「WAKFlowⓇHLA 抗体クラスⅠ(MR)の紹介」 湧永製薬株式会社 バイオ事業開発部 川井信太郎 HLA 抗体の検査は輸血や臓器移植分野で広く行われており、臨床成績の向上に役立って いる。近年、精製した HLA 抗原を用いた検査法が開発され、高感度に HLA 抗体を検出こと が可能となり、臓器移植や血小板輸血不応における HLA 抗体と臨床症状との相関を確認出 来る有用な検査法とされているが、いくつかの面で課題も残っている。 今回、我々は日本人の HLA 抗原頻度を考慮した HLA クラスⅠ抗体検査試薬< WAKFlowⓇHLA 抗体クラスⅠ(MR)>を開発した。 我々は試薬開発に際して、以下の3つコンセプトを組み入れた。 ① 日本人に報告されている抗原頻度1%以上の抗原をカバーする。 ② 多数検体処理が容易なプラットフォームを利用する。 ③ 判定の際に使用するソフトウエアは使いやすいものを構築する。 まず、HLA 分子を抽出精製するために、日本人の抗原頻度 1%以上の A 抗原及び B 抗原 を持つ 25 種類の日本人由来のヒトB細胞セルライン(以後 BCL)を選択した。この BCL の選択には、日本人のハプロタイプも考慮した。さらに、抗体の特異性の同定を容易にす るために、日本人に頻度の高い HLA ハプロタイプをホモ接合で保有する 10 種類の BCL を 加えた。 多数検体処理が容易なプラットフォームとして、HLA の DNA タイピング試薬に用いてい るルミネックスシステムを選択し、個々の蛍光ビーズに、あらかじめ抗体との結合活性を 確認した精製 HLA 分子を固定した。 アッセイ結果から HLA 抗体の特異性を判定するために、専用の解析ソフトウエアを開発 した。この専用ソフトは、HLA の交差反応性を判定画面上に組み込み、検出した抗体の反 応性及び交差反応性を視覚的に確認できるようにしている。 今後我々は、検査結果の信頼性を高めるとともに、日本人だけでなくアジアの民族を考 慮した検査ができるよう、BCL をさらに充実させていく予定である。 今回のランチオンセミナーでは、上記の3つのコンセプトを中心に、日本赤十字社と共 同開発した『WAKFlowⓇHLA 抗体クラスⅠ(MR)』試薬を紹介したい。
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