2014年版「電機産業に関わる政策制度課題と私たちの見解」

Ver.1.1
全体版
電機産業に関わる政策制度課題と私たちの見解
2014年6月XX日
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
内 容
本文中、電機連合の要請内容には、「○、★」を付け、四角枠で囲んであります。
Ⅰ.電機産業の現状
Ⅴ.電機産業の技術を生かした
国内産業の活性化
Ⅱ.エネルギー産業による被災地経済の復興
Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
1.電機連合第3次エネルギー政策について
2.電力の安定供給について
3.再生可能エネルギーの普及と
固定価格買い取り制度について
4.福島第一原子力発電所の廃炉と
これからの原子力発電について
5.より効率的なエネルギー使用について
6.中長期視点からのエネルギー
・環境政策の再構築について
Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
1.マイナンバーへの対応・
電子行政の推進について
2.個人情報保護とデータ利活用ルールについて
3.流通取引慣行ガイドライン
(独占禁止法の運用指針)の見直しについて
4.学校教育のICT化について
5.人材の育成について
6.研究開発の促進について
7.国内事業立地推進事業の継続について
8.税制について
1.国内インフラの安全性向上について
2.災害対策の充実について
3.医療・介護機器について
4.次世代高画質規格(4K・8K)テレビについて
Ⅵ.輸出促進に向けた取り組み
Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた
施策
1.総実労働時間短縮のための取り組みについて
2.生活との調和がより可能となる
柔軟な働き方の促進について
Ⅷ.すべての労働者の均等・均衡処遇の実現
1.法定最低賃金の遵守と理解活動の推進について
2.派遣労働者・請負業務従事者の雇用の安定・
労働条件の向上に向けた支援の充実について
Ⅸ.誰もがいきいき働けるための環境整備
1.高年齢者が働きやすい環境整備について
2.不妊治療支援の充実について
3.パワーハラスメントへの対策の充実について
4.障がい者に対する就労支援および
定着支援の強化・充実について
Ⅹ.社会保障と税の一体改革
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1.医療保険制度改革について
(保険者機能の発揮、低所得者対策)
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Ⅰ.電機産業の現状
1.国内電機産業の位置づけ(2010年度)
国内総生産に占める機械工業の割合
国内雇用者に占める機械工業の割合
(岩手県,宮城県及び福島県を除く)
出所:県民経済計算(内閣府)
労働力調査(総務省)
2010年度でみると、電機産業(電機・電子部門のみ)の国内総生産額は11.9兆円で国内総生産額の
2.4%を占めている。機械工業では自動車に次ぐ規模。
国内雇用では、電気機械で151万人、情報サービスで162万人おり、国内雇用者総数の5.2%(電気
機械:2.5%、情報サービス:2.7%)を占めている。
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Ⅰ.電機産業の現状
2.電機産業の国内動向
電機産業の国内生産高・国内売上高
電機・電子産業の国内生産高の推移(年度)
情報サービス産業の売上高の推移(年度)
電機・電子産業の2013年度国内生産高は21.8兆円で、ここ数年の生産額の縮小傾向に歯止めがかか
る。ただし、情報通信機械分野は、主に民生用電子の生産減の影響を受け、生産額の縮小傾向が続
いている。
情報サービス産業の売上高は、企業の設備投資・消費税対応などから、ここ数年微増傾向にある。
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅰ.電機産業の現状
3.電機・電子産業の輸出入
(1)電機・電子産業の輸出入額の推移(円ベース)
電機・電子産業の輸出額の推移
電機・電子産業の輸入額の推移
2013年度の電機・電子産業の輸出は、14.2兆円と前年度実績約1割増となった。一方の輸入額は
13.1兆円と前年実績比で約3割の伸び。その結果、輸出との金額差は約1兆円まで迫っている。輸
入の内訳をみると携帯電話(スマートフォン)、パソコン類などデジタル家電の輸入が増加しており、
3つの分野のうち、情報通信機械は輸入超過状態が続いている。
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅰ.電機産業の現状
3.電機・電子産業の輸出入
(2)品目別に見た輸出入の特徴
主に輸出超過の品目
主に輸入超過の品目
出所:貿易統計(財務省)より、電機連合が作成
輸出入品の内訳を金額の大きいものでみると、輸出では製造装置、複写機の部品、集積回路(メモ
リ、マイコン、ロジック、CCD)がある。輸入では無線通信機器(携帯電話・スマホ)とパソコン
の額が大きい。この2品目を合計すると3.8兆円となるが、この金額は、日本の電機・電子産業全
体の輸入額(13.1兆円)の約3割を占める。
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Ⅰ.電機産業の現状
3.電機・電子産業の輸出入
(3) 輸出先・輸入元からみた輸出入の特徴
情報通信機械
電気機械
電子部品・デバイス
注:中国は、香港を含む
出所:貿易統計(財務省)より、電機連合が作成
輸出先国・輸入元国とも対アジアが半分以上を占める。対中国をみると、電デバの輸出額は他のア
ジア諸国合計相当で推移している。情報通信機械では、2013年で中国からの輸入額が情報通信機械
全体の輸入額(6.3兆円)の7割以上を占めている。中国からの情報機器の輸入品の内訳は、携帯(ス
マホ)、パソコン・パソコン周辺機器でほぼ9割を占めている(金額ベース)。
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Ⅰ.電機産業の現状
4.電機産業の雇用者数の推移
電機産業の雇用者数(常用雇用+臨時雇用+日雇用)の推移
2013年度の電機産業(電気機械器具製造業、情報通信機械器具製造業、電子部品・デバイス製造業
と情報サービス産業等)で働く人の数は287万人。雇用者数の動向を中期的にみると、製造系は減少
する傾向に、情報サービス産業では増加する傾向にある。
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Ⅰ.電機産業の現状
5.電機企業の業績
(1)中闘組合企業12社計の業績推移・見通し
中闘組合企業12社計の業績推移・見通し(連結)
2013年度の売上高は前年度実績比8.5%の41兆円。大型の構造改革がなかったことから、当期利益
は7,546億円と黒字化した。2014年度見通しでは、売上高は前年度並みだが、当期利益は9,210億円
と、2013年度実績比22%増で計画している。
※中闘組合企業12社=パナソニック、日立製作所、東芝、富士通、NEC、三菱電機、富士電機、シャープ、OKI、
パイオニア、安川電機、明電舎(2008年度までは三洋電機含む)。
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅰ.電機産業の現状
5.電機企業の業績
(2)中闘組合企業12社の合計の利益率
機械機器企業の営業利益率推移の比較(連結)
ITバブル崩壊(2001年度)以降、電機産業の利益率は他の機械機器産業と比べ、低位で推移して
いる。デジタル製品のコモディティ化や新興国との国際競争の激化などがその背景にある。
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Ⅰ.電機産業の現状
5.電機企業の業績
(3)中闘組合企業12社の事業セグメントごとに見た売上高、利益率
4%の
ライン
日本の電機企業が取り扱う製品は幅が広く、12社で54の事業セグメントを持つ。ここ数年のおおま
かな傾向として、インフラ系分野は利益の市場の伸び・利益率が高く、デジタル家電、携帯電話、
電子部品(半導体) は低調という特徴がある。
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Ⅰ.電機産業の現状
5.電機企業の業績
(4)中闘組合企業12社の国内・海外売上高の推移
国内・海外売上高の推移
海外売上高比率
中闘組合企業12社の売上高の内訳を国内と海外で分けてみると、2013年度で海外売上高比率は
12社合計で45.2%、比率が最も高い企業で60.7%、低い企業で18.7%。海外売上高比率が一番高か
った企業と低かった企業の幅は2003年度で50%ポイントだったものが、2013年度では40%ポイント
まで狭まっており、中期的には海外での売上げ比率が高まる傾向にある。
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Ⅱ.エネルギー産業による被災地経済の復興
東日本大震災から3年以上が経過した。がれき処理作業は、原発事故で処理作業が遅れてい
る福島県以外では、95%(2014年1月)の進捗。震災復興は未だにまだら模様だが、住宅整備
や産業復興など、街づくりが進み始めたところも出てきている。
○東北地方に再生可能エネルギー産業の集積を図る。
※スマートグリッドは、既存インフラの置き換えよりも新設のほうが実装は早く進む。「ス
マートグリッド通信インタフェース導入事
福島県内のエネルギー拠点
業(総務省)」等により、地域復興に併せ、
ガス火力
地域の実情に合わせたスマートグリッドを
(新地町)
…発電所( は計画中)
構築することで、再生可能エネルギーの普
…変電所
までいな復興計画
太陽光
及やエネルギー産業の誘致を進める。
…開閉所
(太陽光・バイオマス、
○特に、福島県については先端エネルギー
基地の観点から、復興と新産業の育成を
検討する。
※福島第一原子力発電所に接続している
「福島幹線」を利用することで、設備
投資を抑えつつ、電力供給事業の誘致
を進める。
※福島再生可能エネルギー研究所(郡山
市・2014年4月開設)など、先端エネル
ギー関連施設の誘致を進める。
美しい地球・幸せな暮らし
(南相馬市)
飯館村)
西山地熱発電所
(柳津町)
南いわき
福島再生可能
エネルギー研究所
太陽光(須賀川市)
福島第1
福島第2
新福島
広野(火力)
新いわき
下郷(水)
石炭火力
(いわき市)
塩原(水)
西群馬
へ
石炭火力
(広野町)
今市(水)
新今市
新新田
へ
洋上風力
(楢葉町沖)
新栃木
新茂木
新古川
へ
新筑波
へ
福島幹線・福島東幹線
(50万V×2)
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Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
1.電機連合第3次エネルギー政策について
電機連合の第3次エネルギー政策(概要)
①資源のない日本のエネルギー政策は、S(安全)+3E(安定供給、経済性、環境)を基本
としつつ、特定の電源に過度に依存することなく、原子力、火力(石油、石炭、ガス)、
水力、地熱、再生可能エネルギー(風力、太陽光など)、多様な選択肢をバランス良く持
つことが重要である。
②エネルギー政策を考える際には、時間軸を踏まえた考え方が必要である。
短期:エネルギー供給の安全性および、安定性・経済性を重視した取り組みを進める。
中長期:再生可能エネルギーをはじめ、発送配電の各種の技術開発を進めつつ、技術
動向を踏まえたエネルギーミックスの実践と、需要サイドからの節電・省エネ
を推進する。
③原子力発電は、これを代替できるエネルギー源の確保ができるまでは、日本に必要なエ
