インフルエンザ対策 振り返り

平成26年度 第4回 感染防止対策連携病院カンファレンス
2015/2/23
インフルエンザ対策
振り返り
1)インフルエンザ 平時の備え
2)佐賀大学病院における流行と対策
3)アウトブレイクを未然に防ぐために
過去10年で最大の流行
定点あたりの患者数(佐賀県内10年の推移)
平成27年定点あたりの患者数の推移
佐賀県
10人以上⇒1月7日インフルエンザ注意報
30人以上⇒1月15日インフルエンザ警報
平成26-27年県内地域別の流行の推移
今季のインフルエンザワクチン
23%のみの効果
インフルエンザ
-平時の備え-
症状・診断
症状
・急性発症
・咳嗽
・38℃以上の発熱 ・悪寒
・倦怠感 ・関節痛 ・筋肉痛
インフルエンザ迅速キット
曝露歴、周囲の流行状況
などより総合的に診断する.
ワクチン接種などの影響を受け、症状が軽い場合もある.
迅速キットの感度が十分でなく陰性でもインフルエンザの可
能性を否定しない.
感染経路
飛沫感染
感染している人のくしゃみや咳で出るしぶきを吸い込むことによる感染。
くしゃみや咳をあびる距離(2メートル程度)にいる人は感染の危険性が高い
2メートル
接触感染
感染している人の唾(つば)や鼻水が手から手へ、あるいはドアノブや
つり革などを介して手に付着することなどによる感染
予防
・インフルエンザワクチンの接種
効果持続期間:接種後2週間-5ヶ月
接種回数:13歳未満;2回 13歳以上;1回
・手洗い 手指衛生
・咳エチケット サージカルマスクの着用
・環境調整 室内の加湿加温 空気の入れ替え
・環境清掃
インフルエンザなどのウイルス感染後に肺炎球菌性肺炎
Streptococcus pneumoniae
成人に
推奨されている
ワクチン
肺炎球菌ワクチン接種対象
H26年度より
65歳以上はすべて
定期接種化
65歳以下:脾臓摘出後
慢性心疾患、肺疾患、肝疾患、腎疾患、糖尿病、悪性腫瘍
曝露時の予防投与
• 医療従事者は基本的には行わない.
• 患者は症例毎に予防投与を検討する.
タミフル75mg 1日1回(1回1錠)を7-10日間
 リレンザ5mg 1日1回(2ブリスター)を10日間
 イナビル20mg 1日1回(1キット)を2日間(10日間効果)
•
•
接触後48時間以内に開始
自費
【参考】
2014年より適応拡大
感染対策ICTジャーナルVol.9
NO.1
2014
winter
P29より
病院: 発症者の病室が一つの病室にとどまっている場合は、その同室患者に限定
して予防投与を実施する複数の病室で発症した場合は、病棟全体やフロア全体の予
防投与を考慮する。
高齢者施設: インフルエンザ様の患者が2~3日間以内に2名以上発生し、1名でも
迅速検査でインフルエンザと診断したら、フロア全体の予防投与の開始を考慮する。
院内予防投与マニュアル
参考:日本感染症学会 ホームページより
●病院と高齢者施設での対応
●予防投与対象者の範囲
●インフルエンザ発生時の対応 ●流行拡大時の職員への予防投与
●治療と予防の考え方
など
治療
下記の抗インフルエンザ薬から選択する.
発症後48時間以内の投与が推奨される.
肺炎球菌などの細菌性肺炎を合併する場合もある.その
ような場合には、抗菌薬投与も検討する.
