22 世紀医療センター 平成 26 年度活動報告書 講座名 コンピュータ画像診断学/予防医学講座 代表者 (講座長) 特任准教授 林 直人 構成員 (研究者) 特任准教授 宇野 漢成 特任准教授 吉川 健啓 特任助教 長崎 実佳 特任助教 浅羽 健介 特任助教 前田 恵理子 特任助教 三木 聡一郎 特任助教 渡邊 綾 特任研究員 野村 行弘 特任研究員 根本 充貴 【 講座概要 】 本講座は、先進的な画像診断機器からの膨大な画像データをはじめとする予防医学領域の最新の 生体データを集約して詳細なデータベースを構築し、これを基盤とした予防医学的研究や画像処理、 自動診断アルゴリズムの研究を行っている。 当講座では、信頼性の高い詳細な検診データベースを構築するため、株式会社ハイメディックと連 携して長期的に検診を施行している。先行して PET 検診を施行している山中湖クリニックとも連携し、 予防医学的な疫学研究も推進している。東京大学医学部附属病院は検診事業を受託しており、当講 座はフィールドワークとして検診実務を行うとともに、その検診データを用いて画像解析の研究、およ び、それより派生する疫学的な研究を行っている。検診はコンピュータ画像診断学/予防医学検診部 門(略称:画像検診部門)として中央診療棟2の 9 階で行っており、一般的な検診項目に加えて、 PET/CT(陽電子断層撮影/コンピュータ断層撮影)や超高磁場の MRI(磁気共鳴画像)、最新の技術 を応用した超音波検査やマンモグラフィーを導入している。 画像処理、画像解析の面では、東京大学大学院生体物理医学専攻放射線医学講座を協力講座とし、 画像情報処理・解析研究室と全面的に連携して画像処理ソフトを開発している。さらに、内外の CAD (computer assisted detection:コンピュータ支援検出)研究者と Open CAD プロジェクトを通じて共同 研究を推進している。 【 研究内容 】 a) データベース構築:長期にわたる経過観察が可能な受診者を対象として、高度な検査内容からなる 健康診断を定期的に施行し、詳細かつ信頼性の高いデータベースを構築する。特に先進的な画像 診断機器である FDG-PET,多列 CT 及び 3T-MRI を用いて、全身の微細な初期病変の検出を可能 とする体積データを収集する。 b) 大量画像データ処理方法の研究:検査日・種類の異なる画像を 1 つの多次元データとして取り扱う ための基本的な画像処理機能を開発する。さらに大量の多次元データの中から微細な異常所見を 自動的に検出するアルゴリズムの研究を行う。東京大学大学院生体物理医学専攻放射線医学講 座、画像情報処理・解析研究室と提携し、画像処理ソフトの開発を行う。特に CAD 開発と臨床応用 に重点を置き、放射線診療において CAD の実用化を目指す。 22 世紀医療センター 平成 26 年度活動報告書 c) コホート研究:検診事業において得られる様々なデータを経時的に解析し、新しい検体検査や画像 検査の異常所見の疾病予測における臨床的有用性について検証する。 【 今後の展望 】 a) データベース構築: データベース、コンピュータ画像診断支援(CAD)に関しては研究用インフラ整備が 20 年度でほぼ 完成した。引き続き、検診診療を通じて詳細かつ信頼性の高いデータを蓄積し、それらのデータベ ース整備を行い、多くの研究者が利用できる環境を整えていく。 b) 大量画像データ処理方法の研究: CAD 開発システムは20 年度に実運用の段階に入っており、これによって CT 肺結節検出、 PET/CT 皮膚病変検出、PET/CT 内臓脂肪量測定のソフトウェアの開発を支援している。臨床応用 では CT 肺結節検出および MRA 脳動脈瘤検出を搭載した臨床 CAD サーバの運用を開始した。 今後、開発されたソフトウェアをさらに臨床CAD サーバに搭載して臨床試用するとともに、新しいソ フトウェア開発にも着手していく。 c) コホート研究: これまでの臨床データが不十分な血液検査と画像所見、長期予後との関連調査を進めている。近 年、心血管疾患のリスク要因として内臓肥満を基盤とするメタボリックシンドロームが注目され、そ 22 世紀医療センター 平成 26 年度活動報告書 の背景には、臓器としての内臓脂肪組織の機能異常が存在することが示唆されている。従来可視 化・定量することは困難であったヒトの脂肪組織について PET/CT を用いて評価を試みている。こ うして得られた指標と、従来のインスリン抵抗性の指標、血清脂質プロファイル、などとの相関を検 討し、臨床的有用性を明らかにしていく。さらに、脂肪組織機能と、動脈硬化指標(頚動脈肥厚・プ ラーク・狭窄)、各種アディポサイトカイン、炎症性サイトカイン、高感度 CRP との相関についても検 討し、脂肪組織機能異常が、人間でのメタボリックシンドロームの病態形成の中で、どのような位置 づけであるか、臨床的検討を進めている。追跡調査による心血管イベントの予知や、栄養指導・減 量・運動・薬剤治療による介入の効果についても検討を行う予定である。 ・・・ 平成26年度活動実績 ・・・ 【 論文 】 <英文原著> (1) Yuan LJ, Takenaka K, Uno K, Ebihara A, Sasaki K, Komuro T, Sonoda M, Nagai R. Normal and shear strains of the left ventricle in healthy human subjects measured by two-dimensional speckle tracking echocardiography. Cardiovasc.Ultrasound 2014 Feb 11;12:7-7120-12-7. (2) Nishimura S, Nagasaki M, Okudaira S, Aoki J, Ohmori T, Ohkawa R, Nakamura K, Igarashi K, Yamashita H, Eto K, Uno K, Hayashi N, Kadowaki T, Komuro I, Yatomi Y, Nagai R. ENPP2 contributes to adipose tissue expansion in diet-induced obesity. Diabetes 2014 Jun 26. (3) Takata M, Amiya E, Watanabe M, Ozeki A, Watanabe A, Kawarasaki S, Nakao T, Hosoya Y, Uno K, Saito A, Murasawa T, Ono M, Nagai R, Komuro I. Brachial artery diameter has a predictive value in the improvement of flow-mediated dilation after aortic valve replacement for aortic stenosis. Heart Vessels 2014 Feb 5. (4) Takata M, Amiya E, Watanabe M, Omori K, Imai Y, Fujita D, Nishimura H, Kato M, Morota T, Nawata K, Ozeki A, Watanabe A, Kawarasaki S, Hosoya Y, Nakao T, Maemura K, Nagai R, Hirata Y, Komuro I. Impairment of flow-mediated dilation correlates with aortic dilation in patients with Marfan syndrome. Heart Vessels 2014 Jul;29(4):478-485. (5) Tomizawa N, Kanno S, Maeda E, Akahane M, Torigoe R, Ohtomo K. In reply to: Minimizing the radiation dose in coronary CT angiography using prospective ECG-triggering, low tube voltage and iterative reconstruction technologies. Jpn.J.Radiol. 2014 Sep 25. (6) Tomizawa N, Kanno S, Maeda E, Akahane M, Torigoe R, Ohtomo K. Minimizing the acquisition phase in coronary CT angiography using the second generation 320-row CT. Jpn.J.Radiol. 2014 Jul;32(7):391-396. (7) Kojima T, Imai Y, Tsushima K, Uno K, Fujiu K, Iiri T, Nishimatsu H, Suzuki T, Sugiyama H, Asada K, Nakao T, Yamashita H, Hirata Y, Nagai R. Temporary dual-chamber pacing can stabilize hemodynamics during noncardiac surgery in a patient with left ventricular hypertrophy and outflow obstruction. J.Cardiothorac.Vasc.Anesth. 2014 Feb;28(1):124-127. 22 世紀医療センター 平成 26 年度活動報告書 (8) Ozeki A, Amiya E, Watanabe M, Hosoya Y, Takata M, Watanabe A, Kawarasaki S, Nakao T, Watanabe S, Omori K, Yamada N, Tahara Y, Hirata Y, Nagai R. Effect of add-on aliskiren to type 1 angiotensin receptor blocker therapy on endothelial function and autonomic nervous system in hypertensive patients with ischemic heart disease. J.Clin.Hypertens.