メコンデルタの catfish 養殖 種名: Pangasianodon hypopthalmus (SAUVAGE 1878) ベトナム名: ca tra 養殖方法: ふ化育成場でホルモン打注により得た人工採卵ふ化魚をワムシ、ミジンコ及び配合飼 料により育成し、体長 10-12cm サイズの種苗を購入して池入れを行っている。(種苗生産技術は 1990 年代にメコンデルタのふ化場で開発された)種苗単価は 800d-1.700(6-12 円/尾)である。 養殖方法はメコン河の河川水を利用した素掘り池養殖方法である。代表的な池の大きさは広さ 9000 ㎡深さ 3.5m、であり、約 6 年間の償却で建設している。 (その他メコン河で網生簀養殖等も 行われている)。種苗の池入れ密度は 50 尾/㎡である。養殖飼料は自家製造した配合飼料を用いて おり、蛋白含量 25%のモイストペレットを 1 日に 2 回給餌している。Catfish は低蛋白質要求の 魚種であるため餌生産コストは安い。餌料係数は約 1.45 で 1.1kg の増体重量に対して 1.6kg の餌 を必要としている。(2006 年度のベトナムでの catfish 養殖生産量は 800,000 トンであり、これ に使用された蛋白量は 800,000 x1.45 x0.25=290,000 トンと推定される。)餌料単価は 4.400d /kg(30 円/kg)である。養殖は 7 ヶ月間サイクルで行われ、種苗池入れ後 7 ヶ月で魚体重 1-1.5kg (平均 1.1kg)サイズ魚をとり上げている。養殖期間中の生残率は教科書では 85%と記されてい るが、聞き取り調査での平均生残率は 70%(50−85%)であった。養殖生産魚の販売単価 14.000d-17.000/kg(98-119 円/kg)である。とり上げ終了後に池の底ヘドロは浚渫し、常に池環境 の保全を行っている。(メコンデルタのメコン河川水は泥を含んだ茶褐色を呈している。) (1.000d=7 円) 養殖試算例 項目 費用 費用比 1)池建設費(設備費を含む) 185.000.000d(1660.000.000dx1/6 年) 5% 2)種苗費 360.000.000d 9% (800d/尾 x50 尾/㎡ x9000 ㎡) 3)餌料費 2.962.000.000d 75% (4.400d/kg x1.6kg x1.1kgx 450.000 尾 x85% 4) 労務費他(含む人件費 4 人分 420.000.000d 11% 生産経費(1+2+3+4) 3.927.000.000d (2,749 万円) 5)生産魚販売費 5.433.000.000d (販売単価 14.000d/kg) (池上げ重量 420 ㌧ x14.000d/kg −池上げ経費) 6)生産利益 1.506.000.000d (1,054 万円) メコンデルタの catfish 養殖生産量は 1990 年から 2003 年までは年間約 100 ㌧であったが、2004 年は 200 ㌧、2005 年は 400 ㌧、2006 年は 800 ㌧と急激に増大している。Catfish 養殖魚の多く は冷凍フィレとして加工輸出されており、ベトナムからの輸出拡大により 2006 年にはアメリカ の catfish 養殖との競合を生じ国際的な貿易問題を生じている。現在ベトナムでは餌コストを下 げるためのモイストペレットからドライペレットへの転換、疾病防止のためのワクチン開発、養 殖場環境保全の調査がベトナム国立第 2 養殖研究所及びカントー大学が中心となり積極的に進め られている。 参考)KS. NGUYEN CHUNG KY THUAT SINH SAN & NUOI CA TRA 2008.6 2007 HCMC 石橋矩久
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