 抗インフルエンザ薬のリスト
一般名
オセルタミビル
ザナミビル
ラニナビル
ペラミビル
商品名
タミフル
リレンザ
イナビル
ラピアクタ
剤型
用法(成人)
薬価(期間全体)
備考
内服
吸入
吸入
点滴注射
1回75mg
1日2回
5日間
1回10mg
1日2回
5日間
1回40mg
1日1回
1日間
300mg-600mg×1
1日間
(複数回点滴可)
3,179円
3,470円
4,280円
6,216円
(300mgバック製剤 単回)
10代へは原則禁忌
吸入不確実な患者(高齢者,幼児,喘息,咳嗽
の強い患者)には不適。
重症患者に適
基本的に効果に差はないが、重症例にはタミフルやラピアクタを.
職員のインフルエンザ対応
【予防】
・インフルエンザワクチン接種
・手洗い、うがい励行
・咳エチケット
・流行時期のサージカルマスク着用 人ごみを避ける
【曝露後 潜伏期間】*インフルエンザ患者との接触がある
・潜伏期間は、常にサージカルマスク着用 体調の管理
・インフルエンザ症状時はインフルエンザとして対応する
→ 受診 迅速検査
迅速検査は発症後24時間を経過して「陽性」となる
ことがあるので、注意する
・臨床的診断でも、インフルエンザとして対応する。
・潜伏期間が終了し、発症がなければ対応終了する。
職員のインフルエンザ対応:発症時
【インフルエンザ発症】
・受診後、治療開始
・報告
(部署師長・医局 → 感染制御部へ)
・就業制限
→ 解熱後2日間もしくは、
少なくとも、5日間は休業とする
→ ワクチン接種により、症状がはっきりしない場合もある
・サージカルマスク着用して職場復帰
→ 咳エチケット
→ 発症後7日間は、特にサージカルマスクを着用する
・濃厚接触者(特に患者)の確認 対応
入院患者のインフルエンザ症状出現
報告
インフルエンザ症状出現
迅速検査
インフルエンザ陽性
インフルエンザ陰性
臨床診断
インフルエンザとして対応
臨床診断で除外
₍複数回の迅速検査₎
通常対応(隔離解除)
インフルエンザとして対応
・退院ができるのか、検討する。(主治医と検討)
・患者へ説明し、飛沫感染対策を実施
・発症者を個室管理とし治療開始する
個室管理が不可能な場合は、カーテンなどで仕切る。
サージカルマスク着用 他の患者との接触をなくす
→ 【注意】 ★曝露者を最小限とする★
同室者は曝露されているため、潜伏期間となっている。
同室者の部屋移動は避け、発症者の移動後は、
潜伏期間の間また、同室者の新たな発症がないのを
確認するまでは患者の入退室を避ける。
・濃厚接触者の確認 同室者の予防投与の検討
・他の患者が発生しないか経過確認する
サーベイランス
インフルエンザおよびインフルエンザ様症状
●病院内の職員全員を対象とする。
→ 報告すべき内容を明確にしておく
例)インフルエンザ陽性者
風邪症状あり 発熱あり
など
●目的
:
アウトブレイク察知
インフルエンザ対策評価
●報告体制の確立
症状出現時に速やかに報告できる
体制の確保と周知が必要
INFECTUON CONTROL 2014 VOL.23 NO.11(1083~1084) P39~40 より引用
アウトブレイクの基準と対応(厚生労働省基準)
院内感染のアウトブレイクを疑う基準
1例目発見から4週間以内に、同一病棟において同一菌種による感染症の発病症例
が計3例以上特定された場合.(VRSA、MDRP、VRE、MDRAは保菌者も含む)
医療機関内の初動対応
上記場合、感染対策委員会もしくはICTは会議を開催し、1週間以内を目安に院内
感染対策を策定し実施する.
地域連携ネット-ワークへの支援要請
感染拡大の防止に向けた支援を依頼する.
保健所への報告
同一医療機関内で同一菌種による感染症の発病症例が10名以上となった場合(上
記4菌種は保菌者も含む)または、院内感染事案との因果関係がひていできない死亡
者が確認された場合は速やかに報告する.また、このような場合に至らない時点におい
ても、医療機関の判断の下、必要において保健所に連絡・相談することが望ましい.