ネルギー源として、安全性向上等の技術開発を進める。また、原子力発電の趨勢に関わ
りなく、廃炉や放射性廃棄物の処分などの技術の向上と人材確保を進める。
④電力自由化・発送電分離については、価格面だけではなく、発電事業者のエネルギー供
給責任とコスト負担の視点も踏まえて論議をする。
⑤電機産業は、発電から消費まで電気エネルギーのすべてにかかわっている産業である。
環境問題(地球温暖化問題)対応を進めることで、世界に貢献する。
第61回定期大会(2013年7月)
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Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
2.電力の安定供給について
現在の火力を主力とした電力供給事情は、決して安定したものではない。
-震災後3年が経過するが、火力発電所は定期点検を延期するなど過負荷の中で運転を続けてい
る状況にある。
-電力会社の発電設備の内訳をみると、設置後40年超の火力発電所は、比率の高い電力会社では
1割強ある(設備出力ベース)。こうした発電設備では、トラブルの発生する可能性が高くなる。
-化石燃料価格の高騰などから、電力料金の上昇
圧力は依然として強い。
化石燃料の輸入額の推移
-再生可能エネルギーは太陽光を主に普及が拡大
しているものの、その発電量は国内の電力需要
を支えるまでには至っていない。
○電力会社が持つ老朽発電所のリプレース支援を
行う。
○また、既存の電力会社以外にも発電事業への新
規参入を促すことで発電設備の更新を進め、国
全体の発電効率を高める。
○火力発電増によるCO2排出を抑制する方法
として、火力の高効率化、二酸化炭素回収・
貯留(CCS)技術の研究開発・実用化を進める。
○民間企業の海外エネルギー資源権益の取得を支
援し、輸入価格の上昇を抑制する。
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
2.電力の安定供給について
①
この夏の電力需給
2014 年8月の電力需給見通し
東西で電力融通を行わない場合
供給力
9電力
東日本3社
北海道
東北
東京
中部及び西日本
中部
関西
北陸
中国
四国
九州
沖縄
17,624
7,738
516
1,553
5,669
9,688
2,737
2,924
570
1,181
583
1,693
216
最大電力需要
予備力
(供給-需要)
16,666
7,237
472
1,445
5,320
9,429
2,614
2,873
548
1,134
559
1,671
155
760
501
44
108
349
259
93
51
22
47
24
22
61
東西で電力融通を行う場合
予備率
4.6%
6.9%
9.2%
7.5%
6.6%
2.7%
3.5%
1.8%
4.1%
4.1%
4.3%
1.3%
39.2%
供給力
17,434
7,681
516
1,553
5,612
9,753
2,737
2,960
570
1,181
583
1,722
216
最大電力需要
予備力
(供給-需要)
16,666
7,237
472
1,445
5,320
9,429
2,644
2,873
548
1,134
559
1,671
155
768
444
44
108
292
324
93
87
22
47
24
51
61
予備率
4.6%
6.1%
9.2%
7.5%
5.5%
3.4%
3.5%
3.0%
4.1%
4.1%
4.3%
3.0%
39.2%
通約
60
万
kW
を
融
出所:電力需給に関する検討会会合(2014年5月内閣官房)
2014年の日本は、初めて原子力発電所が1基も稼働しない夏を迎える。今夏は特に、関西電力管内
と九州電力管内の電力供給がタイトになる可能性があるとされている。政府の試算では、東西間の
電力融通を行えば、予備率(発電能力が電力需要を上回っている割合)3%を確保できるとしている。
※ちなみに、予備率の値は、東日本大震災前は8%が標準とされていた。
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Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
2.電力の安定供給について
②
現在発電を行っている発電所の状態
電力事業者の発電方式の内訳(認可出力ベース)
7,000
(万kW)
6,558
6,000
原子力
40年超火力
5,000
40年未満火力
原子力・火力以外
2,000
1,000
2,014
1,861
1,735
1,199
808
721
1,698
左以外の
火力発電
3,000
3,496
J-Power
3,403
4,000
697
155
中国電力
四国電力
九州電力
沖縄電力
中部電力
北陸電力
東京電力
関西電力
原子力の割合(%)
40年超火力の割合(%)
東北電力
北海道電力
0
28.7
17.6
22.1
21.6
10.6
27.9
10.7
29.0
26.1
-
4.9
5.1
9.6
3.1
14.0
2.6
8.8
16.4
5.6
11.0
-
4.4
-
16.4
注:上記の値は認可出力であり、実際の発電量とは異なる。
出所:各社有価証券報告書、電気事業便覧
稼働後40年以上経過する火力発電機は、全国で約2,000万kW(認可出力ベース)ある。また、図表に
は記載がないが、原発並み(出力100万kW)の出力を有するものは2013年度末時点で41基ある。
ちなみにトラブルで停止した電源開発(J-Power)の松浦2号機(100万kW)は、運転開始後15年(97年
7月稼働)のもの。
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
3.再生可能エネルギーの普及と固定価格買い取り制度について
<再生可能エネルギーをめぐる直近の動き>
-2013年11月、「浮体式洋上ウィンドファーム実証研究事業」(福島沖)を開始する。
-2014年3月、太陽光発電(400kW以上)で固定価格買取制度事業認定後、1年を経過しても
事業を始めない事業者672件の認定取り消し。2014年度以降、認定後180日経過後も場所・
設備の確保が確認できない場合、認定を失効させる運用を開始(50kW以上の設備)。
-2014年4月に、わいた地熱発電所(熊本県、2,000kW)稼働予定。15年ぶりに稼働する地熱
発電所。
(1)再生可能エネルギーの普及促進について
○太陽光発電について、発電コストを低減させるための高効率化や、パネルの設置場所の自
由度を高めるための軽量化について、研究開発を進める。
○風力発電について、浮体式洋上ウインドファーム実証研究事業を進め、ビジネスモデルの
確立と事業展開への道筋をつける。
○風力・地熱発電について、導入に向けた手続きの迅速化、導入要件の緩和など国内規制の
緩和・制度改革を進め、企業の参入を促進する。
(2)固定価格買い取り制度について
○固定価格買い取り制度は、電力消費者である国民の負担により、再生可能エネルギーの普
及を促進する制度である。再生可能エネルギー導入促進策・買取価格については今後とも、
再生可能エネルギーの普及状況を見つつ、電力料金への上乗せが国民の過度な負担となら
ないよう、継続的に各発電方式の普及状況の点検・買取価格の見直しを行う。
美しい地球・幸せな暮らし
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
3.再生可能エネルギーの普及と固定価格買い取り制度について
買い取り価格の推移
再生可能エネルギーの普及状況
◇2014年4月~2015年3月の買い取り価格
太陽光
32円+税~37円(ダブル発電:30円)
風力(陸上) 22円+税~55円+税 ※1
風力(洋上) 36円+税
水力
24円+税~34円+税 ※1
水力(既設誘水路活用) 14円+税~25円+税 ※1
地熱
26円+税~40円+税 ※1
バイオマス 13円+税~39円+税 ※2
※1
◇2013年4月~2014年3月の買い取り価格
太陽光
風力
水力
地熱
バイオマス
36円+税~38円(ダブル発電:31円)
22円+税~55円+税 ※1
24円+税~34円+税 ※1
26円+税~40円+税 ※1
13円+税~39円+税 ※2
※1
◇2012年7月~2013年3月の買い取り価格
太陽光
風力
水力
地熱
バイオマス
※1…
※2…
美しい地球・幸せな暮らし
40円+税~42円(ダブル発電:34円)
22円+税~55円+税 ※1
24円+税~34円+税 ※1
26円+税~40円+税 ※1
13円+税~39円+税 ※2
※1
買取価格は認定出力により異なる。
買取価格は燃料により異なる。
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
4.福島第一原子力発電所の廃炉とこれからの原子力発電について
(1)福島第一原子力発電所の廃炉について
再稼働申請のあった原子力発電所(2014年5月)
○国は廃炉作業、汚染水対策について、東京電
力(廃炉推進カンパニー)としっかりと連携し、
事業所名
着実に実施する。
北海道電力
○安全性確保を何よりも優先する体制を維持・
泊(1・2号機)
泊(3号機)
充実させ、電力会社、メーカー、関係諸機関の
関西電力
間で共有する。
大飯(3・4号機)
高浜(3・4号機)
(2)再稼働問題
四国電力
伊方(3号機)
★川内原発安全審査を着実に実施する。そして、 九州電力
そこでの経験を踏まえ、今後の審査(手順、
川内(1・2号機)
玄海(3・4号機)
評価方法)の効率化を進める。
東京電力
○その上で、地元の理解を得つつ、安全基準を
柏崎刈羽(6・7号機)
満たした原発を再稼働させ、企業・国民のエ 中国電力
島根(2号機)
ネルギーコスト上昇・電力の安定供給への懸 東北電力
念を払拭する。
女川(2号機)
中部電力
(3)今後の原子力人材の確保
浜岡(4号機)
日本原子力発電
廃炉作業を含め、原子力発電は今後世界的に需
東海第2発電所
合計
要が見込まれる「産業」である。
○人材確保・養成、また廃炉や炉の安全性を高
めるための技術開発を継続的に進める。
美しい地球・幸せな暮らし
認可出力
(万kW)
方式
メーカー
57.9×2
91.2
PWR
PWR
三菱重工
三菱重工
2013年7月8日
2013年7月8日
118.0×2
87.0×2
PWR
PWR
三菱重工
三菱重工
2013年7月8日
2013年7月8日
89.0
PWR
三菱重工
2013年7月8日
89.0
89.0
PWR
PWR
三菱重工
三菱重工
2013年7月8日
2013年7月12日
135.6×2
申請日
ABWR 日立製作所 2013年9月27日
82.0
BWR
82.5
BWR
東芝
2013年12月27日
113.7
BWR
東芝
2014年2月14日
GE・日立
2014年5月20日
110.0
BWR
16基、1543.4万kW
日立製作所 2013年12月25日
注)PWR …加圧水型、BWR …沸騰水型、ABWR …改良型沸騰水型
メーカーは主に炉のメーカーを記載しているが、複数社が連携して納入し
ているものもあることから、上表とは異なる見解もあり得る。
出所:原子力規制委員会、電気事業便覧
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Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
5.より効率的なエネルギー使用について
(1)スマートコミュニティの普及に向けて
2014年は、国内4地域(横浜市、豊田市、けいはんな学研都市、北九州市)におけるスマートシティ
/スマートコミュニティ実証実験4カ年計画の最後の年にあたる。
○実験成果のビジネスモデル化を進め、次世代エネルギー社会インフラの社会実装を目指す。また、
他の実証試験結果とも併せ、国際展開していくことを踏まえ、国際標準化活動の強化に資する。
