戦略的経営階層概念等の整理 中 嶋 康 晃 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 1 戦略的経営階層概念図 戦略的経営 経営目的 =経営理念 +経営目標 マーケッティング 経営理念: 企業理念/ミッショ ン/ ビジョン/クレド/社是・社 訓・家訓/行動規範/価値観 3.0 価値観主導 (Windows95→20 00年代~) + 経営目標:CSR、重点テーマKGI、 売上高、ROIC[投下資本利益率]、 ROE、株式時価総額等 経営方針 戦略 経営戦略: 事業領域の選択/IT経営戦略・企業戦略 マーケッティング 2.0 (STP) 顧客志向 戦略的マーケティング/事業戦略/競争戦略 (石油ショック→高度 成長期) SWOT分析/事業課題等の抽出 ビジネスモデル図式化 マーケッ ティング 1.0 (4P) 製品中心 作 戦 戦略と 戦術の 結節点 戦 術 機能別戦略(マーケティング戦略、 SCM戦略、販売戦略、 生産戦略、等。)≒戦術のマーケッティング・コンセプト確立 (産業革命→1945年 (戦後)→) ランチェスター 戦略 マーケッティング目標設定→標的市場(STP)の選定 日々の仕事 兵 站 マーケッティング・ミックス(4P)の策定→マーケッティング管理(KPI)→PDCA(行動) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 2 ピーター・ドラッカー 曰く 『経営コンサルタントや学者が、いくつかの成功事例か ら法則性を導き出して、勝ちパターンや分析モデル図を 作り上げ、そのモデルに採用した言葉の定義(経営戦略 論)を説明することは、「時間の無駄」』 『但し、勝ちパターンの限界や、分析モデルの限界(社 会や企業は生き物であり、変化する。よって固定したモデ ルで全てを割り切ることはできない)を十分理解した上で 使うのであれば構わない。』 *********************************************** 上記のドラッカーの指摘は、前頁の「戦略的経営階層の構造思想(アーキテクチャー)」 そのものを否定している訳では無く、階層の各々の箱の内容に対する警告である。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 3 アインシュタインが伝えたかった事は? 『 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1178425166 』 固定観念を捨てろ! 常識を疑え! 分からなければ学べ! 相対性理論というのは、自然界の法則は 日常の常識が通用しないことを教えてくれた。 20世紀に発展した量子力学もまったく我々 の常識が通用しない。固定観念を抱いてい てはとても理解できない。柔軟な発想が必要 だということ。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 4 成功は学べない 『 http://bizgate.nikkei.co.jp/article/84531315.html 』 ビジネスはアートである。 成功した企業のやり方が唯一絶対の正解ではない。 複数の解の1つを実行して、"たまたま"成功した他 社の事象を「後付け」で分析し、成功要因を抽出するこ とはできても、それが、本当に再現性があるかどうか は甚だ疑問。特に、成功した企業の状況(コンテクスト) と自社独自の状況が違うため、同じことを実行しても、 成功した企業と同じように成功するとは考えにくい。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 5 戦略は事前に作れるのか? 『 http://bizacademy.nikkei.co.jp/management/career/ 』 ミンツバーグは、「CraftingStrategy(戦略を作る)」という 論文で、「戦略とは事前に計画されるものではなく、実際にビ ジネスを進めて顧客の反応を知り、現場の声を聞き、試行錯 誤の上にわき上がってくるものだ」と主張した。 実際「当初の事業構想」と「最終的に成功した事業の形」が 異なる例は、枚挙にいとまがない。計画・戦略への過度の依 存は「絵に描いた餅」にもなりかねない。 いま大成功している企業の事業モデルの多くは、「とにかく 事業を始めて」「現場や顧客の声を聞き」「他社や仲間の意 見を聞いた」結果として、事後的にわきあがってきたもの。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 6 「ユニチャーム 高原豪久社長の経営者ブログ」より (1/2) 『 http://www.nikkei.com/article/DGXMZO79362320W4A101C1000000/ 』 戦略の目的は「価値=利益の最大化」にある。市場で最適な陣地 取り(ポジショニング)によって競争そのものを少なくする。それが利益を最大化する 可能性が高まる。しかし、経営戦略は我々全ての人間を幸福に するためのものであるべきという前提のもと経営を行っている。 もう一つの問題は、経営を科学としてとらえ徹底的に分析した結 果、普遍的な原則=モデルを確立しても、現実の世界で は全く同じ現象は二度と起こらないということ。現実的には、特定の時間、 場所、人、もの、競合,顧客との関係性の中で生じる個別具体的な状況の中で 「最善の意思決定と行動」が要求される。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 7 「ユニチャーム 高原豪久社長の経営者ブログ」より (2/2) 「個別事例」と「普遍的事例」 (ビジネスモデル)をいかした『ハイブリッドな戦略』を開発 すべきだと確信し、「共振の経営」を実践している。 この戦略を実践するには、日々の業務を通じて触れる個別具体 的な事象から質の高い経験を重ね、質の高い「暗黙知」 いわゆる「カン・コツ・急所」を積み重ねていくことが肝要。 それぞれの事例から方法論だけを学ぶのではなく、科学的分 析による理論とのバランスをとること。そうすることで有効な形で現場での 欧米型の科学的分析手法を活用しながら、 理論の応用ができるようになる。更に、 いわゆる教養も必要。その国や取引先・ 企業の歴史や文化、宗教や哲学や文学などの背景にある 価値観を 知っておくべき~~。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 8 この頁は、ブランク頁です。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 9 目 次 Ⅰ.戦略的経営階層概念の体系 Ⅱ.戦略的経営階層概念等の内訳 Ⅲ.「経営理念」の細目 Ⅳ.戦略的経営階層概念による 「経営の概要理解」の事例 12頁 22頁 71頁 111頁 当資料は、本日の説明のために作成したものであり、著者/訳者/発行所等の了承無 く引用・転載していますので、著作権等の取扱にご注意下さい。 (なお、当資料の参照は、閲覧のみとし、印刷不可です。ご了承下さい。) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 10 コラム等の一覧 01.戦略と戦術の違い等 18頁 3P) 02.事業領域の選択 26頁 (2P) 03.経営戦略論等の歴史概略 28頁 (1P) (別添1.「経営戦略論等の歴史概略v1.00 」.xlsx) 04.ビジネスモデル 33頁 (4P) 05.俯瞰 37頁 (4P) 06.「光と俯瞰」 41頁 (14P) (別添2.「光と俯瞰v1.00」.pdf) 07.ドラッカーの「山荘コレクション」より 51頁 (1P) 08.マズローの欲求5段階説 56頁 (10P) 09.年功尊重 66頁 (4P) 10.稲盛氏の経営哲学と中国 77頁 (2P) 11.社員満足度と顧客満足度 84頁 (3P) 12.桶板の理論 123頁 (1P) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 11 Ⅰ-1.「マーケティング戦略」の体系 中小企業診断士一次試験(1995年頃)対策用整理ノート 経営目的 :( 経営理念 [ミッション+ビジョン]+経営目標 ) 経営戦略/事業戦略/競争戦略 SWOT分析/事業課題等の抽出 ビジネスモデル図式化 マーケティング・コンセプト確立 診断士試験改変 第2期(1980年以 降の):「経営戦略 型学習モデル」 マーケティング目標設定 標的市場の選定 マーケティング・ミックスの策定 マーケティング管理、PDCA 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 12 Ⅰ-2.マーケッティングの進化 戦略的マーケティング(strategic marketing) [マーケティングは、1970年代の石油ショツクに始まる景気の悪化の時 期に、製品需要を刺激するために、戦術的な次元から、より戦略的な次元 に進化。効果的な需要創出のためには、「製品」に代えて「顧客」を中心に 据えるべきだということを理解した。 セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング(STP)などの戦略を 含む顧客管理の考え方が導入された。それ以来、4Pの確立よりもSTPの 確立が一貫して重視され、戦略的マーケティング・モデルの導入は、近代 マーケティングの誕生を告げた。これが「マーケティング2・O」の出発点。] (注、「4P[マーケッティング1.0]は、製品中心の考え方」) =事業戦略(business strategy) =事業別の競争基盤の改善・改革に関する経営戦略 =事業別の競争戦略(competitive strategy) :マーケティング戦略(marketing strategy)の上位概念 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 13 Ⅰ-3.フィリップ・コトラーの概念を追加 経営戦略/事業戦略/競争戦略 SWOT分析/事業課題等の抽出 ビジネスモデル図式化 マーケティング・コンセプト確立 マーケティング目標設定 標的市場の選定 マーケティング・ミックスの策定 マーケティング戦 略 以前のマーケティング戦略 経営目的 :( 経営理念 [ミッション+ビジョン]+経営目標 ) 戦略的マー ケティング 中小企業診断士一次試験(1995年頃)対策用整理ノート +フィリップ・コトラーの概念(2000年頃)を追加 マーケティング管理、PDCA 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 14 Ⅰー4.『戦略(的)経営階層』概念との出会い (1994年) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 15 この頁は、ブランク頁です。 2015/07/20 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 16 Ⅰ-4. 「機能別戦略」以下を追加 (垂直統合) 戦略的経営 経営目的 =経営理念 +経営目標 経営理念: 企業理念/ミッショ ン/ ビジョン/クレド/社是・社 訓・家訓/行動規範/価値観 + 経営目標 (ROE[経営資本利益率]、 財務的な売上や利益目標) 経営方針 経営戦略: 事業領域の選択/IT経営戦略・企業戦略 戦略的マーケティング/事業戦略/競争戦略 SWOT分析/事業課題等の抽出 ビジネスモデル図式化 機能別戦略(マーケティング戦略、 SCM戦略、販売戦略, 生産戦略、等。)≒戦術のマーケッティング・コンセプト確立 マーケッティング目標設定→標的市場の選定 日々の仕事 マーケッティング・ミックスの策定→マーケッティング管理・PDCA(行動) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 17 コラム.01 「戦略と戦術の違い等-1/3」 『 http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1204/19/news008.html 』 資源の配分を 決めること。= どの事業に参 入するか、どの 事業にどれだ け人を投入す るか。 与えられた 資源を活用 するための 方法=決め られた事業 の業務目標 を達成する 方法を決め る Logistics 戦略とは大局的で長期的なものの見方。 達成したい大きな目標を達成するための、大雑把な道筋。一度決めると、簡単には変えられ ない。戦術:さらに具体的、詳細な方法。目の前にある仕事に近い形で、短期的なものの見方、柔軟に変化し得るもの。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 18 コラム.01 『 「戦略と戦術の違い等-2/3」 http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/1204/19/news008.html 』 会社の経営はよく戦争に例えられます。「戦略」「戦術」「武器」など、戦争用語 が頻繁にオフィスで語られます。ただし、戦略と戦術がゴッチャになっていたり、 戦略なき戦術を一生懸命に考えたりする無駄もよく見られます。言葉の定義は 大変重要で、おろそかにすると大きなコミュニケーションミスを招きます。そこで、 戦争そのものに照らしあわせたときに、会社の経営はどのような流れであるべ きかを図解してみました。 言うまでもなく、会社は1つの理念の基に存在しています。理念は存在意義の ようなもので、変更することはありません。ただし、戦略は理念の基に会社を維 持していくために数年ごとに変わっていくのが普通です。会社経営をピラミッドに 例えると、不変の理念の基で最も重要なのは「戦略」です。 1.物語のシナリオを描く 戦略はStrategyです。目的を達するための「シナリオ」です。映画だってシナリ オがなければ、出演者もロケ地も、シーンも決まりません。投資家もお金を出し てくれません。シナリオは一番大事で、なおかつ大きな視点です。どの業界にお いて、どのようなポジションの会社にするか? どのような魅力や優位性がある 企業に育てるか? こうしたことが戦略になります。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 19 コラム.01 「戦略と戦術の違い等-3/3」 『 http://www.itmedia.co.jp/bizid/articles/1204/19/news008.html 』 2.プロジェクト全体の指揮を取る 次に、戦略を実行する各プロジェクトが「作戦」です。第2次世界大戦中に連合国がヨー ロッパで実施した「ノルマンディー上陸大作戦」のように、成功するかしないかを決定づけ る重要なプロジェクトが作戦です。英語的にはOperation。私の名刺にも「COO(Chief Operative Officer)」と肩書が書いてありますので、各作戦が成功するようにリードしてい かねばならない立場にあるということになります。通常、戦略を実行するために多くのプ ロジェクトが並行して進むものです。その全てに目を配り、成功させることが目的となりま す。 3.戦術は、その次です。これは各プロジェクトを成功させるための具体的な戦い方です。 兵士を何人投入するか、どんな兵器で戦うか、どこから攻めるのか、といったことを決め ます。企業においては、現場をどのようにリードしていくかということになります。英語で はTacticsです。 4.そして、一番下が戦術(兵士・兵器)をサポートする後方支援(combat service support)。物資輸送、労務管理、環境の構築や整備などあらゆるサポート業務が入りま す。 多くの人は素晴らしい新製品を作る、広告宣伝を派手にやる、営業部門を増員するといったことを「戦略」だと考 えるようですが、これらは企業経営全体から見れば「戦術」の領域です。作戦、戦術、後方支援をつかさどるリー ダーは会社全体のシナリオを頭に入れながら現場活動をしなければなりませんし、経営者(自責の念も込めて)は、 それをしっかり末端まで伝えていかねばなりません。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 20 Ⅰ-5. 戦略的経営階層概念の区分の明確化 戦略的経営 経営目的 =経営理念 +経営目標 経営理念: 企業理念/ミッショ 経営目標 ン/ ビジョン/クレド/社是・社 訓・家訓/行動規範/価値観 ビ ジ ネ ス モ デ ル (ROE[経営資本利益率]、 財務的な売上や利益目標) 経営方針 戦 略 or + 戦 略 経営戦略:事業領域の選択/ IT経営戦略・企業戦略 戦略的マーケティング/事業戦略/競争戦略 戦略 作 戦 SWOT分析/事業課題等の抽出 ビジネスモデル図式化 戦 術 マーケッティング目標設定→標的市場の選定 ? 戦 術 機能別戦略(マーケティング戦略、 SCM戦略、販売戦略, 生産戦略、等。)≒戦術のマーケッティング・コンセプト確立 日々の仕事 兵 站 マーケッティング・ミックスの策定→マーケッティング管理・PDCA(行動) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 21 Ⅱ-1.戦略的経営階層概念等の内訳 戦略的経営 =アンゾフ(H.Ⅰ.Ansoff)の著書“Strategic Management”の訳語 1. 経営戦略を経営計画の中核に据え、戦略の管理化を進め、戦 略性に富んだ組織運営を図るマネジメントのこと 2. 経営戦略に準拠して経営管理(マネジメント)を行うこと 3. 経営戦略の経営組織への適合の必要性を主張する経営思想 経営目的 =経営理念+経営目標 1. 企業の継続的存続発展を図ること 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 22 Ⅱ-2.戦略的経営階層概念等の内訳 経営理念 1.企業理念(事業に対する主体的姿勢を表明した経営構想) :経営の基本方針(basic policy) :経営のよりどころ、経営の理念的目的 2.ミッション (企業の存在理由) [≠使命、任務、業務命令] :事業メンタリティを明示した対社会的な内容のネーミング :[ 創業時に定められることが多い 。] 