Ⅰ.電機産業の現状

Ver.1.2
電機産業に関わる政策制度課題と私たちの見解
2013年9月11日
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
内 容
1.電機産業の現状
2.国内ものづくりの環境整備
4.海外で売れるものづくり体制の構築
(1)海外との経済連携の促進
(2)相手国のニーズを見据えた売り込み体
制の強化
(3)標準化、品質・安全性保証戦略の推進
(4)地球環境問題を視点としたインフラの
売り込み
(1)安定、安価なエネルギー供給の回復
(2)国内社会資本への対策
(3)国家財政の安定による為替相場の安定
(4)民間投資の喚起による国内事業場立地
の推進
5.だれもが活き活きと働くことが
(5)税制の対応
できる社会の実現に向けて
(6)国際会計基準(IFRS)への対応
(1)産業競争力強化に向けた
3.新産業・新製品の創出に向けた
「人への投資」
取り組み (2)若年者雇用対策
(1)電機産業の持つICT技術を活かした
(3)企業における人材育成対策
産業の創出
(4)高齢者雇用対策
(2)新産業・新製品を生み出す人材の育成
(5)女性の活躍推進に向けた環境整備
(3)サイバーセキュリティ
(6)子ども・子育て支援
(4)次世代高画質規格の普及
(7)不妊治療
(5)研究開発体制の整備、拡充
(8)介護支援の充実
(9)非正規雇用
<凡 例>
(10)安心して医療を受けられる
本文中、電機連合の要請内容には、「●」を付け、
環境整備のために
四角枠で囲んであります。
美しい地球・幸せな暮らし
2
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
1.国内電機産業の位置づけ(2009年度)
国内総生産に占める
機械工業の割合
国内雇用者数
機械工業
35.5兆円
(7.4%)
金属工業
10.9兆円
(2.2%)
全 体
483兆円
金属工業
114万人
(2.3%)
機械工業の内訳
精密機械
1.3兆円
(3.7%)
輸送用機械
12.6兆円
(35.3%)
機械工業
414万人
(6.6%)
情報サービス産業
164万人
(2.6%)
全 体
6,282万人
機械工業の内訳
一般機械
8.5兆円
(23.9%)
汎用、生産、
業務用機械
143万人
(34.5%)
全 体
35.5兆円
出所:県民経済計算(内閣府)
労働力調査(総務省)
電気機械
13.2兆円
(37.0%)
全 体
414万人
電気機械
167万人
(40.3%)
輸送用機械
104万人
(25.1%)
2009年度でみると、電機産業は国内総生産額の2.7%(電機・電子部門のみ)、国
内雇用の4.3%(電機・電子部門2.7%、情報サービス部門2.6%)を占めている。
3
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
2.電機産業における雇用者数の推移
450
400
350
300
250
200
150
100
50
0
電機産業労働者数の推移(年度・一般常用雇用者数)
(万人)
電気機械器具製造業
情報通信機械器具製造業
電子部品・デバイス製造業
情報サービス・インターネット関連
292
296
299
295
296
300
292
102
108
113
114
119
124
128
273
276
277
125
129
130
63
25
59
61
28
58
FY2011
FY2012
62
65
68
73
31
72
73
27
28
69
28
28
30
32
97
96
90
80
77
73
63
64
25
59
FY2003
FY2004
FY2005
FY2006
FY2007
FY2008
FY2009
FY2010
注:2010年度、2011年度は、岩手県、宮城県、福島県を除く数値。
2013年1月より調査項目が変更になったため、FY2012は直近の四半期(10月~12月)の数値を用いている。
出所:労働力調査(総務省)
2012年度の電機産業(電気機械器具製造業、情報通信機器製造業、電子部品・デバイ
ス製造業と情報サービス産業)で働く人(常用雇用者)の数は277万人。雇用者数の動向
を中期的に見ると、電気機械器具製造業は、減少する傾向に、情報サービス産業では
増加する傾向にある。
4
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
3.電機産業の国内生産高・売上高
15
12
20
7.6
7.8
15
6.6
5.6
8.2
5.4
1.7
22.9
7.2
4.3
21.0
6.6
13.9
11.8
10.0
11.6
11.4
1.5
1.6
1.5
10.3
10.0
10.0
10.2
1.5
1.6
1.5
1.5
1.4
1.4
1.4
1.3
6
3.6
10
5
9
11.0
8.1
7.9
7.4
7.0
7.1
7.3
FY2012
23.2
8.3
25.1
11.2
その他
FY2011
26.8
システム等
管理運営受託
FY2010
10.4
ソフトウエア開発、
プログラム作成
電子部品・デバイス
32.0
30
25
情報通信機械
情報サービス産業の売上高の推移
FY2009
電気機械
(兆円)
FY2008
35
電機・電子産業の国内生産高の推移
FY2007
40
(兆円)
3
10.9
0
出所:生産動態統計調査(経済産業省)
FY2012
FY2011
FY2010
FY2009
FY2008
FY2007
0
出所:特定サービス産業動態統計調査(経済産業省)
電機・電子産業の国内生産高は、21兆円。昨年同様前年度から2兆円の減。民生用電子の
生産減を受け、情報通信機械分野の落ち込みが激しい。情報サービス産業の売上高は、こ
こ数年10兆円台で推移している。
5
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
4.電機・電子産業の輸出入
① 電機・電子産業の輸出入額の推移
30
<輸出>
(兆円)
15
<輸入>
(兆円)
電気機械
25
4.1
6.2
3.0
5
5.6
8.1
6.7
5.8
5.4
2.7
7.2
4.6
2.3
6.8
2.1
2.5
2.1
4.8
4.8
5.2
2.3
2.3
12.9
4.5
8.5
6
4.8
5.0
4.4
3.9
3
6.2
2.6
3.2
2.8
2.3
2.7
2.8
2.9
FY2012
5.0
5.3
13.7
2.3
FY2011
13.7
5.3
15.2
3.3
9.8
FY2010
16.0
3.5
10.4
10.0
FY2009
6.6
9
9.5
FY2008
10
7.9
20.0
11.4
FY2007
15
19.6
10.9
電子部品・デバイス
FY2006
20
12
情報通信機械
0
FY2012
FY2011
FY2010
FY2009
FY2008
FY2007
FY2006
0
出所:財務省貿易統計
2012年度の電機・電子産業の輸出は、12.9兆円でこの3年間下落傾向が続く。2012年度の
輸入額は10.4兆円で、ここ3年ほど10兆円台で推移している。しかし携帯電話(スマート
フォン)などデジタル家電を主として、情報通信機械の輸入が増加しており、2009年度以
降、情報通信機械は輸入超過状態が続いている。
美しい地球・幸せな暮らし
6
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
4.電機産業の輸出入
② 電機・電子産業の輸出額の内訳
輸出全体に占める工業製品の割合(年度・円ベース)
120
(兆円)
工業製品除く輸出額
機械機器
一般機械(構成比・右軸)
100
機械機器以外の工業製品
電気機械(構成比・右軸)
輸送機械(構成比・右軸)
80
40%
35%
30%
25%
60
20%
15%
40
10%
20
FY2012
FY2011
FY2010
FY2009
FY2008
FY2007
FY2006
FY2005
FY2004
FY2003
FY2002
FY2001
FY2000
0
5%
0%
注:産業分類はジェトロのもの。構成比は、輸入総額に対する比率。
出所:ジェトロ、貿易統計(財務省)
2012年度を見ると、輸出総額は63兆9400億円。うち、工業製品は57兆8000億円(輸出額全体
の90.5%) 機械機器類は41兆円(同約65%)。機械機器類のうち、電気機械の輸出額の輸出
全体に占める割合が2002年度の26.3%を天井に下落傾向が続いている。
7
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
5.電機産業の業績、経営指標
① 電機産業の売上げ、利益率の推移
60
13.0
11.2
14.3
50.5
48.5
46.0
44.4
43.4
40
20
中闘組合企業の業績推移・見通し(連結)
(兆円)
20.9
17.1
15.6
12.3
12.2 10.9
11.8
7.3
2.8
2.6
8.0
売上高(左軸)
営業利益(右軸)
経常利益(右軸)
当期利益(右軸)
(40)
10
0
-1.5
(20)
20
5.8
2.2
2.4
30
12.8
10.6
6.4
2.6
0.6
0
38.8
37.8
16.3
15.5
15.1
39.3
40.8
39.0
18.2
6.1
3.3
44.1
(千億円)
-6.6
-10
-9.9
-11.8
-20
-23.7
FY2012
FY2013p
注:米国会計基準適用企業の経常利益は、税引き前利益で集計している。
2013年度見通し(p)は、2013年8月6日時点のもの。
出所:各社短信
FY2011
FY2010
FY2009
FY2008
FY2007
FY2006
FY2005
FY2004
-30
FY2003
(60)
2012年度の売上高は前年度実績比▲3.7%の37兆8千億円。営業利益はほぼ前年度並みだ
が、大型の構造改革があったことから、当期利益は▲9900億円に悪化している。2013年度
見通しでは、各利益率は改善、当期利益も黒字化を見込んでいる。
※中闘組合企業=日立製作所、パナソニック、東芝、富士通、三菱電機、NEC、富士電機、シャープ、OKI、
8
パイオニア、安川電機、明電舎(2003年度まではパナソニック電工、2008年度までは三洋電機含む)。
