北九州労健連ニュース 110号 2015 年 9 月 25 日 第 110 号

北九州労健連ニュース
2015 年 9 月 25 日
110号
第 110 号
北九州労働者
の健康問題連
絡会議
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発行
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労働安全衛生活
2015 年 9 月 19 日 10 時から、第 2 期ROUA
N塾第 3 課(最終講)が 20 名の参加で開催され
動への取り組みは、
ました。今回は、始めに天理大学(体育学部)
労働者のいのちと
の近藤雄二先生を講師に迎え「職場巡視の生か
健康を守り、維持
し方
リスク・マネジ
するために欠かせ
メントについて学ぶ」と題して講義を受けまし
ない活動であり、
リスク・アセスメント
そのリスクの
労働組合の取り組みが決定的に重要だと言われ
マネジメントを学ぶ』を塾側から事前学習用と
ました。労働者が安全衛生の活動に「参加」して
して塾生に配布し、講義に臨みました。
「職場巡視」と「安全衛生委員会」を通して現場
た。近藤先生の著書『慢性疲労
に根付く取り組みが重要です。その活動は、予防
労働安全衛生法は、
「第 1 条
原則に即したアプローチと措置、対策を労働安全
この法律は、労
働基準法と相
衛生マネジメント
まって、労働
の一環として行う。
災害の防止の
そのためには、予
ための危害防
防原則とリスクと
止基準の確立、
の関連を学び、リ
責任の体制の
スク管理(リスク
明確化及び自
抑制のためのマネ
主的活動の促
ジメント)に結び
進を講ずる等
つけるリスク評価
その防止に関する総合的計画的な対策を推進す
(リスク・アセスメント)が必要だという事を学
ることにより職場における労働者の安全と健康
びました。また、労働災害防止と予防との関連に
を確保するとともに、快適な職場環境の形成を
ついて、未然に防ぐ(未然防止)とは、確実に予
促進することを目的とする」という法律ですが、
想可能な被害を事前に防ぐ(「因果関係が科学的
労働者の立場は「労働者は、労働災害を防止す
に明らかな事態や物質について、その事態や被害
るため必要な事項を守るほか、事業者その他の
が生じない、起きないように事前に対策をとる」)
関係者が実施する労働災害の防止に関する措置
から、予防原則の概念が示されて以降、「因果関
に協力するように努めなければならない(第 1
係が完全に証明されていない段階であっても、対
章第 4 条)と、安全衛生対策での事業者責任を
策を講じる」時間的遅れに伴って深刻な被害が生
明確にする一方で、労働者には積極的な関与と
じることによる 2 次被害を和らげ、さまざまな新
参加を求めずに、むしろ「管理」対象として受
技術の導入による未知の影響と被害が生じる可
身的な立場に留めているところに基本的な問題
能性がある現代社会には予防原則の必要性がよ
があります。
り高まることを学びました。
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110号
支援の広がりが切り開いた「和解協議」への前進
新日鉄住金コークス裁判
新日鉄住金コークス肺がん訴訟を勝たせる会
野澤
政治
労健連の仲間のみなさん、裁判へのご支援を
でしたが、50 人近くは傍聴参加していただけた
心からお礼申し上げます。提訴から 4 年、裁判
と思います。新聞の折り込みを見て参加したと
は和解協議へと進展してきました。
いう人もいました。
父親の無念さ訴えた遺族
メーデー会場での訴えに始まった署名の取り
組みは、救援会・労健連・民医連・JMIU・
Y さんの遺族の証言は父親が人としての生き
地区労連をはじめ新日鉄住金の室蘭・広畑・名
方・尊厳をがんと闘いながら死の直前まで生き
古屋・大分の製鉄労働者などからも多数の署名
る希望を語っていたという趣旨の証言をされま
が寄せられています。9月3日に 1000 筆の署名
した。
「コークス工場で働いた人はがんになるリ
を提出、9月 10 日にはさらに 1000 筆が集まり
スクを抱えている。がんに罹った人に対する援
ました。和解協議を有利に進めるためにも要請
助ができるようになるために、がんのセミナー
署名を広げていきます。これまでの経過を報告
や家族会にも参加をして勉強している」
「会社は
し、さらなるご支援をお願いするものです。
退職者を大切にしてもらいた」
「労災の手続きは
2012 年 5 月に、元洞岡コークス工場で働いて
知らなかった。福田さんがアドバイスしてくれ
いたYさんの遺族が、会社に弔慰金制度を作ら
た」
「父は死の間際まで、阿蘇の外輪山をゆっく
せる一歩となればと、新日鉄住金を相手にコー
りと歩いてみたい」と言っていた。父親を亡く
クス工場で働いて肺がんで亡くなったのは、会
した無念さが伝わる証言でした。
社の安
裁判を通じて明らかになったこと
全配慮
陳述書と異なる会社側証言
義務違
5.14 コークス裁判報告会会議録:平山弁護士:
反とし
※最初の尋問をした証人は、タールの暴露は
て、訴
しないと陳述書でもかなり言っている。身体が
訟に踏
汚れていてもそれはタール蒸気ではなく、ほこ
み切ってから、4 年目を迎えました。
