あなたはこれまでに 救急外来で暴力を受けたことが ありますか? 2015/1/31 11th EMA Meeting @ 岸和田徳洲会病院 さすぞ!またか? 問題患者への対応 武部弘太郎(京都府立医科大学附属病院) 後藤匡啓(福井大学附属病院) 山上浩(湘南鎌倉総合病院) Management of the Difficult Patient 学習目標 暴れる患者の落ち着かせ方を知る 暴れる患者対応の周辺知識を整理する 身体抑制の適応と方法を知る シナリオ1 【設定】 • ある日の救急病院の深夜2時 • 救急外来にいるのは、指導医・後期研修 医・初期研修医・女性看護師・受付事務 飲酒して転倒した60歳男性(身元判明済) JCS2桁の頭部外傷として救急要請が入る シナリオ1 • 搬送中に目が覚めて搬入時には興奮状態 • バイタルは安定しているが、頭部挫創か らは出血が続いている • 対応した研修医に対して 暴言を吐き、静脈路確保 をしようとした研修医を 強く突き飛ばした こんなとき、あなたならどうしますか? シナリオ1 酔っぱらいの暴力 • 研修医が突き飛ばされた後の5分の行動を 皆さんで実演していただきます。 • チーム内の配役については担当スタッフ から指示があります。 • それでは開始して下さい。 シナリオ1 酔っぱらいの暴力 各チームで実演された内容について ディスカッションをお願いします。 後ほど、 『暴れる患者へのチームとしての対応』 を各チームから発表していただきます。 暴れる患者へのアプローチ 1. 患者及び医療スタッフの安全を確保する 2. 患者を落ち着かせる(ディエスカレーション) 3. 可能な限り身体拘束を避ける 4. 強制的な介入を避ける 安全確保 第一に患者及び医療スタッフの安全を確保 十分なパーソナルスペースを確保する 危険な物を除去し、出口を確保する 警備などの応援を呼ぶ 警察官の出動要請も考慮する 状況の理解と情報の共有 チームとして対応する 一人で対応しない ディエスカレーション/De-Escalation 心理学的知見をもとに、言語的・非言語的な コミュニケーション技法によって怒りや衝動 性・攻撃性を和らげ、穏やかな状態に戻す 10 domains of de-escalation 1. パーソナルスペースに配慮する 2. 挑発しない 3. 言葉による介入 4. 簡潔にする 5. 希望や感情を確認する 6. 患者の言葉を丁寧に聞く 7. 相手を認める、見解の不一致があっても争わない 8. 法の話を持ち出す 9. 選択してもらう、落ち着いてもらう 10.患者とスタッフに周知する Janet S Richmond, et al. Verbal De-escalation of the Agitated Patient: Consensus Statement of the American Association for Emergency Psychiatry Project BETA De-escalation Workgroup. West J Emerg Med.2012;13(1):17–25. ようやく落ち着いた… あれ?意識レベルが低下した!? ピットフォール PITFALL 興奮の背景に器質的疾患がないかを確認! 詳細は 「ほんとにないか?内科の病気」 * 頭部外傷などの外因系も忘れずに シナリオ2 • シナリオ1の酔っ払った60歳男性が、 指 導医の説明に応じず、ストレッチャーか ら降りた • 興奮がおさまる気配は なく、説明を続けてい た指導医を殴りつけた • 警察はまだ到着していない こんなとき、あなたならどうしますか? シナリオ2 身体抑制の方法 • 暴れる患者の身体抑制を、皆さんで実演 していただきます。 • チーム内の配役については担当のスタッフ から指示があります。 • それでは開始して下さい。 シナリオ2 身体抑制の方法 各チームで実演された内容について ディスカッションをお願いします。 後ほど、 『暴れる患者の身体抑制の方法』 を各チームから発表していただきます。 言うこと聞かない患者は 手っ取り早く注射で眠らせる? 過去の判例 暴れていて会話が成り立たない精神障害 患者に対し、家族から往診の依頼を受けた 医師が、病院へ搬送するために押さえ込ん で鎮静剤を注射した上で、患者を移送した。 後に本人が、鎮静剤を注射して無理矢理 に病院へ連行したことは違法だとして提訴。 裁判所は、損害賠償の支払を命じた。 