スマートコミュニティ国内実証地域
京都府 けいはんな学研都市
愛知県豊田市
○けいはんなエコシティ・次世代エネルギー
・社会システム実証プロジェクト
○豊田市低炭素社会システム実証
プロジェクト(Smart Melit)
スマートグリッドを支える通信技術の実証および、
地域の電力需給に応じてプラグインハイブリッド
車や電気自動車の充電の最適化を実現する。
住民が生活の質や利便性を損なうことなく、
CO2排出量を最少にできる地域エネルギー・
マネジメント・システム(CEMS:Community
Energy Management System)を開発する。
神奈川県横浜市
福岡県 北九州市
○横浜スマートシティプロジェクト
CEMS(地域エネルギー・マネジメ
ント・システム)と連携してEVの充
放電や急速充電器の制御を行う。
○北九州スマートコミュニティ
創造事業
需要家の電力使用データの活用の検
証、電力単価を変化させるダイナミ
ックプライシングなどの実証を行う。
出所:経済産業省
○10,000世帯を対象とした「大規模HEMS※情報基盤整備事業(経済産業省)」において、スマー
トメーターの本格的な導入に向け、節電のための電力料金設計や、電力利用データの2次デー
タ利用に関するルール作り等、着実に実施する。
※HEMS
美しい地球・幸せな暮らし
…家庭用エネルギーマネジメントシステム
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
5.より効率的なエネルギー使用について
スマートグリッドの国際標準化に関して戦略的に取り組む重要項目(2012年5月)
送電用広域監視制御システム 1.送電用広域監視制御システム
系統用・需要側蓄電池
2.蓄電池最適制御
3.蓄電池モジュール
4.車載用蓄電池の残存価値評価方法
配電自動化システム
5.配電自動化システム
6.分散型電源用パワーコンディショナ
7.配電用パワエレ機器
EMS・デマンドレスポンス 8.デマンドレスポンスネットワーク
9.HEMS(住宅用EMS)
10.BEMS(商用ビル用EMS)
11.FEMS(工場用EMS)
12.CEMS(地域EMS)
電気自動車(EV)
13.EV用急速充電器・車両間通信
14.EV用急速充電器用コネクタ
15.EV用急速充電器本体設計
16.車載用リチウムイオン電池安全性試験
17.車両・普通充電インフラ間通信
18.インフラ側からのEV用ふつう充電制御
AMIシステム
19.メーター用アクセス通信
20.メーター通信部と上位システムとのインターフェース
※AMI …Advanced Metering Infrastructure:高度メーター基盤
出典:日本工業標準調査会
美しい地球・幸せな暮らし
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
5.より効率的なエネルギー使用について
(2)家庭へのエネルギーマネジメントシステムの普及について
○日本発のHEMSの国際基準であるEchonet-Lite(エコーネット・ライト)は、消費者にとって利
便性が見えにくく、なかなか普及が進んでいない。先導事業などでサービスの見える化を進める
ことで、社会の認知を深め、普及促進をはかる。
(3)事業場へのエネルギーマネジメントシステムの普及について
○今夏以降のさらなる電気料金値上げや電力不足への対応として、エネファーム、定置蓄電池の導
入支援を継続する。
※13年度補正予算で、住宅・ビルの革新的省エネ技術導入支援を含め、350億円が計上されている。
○工場・事業場等における高効率設備への入れ替えや既存設備の省エネ改修支援を継続する。
※13年度補正予算で150億円、14年度予算で376億円が計上されている。
○エネルギーマネジメントシステムについて、中小規模のビル(テナント貸しビル)への導入は、
インセンティブが働きにくい(注)。例えば、J-クレジット制度を活用して生じたクレジットを
期間限定で国が買い取るといったような補完制度を検討する。
注:中小ビルはテナントでフロアを貸す形式が
多く、電力料金は管理会社が一括して電力会
社と契約、手数料を上乗せしてテナントへ請
求する。そのため、BEMSを導入し電力量
が削減されると、管理会社としては収入が減
ってしまうため、わざわざ導入する意味がな
い(ビル管理会社の根本的な問題)。
美しい地球・幸せな暮らし
J-クレジット制度
プロジェクト登録
・認証申請
国
クレジット活用者
プロジェクト
実施者
クレジット
審議
認証委員会
運営委員会
資金
カーボン
オフセット
クレジット への活用
温対法
への活用
低炭素社会
実行計画への
活用
省エネ法
への活用
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Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
5.より効率的なエネルギー使用について
(4)省エネモーター・変圧器へのリプレース
-2015年4月から、モーターがトップランナ
ー制度に加わる。新基準モーター(IE3
モータ)は従来のものと比べ、価格が1.5~
2倍程度高いが、高効率なので、そのうち
元は取れる。しかし、イニシャルコストの
点から新規導入が抑制されることが懸念さ
れる。
120
最低エネルギー消費効率基準
(MEPS)におけるモーターの規制レベル
100
IE1比-15%
80
IE2比-15%
93.0%
IE3比-15%
60
91.0%
100%
95%
90%
89.0%
40
20
モーター損失(左軸)
モーター効率(右軸)
86.0%
85%
0
80%
-2014年4月より、変圧器に関してもトップ
IE1
IE2
IE3
IE4
ランナー判断基準の第2次見直しが行われ
注:IE = International Efficiency、 国際効率
た。新基準機器の省エネ効果は、1977年基
準の約60%、1981年基準とでは約40%。
-日本国内の稼働変圧器は2010年時点で約260万台。このうち更新推奨時期(20年)を超えて
いるものは100万台と推定(出所:JEMA)。変圧器の使用・点検における法的な縛りは現在
なく(メーカー・業界団体の推奨のみ)、機器類が故障してから更新する例もあるため。
-トップランナー変圧器のリプレイスは、大きな省エネ効果が期待できる。
★トップランナーモーター搭載機器、新トップランナー変圧器への切り替えがスムーズに進
むための導入支援(税制優遇措置)を行う。
※「エネルギー等の使用の合理化及び再生資源の利用に関する事業活動の促進に関する臨時措置法」として税制上の
優遇措置等など時限立法として2012年度まであったが、現在は終了している。
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Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
5.より効率的なエネルギー使用について
(5)パワー半導体の普及について
-エネルギー流通においては供給~需要の間にエネルギー損失を伴う「変換」プロセスがあ
る。変換におけるロスの低減にはパワーエレクトロニクス機器が重要な役割を担っており、
実用化間近の次世代のパワエレ機器(SiC/GaN等)の普及により、次世代送電ネットワー
ク構築や機器の小型化・高性能化といった、産業・エネルギー流通領域の省エネ化が急激
に進むことが期待される。
-パワエレ機器の中核を担うパワー半導体の研究開発は各社が凌ぎを削っているが、現状で
は、大胆な投資が行えておらず、実用化が進んでいない。
パワー半導体の仕事
○パワー半導体のような部品レベルのエネル
パワー半導体は、電源(電力)の制御や供給を行う。
+
ギー変換高効率化に向けた研究開発を推進
整流※
交 流 電
直 流
圧
-
する/政策支援を行う。
※パワー半導体は、日本が世界にリードするコア
分野であることから、目的を明確にした設備投
資に対する税制面での優遇措置や、補助など。
※また、NEDOによる省エネ設備導入補助事業
のようなモデルによる、コア技術革新(SiCの結
晶を作るには、高温・高圧環境が必要で、一
度に大量に作る技術が確立していない、など)
のための支援。
交 流
+
電
圧
-
周波数変換
交 流
直 流
+
電
圧
-
昇圧・降圧
直 流
直 流
+
電
圧
-
インバータ
交 流
※整流:入力された電気を、使用目的に合わせてきれいな(例:ノイズのないor精度の高い
or無駄のない)電気に変える事
出所:サンケン電気株式会社HP
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅲ.電力供給状況の改善と需要の効率化
6.中長期視点からのエネルギー・環境政策の再構築について
-エネルギー政策を考える際の視点は、安全(Safety)+安定供給(Energy Security)、経
済性(Economic Efficiency)、環境(Environment)のS+3E。
-震災後のエネルギー政策は、「安全」を前提とした「安定供給」の確保(S+1E)を第1
優先せざるを得ない状況が続く(=短期的視点)。
・エネルギーコストの上昇は、ものづくり産業(特に大電力消費産業)の活力をそぐ。
・2013年11月に、日本は2020年までに温室効果ガスの排出量を1990年比で25%削減する公約を放棄、
2005年比で3.8%削減(=1990年の水準を3%上回る)という新たな目標を設定。
○エネルギーの安定供給をできるだけ早く実現し、中長期視点に立ったエネルギー政策に舵
を切る。
※多様なエネルギー源を選択肢として維持しつつ、発・送・配電の各種の技術開発・社会実装を進める
ことで、「S+3E」の観点に基づくエネルギーミックスの実現をはかる。
※需要サイドにおいても、節電・省エネによる電力使用の最適化を推進する。
★エネルギー基本計画において、エネルギーミックスの目標値を早期に示す。
※エネルギーの安定供給のためには、多様なエネルギー源を選択肢として国内に維持していくことが必
要。そのための指標が必要。
※国としての目標がないと、再生可能エネルギー等の新技術開発や普及の際の投資判断が難しい。
○上記エネルギーミックスを基に、温室効果ガス排出量削減目標を設定し直すことで、地球
温暖化問題に対する先進国としての役割を果たす。
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
1.マイナンバーへの対応・電子行政の推進について
★2016年1月からの着実な導入に向けた取り組みを進める。システム要件の検討・発注に際しては、
国、県、市区町村で連携し、短期間に導入作業が集中することがないように配慮する。
○地方自治体における情報システム人材、情報セキュリティ人材・体制の充実・強化を促進する。
○施行後3年(2018年頃)を目途に利用範囲拡大の検討が行われる予定。ITを活用した行政、医療
・福祉サービス分野等での効率化・サービス向上に向けたセキュリティ確保、二次利用促進に向
けたルール整備を検討する。
社会保障・税番号制度(マイナンバー)導入のロードマップ
2014
2013
制度構築
2016
通法
知人
・番
公号
表
の
個
人
番
号
マ
イ
ナ
ン
バ
ー
の
通
知
政省令などの準備
(
(
番
号
関
連
法
成
立
・
公
布
5
月
2015
)
)
システム構築
システム要件
定義・調達
調査研究
申告書・法廷調書などへの法人番号の記載
個人番号カードの交付
個人番号(マイナンバー)利用開始(順次)
【2016年1月~利用する手続きのイメージ】
○社会保障分野
・年金に関する相談・照会
○税分野
・申告書、法廷調書などへの記載
○災害対策分野
・被災者台帳の作成
情報提供ネットワークシステム、
マイ・ポータルの運用開始
工程管理支援業務
設 計
美しい地球・幸せな暮らし
開発・単体テスト
2018
2017
総合運用テスト
利
用
範
囲
拡
大
の
検
討
?