りとか粉じんによるものだと、しきりに言って
3月4日に、
「準備会」を 11 名の参加者で開
いる。タール蒸気は吸わない。ほとんど発生し
催、3月 21 日に、「勝たせる会」結成総会を労
ないと陳述書で言っていたが、尋問の結果では
健連、国民救援会、元コークス工場他の製鉄労
タール蒸気はあらゆる場面で発生をする。炉の
働者を交えて 18 名の参加者で開催することが
手当をしても違う場所から発生する。タール蒸
できました。
気の発生する場所は、身体からとても近い場所
ラウンドテーブル方式で開催されていた公判
にある。自分の足元であったり、顔の前であっ
から、ようやく、大法廷での裁判が開かれるこ
たり、手の届く範囲であったり、そういう場所
とになりました。第 15 回公判(4月 23 日)は
から暴露し人体に吸収されるということがわか
傍聴席が万席で会社側の傍聴者は座ることがで
る証言を引き出すことができた。
食い違う会社側二人の証人
きず、監理が長椅子を持ち込む対応をしました。
特に重要なのは、陽圧部と言って常に圧力を
当日参加者の記名をしていただいた方は 41 名
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維持するというところが非常に大事。一人目の
せることは、こちらの本来の訴訟目的にも沿い
証人は圧力が大気圧と同一であれば漏れない。
ますから、そういう趣旨であれば、和解の席に
穴が開いていても漏れない。漏れても一方的に
着くことは可能です。制度を創ってすでに発症
漏れ出すという事はない。陽圧と言って中の圧
した方にたいして、裁判の当事者になっていな
力が高いために外にどんどん漏れ出し続ける。
いコークス労働者で、発症した方、お亡くなり
漏れたら中の気圧が下がる。下がって外の空気
になった方、闘病中の方たちに対する弔慰金の
が入って戻ればいいが、圧力をかけ続ける仕組
制度とか、その方々の相談窓口、発症する可能
みになっていると証言。
性のある方々の窓口を病院に作る。ということ
を中心にYさんは考えておられて、それを希望
これに対して 2 人目の証人が陽圧状態じゃな
されていました。
いと言った。証人は自分で炉作業を体験した事
がなく、被告の言い分を言い続ける証人で、証
こちらが、和解をするうえで申し上げてきた
言としての価値がない。最初の証人の方が自ら
ことは、1番目が、一定の金銭給付を原告Yさ
体験したことを述べているという事で証言の価
んにすること。2番目が労災認定がなされた
値が高い。価値が高い最初の証人が常に陽圧状
方々に対して弔慰金制度を創設するということ。
態だったと述べた。裁判所もそれに乗っかって
3番目は、病院におけるコークス労働者に対す
判決を書かざるを得ない。
る相談窓口。それは現在の労働者だけでなく、
和解を打診する裁判所
元労働者も含むという趣旨です。相談窓口を設
第 16 回(5 月 14 日)公判後、6 月に入り裁判
けるというこの3の柱で、和解のテーブルにつ
所から和解の打診があり、6 月 25 日代表者によ
きますという事を言いました。裁判所の方で、
る打ち合わせが行われました。第 17 回(9 月 10
被告にその内容を打診してもらったところ、
日)公判を前にしてなぜなのか、弁護士は裁判
1 番目の金銭給付については、別途検討する。
所の「和解・早期解決」の意図を紹介、支援す
2 番目の弔慰金については、被告は現時点で
制度の構築は考えていないが制度の詳細は、
る会としての対応を協議しました。
第17回公判(9月10日)
今後詰めていく
和解協議の進行を確認
3 番目の病院の相談窓口については、被告の
方で具体的に考えているそうです。
裁判所の方からYさんの尋問を聞いた結果、
今回の裁判の目的は、損害賠償という形での訴
健康診断を受ける医療機関に対して、会社の
訟ではあるんですが、損害の回復だけでなく、
方から相談窓口を作りましたという案内を送っ
他の労働者、現在の労働者、過去の労働者も含
て、所見があった者とか、所見があって亡くな
めて、コークス工場で働いた方々の病気や身体
ったご遺族にたいして、労災申請の窓口があっ
の安全を確保するための制度を創りたいという
て手続きを行えることを告知する。ということ
意向があるようですね。ですから裁判所として
をつくると言っていました。
も、それに向けて被告との間で話しをしていき
10 月 9 日までに和解に対する基本的な考え方
たいので、一度話し合いの場を設けてはいかが
を書面で出し、それを受けて次回の裁判を 10 月
ですかという打診がありました。
こちらとしては、裁判を起こして判決をもら
28 日(水)11 時から、和解期日でおこなうという
っても、裁判所が命じられるのはお金の支払い
事になりました。和解期日は、非公開の手続き
だけですから、制度を創りなさいと裁判で命じ
ですので、今後の傍聴は原則できない。11 時 30
ることは出来ませんので、和解で制度を創設さ
分から報告会を行うことにします。
(平山弁護士)
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北九州労健連ニュース
「リスク・マネジメントについて
学ぶ」塾生の感想
感じました。
「そのリスクマネジメントを学
ぶ」を講座修了後に、また読み返して今後
-1 面の続き-

