社会人基礎2−6−5(航空)

As of 19 Oct. 2015
社会人基礎Ⅱ
第6回 産業論の基
礎
2015年10月26日(月)、11月3日(火)
0
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本日のフライトプラン
航空産業の経営分析

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
航空ビジネスの特徴
航空会社の経営指標
 生産量、運送量、搭乗率
 イールド、ユニット・レベニュー、ユニット・コスト
 損益分岐点
航空会社の収入と費用
 航空会社の収入と費用内訳、長期的変化
航空会社の管理会計
 全コストがカバーできないでも運航する場合
航空会社の国際提携
 収入増とコスト削減
世界的なLCCの躍進
 ネットワーク・キャリア(NC)とLCCの相違点
国際線航空市場、インバウンド革命
1
情報ソース
• 各社情報(HP)
– 有価証券報告書、決算短信
– アニュアル・レポート
– 決算説明会資料(グラフ化、分析情報あり)、その他
• 国土交通省(HP)
– 航空関係統計
http://www.mlit.go.jp/k-toukei/search/pdf/11/11201400cc0000.pdf
http://www.mlit.go.jp/k-toukei/11/annual/11a0pdf.html
http://www.mlit.go.jp/k-toukei/search/pdfhtml/11/11201400a00000.html
•
•
•
•
•
航空統計要覧2014(\4320)
数字で見る航空2014(\1400)、2015(\1500 10月30日発行)
IATA World Air Traffic Statistics 58th (世界のデータ)(図書館)
航空図書館 (住所: 〒105-0004 東京都港区新橋1丁目18−1)
航空経営研究所HP (コンサルティング会社 無料分析情報)
2
航空ビジネスの特徴
+
+
経済発展
所得増大
親和性大
-
-
+
貿易自由化進展
航空自由化進展
出典:日本航空
-
-
3
世界の航空旅客数の推移
イベントリスク発生で需要一時停滞
現在国内線約20億人、国際線約13億人 国際線比率上昇中
百万人
3530
3600
3306
3134
2977
2845
2681
249725072497
2328
2211
2064
イベントリスクは航空会社単独で回避不可能!!
3200
2800
2400
2000
1600
1200
1142
1118116411351146
10271082
179317921849
1672
1562
1471
1457
1391
12331304
800
400
湾岸戦争
出典:IATA/ICAO
9/11
イラク・SARS
リーマン
ショック
2015F
2014F
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
1996
1995
1994
1993
1992
1991
1990
1989
1988
1987
0
4
航空会社の生産量と運送量
旅客のケース
【Available Seat Kilometer:有効座席キロ】
ASK
・航空会社の旅客運送サービスの生産量を表す単位。
旅客
・販売可能な座席数に飛行区間の大圏距離(当該区間の地球表面上
生産量
の最短距離)を掛けて計算。
・座席1席を1キロ飛行する場合、1座席キロという。
【Revenue Passenger Kilometer:有償旅客キロ】
RPK
旅客
運送量
・航空会社の有償旅客の運送量を表す単位。
・有償の搭乗旅客数に飛行区間の大圏距離を掛けて計算。
・有償旅客1名を1キロ運送した場合、1有償旅客キロという。
参考 : この他旅客を重量に置き換えて貨物と統合して計算する ATK(Available TonKilometer:有効トンキロ)(生産量)と RTK(Revenue Ton-Kilometer:有償トンキロ)(運送量)
がある。ここでは省略する。
出典:丹治
5
航空における重要な数値指標
旅客のケース
座席利用率
旅客座席利用率(L/F、ロードファクター)は生産量と運送量との関係を示す。
(L/F、ロード・ファ
クター)
座席利用率 = 有償旅客キロ ÷ 有効座席キロ × 100(%)
①イールド
②ユニット・レ
ベニュー
③ユニット・
コスト
① イールドは有償旅客キロあたりいくらの収入があったかを示す。
損益分岐
利用率
(損益分岐L/F)
生産量に対して運送量が少なければ、航空会社の収支は悪化する。
イールド=旅客収入 ÷ 有償座席キロ(RPK)
② ユニットレベニューは有効座席キロあたりいくら収入があったかを示す。
ユニット・レベニュー=旅客収入÷有効座席キロ =イールド X L/F