3.ビジョン :(企業のありたい姿、企業の望ましい未来像・展望、 理想的な経営、目指す姿) [但し、言葉の定義に対し異論有り] 4.クレド:(ラテン語で「志」「信条」「約束」を意味する言葉) 5.[日本の老舗企業では、古来から]社是・社訓・家訓 > 6.行動規範 [governance code] 7.価値観 [one‘s sense of values] :マーケッティング3.0の中核 : ≠従来の「いわゆるValues」や、「値打ち」 :=信念 :=中核的価値(コア・バリュ-)、共有価値(企業文化の半分) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 23 Ⅱ-3.戦略的経営階層概念等の内訳 経営目標 1.経営活動が目指す到達点(goal) : 達成度をもって組織活動の評価尺度とするため、目標年度にお ける経常利益、ROE等の明確な数値目標項目と、測定/評価 可能な目標レベル (例:社員満足度、顧客満足度、株主満足度、 パートナー満足度、地域社会貢献度等のKGI)として提示される。 経営方針 1.経営理念を基本とした、経営目標の達成方針 2.経営計画や経営管理活動に対する指針(action guide) :経営理念や経営目標の手段 :中長期経営計画、年度事業計画に展開される :「経営目的」、「経営方針」とかいう場合、どこまでが目的で、どこ からが方針か定かではなくなってきている。我々の目標が、単 一の目標(=利潤最大化)ではないからである。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 24 Ⅱ-4.戦略的経営階層概念等の内訳 経営戦略(corporate and business strategy) ①.市場環境変化・外部環境変化へ適応し続ける経営方針の 戦略の内容を 指す、及び、経済的目的を達成するための抜本的な方策 ②.長期的な経営目標を明確にし、それとの関係において経営構 造(経営資源の 組合せ)を市場環境に適合するように変革し、新しい製品市場をつくりあげる具体 的方策 1.経営戦略の中で最上位戦略は、事業領域の選択 1).事業領域の革新問題:(経営多角化、 垂直統合、 経営国際化, 事業撤退、 M&A等。) (「土俵を変える」、「舞台を選ぶ」、「街を移る」等は、活動領域の選択 ) 2). レッドオーシャン市場 vs ブルーオーシャン市場 (*).マイケル・ポーターの「競争戦略論」は、レッドオーシャン市場内限定の戦略モデル 3).現在では、ITを有効活用した「IT経営戦略」により、ブ ルーオー シャン市場を構築可能 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 25 コラム.02 事業領域の選択 供給構造 供給A 供給過小 供給B 供給過小 供給C 供給過剰 (経営戦略の最上位概念) 需要構造 モノ余り経済社会が到来した日本の市場構造 需要A A : 高品質/高価格市場。不景気とは無 縁。有名ブランドの銀座店等、高級 老舗,デパ地下の高級食料品等。 B : 高品質/セルフ方式により中価格。 高級スーパー・コンビニのPB等。 C : 日用品/頻繁に値引きセール。 不況を引き起こしている元凶。 スーパーストー、100円ショップ等。 需要B 需要C 二重の需給ギャップが発生。 1.需要Cに対して、(レッドオーシャン市場の中で)供給側が恒常的な供給過剰をつくり、 更に価格低下傾向が甚だしくなっている。人口の伸び率が低下し、市場規模が拡大しな くなっているにも拘わらず、競争的に値引き販売を行ってきたことが原因。 2.需要Aと需要Bに対しては、大きな機会損失が放置されている。需要Bの部分は、今後 も人口が増加していく高齢層が支えているため、一定規模以上の都市部においては、 今後益々大きなものとなる。一人当たりの月間消費支出額は、高齢者の方が大きい。 日本経済新聞 拓殖大学助教授 根本 重之 氏 2015/07/25 Copyright (C) Yasuaki Nakajima All rights reserved 26 コラム.02 事業領域の選択 (経営戦略の最上位概念) ブルーオーシャン市場:競争者のいない、新たな市場で まだ生まれていない、無限に広がる可能性を秘めた未知 の市場空間。(企業が生き残るために、既存の商品やサービスを改良することで、高コスト・ 低価格の激しい「血みどろ」の争いを繰り広げる既存の市場を「レッド・オーシャン市場」と言う。) この戦略は、一見、ポーターが提唱した「競争戦略論」の中での「差別化戦略」の ようにも捉えられるが、(レッドオーシャン市場の中での)という視点ではなく、「低コ ストで、高付加価値を持つ新市場の創造」ということが主眼に置かれる。いわば、 差別化を突き詰めることで、新たな競争のない市場を創造 するということ。(顧客にとってあまり重要ではない機能を「減らす」「取り除く」 ことにより、企業と顧客の両方に対する価値を向上させるバリューイノベーション) 事業領域の全般を俯瞰できる経営者は、直感で、その領域を区 分して、特定事業セグメントに経営資源を集中することができる。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 27 経営戦略論等の歴史概略 コラム.03 経営戦略論等の歴史概略 ( 『XEED 波頭 亮 氏』 他) コミュ ニケー ショ ンに 関する イノベ ーショ ン 時代区分 開始年 ~ 区切年 1760 ~ 1830 IT環境等 日本 アメ リカ 対 象 市 場 の 特性 作成者 中嶋 康晃 ) 戦略論の体系 提唱者等 特徴等 需 給 バ ラ ン スと競争 構造 蒸 気 機 関 の 発明 1776 ア メ リ カ 独立 宣言 1804 蒸 気 機 関 車 発明 1807 1830 その 他 の 先 進国 提 唱 概 念 等 の名称 戦略論 戦術論 人財論 提唱者氏名 国籍 学派等 産 業 革 命 (イ ギリス):1.工 業化社 会の誕 生。2.住民の 「農村 から都 会への 移住(目 的:「経 済的豊 かさ」と「利便性」の 追 求 等 ) の継 続的・ 長期的 流れ」が 始まる 。3.「 牛・馬・ 奴隷」等を 「馬 力」とし て活用する 技術 から、道具・機械活用の時 代へ進化。 1765 Ⅰ ( 2015/07/25 市場の概要 社会環境等 移 動 ・ 物 流方 法等 動 力 の 単 位 (馬力) 都 会 の 中 心 の市場 (イチバ ) 交通革命 ジ ェ ームズ ・ワット 国富論 市 場 経 済 に おける 「見えざ る手」によ る資 源配分 調整機 能 大 量 物 流 手 段の登 場 D>S 蒸気船実用化 ~ イ ギリス ア ダム ・ スミス イ ギリス リ チ ャード・ トレビシ ック イ ギリス ロ バ ー ト・フルトン アメ リカ 鉄 道 網 整 備 始まる 近 代 経 済 学 の端緒 イ ギリス 1833 奴 隷 制 廃 止 (イギリ ス) 1861 ~ 1903 ~ 1865 南北戦争 科学的管理法 フレ デ リ ック・テイラ ー アメ リカ ヘ ン リ ー・フォ ード アメ リカ 流 れ 作 業 ・大 量生産 方式の 発明 フレ デ リ ック・ランチェ スター イ ギリス 経営学の父 生 産 プ ロ セス、ベル トコンベ ヤー方 式、OR の原型 戦 闘 ( 空 中戦 )のO R数理モ デル。「孫子の 兵法( 戦略概 念4段 階の作 戦 以 下 : 「魚 鱗の陣 と鶴翼 の陣」の 理論が 基本) 」を引き 継ぐ、「 マー ケッ テ ィン グ 1.0: 4P時代 」の理 論体系 ア ン リ ・ファ ヨ ール フラ ン ス 経営学の父 6つ の 機 能 に 分類 、製造・ 販売を 軸にした機能別 組織 エ ル ト ン ・メイ ヨー アメ リカ 人間関係論 人 間 は 機 械 ではない ジョ ン ・メイナ ード・ ケインズ イ ギリス ケイ ン ズ学 派 マクロ 経済学 ・「見えざ る手 」だけの 需要では不十 分 巨 大 企 業 が 登場し 始めた時期 1908 1914 T 型 フォ ード 発売 ~ D>S 1918 流 れ 作 業 ・大 量生産 による 低コスト化 第 1次 世 界 大 戦 D > S の 市場 が大前 提:局地 戦(細 分化され た市場 等)では√8= 2.8≒ 約3倍 の シ ェ アで勝利 し、広 域戦(全 国市場 ・グロ ーバル 市場等 )では√ 3=約 1.7倍 のシェ ア で勝 利 する 。 軍 事 理 論 なので、経 営戦略 (「戦略 +作戦+ 站 」と階層 分割し た場合、最上位の ランチェスターの法則 戦戦 略術 段+ 階兵 )へ の適用 は不適 切であ り、作 戦 経 営 学 誕 生 ・戦術論 ・経営 管理[内部 1916 以 下 の 階 層 への適 用が望 ましい 。 Ⅱ ~ 巨 大 企 業 の 繁栄 量子力学確立 1926 志向] D>S 1929 管理過程論 ホー ソン 実験 人 間 関 係 論 登場 1 9 2 9 /10/24 ~ 1936 大恐慌後、約10年 間D<S 世界大恐慌 『 雇 用 ・ 利子 および 貨幣の 一般理 論』 世 界 恐 慌 に 対する 解決策 :「有効 需要の 原理」・ 総需要 管理政 策 1940 1941 ~ 1945 第 2次 世 界 大 戦 最 初 の コン ピュータ「エニ ア ッ ク」 発表 1946 アメ リカ ~ 1953 朝 鮮 戦 争 ・朝 鮮特需 ・ガチャマン景 気 ~ 1960 戦 後 復 興 需 要によ る高度 成長、作 れば売 れる黄 金時代 (ゴー ルデンエイ ジ) 、『粗雑 工業の 時代 B y 民族 学者の 梅棹 忠夫』 1950 1960 ~ ( 日 本 ) 所得 倍増計 画発表 (第二次 大戦中 のイノ ベーショ ン技術 蓄積が 花開く 、鉄鋼 業→自 動車産 業→各 産業へ の乗 数効果等) 1961 ~ 「 お 客 さ まは 神様です」との 誤用が 広まり 始める マー ケテ ィン グ戦略 (marke ting s t r a tegy)≒ 戦術 市場全般 1 9 6 3 /11/23 初 の 日 米 間 テレビ 宇宙 中継 1 9 6 4 /04/07 I B M シ ステム /360( 大型 汎 用 機 ) 発表 オリ ン ピ ックでのリアルタ 新 幹 線 、首 都高速 、名神高 速等交通網の イ ム 競 技記 録管理 急 速 な整 備 実現 1 9 6 4 /10/10 ~ 現 在 の 、 消費 者と企 業間に 関する 誤った「クレー マー風 潮」の源 流。 「 金 を 払えば 何でも自分の わがま まが許 される、 客が最 上位の 支配階 層 であ る とい う妄想 等の低 次元モラ ル文 化」の始 まり。 ケネデ ィー大 統領暗 殺 東 京 オリ ン ピ ック D> S 1 9 6 0 年代中 頃 Ⅲ 「 組 織 は 戦略 に従う 」 近 代 的 戦 略 論誕生 [外部 志向] 「 成 長 マトリ ックス」 新 規 進 出 分 野を合 理的に 選択する ため 組織論 ア ル フレ ッド ・チャン ドラー アメ リカ 経 営 戦 略 論 の泰斗 「 事 業 部 制」 、多角化を 進め ていく 際のスタンダー ド イ ゴ ー ル・アン ゾフ アメ リカ 経 営 戦 略 論 の泰斗 4 つ の 戦 略パ ターン に対し 、既存の 強みを 生かせる シナ ジーを 活用す る P P M マトリッ クス ボ スト ン ・コン サルテ ィング ・グループ アメ リカ ボ スト ン ・コン サルテ ィング ・グループ 市 場 を 「金の なる木 、花形 製品、問 題児、 負け犬 」に分割 マネジ メン ト ピ ー タ ー・ドラ ッカー アメ リカ 競争の戦略(差別化 マー ケッ トの 中で自 社が占 めるポ ジショ ン によって、方程式を解け 戦略、コストリーダー ば、戦略を決定できる:「経営=サイエン シップ戦略、集中[ニッ ス・細かく分析すれば全てが解ると思い チ]戦略) 込んだ価値観」 マイケル・ポーター(経営戦略の神 ア メ リ カ 様) 企 業 の 「 外」を 重視 する戦 略の観 点(プラ ンニン グ学派&ポジショ ニン 5フォ ー ス分 析、ま ず儲か りそうな市場を 特定、クラ スタ ー分析 ←綿密 グ 学派) な市 場 調 査 が行える ことが 前提 ヘ ン リ ー・ミン ツバー グ(ドラ ッカー と並び 称される 経営 学の大 家) カ ナダ 創 発 ( エ マー ジェ ン ス)学派 フィリップ・コトラー(マーケッティン グの神様) アメ リカ セグ メ ン トと は、無数 に設定 できる 視点なので、ビ ッグデ ータ分 析が前 提 ・ 必 須 だった。 アメ リカ 非 定 型 で抽 象的な対象を 重視(発 表は1986年 ~ 徐々 に深化 ・変 容) モ ノ が 行 き渡 り始める 。→ 飽和した市場に おいては、売 れ残りが 積み上 がるば かりの 状態が 始まる ~ 1968 所 得 倍 増 計 画を8年 で達成 A R P A ネット 始動(ア メリ カ 国 防 省+ IBM) 1969 ア ポ ロ 11号 月面着 陸(IB M製コン ピュー ター5台 搭載) 飽 和 し 始 め た市場 1970 大阪万博 1972 列島改造論 カ ラ ーテレビ の普及 率が、 白黒テ レビを 上まわる 1973 " 7 - 1 1"(CVS )創業 第 1次 石 油 ショ ック、風説によ るトイ レット ペーパ ー騒動 第 四 次 中 東 戦争 1 9 7 0 年代中 頃 市 場 を 4分 割 1974 第 二 次 世 界 大戦後 の復興 需要によ る高 度経済 成長の 終焉→ スタグフレーショ ンに突 入 1975/ 06 " 7 - 1 1"(CVS )が24時 間営 業開始 1976 A p p l e-1発 売 飽 和 し 始 め た市場 ヤ マト 運 輸・ 「宅急便 」開始 1979 第 2次 石 油 ショ ック 市 場 を 調査 ・分析し 、ポジショ ンによ り、戦 略 を 決 める 1980 「 日 本 企 業に は戦略 がない B y ポ ーター 」→後 半・日本 に バブル期到来 D≒S :「ジ ャパン・ アズ・ナン バー ワ ン 」 と 称される 1 9 8 0 年代中 頃 1990 総量規制 1991 ソ連 消 滅 ・冷 戦終結 /東欧 の市場 の余剰 物資が 西欧等 へ流れ 込む/ 湾岸戦 争 1991 創 発 ( エ マー ジェ ン ス)型戦 略策定 :戦略とは実践を通じて徐々に出来上がっ てくるもの、あらかじめ緻 密な戦 略を立 てても、その通 りにう まくいく ことはあ り得ない 戦略サファリ 飽 和 し 始 め た市場 戦 略 論 を 10の 学派 に分類 、1990年 代 後半に 高い評 価を受 けるよ う に なる 。 ベルリンの壁崩壊(欧州)、天安門事件(中国) 1989 ~ バブル崩壊 1993 マーケッティング2.0 戦 略 的 マー ケッティン グ(S TP) Ⅳ レ ッ ド オー シ ャン市 場 D< S へパラ ダイ ムシフト が発生 戦略 ポ ー タ ー の 競争戦 略への 疑問: のたそがれ 長期デフレへ突入 1 9 9 0 年代前 半 1995/ 11/ 23、 W i n d ows95発 売 戦 略 の コモ ディティ化が進 み、似たよ うな戦略が あふれる :「戦 略の本 質は差 別化である 」と したポー ターの 主張と 矛盾す る → 同 じよう な戦略を 採る 企業間 にも関 わらず優 劣が生 じた→ 何故? RBV(リソース・ベース 企 業 の 競 争 力の源 泉は「リ ソース(資金、技術、ブ ランド 、チャネルから、人材や 組織文 化までを 含む 意味での経営資源)」 ジ ェ イ ・B・バ ーニー ド・ビュー):資源ベー であ り 、これを 最も有効に 活用できる パタ ーンを 探ること がクリ ティカル ポイン ト(決定 的重要 点) スの戦略 IT革命:(本格的)情報化社会への進化開 始 EC開花 マイ ケル・ポ ーター の対抗 軸:強みを 生 み 出 す 源 泉としての「優 秀な人 材」 (ドラ ッカー の後継 者、BOP や共 と 、高 い 目標 に向け てチャレンジし て アメ リカ い こう と する 「組織の文化」(ストレッチ 創 と い う 概念を 提唱 )と、ゲイ リー ・ハメル の 組 織 文 化 )が重要 コア・コンピタンス経 営 1990年 代 中 頃 レ ッ ド オー シ ャン市 場 I T 機 器 &回 線網(品 質、 速 度 、容 量 )が発達 C・K・プラハラード 企 業 の 「 内」を 重視 する組 織の観 点(リソース・ベ ースド ・ビュー (RB V)学派) D<S コアコンピタンス:顧客に対して、 他社には真似のできない自社なら ではの価値を提供する、企業の中 核的な力。 I CT 活 用によ り、企 業内の 業務形 態や組 織構造 ・ビジネスモデ ルや産 業構造 の変化 が始まる M & A ・ RBVの 最初の 注目資 源は「 資金(金 )&LB O等の 金融技 術」だったが、→ ICTの 急速な進化によ り、他 社の模 倣・他 社 と の 合 併 が容易 となり、企業の 戦略が 一定の パターン に収束 (コモデ ィティ化)。→ 「技術や 設備だけでは独自の持続的 M&A経営 当 初 の 、 「金 にものを 言わ せて」行 われた「M&A」 の殆ど は、ひたすら、 あ る 市 場内 での「シェ ア拡 大」だけを 狙う 「コストリ ーダー シップ 」型戦 略 だったので、「表計 算経営 」レベ ルにす ぎない。その後の「M&A」の中 に は 、 優 れた、企業 救済・暗 黙知活 用・事 業再生 モデル が存在 する。 戦略論の核心「自 社の差 別化に 資する 究極の 強み 9 0 年 代を 通 して、多 くの事 例で、実 証的に 明らか になっていった の 源 泉 は 、技術その ものを 生み出 したり、強力に 戦略を 推進できる"人材と組織"(模倣困難 (インイミタブル)な要素)によって生み 出され てくる」 な競 争 力 の 源泉に はなり得 ない」 ことが認 識され た→ Ⅴ イ ン ターネットの激震(By P C) ビジネスモデル 「 戦 略 と 組織 (戦術 )が融合 した、戦 略的狙 いを実 現する ために 、有効な差別化され たビ ジ ネスの 仕組み 」の設 計図を 描く ユ ニ クロ ・モ デル、デ ル・モ デル等 S P A ( バリュ ーチェ ーン中抜 き)等 ブ ル ー オー シャン( 2005年 ) 「 競 争 戦 略」 という視 点では なく、「 高付加 価値を 持つ新 市場の 創造」する オン リー ワ ン 戦 略。