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PREACHER NEWS LETTER
研究にご協力いただき
誠にありがとうござい
ます。
第 3 号 News Letter
をお届けします
2015.04 第 3 号
周産期(産褥)心筋症全国多施設
前向き症例登録研究
PREACHER
PREgnancy-Associated Cardiomyopathy
and Hypertension Essential Research
http://周産期心筋症.com/
目 次
症例登録状況
途中経過報告
抗プロラクチン療法
PPCM Up To Date
お問い合わせ先
1
2
3
4
4
妊娠関連の心筋症(周産期心筋症、産褥性心筋症)は、
稀少疾患ではありますが、妊産婦死亡の重要な原因の一つです
症例登録状況
87 症例
2015.04 現在
100
症
例
登
録
数
(
人
)
80
60
40
月別登録数
20
0
2011.08
2012.02
2012.08
2011 年 WEB データ登録開始
2013.02
2013.08
2014.02
2014.08
累計
2015.02
月別登録数
たくさんの先生方にご協力を頂き、順調に症例数が増加しています
登録対象
① 妊娠中または妊娠終了後5カ月以内に新たに心不全の症状が出現、
もしくは、心エコー上 左室機能の低下を認めた症例
② 左室駆出率(EF) < 45%
③ 他に心不全の原因となるものがない
④ 心疾患の既往がない
2
途中結果報告
(2015 年 3 月末)
国際間での患者背景、臨床経過の比較
平均年齢 (才)
平均妊娠回数* (回)
初産婦 (%)
アフリカ系人種 (%)
慢性高血圧・妊娠高血
圧症候群の合併 (%)
切迫早産治療 (%)
多胎妊娠 (%)
死亡率 (%)
PREACHER
日本
アメリカ
南アフリカ
ハイチ
2015 年 3 月
n=70
35.7
1.8
57
0
2009 年
n=102
32.7
1.7
55
0
2005 年
n=100
30.7
2.6
37
19
2005 年
n=100
31.6
3
20
100
2005 年
n=98
31.8
4.3
24
98
40
42
43
2
4
21
4
0
14
15
4
19
13
9
9
6
15
0
6
15
*初産婦を 1 として算出しています。 (Sliwa K, et al. Lancet. 2006 より引用改変)
分
診
娩
断
方
時
法:
期:
診 断 時 N Y H A:
経腟分娩 32 人、帝王切開 38 人
妊娠中 12 人、分娩~産褥 1 週間 28 人、産褥 2 週~1 か月 15 人、
産褥 1~2 か月 8 人、産褥 2~3 か月 4 人、産褥 3~4 か月 3 人
Ⅰ2 人、Ⅱ 8 人、Ⅲ 19 人、Ⅳ 41 人
平均左室駆出率(LVEF) の推移
LVEF (%)
60
48.8 ± 11.2
50
55.0 ± 11.6
36.8 ± 12.6
40
30
52.1 ± 12.4
27.9 ± 8.4
20
10
0
診断時
1~2週後
3か月後
6か月後
1年後
1 年後、LVEF≧50%に回復例が 78%でした
診断時
1~2 週後
3 か月後
6 か月後
1 年後
BNP (pg/ml)
カテプシン D 活性 (%)
切断プロラクチン (FU)
924
219
67
42
32
健常非妊女性を 100 とする
165
152
114
99
110
妊産褥婦平均 1.9
3.67
2.93
2.26
3.17
2.81
3
抗プロラクチン療法(APT)について
( 抗プロラクチン療法(APT)は、主治医の判断のもとに実施し、
本症例登録研究は、観察研究の位置づけで APT の有効性検討を行っています。)
【 APT の有無による 症例内訳
68人
】
68 人中、APT が施行されたのが 40 人、
施行されなかったのが 28 人でした。また、
APT 施行群のうち 7 人は、亜急性期から
慢性期の使用や、短期間の施行であり、
欧州から報告のあったプロトコール通り、
急性期に 8 週間の APT を実施されたのは、
33 人でした(右図)。
ATPあり 40人
ATPなし 28人
Standard protocol
※
33人
亜急性期や短期間の使用
7人
※急性期に8週以上 抗プロラクチン療法を施行
APT の使用薬剤は、ブロモクリプチン 21 人、テルグリド 6 人、カベルゴリン 4 人(重複 1 人)であ
り、APT により、消化器症状(嘔気)の副作用を 3 人(血圧低下 1 人、脱毛 1 人)に認めました。
【 APT の有無による 心機能予後
】
APT 非施行群(28 人)と、スタンダードな APT 施行群(33 人)の心機能予後を比較しました。
