VMAT検証における カウチモデリングの有用性

VMAT検証における
カウチモデリングの有用性
大阪市立大学医学部附属病院 中央放射線部
○中田良成 辰己大作 井上 誠 市田隆雄
大阪市立大学大学院医学研究科 放射線医学教室
石井健太郎 細野雅子
背景
VMATはガントリ回転しながら強度変調を実現する
照射方法であり、1回転するVMATではカウチの影
響を回避することができない。
当院で使用するカウチ
カーボン
厚2mm
硬質スチロール
(CT値-1000)
iBEAMⓇevo
カウチの断面
図1 当院のカーボンカウチ
iBEAMⓇevoは先端部分が取り外し可能なカーボン
カウチである。表面のカーボン素材で線量の吸収
が考えられる。
現状の問題点
当院では低吸収のカーボンカウチを使用している
が、より正確な検証にはカウチの補正を行うこと
が望ましいと考えられる。しかしながら、現段階
で治療計画装置Monacoにカウチモデリングを行う
機能は無い。
目的
今回は、治療計画装置Monacoで仮想カウチを設定
し、VMAT検証におけるカウチモデリングの有用性
を検討する。
使用機器
加速器:ELEKTA社 Synergy
治療計画装置:Monaco version2.03
カウチ:medical intelligence社 iBEAMⓇ evo
Farmer chamber:PTW 30013
電位計:RAMTEC SMART
ファントム:IMRT検証用ファントム、MixDp
Film:EDR2
IMRT検証用ファントム
方法1
–カーボンカウチの吸収-
IMRT検証用ファントムにカウチを乗せ、カウチの有
無によるガントリ角度ごとの吸収線量の相違を
Farmerにて測定した。測定条件は、10MV-X線、照射
野5x5cm、100MU、ガントリ角度270-90[deg]とした。
IMRT検証用
ファントム
カウチ無し
カーボン
カウチ
カウチ有り
図2 カウチの有無による測定方法
Farmer
方法2
–仮想カウチのROI-
ファントムとカウチをCT撮影した後、各々の輪郭を
囲み、治療計画装置の検証用ファントムとして登録
した。なお、iBEAMⓇ evoの寸法は図3の通りであり、
仮想カウチを作成する際の参考とした。
53.0cm
0.45cm
5.0cm
0.2cm
42.0cm
図3 iBEAMⓇevoの寸法
方法3
–仮想カウチのモデリング-
実測のカウチの吸収と同等となる仮想カウチの電子密
度をもとめるため、方法1と同様の測定を計画装置上
で行い、カウチのROIの電子密度を変化させた※。
Monacoの計算条件はGrid size:2mm、Variance:1%で
行った。
※MonacoではRingROIを設定できな
いため、今回はカウチ全体に対し
て電子密度を与える。
Monacoにて治療計画を立て、
カウチの電子密度を確認する。
図4 カウチモデリングの方法
方法4
–カウチモデリングの評価-
カウチモデリングの有無で前立腺MonavoVMAT6例の検
証を行った。Monacoと実測値とのポイント線量およ
び線量分布を比較した。線量分布評価にはγ解析
(3%/3mm,2%/2mm,threshold 50%)を用いた。
ポイント線量の測定方法
2cm
γ解析の評価方法
2cm
isocenterと左右2cmの3点
(評価時は3点の平均)
AXI,COR,SAG のpass率の平均
結果1
–カーボンカウチの吸収-
290
70
図5 カーボンカウチの吸収
カウチと照射野が干渉した範囲(290~70[deg])で平
均すると、実際のカーボンカウチの吸収は約2.48%
であった。
結果2
–仮想カウチのROI-
実際のカウチ
53.0cm
5.0cm
0.2cm
42.0cm
仮想カウチ
0.45cm
5.6cm
48.4cm
0.2cm
42.2cm
図6 実際のカウチ(左)と仮想カウチ(右)の寸法
厚さ2mmのカーボン素材やカウチの寸法は概ね再現
できたが、エッジ部分の再現が困難であった。
結果3
–仮想カウチのモデリング-
-2.48%
図7 仮想カウチの電子密度
カウチと照射野が干渉した範囲の平均で、実測と
同等の吸収(2.48%)を示す仮想カウチの電子密度
はD=0.12のときであった。
結果4
–VMATの検証(ポイント線量)-1.37%
カウチモデリング無し
-0.34%
カウチモデリング有り
図8 VMAT検証におけるポイント線量の変化
VMATのポイント線量は、カウチモデリングの
有無で約1%改善した。
結果4
–VMATの検証(γ解析)カウチモデリング
無し
カウチモデリング
有り
図9 VMAT検証におけるγ解析の変化
3%3mmの評価では大きな差は認められないが、よ
り厳しい2%2mmの評価では、カウチモデリングに
よる改善が認められた。
考察
今回、仮想カウチのROIはエッジ部分を忠実に再
現できていないが、検証結果を見ても臨床に応用
できるものであると考えられる。
仮想カウチのエッジ
実際のエッジ
考察
実際のカーボンカウチは表面でのみ線量を吸収す
るが、Monacoではカウチ全体に電子密度を与えた。
本研究では、実際の状況と異なる電子密度の適応
が、VMATの検証に与える影響について評価できて
いないため、今後の検討が必要であると考えられ
る。
結論
治療計画装置Monacoにおいて、カウチモデリング
を設定したVMAT検証は有用であった。