競 合のい ない全 く新し い市場を 開拓 したり、完全に 差別化 されたビ ジネ スモ デ ル を 構築したりする ことで、高成長 ・高収益を 狙う 。 イ ン ターネッ トは、人 々の生 活を支 える生 活イン フラ、企 業の経 済活動を 支える 産業イ ンフラ として、広く社 会に浸透。こ の 普 及 に よ って、世 界中の 人々のラ イフスタイル 、消費 スタイル 、生産 スタイル が劇的 に変化 。 1990年 代 後 半 ~ 経営戦略論の大半が、「事 業領域の選択論」?。 2000年 代 中 頃 ブ ル ー オー シャン市 場を、開拓する ・創る 潜 在 需 要 等を 掘り 起こし、 ほぼ競 争の無 い 状態: D>S S CM 戦 術革 命 ビ ジ ネスモデ ルは、 戦略と 戦術の 連結点 執 行 力 の 卓 越性(エ グゼキ ューショ ン ・ エ クセレン ス) チ ャン ・キム &レネ・モボルニュ 企業の競争力を左右する最重要ファク リーダーシップ論& モ チベーショ ンや目 的達成 に ターは、「戦略の優劣ではなく、執行力の 対社 す員 るの 執着 心、或い は、次 々に有 能 チェンジマネジメント ジョン・コッター 卓越性(エグゼキューション・エクセレン 風なビ土ジ ネスリ ーダーを 輩出 する組 織 論 ス)」にある 経 済 学 の 世 界にお いても、理性主 義の万 能感に 対して懐疑的 な意識 が大きく なり、「 人間は 、経済学 的には合理的では ない 感 情 によ って、 経済的 行動を 決定している」 という概 念が提 唱され た。 2008/ 09/ 15 行動経済学 数 式 で経 済を 正確 に読み 解こうと する理 性主義 的なアプ ローチも、人 間という 行動者 の非理 性的な側面や 、経済 活動を 構 成 す る ファ クター があま りにも複 雑で多 様であ り過ぎる ために 、1990 年代後 半になる とデー タと数 式では 手に負 えない 面 が あ る と いう現実 も生起 してき た。 イノベー ション とグロー バル化を 追求 「 方 程 式 型戦 略策定 」方法 論では 無く、イ ンタンジブ ルな組織運 営(ビジ ネスと 組織 運 営 実 行 の 多様性 と柔軟 性を醸 成し、そうした展 開を牽 引する リーダーを育成 す る 風 土 )の方 法論が 必要。 フラ ン ス アメ リカ ダニエル・カーネマン マイ ケル・ポ ーター への反 論、低コストと高 付加価 値は両 立できる 変革の時代に必要なものは、マネ 1988年頃から提唱されていたイ ジメントではなくリーダーシップ: ンタンジブルへの流れ 「執行力の卓越性」こそが戦略的 自由度を拡げる最重要ファクター 経済学・行動経済学 1 9 9 7 年に起 きた米 国のヘ ッジファ ンドLT CM(Lon g-Term Capit al M a n a gemen t)の破 綻がその象徴 的事件 。→「行 動経済 学」→2 002年 に 、 ノ ー ベル 経済学 賞を受 賞 別添.「経営戦略論等の 歴史概略v1.00.xlsx」参照 リ ー マン ショ ック 「 グ ロ ーバル 市場: マルチローカル の集 合 体 」 / 国の 数だけ 存在する 全く 異なっ 各 地 域 で異 なる需 給構造 た文 化 ・ 価値 観・商 習慣 更 なる 成長 のため に、 多 様 な国 の 文化や 人々の 行動様式をど うマ 世 界 共 通 の 国際会 計基準 (IAS: 各 国 の 個 性を 反映 した、マルチロ ーカル ・マ ネジ メ ン トする のか ?/文化 の多様性の違い I n t e rnation al Acco unting Standards) ネジ メ ン ト・モ デル を 統 合 する 価値観 はある のか? を 適 用 する ? 先 進 国 の 低 経済成 長&B RICs諸 国・新興 国市場 の急成 長。→ 新興国 等を販 売拡大 可能市 場とみなし、先行投資・新規 文化の多様性 開 拓 ・ 進 出拡 大等を 図る 2000年 代 後 半 ~ しかし、何がリー ダーを育成できる のか? グ ロ ー バル 人材マネジメント の国際統一は、極 ヘールト・ホフステード めて困難? オラ ン ダ は、 経営学 者に教 えて貰 ったら、 ある程度 解る。しかし、 生きた経営は 教えられ ない。経営は、本人が体得する もの 松下幸之助(1894~ と『 経い営う 心学 構えを 持って自得 するもの 。』= 「形式知 =知識 は教える ことが できる が、暗黙 知=知 恵は、 自分でつかみ 取るも 松下幸之助(経営の神様) の 」 : 手 本と なる人に くっつ いて学 ぶ徒弟 制度等 が必要 1989)発言集 Ⅵ 先 進 国 の 企 業は、企画・製 造等の 段階で、新興国 の一歩 先を行 くイノ ベーショ ンを生 まなけ れば10年先、20年先に向け ブ ル ー オー シャン状 態を狙 う ての 生 き 残 りが図れ ない状 況になった 2008/ 07/ 11 スマホ( iPho ne 3G: GPS 搭 載 ) が 日本で発売開始 2000年 代 後 半 ~ クラ ウ ドの黎 明期 オンリーワン戦略、しかし、イノベーション イノベーションを実現 を起こす有効な解決策の解明は進んで する いない。 ??? ホフステ ード は、職 業や仕 事に関 して人々 が持つ価値観を 国の文化と 関 連 づ け た。ホフステード 指数は 、1980年 には 発表さ れてい た ( 1 9 6 7~197 3の72カ 国のI BMを調 査・同じ 企業だが国別 で驚くほど の 違 い が あ った。) P H P 研 究所 イ ノ ベ ーショ ンは、文化・価 値観・ 社会の 仕組み の影響を 極めて強く受 けてお り、"得 意な"イ ノベー ショ ンスタイル は、国の 文化・ 風土で異なる 戦 略 論 よ り も上位の 概念を 指摘し ている ものと思われる 。だから、戦略 局 面 以 下 の 方法論 にこだわらない こと。方 程式では、「経 営戦略 は解 け ない 」 だけ で無く 、「経営 」も解け ない。例 えば、ポータ ーは、経 営理 念 に つ い ては一切 言及し ていない 。 1.イ ノ ベー ショ ンは 、そもそも難し い。2.イ ノベーショ ン は、「優良企業 だか らこそ生 み出せ ない」 というジ レンマ(By 199 7年,クレイ トン ・クリス テ ン セン )が ある。3.イ ノベ ーショ ンは、「 死の谷 」を越えられない? 人 び と の 「常 時ON 生活」へ の浸透 開始: (浸透率 =イノ ベーター (市場 の2.5% )→アー リーア ダプター (市場 の13.5% )向 け I T イ ン フラが 企業活 動を支 える重 要なプ ラットフォ ームに なった 2010/ 01 I T が 企 業戦 略を左 右し、企 業の競 争優位を 生み 出す源 泉 I A T A 及び日 本政府 の航空 行政によ る寡 LCC等 が参 入し始め ている が、未 だ微力 稲 盛 ビ ジョ ン 経営( 価値観 ) 占市場 JA L倒 産、会 社再生 法申請 2011 D > S 、 潜在 需要を 掘り起 こし、独 占状態 日本 人 間 の 非 理 性的な側面に 関心高 まる/ 経済学 の世界 でも同様 な傾 向 が 生 じ た。 フィロ ソヒー ア メ ー バ 管 理会計(部門別採算性・見 稲 盛 会 長 の 卓越性/社員第一、意識 稲盛和夫 える 化 )、KP Iツリー 改革 日本 稲盛経営塾 多 く の 労 働 組合の 「ぬるま 湯意識 」を制御 、'政府 からの 巨額の資金援 助 に よ る 公 的企業 再生 自 動 運 転 車 の開発 始動 「 ビ ッ グデータ」活用開花 ( P O S データ 収集、スマ ホへ の P US H、IoT、 M2M 等 : デ ー タ分 析) I T 技 術 のオープ ン 化&IT企 業の戦 略的M &A等によ り「 ITインフラ」の整備 が進み 、多業種 ・多業 態間等 で、 多 様な機 器からのビ ッグデータ のリア ルタイ ム収集・ 保管・分 析・活 用等が 容易に 行える 社会的環 境が整 備され 始めた。 移 動 無 し (時 間を要 さず)で、ビジネスモデ ル と コミュニケーショ ンできる 環境 の始動 = 2010年 代 中 頃 「 クラ ウド」と いうITリソー スを 利 用する ための 「時は”価 「ITインフラ」格値”なり」 的展開開始 Ⅶ イ ン ターネッ ト空間 モ ノ か らサービ スへ の流れ に拍車 がかかる とともに、IT によって業務を 支える スピー ドが加速 した。クラウド によって ビジネスの本 形態が進化 スマホや SN S等のITによ る 顧 客 との 密接な関 係 構築の容易化 ビ ッ グ デー タ分析を 活用し たビジ ネス(既 存 激 烈 な競 争 状態と 、オン リーワン ・無競争 新 たなビ ジネス(デ ータドリブ ンビ ジネス、 デ 事 業 価 値 の 増大、新規事 業領域 への進 出 状態の併存 ジ タ ル ビ ジネス)創 出 等) 「ITインフラ」が 柔軟に 調達できるよ うになり 、システムのサ ービスイ ンま でにか かる時 間は短 縮され、それ が さ らにビ ジ ネスを 加速し ている 顧 客 と の 関 係性を 深めるためのシ ステム ・SoE( System of Eng ageme nt)と、基 幹業務 システムなど を記録するためのシ ステ ム ・ SoR (Syste m of R ecord)の 連動が 容易と なってきた。 ド ロ ーン によ る物流 等の実 用化開 始? 2016 「 膨 大 なデー タから自ら 学 習 し て判 断するマシ ン : コグニテ ィブコン ピ ュ ー ティン グ技術:ワト ソン 」 実用化 ? 2020 スマホ利 用 者が世 界で 自 動 運 転 車 走行/ 新たな移動価値・手段 約 50億 人 に 到 達、 第5 の 登 場 / 物 流コストの激変 ? 世 代 通 信 網 実現? 2015/07/25 推進者:アメリカDARPA(国防高等研究計画局:インターネットの生みの親)等 今 の フォ ンノイ マン 型と言 われるコン ピュ ーター とは全く 次元が異なる プ ロ セッサー が必要 東 京 オリ ン ピ ック Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 28 Ⅱ-5.戦略的経営階層概念等の内訳 2.IT経営戦略 1).2006年頃のIT経営概念図 「企業間連携」の イメージ 2).「つながる~:企業連携」という方向性は適切かもしれない。 (∵ 「コラム06:光と俯瞰」 参照) ( 参考:ドイツでは、『 IoTを核に「つながる」「代替する」「創造する」 』 ) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 29 Ⅱ-5.戦略的経営階層概念等の内訳 3).(日本版)インダストリー4.0関連情報源: ①.経済産業省発表「2015年版ものづくり白書」 ②.「ロボット革命イニシアティブ協議会」(2015/05設立) ③.日本機械学会「IVI(インダストリー・バリューチェーン・ イニシアティブ)」(2015/06設立) (リファレンスモデルを作成して、中堅・中小も含めて共有・検証・フィードバックする活動) ④.「企業連携プロジェクト(つながる町工場) 日本版Industrie4.0」 ⑤.日経新聞傘下各社のメールサービス(「日経ID」取得が必要) 4).製造業以外のIT経営戦略の方向性は? 以下、「2.IT経営戦略の詳細・企業戦略」は省略。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 30 Ⅱ-6.戦略的経営階層概念等の内訳 「SWOT分析/事業課題等の抽出」 省略。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 31 Ⅱ-7.『戦略的経営』階層概念等の内訳 ビジネスモデルとは? 1.一言でいえば、ビジネスの設計図である。 2.ビジネスは、設計(デザイン)されるものである。 3.その設計図が、ビジネスモデルである。 『 東京大学 総合研究機構 俯瞰工学部門 名誉教授 松島 克守 氏 』 ビジネスプロセスモデル ビジネスモデルの視点 情報モデル 組織モデル ビジネス 成長モデル等 財務モデル 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 32 コラム.04 ビジネスモデルの価値? ( 1/2) Intellectual Capital 知的資本 BM(ビジネスモデル)、 Finantial Assets 資産 Finantial Capital 財務資本 簿価B/S 過去価値 有形資産 ( 株主資本 ) 企業価値 OC(組織構造資本)、 HC(人的資本)、 RC(関係構造資本) 株式時価総額 将来価値 無形資産 Intellectual Assets 知的資産 のれん、ブランド、 技術、特許、 人的能力(ナレッジ等)。 投資家が評価する将来価値 http://www.actcell.com ( 負債 ) 2015/07/25 Copyright (C) Yasuaki Nakajima All rights reserved. 33 ビジネスモデルの価値? ( 2/2 ) コラム.04 Intellectual Capital 知的資本 ビジネス モデル 事業戦略、 事業計画、 市場性、 事業性、 収益性、 市場規模、 競争環境、 リスク。 組織構造 資本 知的財産 プロセス 特許、 ライ センス、 著作権、 PCパッ ケージ、 自社開発 S/W、 組織構造、 プロセス、 文書化、 規定、 標準化、 権限分掌、 KMDB。 (赤字部分)属人性が 大きいと思われる項目。 人的 資本 経営陣 従業員 マネジ メント、 スキル、 資質、 経験、 能力、 意欲。 オペレ ーション、 スキル、 資質、 経験、 能力、 意欲。 関係構造 資本 ネット ワーク オペレ ーション、 スキル、 資質、 経験、 能力、 意欲。 環境経営。 ブランド パートナー 営業 認知力、 基盤、 顧客 パート 訴求力、 ナーシ 顧客開 ップ、 拓貢 情報提 献度、 供力、 パート 価値 ナー開 創造性。 拓貢 献度。 評価 ・ 分析 2015/07/25 Copyright (C) Yasuaki Nakajima All rights reserved. 34 コラム.04 ビジネスモデルの戦略階層内のポジション 戦略(的)経営 経営目的 =経営理念 +経営目標 経営理念: 企業理念/ミッショ 経営目標 ン/ ビジョン/クレド/社是・社 訓・家訓/行動規範/価値観 + (ROE[経営資本利益率]、 財務的な売上や利益目標) 経営方針 経営戦略: 事業領域の選択/IT経営戦略・企業戦略 戦略 戦略的マーケティング/事業戦略/競争戦略 戦略と 戦術の 結節点 SWOT分析/事業課題等の抽出 ビジネスモデル図式化 戦術 (組織) 機能別戦略(マーケティング戦略、 SCM戦略、販売戦略, 生産戦略、等。)≒戦術のマーケッティング・コンセプト確立 マーケッティング目標設定→標的市場の選定 日々の仕事 マーケッティング・ミックスの策定→マーケッティング管理・PDCA(行動) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 35 コラム.04 ビジネスモデルの定義2 『 http://bizgate.nikkei.co.jp/article/71781618.htm 』l 戦略の観点と組織の観点が融合した結果誕生 した「ビジネスモデル」とは、 「企業の戦略的な狙いを実現するための、その 実行の仕組み自体が差別化された、独自性の あるビジネスシステム(バリューチェーン)を持つ 戦略的事業運営システム」 (By XEED 波頭亮氏) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 36 コラム.05 俯瞰 (1/4) 『 シンクタンク・ソフィアバンク代表 田坂広志 氏 』 1.「戦略」とは、「戦い」に勝つための「策略」。 2.「戦略」とは、「戦い」を「略く(はぶく)」こと。 :「無用の戦いをせずに、目的を達すること」 3.「戦略+戦術+アクション」を、 常に「垂直統合」・「俯瞰」して考えるという 思考スタイルが有効。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 37 コラム.05 俯瞰 (2/4) 4.経営者に欠かせない3つの目: 「俯瞰」=「鳥の目」+「虫の目」+「魚の目」 1).「鳥の目」: ①.広く浅く、表面を視る。 ②.大所高所から判断する。 ③.大局を見て判断する。 ④.高いところから全体像を把握する。 ⑤.宇宙飛行士:「地球は青かった、 地球に国境線は無い」。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 38 コラム.05 俯瞰 (3/4) 2).「虫の目」: ①.「三現主義」(一般的には、「現場・現物・現実」) ②.細かく分けて解析する。深く分析する。専門性が高いと、視野を狭めることにつながりやすい。 ③.判断をするための情報・道具(にすぎない?)。 ④.「IoTの進化」で代替可能か? ⑤.参考:ユニチャームでは、「三現主義」を「現場・現物・現時点」と認識している。 『 http://www.obt-a.net/web_jinzai_magazine/person/2007/01/post-14.html ⑥.参考:映画「アリのままでいたい」オリジナル予告編 『 https://www.youtube.com/watch?v=Jpz-euGqiZk 』 』 3).「魚の目」: ①.風を読む。②.流れを読む。 ③.企業の将来の方向性を決定する決断。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 39 コラム.05 俯瞰 (4/4) 4).俯瞰=「鳥の目」+「虫の目」+「魚の目」とは、 例えば、「環境問題に関しては、『人間と自然との繋がり・ 人間と社会との繋がり・コミュニティー内の人々の繋がり』 を、ゆるやかに大きく見ること」と表現できる。 