CANDLES の現状と将来計画 - 極低バックグラウンド素粒子原子核研究

阪大
岸本忠史
CANDLES Collaboration
大阪大学理学研究科
岸本忠史、吉田斉、鈴木耕拓、角畑秀一、Wang Wei、Chan Wei Min、 Van Trang、
石川貴志、田中大樹、田中美穂、土井原正明、前田剛、太畑貴綺、鉄野高之介
大阪大学RCNP
能町正治、味村周平、梅原さおり、中島恭平、飯田崇史、松岡健次
福井大工学部
玉川洋一、小川泉、川村篤史、富田翔悟、藤田剛志、原田知優、坂本康介、
吉澤真敦、犬飼祐司
徳島大総合科学
伏見賢一
大阪産業大学
硲隆太、中谷伸雄
佐賀大学文化教育学部
大隅秀晃
A02: 48Ca を用いたニュートリノのマヨラナ性の
研究と超高分解能技術の開発
-- CANDLES -•
48Caの2重ベータ崩壊の研究
– CANDLES III(UG) 実験
• 低BG化
• 高分解能化
•
遮蔽
48Caの濃縮技術の開発と濃縮
– ββ崩壊核の増大とBG低減の同時達成
• CE
• レーザー
• MCCCE
CE樹脂
μリアクター
• ボロメーター技術の開発
– 高エネルギー分解能化
2
Why 48Ca
• Highest Q value (4.27 MeV, 150Nd: 3.3 MeV)
– Little BG(g: 2.6 MeV, b: 3.3 MeV)
– Large phase space factor
• Small natural abundance: 0.187%
– Isotope separation → expensive (no Gas)
• Next generation
– <mn>~ T-1/2 ~ M-1/2 (no BG) M:物質量
~ M-1/4 (BG limited)
– 濃縮 増大+S/N比向上: 500倍
– 高分解能化:ボロメーター(結晶)
• Beyond inverted hierarchy
48Ca + enrichment + bolometer
3
CANDLES III
Site: 神岡鉱山地下 ~1000 m
検出器: 直径3m × 高さ4m (水タンク)
液体シンチレータ設備
Lab D
Kamioka Lab. Map
KamLAND
リザーバタンク
純化装置(液々抽出、GN2パージ塔)
Super Kamiokande
4m
CANDLES
3m
XMASS
CANDLES III
JPS Meeting @東海大学
GDZOOKS!
2014/03/27
4
CANDLES III(UG)
CANDLES at Kamioka underground laboratory
4m
CANDLES III
CaF2 シンチレータ (CaF2(pure))
305 kg (96個 × 3.2kg)
t ~ 1msec
液体シンチレータ (LS)
全方向ベトー検出器
体積2m3
t ~ 数10nsec
光電子増倍管
13inch PMT × 48
20inch PMT × 14
ライトパイプ
集光効率改善:エネルギー分解
能改善
CaF2
液体シンチレータ
ライトパイプ
PMTs
3m
水
ベトー検出器システム
波形の違いを利用
CaF2(pure)
: ~1msec
Liquid scintillator : 数 10 nsec
CANDLES III(UG)
CANDLES at Kamioka underground laboratory
CANDLES III
CaF2 シンチレータ
(305kg)
液体シンチレータ
タンク(2m3)
光電子増倍管
ライトパイプ
CaF2 シンチレータ (CaF2(pure))
305 kg (96個 × 3.2kg)
t ~ 1msec
液体シンチレータ (LS)
全方向ベトー検出器
体積2m3
t ~ 数10nsec
光電子増倍管
13inch PMT × 48
20inch PMT × 14
ライトパイプ
集光効率改善:エネルギー分解
能改善
ベトー検出器システム
波形の違いを利用
CaF2(pure)
: ~1msec
Liquid scintillator : 数 10 nsec
外部起源のBG
Rejection of LS Events
• Pulse shape information by
500 MHz Flash ADC
– Typical Pulse Shapes
CaF
CaF2+
Liquid Scintillator
Liquid Scintillator
2
Liquid
Scintillator
CaF2
CaF2
CaF2
Liquid
Scintillator
内部起源のBG @ Q値領域
CaF2不純物起源のバックグラウンド事象
連続信号
連続信号
β+α
Th系列
Emax=5.2MeV(Th)
5.9MeV(U)
208Tl
CaF2(pure) 減衰定数: ~1μs
事象
212Bi
と 208Tl(T1/2=3分) . . .