(Greenwich) 2014 Aug;16(8):591-598. (9) Goto M, Abe O, Aoki S, Takao H, Hayashi N, Miyati T, Mori H, Kunimatsu A, Ino K, Yano K, Ohtomo K. Database of normal Japanese gray matter volumes in the default mode network. J.Magn.Reson.Imaging 2014 Jan;39(1):132-142. (10) Takao H, Hayashi N, Ohtomo K. Sex dimorphism in the white matter: fractional anisotropy and brain size. J.Magn.Reson.Imaging 2014 Apr;39(4):917-923. (11) Maeda E, Katsura M, Gonoi W, Yoshikawa T, Hayashi N, Ohtsu H, Ohtomo K. Abnormal signal intensities of the seminal vesicles in a screening population. J.Magn.Reson.Imaging 2014 Jun;39(6):1426-1430. (12) Nemoto M, Yeernuer T, Masutani Y, Nomura Y, Hanaoka S, Miki S, Yoshikawa T, Hayashi N, Ohtomo K. Development of automatic visceral fat volume calculation software for CT volume data. J.Obes. 2014;2014:495084. (13) Takahashi T, Asano Y, Amiya E, Hatano M, Tamaki Z, Takata M, Ozeki A, Watanabe A, Kawarasaki S, Taniguchi T, Ichimura Y, Toyama T, Watanabe M, Hirata Y, Nagai R, Komuro I, Sato S. Clinical correlation of brachial artery flow-mediated dilation in patients with systemic sclerosis. Mod.Rheumatol. 2014 Jan;24(1):106-111. (14) Hayakawa YK, Sasaki H, Takao H, Hayashi N, Kunimatsu A, Ohtomo K, Aoki S. Depressive symptoms and neuroanatomical structures in community-dwelling women: A combined voxel-based morphometry and diffusion tensor imaging study with tract-based spatial statistics. Neuroimage Clin. 2014 Mar 12;4:481-487. (15) Takao H, Hayashi N, Ohtomo K. Effects of study design in multi-scanner voxel-based morphometry studies. Neuroimage 2014 Jan 1;84:133-140. (16) Goto M, Abe O, Aoki S, Hayashi N, Ohtsu H, Takao H, Miyati T, Matsuda H, Yamashita F, Iwatsubo T, Mori H, Kunimatsu A, Ino K, Yano K, Ohtomo K. Longitudinal gray-matter volume change in the default-mode network: utility of volume standardized with global gray-matter volume for Alzheimer's disease: a preliminary study. Radiol.Phys.Technol. 2014 Sep 27. <和文原著> (1) 前田 恵理子. 次世代の画像解析ソフトウェア(No.147) CT colonography 遠隔読影における AZE VirtualPlace 新の使用経験. INNERVISION 2014 06;29(7):134-135. (2) 野村 行弘, 増谷 佳孝, 三木 聡一郎, 花岡 昇平, 根本 充貴, 吉川 健啓, 林 直人, 大友 邦. 【システム開発論文】 遠隔読影環境における多施設連携型 CAD 開発、実運用、および継続的性能改 善. MEDICAL IMAGING TECHNOLOGY 2014 03;32(2):98-107. 22 世紀医療センター 平成 26 年度活動報告書 (3) 三木 聡. AZE Phonix での読影体験 <総説・解説>. インナービジョン 2014;29(1):122-125. (4) 前田 恵理子. 英語発表は怖くない(第 1 回). 