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つくばチャレンジ 2010 参加レポート
○市野陽太,山崎亮一,一条祐輔,川原拓也,高島生弥,坂本
1.
巧(金沢工業大学)
方位推定と障害物回避の 2 つの役割を担う.ロボット
はじめに
金沢工業大学では,学科・学年の垣根を越えた課外
でのものづくり活動として夢考房プロジェクト
1)
の前方,地上 15cm の高さをスキャンするよう取り付
を推
けている.自己位置推定は,DGPS から得られる確度
進し,現在 13 プロジェクトに 470 名の学生が参加して
情報を基に,その閾値 2.5 以下で GPS 座標,それを超
おり,その内の一つにつくばチャレンジを目標とした
える場合は,空間環境地図を用いる.方位は常に空間
自律走行車プロジェクトがある.このプロジェクトは,
環境地図により求めた値を使用する.車両の速度検出
2006 年に発足し現在 22 名の体制で活動しており,こ
のために車両中央の左右に従輪を設置し,ロータリー
れまで 2 台の自律走行ロボットを開発してきた 2).
エンコーダにより測定し,速度制御をおこなっている.
2009 年に開発した 2 号機は,ロボットの進行方位の
検出精度に問題があり,磁気センサによる検出は,鉄
前輪の操舵は,ポテンショメータによる角度制御によ
り行う.速度ならびに角度制御は PI 制御を用いる.
Input
筋構造の建物の近くや傾斜の走行によって確度が低く
なり,経路追従を継続できなかったことから,2 号機改では,方位センサを用いず,測域センサ(Top-URG)
PC
Top-URG
を用いた地図のマッチングで方位を推定することとし
た.また,2 号機では,7 種類のセンサを使用していた
DGPS
が,2 号機-改では,4 種類のセンサとし,より少ない
センサで多機能を実現
R
wheel
するべく簡単化および
最適化を目指した.本
R
Left
Right
R : Rotary encoder
成を示し,これら課題
の対策について述べる.
ロボットの構成
2.1
機構
Micro
computer
Motor
M
drive
r
Left rear
wheel
Motor
M
drive
r
Right rear
wheel
Motor
M
drive
r
P
Steerin
g
Angle
稿では,2 号機-改の構
2.
Output
Controller
図3
図1
2 号機‐改
2.3
経路追従
(1)
経路と追従方法
M : Motor
P : Potentiometer
制御システム構成
ロボットは,4 輪車両で,後輪 2 輪を 2 つのモータ
経路は,あらかじめ GPS 測定して設定した way point
で駆動,前輪 2 輪にアッカーマン式操舵機構を採用し
を線で結んで作成しておく.経路への追従は,GPS 座
ている.車両中央部に回転式リ
標または空間環境地図により求めた自己位置と経路と
ンクを設けることで,複雑な機
の距離を偏差とし,その差が零となるよう,操舵する.
構を用いずに,4 輪を地面に設
操舵量は,偏差と比例ゲインを掛け合わせて算出する.
置できるようにし,エンコーダ
(2)
を用いた速度検出などで,タイ
ヤの空転を防いでいる.
2.2
空間環境地図
空間環境地図は,予めコースを走行し,測域センサ
図2
リンク機構
2 号機-改の制御システム構成
を用いて計測した 2 次元プロットを GPS 座標と関連付
けて作成する.図 3 は,本学 7 号館周辺にて実験走行
制御システム構成を図 3 に示す.測域センサは,1
している様子を示したものである.建物,壁や生垣な
つのセンサで空間環境地図による自己位置推定および
どの特徴的な形状を記憶しておき,走行中に取得する
形状とのマッチングにより自己位置を推定する.空間
1 回目のトライアル走行は,40m 付近で障害物を避
環境地図から得る値は,GPS に対応した座標とロボッ
けた後に同じ場所を旋回し続け,経路に復帰すること
トが進行中の方位の 2 種類である.
ができなかったため停止させた.2 回目は,スタート
直後の直進する経路で,障害物を回避後に右折してし
まい,経路に対して垂直方向に 30m ほど走行し,同様
に復帰できなかったので 50m 地点で停止させた.
(2)
推定方位
原因分析
経路に復帰できなかった最も大きな要因は,空間環
推定位置
境地図による自己位置推定と進行方位推定の信頼性が
低かったことである. 2010 大会コースの特徴として,
スタート直後の 60m 付近まで,特徴的な形状となる点
図3
空間環境地図(本学 7 号館周辺)
が少なく,空間環境地図にて進行方位を正確に把握で
マッチング方法は,地図の二次元配列データと走行
きない場合が多くあった.またギャラリーのような動
中に取得する二次元配列データを,検索範囲内(図 3)
的物体が多い場合も同様である.これらの問題は,想
で重ね合わせ比較することで行い,重なっている数が
定してはいたものの,具体的な対策まで施すことがで
最も多い位置を自己位置として推定する.検索範囲は,
きなかった.
ロボットが移動可能な位置として予め定めておき,こ
4.今後の課題と方針
れが広すぎると検索に時間を要するため,実験により
今後の課題は,空間環境地図による自己位置推定お
適切な範囲を決めた.2 号機では,この検索に 40 秒な
よび進行方位推定の信頼性を高くすることである.現
いし 1 分かかっており,実用的でなかったものを,2
在は,地上 15cm 一定の高さをスキャンして 2 次元空
号機-改では,地図の検出速度を早くするため検索範囲
間を扱っており,比較対象となる特徴点の数が少ない
内を更に分割して,並列的に処理したことで 1 秒以内
ため環境の変化に対応できていない.今後は,3 次元
に高速化し,実装することができた.
的に空間を把握することで,この問題に対応できない
2.4
か検討する.
障害物回避
障害物回避は,測域センサを用いて周囲の物体を測
定し,前方 2m
180 度の半円内に物体が入ると障害物
更に,何らかの原因で経路から大きく外れてしまっ
た場合など,これまで復帰が難しかった状況を分析し,
として認識し,回避行動を取る.障害物が無く,ロボ
確実に経路に復帰できるアルゴリズムを開発したいと
ットの幅が通過可能である範囲を検索し,その範囲の
考えている.
中央を通行するよう操舵する.更に,50cm 未満に物体
5.
おわりに
が侵入した場合は,一時停止した後,後退して,障害
最後に,講習会やインターンシップを通して測域セ
物が無くロボットが通過可能な範囲を検索するプログ
ンサの応用について技術的な支援をしていただいてい
ラムを制作した.障害物回避の信頼性は高く,通常の
る北陽電機株式会社,このような自律移動ロボットの
障害物,歩行者とのすれ違いによる接触を避けること
大会を運営し,良い機会を与えて下さったつくばチャ
はもちろん,歩行者の追い抜きも可能である.
レンジ大会関係者の皆様に深く御礼申し上げます.
3.つくばチャレンジ 2010
(1)
大会結果
本チームの結果は,トライアル走行 240m 中 1 回目
41m,2 回目 50m であり,ファイナル走行に出場する
ことができなかった.
文
献
1) 出村公成 他:金沢工業大学における夢考房プロジェクト教
育, 工学教育, 第 54 巻, 第 6 号 (2006)
2) 坂本巧 他:自律走行ロボットの開発―経路追従と道路検出
―,SI2008 予稿集