平成27年2月12日(木)-14日(土) コンパクト連星合体からの重力波・電磁波放射とその周 辺領域 初期宇宙における超大質量星形成: バースト降着のもとでの星の進化 東京大学 宇宙理論研究室 吉田研M2 櫻井祐也 共同研究者:細川隆史、吉田直紀 目次 • 超巨大ブラックホール(SMBH)形成モデルとバースト降着 • バースト降着のもとでの超大質量星形成の計算の結果と議論 • 超大質量星の後の進化についての議論 • 結論 1/16 宇宙年齢10億年以前におけるSMBHの存在 SMBH質量 [M⦿] • 遠方宇宙の観測で宇宙10億歳(z~6)未満で10億M⦿程度以上の 活動銀河核中の超巨大ブラックホール(SMBH:SuperMassive Black Hole)の存在を確認 1010 URAS J1120+0641 109 ~2×109 M⦿ 宇宙7.5億歳(z~7) Mortlock et al. (2011) 108 107 106 Marziani & Sulentic (2012) 0 2 4 6 8 赤方偏移 z 2/16 通常の初代星からSMBHを形成するモデル 重力崩壊 降着・合体 初代星 BH SMBH >260 M⦿ >102 M⦿ 〜109 M⦿ 初代星はz~20で形成 典型的に〜100 M⦿以上 >260 M⦿でBHになりうる 降着率 [ M⦿/yr ] 0.01 10-4 成長時間や降着速度に問題あり • z=20で形成された100 M⦿のBHを種 として、エディントン降着で109 M⦿ のSMBH形成を考えると、成長時間が z=20~6でのHubble時間と同程度 (tgrow〜tHubble) no feedback 10-6 10-8 10-10 feedback 10-12 20 18 Jeon et al. 2012 16 z 14 12 10 • BH成長の過程で輻射フィードバック が効くとエディントン降着を維持でき ない 3/16 Direct Collapseモデル 水素原子 冷却 重力収縮 Atomic-cooling halo中のガス雲 他銀河に存在する多く の初代星からの紫外線 により水素分子解離 水素分子冷却抑制 Atomic-cooling halo 形成 Tvir >104 K ガス降着 〜10-1 M⦿/yr 〜0.03 M⦿ 原始星 重力崩壊 〜105 M⦿ 〜105 M⦿ 超大質量星 種BH 通常の初代星形成では 典型的に10-3 M⦿/yr より大きな種BHから 成長させるので成長 時間の問題起きにく い 4/16 Direct Collapseモデルにおける輻射フィードバック • 通常の初代星形成では降着段階で輻射フィードバック効く • Direct collapseモデルでもフィードバック効く可能性あり ガス降着 〜10-1 M⦿/yr 〜0.03 M⦿ 〜105 M⦿ 原始星 降着の過程で輻射 フィードバック効く と105 M ⦿ まで成長 できず問題となる 超大質量星 (Hosokawa et al. 2012、2013) 1052 1048 1044 ZAMS 0.001 M⦿/yr 0.1 M⦿/yr 1040 1036 101 102 103 星の質量 [ M⦿ ] 104 半径 [ R⦿ ] 電離光子放出率 [ sec-1 ] • 降着率一定で~0.04 M⦿/yr以上ではフィードバックは重要でない 104 103 0.1 M⦿/yr 102 0.001 M⦿/yr 101 ZAMS 101 102 103 星の質量 [ M⦿ ] 104 5/16 降着率が変動する場合:バースト降着 • バースト降着:円盤が分裂、分裂片が星に落ち込み起きる • バースト降着が起きることは現在の星形成でも通常の初代星形成 でも2次元シミュレーションにより確認されている Vorobyov et al. 2013 11 10-8 20AU 降着率 [ M⦿ yr-1 ] 円盤の不安定性による降着率の変化 数千年 低降着率期は典型的に~1000 yr 高降着率期は典型的に~100 yr 6 0 時間 [ 104 yr ] • Atomic-cooling halo中の星形成で円盤の分裂が起きることは3次 元流体シミュレーションにより示されている(Regan et al. 2014) 6/16 本研究の主な目的・考える状況 • バースト降着の場合での星進化計算でどのような場合に輻射 フィードバックが効くかどうか明らかにする 分裂片 中心星 降着円盤 • 計算では星の内部と大気のみを考える • 分裂片の降着によるバースト降着は、降着率のモデルを作り、手 で与えることで考慮する 7/16 数値計算コード(Stellar) • 1次元の星の進化計算コード(Yorke氏作成、細川氏改良&提供) を使う、Henyey法利用 • 星内部の進化を決める式を同時に解く • 慣性項は星の表面付近以外で問題とならないので無視する 質量保存の式 運動量保存の式 エネルギー輸送の式 エネルギー保存の式 物質の組成変化の式 輻射優勢なら 8/16 バースト降着のモデル化 • 