参照
メール①
厚生労働省医政局指導課「. 院内感染対策中央会議提言について」事務連絡. 平成23 年2 月8 日.
http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20110208_01.pdf
厚生労働省医政局指導課長「. 医療機関における院内感染対策について」医政発0617 第2 号.
平成23 年6 月17 日. http://www.hospital.or.jp/pdf/15_20110617_02.pdf
平成27年1月22日
インフルエンザ感染症拡大防止のための緊急対応について
1月に入り,インフルエンザ感染症が猛威をふるっており,当院 入院患者および医療スタッ
フにも多数の罹患者が発生しています。 一部署での患者発生状況がアウトブレイクに近いこ
と,および 患者1名が重症呼吸不全を発症したこと等を受け,この状況について佐賀中部
保健福祉事務所に届け出を行っています。
通年の対応では防止できないほどにインフルエンザが発生しており, 昨日より学生実習も一
部中止し,本日は全病院規模で面会制限に準じた対策を敷く等,例年にはない対策の実
施を余儀なくされています。 つきましては,以下の事項を確認・遵守して頂き,各自がインフ
ル エンザ拡大防止に尽力して頂きますようお願いいたします。
【遵守事項】
・各病棟/部署,中央診療部門スタッフはマスク着用+手指消毒を厳守する
・熱感や咳を自覚する場合,あるいはインフルエンザの診断を受けた場合は感染制御部へ直
ちに報告する
・各診療科の定期回診等は不急の場合は行わない
・ウイルス感染様の症状がある患者のリハビリテーションは病状回復まで休止する
・不要不急の集会を持たない
・医局や各部署休憩室に入る前にも手指消毒を行う(居室にウイルスを 持ち込まない)
・家族にインフルエンザ罹患者がいる場合は,自己検疫を行う
メール②
平成27年1月23日
インフルエンザ対策のお願い
各診療科において,待機入院患者に入院の連絡する場合,
1)患者さん本人の風邪様症状がないか
2)同居のご家族にインフルエンザと診断された方がいないか
上記二点について,入院前に必ず電話で御確認下さい。
原則的対応
1)の場合:症状の消退を待って入院して頂く
2)の場合:a.無症状であれば入院後3日目まで症状観察
b.有症状であれば1)の対応と同じ
メール③
平成27年1月26日
インフルエンザ対策のお願い
入院患者のインフルエンザ発生は下降傾向にありま
すが,まだ油断は できません。医療従事者の罹患
者が毎日認められます。 市中で感染し院内に持ち
込むことがないよう,また,就業制限 を余技なくされ
ることがないよう,基本的対応として,職員各自で
下記 のインフルエンザ罹患防止に最低限務めて頂き
ますようお願い致します。
・外出後の手指衛生を厳守する
・不要不急の集会を可能な限り避ける
・人ごみに混じる時はマスクを着用する
・家族から罹患しないよう最新の注意を払う
医療スタッフの曝露経路
家族
勤務先
・医療スタッフ
・患者
医療スタッフ
コミュニティー
入院患者の曝露経路
医療者
インフルエンザ
入院患者
・医師
・看護師
・薬剤師
・検査技師
・リハスタッフ
・学生
入院患者
面会者
院内施設
・食堂
・コンビニ
・コーヒーショップ
・自動販売機
インフルエンザ 強化対策
○インフルエンザ患者の個室隔離、コホーティング
○熱、症状サーベイランスの強化
→全部署、毎日確認症状ある患者確認と
スタッフへの指導(1/23~2/2)
○インフルエンザに曝露された患者への予防投与
→アウトブレイク時は積極的に推奨
○曝露された職員への予防投与
→明らかに院内での曝露者へ推奨
インフルエンザ 強化対策
○面会について