事象位置と
時間相関から除去
先行α線をα-γ波形解析で識別(偶然同時計数を低減)
→時間差解析
バックグラウンド除去
連続事象
208Tl事象
:時間差が長い事象→連続波形を識別
時間差が短い事象→α線波形を除去
:先行α信号(212Bi)との位置・時間相関
8
8
連続崩壊事象
212Bi→212Po崩壊
Th系列
連続崩壊
3MeV以上のエネルギー領域に分布
T1/2 = 0.3μsec
典型的な連続崩壊波形
先行β
時間差が短い連続信号波形
遅延α線
62本PMTの足し合わせ波形
2つの手法で除去する
1、時間差識別によって除去:95%以上の除去効率
2、α線波形弁別によって除去
9
9
波形弁別(α粒子の同定)
-連続崩壊、208Tlの除去波形解析によるα-γ粒子弁別:shape indicator(SI)
α線:214Po 7.6MeV(Ee=2.6MeV)
γ線 :208Tl 2.6MeV
214Po(±1σ)
連続信号(±1σ)
γ-ray(±1σ)
“χ2 フィット”
“Shape Indicator”
ref:Shape Indicator
(PRC67(2003) 014310)
214Po(2.6MeV)
CaF2 γ事象
+小さな液体シンチ
レータ信号
4σ
γ-ray(2.6MeV)
mean :-0.008(γ-ray)
:1.005(α-ray)
σ
:0.260(α-ray)
:液体シンチレータ信号除去
:α-γ弁別(χ2フィットの補完解析)
SIによるα線識別効率97% @ 2.6MeV (γ線:3%) 99%@4.3MeV
212Bi選択時にはさらにγ線事象を低減するためにχ2も併用。
10
10
208Tl除去:先行212Bi信号
212Bi→208Tl
Th系列
232Th
→208Pb 崩壊
212Bi
a
208Tl
36% T1/2 = 3.0min
Qa = 6.2MeV
Qb = 5.0MeV
(Ee=1.7MeV)
先行 212Biエネルギースペクトル
先行信号
偶然同時信号
遅延信号
= 3.5-5.1MeV
β
+γ
208Pb
stable
Emax=5.0MeV
212Bi
と 208Tl(T1/2=3分) . . .
事象位置・時間相関解析
Δt分布
208Tl
半減期 = 152±27sec
2つの指数関数
偶然同時
・208Tlの半減期183秒を確認。212Biのα線ピークを確認。
→212Biの識別は可能
Time(sec)
11
11
エネルギースペクトル
測定:純度が高い結晶26個
DAQ更新前(4週間データ)
DAQ更新後(8週間データ)
Qbb値
Qbb値
カット条件
・cb<1.5選択
・-3s<SI<1s選択
・208Tl除去(720sec<)
・連続信号除去(<20nsec)
DAQ更新前
DAQ更新後(現在解析進行中)
測定時間、検出効率
2241 kg・days、0.34
4987 kg・days、0.28
事象数
4
6
予想されるBG量
~0.5(結晶内)+1.5(中性子)
~1(結晶内)+3.4(中性子)
測定感度
0.5×1022年
0.8×1022年 BG
・測定感度:~1×1022年
内部:当面OK
外部:要対策 12
中性子捕獲からのγ線
中性子線源(252Cf)を検出器・岩盤に照射
飯田、角畑、中島
(2014年物理学会他)
252Cf測定と通常測定のエネルギースペクトルを比較
エネルギースペクトル
252Cf測定(3時間)
通常測定(88日)
線源設置の様子
(低エネルギーLS信号があるものを含む)
Fe
Ni
Si
高エネルギー領域:ステンレス・岩石の(n,γ)反応でスペクトルを再現した。
→予想される事象量の見積もり
13
中性子捕獲γ線遮蔽
CANDLES IIIシールド概念図
CANDLESタンク部分
鉛シールド(γ線) 7~12cm
ホウ素シート(中性子) 5mm
遮蔽:1/100に低減
・鉛(タンク外側):岩盤からのγ線を
止めるための鉛
・ホウ素(タンク内側):タンク(SUS)
に入る中性子を吸収(n,g)を抑える
鉛(g線)
横:完成
上下
B(中性子)
秋をメド
エネルギー分解能向上(冷却)
CaF2
temperature
Water temperature
Light yield
Test experiment
Relative gain
Light yield increase at low temperature
Observed: 2%/deg. increae
Cool CANDLES III from 20 to 0 degrees.
