事例7 生乳の熱利用 温暖化防止 × て生乳から得た熱を、ヒートポンプシステ ﹁ミルクヒートポンプ﹂は、熱交換によっ ます。 用するため、エネルギーもコストもかかり 電力消費が大きく、また水道水も大量に使 いずれの場合も、生乳を急速冷却するので、 い、そ の 後 バ ル ク ク ー ラ ー で 貯 蔵 し ま す。 ミルクヒートポンプ 酪農の町の温暖化対策 北海道東部の中標津町は、酪農が盛んな 町です。町内の人口が約2万4千人である のに対し、乳牛は3万9千頭以上で、人よ りも牛が多い地域です。 酪農においても、機械化・大規模化が進 ム︵温度の低いところから高いところへ熱 を移動させるシステム︶で利用し、そこで できた温水を、機械洗浄のお湯を作る時の 熱源として活用できるようにしたシステム ℃位 ま で 一 気 に 下 げ ら れ る た め、 です。搾乳の直後に生乳の熱を取ることで、 温度を 衛生的なだけでなく、生乳を冷やすための 電力や、機械洗浄のためのお湯を作る時の 燃料も削減できる、まさに一石二鳥のシス があります。通常は、バルククーラーと呼 するために4℃程度まで温度を下げる必要 ﹁実 際 に 使 っ て い る 印 象 と し て は、予 備 と言います。 事の林義和さんは、導入のメリットは多い 1.林さんの牛舎で搾乳を待つ牛たち。林さんは夫婦二人で牧場を経営している。 み、搾 乳 の 機 械 や 生 乳 を 冷 や す ク ー ラ ー、 そし て機械 を洗浄 する ために お湯 を大 量に 沸かすなど、使用するエネルギー量は増え、 二酸化炭素の排出量も増加しています。 そこで、今回は、中標津町にある北海道 新エネルギー事業組合が取組む、しぼりた ての生乳の熱を利用し、酪農家経営でエネ ル ギ ー 使 用 量 を 減 ら す シ ス テ ム﹁ミ ル ク ヒートポンプ﹂をご紹介します。 テムと言えます。 2 0 1 3 年 6 月 か ら、﹁ミ ル ク ヒ ー ト ポ 母牛の体温を無駄にしない 搾乳した直後の生乳は、牛の体温と同じ ン プ﹂を 導 入 し て い る、JA道 東 あ さ ひ 理 ばれるステンレス製のタンクで直接冷却す 冷却 と して 生 乳の 温度 を一 気 に下 げられ る で約 ℃ですが、細菌を増やさないように コスト削減と衛生面を 両立させたシステム 10 るか、あるいは冷却クーラで一次冷却を行 1 38 高い 牛 乳だと い うこ とを 消費 者 にア ピー ル 資を回収できるかという事と、付加価値の ﹁こ の シ ス テ ム が 普 及 す る に は、初 期 投 話しています。 フッ ト プリン ト のよ うな 仕組 み も必 要だ と 環 境 負 荷 を 客 観 的 に 評 価 す る、カ ー ボ ン さらに、林さんは、牛乳の生産や出荷の スの必要もありません﹂。 削減できています。今のところメンテナン ので衛生的で、洗浄のお湯を作る灯油代も 要があります﹂。 にも、システムについて理解してもらう必 バルクのメーカーにも、そして酪農家自身 ことが重要です。搾乳機械のメーカーにも、 いように、バルクのメーカーに了解を得る 置によって菌が増えたり、詰まったりしな 所にヒートポンプの装置をつけるので、設 ﹁搾 乳 機 械 か ら バ ル ク ク ー ラ ー に つ な ぐ います。 場合の留意点について、次のように話して さんは﹁ミルクヒートポンプ﹂を導入する 応えるべく、試行錯誤しています﹂。 を冷 やせ るよ う にし てほ しいと い う 要望に 在は、酪農家の方からのより効率よく生乳 たり前になってほしいと思っています。現 てら れて しま う 熱を 活用 したシ ス テ ムが当 す。﹃ミ ル ク ヒ ー ト ポ ン プ﹄の よ う な、捨 酪農家だけです。酪農は必ずお湯を使いま も の と せ ず に、何 か に 役 立 て ら れ る の は、 ています。その貴重な母牛の熱を、邪魔な のまま飲むはずのミルクを、わけてもらっ 母牛の体温。私たち人間は、本来子牛がそ ﹁ミ ル ク ヒ ー ト ポ ン プ﹂の 展 望 に つ い て もお話を伺いました。 ﹁今 の 酪 農 は 重 装 備 産 業 で、初 期 投 資 も 膨大なうえ、利益が少ないため頭数を増や 取材日 平成 年 月 公益財団法人北海道環境財団 連絡先 ︵担当 杉岡︶ 011‐218‐7811 記事に関するお問合せ できるかがカギになると思います。日本で はやっと100%有機牛乳ができ、かなり の 付 加 価 値 が あ り ま す。﹃ミ ル ク ヒ ー ト ポ ンプ﹄を使った牛乳は、今は一元集荷され ていますが、環境に配慮した牛乳として今 さ な け れ ば な ら な い の が 現 状 で す。﹃ミ ル 年度地域における地球温暖化防止活動促進 事業﹂で作成しています。 本紙は﹁平成 10 後市 場 で差別 化 され るよ うに な れば と思 っ ています﹂。 クヒートポンプ﹄は、経費である燃料代を 削減できるので、削減できた分は、そのま 26 4.バルクを設置している場所も、生乳 の温度管理に影響する。林さんはコンク リートの建物内に置いているので、真冬 でも氷点下にはならない。 北海道新エネルギー事業組合の組合員で 3.林 さ ん が 使 用 し て い る バ ル ク ク ー ラー。ここに入る時には生乳は既に 10℃ 位まで温度が下がっている。 ま酪農家の利益となり、酪農家の経営を支 26 2.搾乳後、タンク(写真中央部)に送ら れた牛乳は、プレートクーラー(写真左上 の黒い装置)の中で熱交換される。 あ り、﹁ミ ル ク ヒ ー ト ポ ン プ﹂の 考 案 者 で 4 え る こ と に も つ な が り ま す。生 乳 の 熱 は、 3 もある有限会社柳田電気の社長、柳田清志 2 LLC 北海道新エネルギー事業組合(中標津町) ミルクヒートポンプ に関するお問合せ 〒086-1272 標津郡中標津町字開陽1360-4 TEL 0153-73-2050 FAX 0153-73-3050 省エネルギー・低炭素システムの販売、自然環境の中に埋もれてい る未利用エネルギーを有効に活用するための研究・開発など、農業 者をはじめとする町の基幹産業の活性化を図り、地域社会の抱える 様々な環境問題解決の一助となるための取り組みを行う。写真左か ら林理事夫妻、柳田社長、寺端代表社員組合長。
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