主に4つのパラメータを設定(下図) • 平均降着率はatomic-cooling halo中の星形成降着段階を想定して 0.1 M⦿yr-1とする • ここでは低降着率期が1080 yrのモデルCに着目して説明する 降着率 高降着率 低降着率 高降着率期の時間 低降着率期の時間 時間 9/16 星の進化過程でのフィードバック 電離光子放出率 [ sec-1 ] 降着率 [ M⦿ yr-1 ] • バースト降着モデルCでは星の進化の過程で、低降着率期に輻射 フィードバックが効く可能性がある 100 フィードバック 効く 10-3 1048 効かない 1044 1040 赤:モデルC 黒:一定降着率 1036 101 102 103 104 105 時間 [ yr ] 10/16 低降着率期に電離光子放出率が大きくなる理由 • 半径が縮み表面温度が上がるので電離格子放出率が大きくなる 電離光子放出率 [ sec-1 ] 半径 [ R⦿ ] 104 103 102 フィードバック 効く 1048 効かない 1044 1040 赤:モデルC 黒:一定降着率 1036 101 102 103 104 105 時間 [ yr ] 11/16 t熱緩和 [ yr ] • 低降着率期でかつ星がまだ収縮し ていない時にt低降着率期 > t熱緩和と いう条件を満たせば星収縮 星の半径 [ yr ] • 星が熱緩和する時に星は収縮する t熱緩和 [ yr ] 星が収縮する条件 104 A 103 270 yr 低降着率期に星収縮 102 する領域 104 103 C t熱緩和 1080 yr t低降着率期 102 104 C 103 102 101 102 103 104 時間 [ yr ] 105 12/16 • t熱緩和は時間とともに大きくなる • t 熱緩和 は星収縮時を除いて異なる モデルで似たような進化をする • そのためt低降着率期が長いほど星が 収縮する領域が大きくフィード バックも効きやすい • 計算によりt 低 降 着 率 期 ~1000yrが フィードバック効く臨界値 t熱緩和 [ yr ] • 低降着率期でかつ星がまだ収縮し ていない時にt低降着率期 > t熱緩和と いう条件を満たせば星収縮 星の半径 [ yr ] • 星が熱緩和する時に星は収縮する t熱緩和 [ yr ] 星が収縮する条件 104 103 A 270 yr 102 104 103 C t熱緩和 1080 yr t低降着率期 102 104 C 103 102 101 102 103 104 時間 [ yr ] 105 13/16 • Inayoshi & Haiman (2014) に よると、atomic-cooling halo中 で円盤の分裂片が出来てから中心 星へ落ち込むまでの時間は、星質 量M*<104M ⦿ の場合、最も長く 見積もってtmig〜4×103 yr 円盤中心からの半径 [ pc ] 現実のt低降着率期はどのくらいか? 10-1 M*=104 M⦿ M*=105 M⦿ M*<104 M⦿ 10-2 10-3 10-4 103 104 105 分裂片形成からの時間 [ yr ] • 分裂片が円盤中に複数あることを 考えると、t 低降着率期 はこの値より ずっと小さくなると考えられる … 密度分布 500AU Regan et al. 2014 • その場合に輻射フィードバックが効くかどうかは自明でない • 実際にt低降着率期がどのくらいになるか知るためには、円盤について の多次元流体シミュレーションを行い、降着史を知る必要がある 14/16 超大質量星の後の進化 • 星形成過程を考慮していない場合の計算例 – Chen et al. (2014) 2次元流体GRシミュレーション 〜55,000 M⦿の非回転超大質量星が超新星を起こすかもし れない 爆発エネルギー1055 erg コンパクト天体を形成せず、星全体を解放 – Reisswig et al. (2013) 3次元流体GRシミュレーション 高速回転超大質量星が重力崩壊時にBH連星となり、その後 合体重力波放出 • 現実的な星形成過程(バースト降着など)を考慮し た超大質量星では? 単一BH? BH連星? 超新星? • SMBHの種BHについてより詳しく知るためには、星 形成過程の詳細を考慮し重力崩壊の計算をする必要 がある Chen et al. 2014 Reisswig et al. 2013 15/16 結論 • 一定降着率では0.1 M⦿yr-1でフィードバックが効かない一方で、 時間変動降着率の場合では低降着率期が~103 yr以上でフィード バックが効く可能性があることが分かった 超大質量星形成は一定降着率の場合と比較して少し困難になる かもしれない • 実際にt低降着率期がどのくらいになるか知るためには、多次元流体シ ミュレーションを行う必要がある • SMBHの種BHについてより詳しく知るためには、星形成過程の詳 細を考慮し重力崩壊の計算をする必要がある 16/16
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