小企業の振興に関する施策を総合的に推進し、もって地域経済の持続的な発展及び市民生
活の向上に寄与することを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)中小企業者 中小企業基本法(昭和38年法律第154号)第2条第1項各号に掲げる
中小企業者で、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。
(2)商工団体 商工会議所、商工会その他の市内における商業又は工業の振興を図ることを
目的とする団体をいう。
(3)商店街 市内において、小売商業、サービス業その他の事業を営む者の店舗が集積して
いる区域をいう。
(4)大企業者 中小企業者以外の事業者で、市内に事務所又は事業所を有するものをいう。
(5)金融機関 銀行、信用金庫その他の金融業を行うものをいう。
(6)市民 市内に住所を有し、又は通勤し、若しくは通学する者及び市内で事業を行う個人
又は法人その他の団体をいう。
(基本理念)
第3条 中小企業の振興は、市内の中小企業者自らの創意工夫及び自主的な努力を尊重しつつ、
地域特性に応じた総合的な施策を国、山口県その他の関係機関の協力を得ながら、市、中小
企業者、商工団体、商店街で事業を営む者、大企業者、金融機関及び市民が一体となって推
進することを基本とする。
(基本的施策)
第4条 前条の基本理念に基づく基本的施策は、次のとおりとする。
(1)中小企業者の経営基盤の強化を図ること。
(2)中小企業者に対する円滑な資金調達を支援すること。
(3)中小企業者の創業促進及び事業の継承を図ること。
(4)中小企業者の人材の育成及び雇用の促進を図ること。
(5)地域の特性を活かした新商品及び新技術の開発の促進を図ること。
(6)地産地消の推進を図ること。
(市の役割)
第5条 市は、第3条の基本理念にのっとり、国、山口県その他の関係機関と協力して、中小
企業の振興に関する施策を総合的に推進するものとする。
2 市は、中小企業の振興に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努
めるものとする。
3 市は、中小企業の振興を推進するため、積極的に情報を収集し、その提供に努めるものと
する。
4 市は、地域経済の活性化に資するため、市が発注する工事の請負、役務の提供又は物品の
購入その他の調達に当たっては、予算の適正な執行及び透明かつ公正な競争に留意しつつ、
中小企業者の受注機会の確保に努めるものとする。
5 市は、中小企業者の人材の育成及び雇用の促進に資するため、若年者に対する勤労観及び
職業観の醸成の機会づくりに努めるものとする。
(中小企業者の役割)
第6条 中小企業者は、経済的又は社会的な環境変化に応じて、経営の革新及び経営基盤の強
化について、自主的に取り組むよう努めるものとする。
2 中小企業者は、人材の育成、雇用の促進及び従業員の福利厚生の充実その他の雇用環境の
整備に努めるものとする。
3 中小企業者は、事業を行うに当たっては、地域社会を構成する一員としての社会的責任を
自覚し、地域社会との調和を図り、地域社会に貢献するよう努めるものとする。
4 中小企業者は、国、山口県又は市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう
努めるものとする。
(商工団体の役割)
第7条 商工団体は、その加入する中小企業者の創意工夫及び自主的な努力を支援する活動を
行うとともに、地域社会に貢献するよう努めるものとする。
2 商工団体は、会員相互の関係強化を促し、併せて他の団体との連携を図ることにより、本
市の商工業の振興に努めるものとする。
3 商工団体は、国、山口県又は市が行う中小企業の振興に関する施策に積極的に参画するよ
う努めるものとする。
(商店街で事業を営む者の役割)
第8条 商店街で事業を営む者は、市民の交流の場として商店街のにぎわいを創出し、その活
性化に努めるものとする。
2 商店街で事業を営む者は、当該事業者相互の関係強化及び連携を図ることにより、本市の
商業の振興に努めるものとする。
(大企業者の役割)
第9条 大企業者は、事業を行うに当たっては、地域社会を構成する一員としての社会的責任
を果たすとともに、中小企業者との連携及び協力に努めるものとする。
2 大企業者は、中小企業の振興が地域経済の発展に重要な役割を果たすことを理解し、国、
山口県又は市が実施する中小企業の振興に関する施策に協力するよう努めるものとする。
(金融機関の役割)
第10条 金融機関は、中小企業者が経営の革新及び経営基盤の強化に取り組むことができる
よう、円滑な資金の供給及び経営相談等の支援を行うことにより、市内の中小企業の発展に
協力するよう努めるものとする。
(市民の理解及び協力)
第11条 市民は、中小企業が地域経済の発展及び市民生活の安定向上に重要な役割を果たし
ていることを理解し、中小企業の振興に協力するよう努めるものとする。
2 市民は、市内において生産され、若しくは加工された産品を消費し、又は提供されるサー
ビスを利用するよう努めるものとする。
(委任)
第12条 この条例の施行に関し必要な事項は、市長が別に定める。
附 則
この条例は、平成28年4月1日から施行する。