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全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
5.電機産業の業績、経営指標
(つづき)
② 電機産業と他機械機器企業との利益率
16
機械機器企業の営業利益率推移の比較(連結)
(%)
12中闘組合企業
14
自動車10社
精密9社
機械14社
12
10
8
6
4
2
0
FY2013
FY2012
FY2011
FY2010
FY2009
FY2008
FY2007
FY2006
FY2005
FY2004
FY2003
FY2002
FY2001
FY2000
-2
出所:各社短信
ITバブル崩壊(2001年度)以降、電機産業の利益率は他の機械機器産業と比べ、低位で推
移している。デジタル製品のコモデティ化や新興国との国際競争の激化などがその背景に
ある。
9
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
5.電機産業の業績、経営指標
(つづき)
③ セグメント毎にみた電機産業の売上げ、利益率の推移
12社のセグメント毎にみた電機産業の動向(2012年度)
Fuj システムプラットホーム
Hit オートモーティブシステム
Mit
産業メカトロニクス
Hit 高機能材料
NEC
キャリアネットワーク
Tos 電子デバイス
Hit
建設機械
(単位%)
Mit 重電システム
Pan
エコソリューション
Tos
デジタルプロダクツ
Fuj
ユビキタスソリューション
2 営
Hit 電力システム
0 業
利
Mit 家庭電器
Mit 電子情報システム
Hit
Pan エナジー
デジタルメディア Fuj
デバイスソリューション
・民生機器
4
Pan アプライアンス
Tos
家庭電気
Pan
AVCネットワーク
NEC
パーソナルソリューション
6
NEC ITソリューション
Pan
システムコミュニケーション
Sha
AV・通信機器
8
Tos 社会インフラ
Fuj サービス
Hit
電子装置・デバイス
Pan
オートモーティブシステム
Pan デバイス
-2 益
売上高100憶円以上
-4
売上高 50憶円以上
-6
売上高 50憶円未満
-8
-16
-10
Sha 太陽電池
-40
-30
-20
-10
0
10
NEC 社会インフラ
10
20
30
40
売上高伸び率(FY11→FY12)
出所:各社単信から電機連合が作成
日本の電機産業が取り扱う製品は幅が広く、12社で57の事業セグメントを持つ。ここ数年
のおおまかな傾向として、インフラ系分野は利益の市場の伸び・利益率が高く、デジタル
家電、電子部品(半導体)の市場は低調という特徴がある。
10
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
6.当面の課題
① デジタル家電の国内出荷の推移
4.0
民生用電気機器の国内出荷
(兆円)
3.5
3.0
2.4
2.5
2.0
1.5
3.8
映像機器
音声機器
カーAVC機器
2.1
1.2
2.0
1.1
2.0
1.2
2.6
2.8
3.0
3.3
2.9
2.6
2.1
1.3
1.5
1.6
1.8
2.0
2.0
2.4
2.9
1.8
1.5
0.8
1.0
FY2012
FY2011
FY2010
FY2009
FY2008
FY2007
FY2006
FY2005
FY2004
FY2003
FY2002
FY2001
0.0
FY2000
0.5
出所:電子情報技術産業協会
2012年度のデジタル家電の国内出荷額は直近のピークである2010年度の約4割に落ち込ん
だ。最も落ち込み幅の大きい製品は地デジ化+エコポイントの影響を受けた薄型テレビ
で、2010年度実績の3割以下(27.6%)の水準。
11
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
6.当面の課題
② 電力会社の電気料金値上げの状況(2013年8月時点)
電力会社
状 況
内容・実施時期など(値上げ幅は平均値)
北海道
申請中
企業向け:11.00%、家庭向け:7.73%(9月実施予定)
東
北
申請中
企業向け:15.24%、家庭向け:8.94%(9月実施予定)
東
京
認可済
企業向け:14.90%(12年4月から実施済)、家庭向け:8.46%(12年9月から
実施済)
中
部
当面実施せず
北
陸
当面実施せず
企業向け:17.20% (13年4月から実施済)、家庭向け: 9.75% (13年5月
から実施済)
関 西
認可済
中
国
当面実施せず
四
国
申請中
企業向け:14.72%、家庭向け:7.8%(9月実施予定)
九
州
認可済
企業向け:11.90%(13年4月から実施済)、家庭向け: 6.23%(13年5月か
ら実施済)
沖
縄
計画なし
出所:各種報道より電機連合が作成
火力発電比率の上昇に加え、円安による燃料購入費用の上昇から、多くの電力会社で、電
気料金の値上げの動きが見られる。特に企業向けでは、10%台後半の引き上げとなってお
り、製造コスト上昇による売上動向への影響が懸念される。
12
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
6.当面の課題
③ 為替の動向
為替レートの推移(ドル・ユーロ)
(円)
←
円 130
安 120
米ドル
ユーロ
110
100
13/07
13/04
13/01
12/10
12/07
12/04
12/01
11/10
11/07
11/04
11/01
10/10
円 90
高
→ 80
70
10/07
-これまでの為替動向と電機産業の業績の
関係からすると、こうした円安傾向は、
国内電機産業全体としておおむね有利な
方向に働くことが期待できる。
140
10/04
-2012年末に欧州の債務問題、アメリカの
財政危機問題が相次いで一息ついたこと、
また、2013年4月に日本銀行が金融政策
(量的緩和)を実施したことなどから、国
際為替相場におけるいわゆる「超円高」
と呼ばれた状態は解消の方向に向かって
いる。
-この円安傾向により、電機メーカーの国
注:終値の月平均値
出所:ロイタージャパン
際競争力が強化され、輸出の回復に繋が
ることが期待できる反面、原材料購入・
エネルギー調達や、生産の海外展開が進んだ分野(デジタル情報家電製品、部品・部分品
等)では、輸入を通じて円安傾向が逆にコスト増に繋がっている。そして、そのコスト増
を製品価格に転嫁しにくい状況は未だに継続している。
-為替の動向については、水準はもとより、変動幅や変動する速度も企業収益に影響を与
える要因となる点にも注意。
13
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
7.これからの電機産業のあるべき姿とは
① 電機産業成長への構造転換
①少子高齢先進国としての
すみやすい社会の実験場
国
際
競
争
力
中国
台湾
韓国
製造業の
コスト競争力低下
②研究開発体制のあり方における
産官学連携の限界と
「ターンキーソリューション」
を視野に入れたフォーカス
「日本ブランド」力
その結果を
「ターンキー」で輸出
複数の産業を
またがる
「ターンキーソリューション」
尊敬される日本
を目指す
③
海外組の
呼び込み
社会インフラの再構築と
構築ノウハウのパッケージ化
すり合わせ技術力
・道路
・エネルギー(スマートシティ)
・情報通信
④ いろいろなものを
つなげるための
『空気のような』
ICT環境
現在
2020
2030 時間軸
ターンキーソリューション …導入の手間がかからず、すぐに利用することが出来る仕組み
出所:SOZO工房
美しい地球・幸せな暮らし
14
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
1.電機産業の現状
7.これからの電機産業のあるべき姿とは
② グローバル競争に打ち勝つ「人への投資」
人材のグローバル化
市
場
の
グ
ロ
ー
バ
ル
化
生
産
の
グ
ロ
ー
バ
ル
化
現行従業員の能力開発
「人への投資」
優秀な人材の確保(採用)
働き方改革
技術・技能の伝承
エイジフリー社会の実現
非正規労働者への対応(コンプライアンスの徹底)
グローバル競争に打ち勝つ「人への投資」
■国内電機産業の持続的発展 ■国内雇用の維持・拡大
■ワーク・ライフ・バランスの実現
波及効果
■国内雇用の増加による「国内市場の拡大」 ■雇用の拡大による「社会の安定」
産業政策や政策・制度の取り組み(政党・省庁との政策協議による対応)
15
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
2.国内ものづくりの環境整備
(1)安定、安価なエネルギー供給の回復
① 火力発電
-石炭火力の発電コストは、1kWhHあたり9.5円で、LNG火力の10.7円と、石油火力の
22.1円より安い。
-石炭は、地政学的に見ても調達リスクが低い(現在、主な調達先はオーストラリア)。
●原発の停止・廃止に伴うベース電源部分の不足分は、石炭火力利用で補う。
●ただし、石炭火力はLNG火力の約2倍のCO2を排出することから、CO2発生を
抑制する設備の設置に向けた技
熱効率・送電
火力発電(石炭・LNG)の高効率化
術開発、規格の策定に注力する。
端/HHV(%)
美しい地球・幸せな暮らし
2000
1995
1990
1985
IGCC1300℃GT
(約43%)
IGCC1200℃GT
(実証機・約
41%)
出所:資源エネルギー庁
IGCC1700℃GT
(約50%)
IGCC1500℃GT
(約47%)
(年)
2035
超々臨界
圧(約41%)
超臨界
圧(約
38%)
1980
30
35
亜臨界
圧(約
36%)
1975
●民間企業の海外エネルギー資源
権益の取得を支援する。
40
1970
●発電の高効率化や、CO2の大
気への排出を抑制する技術開発
に対する援助・支援を行う。
1100℃
(約43%)
先進超々臨界圧
(約46%)
2030
1350℃
(約50%)
50
IGFC
(約55%)
2025
55
1600℃
級
(約54%)
1700℃
級
(約57%)
2020
1500℃
(約52%)
2010
60
2005
65
45
今後の技術開発
…LNG火力(コンバインドサイクル)
…石炭火力(臨界圧)
…石炭火力(石炭ガス化)
1965
●LNGは、陸揚げ施設、ガスパ