過去の判例 この事例での裁判所の判断 精神障害か否か確認するための問診が十分 にできていない 患者が女性で、現場に6人の成人男性が いたことから、精神安定剤以外の方法に よる抑制措置も可能であった 自傷他害の恐れが顕著とはいえない 移送先病院の医師が精神安定剤の投与に 消極的な見解を示していた 救急医療における身体抑制 精神科領域では精神保健福祉法が根拠となる が、救急医療を含むその他の領域での身体拘 束に関する法令はないのが現状である PEEC ガイドブック 「救急医療における行動制限」 より 暴れる患者へのアプローチ 1. 患者及び医療スタッフの安全を確保する 2. 患者を落ち着かせる(ディエスカレーション) 3. 可能な限り身体拘束を避ける 4. 強制的な介入を避ける では、どういう患者に適応すべき? 身体拘束の適応 「緊急やむを得ない場合」の3つの要件 1. 切迫性:利用者本人または他の利用者等の生命,身体, 権利が危険にさらされる可能性が著しく高いこと。 2. 非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に 代替するサービスの方法がないこと。 3. 一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なもの であること。 「身体拘束に関するガイドライン」 より 身体抑制の方法 身体拘束(physical restraint) 基本的には5(6)人以上のスタッフが必要 薬剤による拘束(chemical restraint) 身体拘束より患者の権利を犯す可能性 スタッフが足りないなどの理由で身体拘束 が行えないときに選択 *必要性や方法などを診療録に残すことが大切 PEEC ガイドブック 「救急医療における行動制限」 より 身体拘束 • 5(6)名以上のチーム で対応し、役割を明確にする • 以下の項目に留意する 頭頸部の保護・支持 気道確保・呼吸確保 モニタリング 頸部・体幹部を圧迫しない The Royal Children’s Hospital Melbourne HPより PEEC ガイドブック 「救急医療における行動制限」 より 薬剤による拘束 • 内服が可能であればリスペリドン内用液や クエチアピン錠が使用可能。 • 注射薬ではハロペリドールが第一選択。 • 例外としてはアルコール離脱せん妄とてん かんが挙げられる。その場合はベンゾジア ゼピン系薬剤を使用する。 PEEC ガイドブック 「救急医療における行動制限」 より 最後に周辺知識の整理 ERでの暴力に関連する主な法律 分類 主な関連法規 法定刑 被害例 暴行罪 (刑法208条) 2年以下の懲役もしくは 30万円以下の罰金 又は拘留若しくは科料 胸ぐらを掴まれて突き飛ばされた。 傷害罪 (刑法204条) 15年以下の懲役又は 50万円以下の罰金 手拳で殴打されて負傷した。 脅迫罪 (刑法222条) 2年以下の懲役又は 30万円以下の罰金 「お前の家族を殺してやる!」と 凄まれた。 強要罪 (刑法223条) 3年以下の懲役 「殺されたくなかったら土下座しろ!」 と ナイフで脅されて、土下座させられた。 毀棄および 隠匿の罪 器物損壊罪 (刑法261条) 3年以下の懲役又は 30万円以下の罰金 若しくは科料 施設備品を壊された。 信用および 業務に対する罪 威力業務妨害 (刑法234条) 3年以下の懲役又は 50万円以下の罰金 事務室に乱入され、 暴れられたため業務が滞った。 名誉に対する罪 侮辱罪 (刑法231条) 拘留又は科料 他の患者等のいる前で 「低能なヤブ医者!」と罵倒された。 傷害の罪 脅迫の罪 和田 耕治(編):ストップ!病医院の暴言・暴力対策ハンドブック より Take Home Message 暴れる患者対応では、安全確保が第一! 暴れる患者には、チームで対応しよう! 暴れる患者を落ち着かせるには、 ディエスカレーションが有用! 身体抑制の適応と手段は慎重に検討すべし! 刺股 学習ポイント • 一人で立ち向かわない • 基本は逃げる(さすまたは最終手段) • 訓練を 刺股を使ってみよう! 三和コンベア さん 「新さすまた御用」 Take home message • 一人で立ち向かわない • 基本は逃げる(さすまたは最終手段) • 訓練を
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