2017年1月より、
国の機関間の連
携から開始し、
2017年7月を目
途に地方公共団
体との連携につ
いても開始
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Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
2.個人情報保護とデータ利活用ルールについて
ビッグデータや個人情報が大きな経済価値を生み出すとの期待が高まる中、個人情報保護とデータ
の利活用の両立に向けた取り組みが世界で進んでいる。
-EUでは、2016年をめどにEUデータ保護規制(現行のデータ保護指令から格上げ)を検討中。
-アメリカは、「消費者プライバシー権利章典」の草案を2012年に公開、プライバシービジネスの構造
化に向けた検討を進めている。
-EU・アメリカは、プライバシー保護とデータ利活用を協力し合う共同声明を発表(2012年3月)。
-OECDはプライバシー保護に関する8原則のガイドライン(1980年制定)を2013年に改正した。
-2013年6月のG8サミットでは、データの公表、すべてのものが利用可能、革新のためのデータ公表
他5つの原則からなる「オープンデータ憲章」が合意された。
一方、日本では、
-日本では、現在、27分野40種類の個人情報保護に関する主務大臣ガイドライン、約1,800の地方公共
団体の個人情報保護条例が存在するといわれている。監督官庁も総務省、文科省、厚労省、経産省、
消費者庁、地方自治体とさまざま。
-また、こうしたガイドライン・条例は、情報の保護、データの安全な取り扱いが主目的であり、情報
の利活用を前提にしていない(データの利活用に対して保守的)。
-マイナンバーの導入に合わせ、個人情報の取り扱いのルール整備が急がれている。マイナンバーシス
テムの2次利用の際には、個人情報取り扱いルールは必須の要素。
○個人情報保護とデータ利活用の一体的運用を図るための体制、法制度を整える。
○データの管理・運用に関して、プライバシーマーク制度に法的な担保を与える等見直しを進める。
○個人情報保護については、EU・アメリカとの整合性を確保し、国際間のデータ移動がスムーズ
に行われるようにする。
美しい地球・幸せな暮らし
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
2.個人情報保護とデータ利活用ルールについて
国際間の個人情報保護に関する政策・法制度の動き
プライバシー保護とデータ利活用を協力し合う共同声明(2012年)
E U
アメリカ
公的部門
・プライバシー法(1974年)
民間部門
・特定分野において個別法で規制
・セーフハーバー原則(1999年)
データ移動が可能
データ移動が可能
遵守を宣誓
した企業
消費者プライバシー権利章典
データ保護指令(1995年)
域内各国はこの指令に基づき法制度
を整備
データ保護規制
(2016年をめどに検討中)
(2012年草案公開)
データ移動が可能
EUデータ保護指令が保護規制に格
上げされた場合、EUから日本へデー
タ移動ができなくなる恐れがある。
日 本
プライバシー保護に関する8原則
のガイドラインを改正(2013年)
プライバシーマーク(1998年)
個人情報保護法
(2003年一部施行、2005年全面施行)
OECD(経済協力開発機構)
ビッグデータや個人情報が大きな経済価値を生み出すとの期待が高まる中、EUや欧米、OECD
では、情報の取り扱いに関する個人の権利と民間事業者(企業等)の個人データ利活用の両立やデー
タが安全に取り扱われる仕組みに関する検討・対応が進んでいる。日本も対応を進めないと、海外
とのデータ移動(マーケットデータや従業員データなど)に支障が出てくる可能性がある。
美しい地球・幸せな暮らし
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
3.流通・取引慣行ガイドライン(独占禁止法の運用指針)の見直しについて
-大規模小売店告示(大規模小売業者による納入業者との取引における特定の不公正な取引状況、
2010年)後、大規模小売店の優越的地位の乱用について改善が進んだ。しかし、商談後・納品後
の追加的な粗利補填要求(他店の安売り価格への対応)といった流通事業者の行為が散見される
(現行のガイドラインには記載がない)。
-現行の流通・取引慣行ガイドライン (1991年)の考え方は「流通業者間の自由競争で製品の販売
価格が決まっていくことが消費者の利益」だが…、
1) 施行後20年以上が経過し、国内市場構造の変化が進む。メーカーの作為による製品価格のコントロ
ールは、直販の場合を除きほぼ不可能な状態。
・量販事業者の集約化
出所:家電流通データ総覧2013(RIC社)
・海外メーカーの国内市場参入、ジェネリック家電(特許切れ技術を使った家電)の登場
・インターネットの普及による消費者の情報収集力の上昇
2) 量販店の横並びの販売価格+メーカーからの利益補填による製品販売は「自由な」競争といえるか。
★家電製品の適正な競争を促し、技術の進歩によるグローバル市場での競争を強化するため、現行
の流通・取引慣行ガイドラインを見直す。
(市場調査、商品価値に見合った適正価格での販売など)
美しい地球・幸せな暮らし
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
4.学校教育のICT化について
-2014年度は、教育現場へのタブレット端末の普及をはじめとするICT機器の導入が始まる年度
といえる。
<自治体における教育のICT化の動き>
・荒川区は2014年9月から区内の全小中学生に授業用のタブレッ
トを配布予定。教室の電子黒板と連動した授業を行う。
・目黒区は民間企業とタブレットを使った授業の実証研究を開始。
・狛江市は2013年に一律の全小学校に40台ずつタブレットを配布。
2015年度には一律中学校への拡大を検討中。
・佐賀県は2014年度より県内36の県立高校でタブレットを導入し
た授業を開始。
教育の情報化に関する手引」検討案(文部科学省) より
○第2期教育振興基本計画における「教育のIT化に向けた環境整備4か年計画(2014~2017年
度)」や義務教育諸学校における新たな教材整備計画(2012~2021年度)により、小・中・高等
学校の情報機器整備を強力に推進し、普及率を高めるとともに、地域間格差をなくす。
○各学校に、教育指導におけるICT活用をサポートする情報システム人材、情報セキュリティ
人材を配置する。
○学習者用のデジタル教科書・教材については、コンテンツ・ビューアー・アプリケーションの
実装化を進めるとともに、正規の教科書となるよう検討を行う。
○液晶パネルのブルーライトと目の問題等、電子機器と子どもの健康の関係について、注意を払う。
○自治体トップに根強いといわれる「授業は黒板とチョークと紙のノート」という考え方に対し
ては、現場での実績の積み重ねが重要。学校間におけるICT教育のノウハウの共有、よい事
例の共有化を進める。
※ 特に公立学校の場合、教育環境の整備は地方交付税で措置されているため、教育のICT化には、自治体の理解
が必要となる。
31
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
5.人材の育成について
(1)技術系学生の育成
○特定分野に特化した教育(スーパーサイエンスハイスクール)、多様な学生間での学びの場の提供
(沖縄科学技術大学院大学)、大学と企業との連携(イノベーション人材育成コンソーシアム)など、
多様な教育体系を展開する。
・スーパーサイエンスハイスクール
指定校には年1,000万円~2,000万円の予算。新たなカリキュラム・課題研究、高度な研究を手掛ける大学との連携
など。2013年度178校→14年度は201校に拡大の予定。
・沖縄科学技術大学院大学
5年一貫教育、18か国・地域からバイオや情報技術専門の教授陣、学内の公用語は英語、研究にあたる300人の半数
は外国人。
・イノベーション人材育成コンソーシアム
12大学・2万人の大学院生のデータベースを作成し、企業に2,000人のインターンシップを実施。
(2)企業における技術系人材の育成
-外国からのインターンシップ受け入れに際し、短期滞在ビザの申請手続きが国ごとに異なるため、
受け入れ手続き工数の増大や受け入れ時期の設定の面で、障害となっている。
-インターンシップの受け入れで帯同者がいる場合、同時申請では2週間で済むものが、同時申請
でない場合、手続き内容は同じなのに、2か月かかる。そのため、子供の学校の関係などで、日
程調整に支障を来たすケースがある。
○外国からのインターンシップ受け入れに際し、ビザが必要な場合の手続き方法の統一化を各国と
進める。
○国内事業場へ外国から人材が異動する際、就労系在留資格と家族滞在の申請が同時申請ではない
場合の、手続き期間を短縮する。
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
6.研究開発の促進について
○「第4期科学技術基本計画(2011~15年度)」を着実に推進する。
※官民合わせた研究開発投資の対GDP比4%以上、政府研究開発投資の対GDP比1%および総額約
25兆円を確実に実施する。
○戦略的イノベーション創造プログラム(SIP※)により、日本経済の再生を果たしていくため、
鍵となる技術の研究開発・実用化を進める。
戦略的イノベーション創造プログラム対象課題候補
革新的燃焼技術
エ
ネ
ル
ギ
ー
次世代パワーエレクトロニクス
⾰新的構造材料
エネルギーキャリア(水素社会の確立)
次世代海洋資源調査技術
長健
寿康
イ 次 ⾃動⾛⾏(⾃動運転)システム
ン世
フ 代 インフラ維持管理・更新・マネジメント技術
ラ
レジリエント(強靭)な防災・減災機能の強化
資 地 次世代農林⽔産業創造技術
源 域 時間や地理・空間にとらわれない⾰新的設計・⽣産技術
研究の進捗状況や新規に募集する研究の内容などを踏まえて健康・医療戦略推進本部が決定する。
出所:総合科学技術会議
※府省横断による戦略的イノベーション創造プログラム(Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program )
総合科学技術会議が自らの司令塔機能を発揮して、府省の枠や旧来の分野の枠を超えたマネジメントに主導的な役割を
果たすことを通じて、科学技術イノベーションを実現するために新たに創設するプログラム。
○研究開発法人の統合、連携を進め、研究開発能力を高める(特に、医療・介護分野、通信・放送
分野、サイバーセキュリティ分野等)。
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Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
6.研究開発の促進について
研究開発型の独立行政法人(「研究開発型」の定義は出所に基づく)
<総務省>
<農林水産省>
・情報通信研究機構
・種苗管理センター
・農業・食品産業技術総合研究機構
・農業生物資源研究所
・農業環境技術研究所
・水産大学校
※1
・水産総合研究センター
・国際農林水産業研究センター
・森林総合研究所
<文部科学省>
・物質・材料研究機構
・防災科学技術研究所
・放射線医学総合研究所
防災関係
・科学技術振興機構
での連携
・理化学研究所
・宇宙航空研究開発機構
・海洋研究開発機構
・日本原子力研究開発機構
光ネットワー
クでの連携
<厚生労働省>
情報セキュリ
ティでの連携
・国立医療・栄養研究所
※1
・医薬基盤研究所
研究開発のファ
ンディング機能
・日本医療研究開発機構
・国立高度専門医療研究センター6法人
国立がん研究センター
国立循環器病研究センター
国立精神・神経医療研究センター ※2
国立国際医療研究センター
国立成育医療研究センター