イプラインの敷設のコストが高
いことから、新規参入を促すに
は、ガス発電・送ガス分離を検
討する。
2015
70
16
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2.国内ものづくりの環境整備
(1)安定、安価なエネルギー供給の回復
② 原子力発電
-化石燃料購入費用の上昇は、電力料金の値上げの大きな原因。そして、中期的にみて、
燃料価格高騰は避けられない。燃料コスト高は企業の国際競争力を弱め、また、競争件
条の悪化は、国内企業の海外流出要因になりかねない。こうした流れが、上向きかけて
いる景気回復の足かせになることを懸念する。
-ほとんどの原子力発電所が稼働停止して2年。企業として、原子力発電所関係の人材の
保持が難しくなっている。
●政府はエネルギー政策を予定通りに確立
する。
●各原発の安全工事を早急に進めるととも
に、原子力規制委員会の規制基準を早期
に確立する。その上で、地元の理解を得
つつ、安全基準を満たす原発を再稼働さ
せ、企業・国民のエネルギーコスト上昇
・電力の安定供給への懸念を払拭する。
●廃炉作業や核燃料サイクルの確立など、
原子力関係の技術者はこれからも必要と
なる。原子力関連産業の人材育成・確保
のための検討を進める。
原発に新規性基準で求められている対策例
5年以内に適用
フィルター付きベント設置
(一部原発で猶予)
・第2制御室
・非常用電源
・非常用水源
・テロなどに備えた特定安
全施設の設置
・配管などの多重化
・ケーブル類の難燃化
外部電源の強化
放水砲・移動式電
源車の配備
・地下の構造を詳しく探査
・活断層が直下にないこと
を確認
浸水を防ぐ水密扉
・基準津波の算出
・巨大な津波に耐える
防潮堤の建設
17
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2.国内ものづくりの環境整備
(1)安定、安価なエネルギー供給の回復
③ 再生可能エネルギー
-エネルギー自給率を高める、エネルギーポートフォリオの選択肢を増やす、地球温暖化対
策を進める点において再生可能エネルギーの取り組みは着実に進める。
-太陽光以外の発電は設置に時間がかかる(風力:4~5年程度(陸上)、地熱:9~13年程度)。
-固定価格買取制度導入後、特定の方式(太陽光)や特定の地域(土地が安い北海道)への集中
が見られる。
●風力・地熱については、環境影響評価手法、許認可手続きを見直し、建設リードタイ
ムの短縮をはかる。
●北海道は、太陽光、風力発電の有力地。道内送電網の容量増をはかるとともに、再生
可能エネルギーの系統接続に関する知見(ノウハウ)を収集する。
各電源の建設におけるリードタイム
電源
太陽光
(メガソーラー)
リードタイム
1年前後
風力(陸上)
4~5年程度
地熱
9~13年
程度
主な手順
系統連携協議→電気事業法の手続き→建
設工事→使用前安全管理検査
風況調査→環境影響調査・系統連携協議
→電気事業法・建築基準法に係る手続き業
務→建設工事→使用前安全管理検査
資源量調査→温泉法上の許認可手続き、
地元調査→建設
環境影響評価の対象規模
第1種事業:1万kW以上
第2種事業:0.75万kW以上1万
kW未満
第1種事業:1万kW以上
第2種事業:0.75万kW以上1万
kW未満(いずれも予定)
注:第1種事業は必ず環境影響評価を実施、第2種事業は、知事意見及び簡易な環境影響評価の結果を踏まえ、主務大臣が実施
の要否を個別に判定する。
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2.国内ものづくりの環境整備
(1)安定、安価なエネルギー供給の回復
③ 再生可能エネルギー
(つづき)
メガソーラーの普及状況(2012年)
沖 縄
56.4万kW
0.4%
7.8%
北 陸
0.8万kW
北海道
0.2%
1.4万kW
関 西
中 国
24.4万kW
15.9万kW
東 北
0.3%
7.0万kW
0.9%
東 京
2.0%
29.6万kW
0.4%
63.4万kW
九 州
四 国
テキスト
中 部
3.5%
8.2万kW
1.2%
10.5万kW
0.3%
<凡 例>
電力会社名
メガソーラーの
設備認定容量 電力会社が持
つ発電設備の
総出力に占め
るメガソーラー
の割合
・2012年12月末までに経産省から買取制度に基づく
設備認定を受けたメガソーラー (設備容量1000kW
以上が対象)の出力合計。
・電力会社の発電設備の総出力は、2011年度のもの。
出所:経済産業省、各社有価証券報告書
19
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2.国内ものづくりの環境整備
(1)安定、安価なエネルギー供給の回復
④ 蓄電池
-企業の省エネニーズの高まりに応え、この春から企業向けを中心に蓄電池の販売が本格
化した。
-車載用をはじめ、大型蓄電池では日本企業は世界シェアの8割のシェア(2011年)と、競
争優位にある分野であり、今後の国内外での展開が大いに期待できる。
●法改正を行い、電気事業者以外の事業者がビジネスに参入しやすくする。
・蓄電池を利用した事業を始める場合、放電の際に電力供給者となるため、電気事業
法上、経産大臣の認可が必要になる。また、電力使用情報の利用は一般電気事業者
・特定電機事業者に限定される。
●蓄電池(リチウムイオン電池)について、残存価値の算定基準を規格化し、リサイクル
利用できるようにする。
●既存蓄電池の低価格化・高効率化に向けた技術開発を間断なく進める。
●次世代大容量蓄電池(ナトリウムイオン電池、NAS(ナトリウム硫黄)電池)の開発を
進める。
●国際電気標準会議(IEC)の電気エネルギー貯蔵システムに関する新たな専門委員会
における国際規格策定を着実に進める。また、本件をトップスタンダード制度の成功
事例(電機分野では第1号)とすることで、今後の動きに繋がるよう注力する。
※トップスタンダード制度
2012年6月に創設。これまで国際標準の提案には国内メーカー間の合意を得る必要があり、その手続き
に2~3年かかっていた。TS制度では、経済産業省が重要と判断した分野については、国内調整を経
ず、技術の高い企業と早期に国際標準を提案する。
美しい地球・幸せな暮らし
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2.国内ものづくりの環境整備
(1)安定、安価なエネルギー供給の回復
⑤ エネルギー消費者側からの省エネ
-電力不足や地球温暖化対策については、消費側の対策も重要。夏・冬の季節的な取り組み
もさることながら、日常的な取り組みも必要になる。そのためには、無理なく無駄を減ら
す「エネルギー使用の適正化」を目指す省エネの取り組みを展開する必要がある。
●事業場における燃料電池などの高効率機器、再生可能エネルギーの普及支援を継続し
て進める。
・グリーン投資減税(2015年度までの時限措置)期間を延長する。
・三相誘導電動機について、2015年の国際的な効率基準への対応と機器の普及に努める。
●家庭では太陽光発電、エネルギー高効率変換機器(エネファーム、地中熱ヒートポン
プ等)の導入、およびHEMS(家庭用エネルギー管理システム)、スマートメーター
の普及を進める。
・無線方式のスマートメーターについては、電波利用料の徴収を行わない。
・日本発のHEMSの国際基準であるEchonet-Lite(エコーネット・ライト)※は、消
費者にとっての利便性が見えにくく、なかなか普及が進んでいない。先導事業など
でサービスの見える化を進めることで、社会の認知を深め、普及促進をはかる。
・既存住宅での省エネリフォームの投資型減税における、対象省エネ機器(現在、太陽
光発電装置のみ)の範囲を拡大する。
ECHONET Lite(エコーネットライト)
エコーネットコンソーシアムが策定した通信プロトコル。スマートハウス向け制御プロトコルおよびセン
サーネットプロトコルから成り、ISO規格およびIEC規格として国際標準化されている。
美しい地球・幸せな暮らし
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2.国内ものづくりの環境整備
(1)安定、安価なエネルギー供給の回復
⑤ エネルギー消費者側からの省エネ
(その2)
-照明は家庭における消費電力量の約15%を占める。電力消費量が白熱電球に比べて少ない
LED照明は、家庭におけるCO2 排出量削減に有効であるとともに、家計の光熱費負担
減少にもつながることから、民間での導入のハードルが最も低い省エネ機器である。
●LED電球の低発熱、発光効率の改善など技術開発を促進する。
●LED電球市場は参入者が急速に拡大したため、電球の性能表示が安定していない。
光源や制御装置などの規格化を進める。
(万個・万台)
LED照明の普及状況
3000
2500
8000
2,554
LED電球
LED照明機器
LED電球の価格動向
7000
価
格
1
/
3
以
下
6000
2000
5000
4000
1500
1,044
1,049
1000
500
(円)
127
318
2000
391
1000
0
2009年度
2010年度
3000
2011年度
出所:(一社)日本電球工業会、(一社)日本照明器具工業会
0
09/04
09/10
10/04
10/10
11/04
11/10
出所:GfKマーケティング大手家電量販店の売上げデータ
22
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2.国内ものづくりの環境整備
(1)安定、安価なエネルギー供給の回復
⑥ 次世代パワエレ機器(SiC/GaN)の普及促進
-エネルギー使用においては、多くのエネルギー損失を伴う「変換」プロセスがある。電力
変換におけるロスの低減にはパワエレ機器が重要な役割を担っている。
-その利用分野は電力、自動車、家庭電器、産業用機械、通信分野等と広く、従来のパワエ
レ機器の置き換えにより、国内で軽減される電気エネルギー変換ロスは原発約4基分とも
言われている。
-次世代のパワエレ機器(SiC/GaN等)
の普及により、産業・エネルギー流通
パワー半導体の仕事
領域の省エネ化が急激に進むと共に、
パワー半導体は、電源(電力)の制御や供給を行う。
電機産業界にも変革が期待される。
●設備投資に対する税制面での優遇措
置や補助金の導入をはかる。
●NEDOによる省エネ設備導入補助