③ ユニット・コストは有効座席キロあたりいくらの費用がかかったかを示す。
ユニット・コスト)=旅客営業費用 ÷ 有効座席キロ(ASK)
損益分岐利用率とは、座席利用率がある率を超えれば採算が取れるところ
であり、航空会社によって、また路線によって異なる。
ユニット・レベニューが上がりユニット・コストが下がれば損益分岐率は下がる
。逆の場合は分岐率が上がる。
航空会社は、実際の利用率が損益分岐利用率を上回るように、収入を拡大
し、コストを下げる様々な工夫を重ねている。
参考 : この他旅客を重量に置き換えて貨物と統合して計算する 方式があるが、ここでは省略。
出典:丹治
6
損益分岐点とは
収入と経費が一致するポイント、売り上げがそれ以上伸びれば黒字
出典:日本航空
7
決算報告例 輸送実績報告
出典:日本航空
8
注: 赤色=LCC
日本の航空会社
ANA系
JAL系
 日本航空(JL/JAL)
 日本トランスオーシャン航空
(NU/JTA)
 J-AIR(XM)
 日本エアーコミューター
(3X/JAC)
 琉球エアコミューター(RAC)
 北海道エアシステム(HAC)
 ジェットスタージャパン(LCC GK
外国資本33%)
・・・・・・・・ その他 独立
系 ・・・・・・・・・
• フジドリームエアラインズ(FDA)
• 天草エアライン
• オリエンタル・エア・ブリッジ
出典:丹治
• 春秋航空日本(LCC IJ/SJO)




全日本空輸(NH/ANA)
エアージャパン(NQ/AJX)
ANAウィングス
バニラ・エア(LCC JW
ANA100%)
 ピーチ (LCC MM 外国資本3
3%)
<ANAの提携社>
以下の中堅会社はANAと緊密提携
 北海道国際航空(HD/ADO)
 ソラシドエア(6J/SNJ)
 スターフライヤー(7G/SFJ)
 IBEXエアラインズ(FW/IBX)
 スカイマークエアラインズ
(BC/SKY)
9
国内線イールド(FY2014)
羽田=福岡(区間距離約1000km)ではJAL/ANA1万7千円、LCC7千円強
円
20
18
16.9
17.4
16
14
12
16.2
16.1
13.3
13.0
11.7
LCC
10
8
7.8
7.7
6.4
6.4
6
4
2
0
出典:国土交通省
10
世界の航空会社のユニット・コスト比較
: LCC
出典:国土交通省
11
航空会社の損益計算書(P/L)
航空会社の収入内訳(2007)
不定期
2.4%
その他
10.2%
旅客収入8割弱、 貨物収入1割、
その他(付帯収入)1割(最近増加傾向)
収入内訳シェア変化 1999⇒2007
郵便
0.4%
貨物
10.3%
1999比率
2007比率
変化
旅客
75.5%
76.7%
1.2pts
貨物
10.0%
10.3%
0.3pts
郵便
0.3%
0.4%
0.1pts
その他
9.8%
10.2%
0.4pts
3.7%
2.4%
-1.3pts 12
定期
旅客
76.7%
出典:ICAO Financial Data
不定期
航空会社の経費内訳(2007)
 燃料費3割、*機材費1割、整備
費1割
間接部門経費
5.3%
運航費( 燃油費
以外)
14.5%
その他
5.1%
 かつては多くが人件費がトップ、
現在は燃油費トップが多い
代理店手数
料,宣伝費等
9.7%
旅客サービス
8.7%
燃油費
25.4%
その他空港経
費
9.6%
着陸料、航援
料等
6.6%
出典:ICAO Financial Data
 人件費は15%から35%(各項目
の中に入っている)
燃油費急増!!
1999 11%
2004 17%
整備費
10.3%
2008 33%
2011 30%
減価償却
6.0%
2013 30%
13
航空会社の損益計算書(P/L)
航空会社の経費内訳(2007)
支出項目
運航費
航空燃油費
運航乗員人件費
機材リース料*
その他
1999年
度比率%
2007年度
比率%
28.0
39.9
11.0
8.3
7.5
1.2
25.4
7.4
6.3
0.8
注目ポイント!!
変化
pts
+11.9
+14.4
-0.9
-0.8
-0.4
整備費
10.8
10.4
-0.4
減価償却
6.6
6.0
-0.6
航空機材関連*
その他
4.8
1.8
17.7
空港費
着陸料、施設使
用料
航行援助施設使
4.8
1.2
16.2
4.4
2.9
10.4
4.1
2.5
9.6
0
-0.6
-1.5
-0.3
-0.4
-0.8
用料
その他
旅客サービス費
10.8
8.7
-2.1
販売費
13.7
8.5
-5.2
一般管理費
6.1
5.3
-0.8
出典:ICAO Financial
長期的トレンド
 燃油費シェア増大
 旅客サービス費減少
 簡素化、有料化
 販売費減少
 ネット販売、直接販売
機材費は?