画像診断 2014 06;34(8):942-945. (5) 西村 智, 真鍋 一郎, 高木 智, 長崎 実佳, 大津 真, 山下 尋史, 杉田 純一, 吉村 浩太郎, 江 藤 浩之, 小室 一成, 門脇 孝, 永井 良三. 脂肪組織中の制御性 B 細胞は肥満によって起こる脂肪 組織炎症を負に制御する. 細胞工学 2014 03;33(4):434-435. (6) 富澤 信夫, 前田 恵理子, 山本 晃大, 菅野 重明, 赤羽 正章, 鳥越 留美子, 桐生 茂, 大友 邦. 320 列 CT を用いた冠動脈 CT における至適増強効果を得るためのタイミングおよび注入法の検討. 臨 床放射線 2014 04;59(4):541-548. 【学会発表、講演等】 <学会発表・国外> (1) Watanabe A, Watanabe M, Takeda N, Isagawa T, Ozeki A, Kawarasaki S, Manabe I, Nagai R, Komuro I. Mrf-2/Arid5B in Macrophage is Essential for Induction of Vegfa through c-Fos Regulation during Angiogenesis. Keystone Symposia on molecular and Celluler Biology. Metabolism and Angiogenesis (X5) in Whistler, British Columbia, Canada, March 16-21, 2014 2014. <学会発表・国内> (1) 工藤 清宜, 佐藤 智宏, 前田 恵理子, 吉川 健啓, 林 直人, 原 真. 総合画像検診における 技師読影を加えた三重読影 CT 検査における有用性の検討. CT 検診 2014 02;21(1):31. (2) 三木 聡一郎. 臨床画像ビューア AZE Phoenix での読影体験. Japanese Journal of Diagnostic Imaging 2014 02;32(1):24. (3) 三木 聡一郎. 再考・効率よく読影できる画像ビューア. Rad Fan 2014 05;12(6):11. (4) 森 典子, 水口 悠貴, 長崎 実佳, 林 直人, 宇野 漢成, 渡辺 大輔, 安藤 孝, 森本 聡, 市 原 淳弘. アディポネクチン高値は甲状腺結節のリスクを上昇させる. 日本内分泌学会雑誌 2014 04;90(1):298. (5) 高橋 望, 吉野 修, 平池 修, 前田 恵理子, 高村 将司, 齊藤 亜子, 平田 哲也, 甲賀 かを り, 齋藤 滋, 大須賀 穣, 藤井 知行. 卵巣腫瘍に対する MRI T2star 撮像法の有用性についての 検討. 日本産科婦人科学会雑誌 2014 02;66(2):870. (6) 浅羽 研介, 藤乗 嗣泰, 衣笠 哲史, 南学 正臣. 肝移植後の長期経過中に腎機能障害が進 行した症例の臨床的特徴. 日本腎臓学会誌 2014 05;56(3):372. 22 世紀医療センター 平成 26 年度活動報告書 (7) 藤乘 嗣泰, 畠山 沙亜耶, 衣笠 哲史, 浅羽 研介, 南学 正臣. アンジオテンシン受容体遮断 薬の糖尿病抑制機序と腎糖新生. 日本腎臓学会誌 2014 05;56(3):276. (8) 三木 聡. 臨床画像ビューア AZE Phoenix での読影体験 <講演>. 第 33 回日本画像医学会, 東 京 2014.2.21 2014. (9) 西村 智, 長崎 実佳, 矢冨 裕, 永井 良三. オートタキシンは脂肪細胞分化を制御しメタボリッ ク症候群に寄与する. 脂質生化学研究 2014 05;56:129. (10) 岡野 智子, 木村 公一, 大門 雅夫, 中尾 倫子, 川田 貴之, 宇野 漢成, 竹中 克, 森田 啓行, 小室 一成, 矢冨 裕. ラット病態モデルにおける高フレームレートスペックルトラッキング法の 再現性. 超音波医学 2014 04;41(Suppl.):S725. (11) 高安 悦子, 宇野 漢成, 古屋 めぐ美, 大熊 理加, 吉田 夏子, 林 直人, 竹中 克. トロン ビン阻害薬で消失した総頸動脈血栓症の一例. 超音波医学 2014 04;41(Suppl.):S513. 【公募科学研究費補助金による研究】 研究代表者 野村行弘 種目 文部科学省科学研究費 若手研究(B) 研究分野 「医療システム」 課題 「画像データの多様性と医師の診断傾向の変化を考慮した画像診断支援システムの高性能化 」 期間 平成 25~26 年度 研究費 総額 320 万円 【共同研究、受託研究】 研究代表者 林直人 種別: 51001 産学連携-共同研究 総称: 共同研究・コンピュータ画像・林直人・アルフレッサ 目的: 新規バイオマーカーの臨床的有用性における研究 略称: コンピュータ画像・林直人・アルフレッサ 開始日: 2014/07/01 終了日: 2015/06/30 【講演会・研究集会(講座主催)】 第52回22世紀医療センター・産学連携メディカルフロンティアセミナー (第7回次世代コンピュータ支援診断ソフトウェア臨床使用・評価プラットフォーム研究会) 2014年7月27日(日) 9:15~16:00 於東京大学医学部附属病院 入院棟A 15F 大会議室
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