5).Asprova・高橋社長:「宇宙から地球を視る」 (世界中・約1万キロを自転車で走破、 世界導入実績1900サイト以上、 日本国内マーケットシェア:58.4%) 6).安倍首相:「地球儀外交」 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 40 コラム06. 「光と俯瞰」 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 41 ⅰ.光の真理? 『 http://ja.wikipedia.org/wiki/ 』 古来、「光」は「波」だと思われていたが、 1.光は粒子でもあり波でもある。: 粒子と波動の二重性と相補性:全ての物 質やエネルギーは、粒子的な性質と波動的 な性質の両方を持つ。(粒子性と波動性の矛盾は、20世紀前半 (1926年頃)の量子力学の確立によって解消された。) 2.粒子は(全体の中の)一つの部分である。 3.波動は、「end からendまで」繋がり(結が り・つながり)=(絆)、全体を形成する。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 42 ⅱ.量子力学とは? 『 http://ja.wikipedia.org/wiki/ 』 1920年代初等に確立した量子力学は、原子や原子核のような極微の世 界だけを説明する理論であると思われていた。 従来のニュートン力学では、物体に、初期値すなわち「位置と運動量」を 与えれば、その物体の運動は完全に決定される。 しかし、原子や分子、電子、素粒子などでは、位置と運動量の両方を同 時に正確に確定することができない(不確定性原理)。 1.原子や電子は、粒子としての特徴をもつと同時に波としての特徴をもつ (物質波の概念)。 2.光や電波のような電磁波もまた、波としての性質を持つと同時に粒子と しての特徴をもつ(光量子仮説)。 3.このような二重的・相補的な性質に対し、「量子」という「新たな概念」を 導入すると、量子の確率分布を数学的に記述することができ(確率解釈)、 粒子や電磁波の振る舞いを理解することができる。 →光は粒子でもあり波でもある。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 43 ⅲ.「科学の根本」のパラダイムシフト 『 http://wired.jp/2014/12/15/scanamind/4/ 』 約2400年 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 44 ⅳ.『事実は真実の敵(かたき)なり』 (セルバンテス作の「ドン・キホーテ」の名言) 野依良治氏 20120518「私の履歴書」 科学の本性は客観性だが、独創とは「独り創造的であ ること」であり、研究者は多数派にくみするのではなく、少 数派であることを誇りにするべきである。個性ある主観が 不可欠で、とくに経験に基づく直観力が決定的にものを いうと考えている。 (この頁の見出しに使われている「真実」という言葉の本意は、「真理」という意味。 例えば実験データが事実で、その背後に真理が隠されているとすると、事実から 真理を探求する心を持ち続けなければ真理は手に入らない。どんなに事実を積 み上げても、それを読み解く力、真理を追求する心がなければ結果は得られな いという意味になる。「実験はなかなか計画どおりにはいかない。計画外の結果 が出ることもしばしばある。しかし、計画どおりにはいかなかった実験結果にこそ、 未踏の境地への可能性がある。」=「セレンディピティ:”偶然の幸運”」) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 45 ⅴ.事実、真実、真理とは? 1.事実(実体≒人の大まかで曖昧な認識の結果)は一つ、 しかし、部分的な事実から、必ずしも全体像が見えるわけでは無い。 2.(「真実は一つだけ」と思い込まれているが、) 真実(観念論)は、判断する人の数だけ存在する。 3.真理とは、普遍的な法や理論のこと。 4.光の真理は二つ。 =光は、「粒子と波動の二重性を持つ」→ 全ての物質やエネルギー(物質や物事)の真理 は、粒子的な性質と波動的な性質の両方を持つ。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 46 ⅵ.「学び続け、変化できる者」 I型人材→T型人材→π型人材・N型人材→ へ 「複数の専門分野を基盤として、 広範な「つながり」(ネットワーク)を 考察することを志向する。」 『最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である』 (「チャールズ・ダーウィン」の言葉では無く、 ルイジアナ州立大学・経営学「Leon C. Megginson」教授の言葉である。) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 47 ⅶ.「光」と「俯瞰(全体と部分)」の整理 (1/2) 【下記の表は、「論理的な因果関係」等に基づくものでは無く、個人的感性による整理表である。】 粒子(物質) 光の性質 波(状態) (1926年頃、「量子力学」の確立により確定した。) 二重性と相互補完性 光の真理 (排他的だが両者とも正しい≠矛盾)、(互いに補完的で両者で完全) 粒子的な性質 & 波動的な性質 全ての物質やエネルギー 真理探求方法 真 理 要素還元法 弁証法、ホリスティック(統体) アリストテレス(BC384-322) 弁証法:ヘラクレイトス(BC500年頃) 「万物は流転する:変化が常態:全ての事物は、常に変化しており、世界・全体はプロセスの連続でつながって いる (ネットワーク) 」 「四元素仮説」→錬金術 真理探求方法の起源 ホリスティック:東洋医学(全体から、有機的に結合された部分を視る)、生命体・脳は、ネットワーク。 (中国の五行説は、5種類の元素が変化・循環するという説) 一神教 神の存在 (「神は、全世界・全宇宙を支配する、絶対的な、唯一の存在」という観念。) 多神教 (「全ての物に宿る多くの神は、手を取り合いネッワークを形成し、人を守ってくれたり叱ってくれる有難い存 在。」という観念。)(日本やアジア地域の多くでは、多神教の観念が定着している) 一即多、多即一 全体(宇宙・自然の認識) ゼロの認識 存在関係 分解・理解 「3→2→1→0」 One of Them 「Number.1」が頂点 認 識 :(脳内Aの細胞で判断する) (強大である事等が力を持つ) 「一切の事物は相互に連関し合って成立している」、「一を認識できるのは、同時に、多を認識しているから」、「部分部分が有機的 に結合され、一つの全体・システムになる」、(他に多くの解釈有り) 「 無 」 : (脳内Bの細胞で感知する) Only one (万物が「唯我独尊(*)」) 承認欲求の源泉 支配(身分差別・見下す・誇示する) 尊敬(信頼・敬う) 競合関係 協働(コラボ)関係 競争 弱 切磋琢磨 協調・創発・相乗効果 (企業)連携/連帯・連邦経営・「賢者」同盟・並列(≠結合) 体制概念 「何らかの力」による支配 (M&Aの大半が含まれる) 組織の特徴 ピラミッド型、縦割り専門家組織(タコ壺化、サイロ化) コミュニティー型ネットワーク 共存関係 自主独立・バラバラ 共感・和・絆・協力・(拘束・束縛・もたれ合い→集団主義・支配) 異文化・多様性との融合 (共通の価値観への統合・ 創造) 排他性(を持つ場合が多い) 経営(戦略)論のモデル 例 マイケル・ポーター:「競争の戦略」 (経営=サイエンス:細かく分析すれば全てがわかる) → しかし、同一業界内の企業戦略が同じようなものとなり、 やがて「戦略のたそがれ(黄昏)」を迎える 吸収・融合・中庸化が巧みで、統合により新たな価値を創造する P.F.ドラッカー:「すでに起った未来ー変化を読む眼(物見櫓)」、 P.コトラー:「マーケッティング3.0」、 稲盛和夫:「ビジョン経営、フィロソフィー、稲盛コンパ、アメーバ会計」、 ユニチャーム:「ブルーオーシャン、共振の経営」 (*) 唯我独尊:『自分という存在は、どこまでも天地にただ一人。』 (篠田 桃紅 著、「103歳になってわかったこと」、幻冬舎、墨を用いた抽象表現主義者(女性)) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 48 「世界に一つだけの花」 (1/2) 歌唱:SMAP、 作詞・作曲・編曲:槇原敬之 2002年7月24日発売 (2003年12月のNHK『第54回NHK紅白歌合戦』の大トリ曲) 「花屋の店先に並んだ、 いろんな花をみていた。 ひとそれぞれ好みはあるけど、 どれもみんなきれいだね。この中で誰が一番だなんて、争う事もしないで、 バケ ツの中誇らしげに しゃんと胸を張っている。それなのに僕ら人間は、 どうしてこう も比べたがる? 一人一人違うのにその中で、一番になりたがる? そうさ 僕らは、世界に一つだけの花。 一人一人違う種を持つ。その花を咲か せることだけに、一生懸命になればいい。 小さい花や大きな花、一つとして同じものはないから、No.1にならなくてもい い、 もともと特別な Only one。」 ****************************************************************** 『 http://www.rinnou.net/ 』 かけがえのない、代えることのできない私たち!まさに「天上天下唯我独尊」です。自分が一人 しかいない尊い存在であることがわかれば、他人もまた、一人しかいない尊い存在であることに気が つかねばなりません。君もあなたも「独尊」、犬も猫も、それぞれ「独尊」です。存在する万物の一つ 一つが、差別を越えて、「唯我独尊」であり、かけがえのない大切な生命を持っているのです。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 49 「世界に一つだけの花」 (2/2) 制作経緯 槇原は本曲を作る3年前の1999年に覚せい剤取締法違反(所持)容疑で逮捕 されたことが自分を見つめ直す機会になった。その中で彼は仏教と出会い、従 来の私小説的な作風とは異なる人生をテーマとする作品を手がけるようになり、 その成果が本曲だった。この歌を書き上げた時の様子を槇原は次のように回顧 している。 『部屋の床に犬と寝ていてパッと起きたら、ものすごくきれいな雨が降っている 朝だった。頭に浮かんでくる景色を文章化していくだけで自分が書いた感覚は なかった。この曲を書けたこと自体自分の才能だとは思っていない。神様のプレ ゼントである(神託)。そうでなければこんな曲は書けない。』 「ナンバーワンではなくオンリーワン」という主題は、「天上天下唯我独尊」とい う仏教の教えが念頭にあった。『仏説阿弥陀経』の「青色青光、黄色黄光、赤色 赤光、白色白光」という一節が元になったとも語っている。これは浄土には様々 な色の蓮華が咲き乱れているが、そこではそれぞれがそれぞれの個性に無上 の尊厳性を認め合い存在しているという内容である。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 50 コラム.07 ドラッカーの「山荘コレクション」より (多数の貯蔵美術品の中の一品) P・F・ドラッカーの講演から: 「世界への視野を正すために, 私は日本画を見る。」 春景山水図:「鑑貞」作、 15世紀末~16世紀初め。 「人物が広い岸辺から川を眺め、向こう岸に は,かすみがかかった寺の堂塔が浮かぶ。 人の背後に立つのは,背の高い樹木と急峻 な山。少ない筆で画面を切り分けながら空間 を作る。」 (カメラによる実写等では、映せないだろう と思われる光景=実在しない光景) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 51 ⅶ.「光」と「俯瞰(全体と部分)」の整理 (2/2) 光の性質 粒子(物質) 波(状態) (1926年頃、「量子力学」の確立により確定した。) 二重性と相互補完性 光の真理 (排他的だが両者とも正しい≠矛盾)、(互いに補完的で両者で完全) 粒子的な性質 & 波動的な性質 全ての物質やエネルギー 真理探求方法 TOC(ホ リス ティック な経営 哲学* *) システム思考 思考対象 部分と全体の関係 要素還元法 弁証法、ホリスティック(統体) 構造 課程(プロセス) & ネットワーク 部分 全体 「Σ部分 < 全体」のような関係式は存在しない? (∵測定共通単位が存在しない ?) 」 問題解 部分最適解 全体最適解 数量化 観察対象 分析方法 容易、測定可能 実体 解析 計測困難 関係 環境条件との調和 俯瞰 鳥の目 ( 進 歩・ 改 能力の種類 善 vs 情報の価値 イノ ベ (破壊的)イノベーション創造能力の 基盤:(一見、関係なさそうな事柄を | 結びつける思考能力) 「イノベーションの原点は、お客さまニーズ ショ ((****)」) ン (*** ) 視点 (マーケッティング分野において、「ブルーオー シャン」市場構築に繋がり易い。) 虫の目(現場主義:・ミクロを見てマクロを見落とす) (≠製造業での3現主義(現地、現物、現時点) 知能 (「答えの有る問い」に対して、早く正しい答えを見出す能力) ) 、 魚の目 ( 時代の変化) 鈴木敏文 (どうして現場に行かないと分からないのか。統計心理学:ビッグデータ分析「マクロで見て、ミクロに落 とし込む」、「われわれの競争相手は同業他社ではなく、最大の競争相手は目まぐるしく変化する顧客ニーズであ る」) 知性 (「答えの無い問い」に対して、その問いを、問い続ける能力) 知覚的存在 データ 1.(バラバラで、整理されていない、多分野の)断片的な「知識・ 経験・記憶」 (インターネット革命により、全体との「繋がり・結節効果」において、「いわゆる、従来のIT技術の情報」以上の「意 味・感情・共感・感動等」へと昇華し、人びとの繋がりを促進している。) 技術吸収能力(アブソープティブ・キャパシティ)により、多分 野の断片的知識等が統合・整理され、創発された「気づ 2.特定の専門分野を深掘りした専門家の見識 き・閃き・直感」は、「雑談・対話・議論」の際、偶有的に (MBAで養成された経営実務能力)等 3.特定の分野(対象範囲の全体から、一部のみ 生まれ易い。(一定水準以上の知性強化を探求し続けるメン を、都合良く無意識に絞り込む)を探求するコ バーによるコミュニティー:緩やかな相互研鑽の繋がりの場が ミュニティーの視点:目的と手段が混在すること 必須。) 真理を探究する個人は、行動により、「セレンディピティ が多発する (これらの状態だけでは、イノベーションの創造は困難) (偶然の幸運)」に気付き、受容する能力に秀でる。 (**) TOC・ホリスティックの参照URL : (***) (****) シュンペーター「非連続性」、ドラッカー「顧客が認識する価値の次元自体が変わること」 ①.明らかな顕在ニーズ市場:例) 日用品等の既存レッドオーシャン市場 ②.めずらしい(供給側が気づいていない)顕在ニーズ:「共創(Co-Creation)」 (ユーザーSNSからの口コミや、取引先等からの提案により開発する) ③.(隠れている)潜在ニーズ:「お客さまに尋ねても解らない(クレーム・ワガママを言う事がある)」→「時代の変化が新しい潜在需要を生み出すことがある。供給側が考え・創造する(仮説・検 証)」→「こんな物が欲しかったんだ」 (****) (****) 2015/07/25 https://www.msi-jp.com/ccpm/faq/c_faq_toc.html#q01 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 52 ⅷ.TOCの視点: 「ブルウィップ効果が生み 出す無駄」 (1/3) 「波動」が見える。 15 10 生産 7 5 生産依頼 受注 15個作って おこう メーカー生産 発注 10個は売れ るだろう メーカー販売 受注 7個は売れ るだろう 発注 受注 次は5個 売れるかも 卸 小売 3 購入 3個購入 消費者 意思決定のたびに需要は増幅され・・・ 15個つくら れてしまう 2015/07/25 ブルウィップ効果 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 需要は3個 なのに・・・ 53 ⅷ.TOCの視点: サプライチェーンにおける情報共有 (2/3) 3個 15個作って おこう 作ろう メーカー生産 10個は売れ るだろう メーカー販売 情報の共有化 により・・・ 2015/07/25 7個は売れ 3個購入 るだろう 卸 次は5個 売れるかも 小売 3個購入 消費者 ◆「発注」という不純物を排除する ◆物流は供給側から「送り込む」 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 54 ⅷ.TOCの視点: 「ブルウィップ効果が生み出す無駄」 (3/3) 「D>S」の状態の市場の場合、発生する現象。 =供給過剰が明白な市場では、発生しないと思われる。 15 10 生産 7 生産依頼 受注 15個作って おこう メーカー生産 15個つくら れてしまう 発注 10個は売れ るだろう メーカー販売 受注 7個は売れ るだろう 卸 5 発注 受注 次は5個 売れるかも 小売 3 購入 3個購入 消費者 × 「意思決定のたびに需要が増幅され・・・」 需要は3個 ブルウィップ効果 なのに・・・ 増幅されるのは、「見込み」 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 55 コラム08.マズローの欲求5段階説 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 56 マズローの欲求5段階説 『 http://245.pandeiro.jp/index.php 他 』 潜在能力の実現、継続的自己啓発、創造性 の発揮など、限りない成長を望む欲求。 承認欲求、尊厳欲求:他人から認められたいとする感情の総称で 多様。対人関係を学習する過程で育まれる後天的な欲求。 自分が社会に必要とされている、果たせる社会的役割が あるという欲求。