事業を促進する。
●実用化製品投入時には、他の省エネ
機器・システム導入と同様、補助等
の支援策を講じる。
交 流
+
電
圧
-
整流※
直 流
交 流
+
電
圧
-
周波数変換
交 流
直 流
+
電
圧
-
昇圧・降圧
直 流
直 流
+
電
圧
-
インバータ
交 流
※整流:入力された電気を、使用目的に合わせてきれいな(例:ノイズのないor精度の高い
or無駄のない)電気に変える事
出所:サンケン電気株式会社HP
23
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2.国内ものづくりの環境整備
(2)国内社会資本への対策
① 老朽インフラ対策
-日本の社会インフラや自治体が持つ公共施設の多くは、高度経済成長期(1950~70年代)
に整備されたもので、昨今、更新期を迎えつつある。
-社会資本整備は、バブル経済期まで拡大を続けていることから、その保守・更新はこれか
ら半世紀以上に渡り取り組む課題である。
-日本が人口減少社会に突入したことを踏まえ、公共投資は量の拡大から質(パフォーマン
ス)の向上にあり方を重点を変えていく必要がある。
-老朽インフラ問題は、他の先進国にもみられる問題。日本の優秀なセンサー技術・情報管
理システムのビジネスチャンスにもなる。
●国、地方自治体は、港湾、道路、橋梁、護岸、上下水道といった地域の社会資本や各
種施設・設備の老朽化に対する総点検を実施し、維持管理・将来的な修繕計画につい
て情報を収集する。
●国が評価基準を作成し、地方自治体はその基準にしたがい、施設・設備の状況を評価、
公表することで、現状認識の国内共有をはかる。
●集まった情報を基に、政府の設備老朽化に対応する助成措置の設置や、地方自治体へ
の対策勧告など、設備更新や補修・補強といった老朽化対策を促す方策を検討する。
●橋やトンネルなど、重大事故に繋がりやすいインフラについては、各種センサーや画
像認識技術を利用することによる、効率的な監視・管理体制を早急に確立する。
24
美しい地球・幸せな暮らし
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2.国内ものづくりの環境整備
(2)国内社会資本への対策
① 老朽インフラ対策
(つづき)
日本の社会インフラ投資額
20
(従来どおりの維持管理・更新をした場合の推計)
(兆円)
予 測
新設(充当可能)費
災害復旧費
更新費
維持管理費
維持管理・更新費が2010年度の投資総額を上回る額
15
10
5
0
60
55
50
45
40
35
30
25
20
15
10
05
2000
95
90
85
80
75
70
1965
-5
維持管理・更新費が2010年度
の投資総額を上回る部分
(注)推計方法について
(年度)
国土交通省所管の8分野(道路、港湾、空港、公共賃貸住宅、下水道、都市公園、治水、海岸)の直轄・補助・地単事業を対象に、
2011年度以降につき次のような設定を行い推計。
・更新費は、耐用年数を経過した後、同一機能で更新すると仮定し、当初新設費を基準に更新費の実態を踏まえて設定。耐用年数
は、税法上の耐用年数を示す財務省令を基に、それぞれの施設の更新の実態を踏まえて設定。
・維持管理費は、社会資本のストック額との相関に基づき推計(なお、更新費・維持管理費は、近年のコスト縮減の取組み実績を反映)。
・災害復旧費は、過去の年平均値を設定。
・新設(充当可能)費は、投資総額から維持管理費、更新費、災害復旧費を差し引いた額であり、新設需要を示したものではない。
・用地費・補償費を含まない。各高速道路会社等の独法等を含まない。なお、今後の予算の推移、技術的知見の蓄積等の要因に
より推計結果は変動しうる。
出所:平成23年度国土交通白書( 国土交通省)
25
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2.国内ものづくりの環境整備
(2)国内社会資本への対策
② 強固な情報通信基盤の構築
-東日本大震災の経験は、大規模災害に強い情報通信体制の確立による、災害発生時におけ
る防災、災害発生後の減災の必要性を認識させた。
●災害に強い情報通信ネットワークの構築、災害時における確実な情報伝達の実現に向
けた防災情報通信基盤の整備を進める。
●情報伝達の際には、a)平時、b)発災時、c)発災後、d)復旧時といったフェーズ毎に対
応を考える必要がある。
●自治体によってはネットワークに詳しい人材が不足している。平時からシステムを運
用できる体制をつくる。
③
東北地方における震災からの復興・再生
-東日本大震災からの復興・再生は、日本再生の重要課題。官民が総力をあげて、地域経済
社会の再生に取り組み、被災者の生活再建、雇用創出を着実に推進する。
●復興・再生の予算確保もさることながら、現地の復興・再生に関わる人材、被災者の
生活再建を支援する人材の確保を進める。
●被災市街地の復興の際には防災性の高い街づくりとともに、再生可能エネルギーを高
度利用した、エネルギー地産地消型の環境に優しいまちづくりを目指す。
●同時に、東北地方に再生可能エネルギー産業を集積させ、将来、ここを拠点に再生可
能エネルギーシステムの国内外への展開をはかれるようにする。
26
美しい地球・幸せな暮らし
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2.国内ものづくりの環境整備
(3)国家財政の安定による為替相場の安定
-現行の金融政策による円高是正は一時的なものと考えられる。中長期的な為替の安定を
目指すためには、成長戦略の実現による国内経済の活性化と、その結果としての国家財
政の安定が必須となる。
1990
1991
1992
1993
1994
1995
1996
1997
1998
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
●日銀の長期国債の購入については、景気回復の動向や金利の動きを見つつ、慎重に実
施する。また、日銀と金
融市場の意思疎通を密に
一般会計における歳入・歳出の状況
(兆円)
行う。
120
公債発行額
●税と社会保障の一体改革
100
一般会計税収
90.3
の取り組みによる財政健
歳出総額
全化への取り組みを不断
80
中期財政フレーム(2012~14年度)にお
ける公債発行上限(約44億円)
に進める。3党合意に基
60
44.2
づき、8月までに結論を
42.3
40
導き出す。
●社会保障と税の共通番号
20
(マイナンバー)制度を
0
2016年度から確実に実施
し、時代に沿った所得の
(年度)
再分配機能の強化をはか
注:2011年度までは決算額、2012年度は予算による。公債発行額は、4条
公債、特例公債、復興債の総計
る。
出所:一般会計税収、歳出総額及び公債発行額の推移(財務省)
美しい地球・幸せな暮らし
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2.国内ものづくりの環境整備
(4)民間投資の喚起による国内事業場立地の推進
-2009年から始まった低炭素型雇用創出産業の国内立地推進事業(当時の名称)以降、同様
の制度は、国内製造拠点の維持、投資の拡大、雇用の維持・拡大に貢献している。
●「円高・エネルギー制約対策のための先端設備等投資促進事業」の継続と拡充をはか
る。
●一般に事業が軌道に乗るまでは一定の時間がかかる(約2~3年)ことから、事業開始
後のフォロー策を検討する。
●これまでに実施された案件について、着実に使用されているか検証する。
これまでの国内立地推進事業と予算額
・2009年度(2次補正) 革新的低炭素型雇用創出産業の国内立地推進事業 :297.1億円
・2010年度(予備費)
低炭素型雇用創出産業の国内立地推進事業
:1,100億円
・2011年度
革新的低炭素技術集約産業の国内立地の推進
: 71.4億円
・2011年度(3次補正) 企業等の国内立地の促進
:3,300億円
・2012年度
革新的低炭素技術集約産業の国内立地の推進
: 70.8億円
・2012年度(補正)
円高・エネルギー制約対策のための先端設備等投資促進事業
:2,000億円
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2.国内ものづくりの環境整備
(5)税制の対応
-時勢に即した税制としていくことで、海外との制度差を無くす(小さくする)ことで、国
内設備投資の促進(=企業の海外流失の抑制)や、研究開発投資をより充実をさせる。
①
研究開発促進税制
-長期的視野による研究開発投資の促進、繰り越し要件の緩和・繰り越し要件の緩和に
より、赤字企業における研究開発投資の促進をはかる(後者は特に景気低迷時には必
要)。
-研究開発拠点の海外流失を抑止する。
●税額控除限度額の引き上げ(20%→30%)を恒久化する。
●税額控除限度超過額の繰越期間を延長する。
●適用条件を緩和する(試験研究費が前年より増えていない場合にも繰り越し控除を認め
る)。
②
固定資産税
-償却資産(機械・装置類)に対する課税は、投資優遇税制の効果を減殺する。
-国内への設備投資を不利にするとともに、既存の国内装置産業の国外流失を引き起こ
す懸念がある。
-償却資産に対する課税は、国際的にも希有(米国の38州で課税されている程度)。
●償却資産に対する固定資産税を廃止する。
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2.国内ものづくりの環境整備
(5)税制の対応
③
(つづき)
減価償却制度
-企業(特に中小)における情報設備の更新需要を喚起するとともに、管理コストの軽減
化により企業が情報機器導入を進めやすくする。
-機器の耐用年数について、事業の実態に合わせることで、適切な運用を進める。
●少額減価償却資産の損金算入限度額を引き上げる。
少額減価償却資産の損金算入限度額(現行10万円未満)、およびソフトウエアの損金
算入限度額(同30万円未満)の引き上げ
●減価償却資産区分のより一層の簡素化・明確化を進める。
※2008年度の税制改正で機械装置の耐用年数区分の簡素化・明確化が図られている。
機械装置以外の有形減価償却資産(建物等)に係る耐用年数区分について同様の見直
しを行う。また、機械装置については、耐用年数表の細目に記載されていない設備
についても、見直しをする。
30
美しい地球・幸せな暮らし