国立長寿医療研究センター
※1
<経済産業省>
・産業技術総合研究所
・新エネルギー・産業技術総合研究開発機構
・情報処理推進機構
<国土交通省>
・土木研究所
共同調達の実施
・建築研究所
・海上技術安全研究所
※1
・港湾空港技術研究所
・電子航法研究所
<環境省>
・国立環境研究所
※1:基本的な方針では、
統合し、研究開発
型の法人とする、
とされている
※2:基本的な方針では、
将来的に組織の在
り方について検討
を行う、とされて
いる。
連携強化の必要性あり
出所:独立行政法人改革などに関する基本的な方針について(2013年12月、行政改革推進会議)
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
7.国内事業立地推進事業の継続について
2009年から始まった低炭素型雇用創出産業の国内立地推進事業(当時の名称)以降、同様の制度は、
国内製造拠点の維持、投資の拡大、雇用の維持・拡大に貢献している。
○国内事業場立地推進事業の継続と拡充をはかる。
※2014年度は対象を商業・サービス業に拡大して実施(1,400億円、2013年度補正予算)。
○一般に事業が軌道に乗るまでは一定の時間がかかる(約2~3年)ことから、事業開始後のフォ
ロー策を検討する。
○これまでに実施された案件について、着実に使用されているか検証する。
これまでの国内立地推進事業と予算額
・2009年度(2次補正) 革新的低炭素型雇用創出産業の国内立地推進事業 :297.1億円
・2010年度(予備費)
低炭素型雇用創出産業の国内立地推進事業
:1,100億円
・2011年度
革新的低炭素技術集約産業の国内立地の推進
: 71.4億円
・2011年度(3次補正) 企業等の国内立地の促進
:3,300億円
・2012年度
革新的低炭素技術集約産業の国内立地の推進
: 70.8億円
・2012年度(補正)
円高・エネルギー制約対策のための先端設備等投資促進事業
:2,000億円
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅳ.国内経済の活性化に向けた環境づくり
8.税制について
電機産業を含む金属産業は、国内における産業の付加価値と雇用の創出に多大な寄与をしている。
産業の発展、国際競争力の観点から、継続的な設備投資、研究開発投資は極めて重要である。
時勢に即した税制としていくことで、海外との制度差をなくす(小さくする)ことで、国内設備投資
の促進(=国内企業の海外流失の抑制)や、研究開発投資のいっそうの充実をはかる。
(1)研究開発税制
○将来の産業の収益性向上の実現のため、長期的視野に立って制度の検討にあたる。
※税額控除限度額引き上げ(20%→30%)の恒久化、繰越控除制度の適用条件の緩和(試験研究費が前年
実績より増加していなくても適用可)、税額控除限度額の繰越期間延長(1年→5年以上)など。
(2)環境関連投資促進・省エネ支援税制
○地球温暖化防止と電力使用の高効率化の観点から、制度を適宜見直しつつ、継続する。
※環境関連投資税制の対象機器に燃料電池を加える、トップランナー機器の導入支援等(再掲)など。
(3)固定資産税
○法人税の減免措置を受けた新規導入資産については、償却資産に係る固定資産税を免除する。
(4)減価償却制度
○設備投資や環境関連投資を企業に促す上で、減価償却資産区分について、機械装置以外の有形減
価償却資産(建物等)に係る耐用年数区分について見直しを行う。また、機械装置についても、耐
用年数表の細目に記載されていない設備を見直す(管理コストの低減と、設備の適切な運用を促
進する)。
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅴ.電機産業の技術を生かした国内産業の活性化
1.国内インフラの安全性向上について
(1)インフラ老朽化対策
-自治体などの道路管理者に2014年7月から5年ごとの実地点検と4段階の健全評価が義務付けら
れる。
○自治体のインフラ対策人材の不足については、監視・点検の機械化の促進を視野に入れた対応
を進める。
○そのためにも、各種センサーや画像認識技術を利用することによる、効率的な監視・管理の
仕組みを早急に確立する。
(2)老朽エレベーターのリプレース
-エレベーターは、70年代から急速に普及が進み、設置後30年以上のものが出ている。
-現行の安全対策は、1年ごとの法定点検のみ。
-保守部品の維持の関係からメーカーでは新機種へのリプレースのための努力はしているが、ユー
ザーの管理・保守形態が様々なため、対応しきれないケースがある。
○昇降機の耐用年数を明確にすることで、老朽エレベーターのリプレースを促進する。
(3)大型輸送車両の安全対策前倒し実施(衝突被害軽減装置の普及)
-新型生産トラック・バスにおいて、2014年11月1日から設置が義務化される。衝突被害軽減ブ
レーキの搭載義務化は新たに生産される車両が対象で使用中の車両は対象外であることから、
普及には時間がかかりすぎる。
○衝突被害軽減ブレーキシステムのうち、前方レーダー+警報装置については使用中の車両にも順
次設置を義務付ける。
美しい地球・幸せな暮らし
37
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅴ.電機産業の技術を生かした国内産業の活性化
2.災害対策の充実について
(1)環境配慮型変圧器の普及
-変圧器に使用されている絶縁材(変圧器の冷却、機器内部の絶縁に使用)は鉱物油由来の油や、温
室効果ガスである六ふっ化硫黄(SF6)が使用されている。
-こうした変圧器は、東日本大震災のような甚大災害時に、油漏れやガス漏れをおこし環境被害を
もたらす要素を持っている。
○災害時に周囲の環境を汚染しない、新技術適用型変圧器(乾燥空気方式やパームヤシ脂肪酸エス
テル系方式など)への早期置き換えを促進させる。
(2)防災機材の冗長電源の充実
-災害等対策として、地方自治体や病院、放送事業者は防災機材(防災無線、行政無線、デジタル
放送中継所(TV・ラジオ)の整備を進めているが、補助電源に関する考え方は、自治体・企業で
様々である。
-災害時の機器冗長化のための電源としては、自家発電機や無停電電源装置(UPS)があるが、そ
れぞれの運用目的は異なる(UPS:停電時の電源維持、自家発電機:停電後の電力供給)。これ
をパッケージにして運用することで、装置の利便性、設置面積、互換性の向上が期待できる。
○非常時に防災機材を確実に稼働させるため、自家発電・UPSのパッケージ型設置ガイドライン
を充実させる(10kVA未満の機器への適用拡張など)。
(3)全国瞬時警報システム(J-ALERT)の整備
○地方自治体の防災無線のデジタル化などの充実に併せ、J-ALERTと地方自治体の防災シス
テムとの連携について、引き続き点検・整備を進める。
美しい地球・幸せな暮らし
38
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Ⅴ.電機産業の技術を生かした国内産業の活性化
3.医療・介護機器について
-医薬品・医療機器等法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律)
が2013年末の臨時国会で成立、2014年末に施行される。「医薬品」と「医療機器」を別々の章
で規定される。
-生活支援ロボットに関しては、国際安全規格ISO13482が2014年2月に発効した。
-「ロボット技術の介護利用における重点分野」(2014年2月、経産省・厚生労働省)において、
重点的に開発支援する分野が定められる。
ロボット技術の介護利用における重点分野
◇移乗介助(装着型)
・ロボット技術を用いて介助者
のパワーアシストを行う装着
型の機器
◇移乗介助(抱え上げ型)
・ロボット技術を用いて介助者
による抱え上げ動作のパワー
アシストを行う非装着型の機器
◇移動支援
・高齢者等の外出をサポートし、
荷物等を安全に運搬できるロボ
ット技術を用いた歩行支援機器
美しい地球・幸せな暮らし
◇排泄支援
・排泄物の処理にロボット技
術を用いた設置位置調節可
能なトイレ
◇認知症の方の見守り
・介護施設において使用する、
センサーや外部通信機能を
備えたロボット技術を用い
た機器のプラットフォーム
出所:厚生労働省、経済産業省
39
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅴ.電機産業の技術を生かした国内産業の活性化
3.医療・介護機器について
○医療機器の承認審査について、安全性を担保しつつ、迅速化する。
○医療機器の製造販売承認(認証)申請時、及び承認(認証)後の定期的な製造管理及び品質管理の調
査について効率化をはかる(新医療機器については総合機構が、それ以外の承認品については都
道府県が、指定管理医療機器については登録認証機関が調査を行っているが内容はほぼ同じ)。
○医療機器、介護(生活)支援機器の研究開発実験の際の基準・ガイドラインを整備する。
※どこまでは可どこからは不可(やってはいけない)のかが不明瞭なため、なかなか技術の試験に着手できない。
医療機器の種類と課題
ハードウエア
予防・健康診断
個々人に対する病気の予防・予測。ゲノム解析など。予防行為・健康診断なので、健康保険が利
かず、機械化・高度化が進んでも利用費用が高くなる可能性がある。
検査・治療
診断(検査)機器は国内メーカーが競争力を持つ分野である一方、治療機器メーカーは国内には少
ない。分野によっては外資系企業しか提供してない。国内における治療機器分野を伸ばすために
は国内メーカーが開発を促進しやすくする法整備が必要。
予後・介護
リハビリ、生活支援、介護情報の共有による介護支援機器には、これまで法律上概念が存在しな
いものがある。法制度における体系化が必要。
ソフトウエア
医療機器制御(ハードウエアの付随物)
既存の医療機器を組み合わせて機能強
化するもの
医療機器以外の汎用機器を(準)医療機
器化するもの
美しい地球・幸せな暮らし
医療機器の安全規格に関し、欧州でソフトウェア単体での規格化が進んでいる。
ハードウエアから独立した安全規格が必要。
医療機器をM to Mで使用する場合や、例えば、スマートフォンと医療機
器・センサーを組み合わせて診療行為を行う場合など、医療機器をネット
ワーク経由で使用する際の安全性の担保等はこれからの検討課題である。
40
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅴ.電機産業の技術を生かした国内産業の活性化
3.医療・介護機器について
○介護・生活支援ロボットをめぐるルールは周辺分野では多く存在するが、包括的なルールはまだ
存在しない。技術や普及の状況と歩調を合わせたルール整備を進める。
○介護・生活支援ロボットの開発には、理学療法士・看護師(+病院・介護施設)の協力が必要だが、
「ツテ」があるメーカーは少ない。橋渡し支援策を検討する。
○病院・介護施設ごとにロボットに関する意識はさまざま。診療報酬や介護保険の適用範囲の見直
し、政府による利用実態の情報提供などによる普及促進を進める。
生活支援ロボットに係る法制度の例
<開発・承認に関するルール>
・医薬品・医療機器等法(厚労省)、介護保険法(厚労省) …医療機器や介護機器の承認
・安全性規格(経産省) …安全性の評価(製造段階での規格整備(ISO13482等)、流通段階での安全認
証)
<運用をめぐるルール>
・道路交通法・道路運送車両法(国交省) …生活支援ロボットが公道を走る際のルール
・不正アクセス禁止法(警察庁) …ロボット内のデータ保護など
・個人情報保護法(経産省、消費者庁) …ロボットが取得した個人情報(画像等)の取り扱い
・電波法(総務省) …M2M(危機感通信を利用したサービスを行う場合)等で、ロボットが行う無
線通信の取り決め
<事故の防止に関するルール>