診断時左室駆出率(LVEF)は、APT 非施行群で 32.0%に対し、APT 施行群は 24.9%(p=0.003)
と、APT 施行群のほうがより低心機能でありました。
これは、より重症例で新規治療を実施する傾向があるためと考えられます。診断時心機能に差
があったにもかかわらず、2 週後以降の心機能には両群間で差がなく、APT 施行により、急性期
の心機能改善効果が期待できる結果でした。しかしながら、1 年後の心機能には両群間で差がな
く、今後、治療条件(開始時期、治療期間、使用薬剤)をそろえた介入試験も必要と考えられます。
診断時 LVEF (%)
1~2 週後 LVEF (%)
3 か月後 LVEF (%)
6 か月後 LVEF (%)
1 年後 LVEF (%)
APT なし
APT あり
p-value
32.0 ± 8.3
39.1 ± 13.2
50.4 ± 12.0
54.3 ± 13.4
55.8 ± 14.8
24.9 ± 7.7
35.5 ± 9.9
48.3 ± 10.4
51.1 ± 11.9
55.1 ± 10.0
0.0029
0.2377
0.4771
0.3459
0.8474
160
6
140
APTなし
APTあり
P=0.00
切
断
プ
ロ
ラ
ク
チ
ン
(FU)
ng/ml)
血
清 120
プ
ロ 100
ラ
ク
チ 80
ン
( 60
40
5
4
APTなし
3
APTあり
2
1
20
0
0
診断時
2週後
3ヵ月後 6ヵ月後
1年後
診断時
2週後
3ヵ月後
6ヵ月後
1年後
APT によりプロラクチン分泌は抑制されているが、切断プロラクチンは軽度減少にとどまっていました。
抗プロラクチン薬では、切断プロラクチン産生が十分に抑制できない、もしくは、APT なし群でも多くの症例が、
母乳授乳を中止していたことなどを反映しているのかもしれません。
4
PPCM モデルマウス研究についての Up To Date
心房性・脳性ナトリウム利尿ペプチド(ANP・BNP)
は共通の受容体 guanylyl cyclase-A (GC-A)を介し
て、血管拡張・ナトリウム利尿・心臓リモデリング抑制・
虚血組織における血管新生促進等の多彩な生理作用を有す
る循環ホルモンです。
ヒトゲノムワイド解析から ANP・BNP 関連遺伝子座に
おける変異が心血管疾患のリスク因子であることが分かっ
ています。国立循環器病研究センター研究所では、GC-A
遺伝子欠損マウス(GC-A-KO)による高血圧研究を行っ
てきましたが、同マウスの雌は、妊娠授乳後に心筋症を発
症することがわかりました(図1)。
GC-A-KO の産褥期心筋症は、仔獣分離(=授乳中止)に
より発症抑制されます。そのうえ、仔獣分離した産後母獣
に切断プロラクチンを投与し ても、心筋症の発症は認め
られませんでした。結果、切断プロラクチンは当該マウス
の産褥期心筋症の発症に無関係であると考えられます。
これまでに、血管内皮細胞、心筋細胞および遠位側尿細
管細胞における ANP・BNP/GC-A 系が授乳期に心保護
的な作用を有する可能性があること、授乳2週目の GCA-KO で有意に血中アルドステロン濃度が高値であるこ
とが分かってきています。
本研究成果をもとに、周産期心筋症における ANP・
BNP 関連遺伝子座を解析する遺伝子研究を進めていま
す。病因解明の一助となることを期待しています。
(本文は、大谷健太郎ら「授乳期における内因性心臓ナト
リウム利尿ペプチド系による心保護作用のメカニズム解
析」血管 Vol. 37(3): 93-97、 2014 をもとに、著者の
許可を得て要約しました。)
図1. GC-A-KO は出産・授乳を重ねることにより,周産期心
筋症様の心線維化・心機能低下を伴う心肥大を呈する
事務局からお知らせ
~
遺伝子検査について
~
PREACHER 研究への症例登録の有無に関わらず、周産期心筋症の既往が
ある女性に遺伝子研究へのご協力をお願いしています(検査結果は非開示)。
詳細は PREACER WEB(http://周産期心筋症.com/)をご覧下さい。
◆
研究について ◆
◆
症例登録システムについて ◆
周産期心筋症全国調査 事務局
池田 智明 ・ 神谷 千津子
EDC データセンター
(AHIT株式会社)
(国立循環器病研究センター周産期・婦人科内)
〒530-0001 大阪市北区梅田 2-2-2-19
TEL:06-6133-5739 FAX:06-6133-5769
〒565-8565 大阪府吹田市藤白台 5-7-1
TEL:06-6833-5012 (内線:8681)
E-mail: [email protected]
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