日常生活のテキスタイルに関する製品化研究Ⅲ による酸性染料の捺染性

日常生活のテキスタイルに関する製品化研究Ⅲ
− 無 版捺染技術 による酸性染料の捺染性−
望月
1. 緒
政夫*
言
石川
表2
材料
い し げ 結 城 紬 で 使 用 され て い る糸 を 用 いて , 無版 捺
章弘*
遠井
光子*
染料希釈割 合(%)
染料
グリ エ
蒸 留
シンA
水
合計
染 技 術 を利 用 し た 製 品化 を 目 的に 研 究 を行 っ てき た 。
色の 種類
平 成 1 4年 度 は , 酸 性染 料 に よる 染 料 の精 製 、捺 染 性
Y( イエロ ー )
17
40
43
100
を試験 したので報 告する。
M( マジェンダ)
30
40
30
100
C( シアン)
36
40
24
100
K( ブラッ ク )
35
40
25
100
2. 実験方 法
2.1 酸 性染料の種 類
2 ) 染料
表1の 染料を使 用した。
表2の 割合で希釈 した染料 を使用した 。
表1 酸性 染料の種 類
染料の 色
染
料
名
3 ) 前処 理糊剤及 び濃度
Y(イエロ ー)
JPA Yel
l
ow01(粉 末
未精 製)
M(マジェンダ)
JPA Magent
a01(イ ン クシ ゙ェット用)
濃度 : 1.8 % 、 2.0 % 、 2.2 %
C(シアン )
JPA Cyan01(
〃
)
糊 剤 を 上 記 濃 度に 溶 解 した 中 にか せ に した 糸 を浸 積
K(ブラッ ク)
JPA Bl
ack01(
〃
)
※メー カー:日本 化薬(株 )
糊剤 :ファイン ガムH
し、絞 ってから乾 燥したも のを使用し た。
4 ) にじ み防止剤 の利用
に じ み 防 止 剤 (藍 熊 染 料㈱ ) を石 英 漏 斗で 濾 過し 、
2.2 粉 末染料イエ ローの精 製
染料に 混合して捺 染をした 。
イ ン ク ジ ェ ッ トプ リ ン ター の カー ト リ ッジ に 対応 で
きるよ うに下記の 方法で精 製を行った 。
1.粉末の 染料を約12%濃 度に蒸留 水で溶 解
(完全には溶解せ ず)
3. 結果 と考察
3.1 粉末 染料イエロ ーの精製
室 温 で は 完 全 に 染 料 が 溶 解 し な い た め 、 80 ℃ ぐ ら
2.80℃ぐらいになるまで熱 し完全に溶解
いまで 熱した結果 、完全に 溶解するこ とができ た。
3.溶液を50℃ぐらいまで下げる
次 に 50 ℃ ぐ ら い ま で 冷 ま し 、 グ リ エ シ ン A を 混 合 し
4 .グリエシンAを混合
た 。 冷 めた 状 態 の ま まだ と し ばら く し て沈 殿 が生 じ て
5.室温まで冷ます
し ま っ た。 そ こ で グ リエ シ ン Aを 混 合 し、 な おか つ 濾
6.石英漏 斗で濾 過
過をし 不純物を取 り除いた 。
2.3 染 料の希釈
3.2 染料 の希釈
表1 のMCK及 び 2.2 で精製 した染料を 表 2 の割合
で 希 釈 した 。 こ の 割 合は 、 反 応性 染 料 の試 験 結果 を 参
考 に し た。 こ れ 以 外 の割 合 に つい て も 検討 す る必 要 が
反 応 性 染 料 の 希 釈 の 場合 と 同 じく 、 表 2の ご とく グ
リエシ ンAを 40 の 割合とし た。
カ ー ト リ ッ ジ 単 独 で の使 用 は 、目 詰 ま りの 原 因に な
あると 思われる。
る の で 、プ リ ン タ ー に備 わ っ たタ ン ク に染 液 をい れ 、
2.4 捺 染試験
チ ュ ー ブを と お し て 染料 を カ ート リ ッ ジに 導 くよ う に
1 )糸:真 綿手紡糸
*繊維 工業指導所
140 d × 21 d( からみ )
紬技術部
した。
3.3 捺染 試験
濃 度 別 捺 染 結 果 を 図 1 に 示 す 。 1.8 か ら 2.2 % 濃 度
であれ ば、裏側ま で浸透し ていること を確認し た。
糊濃度 1.8 %
図3
平成12 年度試作 品
図4
平成13 年度試作 品
糊濃度 2.0 %
糊濃度 2.2 %
図1
捺染結果
黒 は Y M C K 4 色 が 使わ れ る ため 、 濃 度が 濃 くな る
と か な りの 滲 み が 生 じる 。 ま た他 の 色 でも 極 端に 濃 度
が 大 き い色 は 滲 ん で しま う 。 そこ で こ の滲 み を防 止 す
る た め に二 通 り の 方 法を 考 え た。 一 つ は、 グ リエ シ ン
A の 量 を少 な く す る こと 、 第 二に 防 止 剤を 染 液に 混 合
5. 結言
して使用する方法である。 防止剤を使用する方法で
平 成 1 0 年 度 から 1 4 年度 に 渡り 、 パ ソコ ン とイ ン
は 、 防 止剤 も 石 英 漏 斗な ど で あら か じ め濾 過 した も の
ク ジ ェ ット プ リ ン タ 機器 シ ス テム 利 用 によ る 無版 捺 染
を使用 した方がよ い。
技 術 の 研究 を 行 っ て きた 。 最 終年 度 の 今年 度 は、 酸 性
4. 試作
染 料 の 適正 試 験 と 捺 染用 設 計 図案 ( 同 報告 書 捺染 用 画
今 回 試 験 に 用 い た 染 料で 、 着 尺の 試 作 を行 っ た。 広
像 デ ー タ変 換 方 法 Ⅱ を参 照 ) の改 善 試 験を 行 った 。 こ
範 囲 の 色に よ る 捺 染 結果 が 得 られ る よ うな 、 図案 と し
れ ま で の研 究 成 果 と して 、 反 応性 染 料 での 無 版捺 染 の
た。試 作の結果を 図2に示 す。
可 能 性 、酸 性 染 料 で の無 版 捺 染の 可 能 性、 捺 染用 設 計
図 案 の 完成 度 の 高 さ によ る 作 業の し 易 さ等 が 得ら れ 、
これら による製品 の試作を 3点行った 。平成12年 度 、
1 3 年 度の 試 作 品 を 図3 , 4 に示 す 。 結果 と して 、 こ
の シ ス テム の 良 さ を 最大 限 に 引き 出 す 手段 と して は 、
よ こ 総 絣( よ こ 絣 の み) に よ る模 様 を 製品 化 する こ と
が 、 コ スト の 面 か ら も最 適 で ある こ と を確 証 した 。 ま
た 、 単 品生 産 、 イ ー ジー オ ー ダー 、 差 別化 商 品な ど こ
だわり 商品等への 利用が考 えられる。
平 成 1 5 年 度 に こ の シス テ ム を利 用 し て、 産 地企 業
と 共 同 研究 を 行 い 、 市場 性 の ある 商 品 展開 を して い く
図2
平成14 年度試作品
予定で ある。