・製造物責任法(経産省、消費者庁) …ロボットが原因の事故が起きた際の責任(特に自律型の場合)
・消費生活用品安全法(経産省、消費者庁) …消費者が簡単に購入可能なロボットの安全基準
美しい地球・幸せな暮らし
41
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Ⅴ.電機産業の技術を生かした国内産業の活性化
3.医療・介護機器について
介護分野におけるICTの利活用は、現場の過重労働の負荷軽減による労働条件の向上、効率的な
介護を補助を通じて、社会保障費用支出の効果を上げることが期待できる。
介護業務の負担感とロボット代替の期待感
清潔・整容
入浴介助
15
(N=463)
洗濯
整理整頓
5
社会福祉施設で起きた休業4日以上の腰痛
1200
1000
10
移動、移乗の…
(件)
0
800
600
排泄支援
余暇支援
400
医療行為の補助
就寝時の見守…
200
食事介助
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
出所:2010年度介護・医療分野ロボット普及推進事業最終報告書
(公益社団法人かながわ福祉サービス振興会)
0
2003
ロボット代替の期待感
2002
介護の負担感
出所:厚生労働省
○日本が誇るロボット技術によって高齢社会を支え、要介護者、家族、介護従事者の負担
軽減と安心・安全・健康を確保することが必要。
○しかし、実用化に向けては、民間だけでは解決が難しい問題もあるため、政府として積
極的に関与する。
美しい地球・幸せな暮らし
42
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Ⅴ.電機産業の技術を生かした国内産業の活性化
4.次世代高画質規格(4K・8K)テレビについて
-4K規格の放送は2014年6月2日から試験放送が開始され、7月からは本放送が開始される予定。
まずは通信衛星を使ったCS放送で開始し、将来的に地上波での放送も目指す。
-NHK放送技術研究所では8Kスーパーハイビジョンの研究が進んでおり、2016年の試験放送を
目指している。
○2020年までに8K放送の実現を目指す。
○高解像度情報の圧縮・伝送に関するソフトウエア、チップセットの開発を日本が先導する。
○知財権には配慮しつつも、他国との協同開発も視野に入れた技術開発を進める。
○高解像度や高解像度と日本が世界に誇る画像認識システムを融合させた画像検索システムや画
像認識応用システムの開発につなげる。
<例>遠隔医療における画像表示システム、構造物の異常監視システム、異常動作監視システム等
スポーツイベントと放送の高画質化
CS・IPTVで
4K放送
4K放送実験
(10月、3月)
2012
2013
2014
主な
スポーツイベント
2015
サッカー
ワールドカップ
(ブラジル)
2016
2017
オリンピック
(ブラジル)
出所:日経エレクトロニクス2013年10月28日号を基に作成
美しい地球・幸せな暮らし
BSで
8K放送
CS・IPTVで
8K放送
2018
2019
冬季オリンピック
(韓国)
2020
オリンピック
(日本)
43
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅵ.輸出促進に向けた取り組み
(1)経済連携の推進
○他国との経済連携(FTA、TPP)において、公平な貿易条件の確立に向け、取り組みを進める。
○TPP交渉にあたっては中核的労働基準と環境条項の遵守、安易な人の移動の制限を反映させる。
(2)輸出促進のための官民連携のさらなる充実
○産業界と一体になった閣僚の外国訪問や各国要人の招聘等の機会を利用した相手国との継続的関
係の構築をさらに強力に進める。
○個別具体的な分野での官民連携、進出先の日本企業への支援の充実をさらに進める。
ここ最近の官民連携の事例
ここ最近の官民連携の事例
・機器やサービスを海外に売り込む新組織を官民共同で設立
一般社団法人メディカルエクセレンスジャパン(官民で医療機器の輸出促進を目指す)
(株)海外交通・都市開発事業支援機構の設立(東南アジアの交通インフラ整備と都市開発を支援)
・上下水道・ごみ処理など、自治体の持つ社会インフラ、運営ノウハウの輸出
横浜市がパナマの下水処理施設の維持管理に技術を提供
東京都がタイに都市給水ノウハウを輸出 等
・海外進出支援チームの新設
JICAが窓口となり、現地の大使館、商工会議所、法律事務所、金融機関、人材派遣会社など
による支援チームを結成する。
中国、フィリピン、インドネシア、ベトナム、タイ、ミャンマー、インド、ブラジルなどで計画。
・進出先における金融支援
国際協力銀行が、中小企業が進出先でリースを使いやすくするための低利融資枠を設ける。
美しい地球・幸せな暮らし
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Ⅵ.輸出促進に向けた取り組み
日本が交渉中のEPA・FTA締結交渉の現状(2014年1月時点)
EU
(交渉中)
2014年4月に首脳会談
カナダ
(交渉中)
日中韓
交渉中
トルコ
(2014年1月
交渉開始)
モンゴル
(交渉中)
韓国
(中断中)
GCC
(交渉延期)
RCEP
2014年末の合意を目
指す
TPP
2014年メド
コロンビア
2014年内
オーストラリア
大筋合意
凡例:
…FTA(自由貿易協定)
美しい地球・幸せな暮らし
…EPA(経済連携協定)
…その他
45
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅵ.輸出促進に向けた取り組み
(3)日本製品の輸出を促すための環境づくり
○知財対策の強化 (新興国での制度設備充実支援、言語(特に中国語)に対する障壁低減、審査請求
のスピードアップ等) を継続する。
○日本の通関システムを新興国に輸出することで、相手国の輸出入手続きの効率化に貢献する。
・ベトナムが導入した日本のNACCS(輸出入・港湾情報処理システム)について、他の国々にも導入
を働きかける。2015年のASEANの通関システム共通化においても、導入を働き掛ける。
○世界に通じる日本認証基盤の整備を進める。また、日本基準と外国基準の互換性を高める。
・「日本製だから安心・安全」では、相手は納得しない。客観的評価が重要(台湾新幹線の例)。
・認証取得コスト(翻訳、審査期間、国内+海外での認証手続き)を下げる。
・相手国で認証取得する際の、技術情報の流出阻止など
○日本が提唱する「二国間クレジット制度」を、排出枠取引方法の国際標準にする。
二国間クレジット制度
二国間クレジット制度(Joint
(Joint Crediting
Crediting Mechanism
Mechanism (JCM))
(JCM))
京都議定書における温室効果ガス排出枠取り引き方法の一つである「クリーン開発メカニズム(Clean Development
Mechanism(CDM)) での課題を踏まえ、日本政府が世界に提案している制度。
途上国への温室効果ガス削減技術・製品・システム・サービス・インフラ等の普及や対策を通じ、実現した温室効果ガ
ス排出削減・吸収への日本の貢献を二国間で独自に定量的に評価し、日本の温室効果ガス削減目標の達成に活用する。
現在モンゴル、バングラデッシュ、エチオピア、ケニアの4カ国と署名が行われているほか、ベトナム、インドネシア、
フィリピン、タイ、ラオス、インドと交渉が進められている。
○日本の省エネ「性能評価方法」を輸出し、相手国の省エネ化に貢献するとともに日本の省エネ
製品・技術の認知度を上げる。
・エネルギー管理士資格制度、省エネラベル制度の輸出
・製品性能評価試験体制(計測機器・検査設備・スタッフ)の輸出
美しい地球・幸せな暮らし
46
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
1.総実労働時間短縮のための取り組みについて
時間外労働を削減し、長時間労働を是正するために
-全産業では未導入が74.7%(厚生労働省「就労条件総合調査」2013年)
-電機連合加盟組合の84.3%が導入しており、中堅・中小企業においても多く導入しているが、特
に300人未満規模は、猶予期間を理由に未導入となっているところが目立つ。
1カ月60時間を超える時間外労働に係る割増賃金率
全産業
電機連合
○時間外労働を削減し、長時間労働を是正するために、改正労働基準法の「1ヵ月60時間超
の時間外労働の割増率50%の適用」に関する中小企業への早期適用を行う。
美しい地球・幸せな暮らし
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
1.総実労働時間短縮のための取り組みについて
総実労働時間と年休取得日数の推移
規模別の年休取得日数
○総実労働時間は、2009年以降、再び増加し横ばい。
○年休取得日数は、規模間格差が大きく、300人未満の組合では年休取得日数は9日。
○ワーク・ライフ・バランス実現に向けた行動計画の策定およびその認定・評価など、実効
性のある措置の法制化を行う。また、業務の効率化や働き方改革に関する意識の啓発を引
き続き徹底する。
○年次有給休暇の最低付与日数を少なくとも15日以上とし、希望する誰もが2週間(年休10
日取得)以上の連続取得ができるよう、使用者の責任で、職場ごとに各人の取得日程を調
整させることを義務付ける。
美しい地球・幸せな暮らし
48
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
1.総実労働時間短縮のための取り組みについて
(1)裁量労働

全国の裁量労働 導入状況 (厚生労働省 平成25年就労条件総合調査)
みなし労働時間制 採用企業割合:10.8% のうち、
・専門業務裁量労働制:
2.2%(適用労働者 1.2%)
・企画業務型裁量労働制: 0.8%(適用労働者 0.3%)

電機連合加盟組織企業の裁量労働 導入状況 (電機連合 2011年度各種労働条件調査)
・専門業務型裁量労働制: 12中闘組合中10組合
多くが導入
・企画業務型裁量労働制: 12中闘組合中8組合
「日本型新裁量勤務」
について
★現行の裁量労働が導入されており、類する柔軟な働き方について新たな制度は
必要ない。
★現行制度においても、過重労働などの懸念があるため、健康管理や創造性発揮
の観点からも、柔軟な働き方が過重労働につながらないための、実効性のある
労働時間の上限規制や休息時間の確保のための法的措置について検討する。
美しい地球・幸せな暮らし
49
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
1.総実労働時間短縮のための取り組みについて
(2)裁量労働と常日勤との比較
男性 常日勤 vs. 裁量労働・みなし勤務 労働時間比較
(2013年電機連合「図表で見る電機労働者の生活白書」)
時間外労働時間(月)
常日勤
裁量労働・みなし勤務※
40時間超
23.1%
50.4%
60時間超
8.3%
22.4%
※ 裁量労働・みなし勤務の場合は、実労働時間月160hを超える時間を時間外労働とみなして算出
・裁量労働・みなし勤務の2人に1人は、時間外労働時間40時間超で働いている。
・裁量労働・みなし勤務の方が、常日勤より長時間労働であり、男女ともに「労働時間が
長い」と思っている割合が高い。
労働時間の評価 裁量労働 vs 常日勤 【男性】
長い:57.7%
美しい地球・幸せな暮らし
労働時間の評価 裁量労働 vs 常日勤 【女性】
長い:64.6%
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
1.総実労働時間短縮のための取り組みについて
(2)裁量労働と常日勤との比較
仕事と生活のバランス 裁量労働 vs 常日勤
裁量・みなし労働の労働時間分布