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2.国内ものづくりの環境整備
(6)国際会計基準(IFRS)への対応
-国際会計基準づくりを進める国際会計基準審議会(IASB)は、この4月に会計基準ア
ドバイザリーフォーラム(ASAF)を世界12地域で立ち上げ、国際的な基準見直し議論
が再び盛り上がっている。
●金融庁、会計専門家等による狭い議論の場ではなく、企業経営者、労組、他省庁等の
参加のもと、幅広い論議・検討の場をつくり、日本の国益を確保する。
●企業会計基準委員会(ASBJ)やASAFにおける論議経過を節目ごとに公表し、十
分なアナウンスに努める。
●短期的業績志向でなく、実体経済重視の観点を重視し、企業の長期的な成長をめざす
視点に立つ内容とする。
●基準適用については、IFRSの採用が有意である企業の任意適用とする。
31
美しい地球・幸せな暮らし
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3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(1)電機産業の持つICT技術を活かした産業の創出
① スマートグリッド、スマートシティ
-概念が先行しており、定義が定まっていない。要素技術はある。誰が投資を行い、どう
投資を回収するかといった、ビジネスモデルが見えないため、普及も進まない。
●モデル事業、実証事業、先導事業等、ビジネスモデルの確立支援を行う。
●新たな事業展開に応じ、法改正規制緩和を適切に実施する。
●将来の日本の重要な輸出産業と位置付け、国際標準化に向けた取り組みを進める。
○京都府 けいはんな学園都市
・電力制御機能を付加したスマートタップを各
家庭に取り付け、消費を「見える化」。エネ
ルギーの供給状況に応じたデマンドコント
ロールを実施。
・電力の仮想化により電力の由来を特定、多様
なエネルギー源との組み合わせを実施。
○福岡県 北九州市
・70企業、200世帯を対象にしたス
マートメーターによるリアルタイ
ムマネジメントの実施。
・HEMSによるエネルギー制御、
BEMS、デマンドサイドマネ
ジメントシステムを実証、構築。
八幡製鉄所を基幹系統と見立て
た、系統との接続を実証。
出所:経済産業省
美しい地球・幸せな暮らし
○神奈川県横浜市
・みなとみらいHEMS、BEMS、
EVを組み合わせた地域エネルギー
マネジメントシステムを技術実証
・2万7千kWの太陽光導入、熱、未利
用エネルギーの利用
・みなとみらい地区、港北ニュータウ
ン、金沢地区において、4,000世帯
にスマートハウス、2,000台のEV
普及。
○愛知県豊田市
・電気と熱による地域のエネルギーマネジ
メントシステムの実証
・70件以上の家庭でデマンドレスポンスを
実施。3,100台の次世代自動車普及、Vto
H(家庭への放電)やコンビニ充電を通じ
たVtoG(自動車蓄電池から系統へ電力供
給)を実証。
32
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3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(1)電機産業の持つICT技術を活かした産業の創出
② ICT利活用による国内他産業の活性化
1)医療
○高齢社会を迎え、医療サービスを受ける人が増加していくこと、医師・医療機関の地域
間格差問題、社会保障費用における薬価の膨張といった問題に対し、医療技術の向上、
医療サービスの効率化による対応を進めていくことは喫緊の課題である。
●医療機器の承認手続きに多くの時間を要する「デバイス・ラグ」を解消する。
・例えば、新医療機器は(独法)医薬品医療機器総合機構が、新医療機器以外の承認品は都道府県
が、指定管医療機器については登録認証機関が調査を行うが、調査内容はほぼ同じにもかかわ
らず、製造業者は同様の調査を何度も受けることになる。
●遠隔医療に関わる規制を見直し、対象地域の拡大、遠隔医療の対象を拡大する。
・医師法第20条※に基づく「情報機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」の改正、も
しくは解釈の拡大により、利用環境を整える。
※医師法20条で「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会
わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。」とあることか
ら、医師自身が立ち会わずに医療行為をしてはならない=「対面を原則とする」というふうに解釈されている。
●救急医療も含め、高画像診断情報のやりとりを可能とする通信網の整備促進、3D
(立体)映像の利用を検討する。また、利用者の通信費用の負担軽減策を講じる。
●プライバシー保護には配慮しつつ、レセプトデータ、特定診療情報データベースの利
用範囲を拡大すべく、基準の見直しを行う。また、処方箋の電子的な交付、作成を進
め、異なる病院間での重複診療・重複処方といった無駄を無くす。
33
美しい地球・幸せな暮らし
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3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(1)電機産業の持つICT技術を活かした産業の創出
② ICT利活用による国内他産業の活性化 (つづき)
2)介護
-現場の過重労働の負荷軽減による労働条件の向上、効率的な介護を補助することで、社
会保障費用支出の効果を上げることが期待できる。
●日本が誇るロボット技術によって高齢社会を支え、要介護者、家族、介護従事者の負
担軽減と安心、安全、健康を確保する。
●ロボット開発には多方面の人材が必要。人間の尊厳の問題も絡むため、民間の力のだ
けでは実用化は簡単には進まない。政府の積極的な関与を求める。
●他国に先駆け機械化介護ビジネスモデルを構築し、後に続く国々に輸出する。
介護業務の負担感とロボット代替の期待感
清潔・整容
15
洗濯
10
整理整頓
5
0
1000
800
600
出所:2010年度介護・医療分野ロボット普及推進事業最終報告書
(公益社団法人かながわ福祉サービス振興会)
美しい地球・幸せな暮らし
2011
2010
2009
ロボット代替の期待感
0
2008
食事介助
200
2007
就寝時の見守…
2006
医療行為の補助
400
2005
余暇支援
2004
排泄支援
介護の負担感
社会福祉施設で起きた休業4日以上の腰痛
2003
移動、移乗の…
(N=463)
(件)
2002
入浴介助
1200
出所:厚生労働省
34
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(1)電機産業の持つICT技術を活かした産業の創出
② ICT利活用による国内他産業の活性化 (つづき)
3)農業
-日本の農業の衰退を押し留め、将来の発展をめざすには、ICTの活用による産業化を
進めることが不可欠である。
●農業の生産と加工・流通の情報
一体化を進めることで、生産性
を上げる。
農業のIT化のイメージ
●センサー技術などを利用し、農
業に関する各種情報のデジタル
化を進め、データベースを構築
する。その利用によって農家
(事業者)が植物の生育状況に応
じた最適な環境制御システム
(スマートアグリシステム)の構
築を支援する。
出所:電子情報技術産業協会(JEITA)
35
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(1)電機産業の持つICT技術を活かした産業の創出
③ 自販機の高機能端末化
-節電しているとはいえ、自販機全体の総消費電力量については認識せざるを得ない。
-裏を返せば常に通電され、無線でデータ通信ができ、その普及台数の多さや街の様々な
場所に設置されている。
●自販機に蓄電池を搭載し、様々なセン
サーや表示装置を搭載することで日本
の文化でもある自動販売機を、スマー
ト社会の身近な高機能端末として活用
する。
例:電子百葉箱、地域コミュニティ情報
の提供、災害時の被災者誘導など
④
公共データの民間活用促進
-データの利活用がサービスを生む時代になりつつある。公共財としての公共データの民
間利用を進める。
●政府や自治体が持つ画像や統計等の各種データを公共財として民間が利活用を促進
し、新たな産業の呼び水とする。
●個人が特定できる可能性のあるデータを民間に開放する際には、プライバシーの保護
を徹底する。
●データの提供窓口はなるべくまとめることで、利用者が目的の情報にアクセスしやす
36
くする。
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(2)新産業・新製品を生み出す人材の育成
① 学校教育へのICTの導入
-社会のICT化に対応できるよう、子どものころからデジタル機器に触れることは重要。
-海外や国内民間企業でも、ICT機器を利用した教育システムの普及が進んでいる。
-児童のICT教育を通じ、親世代のICTリテラシーも高められる。
●電子黒板やタブレット端末の活用が有効な分野における授業のあり方の検討を進め、
学習効果を高めつつ、教師の現場作業の負荷軽減に対応する。
●学校現場へのIT導入予算(交付金)の執行状況を適切に把握しつつ、「教育の情報化
ビジョン」の実現を進める。
・電子黒板のある学校は72.5%※とあるが、1台/校の学校が多い。
※平成23年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(総務省)
●障がい児童の学習にも効果が期待できることから、指導要領の研究を進める。
② 「技術者の卵」の育成
-現代の子どもたちにとって、ほとんどの電機製品は「既にあるもの」であり、その製品
がどのように生活を便利にしているか、実感しにくい。
-こうした状況の中、技術・技能に対する興味を子どもたちに持ってもらうには、電機製
品、それを作る産業の魅力を知るきっかけを、社会や企業が与えることが必要になる。
●学校、地域、企業労使、行政が連携した技術者育成システムを作り上げる。
小・中学校 :ものづくり教室、科学実験教室、工作教室の奨励
高等学校(工業高校):労働体験、スーパーサイエンスハイスクール、企業からの熟練技能者派遣による