情緒的な人間関係・他者に受け入れられ ている、どこかに所属しているという愛情の欲求。 安全性・経済的安定性・良い健康状態の維持・良 い暮らしの水準、事故防止、保障の強固さなど、予 測可能で秩序だった状態を得ようとする欲求。 人間有機体の肉体的欲求、衣食住などへの 欲求。 多くの批判:このモデルは、個人主義に価値をおく西洋的人間観をモデル化したに過ぎない。この枠組 みはアメリカの文化が前提である.日本の場合は安全・安定欲求が一番上になる。ピラミッ ド状に構成されている階層が、はたして一般人の経験的なものとして本当に妥当かどうか。~~等々。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 57 ⅰ.「自己実現の欲求」への誤解 『 http://ja.wikipedia.org/wiki/ 』 マズローは自己実現者を無条件に賞賛していた わけではない。自己実現者は完璧人間ではなく、 欠点も多数有している。 「長年の親交をあっさり切り捨てたり、愛していな い男と結婚し離婚する女性。親しい人間の死から 瞬時に立ち直る者。因習にとらわれる者に苛立っ て暴言を吐いた女性など、自己実現的人間がそう でない人間を傷つける場合が非常に多い。」と説 明するが、しかし、こうした欠点はマズローが挙げ た自己実現者の特徴と矛盾する。 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 2015/07/25 58 ⅱ-1.自我の欲求(「承認欲求・尊厳欲求」とも訳される) 『 http://ja.wikipedia.org/wiki/ 』 自分が社会から価値ある存在と認められ、承認・尊敬等 されることを求める欲求。後天的なもので、レベルは多様。 (self-esteem(自尊心、うぬぼれ), confidence(信用), respect(尊敬)) 1.高いレベル:「自己尊重感、技術や能力の習得、 自己信頼感、自立性等」への欲求。(他人からの 評価よりも、自分自身の価値観を重視する。) 2.低いレベル:「他者からの尊敬、支配、地位へ の渇望、名声・利権・注目等の承認」を得ることに よって満たすことができる。(マズローは、この低いレベルにとどまり 続けることは危険だとしている。「注目」への欲求は、異様な犯罪等をまねくこともある。) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 59 ⅱ-2-1).承認欲求における「上下関係の意識」 『 http://ja.wikipedia.org/wiki/ 』 1).上位承認:自分が他人よりも優位な関係で認められたいという 欲求。他人が信用ならないから他人を支配する存在とし て振る舞いたいか、あるいは自己を過大に評価した帰結。極度の ナルシストか、あるいは他者に対して強い猜疑心や被害妄想を抱 えているケースが多い。(無意識のパターンは、他人をさげすむことで、自己の評価を保 ちたいという場合が多い。) 2).対等承認:他人と自分の関係が平等であることを望む欲求。 「人並みに認められたい」と考える持ち主にも、一見同様に見られる。 (他人と自分の関係は、上下関係ではなく、対等で有り、友人・切磋 琢磨する仲間等であるべきだとする理念。) 3).下位承認:他人に依存したい、保護されたいと思う欲求。(自 分が他人から蔑まれたい、あるいは吹けば飛ぶような存在だと 思って欲しい人間.。被虐的な性癖のある人物や、社会的・道義的な責任を背負いたくないと考える人間、) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 60 ⅱ-2-2).支配性向 (1/3) 『 http://morahara.nukenin.jp/99ijime/sihaiseikou.htm 』 1.人は誰でも支配しようとする強い衝動を持つ。 (∵支配でき、自分が上位に立てば、(生物学的にも、社会的にも)、抹消される危険性が最小とな ると期待される。←生物全ての、本能的な欲求。) 2.人間は、皆が矛盾(?)した2つの側面を持っている。 1).支配されるのがキライな「自分」、 2).支配したいと欲している「自分」。 3.支配欲求のタイプによって、「高位・中位・低 位」の3つに明確に分かれる。 1).高位の人が、結婚相手として、中位や低位の人を選ぶという場合 には、「対等な人間関係を築けない」といった問題を抱えていることが多い。そ のため、自分が圧倒的な優位に立てるような相手をパートナーに選ぶ。それに よって、見捨てられるという不安から解放される。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 61 ⅱ-2-2).支配性向 (2/3) 『 http://morahara.nukenin.jp/99ijime/sihaiseikou.htm 』 2).中位の人:やはり支配欲をもち、更に力が弱い存在を支配す る。支配する暴君・存在に自分を同一化することによっ て、満足を得る。 3).低位の人:集団の力による支配を行おうとする。そ の人自身が支配性向低位であっても、優勢なグループ(所謂、人数の多 い「主流派」)に属することによって、少数派に優越することができる。(そ こで暗躍するのは、ねたみや怨嗟といった感情。競争社会ではライバルの成功 は、自分の失敗だと感じる人が多くなる。実際、職場イジメが増加しているが、で きない社員だけでなく、できる社員への露骨な嫌がらせが少なく無い。そこにも、 低位の者のねじまげられた支配欲求が潜んでいる。) (*).「道徳」が、小中学校の教科に格上げされた,きっかけとなった「い じめ」とは:『自分よりも弱い存在があることで優越感を抱きたいといった 人間の弱さが起因している場合が少なくない。』と分析されている。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 62 「末は博士か大臣か」とは、身分差別体制の確立 (3/3) 『 http://komachi.yomiuri.co.jp/t/2010/0318/302388.htm / 』 1.明治時代以降の立身出世意識を表した言葉。 当時、立身出世とは金持ちになることでは無く、名をあげるということであったので、立身 出世とは、官僚として出世するか・学問で身を立てること。帝国大学卒という学歴が必要。 2.「偉くなる」ことが学校教育の一つの目標である明治 以降の学歴制度は、多分に身分制度的要素(支配構 造:いわゆる、カースト制度と類似)を伴っていた。卒業大 学によって、終身雇用と年功序列が身分を保証してくれた。 (旧制高校(帝国大学への進学保証)への進学者は、同世代の1%だった。) 3.このような「仕組みと欲求の結合」が、昔ながらの一般 大衆の政府に対する「お上意識」と結合することで日本の 政治経済を実質的に動かす官僚的支配者意識を支えた。 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 2015/07/25 63 ⅲ-1.企業では?(マズローの『健全な心理的経営の基礎的要件』) 『 http://245.pandeiro.jp/index.php 経営情報モデル 』 要約すると、「従業員が自己実現の欲求を満たし、健全な人間に 成長できるような経営管理的条件を整えるべきである」ということ。 1.支配・被支配の関係がない (権威主義、独 裁主義がない) 2.個人は健全な精神の持ち主である 3.自己実現に対する積極的な態度 4.人間は向上するものである 5.人間は、重要・必要・有望視され、尊敬されることを望む 6.一般に、上司は、部下から好意・尊敬を受けている 7.人を受動的補助者としてよりも、能動的重要人として仮定する 8.人間は人間として扱われることを望む 9.人間はすべての意味ある仕事を好み、嫌悪することより愛すること によって多くの収穫を得る 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 64 ⅲ-2.マズローの『完全なる経営』より 『 http://blog.goo.ne.jp/vergebung/e/fe867f3c761119c9678172f59f003409 』 X理論的経営:権威主義的メンタリティによる経営、規則による拘束、序列の 固定化と命令系統の強化、ボスによる部下のコントロール、自社収益中心主 義、神経症的行動、怖れによる動機付け、官僚制等。 Y理論的経営:組織内における民主的対等性(ヒエラルヒーを否定するわけ ではない)、社員の自発性の促進、社外の状況への柔軟な対応、社会貢献の 意識等。 X理論に基づく収益中心の組織・末端の成員にイニシアチブを与えない組織 は本当に業績を上げないのか? 現実は、これと逆。派遣・契約社員の増加はむしろ補助的労働の地位を脱し 得ない労働者を大量に作り出し、40代・50代になっても年収300万円を越える のが困難な就業者を増やしている。現在の日本大企業の業績回復は、これら 雇用環境の変化にもたらされた。しかし、極端に低賃金の労働者を社会に大 量に放置し続けること、また業績と金銭をリンクさせる成果主義を取りつづける ことは、長期的には会社自体の環境を悪化させる要因になりえる。現在馬車 馬のように社員を働かせることで、現経営陣は安泰かもしれないが、企業の長 期的な存続は困難になる。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 65 コラム.09 年功序列からの決別は危ない。 一橋大学 伊藤 邦雄氏、経営情報化サミット。 1.経営モデルを探し求めた1990年代不毛の10年間。 2.「社員を重視する日本型経営」と、「株主を重視する米国型経 営」のどちらが優れているか?。 日本型経営の特長 ①.年功序列制度 ②.終身雇用制度 ③.御用労働組合 答えが出なかった問い 3.日本人は、経営の進化を妨げる問いの呪縛に陥っていた。 4.経営スタイルに国籍は無い。「日本型経営」とか「米国型経営」とかは ツールに過ぎない。絶えず改善/変革され続けなければならない。 5.日本型経営と米国型経営との対立を超えた「融和・統合型」経営モデ ル構築が必要となる。 最近の日本では、米国経営スタイルの導入と称して、安易な人 員削減を行う経営者が多すぎる。某 IT メーカーの経営者は、マス コミに対し「社員が働かないからだ。」とまで発言した。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 66 コラム.09 年功序列からの決別は危ない。 『 「キャリアショック」 著者:高橋俊介 東洋経済新報社 』 6.日本の年功序列制度の中で、悪いのは年功で はなく序列による支配だ。日本では職能資格制度 という社内等級制度を運用することにより、ビラミッ ド型の序列階層を構築した。そして、社員たちは、 ビラミッド組織の序列を上がっていくために、会社 都合最優先に服従した。 「序列による支配」+「経営とは利益を出すこと」 ⇒「不正による利益操作」+「トカゲの尻尾切り」が発生する。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 67 コラム.09 年功尊重の背景 「結晶性能力」という総合判断力 経験や学習を重ねていけば、若者よりも知的な能力が上がって いく。総合的理解力・総合的判断力など、物事の全体を見渡すよう な能力、それを「結晶性能力」と言う。時間をかけて経験しないと アップしない能力であり、むしろ老年期になってからも向上するの で、高齢者にとっては有利になる。芸術家などは常に結晶性能力に 磨きをかけているようなものなので、晩年になって優れた作品を残 すことも多い。 会社経営者なども仕事での経験や知識を積み重ねることにより、 結晶性能力に基づく総合判断力は年齢が高くなっても衰えることは ない。だから会社の重要な判断ができるのは会長や社長ということ になる。脳は年齢とともに機能を失っていくのではなく、歳を重ねた ほうが有利なところも多い。若者(流動性能力に秀でる)に常に負 けるわけではないのだ。 (但し、「悪智恵」だけが強化される人もいる。) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 68 コラム.09 『 2種類の知能能力 http://blog.goo.ne.jp/triarrowstar/e/5883f1676a62201e2e1e831e18cf5e15 』 20歳の平均値をゼロとして、加齢に伴う知能の 変化のイメージ図。暗記力や計算力、集中力など の流動性知能は、一般に20歳頃にピークに達し、 その後は低下していく。反対に、知識や知恵、判 断力、応用力、経験知などを表す結晶性知能は、 20歳以降ぐんぐん伸びる。大人の頭のよさは年を 重ねるにつれ、磨かれていく。 結晶性知能は年齢とともに伸びていくが、それは単なる知識や経験の足し算ではなく、ある時点 で飛躍的に伸びるものだという。例えば、仕事でも新人の頃はひたすら知識と経験を増やして いくしかないが、ある程度それらが増えると、「あの情報とこの情報がつながる」とか、「そういうこと だったのか!!」と目からウロコの体験が増えて、一個一個の知識が連動し始める。そ の結果、理解力が増したり、いいアイデアが生まれたり、判断力に磨きがかかったり、マネジメント能 力が向上したりする。そして、そのような知識の連動に伴って脳内で起こるのが、ドーパミンとい う神経伝達物質の増加だ。ネットワークが密になり、つながりやすくなる。 「ドーパミンは達成感や快感をもたらす。言ってみれば、できるビジネスパーソンほど仕事がおもしろい、ということになる」。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 69 Ⅱ-8.『戦略的経営』階層概念等の内訳 「戦術+兵站」の階層 :「機能別戦略(マーケティング戦略、 SCM戦略、販売戦略,生産戦略、等) ≒戦術のマーケッティング・コンセプト) ~以下の階層」は、省略。 →Ⅲ.「経営理念」の細目へ戻る。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 70 Ⅲ.「経営理念」の細目 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 71 Ⅲ-1.企業理念 (前述済み、省略) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 72 Ⅲ-2.ミッション (企業の存在理由)[≠使命、任務、業務命令] 『 ピーター・ドラッカー : 非営利組織の経営 』 (ミッションは当該企業が基本的に何のために起業するか・存在するのかを表すもの であり、企業は自社のミッションをできるかぎり基本的なレベルで言い表すべきである。 それによって企業の持続可能性が決定される。) ミッションから出発することは、成功している非営利 組織から企業が学べる最も重要な教訓かもしれない。 成功している企業は金銭的利益から出発して計画を立 てるようなことはしない。ミッションの実行から始めるの であり、金銭的利益は後からついてくる。 ドラッカーの(経営者に対する)5つの質問 第1の質問: われわれのミッションは何か 第2の質問: 第3の質問: 第4の質問: 第5の質問: 2015/07/25 われわれの顧客は誰か 顧客の価値は何か われわれの成果は何か われわれの計画は何か Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 73 Ⅲ-3-1).ビジョン経営:参考事例-1 (1/3) (リーダー論) 元・JAL 稲盛和夫 名誉会長: (京セラ創業→第二電電創業・KDDI→JAL) 古今東西、リーダーの力量次第で国も企業も栄枯盛衰の行方が 決まる。リーダーは4つのことを果たす人。 第1は組織の目指すべきビジョンを高く掲げる人。困難に直面しても目 指すべきただ一点に向かって集団を率いるのがリーダーだ。 第2は組織のメンバーとビジョンを共有できる人。社員がビジョンに心 から賛同しミッションに取り組まなければならない。 第3は人間性だ。人間性を高めるだけでなく、いわゆるフィロソフィを 組織に広める。これが組織を一つにする。 第4は、最後に業績が向上する仕組み能力もリーダーに問われる。具 体的には全社員が参加できる管理会計システムの構築が重要。 (注:「アメーバ会計(市場に直結した部門別採算制度)」では、戦術・兵站部分の採算性を、 ユニット(採算性を計測可能な最小のチーム)単位で管理している。) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 74 Ⅲ-3-1).ビジョン経営:参考事例-1 (2/3) JALグループ企業理念 JALグループに集う、経営陣を含めた社員一人ひとりは、~~、「JALで働いていてよかっ た」と思えるような企業を目指さなければ、お客さまに最高のサービスを提供することもでき ませんし、企業価値を高めて社会に貢献することもできません。~~経済的な安定や豊か さに加えて、仕事に対する誇り、働きがい、生きがいといった人間の心の豊かさを求めてい くとともに、心をひとつにして一致団結し、お客さまに最高のサービスを提供できるよう、必 死の努力をしていかなければなりません。~~強い採算意識と不屈不撓の精神をもち、公 明正大な方法で努力を重ねて利益を上げ、株主配当、納税、社会貢献等を行うことにより、 社会の一員としての責任を果たす~~ 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 75 Ⅲ-3-1).稲盛経営哲学の階層 (3/3) *.リーダーの卓越性と管理会計システム 1.社員第一 2.お客さま 3.株主 4.社会(納税、社会貢献) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 76 コラム.10 稲盛氏の経営哲学と中国 『 http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140723/269091/?P=1 』 中国期限切れ食肉事件と「稲盛和夫人気」はコインの裏と表: どんなに厳しく管理しても、こうした問題を完全に防ぐことは難しいだろう。日本ではフードセキュ リティーの考え方をさらに一歩進め、故意の異物混入なども防ぐフードディフェンスの考え方が一般 的になった。