(2013年電機連合「図表で見る電機労働者の生活白書」)
170時間未満
170-180時間未満
180-190時間未満
190-200時間未満
200-210時間未満
210-220時間未満
220-230時間未満
230-240時間未満
240-250時間未満
250-260時間未満
260時間以上
200時間以上比率
220時間以上比率
男性
女性
月240時間以上
18.0 22.4
0.0
20.0
36.0
40.0
50.4
そう思う
ややそう思う
まったくそう思わない
無回答
女性 常日勤
21.1
女性 裁量
20.8
43.6
39.6
あまりそう思わない
27.9
29.2
5.51.9
10.40
男性 常日勤
16.8
38
35.3
9.20.8
男性 裁量
15.9
39.4
34.8
9.30.8
60.0
裁量・みなし労働の労働時間分布をみると、
総労働時間が月240時間以上※の人が1割程度
存在する。(男性10.9%、女性10%)
※月160時間を所定内と仮定した場合、時間外労
働80時間以上相当
美しい地球・幸せな暮らし
(2013年電機連合「図表で見る電機労働者の生活白書」)
「仕事と生活のバランスが取れているか」と
いう設問に対して、「そう思わない(そう思
わない+まったくそう思わない)」は男性全
体で44.7%、女性全体で33.2%。
「まったくそう思わない」と答えているのは、
男女の裁量・みなし勤務と男性の常日勤にお
いて約1割。
51
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
1.総実労働時間短縮のための取り組みについて
(2)裁量労働と常日勤との比較
(2013年度 電機連合「生活実態調査」)
常日勤 vs みなし勤務・裁量労働・・・ 仕事と生活のバランスがうまく取れているかどうかの背景とその影響
時間や休暇の実態
(時間)
(日)
)
)
(時間)
2013年計
男性計
と仕
れ事
てと
い生
る活
の
バ
ラ
ン
ス
が
そう思う
ややそう思う
あまりそう思わない
まったくそう思わない
女性計
そう思う
ややそう思う
あまりそう思わない
まったくそう思わない
25:30
30:36
21:06
25:54
35:36
47:54
14:48
10:54
12:00
18:00
38:42
41.36
42:00
24:54
35:18
47:36
77:00
38:00
23:54
33:24
37:24
80:30
13.6
12.5
13.3
12.9
11.9
11.4
16.2
16.7
16.3
15.8
16.3
労
働
時
間
・
休
日
・
休
暇
我
が
家
の
レ
ジ
ャ
ー
水
準
家
族
と
過
ご
す
時
間
満仕
足事
度自
体
の
や
り
が
い
69.7
65.4
92.3
80.9
48.4
21.9
79.5
95.9
88.5
62.3
42.0
61.0
57.0
74.8
63.2
48.7
35.1
70.0
80.1
72.9
61.0
61.4
57.2
55.0
85.9
71.1
34.5
14.0
62.2
81.8
71.4
41.5
22.7
援育
制児
度に
関
す
る
国
の
支
30.6
29.1
39.2
31.5
24.2
21.1
34.1
42.0
37.4
26.4
21.6
)
年平
休均
取の
得
日
数
仕事や健康への影響(%)
(
労み労7
働な働月
し時の
勤間平
務 均
時
・
裁 間
量 外
(
(
常労7
月
日働の
時
勤 平
間
・
交 均
代 時
勤 間
務 外
WLBに関する項目の満足度(%)
62.5
61.3
76.0
68.7
53.4
38.0
65.0
74.6
69.9
55.2
43.2
体今
力の
が働
もき
た方
なが
い続
く
と
54.2
56.4
26.2
46.3
73.8
89.2
48.7
25.4
41.7
71.6
85.2
心今
のの
病働
にき
な方
るが
続
く
と
48.1
52.7
25.7
41.2
69.0
87.7
38.0
17.4
29.5
59.2
84.1
ワーク・ライフ・バランスと労働時間には相関がみられ、労働時間が多い人はワーク・ライフ・
バランスに対する満足度が低い。
ワーク・ライフ・バランスが取れていないと感じる人は、仕事のやりがいを感じている割合が低
く、心身の健康に対する不安を抱えている割合が高いなど、職業生活の質の低下が見られる。
美しい地球・幸せな暮らし
52
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Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
1.総実労働時間短縮のための取り組みについて
電機連合の「勤務間インターバル」の取り組み
【2014年闘争 取り組み内容】
≪考え方≫
長時間労働による睡眠不足や過労の解消、また、組合員の心身の健康維持やワーク・ライフ
・バランス実現の観点から、「勤務間における休息時間の確保」の取り組みを行う。
・休息時間(勤務間インターバル)は、充分な睡眠と生活時間を確保するため、24時間につき
11時間をめざす。
・すべての労働者を対象とする。
≪具体的取り組み内容&結果≫ (2014.06.05時点)
①勤務間の休息時間を確保する必要性の労使合意
②休息時間確保に向けた具体的な取り組み確認
…27組合が前進(計39組合が到達)
…深夜労働規制の拡充・強化、時間に応
じた勤務開始時間の繰り下げを伴う制
度の導入・拡充等(計26組合が到達)
【電機連合 「勤務間インターバル」制度導入例】
・終業時刻が23:30-24:29 までの場合、翌日の就業時間を9:30-18:15とする(インターバル最長
10時間)。24:30以降は1時間繰り下げ。
・勤務間における休息時間を確保する必要性について労使合意し、心身の健康を守る観点から勤
務間における休息時間(インターバル10時間)を確保する(含む勤務免除)。
・21時以降定時外労働の原則禁止(インターバル11時間30分)、深夜時間外労働の原則禁止 など
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Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
2.生活との調和がより可能となる柔軟な働き方の促進について
(1)介護支援制度の充実
…電機連合における介護支援制度導入状況
【電機連合におけるこれまでの取り組み内容および加盟組合導入制度】
介護休職制度:分割可とした上で、「通算1年間」
⇒(導入制度例)「通算2年」(分割取得可)、「介護短時間制度と合わせて3
年」(分割取得可) 等
※通算1年以上:85組合(53.1%)
介護短時間勤務制度:期間
「3年間」(ミニマム「1年間」:1日2時間以上短縮)
⇒(導入制度例)「3年間」、「事由消滅」まで 等
※通算1年以上:73組合(45.6%)
仕事と介護の両立支援のため、さらなる制度充実が必要
○介護休業期間中や短時間勤務期間中の従業員に経済的支援を行った事業主に対する助成を
行う。
★介護のための短時間勤務制度を介護休業とは分けて制度化し、期間は事由解消までを念
頭におき、少なくとも1年以上とする。
○介護休業中の社会保険料については、育児休業と同様に、労使とも免除する等の措置を行
い、負担の軽減を図る。
★就労継続の観点から、地域包括ケアシステムの構築・整備を図る(通所系サービスの柔
軟な時間対応や緊急ショートステイの整備など)。
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Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
2.生活との調和がより可能となる柔軟な働き方の促進について
(2)育児支援の充実
…a)企業内託児所への助成の充実
企業A
企業内託児所
認可保育園
空きが出る
従業員の福利厚生として・・・
地域の待機児童解消にも貢献
★現在、事業所内託児所への助成が10年となっているが、これを恒久的なものとする。
また、一企業が複数の事業所で託児所を持つ場合、助成が一事業所のみに限定されている
が、複数の事業所に助成措置が取られるよう基準の見直しをする。
※なお、現在、子ども・子育て支援制度内で事業所内託児所を地域に開放することを条件とした、助成
拡充の検討が行われているが、一方で既存の助成金制度として、雇用保険制度内から助成されている、
「事業所内保育施設設置・運営等支援助成金」がある。これらは、複数制度としてではなく、一本化
した制度として実施すべき。
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Ⅶ.ワーク・ライフ・バランス実現に向けた施策
2.生活との調和がより可能となる柔軟な働き方の促進について
(2)育児支援の充実
…b)育児短時間勤務の例外の交代勤務
◆法律内容(指針含む)
①育児短時間勤務の対象外とできる場合
「業務の性質又は業務の実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と
認められる業務」に従事する労働者
②該当する労働者を例外にした場合、事業主はいずれかの代替措置を講じなくてはならな
い。(3歳までの育児休業、フレックスタイム制、始業・終業時刻の繰上・繰下、保育
施設の設置運営、他)
③短時間勤務制度は、1日の労働時間を6時間とする制度を含むものでなくてはならな
い。
◆交替勤務職場のおける導入事例
・交替勤務職場において、所定就業時間が5時間の短時間勤務を導入している。
○育児短時間勤務の例外の交替勤務について、職場の事情に合わせて導入し、運営している
例もあるため、こういった場合の短時間勤務の要件について緩和する。
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Ⅷ.すべての労働者の均等・均衡処遇の実現
1.法定最低賃金の遵守と理解活動の推進について
法定最低賃金の履行確保の状況
法違反の状況
法違反事業所の認識状況(%)
監督実施
事業所数
違反
事業所数
違反率
(%)
適用される最賃
額を知っている
金額は知らないが
適用されることを
知っている
適用されることを
知らなかった
2011
14,298
1,481
10.4
41.3
51.8
6.9
2012
13,644
1,139
8.3
36.9
55.4
7.7
2013
13,946
1,343
9.6
40.9
50.7
8.4
電機
最賃
223
32
14.3
※「電機最賃」の「法違反状況」は2013年度の「地域
別最低賃金」または「産業別最低賃金」の違反事業
所の合計
「法違反」の事業所は1割前後を占めている。そのうち半数以上の事業所は「最低賃金が適
用される」ことを知っていても違反をしている。
「電機最賃」(電気機械器具製造業最低賃金)の「違反率」は全体の違反率を大きく上回っ
ている(2013年度)。
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Ⅷ.すべての労働者の均等・均衡処遇の実現
1.法定最低賃金の遵守と理解活動の推進
特定(産業別)最低賃金の設定状況
1997年度
件数
適用労働者数
電機最賃
45
「製造業」
小 計
合
計
2002年度
2013年度
件数
適用労働者数
16,343
46
193
38,532
249
46,229
(百人)
件数
適用労働者数
14,729
46
11,613
188
33,559
179
28,668
246
40,317
240
35,908
(百人)
(百人)
産業別最低賃金の設定状況の推移をみると、適用労働者数は大幅な減少をしている。
2007年の最低賃金法改正により、従来の「産業別最低賃金」は「特定最低賃金」として明