実技指導、ロボットコンテスト、プログラムコンテスト、研究成果発表コンクールといった、
37
生徒・学生の技術研鑽、研究発表、活躍の場の提供 等
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(2)新産業・新製品を生み出す人材の育成
③ 高度ICT人材育成に向けた仕組みの確立
-「ビッグデータ」という概念の登場で、ICT分野における技術者は、単なる技術者だ
けではなく、大量のデータを駆使し、新たな社会システムや新しいビジネスを創造して
いくための中核人材としての役割が期待されるようになってきている。
●民間企業や海外の事例を収集・分析をすすめ、高度ICT技術者(例:データサイエン
ティスト)の育成システムを確立する。
(千人)
工学部進学者数の推移予測
工学部進学者(男性)
工学部進学者(女性)
100
80
60
2025
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
40
2011
-これからの研究開発には、視点・感性の多様
性がより重要になってくる。
-大学進学者のうち、工学部系の学部に進むの
は男性が26~27%に対し、女性は4%台半ば
で割合はほぼ固定している。日本の技術者の
世界は典型的な男性社会になっている。
-2010年代終わりには、男性の大学進学年齢人
口が減少期に入る。女性の工学部系学部の志
望者を増やすことは、工学部系学部進学希望
者数(=学生の質)の維持にもつながる。
120
2010
④ 女性技術者を増やす
出所:将来推計人口データベース(国立社会保障・人口問題研
究所)、学校基本調査(文部科学省)などから、電機連合が推計
●業界団体・民間教育機関と連携して、中学生、高校生へ工学部系学部の進学者数を増
やす取り組みを進める。
38
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(3)サイバーセキュリティ
-マイナンバーやスマートグリッドなど今後、社会インフラのICT化が進むことで、I
CT空間(サイバー空間)は、空気や水のように公共性がますます高まる。それにつれ
て、セキュリティ問題の重要性も高まっている。
-情報セキュリティ予算は、米国の7,700億円/年で、今後も増加する傾向にある。これに
対しまだ日本は300億円/年の規模しかない。
-様々なステークホルダーがかかわることから、国家が前面に出て、民間の協力を束ねて
いくことになる。
●現在各省庁毎で行われているセキュリティ対策の統合を急ぐ。
●セキュリティ戦略の策定とその実現を通じ、セキュリティ産業の立ち上げを進める。
<直近の動向 (新聞報道より)>
2012年9月 防衛省はサイバー空間を「陸、海、空、宇宙と並ぶ領域」と位置づけ、サイバー攻撃に対
する指針を作成。サイバー空間防衛隊(仮称)編成予算を2013年度予算に計上。
2013年3月 政府の情報セキュリティ政策会議で、サイバー防御戦略骨子を作成。夏までに基本戦略
をまとめる。
2013年3月 サイバー攻撃に政府全体で対応するために、内閣官房に内閣情報政策監(政府CIO)を
新設する法案を提出
2013年4月 (独)情報処理推進機構、サイバー情報共有イニシアティブ( J-CSIP・ ジェイシップ )
を発足。重工、重電等、重要インフラ業界、約40の参加組織による情報共有体制を確立。
2013年4月 サイバー攻撃特別捜査隊を全国13の警察本部に設置、警視庁ではサイバー犯罪対策課
を設置
2013年5月 警視庁がサイバー攻撃分析センターを約20人体制で発足。「サイバー空間は第2の戦場」
美しい地球・幸せな暮らし
39
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(3)サイバーセキュリティ
(つづき)
サイバーセキュリティの特徴と課題
諸外国関連機関
国際連携の
枠組み構築
セキュリティ・セキュリティ
人材への低い認知度
政 府
人材育成・技術開発・ウイルス解析
情報セキュリティセンター
国際組織
リバースエンジニアリングと
著作権法の関係が不明瞭
セキュリティ企業
情報共有、有事の際の対応・指示
自衛隊
大学・研究機関
情報公開への抵抗感、
企業秘密の壁
セキュリティ人材の育成、
組織間の連携の枠組み構築、
法体系の整備
ハッカー
民間との連携
のありかた
警 察
(ホワイトハッカー)
経営者へのセキュリティ意識の啓発、被害時における事業継続計画(BCP)の策定
社会インフラ施設
公的機関
(役所・病院など)
政府機関
民間企業
団 体
教
育
対応組織
自衛隊
警 察
対応の切り分け・連携
対応の際の
法的根拠
セキュリティ企業
ネ
ッ
・ト
予
防 ワ 「通信の秘密」とセ
措 ー キュリティの関係
ク
置監
視
個 人
規
模
リテラシー
教育の普及
対応
サイバー攻撃・犯罪の規模・内容
(武力攻撃の一環としての)
サイバー攻撃
システム停止・破
壊・誤作動の惹起
×
刑事刑法上のサイバー犯
罪
サイバーテロ
境界が曖昧
内
容
学 校 パソコン教室 等
対応
×
情報改ざん
情報の窃盗
信用毀損・業務妨害
攻撃者と被害者の規模が様々
(非対称性が高い)
システムの脆弱性などを利用さ
れるため、気付かれにくい
ネットワーク事業者
憲法「通信の秘密」から、通信
内容を見ることができない
攻撃者
???
…サイバー攻撃・犯罪の特徴
美しい地球・幸せな暮らし
集団ハッカー
個人ハッカー
(ブラックハッカー)
(ブラックハッカー)
…セキュリティ対策の課題
行為の隠蔽・偽装などにより、
攻撃者の特定がしにくい
インターネットを経由するので、
国境がない
出所:総務省、経産省、防衛省、警察庁の資料から電機連合が作成
40
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(4)次世代高画質規格の普及
-総務省は、4K規格の放送を2014年7月に開始する方針を打ち出す。まずは通信衛星を
使ったCS放送で開始し、将来的に地上波での放送も目指す。
-NHK放送技術研究所では8Kスーパーハイビジョンの研究が進んでおり、2016年の試
験放送を目指している。
●世界に先駆けた4K放送の実用化により、高画質の放送コンテンツ開発ノウハウの確
立やテレビ放送システムの普及をいち早く進める。
●高解像度情報の伝送に関するソフ
トウエア、チップセットの開発を
高画質規格における解像度の比較
日本が先導する。
8K(ウルトラHD)
スーパーハイビジョン
●高解像度や高解像度と日本が世界
7680×4320
に誇る画像認識システムを融合さ
せた画像検索システムや画像認識
応用システムの開発に繋げる。
<例>遠隔医療における画像表示システ
ム、構造物の異常監視システム、
異常動作監視システム 等
●知財権には配慮しつつも、他国と
の協同開発も視野に入れた技術開
発を進める。
美しい地球・幸せな暮らし
4K(ウルトラHD)
3840×2160
2K(フルHD)
1920×1080
現行
41
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
3.新産業・新製品の創出に向けた取り組み
(5)研究開発体制の整備、拡充
-国家として科学技術・産業技術を更に強化・育成するためには、国家プロジェクト、研
究開発法人の体制を見直し、オールジャパンの技術研究開発に向けた一層の改革が必要。
※国家プロジェクトと国立研究開発法人(国研)が抱える課題
・プロジェクトに参加する事に対する具体的な利益が見えにくいため、企業側の国家プロジェ
クトに対する本気度が薄い。
・参加する企業研究者の社内の処遇が不十分なため、送り出されても将来不安が大きい。
・有期プロジェクトのため、大学、国研にとっては長期的人材育成、技術的ノウハウ蓄積に問
題がある。
・予算の関係で、テーマ選択が短期的、実用化指向になりやすい。真のイノベーション技術に
投資されているか疑問。
●省庁縦割りの研究開発を是正すべく、「科学技術イノベーション戦略本部」に予算権
限を付与する。
●研究開発法人をテーマ別に以下のように二分する(テーマを柔軟に扱える体制にする)。
a) 短期的な実用化達成を目標とする法人。5年度ごとに見直しを行う科学技術基本計画におけ
るテーマを中心とする。プロジェクトの管理は開発部隊とは別個に行い、予算は内容・成果
に応じて傾斜をつける。
b) 長期的な基礎研究を中心とする法人。自由度の大きな社会変革を引き起こすテーマとし、国
は個別テーマに干渉しない。ただし、研究開発のプロセス、成果は公開する。
●研究・技術開発における国、研究機関(含む大学)、企業の国家戦略的な役割分担の検
討を進める。
●産官学の立場や国籍をはなれた個人ベースの参加とする。その際は継続したキャリア
42
パス、社会的ステータスの向上を保証する。
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
4.海外で売れるものづくり体制の構築
(1)海外との経済連携の促進
-二国間、あるいは多国間における幅広い経済関係の強化をめざして、貿易や投資の自由
化・円滑化を進める動きが世界で活発化している。製品の輸出入時の関税の問題だけで
なく、中核的労働基準や投資、知的財産を守るルールなど、商取引や投資に関する共通
ルールづくりの場としても有効である。
●TPP交渉にあたっては主張
すべきは主張し、積極的に公
平・公正なルールづくりに努
める。そのため交渉参加を通
じて的確な情報収集を行う。
●TPP交渉にあたっては中核
的労働基準と環境条項の遵守、
安易な人の移動の制限を反映
させる。また、懸念の大きい
農業、食の安全・安心、医療
等には国内対策を講じつつ、
国民的合意形成に努める。
世界の経済連携の枠組み
TPP (26兆5928億ドル)
RCEP (19兆9292億ドル)
・中国
・韓国
(7兆2981億ドル)
(1兆1162億ドル)
ASEAN
・インド
(1兆8268億ドル)
(2兆1759億ドル)
・インドネシア
(8464億ドル)
・フィリピン
(2247億ドル)
(83億ドル)
・ベトナム
(1227億ドル)
・マレーシア
(2879億ドル)
・シンガポール
・ブルネイ
(163億ドル)
・タイ
(16兆2242
億ドル)
(5兆8665億ドル)
(2598億ドル)
・ラオス
EU
・日 本
(3456億ドル)
・カンボジア
(128億ドル)
・ミャンマー
(514億ドル)
・オーストラリア