しかし、それにも限界はある。 となると結局、働いている「人」の問題に行き着いてしま う。時間はかかるかもしれないが、従業員に高い意識やモラルを持って働いてもらうこと以外に、根 本的な解決方法はないように思える。 稲盛氏は指導者で教祖でアイドル? 仕事に対する考え方や働き方が異なる中国で、従業員に高い意識を求めることは簡単なことで はないかもしれない。ただ、中国企業の間でも、従業員の意識を高めることを志向する企業がじわ じわと増えつつあるようだ。~中国で稲盛氏の人気が高いことはよく知られている。盛和塾のある地 区は既に公式なものだけでも11を数え、さらにいくつかの都市で設立の準備が進んでいるという。 なぜ中国でこれほどまで稲盛氏の人気が高いのか。稲盛氏の経営哲学が中国の古典などにル ーツを持つことも関係あるだろう。だが、何よりも大きいのは中国の経済・社会の変化だ。経 済成長で世界第2位の大国となり、人々の暮らしも豊かになった。それでも 格差は広がり、腐敗がはびこり、社会が良くなったという実感がない。だからこそ 稲盛氏が説く利他の教えに多くの人が共感する。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 77 コラム.10 稲盛氏の経営哲学は、正しく伝わるか? 『 http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20140723/269091/?P=1 』 アリババ創業者のジャック・マー(馬雲)氏も、尊敬する経営者の1人として 稲盛氏の名前を挙げている。マー氏は対話の中で、次のように語っている。「中国の企業に はもっと思想や文化の基礎が必要だと思う」。マー氏は長期間にわたり存続 する企業を作り上げるには確固たる思想やヴィジョンが必要だと考えているようだ。 「顧客第一、社員第二、株主第三」 (∵中国では、未だ、D>S) アリババはニューヨーク証券取引所に上場した。 (ソフトバンクは8兆円の価値を得た) ただ同社の上場を巡っては、マー氏ら特定の株主が大きな権限を持つ特殊な統治構造を問題視 する声も多い。株主よりも社員を重視する点では、稲盛氏の京セラともつながる。 「次の人生では、上場しない」 :2014/11新規株式公開(IPO)以降は、「人生の厳しさが増した」といい、 公開企業の苦労をにじませた。 2.(2015/07/07)株価が,上場以降、4割下落した。 3.(2015/07/11)アリババ幹部(競合会社テンセントから転職)が、元の会社で の汚職の疑いで拘束されている。 1.( 2015/06/13 日経新聞記事での「マー」氏発言) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 78 Ⅲ-3-2).ビジョン経営:参考事例-2 『 http://www.yukiseimitsu.co.jp/info/feature/3daime.html (1/4) 』 2013/07/29 湘南・茅ケ崎 町工場三代目 (大坪正人社長) 奮戦記 第100回(最終回) 幸せが長く続く会社 1.由紀精密は今後どんな会社を目指すのだろう。(由紀精密の創業は1950年。~~ ) 従業員が退職する時に、「なんて良い会社に勤められていたのだろう」と思える。 お客様から見れば、「由紀精密がある事で、素晴らしいモノづくりができた」。 社会から見れば、「由紀精密の挑戦で製造業が明るくなった」。 従業員、お客様、社会、それぞれに幸せをもたらす。そんな会社でありたい。 2.技術面ではどうだろう。 そもそも、モノづくりの会社である。技術は常に世の中の進化よりも一歩も二歩も先取りしていた い。~~では、どういったモノを作る会社になるのか。由紀精密はモノづくりを通し、人間の可能性 を拡大する事ができる会社になりたい。空を飛びたい、宇宙へ行きたい、深海に潜りたい、といった 従来行けないところに行けるようになる、という可能性の拡張も一つ。体の一部を失ってしまった方 に、機能を取り戻すだけでなく、プラスαの満足感を与える事もできるということも可能性の一つ。 3.ここまでのキーワード、「幸せ」「進化」「人間の可能性の拡大」、モノづくりを通じこれらを実現し ていく会社でありたい。そのため、不用意な規模拡大も必要ないし、瞬間的な利益を追い求めて急 速な生産拡大もないだろう。さまざまな要素が高密度に濃縮された会社でありたい。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 79 Ⅲ-3-2).ビジョン経営:参考事例-2 『 http://www.yukiseimitsu.co.jp/info/feature/3daime.html (2/4) 』 由紀精密では、現在世界中を飛んでいる旅客機に搭載される部品を数多く製造。なかには、由紀 精密が100%のシェアを持っている部品も存在。 航空機の部品を作ることは、ただ図面に謳われている要求事項を満たしていればよいというわけ ではない。いつ作られたどんな成分の材料を使用したか? その材料をどういう工程で誰がいつ削っ たか? どういう測定方法をして、測定器はいつ校正されたものを利用したか? こういった情報(トレ ーサビリティー)を完璧に管理し、飛行機が引退するまで保管されている必要がある。万が一飛行 機が故障した際には、原因と想定されている部品の情報を全て追跡できなければならない。そのた め、純粋に製造を行う以外のコストが大きくかかってきてしまう。 また、もう一つの特徴は、製造ロットが少ない点があげられる。 自動車部品のように製造ロットが 数万~数十万となってくると、その部品をいかに早く、安くつくるか? ということを考えて、そのため に最適な設備を専用で用意する。 しかし、飛行機の部品は多くても年間数千個。このためだけに専用設備を用意するほどロットがな い。 ということは、汎用的な機械を使って、頻繁に段取り替えを行う中で、いかに安いコストで製造 できるかが競争力となる。 この点では、小回りの利く中小企業の出番になる。 民間の航空機の部 品は決して単価が高いわけではない。 その中で、いかに安定した品質で、きちんとした管理のもと、 低コストで作るか? この基本をしっかりと押さえることが、航空機部品を作り続けられることにつな がる。そういう意味では航空機部品受注に近道はない。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 80 Ⅲ-3-2).ビジョン経営:参考事例-2 『 (3/4) http://www.meti.go.jp/press/2011/02/20120208005/20120208005.html 』 2012/02/08 「中小企業IT経営力大賞2012」優秀賞受賞 電気機器メーカー向け部品製造から、航空・宇宙・防衛産業、医療機器 産業、電子・通信産業などの高付加価値製品分野向けの顧客開拓と事業 モデルを構築した。 “切削加工”をキーワードにしたWebサイトを立ち上げ、営業専任を置かないマーケティ ング体制を確立した。 新たな分野の顧客や多様な要求に対して、柔軟にかつ迅速に対応するため、自社で生 産管理システムを構築し、これまで縦割りだったデータベースの統合を図り、業務の効率 化を進めた。 また、三次元CAD/CAMのカスタマイズにより、加工中の測定結果を分析フィードバック して、超高精度の加工が可能なシステムを開発。これにより、技能者の暗黙知の形式知 への置き換えも可能とした。 これらの取組により、業績の回復と向上を実現し、経営が目指したビジネスモデル転換 を着実に実現する取組を継続している点が評価された。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 81 Ⅲ-3-2).ビジョン経営:参考事例-2 『 ある中小企業経営者の方からのメール (4/4) 』 ~~です。コメント拝読しました 稲盛会長の言葉を教えていただき有り難うございます。由紀精密さんの経営の様子が、 あまりに、稲盛会長の言葉通りで驚きです。 ビジョンや経営理念が「額」に入ったままで、まったく構成メンバーの間に共感、共有され ていない会社は多いのではないでしょうか。組織のメンバが、ビジョンに「心から賛同し、 ミッションに取り組む」。そういう経営ができるよう、私も一層心がけたいと思いました。 「規模を目指さない」方針には、現実的な悩ましさがあります。研究開発にしろ、その ための設備投資にしろ、挑戦をするためには、現実にお金が必要です。 ~~ 企業を安定的に健全に運行させていくための、「計器類」を整備しなければなりません。 おそらく、「元気で優秀」と評価されている中小企業であっても、会計システム(管理会計) については、あまり上手く構築できていないのが実態だと思います。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 82 Ⅲ-3-3).「社員第一」経営:参考事例 *「晴れ舞台」で、社員を讃える「経営者文化の伝統」 1.由岐精密 [社員数23名] 1).2012/02/08 「中小企業IT経営力大賞2012優秀賞」受賞。 授賞式には、笠原取締役・営業部長が出席・賞状を受け取った。 2.電化皮膜工業(株) (日本で最初に硬質アルマイトの工業化に成功) [社員数38名] 1).東城 佶氏(83才)が、技術に携わる人間の最高の栄誉 「黄綬褒章(現代の名工)」を拝受。 2).電化皮膜工業には、定年がない(身につけた技術は一生のもの/生涯支援) 3).東城 佶氏のコメント:「本来なら社員ではなく、経営者が拝受す るものなのですよ。私を推薦してくれて、社長は随分太っ腹な人 だと思いました。」 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 83 コラム.11 社員満足度と顧客満足度 (1/3) 顧客価値向上のためには、社員価値の向上が必要であり、これにより収益の 源泉としてお客様ロイヤリティーと社員ロイヤリティが確保できる。(3R戦略) 企業は人成り サービス・プロフィット・チェーンによる好循環サイクル 従業員 定着率 社員 サービス の質 従業員を「労働者」ではなく「知識労働者(ナレッ ジワーカー)」として捉える。現在ではメーカーに おいても、モノをつくったり運んだりしている人間 は30%以下で、70%以上はホワイトカラー。 お客様 サービス の質 従業員 満足度 従業員の 生産性 お客様 満足度 売上と 成長 お客様 ロイヤリティ 4P戦略時代と異なり、3R戦 略時代に於いては人財は極 めて大切である。 利益率 3R:①.カスタマーの維持(Retention)、②.関連販売(Related sales)、③.クチコミ (Referrals)。 [出典]「カスタマー・ロイヤリティの経営」、ハーバード大学W・アール・サッサー・ジュニア他著。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 84 悪魔のループが回り始める。 ( 2/3 ) コラム.11 BPRも行わず、「申し訳ない」と苦渋の選択の説明もせず、流行に便乗してリストラの 名のもとに人員削減(レイオフ)を行うと、残された社員は、「先に辞めさせられた人達への 申し訳なさ、責任を明確にしない経営陣への不信感、多忙がもたらすストレス」等により 疑心暗鬼に陥り、会社は険悪な雰囲気となり、社員満足度は明らかに低下する。 企業の目的は利益なり 従業員 定着率 悪化 社員 サービス の質低下 売上と 成長 鈍化 お客様 サービス の質低下 従業員 満足度 低下 お客様 満足度 低下 お客様 ロイヤリティ 悪化 従業員の 生産性 低下 利益率 減少 サービス・プロフィット・チェーンの逆回転サイクル 2015/07/25 Copyright (C) Yasuaki Nakajima All rights reserved. 85 コラム.11 「やる気を引き出す」には? (3/3) 1.アンダーマイニング効果: 内発的に動機づけられた行為に対して、報酬・金銭等を与えるな どの外発的動機づけを行うことによって、モチベーション(やる気) が低減する現象。(一度報酬を得てしまうと、人は何のために行動しているのかがわかりに くくなってしまう。) 例).特に外からの働きかけがなくても勉強している子どもに、外的報酬・お小遣い等をあ げるのは内発的動機づけが低下させることになる。報酬をもらえるという期待がないと、 学習しなくなる可能性がある。日本人は何かと「がんばれ」というが、既にがんばっている 人には逆効果になることがある。 2.エンハンシング効果:「褒めて育てる」 言語報酬(褒める)などの外的要因が内発的動機づけを高める 現象。 例).ハーロックの研究では言語報酬としての称賛に教育的効果があることを実験的に証 明し、言語報酬がパフォーマンスを高めることも明らかにした。やはり子供は褒めてあげる のが一番よいのだろう。 *)他に、モチベーション理論は、多数ある。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 86 Ⅲ-4-1).「クレド」の事例1 1.ジョンソン・エンド・ジョンソンのコア・バ リューである「我が信条(Our Credo)」: 『社是、経営理念、ビジョン、ミッションなど、その会社を表す文書は何種類もありますが、 ジョンソン・エンド・ジョンソンについて言えば、「我が信条」という、A4用紙一枚の文書があ るのみです。この文書は顧客、社員、地域社会、そして、株主という四つのステークホル ダー(利害関係者)に対する責任を具体的に明示したものです。起草以来60年以上に亘 り、ジョンソン・エンド・ジョンソンの行動指南役として機能し続け、今後もその役割を果たし 続けることでしょう。』 『1982年・1986年の二度にわたるタイレノール(解熱鎮痛剤)事件のときほど、この真価 が発揮されたことはありません。この事件対応に関わった経営陣、現場の社員の誰もが、 「我が信条」に込められた哲学に従って、数え切れないほどの意思決定を行ないました。 のちに、このときのジョンソン・エンド・ジョンソンの対応は企業の危機管理の好事例として 色々なところで取り上げられています。企業経営においてCSR(企業の社会的責任)とい う概念が最近定着しつつありますが、ジョンソン・エンド・ジョンソンは半世紀以上前から、 多くのステークホルダーに対する社会的責任を意識した経営を行なっているのです。』 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 87 Ⅲ-4-2).「クレド&社員尊重」の事例2 クレドとは、「方位磁石、進んでいく方向」 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 88 Ⅲー5-1).(老舗企業の)社是・社訓・家訓 1.日本の老舗企業 1).欧米の、(一部識者の)「企業寿命30年説」社会とは根本的に異なり、 2).日本では、「縦の絆(歴史・時代・時間等)・つながり・連鎖」も尊ぶ。 →(事例):社員を生涯支援する、社員は身元がわかっている縁故入社だけ選ぶ。 →(事例):「お客さまの、祖父~親~孫~N世代が利用する」(下町の食堂も同様) 200年以上の老舗企業数:3000社以上(東証1部&2部上場企業数とほぼ同数) 100年以上の老舗企業数:27,335社 (2015/07/01時点) 例).ラーメン業界の「春木屋」理論 1).業界では毎年約4,000店出店・約4,000店退場、3年以内に8割消滅 2).「中華そば」の『春木屋理念』:「いつも変わらず美味しい」 『お客様から「変わらない味」と言われる「変わり続ける味」』 (実際には、変えてはいけない原点『味の幹』を守りながら、研鑽を続け、 変化を繰り返し続ける。)→「お客様の舌より常に一歩先に行く」 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 89 Ⅲー5-2).老舗企業の現在に通じる経営手法の極意 『 http://www.it-planning.jp/keiei-it110/2011/04/post-169.html 』 1.ムリをしない、堅実な経営 実力や経営体力以上に背伸びせず、売上・シェアといった価 値観には拘泥しない。(鈴木敏文氏:「量は決して質を凌駕できない。質的イノベーションを 欠いた量の拡大は、スケールメリットどころかスケールデメリットを招来しかねない」) 2.本業を重視しながら,顧客満足度を向上させる新規サービス 事例:六本木ヒルズ・虎屋が運営する「TORAYA CAFE」 3.「遺すもの」と「変えるもの」の区分が明確 本業やのれんを重視&「伝統は革新の連続」 4.世間が納得する後継者承継を実現できた場合、長期経営可能 5.同族経営 (に対する一部の声) 1).ディメリット:「公私の区別が無く、会社を私物化」「人事が不透 明」「サラリーマンとして勤め上げても、役員にもなれない。」 2).メリット:「意思決定のスピードが速い。」「機動力がある。」「トラ ブルなどが生じても、最後まで責任を取る。」 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 90 Ⅲ-6-1).行動規範 行動規範 [governance code (経営理念>行動規範) ≠ コーポレートガバナンス・コード(企業統治)] :(行動指針の趣旨に則った具体的な行動基準、模範や手本のこと、 ) 『東京商工会議所HP』 従来、経営理念や社訓・社是という形で、コンプライアンスを念頭にお いて、抽象的な行動規範に準じる行動指針を示している企業は多いが、企業の社会的責任(CS R)に対する認識の深まり等から、今後はその社訓等を具体的な言葉で「企業の行動規範」に落 とし込んで、従業員にわかりやすく、実践しやすい形で示していくことが重要となってきた。 「コンプライアンス(法令遵守)」の概念 行動指針 :組織を統率する行動の方針。抽象的・概念的。基本方針。 企業スローガン : 対外的な行動等に関する重要な方針を簡潔に表現した標語。 企業モットー : 対内的な規範を述べた標語、簡潔な座右の銘に類するもの。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 91 この頁は、ブランク頁です。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 92 この頁は、ブランク頁です。