かわらばん第198号 「人とミルクの1万年」 (PDF 378KB)

編集・発行
平成27年 12月 1日 発行
大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター
かわらばん
大阪府羽曳野市はびきの3丁目7­1
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第198号 人とミルクの1万年 副院長 土居 悟
家畜から搾乳し、動物のミルクを食料とする乳文化は、平田昌弘博士の『人とミルクの1
万年』によりますと、少なくとも紀元前7000年前には、西アジアの地で始まっていたと推
定されます。最初はヒツジ、ヤギで、その後ウシの搾乳も行われるようになりました。ミル
クの成分は動物によって異なり、ウシのミルクは乳脂肪率が3.9%ですが、スイギュウでは
乳脂肪率が7.4%もあります。インドの乳茶のチャイが美味しいのは乳脂肪率の高いスイギ
ュウのミルクが使われているからだと言われています。ミルクを保存するために乳酸発酵に
よるヨーグルトへの加工も搾乳と同時に始まったと考えられています。ミルクを静置してお
くだけで、自然に乳酸発酵が進んでいくからで、土器がなくても、革袋があればヨーグルト
を作ることができます。西アジアの遊牧民は古くからミルクを加工してバターやチーズも作
っています。ミルクを革袋に入れて振り、棒でたたき、脂肪球膜を破壊し脂肪のみを集めた
ものがバターとなります。また、ミルクのカゼインを酸やレンネット処理して凝固させると
チーズになります。レンネットとは子畜の第四胃の粘膜で盛んに合成される酵素です。この
ように乳文化の歴史は古いのですが、近年に問題になってきている牛乳アレルギーの症状の
起こりやすさは牛乳・乳製品のタンパク質含有量によって左右されます。普通牛乳にはタン
パク質3.3%が含まれますが、食品成分表から換算しますと、乳製品中のタンパク質量は普
通牛乳を1.0として比で表すと、有塩バターは0.2と低く、ヨーグルト(全脂無糖)は1.1と
ほぼ同じ、脱脂粉乳は10.3、パルメザンチーズは13.3と高くなります。つまり、牛乳が
10ml摂取できた時に、摂取可能な乳製品の量は、バター、脱脂粉乳など製品によって異な
りますので、牛乳アレルギーの場合の乳製品の摂取は必ず医師の指示のもとに行ってくださ
い。
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当院の乳腺センターについて 消化器・乳腺外科 医長 藤島 成
当院では平成25年4月に乳腺専門外来を開始し、11月に乳腺センターを開設しました。
2年経過し現在では年間1200人以上の方が乳がん検診を受診され、年間3000人以上の患
者さんが外来受診しております。それに伴い当院で手術、外来フォローさせていただいて
いる乳がん患者さんの人数も年々増加しております。当院の乳腺センターの特徴はホーム
ページにも書いておりますが、診断から治療まですべてを一つの施設で行えるということ
です。
乳腺疾患は診断から治療まで多岐にわたります。診断は画像診断や病理診断、治療は手術、
薬物(抗がん剤やホルモン剤など)、放射線治療、緩和治療など様々です。当院では乳腺疾
患の検査や診断に必要な検査器具も揃っておりますし、乳腺専門医、放射線診断専門医、病
理専門医など診断に必要な専門スタッフも揃っています。乳がんと診断された後も治療に必
要な専門スタッフが揃っています。また当センターでは医師だけでなく、がん専門の看護師
や薬剤師もチーム医療として参加しており、患者さんの副作用対策や精神的サポートだけで
なく、ご家族のサポートも積極的に行っています。当センターでは乳がん患者さんが検査や
治療のたびに違う病院を受診する必要はありません。乳がんは治療期間も長くホルモン治療は
10年間行う患者さんもいます。また術後10年以上経過してから再発する患者さんもおり、
長期的に通院や治療できることが大切です。現在外来は週3日(月、水、金)行っています。
当院の乳腺センターは地域の皆様のお役に立てることを目標に診療しておりますので、もし
気になる事がありましたらお気軽に受診してみてください。
呼気 NO(一酸化窒素)測定って、なに? 呼吸機能検査室 中村 由加
「咳が止まらない」「なんだか息がしにくい」などの症状で来院される患者さんには、当検査
室では以前から肺活量の検査を行っています。
気管支拡張剤(サルタノールやベネトリンなど)を吸入する前と後で検査データに大きな変
化が見られたら、喘息の可能性が高いといわれます。
(しんどい状態の患者さんに息を強く吐かせるので、私達は時々鬼といわれてしまいます
が...)
数年前からそれに付け加え、新しい検査をされることが多くなりました。
その名は...呼気 NO(一酸化窒素)の測定です!
長年の研究により、喘息患者さんの呼気中には他の呼吸器疾患(慢性閉塞性肺疾患など)の
患者さんよりも呼気 NO が高濃度に存在することが分かってきました。
その値は痰の中の好酸球数や気道過敏性と相関しているため、喘息の診断に有効だと考えら
れています。
喘息と診断され、
吸入ステロイドによる治療が始まると、好酸球性の炎症がおさまり始めます。
すると、呼気 NO の値が低くなり、気道過敏性や肺活量の検査にも改善がみられるようにな
るというわけです。
少し息の吐き出し方にコツは必要ですが、短
時間でできる検査です。
呼気 NO はものすごく小さな単位(ppb=10
億分の 1)の検査です。周りの環境に対し、と
てもデリケートな機械を使用しています。
携帯電話などの電波による影響を受けやすい
機械ですので、検査をされる場合は電源 OFF の
ご理解とご協力をお願い致します。
◆◆◆12月の教室案内◆◆◆
◆カンガルー教室 12月2・9・16日 午後1時30分~ 第1会議室
◆禁煙教室 12月3日
午後 3 時30分~
◆アトピーカレッジ 12月4・11・18・25日 午前10時~11時
医療情報コーナーさくら
第2会議室 ◆乳幼児アトピー教室 12月4・11・18・25日 午後 2 時~3時 第2会議室