→全ての面会者のマスク着用
病院入口へマスク設置使用促すポスター
○ベッドコントロール・入院制限
→全部署のインフルエンザ状況を看護部と共有
○院内職員への周知
→メール配信、ニュースレター、ポスター、
病院運営協議会、チーフレジデント会議で報告
○横断的診療部門への周知 (リハビリテーション)
→インフルエンザ対策を説明
平成27年1月22日
リハビリテーションにおけるインフルエンザ対策 緊急会議
【インフルエンザ予防対策】
毎日体調管理に努める。風邪症状がないか確認
手洗いの徹底 (患者毎に)
マスク着用の徹底(鼻からあごまで必ず覆う)
必要時はエプロン着用
リハビリ前には、必ず患者の状況を確認する
発熱などかぜ症状がある場合には、インフルエンザが否定されるまで
リハ中止
インフルエンザと診断された患者のリハは中止
現在インフルエンザが流行している○○病棟ではすべてリハ中止
【スタッフに風邪症状がある場合の対応】
鼻汁、咳嗽、発熱がある場合には、リハ中止
感染制御部に連絡して病院受診
インフルエンザ流行時期中の
アウトブレイク対策
~アウトブレイクを未然に防ぐために~
①インフルエンザウイルスを
院内に持ち込まない
②流行状況の把握
③院内サーベイランス
④インフルエンザ発生の早期発見
適切な対応対策
⑤予防投与と治療
①インフルエンザを院内へ
持ち込まない水際対策
・病院入口にポスターの案内
・サージカルマスクの着用 設置
・面会制限
・新規入院のスクリーニング
など
新規入院時患者のスクリーニング
インフルエンザ様
症状なし
通常の入院対応
インフルエンザ様
症状あり
インフルエンザの迅速検査
陽性
・状況により入院延期
入院必要時は、個室対応
1週間以内に
同居する家族が
インフルエンザに
罹患した
陰性
・状況により入院延期
感染が否定されるまでは、
個室対応
感染症状がなければ入院
ただし、罹患した同居家族と最終接触から2日間は発症に注意する
多床室
入院後2日間(潜伏期間)はカーテンによる隔離
サージカルマスク着用
個 室
入院後2日間は、サージカルマスク着用
②流行状況の把握
平成27年 第4週(1月19日~1月25日)
平成27年 第5週 佐賀県報告
患者報告数は減少し(2,731名→1,635名:A型1,572名*、B型16名*、型不明47名)、
定点当たりの患者報告数は41.92となりました。流行発生警報は継続中です。
③院内インフルエンザ サーベイランス
・報告体制の確立
・インフルエンザの報告
・インフルエンザ様症状
・積極的なサーベイランスの実施
④インフルエンザ発生の早期発見と適切な
対応対策
・インフルエンザ患者の早期診断
・インフルエンザ患者は、個室隔離を行う
・複数の場合は、コホート隔離を行う
・流行時期は、疑い患者も隔離対象とする
できる限り、曝露者を最小限にする
⑤予防投与と治療
流行時期:アウトブレイクと察知したら・・・
・患者発生が1部屋であれば、同室患者の
予防投与を行う
・複数の病室から患者が発生すれば、病棟
やフロア全体での予防投与を考慮する
・適切な感染対策が講じられていなかった
職員も予防投与を考慮する
・疑い症例でも治療を考慮する
<アウトブレイクの察知とは?>
最近、耐性菌増えたような気がするね。
インフルエンザ発生の場合は、
最近、その耐性菌の名前よくきくよね。
同部署から1名でも発生したら、すぐ適切に
対応する。
アウトブレイクの予感
患者が2名以上出現すれば、対策を強化する
アウトブレイクがおこる前に、
もう一度感染対策の確認を!
まとめ
・毎年、平時の備えが重要.
・アウトブレイクを察知するために、
院内サーベイランスを行う必要がある.
・アウトブレイクの兆候を察知した場合に
どのような対応をとるべきか各施設毎の
備えが重要である.