 機材費=11.1%
機材リース料 6.3% と
減価
償却費(航空機
材関連)4.8%を加算した
もの
空港費、航空燃油費
 日本は国際水準より大幅
に高い空港使用料を徴収
、日本の航空会社にとっ
てハンディキャップに
 日本は国内航空燃料に多
額の税金を課金、日本の
航空会社にとってハンデ
ィキャップに
14
航空会社の総費用に占める
燃油費支出の割合
航空燃油価格は航空会社がコントロール不可能。
先物取引(ヘッジ)で将来の価格を固定できるが、損失のリスクも大きい!!
%
35
33.0
31.0
29.0
30
27.3
22.6pts増加
25.7
25
30.1
28.6
26.5
26.1
23.8
22.2
20
17.3
14.4
15
12.6
10.4
13.5 13.0 13.6
11.0
10
5
0
2015F
2014E
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
2003
2002
2001
2000
1999
1998
1997
出典:ICAO/IATA
15
航空会社の管理会計 追加運航の目
安
航空会社は必ずしも100%利益が出なくても運航する場合がある。
【片道あたり】
百万円
21
■収入合計■
旅客変動費(販売手数料等) 3
5
航空燃油費
運航施設利用費や乗員経費
2
等
11
■限界利益■
2
機材費
1
乗員人件費
1
整備費等
1
支店空港所経費
2
<その他固定費>
17
■路線費用■
4
■路線利益■
旅客数(人)
座席数(席)
搭乗率(%)
損益分岐搭乗率(%)
300
380
79%
61%
一人当たり収入(千円)
出典:日本航空
一席あたり費用(千円)
70
45
ケース
①
ケース②
ケース
③
8
1
5
13
2
5
14
2
5
2
2
2
0
4
2
1
1
0
0
0
0
5
2
1
1
1
0
0
0
118
183
200
31%
48%
53%
<ケース①>
 臨時便運航の目安
 変動費をカバー
=収入>変動費
 旅客数118人、搭乗率31%
<ケース②>
 増便の目安(同じ路線で)
 一次貢献利益確保
=収入>変動費+機材・乗員
人件費・整備費などの固定
費
 旅客数183人、搭乗率48%
<ケース③>
 新路線開設
 二次貢献利益確保
=収入>変動費+機材・乗員
人件費・整備費などの固定
費+支店空港所経費
 旅客数200人、搭乗率53%
16
航空会社の国際提携
コードシェアリング、マイレージ提携、空港ラウンジ・カウンター共用など
出典:国土交通省
17
国際提携(マルチ・アライアン
ス)
 広範なリソース共有やスケジュール調整などで収入増とコスト削減を目指す
 合併の代替手段(航空では国境を超えた合併は一部例外を除いて難しい)
提携の具体的内容
 コードシェアリング (C/S)
 FFP共通化
 空港施設(カウンター、ラウンジ)共用
 同一空港ターミナル
 市内オフィス共用
 スケジュール調整(シームレス・サービス)
 共同商品販売 (世界一周航空券)
 共同発注・購入(機材、部品、機内用品、保険)
<より深い提携>
 共同運賃設定・共同マーケティング (ATI:独禁法免除措置必
要)
 収入プール・利益配分 (ATI:独禁法免除措置必要)
出典:丹治
18
LCC⇒航空業界のイノベーション
 「経営技術の革新」:*LCCビジネスモデルという「ソフトのイノ
ベーション」が市場・産業に依然大きなインパクトをもたらしている。
 高速化、大型化といったハードの技術革新は一段落。
*LCC : Low Cost Carrier (低コスト航空会社、格安航空会社)
 航空旅行の大衆化:バス旅行並みの料金を実現。観光の活性化。
 業界統合:既存航空会社(*NC)は続々合併(⇒規模の経済)。
*NC : Network Carrier (多機種運航、広い市場をカバー)
 既存航空会社の変化:マルチブランド戦略、商品差別化(プレミア
ム指向)、およびLCCの模倣(付帯収入強化)。
 LCC自身の変化・進化:長距離線への進出、品質向上でプレミアム
客を取り込むハイブリッド化戦略も。
 新興国の急激な変化:LCCの歴史が新しい新興国における変化顕著。
短期間でLCCが既存航空会社を凌駕し主役に。
 LCCのインパクトの継続:LCC成熟市場、新規市場いずれでもLCCは
市場・産業に種々のインパクトをもたらし続けている。北東アジア
はこれから。
出典:丹治
LCCビジネスモデル