40% increase: This year
検出器冷却・温度安定化装置導入
検出器の冷却
CANDLES IIIで冷却性能テスト
実験室全体を冷却して温度コントロール
到達温度:室温2℃、検出器3℃、温度変動±0.1℃
インストールが終了し性能評価
+地磁気補償コイル
1.4
=1.8
1.3
実験室外送風ダクト
冷風器
この階段上部分に冷風器設置
冷風器室外機
水用冷却器
本体タンク
16
48Caの濃縮
• 物理的方法
– 遠心分離法:ガスのみ(核燃料)
– レーザー法:実用化はこれから
• R&D 仁木:反跳法
– 質量分析法:48Ca等、高価(10g/億)
• 化学的方法
– 反応率の差:重水素、ホウ素
– クラウンエーテル(CE)
• 樹脂法
• マイクロリアクター
• 電気泳動法:MCCCE法
17
CE樹脂による48Ca濃縮
同位体効果
濃縮量
濃縮度
クラウンエーテルによる濃縮
濃縮効果
同位体効果
最大: 0.0026
多く
高く
自然同位体比
= 0.0019
・長い泳動距離 = 高い濃縮度
・48Ca 大量化 → 現在、体積10~100倍システム
大量化の際に想定される問題の洗い出し
・クラウンエーテルは非常に高価(5000円/g)
→自分たちで合成する技術を開発:原材料費 1/1000
18
電気泳動法
Multi-Channel Counter Current
Electrophoresis (MCCCE)
19
キャピラリー電気泳動法によるMAの分離分析
○キャピラリー電気泳動法(毛細管内で電気泳動を行う方法)
錯形成剤(a-HIBA)を含んだ溶液
数万ボルト
100 mm以下
+
-
・試料成分の移動速度は,電荷・大きさ等により違いが出る。
短時間で高い分離
少量:分析
Pm-Gd
48
1
0.8
Cs
Sr
Ce
Pm
Am
Y,Cf
Ce
Cs
Cm
Sr
0.6
Eu
Gd
Y
Cf
Yb
Lu
Yb Lu
0.2
100
47
Simulation
46
45
Pm
Sm
0.4
0
キャピラリー電気泳動装置
150
200
250
300
350
400
Elapsed time / s
溶離速度
450
44
Sm
43
Am
Eu
Gd
42
41
40
9.1
9.2
9.3
9.4
9.5
9.6
-1
61Pm
> Am > Cm > 62Sm > 63Eu >
64Gd
アクチニド,ランタニド混合試料の
相互分離を短時間で達成
1 / r (nm , CN = 8)
図 イオン半径の逆数と各元素の移動度との関係
%程度の速度差まで分離,イオン半径
錯安定度定数などの化学量を導出
向流電気泳動法
• 大口径泳動(藤井実験)
–
–
–
–
時間:1000時間
泳動距離:23m(向流)
濃縮度:1.3 倍
広がり: σ ~10cm
• なぜ長時間必要?
長時間で低い分離
大量濃縮
Key issues in 電気泳動法
• 電圧×電流→ジュール熱:冷却
– キャピラリーE→小口径→高電力密度
• 少量; 短時間・高濃縮度
– 向流E→大口径→低電力密度
• 大量; 長時間・低濃縮度
ジレンマ
• 試行錯誤
– ジュール熱を発生しない泳動装置
• 交互場電気泳動
– 失敗
• Multi-Channel Counter-Current Electrophoresis
(MCCCE法)
22
濃縮(分離)の条件
• 泳動距離
l  mEt
– μ:移動度、E:電場、t:時間
m  m ( Ca)  m ( Ca)
• 分離を妨げるもの:拡散
s  2 Dt
– 拡散係数:D、 広がり:σ
• 分離の条件
2 Dt  mEt
40
48
2D 1
E
m t
2D
t
( m E ) 2
• 電場をn倍→効率n倍
– 時間1/n2、泳動距離1/n
– 但し、単位体積当たりの電力はn2
高電場が有利
電力密度の最大化
• 泳動路からの有効な除熱
– 泳動路は絶縁物:電場を掛けなければならない
– 絶縁物は熱伝導が悪い
• 電子:電流も熱も運ぶ
• 例外:BN, AlN, ダイアモンド, 等
– 伝導電子は無いが、格子振動が熱を運ぶ
• 水や樹脂の100倍から1000倍
– 泳動路と冷却の最適化
• 温度分布
J   grad T
円柱のチャネルに適応


J
dV
J:単位面積当たりの熱量
λ:熱伝導率
r
 C
surface
2
C
C r 2
T
4
向流
電場
BN plate 10 mm thick
0.8mmΦ, every 4 mm 25
Tabletop instrument
26
BN板
0.8Φ穴
4mm毎
40mm径内
69個
27