・アメリカ
(15兆756億ドル)
・カナダ
(1兆7389億ドル)
・メキシコ
(1兆1539億ドル)
・チリ
(2484億ドル)
・ペルー
(1771億ドル)
(1兆4869億ドル)
・ニュージーランド
(1588億ドル)
注:RCEP:東アジア地域包括的経済連携、TPP環太平洋パートナーシップ協定
カッコ内の金額は、2011年度名目GNP、EUは、EU15ヵ国の合計値
出所:IMF
43
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
4.海外で売れるものづくり体制の構築
(2)相手国のニーズを見据えた売り込み体制の強化
-新興国と一言で言っても、その態様には様々なものがある。その国の実態に即した売り
込み体制が必要になる。
①
トップセールスの展開
●産業界と一体になった閣僚の外国訪問や各国要人の招聘等の機会を利用した相手国と
の継続的関係の構築を更に強力に進める。
②
情報・人材の交流促進
●在外公館や日本商工会議所、政府関係機関、そして業界団体・企業との情報共有を進
める。
●相手国に駐在し、プロジェクト提案や案件開拓する人材を企業が配置しやすくなるよ
う、新興国との社会保障協定の締結を進め、企業が海外勤務者の派遣先国と日本の社
会保険に二重加入するコスト負担を軽減する。
③
企業のみで対応しきれない分野への政府支援
●相手国進出後の現地日本企業のファイナンス面でのバックアップ体制の充実をはかる。
(大型案件の場合や、中小企業に対して)。
●危険地域での邦人の安全確保や貿易保険の機能拡大を進める。
44
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
4.海外で売れるものづくり体制の構築
(2)相手国のニーズを見据えた売り込み体制の強化
新興国における新中間層の出現、拡大
BOP:国民個人への売り込みより、その国へのインフラ輸出による相手国の社会基盤の充実
に貢献する。その国の国民の親日間を醸成し、将来日本製品の良い購買層とする。
MOP:上位中間層、高所得層に即した対応をする。
下位中間層…市場経済に参入し始める。KBFは低価格なので、参入する場合は慎重を期
す(ただし、携帯電話・スマホは普及している)。
上位中間層…家計のサービス支出増、自動車の購入、KBFは低価格から品質へ。ブラン
ド感の確立に注力する。
高所得層 …ブランド戦略を一歩進め、日本製品を所有する事へのステータスに訴える。
高所得層:0.8億人
上位中間層
:2.5億人
下位中間層
:2.5億人
高所得層
:3.0億人
上位中間層
:6.4億人
下位中間層
:15.1億人
高所得層
:5.9億人
上位中間層
:8.9億人
下位中間層
:14.7億人
低所得層
:19.2億人
低所得層
:15.9億人
低所得層
:14.0億人
2010年
2020年
2030年
高所得層:世帯収集が35,000ドル以上
上位中間層:同15,000~35,000ドル
下位中間層:同5,000~15,000ドル
低所得層:5,000ドル以下
出所:新中間層獲得戦略研究会
45
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
4.海外で売れるものづくり体制の構築
(3)標準化、品質・安全性保証戦略の推進
-日本企業が海外に進出する、あるいは日本のサービスを海外に輸出する際に、国際規格は
もとより、製品・サービスの品質や信頼性を保証・監督する仕組み作りが問われている。
-国際標準化に向けた取り組みには、各国の関係者との人脈・信頼醸成に向けた長期の取
り組みが必要となる。
150
アメリカ
イギリス
100
フランス
50
中国
日本
韓国
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
0
2004
●国際標準化人材の社会ステータスを向
上させ、任期の長期化に対応できるよ
うにする。
ドイツ
2003
●情報収集を強化し、諸外国との連携な
ど、協調戦略と非協調戦略を的確に使
い分け、交渉の優位性確保に努力する。
各国のISO・IEC国際幹事引き受け数
200
2002
●日本の将来の成長にとって重点戦略分
野と考えられる分野については、国際
標準化団体における専門委員会で幹事
国や議長ポストを獲得する。
出所:経済産業省
●日本の製品・サービスの安全性や信頼
性を国際的に認証・監督する仕組みづ
くりや機関の設置、日本国内基準を世界基準に準用できるようにする取り組みを進める
(EUデータ指令、医療機器ソフトウェア安全規格・規制などへの対応含む)。
46
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
4.海外で売れるものづくり体制の構築
(4)地球環境問題を視点としたインフラの売り込み
-新興国では、経済発展に伴いエネルギー問題や環境問題が成長継続の足かせとなってき
ている(日本の1960~70年代に相当)。
-日本の温室効果ガス排出量は、東日本大震災前で世界全体の4%。新興国における対策
の方が、地球温暖化対策では実質上の効果は大きい。
-中国のPM2.5問題などのように、大気汚染問題に国境は関係ない。地域の問題である。
●政府系金融機関の資金供与スキームなど
と併せることで、日本の発電インフラ、
高効率エネルギー転換機器、公害防止技
術の輸出を促進し、地球温暖化対策・公
害対策システムを世界に普及させる。
二酸化炭素の国別排出量(2010年)
●相手国に環境技術を提供し、この見返り
に温室効果ガス排出枠を日本が得る「二
国間クレジット」制度を活用する。
世界合計
30,441
●京都議定書第2約束期間離脱後も、上記
取り組みを通じて温暖化対策を世界にア
ピールしていく。
ロシア
5.5%
日本
4.0%
その他
23.7%
インドネシア
1.2%
メキシコ
1.6%
韓国
1.7%
百万トン-CO2換算
インド
4.6%
ドイツ
3.0%
イギリス
2.1%
イタリア
1.6%
フランス
1.4%
その他EU
3.9%
オーストラリア
1.4%
アメリカ
19.2%
中国
20.6%
注:網掛けは、京都議定書付属書Ⅰ国(先進国)、うち濃い網
掛けは議定書締約国
出所: 日本エネルギー経済研究所
美しい地球・幸せな暮らし
47
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
5.だれもが活き活きと働くことができる社会の実現に向けて
(1)産業競争力強化に向けた「人への投資」
-現在、産業競争力会議などで、成長産業を生み出し、産業競争力を強化するために、
解雇規制の緩和や、労働移動の促進などを行なうといった議論が行われている。
-解雇規制の緩和、限定正社員の新設など、労働者保護を後退させる安易な解雇規制の
緩和は雇用不安を招くものであり、生活不安・将来不安を増長し、デフレ脱却に向け
た流れを後退させることにつながる。
●真に国際競争力を持った技術や製品、サービスを生み出すためには、(細切れの雇用でなく)
長期安定雇用を基本とした企業内の教育やOJT、処遇などの「人への投資」による、技術・技
能の蓄積や伸長が必要不可欠であり、それを正当に評価すべき。
●そのうえで、産業の競争力を向上させるために、次のような施策を実施する。
-将来の日本における産業のあり方について示す
-重要分野に国としてきちんと投資をすること、さらに企業の投資を促す
-産業を展望しながら教育や職業能力開発を行い、雇用のマッチングを図る
※現状日本においては、大学の学部によるマッチング率に大きな差がある。産業を
展望しつつ、必要な教育を行い、若年時から体系的な職業教育・訓練(企業での
OJT等)をすることが人材育成には大切
-年齢や性別に関わらず活き活きと働き、活躍できる環境を作る(女性活躍推進等)
●雇用や労働に関する議論は、労政審など公労使三者構成による場で行うこと。
48
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
5.だれもが活き活きと働くことができる社会の実現に向けて
(2)若年者雇用対策 ~「若年層からみた電機産業の魅力」研究会から~
-内定をいくつも貰う学生がいる一方で、何社からも不採用通知を受け取る学生もいる。また、
企業の合否判断に時間が掛かり過ぎており、学生が長期間拘束されているという指摘もある。
- 学生の大企業志向や、大学に中小企業の情報が十分集まっていないことなどにより、中小企
業では募集をしても人が集まらない。
- 多くの企業が「学校推薦の基準を定めていない」。一方で、学校推薦に対し、「満足できな
い学生が推薦される」と考えている。学校推薦制度が機能しなくなり学生が自由応募に流れ
ると、大学・大学院でじっくり学ぶことが難しくなる可能性がある。
- 高校生・大学生が働くことの意識醸成をするきっかけが少ない。
●企業が学生に求める能力・スキルなどの人物要件や人員構成を明示するよう指導する。
● 中小企業の採用手段としてのインターンシップを普及させる。また、通年採用を定着
化させ就職の機会を増やす。
● 学校推薦の基準の明示など大学と企業との連携を強化する。
● 高校生・大学生が企業の技術者との交流を通じて、学ぶことの重要性、職業観の醸成
を図る機会としてのサマースクールなどの事業・活動を実施する企業・団体に対する
助成金制度を創設する。
● 特に地方大学が実施する産学共同事業への助成金を増額し、(地方)大学と(地場)
企業との連携を強化する。
49
美しい地球・幸せな暮らし
全日本電機・電子・情報関連産業労働組合連合会
5.だれもが活き活きと働くことができる社会の実現に向けて
(3)企業における人材育成対策 ~「若年層からみた電機産業の魅力」研究会から~
-技術者の職場では、OJTを中心に若年層の育成を行っているが、上司は「育成に十分な
時間をかけられない」ことなどを育成の課題として挙げている。
若年者育成方法の改善点(職場の実態)
高年齢者が再雇用で重視する点
定年前
60.8
育成に十分な時間がかけられない
44.2
配属先で育成方法にバラツキがある
28.6
育成する側の人材やスキルが不十分
計画的に育成するという意識がない
22.9
育成に十分な費用がかけられない
22.7
20.0
確立された育成プログラムがない
12.4
外部の教育訓練機関が利用できない
OJTがうまく機能していない
11.4
若手社員に意欲がみられない
10.6
その他
3.4
とくに改善すべき点はない