①
②
③
④
短距離かつ直行便を主体とする運航形態
空港滞在時間の短縮や機材稼働率の向上
二次的空港の利用
販売コストの削減・サービスの簡素化・社員多機能化・外部委託
LCC(格安航空会社)
フルサービスエアライン
・低運賃
・基本的に払戻し不可
・普通運賃は割高
・基本的に払戻し可能
基本的になし
あり
・主に短距離の二都市間を直行
行便で運航
・空港滞在時間短縮、機材回転
転率向上
・短距離~中長距離
航空券販売
・インターネット販売主体
・ネット+旅行代理店
サービス
・エコノミー1クラスのみ
・2または3クラス制
・小型の単一機材を使用
・小型機~大型機
・二次的空港を指向
・主要空港を指向
運賃
マイレージ・サービス
運航形態
航空機の種類
利用空港
出典:国土交通省資料を引用
20
LCC市場別シェア
東南アジアでは10席に6席、西欧では4席、北米では4席、北東アジアでは1席
がLCC
60%




55%
50%
45%
世界の全座席の4分の1はLCC
東南アジアでの急速な拡大
欧米は成熟市場
北東アジアはこれから
東南アジア
57.0%
西欧44.0%
40%
35%
北米30.2%
30%
25%
世界全体
25.9%
20%
15%
北東アジア
含日本
11.5%
10%
5%
出典:CAPA(Center for Asia Pacific Aviation)データより作成
4
2
0
1
3
2
0
1
2
2
0
1
1
2
0
1
0
2
0
1
9
2
0
0
8
2
0
0
7
2
0
0
6
2
0
0
5
2
0
0
4
2
0
0
3
2
0
0
2
0
0
2
2
0
0
1
0%
21
航空会社総旅客数ランキング (FY14)
LCCは昔は小規模だったが、現在はメジャーキャリアである。
160
142
140
129
LCC
129
120
101
100
90
86
86
78
80
78
73
73
67
62
60
53
50
47
46
46
40
40
38
37
33
20
0
JetBlue
Lion G
GOL
JAL Grp
AirAsia G
ANA Grp
EK
QF Grp
TK
easyJet
LATAM
IAG+Vueling
AF+KLM
MU
CA Grp
Ryanair
LH Grp
UA
CZ
SWA
DL
AA+US
出典:IATA WATS 2015をもとに作成
22
NCと比較した場合のLCCのP/Lの特
徴
LCCは;
 「その他の収入」のシェアが大きい (~30%)
 積極的機内販売、様々な手数料徴収
 販売費シェアが小さい
 インターネット販売主体 (コミッション削減)
 格安運賃そのものが宣伝に
 マイレージサービスなし
 旅客サービス費シェアが小さい
 サービスの有料化
 貨物収入シェア少ない
 貨物ビジネスに消極的
 目的:折り返し時間短縮 (←ビジネスモデルの簡素化)
23
国際航空市場異変--インバウンド革命!!
これまで日本人外国旅行者数が圧倒的に多かったが、今年訪日外国人の逆転確実!!
将来は訪日外国人の数が日本人外国旅行者の何倍にも。これは革命的変化!!
日本人外国旅行者数
1964年
2015年(推定)
訪日外国人数
35万人
1,900万人 (+50%)
邦人外国旅行者数
13万人
1,600万人 (-5%)
20,000,000
18,000,000
訪日外国人数
同時多発テロ
リーマン
ショック
震災・原
発問題
円安
SARS
イラク戦争
16,000,000
第一次オイルショック
湾岸戦争
14,000,000
成田開港
12,000,000
海外観光旅行自由化
10,000,000
東京オリンピック
第二次オイルショック
プラザ合意
8,000,000
ジャンボ機導入
6,000,000
4,000,000
2,000,000
0
CY15F
CY14
CY13
CY12
CY11
CY10
CY09
CY08
CY07
CY06
cy05
cy04
cy03
cy02
cy01
cy00
cy99
cy98
cy97
cy96
cy95
cy94
cy93
cy92
cy91
cy90
cy89
cy88
cy87
cy86
cy85
cy84
cy83
cy82
cy81
cy80
cy79
cy78
cy77
cy76
cy75
cy74
cy73
cy72
cy71
cy70
cy69
cy68
cy67
cy66
cy65
cy64
出典:JNTO等
24