確に規定されることとなった。
「特定最低賃金」は当該産業労働者の労働条件の向上のみならず「事業の公正競争をめざ
す」ものである。経営者側へのその点の周知と理解を求める活動を積極的にお願いしたい。
★最低賃金の実効性確保の観点から、監督行政の強化を行う。
★特定(産業別)最低賃金の発展に向けた制度の理解活動も合わせて行う。
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Ⅷ.すべての労働者の均等・均衡処遇の実現
<参考>電機連合の非正規労働者に対する取り組み
通年
国への働きかけ
厚生労働省
との政策協議
審議会
への参画
改正労働者派遣法
に対する意見提言
法定産別
最賃の
引き上げ
連合への
意見反映
企業・業界団体への働きかけ
派遣・請負労働者の受け入れ 産別最低賃金
に関する労使協議の推進
の協定化
産別最低賃金の
補償(直接雇用)
一時金の
確保
(直接雇用)
闘争
労災補償企業付加
の取り組み(直接雇用)
非正規労働者への
法令遵守
連帯取り組み
の徹底
(カンパ)
2013年総合労働条件改善闘争
派遣・請負労働者の受入れに関する労使協議の
徹底
「ともに働くパートナー」として、パートタイム・有期
契約労働者について、産業別最低賃金(18歳見
合い)を確保する。産別最低賃金を確保している
場合は、均等・均衡処遇の実現を図る。
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加盟組合への働きかけ
電機連合加盟の非正規労働者
「派遣・請負労働者の権利
保護ガイドライン」の推進
派遣会社、受入会社として下記
取り組みを推進
■受入時の労使協議の徹底
■法令遵守 ■安全衛生対応
■能力開発 ■時間外、年休
非正規労働者への
連帯取り組み(カンパ)
グラフ領域(右)
「多様な働き方と処遇のあり方に関する基
本的な考え方と対応」の推進
多様な働き方とした公正処遇についての考え
方を整理
■多様で安定的な働き方の実現
(転換型雇用管理制度の実現etc)
■非正規労働者の均衡処遇
■公正処遇実現のための課題・取り組み
(評価基準、賃金のセーフティネットの確立、
非正規労働者の労働条件決定のあり方)
非正規・組織化プロジェクトの推進
非正規労働者の雇用・労働条件対策と組織化に向けた取り組みについて提起
■雇用対策(採用計画、労働契約、社員登用制度etc)
■労働条件対策(決定の原則、賃金・一時金、退職金etc)
■組織化対策(部下なし管理職、直接雇用の非正規労働者etc)
未組織の非正規労働者
未組織労働者の組織化
非典型・組織化プロジェクトの推進
「派遣労働者の権利保護
ガイドライン」の推進
非正規労働者への連帯取り組み
(カンパ)
「多様な働き方と処遇のあり方に関する基本的な考え方と対応」
の推進
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Ⅷ.すべての労働者の均等・均衡処遇の実現
<参考>電機連合の非正規労働者に対する取り組み
「電機産業における派遣・請負労働者の権利保護ガイドライン」
(2012年7月確立)
<基本的なスタンス>
①派遣・請負労働者は「ともに働くパートナー」
②権利保護の立場にたった適正なルールづくり
③関連する法律の遵守
④派遣労働に関する事前協議
⑤派遣・請負会社労組、受入会社労組間の連携強化
⑥派遣・請負労働者の組織化
「電機産業の製造現場にお
けるアウトソーシングの実態
調査」(2010年)からの課題
○派遣・請負労働者の仕事や技能
に応じた契約料金の設定や改定
交渉はあまり行われていない。
○派遣・請負労働者の能力開発や
キャリア形成は行われているも
のの、人材ビジネス企業の取り
組みだけでは不十分。
派遣・請負労働者の労働条件や能力開発状況を考慮
した料金設定や派遣・請負会社選定の働きかけを行う。
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Ⅷ.すべての労働者の均等・均衡処遇の実現
2.派遣労働者・請負業務従事者の雇用の安定・労働条件の向上に向けた
支援の充実について
(1)請負業務従事者の「雇用の安定」「労働条件の向上」に向けた支援・監督指導の強化
○「製造請負優良適正事業者認定制度」などの推進・普及を図る。
○技術・技能、職業能力開発等を考慮した請負料金が設定されるよう、請負事業
者・委託事業者の支援・監督指導を強化するとともに、公的な能力認定制度の
整備や優良な派遣元事業主の育成につながる施策を行う。
(2)非正規労働者のキャリア開発に向けた企業への支援
○「キャリア形成促進助成金」や「派遣・請負労働者等のキャリア形成を支援す
るための手引き」等の活用・普及を図る。
○受入れている派遣・請負労働者に対して、自社の研修を受講させるなどの施策
を行っている受入先企業に対して支援を行う。
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Ⅸ.誰もがいきいきと働けるための環境整備
1.高年齢者が働きやすい環境整備について
企業における人材育成対策
~「若年層からみた電機産業の魅力」研究会から~
技術者の職場では、OJTを中心に若年層の育成を行っているが、上司は「育成に十分な時間をか
けられない」ことなどを育成の課題として挙げている。
若年者育成方法の改善点(職場の実態)
44.2
配属先で育成方法にバラツキがある
計画的に育成するという意識がない
育成に十分な費用がかけられない
確立された育成プログラムがない
外部の教育訓練機関が利用できない
OJTがうまく機能していない
若手社員に意欲がみられない
その他
とくに改善すべき点はない
無回答
定年前
60.8
育成に十分な時間がかけられない
育成する側の人材やスキルが不十分
高年齢者が再雇用で重視する点
28.6
22.9
22.7
20.0
12.4
11.4
10.6
3.4
2.8
2.5
1
2
3
4
5
転勤がない
深夜勤務がない
年金の満額支給開始年齢まで働ける
職場の雰囲気や人間関係がよい
会社から必要とされていると思える
定年後
58.5
46.7
44.1
40.5
33.9
…
転勤がない
年金の満額支給開始年齢まで働ける
深夜勤務がない
会社から必要とされていると思える
定年前の経験や能力が活かせる
59.6
48.9
45.2
45.2
44.1
数字は%
11 定年前の経験や能力が活かせる
23.2
出所:労働調査協議会「定年後の仕事と生活に
関する調査」の電機連合回答の集計結果
(2010年3月実施)
出所:電機連合「若年層からみた電機産業の魅力」
○技能伝承や指導など、これまでの経験を活かした職務を開発し、それを求める
若年者とのマッチングをはかる取組みを進めるために、その奨励や好事例の共
有などを図る。
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Ⅸ.誰もがいきいきと働けるための環境整備
2.不妊治療支援の充実について
-現在、日本では夫婦6組に1組が不妊といわれ、2010年ではその年の37人に1人の子供
が不妊治療によって生まれたとされる。
-2013(H25)年度から国の制度改正により、助成額の上限が一部引き下げられた。
-厚労省研究班の提言を受けて、不妊治療への公費助成制度について、厚生労働省は対象
年齢の上限設定や現行の所得制限の見直しなどを含めた研究会が設置され、検討が行わ
れている。
○子を望む親に対する経済的負担を軽減するため、不妊治療に対する経済的支援
措置の拡充を行うか、もしくは健康保険の対象とする。
○特定不妊治療費助成事業の助成額、回数、期間をさらに拡大し、所得制限を緩
和する。
また、特定不妊治療(体外受精および顕微鏡受精)以外の不妊治療に対しても、
助成制度を設ける。
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
Ⅸ.誰もがいきいきと働けるための環境整備
3.パワーハラスメントへの対策の充実について
【電機連合 2014年闘争 取り組み内容】
≪考え方≫
ハラスメントは、被害者に身体的・精神的な苦痛を与えるとともに、職場の環
境を悪化させる要因ともなるものであり、発生後の適正な対処とともに、周知
等による防止措置が必要。パワーハラスメントを含めたハラスメント対策に取
り組む必要性について、労使で共通認識に立ち、相談窓口や苦情処理機関の設
置など、必要な対応を速やかにとることのできる体制の整備を行う。
≪具体的取り組み内容&結果≫
①「職場におけるパワーハラスメント」に対応の相談窓口の設置
…15組合が前進(計76組合が到達)
②セクシュアルハラスメントも含めたハラスメント全般の周知
…18組合が前進(計72組合が到達)
○2012年3月に発表された「職場のパワーハラスメントの予防・解決に向けた提言」を踏ま
え、実態把握のための調査研究などを活用し、定義の検証や、法制化など見据え、引き続
き実効性のある施策の検討を行う。
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Ⅸ.誰もがいきいきと働けるための環境整備
4.障がい者に対する就労支援および定着支援の強化・充実について
-障害者雇用促進法により合理的配慮の提供が義務(または努力義務)となる。一方で、例え
ば、賃貸ビルなどから退去する際の原状回復の範囲に借主が設置したスロープなどの合理
的な配慮の撤去を含むことが、事業者が合理的配慮を提供する妨げとなっている。
-トライアル雇用は企業と障がい者がお互いに就労可能性を見極めるための重要な施策。
-一般企業で雇用される障がい者の増加や今後の精神障がい者の雇用義務化などにより、就
労後の定着支援体制が求められる。
-障がい者の出身元(事業者、団体)による定着支援が、定着率の向上に対して効果的と考
えられる。一方で、障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業等は、増加し続け
る相談者をこれ以上受け入れ続けることは難しい状態。
★事業者が合理的配慮を行いやすい環境整備(原状回復の範囲の見直しなど)を
行う。
○障がい者の一般就労を促進するため、就労移行支援事業の継続・強化(充実)を
図るとともに、トライアル雇用を今後も周知・促進する。
○障害者就業・生活支援センターやジョブコーチをはじめとする定着支援の強化
・充実を図るなど、就労した障がい者本人や企業への支援を強化する。
★特に、就労後も継続して定着支援を行っている出身元(事業者、団体)に対す
る支援の強化・充実を図る。
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Ⅹ.社会保障と税の一体改革
1.医療保険制度改革について(保険者機能の発揮、低所得者対策)
-現在、社会保障審議会医療保険部会において「持続可能な社会保障制度の確立
を図るための改革の推進に関する法律」にもとづき、医療保険制度の論議が行わ
れており、現行の後期高齢者医療制度を前提に、被用者保険における支援金の全
面総報酬割導入などが検討課題とされている。
★医療保険制度改革は、保険者間の財政調整ではなく、保険者機能の発揮により
医療費の削減努力が行えるような制度を目指すべき。また、「特例退職者医療
制度」は74歳までの退職者も加入者とし、保険者機能を発揮することができる
制度であるが、加入資格の一つに「老齢厚生年金の受給資格者であること」と
あることから、年金受給開始年齢引き上げに伴い、定年退職後すぐには加入で
きない「制度のすき間」が生じているため、加入資格を見直し、切れ目のない
制度へ改善する。
★医療保険制度改革の検討と併せて、制度横断的な低所得者対策である「総合合
算制度」の実現に向けた検討を進める。
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