43Ca/48Ca
ratio by ICP MS
• ICP Mass Sp: 40Ca量計測が困難
– 東工大原子炉TIMS:数か月に1回
• 43/48 ratio
– ICP-MS@阪大RIC
BN 10mm: 6倍の濃縮
3
R(MCCCE)
R(43Ca / 48Ca)  exp(  )  3.08
R(40Ca / 48Ca)  exp( 8 / 5) ~ 6
3.5
2.5
2
Series1
1.5
1
0.5
0
BN 20mm: 濃縮度10倍
初期の目標に到達
向流
140
150
160
170
180
190
V (Applied voltage)
0.75
0.85
0.95
~0.72mm/sec イオンの泳動速度 (mm/sec)
28
PTEP: 3月号
Referee rejected
in the beginning
高分解能化
- 2nbb: ultimate BG • 2nbb decay
– エネルギー分解能
– 1% or better to explore
sub 10 meV region
<mn>=0.009eV
• シンチレーター
– 2.8%: our limit
• Light collection
• cooling
• ボロメーター: 0.5%
– 結晶
エネルギー分解能4%
エネルギー分解能2.8%
エネルギー分解能1%
30
2nbb 事象(Ultimate BG)
エネルギー分解能の改善  Bolometer
CaF2結晶内部の放射性不純物 (Th系列)
Th系列(β-α信号)  Bolometer (no quench)
Th系列(208Tl)  結晶細分化
ELEGANT-VIの経験から
10cm立方結晶  小型化 (4~5 cmでOK)
環境中性子起源γ線
エネルギー分解能の改善+結晶小型化
Bolometer 既存のBGは大きく低減可
しかし… 新しいBG候補
48CaのQ値
: 4267.98(32) keV
238UのQ値 : 4270 keV
最新値@ arXiv:1308.3815
分解能改善だけでは除去不可
 Scintillating Bolometerの開発
Scintillating Bolometer for CaF2
2016/3/30
31
既に、いくつかの実験で実用化
CRESST-II (CaWO4), Lucifer, AMoRE
CaF2(Eu) NIMA386 (1997) 453
結晶 (0.3 g) 、粒子弁別分離能が小さい
超薄膜の
Si半導体
成功例
CRESST-II実験
熱量蛍光検出器
40φ×40mm (CaWO4)
熱量に加え、蛍光量も同時に測定
蛍光のα線クエンチング効果を用いたα/β粒子識別
238Uのα崩壊事象(Q値=4.27MeV=0νββ崩壊のQ値)を排除
蓑輪研より借用
Scintillating Bolometer for CaF2
2016/3/30
32
A02: 48Ca を用いたニュートリノのマヨラナ性の
研究と超高分解能技術の開発
-- CANDLES -•
48Caの2重ベータ崩壊の研究
– CANDLES実験
• 低BG化
• 高分解能化
•
遮蔽
48Caの濃縮技術の開発と濃縮
– ββ崩壊核の増大とBG低減の同時達成
• CE
• レーザー
• MCCCE
CE樹脂
μリアクター
• ボロメーター技術の開発
– 高エネルギー分解能化
33
核行列要素
GT: usually considered
Fermi: none if isospin holds
Tensor: small
•
48Ca
Ab initio cal. (shell model)2重閉殻
f5/2
– lowest order = 0
• GT: n(f7/2) → p(f5/2) no GS
• Fermi: n(f7/2) → p(f7/2) IAS
GT(ΔT=1)
f7/2
d5/2
Fermi(ΔT=0)
– 実際:2νββ観測
p
理論:寺崎
原子核行列要素の方法による不一致問題の解決をめざして
実験:矢向
n
CANDLES計画の特徴
ELE VI
(48Ca)
100Mo
130Te
136Xe
我々の研究
世界の研究
76Ge
1
CAN III
(48Ca)
0.01
技術
T1/2∝ M
検出器の大型化
バックグランドの
低減
バックグラウンド量/M
100
バックグランドなし測定
(T1/2∝M)
0.1
予算
CAN IV
(48Ca)
1
10
100 1000 10000
二重ベータ崩壊核の量 M
1. 無バックグラウンド
測定の実現、
2. それから大量化