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 93 Ⅲー7-1).価値観 『 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BE%A1%E5%80%A4%E8%A6%B3 』 価値観とは:(コトラーの「マーケッティング3.0」の中核概念:近年の経営の最重要ポイント) 何が大事で何が大事でないかという判断、 ものごとの優先順位づけ、ものごとの重み付けの体系。 価値観の形成は様々: 1.親から教えられる。2.書物を読むことで吸収する。 3.組織や共同体に属することによって継承される。 4.個人的な体験をきっかけにし、自らの思索の積み重ねによって、 独自に新たな価値観が構築されることもある。 ある個人の価値観は、「生き様」などになって現れることは多い。 企業組織において、価値観は、 1.企業風土や、従業員の具体的な行動、 2.顧客が受け取るサービスや商品のあり方にも影響し、 3.結果として企業の存続/消滅 にも影響することがある。 その企業に適していて社会的にも適切な価値観を構築し、それを従業員 に提示し共有してもらう、ということは経営者・リーダーの重要な仕事。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 94 Ⅲー7-2).見せかけの価値観 (1/3) 『 フィリップ・コトラー「マーケッティング3.」 』 見せかけの価値観 1.(リチャード・バレット言):企業も人間の場合と類似した精神性 の段階をのぼっていける。そして人間の精神的動機は企業向 きに手直しして、企業のミッションやビジョンや価値観に組み 込める。 2.だが、よき企業市民という価値をミッションやビジョンや行動規 範に盛り込むだけで、事業の中でそれを実践してはいない企 業を、われわれはたくさん目にしてきた。また、PRのための ジェスチャーとして、社会的に責任ある行動を約束する企業も たくさん見てきた。 3.マーケティング3・0は企業のPR活動ではない。企業が自社 の文化に価値観を織り込むということなのである。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 95 Ⅲー7-2).偽りのCSR (2/3) 『 フィリップ・コトラー「マーケッティング3.0」 』 偽りのCSR(企業の社会的責任): 企業の慈善活動は優れた会社を築くすばらしい出発点になる。 1.第一に、当該企業のリーダーたちは社会的課題に熱心になり、そのために 個人のお金や会社のお金を寄付するようになる。 2.第二に、企業の慈善活動にはマーケティング上の価値があることを、企業 が認識するようになる。 だが、これら二つの出発点はたいてい失敗に終わる。 1.最初のアプローチをとる企業は、通常、社会貢献を自社のDNAに組み込む ことができない。 2.二番目のアプローチをとる企業は、通常、コミットメントを維持できなくなる。 そのうえ、企業は本物の社会貢献を行ってはいないー単に売り上げをあげ るために善行をなす―という落とし穴にはまる。 社会貢献を企業文化の一部とし、コミットメントを維持するため には、それを企業のミッションやビジョンや価値観に組み込むの が最もよい方法。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 96 Ⅲー7-2).メセナとは? (3/3) メセナ (mécénat) とは、企業が主として資金を提供して文化、芸術活動 を支援すること。ただし、企業による資金以外の経営資源(人材・施設等) による支援も少なからず行われている。また、企業による事業主催なども 含まれる。代表的なものに財団などを通じた資金的バックアップや、企業 が主催する各種公演・開催などがある。 バブル景気の頃には、金に糸目を付けない派手なメセナが盛んに行わ れた。中心となったのはバブルの原動力となった不動産関係の会社が多く、 隠れ蓑代わりの位置づけ(美術品収蔵庫代わりの美術館等)もあった。 バブル崩壊後、日本では、あえて企業名を正面に出さない地味なメセナ が展開されるなど、規模は縮小しつつも視野は広がり、多様化しつつある。 1990年に公益社団法人企業メセナ協議会が発足、「メセナ」という言葉が 次第に広まっていった。現在では「企業の行う芸術文化支援」から、教育 や環境、福祉なども含めた「企業の行う社会貢献活動」と、広義の解釈で も使用されている。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 97 Ⅲー7-3).(自己実現を目指す)社員にとっての価値観とは? (1/2) 『 フィリップ・コトラー「マーケッティング3.0」 』 社員は会社の活動の最も直接的な消費者。本物の価値観によっ てエンパワーされることが必要。 1.社員にストーリーを語るのは、消費者に語るよりも難しい。 自社の価値観と、社員の実際の経験が一致するか否かを 確認できるからだ。価値観に背く経験がひとつでもあれば、 ストーリー全体が台無しになる。 2.消費者は、本物でないブランドの経営理念を容易に見抜くこと ができる。それ以上に、組織の内部にいる社員が、まがい物 の価値観に気づくのは、はるかに簡単だ。 3.非上場企業は一般に、強力な価値観を築ける可能性が上場 企業より高い。非上場企業は通常、投資家からの圧力がない ので適正なペースで成長できる。社員一人ひとりに自社の価 値観を植えつけることもできる。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 98 Ⅲー7-3).企業文化の構築 (2/2) 『 フィリップ・コトラー「マーケッティング3.0」 』 価値観を記述した文書(「額」に入ったままの経営理 念や、行動指針・行動規範の通達文書)等は企業文化 の半分に過ぎない。 1.残りの半分は、社員の共通(common)の行動である。 2.企業文化を築くとは、社員の共通の行動を、企業の 価値観と一致させるということ。 3.言い方を変えると、組織内での日常の行動を通じて 価値観を示すということ。 4.「建前と本音」≒「表と裏」 ≒「建前は形だけ」という 概念が、(特に、経営トップ層に)存在・実行されると、 社員の価値観は、容易に崩壊する。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 99 この頁は、ブランク頁です。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 100 Ⅲー7-5).価値観を組織化・統合(Integration)する 『 稲盛和夫の経営問答:従業員をやる気にさせる、リーダーとしての7つのカギ 1.従業員をパートナーとして迎え入れる。 2.従業員に心底惚れてもらう。 3.仕事の意義を説く 。 4.ビジョンを高く掲げる。 5.ミッションを確立する。 6.フィロソフィを語り続ける。 7.自らの心を高める。 (他者からの評価や、承認欲求に依存しない) (注:トリンプ 元社長・吉越氏:「社員は家族では無い、戦友である。」) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 101 』 Ⅲー7-5).価値観を組織化・統合(Integration)する 『 サウスウエスト航空 』 1/3 サウスウエスト航空の理念: 温かい心、親しみやすさ、個々人の矜持(individual pride:自信と誇り)、 そしてカンパニースピリットを重んじ、最高の顧客サービスを提供すること である。 従業員へ: 私たちは従業員に、学習と成長の機会を平等に保証 し、安定した労働環境を提供することを約束する。サウス ウエスト航空の企業価値を向上するために、創造性と革 新性を奨励する。そして何よりも、私たちは、従業員を、 敬い、尊敬し、慈しむとともに、従業員にはこれと同じ態 度を持ってすべての顧客に接することを期待する。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 102 Ⅲー7-5).価値観を組織化・統合(Integration)する 『 サウスウエスト航空 』 2/3 同社のもともとの発想の原点は「空飛ぶバス」、つまり、競争相手 は通常の大手エアラインではなく、バスや自動車という考え方であ る。中規模の空港を拠点に、シンプルな乗り継ぎなしの直行便を、 短い折り返し時間で効率的に飛ばす。同時に、無駄なサービスは 極力カットし、「移動」という根源的な価値に絞込み、コストダウンを 図るのが同社のやり方。 LCCとして知られ、徹底した人件費以外のコスト削減等が図られ、 収益率は他社より高い。ポリシーの1つとして「社員第一、顧客第 二」を掲げており、米国の航空会社で唯一、アメリカ同時多発テロ 事件を受けた航空産業冷え込みにもレイオフを行っていない大手 航空会社でもある。2012年にはスイスの航空輸送格付け機関から 「世界で最も安全な航空会社」の10社のうちの1社に選定されてい る。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 103 Ⅲー7-5).価値観を組織化・統合(Integration)する 『 サウスウエスト航空 』 3/3 サウスウエスト航空の高収益を支える鍵としてよく言及されるのが、同社の組織運営の 仕組み。現場に裁量が任され、それこそリッツカールトンホテルのような、従業員の自発的 行動に関するヒーロー/ヒロイン物語が社内で語られる。評価報奨はチーム単位だか ら、チームワークは必須。 LCCでありながら、従業員の給与レベルを高く維持している。ANAやJAL に比べ、圧倒的に安い給与レベルとなっている日本のLCCとの決定的な差異がそこにある。 サウスウエスト航空のCSは、航空業界では常にナンバー1を争い、全業種の中でも指折り の地位を占めている。 サウスウエスト航空の理念を見ると、やはりまずは顧客に良いサービスを提供すること が重要と考えている。と同時に、そのすぐ後に「従業員へ」と来るところが、いかにもサウス ウエスト航空らしい。通常の企業であれば、ここは「行動指針」や「Principles」 などとして、対外的な「我々は○○をします、我々は△△をします」といった 約束が来そうなものだ。そうではなく、「従業員へ」という形で、「我々は■■を従業員 に提供する。(社内では)▲▲するよう奨励する…」という書き方は、企業の理念が反映され ている証左であろう。ちょっとした書き方の差かもしれないが、神は細部に宿る。やはり従業 員第一主義(従業員至上主義や温情主義ではない)の精神は息づいている。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 104 Ⅲー7-6).成果主義には本質的欠陥 東京大学教授 高橋伸夫 氏 成果主義によって人が懸命に働くことは無い。人が懸命に働くため には仕事自体にやりがいを見いだせるシステムが必要。次の仕事内 容で報いる「日本型年功制」を生かして、その運用改善に取り組むの が最善。 給料を上げれば勤労意欲が高まるという前提自体が科学的根拠 のない迷信。むしろ報奨金は仕事の喜びを奪う。 最初は楽しいから「仕事」をしていた。ところが金銭的報酬が投げ 込まれると、それが仕事と満足の間に割り込んで「仕事→金→満足」 と金のために仕事をするようになってしまう。だから金がなくなると、 満足も得られなくなり、仕事をする気もまた失せる。かくして、成果主 義は失敗する。「成果を上げれば金をたくさん払うから、嫌な仕事で も文句を言わずに働け」では人は懸命には働かない。仕事自体にや りがいや面白さを見いだせるようなシステムを作らなければ、人は懸 命には働かない。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 105 Ⅲー7-7).多様な価値観 『 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BE%A1%E5%80%A4%E8%A6%B3 』 価値観の違い: 1.価値観の多様性と分布、変化: 1).人々の抱いている価値観は多様である。 2).多様でも、国や地域や文化圏ごとに、何らかの傾向がある。 3).同一地域・国でも、時代とともに価値観は変遷してゆく。 2.宗教: 宗教的な共同体においては、顕著に価値観は共有されている。例えば、 キリスト教・イスラム教・仏教の、各共同体等では、数千年以上にわたり世 代や時間を超えて、価値観や生き様を継承し共有しつづけている。 3.格差: 「先進国と新興国、経済力(富裕層・中間層・貧困層)、政治体制(民主主 義・社会主義)、歴史観(大国思想・中華思想)、国籍、部族主義、性別、多数 派vs少数派」等は、多くの場合、価値観の違い・障壁等を構成している。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 106 Ⅲー7-7).最近の価値観の変化 『 フィリップ・コトラー「マーケッティング3.0」 』 優れた価値観は、ビジネス環境に作用している次の3つの力と整 合性を有する。(→価値観は外部環境の変化により、変わってきている・変えるべきだという意味) 1.協働技術(インターネット前提の社会)、 2.グローバル化による文化の変容、 3.創造性の重要度の高まり 1:情報技術によって力を与えられた相互に連結した世界では、 人びとは、ひとつの目標を達成するために協働する傾向を 益々強めている。 2:グローバル化は文化の変容を瞬く間に、しかも度々生じさせる。 (人びとの生活に文化的な変化を起こそうという気持ちを抱かせるという意味) 3:さらに、人びとはマズローの欲求のピラミッドをのぼって、より クリエイティブになりつつある。(自己超越欲求を目指す) したがって、優れた価値観とは、社員の協働的・文化的・創造的 側面を活性化させ、育成するべきものである。 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 2015/07/25 107 Ⅲー7-7).強力な価値観(普遍的価値)は、グローバル展開可能 『 フィリップ・コトラー「マーケッティング3.0」 』 多様性(ダイバーシティー)の統合と促進 1.強力な価値観は、企業が一見、相対立するかに見える目標を 同時並行で達成するのに役立つ。 2.多くの事業所を持ち、多様な社員を抱えている環境の下でも、 強力な価値観は違いを小さくし、社員をひとつの企業文化の 中に統合する。 3.強力な価値観を全ての社員が自分のものにしていれば、企業 は社員に(本社から離れていても)、自信を持って権限 を与えることができる。権限を与えられた社員 は会社に利益をもたらすために全力を傾ける。 4.強力な価値観を持つ企業は、意思決定の分散化・ローカル化 に成功する。このような価値観は、企業の標準化だけでなく ローカル化にも役立つ。価値観は、きわめて模倣しにくい。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 108 Ⅲー7-7).国民性の意外な違い 『ホフステッド指数による1988年の「国民性分析」 (ブルース・コグートとハビール・シン)』 1.日本人と価値観や行動様式が近い国の順位: 1位:ハンガリー、2位:ポーランド、8位:ドイツ、28位:フランス、39位:韓国、41位:米国、 47位:中国、49位:英国、 61位:マレーシア、64位:シンガポール 他 (この計算式の妥当性が完全に正しいという保証はない。) 2.2000年前後までは、多くの企業が事業展開の国際化を図ろうと する際、世界中で通用する共通のマネジメントシステムを志向した。 (世界共通の国際会計基準の制定等--○) (ヒトのマネジメントに関し、人事制度、評価制度、報酬制度を各国共通にユニバーサル化する試みは ほとんど頓挫した--×) 3.「インタンジブルなことこそ重要な経営戦略テーマ」: 当然の課題が浮き彫り・明確になった。 4.「では、価値観の統合は,どうすれば良いのか?」 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 109 Ⅲー7-8).価値観の究極の目標 :「楽しむ」 論語(紀元前500年頃)の言葉: (ギリシャでは、「ヘラクレイトス:弁証法」の時代) 「知之者、不如好之者。好之者、不如楽之者。 (これを知る者は、これを好む者に如かず、これを好む 者は、これを楽しむ者に如かず)」 1.仕事の技術のある人はすばらしい。 2.技術のある人も仕事を好きでやる人にはかなわない。 3.好きでやる人も、仕事を楽しんでやる人にはもっとかなわない。 「楽しむ」=無心に集中することで、喜びや充実等を感じること(無心で遊ぶ子供の様子と同じ)。 脳がフロー状態:「集中している状態、緊張はあるが余裕でリラックスしている時最高の性 能が出る、流している感覚、動く物が止まって見える」等。学習や仕事等に集中し, 「楽しい」と感じるときもフロー状態。 (スポーツ選手・アスリート等が、よく「試合を楽しめました」とか「楽しんで演技してきます」と か言っているが、 彼ら・彼女らは、スポーツ心理学をしっかりやっているから、この論語の 一節は脳科学的にもあっている。) (コラム07.終了) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 110 Ⅳ.戦略的経営階層概念による 「経営の概要理解」の事例 なお、「戦略的経営階層概念」だけで,卓越した経営の全てを理解できる訳で はありません。見落とした「経営の強み」が多数あることを,ご容赦下さい。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 111 Ⅳ-1.ユニ・チャームの戦略的経営階層体系図 戦略的経営 経営目的 =経営理念 +経営目標 経営理念:「NOLA & DOLA」」、女性の社会 進出・地位向上を応援、多様な価値観を統 合、国連ミレニアム開発目標に参画。他 + 経営目標:2015年12月期売上高 7,600億円, 2016年12月期売上高 9,131億円、 2020年経営目標(G20計画) (連結売上高 1.6兆円、売上高年平均成長率15%、 営業利益率15%、ROE15%) 経営方針:新商品による高付加価値の提供→企業価値の向上 経営戦略:継続的イノベーションによる新市場開拓、 ←戦略策定プロセス(共振の経営 :3現主義・仮説検証思考・「凡事徹底が非凡を生む」) → 戦略 事業戦略:機能絞り込み製品等により、ブルーオーシャン市場を創る。 (「製品力の差別化」、「流通チャネルのグリップ」、「消費者とのコミュニケーション」によるトップシェア獲得) 作戦 事業課題:日本とアジア各国民の肌感覚等の違い ビジネスモデル:「共振人材」により日本の経営の「型」を持ち込む 戦 術 兵 站 (製品機能の絞り込み、低価格化、小分け戦略、配達戦略、現地人によるコール センター戦略,現地工場戦略、等:4P)≒戦術のマーケッティング・コンセプト マーケッティング目標設定→標的市場(STP)の選定 日々の仕事 社長参加のSAPS経営会議→SAPS(マーケッティング管理・SECIモデル・人財育成) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 112 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 113 Ⅳ-2.沿革 (1/2) 高原慶一朗氏 創業 Ⅰ.先代:高原慶一朗氏(カリスマ経営者) (1931年生、2004年旭日重光章) 1.関西紙業をへて,1957年父の経営する国光製紙にうつり,専務。 2.1961年、愛媛県川之江市(現:四国中央市)で、大成化工(株)[木毛セメント板の製造販売]・ 資本金300万円・社員数24名で、創業。 3.1963年、アメリカへ視察に行った際、大型スーパーマーケットで生理用品が、堂々と山積みされている光景 を目の当たりにし、生理用ナプキンの製造・販売に着手。(巨大な潜在需要: 「女性の解放と夢」) 「天の時:1960年所得倍増計画発表、1964年東京オリンピック、戦後高度成長期、アメリカ文化の移入・流行期。 地の利:大王製紙四国本社も四国中央市(技術集積地)、~」 4.中国地方で、「アンネ、P&G、花王」等のニッチ市場を狙い、キャラバン隊によるローラー作戦を実行(チームに女性1名参加) 5.1974年、「ユニ・チャーム株式会社」に社名に変更、「タンポン」製造販売開始 6.1976年、東京証券取引所第2部に上場、 7.1981年、ベビー用紙おむつ「ムーニー」を発売 8.1984年、台湾に合弁会社設立 9.1985年、東京証券取引所市場第一部銘柄に指定 10.1986年、ペットケア事業、教育事業へ参入、 11.1987年、シニア用紙オムツ「ライフリー」発売、タイに合弁会社設立 12.1988年、香川県綾歌郡宇多津町にゴールドタワー(高さ158m)を建設 (1991年バブル崩壊) 13.1991年、長男高原豪久氏ユニ・チャーム入社 14.1993年、サウジアラビアでパンツオムツの技術提携、オランダに合弁会社設立 15.1995年、上海に合弁会社設立。1997年、インドネシアに合弁会社設立。→年商・約2000億円 16.2001年6月、長男高原豪久氏(39才)社長就任、企業理念「新NOLA&DOLA」制定 17.2001年9月ゴールドタワー運営から撤退、2002年建材事業から撤退、周辺事業から撤退。経営資源を集中。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 114 Ⅳ-2.沿革 (2/2) 高原豪久氏社長就任 Ⅱ.社長就任時、「おまえのせいで株価が下がるんじゃ!」 1.カリスマ経営者の力で、田舎の建材メーカーから生理用品・紙おむつのメーカーへと変 化を遂げた、いわばベンチャー企業。ゆきすぎた経営多角化と国内市場の競争激化に より、経営は壁に突き当たっていた。創業以来、業績は右肩上がりだったが、00年、01 年と2年連続で営業利益が減少していたのである。多角化経営の縮小や指示待ち体質 の社風を変えることが急務。 *.多くの経営戦略書・成功経営事例等を読破、「ポジションニングとケイパビリティー」を 理解、野中郁次郎氏の暗黙知(SECIモデル)にも注目。 2.「求心力維持のためのシンボル」を早急につくり上げる必要→「変革を周到に準備」 3.CI、本社の移転、組織体制の改革、プロジェクトや研修の参加者に与える特別なバッジ の導入(メールマガジンを毎週書いて、全社員に変革の必要性や内容を伝えている) 4.「SAPS経営」の導入:SAPSとは、行動予定の作成→予定の実行→効果の検証→検証 に基づく次の行動予定の作成というサイクルを週単位で回していき、仮説・検証のクセ をつける独自の経営手法:2003年導入→2010年新入社員まで実施。(米P&Gのマネジ メントモデルや京セラのアメーバ経営を参考にした、SECIモデルの具体策) 5.「ユニ・チャームウェイ」という、社是やSAPS経営のマニュアル(ユニ・チャーム語録:トヨ タ生産方式に範をとった「3つのムダ」「6S」など、まさに誰もが納得せざるをえない金言 で構成) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 115 Ⅳ-3.経営の現況概略 参考:「ランチェスターの法則」 (D>Sの市場が前提) 1.下限目標値:26.1% 2.安定目標値:41.7% 3.上限目標値:73.9% 2015/07/25 例)「~ケア」とは、その範疇 の商品全般であり、多くの 市場を形成している。 現在、約80ヶ国で 展開中。 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 116 Ⅳ-4.経営理念:「NOLA & DOLA」 「Necessity Of Life with Activities & Dreams Of Life with Activities」 の略: 「赤ちゃんからお年寄 りまで、生活者がさまざまな負担から解放されるよ う、心と体をやさしくサポートする商品を提供し、一 人ひとりの夢を叶えたい」との意味。 日本など成熟国での少子高齢化・地球全体規模 の環境問題・発展途上国の貧困衛生問題など、 様々な社会的課題を同社のコア技術(不織布吸収 体)を使って本業で解決していくこと。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 117 Ⅳ-5.ユニ・チャームの企業理念体系 創業当初からの3つのDNA(価値観):「尽くし続 けてこそNo.1、変化価値論、原因自分論。」 社是(1974年):「企業の成長発展、社員の 幸福、及び社会的責任の達成を一元化する 正しい企業経営の推進に努める。」 “信念と誓い”と企業行動原則(1999年): 「お客さま:常に全力で尽くし続けることに よって、No.1のご支持を頂くこと」、「株主:業 界一級の利益還元を、実現すること」、「お取 引先:公平で公正な関係を保つことによって、 お互いの健全な成長」、「社員:ひとりひとり に自信と誇りを提供し、社員及びその家族 の幸福を実現すること」、「社会:全ての企業 活動を通じて、そこに携わるひとびと、及び 社会全体の、経済的かつ精神的充足に貢 献すること」 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 118 Ⅳ-6.インドネシアでのブルーオーシャン開拓事例 ユニ・チャームにとってインドネシアでの生産活動は、海外 で事業展開をするうえでの大きな気づきを与えてくれた重要 な拠点。1997年の進出当時生産・販売していた、日本と同じ 品質の紙おむつ「MamyPoko」は、インドネシアの一般家庭で は手の届かない高級品。そのため、気候風土など、そこで生 活する人たちの肌感覚を理解するため、一般家庭を訪問して 話を聞き、時には生活を共にするなど、徹底した訪問調査を 行った。 現地の人たちにとって不必要な機能を省き、必要とされてい る機能を追求して、低価格化を実現したのが「MamyPoko Pants Standard」。まとめ買いの習慣がないことから、1枚ずつ 買えるシステムも導入して、今でもインドネシアのお客様から 大きな支持を得ている。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 119 Ⅳ-7.発想力とスピードで海外市場に勝負! 1人当たりGDPが1000ドルを超えれば生理用品が売れ始め、3000ドルを超える とベビー用紙おむつが普及の成長期に入るといった、国内事業で培った「物差し 」が、海外にもそのまま通用する。 海外展開の勝負どころは、その国のGDPレベルが一定のラインに達し て製品の普及が始まった瞬間、すなわち製品のライフサイクルの成長前 期に、確実に、そして効率的に果実を取りにいくことに尽きる。(事前の データ分析は行わない) 仮説を立てたら、たとえ片目をつぶってでもマーケットで実行に移してし まう。その結果を即座に検証して、失敗ならばすぐさま仮説を修正し、再び 実行に移す。未開のマーケットで効率的に普及させるには、この仮説・検 証のサイクルをすばやく回していくことが最も実効性が高い。発想力とスピ ードを武器にする。そしてユニ・チャームの社員は、SAPSによって、その 訓練を日ごろから積み重ねている。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 120 Ⅳ-8.共振の経営:SAPSとは? (1/6) SAPSとは、半期ごとに策定する目標を踏まえて、週次、日次ベースの 細かな予定に落とし込む行動計画のこと。計画の策定後は、月曜日から 木曜日にかけて計画どおりに仕事を進めて、金曜日に1週間を振り返り、 反省点などを踏まえたうえで翌週の行動計画を作成するというサイクル を継続する。高原社長は、SAPSによって社員が自分自身の働くプロセス と向き合い、「非効率的な仕事への取り組み方を見直す」など、基本とさ れる仕事への取り組み方が身に付くと考えている。 その結果、一部の社員だけでなく全社員が企業理念の達成という同じ 方向に進み、成果を上げることができるようになることを目指している。 ただし、SAPSには目指すべき方向を向いているという大前提はあるもの の、社員の考えや行動を縛るルールではない。SAPSによって仕事の基 本を身に付けさせると同時に、「松は松のように育てる」という言葉に表さ れるような、社員の個性や創意工夫を尊重する方針が生かされている。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 121 Ⅳ-8.共振の経営 (ベース2割の社員を底上げ) (2/6) 『 www.works-i.com/pdf/w111-seikou.pdf 』 目的:社員全員が主体的に自分で考え、自分で行動する。 一般的に、組織には「優秀な社員」「普通の社員」「努力が必要な 社員」が2:6:2の割合でいるとされる。アメリカ流経営ではトップ2割 を引き上げ、 ベース2割は排除対象 になることが多い。 (切り捨て・解雇等) 参考:「パレートの法則(80対20、上位20%で全体の80%を稼ぐ、下位20%は産出ほぼゼロ)の変形」 ユニ・チャームではベース2割の底上げを図ることで組織全体の 能力を高める方針。それを「桶の側板」に例えた。(桶に入る水量は最も低い側板 の高さで決まる。だから、低い側板を伸ばすよう、全員で力を合わせれば全体も高まる。) この共振の経営こそ、SECIモデルを具現化したもの。特徴的なの は、一人ひとりの「行動を重視し・変えることで意識を変える」行動革 新から始めたこと。SAPSは、PDCAサイクルに似ているが、暗黙知 と形式知の相互変換が随所で行われる点で本質的に異なる。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 122 コラム.12 桶板の理論「栄養摂取におけるアミノ酸の桶」(3/6) 左図は、食事やサプリメントの摂取で人の体内に入 る「様々なアミノ酸の一つ(Only one)」を「桶の縦板の 一つ」に例えて、どれだけが有効に化学反応して活用 されるのかを判り易くした図。 いくつかのアミノ酸がいくらたくさんあっても、一番少 ない(最も低い)アミノ酸の量の分しか化学反応せず, 水はたまらない。 つまり,結局は一番少ない(最も低い)量のアミノ酸 分しか,骨のコラーゲンや体の部品(材料)となるタン パク質は作り出されない。『全体では,(最も低い高さ の)水の高さ迄たまる分しかアミノ酸は有効に活用さ れず,ムダになってしまう』ということ。(全体が,最低 限の水準に制約される。【ここまでは、TOCの制約理論と類似の概念】 ) しかし、最も低い高さの桶板(これも,Only oneの一 つ)が無い場合には,タンパク質は全く作り出されない。 つまり、最も低い高さの桶板も、全体を構成する重要 な部分である。→だから、この低い桶板(ベース)を高く すれば,全体が成長することが可能である。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 123 Ⅳ-8.共振の経営 (ベース2割の社員を底上げ) (4/6) SAPSのSECIプロセスのなかでも、共振の経営では特に「C」の 連結化、コンビネーションのプロセスを重視している。 「優秀な社員はなぜ、イノベーティブな仕事ができるのか。その実 践知の多くは暗黙知で、形式知化するのは難しいところがある。 でも、SAPSでは 優秀な社員からアドバイスを受けたり、優秀な社 員の暗黙知が具体的な行動計画として形式知化されたりするため、 まわりはその人の仕事の仕方を自分の行動に結びつけることがで きる。連結化が多くの場で行われることで、一人ひとりがレベルアッ プし、個々の振動がより大きくなり、会社全体で共鳴し合う。 これを、固有の“型”として組織に定着させてきた。」 「個人別業績成果主義」等の価値観は、存在しない。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 124 Ⅳ-8.共振の経営 (ベース2割の社員を底上げ) (5/6) 更に、“飲みニケーション”も重視している。 国内では高原自身、毎月、現場の社員たちに直接電話をかけて誘い、4~5人 で酒を酌みつつ語り合う。海外もコア社員についてはほぼ全員、顔と名前を把握 している。SAPSで背中を押し、行動と意識のベクトルを揃える。最終的に目指す のは“3つの豊かさ”、つまり、仕事に対する“志の豊かさ”と“経済的な豊かさ”、人 間としての“精神と肉体の豊かさ”。国内、海外を問わず、そのために同じ“型”を 実践する。 アングロサクソン型のグローバリゼーションでは 一般的に、進出先の現地の 人材を採用し、強いインセンティブを導入して高い成果を求め、期待に応えら れなければ人材を入れ替えるといったやり方がとられる。ユニ・チャームでは 知識創造の「型」を現地に持っていき、送り込むエース人材(3部門)をハブに し、現地社員たちと場を共有しながら、「組織の知」を豊かにしていく。「10年ス パン」の時間をかける。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 125 Ⅳ-8.共振の経営 (「型」と「自己超越欲求」) (6/6) マズローの欲求5段階説では「自己実現欲求」が欲求の最上位とされ るが、実は、マズローは その上にコミュニティの中での「自己超越欲求 」を位置づけたかった、といわれる。SAPS経営は知の連結化に重点を置 くことで、組織のコミュニティ化(ピラミッド組織では無い)を志向している。 もう1つ印象的なのは、一人ひとりが自己超越しながら最適な判断を行 う能力を、「型」として組織に埋め込もうとしていることだ。「型」はすべてを 言語化することはできないため、マニュアル化できず、SECIモデルを回す 以外、 埋め込む方法はない。それをグローバルに行うのは時間がかか るが、「型」が埋め込まれれば、 1つの目標に向かって、それぞれが地域 に合わせた戦略を実現していく最強組織が生まれる。知識創造理論は アジアでも注目を浴びているが、具体的な導入方法を求める声も多く聞 かれ る。SAPSは1つのモデルになるに違いない。 ( 一橋大学名誉教授 野中郁次郎 氏 ) 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 126 Ⅳ-9.2015年03月トップメッセージより、(一部抜粋) 『世界中の生活の質の向上に貢献することが使命 ユニ・チャームが提供する商品は、全て清潔で衛生的な生活に不可欠なものであり、ユニ・チャー ムの商品を世界中の全ての人々に提供し、生活の質の向上に貢献することが使命と考えています。 当社は2006年に「国連グローバル・コンパクト」への支持を表明、また国連ミレニアム開発目標の考 え方に賛同し、その実践に努めてきました。 新興国では、まだベビー用紙おむつや生理用品を買うことができず、衛生的な生活を送ることがで きない方が大勢います。ユニ・チャームは、日本での事業活動を通じて培ったノウハウを基に、それ ぞれの国と地域の特性に配慮した商品やサービスを提供してきました。これらの地域ニーズを満た す商品は、現地の工場で生産し消費者にお届けしていますが、現地女性社員の積極的な雇用によ る働く場の創造や、さまざまな啓発活動を通じて女性の暮らしの向上に取り組むことによって新興国 に暮らす女性の社会参加を支援しています。一方、先進国では、今後は急速に高齢化が進むことが 見込まれています。世界で最も高齢化が進む国内におきましては、リーディングカンパニーとして軽 度失禁商品を中心に普及啓発を図り「健康長寿社会」の実現に取り組んできました。 また今後、高齢化が進むアジア地域におきましても、日本式ケアモデルの展開による積極的な啓 発活動に取り組んでいきます。日本とは価値観が異なる海外で浸透させるため、寝たきりにさせな い介護による自国経済への好影響、大人用失禁商品の使用による衛生面や経済面での効果などを 積極的に発信していきます。そして介護者・被介護者双方の排泄ケアの負担を減らし、自分らしく快 適な日々を過ごしていただけるように社会課題の解決に取り組んでいきます。~』 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 127 最後までご清聴頂き,ありがとうございました。 2015/07/25 Copyright © Yasuaki Nakajima All Rights Reserved. 128
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