2.8
無回答
2.5
1
2
3
4
5
定年後
転勤がない
深夜勤務がない
年金の満額支給開始年齢まで働ける
職場の雰囲気や人間関係がよい
会社から必要とされていると思える
58.5
46.7
44.1
40.5
33.9
転勤がない
年金の満額支給開始年齢まで働ける
深夜勤務がない
会社から必要とされていると思える
定年前の経験や能力が活かせる
…
59.6
48.9
45.2
45.2
44.1
数字は%
11 定年前の経験や能力が活かせる
23.2
出所:労働調査協議会「定年後の仕事と生活に
関する調査」の電機連合回答の集計結果
(2010年3月実施)
出所:電機連合「若年層からみた電機産業の魅力」
●高年齢者の経験や能力を「若年者の育成支援」に活用することにより、企業が持続的に
発展するために必要不可欠な「開発力・技術力」を維持しながら、若年層が「仕事を通じた
成長」を実感できる職場環境が実現できるよう支援する。
●生産年齢人口が減少傾向にある中、電機産業の「開発力・技術力・労働力」を維持するた
めに、高年齢者を雇用し、その経験や能力を活かすことができるよう支援する。
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5.だれもが活き活きと働くことができる社会の実現に向けて
(4)高齢者雇用対策
-少子高齢化かつ人口減少による労働力および社会保障制度・税の担い手不足を改善する
ためには、働く意欲のある人が、年齢や性別にかかわらず安心して、いきいきと働くことが
できる環境を整備することが必要。
●高年齢者が安心して活き活き働くことを可能とするよう、加齢を考慮した職場環境整備や
スキルチェンジ教育等の研修を積極的に行う企業に対する助成措置を講ずる。また、
高年齢者雇用確保措置に関する実施状況の把握・監督指導を徹底する。
●育児・介護以外の目的(社会・地域貢献活動や自発的な職業能力形成など)を事由とす
る短時間勤務制度を法制化する。また、当面の導入促進のため、好事例の収集・提供・
普及を行うとともに、制度を導入した企業への各種奨励策をより一層推進する。
●技能伝承や指導など、これまでの経験を生かした職務を開発し、それを求める若年者と
のマッチングをはかる取組みを進めるために、その奨励や好事例の共有などを図る。
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5.だれもが活き活きと働くことができる社会の実現に向けて
(5)女性の活躍推進に向けた環境整備
-日本は、欧米諸国では既に見られないM字カーブが今も見られる。
もし、M字カーブが解消した場合、労働力人口は429万人増加すると試算されている。
-日本において女性就業者の約半数が非正規労働者であり、多くが低賃金で就労してい
る。
●女性の活躍推進を実現するために、
女性の登用推進と同時に、国として次に
示すような取り組みを支援する。
-社会全体としての性別役割分担意識の
払拭などの意識改革
-仕事と家庭の両立支援
-長時間労働に頼らない働き方の実現
-キャリア開発支援 など
女性の年齢階級別労働力率
(%)
90
77.6
80
70
70.1
68.7
60
68.6
67.7
71.7
67.5
67.0 71.2
70.5
60.3
61.8
73.4
75.7
72.6
64.6
64.0
72.4
67.7
45.8
58.1
50
45.7
40
39.2
30
平成24年
平成23年※
20
●多くの女性がパートなど非正規労働に従事
しており、雇用の安定や処遇の底上げなど
にも合わせて取り組む。
77.0
69.271.8
75.7
16.7
10
0
14.6
15.0
平成14年
13.4
13.2
13.1
15~19歳 20~24歳 25~29歳 30~34歳 35~39歳 40~44歳 45~49歳 50~54歳 55~59歳 60~64歳 65歳以上
出所:総務省「労働力調査」(2012年)
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5.だれもが活き活きと働くことができる社会の実現に向けて
(6)子ども・子育て支援
-保育所の待機児童数は微減しているものの、待機児童のいる市区町村は、前年
から20増加して357自治体。
●消費税引き上げを前提として行われる予定の
待機児童解消策や幼保連携型施設の拡充、
「子ども・子育て会議」の設置などの施策を確実
に実行する。
●企業内託児所への助成を充実させる。
●育児短時間勤務の例外の交替勤務について、
職場の事情に合わせて導入し、運営している
例もあるため、こういった場合の短時間勤務
の要件について緩和する。(右囲み参照)
<交替勤務職場における短時間勤務>
◆法律内容
①育児短時間勤務の対象外とできる場合
業務の性質又は業務の実施体制に照らして、
短時間勤務制度を講ずることが困難と認めら
れる業務に従事する労働者
②該当する労働者を例外にした場合、事業主はい
ずれかの代替措置を講じなくてはならない。
(代替措置は割愛)
③短時間勤務制度は、1日の労働時間を6時間と
する制度を含むものでなくてはならない。
◆交替勤務職場のおける導入事例
・交替勤務職場において、所定就業時間が5時
間の短時間勤務を導入している。
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5.だれもが活き活きと働くことができる社会の実現に向けて
(7)不妊治療
-現在、日本では夫婦6組に1組が不妊といわれ、2010年ではその年の37人に1人の子供
が不妊治療によって生まれたとされる。
-H25年度から国の制度改正により、助成額の上限が一部引き下げられた。
-厚労省研究班の提言を受けて、不妊治療への公費助成制度について、厚生労働省は対象
年齢の上限設定や現行の所得制限の見直しなどを含めた研究会が設置され、検討が行わ
れている。
●子を望む親に対する経済的負担を軽減するため、不妊治療に対する経済的支援措置の
拡充を行うか、もしくは健康保険の対象とする。
●特定不妊治療費助成事業の助成額、回数、期間をさらに拡大し、所得制限を緩和す
る。また、特定不妊治療(体外受精および顕微鏡受精)以外の不妊治療に対しても、
助成制度を設ける。
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(8)介護支援の充実
図
介護を理由とした離職数の推移
-介護が必要な人(要介護・要支援認定者)は
500万人を超え、介護保険制度開始時からの
10年間で倍増。今後も増加が続く見通し。
- 40代から介護に関わる人の比率は増えていく。
介護をしながら働き続けることのできる環境の
整備が必要。
●介護休業期間中または短時間勤務期間中の
従業員(雇用保険被保険者)に、経済的支援を行った事業主に対し、助成金を支給する
制度を創設し、企業の介護支援を推進する。
●雇用継続の観点から、現在短時間勤務およびその他の措置から選択することとなって
いる介護短時間勤務制度についても、育児短時間勤務制度と同様、独立した制度として
義務化する。また、その短時間勤務の期間は現行の法定介護休業期間とあわせて93日で
はなく、事由解消までを念頭に、少なくとも一年以上の長期間を確保する制度とする。
●介護休業中の社会保険料を、仕事と生活の両立支援という視点から、育児休業と同様
に労使ともに免除とするなどの支援措置を取り、負担の軽減を図る。
● 地域包括ケアシステムの構築にあたり、介護者が介護を事由に就労継続を断念すること
がないよう、家族支援の観点からも整備を進める(例えば、通所サービスの柔軟な時間
対応・緊急ショートステイの整備・充実等)
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5.だれもが活き活きと働くことができる社会の実現に向けて
(9)非正規雇用
労働者派遣について、電機連合の考え方は以下の通り。
・現状の労働者派遣制度の基本的な考え方である、派遣先における「常用代替防止」は
堅持する。
・前項を前提としつつ、受入れ職場では、派遣労働者を「ともに働くパートナー」とし
て相互に認め合い、労使協議における権利保護などの取り組みを推進する。
・上記2項を満たすために、労働者派遣制度については、法律制定当初の考え方である
「専門業務に対する常用雇用派遣(ただし、常用雇用は無期雇用に限る)」に限って
運用すべき。
・派遣労働のあり方を検討するにあたっては、まず、派遣労働の類型を実態に即して行
い、それぞれの課題について明確に把握するとともに、社会的なコンセンサスを形成
することが必要である。
●非正規労働者の視点に立った労働者保護、処遇改善の対策につながる法制を
整備する。
●2012年改正の労働契約法、労働者派遣法の趣旨を踏まえ、雇用の安定化と均
衡・均等処遇の実現に向け企業の指導を強化する。
●労働行政において、登録型派遣と常用型派遣の区別を含め非正規雇用の
タイプ別に、位置づけの明確化を行う。
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5.だれもが活き活きと働くことができる社会の実現に向けて
(10)安心して医療を受けられる環境整備のために
① 医療保険制度の抜本的な改革(保険者機能の発揮)
- 現在、社会保障制度改革を行うために必要な事項を審議するため、社会保障制度改革国民会
議が設置され審議が進んでいるが、医療保険制度の見直しにあたっては、現行の高齢者医療
制度を前提とした保険者間の財政調整ではなく、高齢者医療制度そのものの抜本的な見直し
が必要である。その際、それぞれの保険者が、保険者機能の発揮による医療費の削減努力が
行えるような制度を目指すべきである。
参考:連合「退職者健康保険制度」(仮称)
● 退職後も被用者保険の加入者とすること
や、被用者保険全体で退職者を共同で支
えることなど、保険者機能が発揮できる
制度(例えば、連合が提案する「退職者
健康保険制度」(仮称))を目指すこと。
● 現在、74歳までの退職者を加入者とする
ことができる特例退職者医療制度がある
が、加入資格に「老齢厚生年金の受給資
格者であること」とあり、年金受給開始年齢
引上げに伴い、定年退職後すぐには加入
できない「制度のすき間」が生じている
ため、切れ目のない制度へ改善すること。
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