に生かしていきたいと思いました。

今までのハザード、リスクを見つける力が、
リスクハザードを探す「目」を養う事が出
来た。今後のマネジネントに繋げていきた
まだまだ未熟だったことを痛感させられた。
い。賃金・労働条件だけでなく、労働環境
今後、労組に労安部をつくる事を実践に移
を良くすることに努力していきたい。
すことの大切さが良く分かりました。

110号

専門的で難しい所もありましたが、職場の
労働安全衛生委員のメンバーとして、職場
巡視に携わってきたが、職場のスタッフの
リスクの見つけ方や管理の仕方の方法を勉
声を上手く経営側へ提起したり、悪い点、
強出来ました。特に「ハザード」→「リス
問題点を指摘するだけでなく改善点を提案
ク」の把握の流れはとても勉強になりまし
出来るよう、一歩ふまえた運動に取り組ん
た。午後の議論も通じてさらに勉強したい
でいきたい。
と思います。

リスクをアサセメントすることは出来てい
ると思っていましたが、全然出来ていない
事を気付かされました。職場巡視の大切さ
とみるべき場所を見られる能力をつけるこ
とも今後私自身の課題となりました。

防止と予防をするために問題を「問題とし
て」捉える事が重要だと感じました。

国会で強行採決された「安保法案」にたい
安全衛生委員をしていますが、「予防原則」
して、北九州労健連の見解をホームページ
という考え方は「目からウロコ」でした。
(rokenren.com)に掲載しています。
今までは職場巡視を行っても、現状での事
「戦争法案」の衆議院特別委員会と本会議
故を防止する視点のみで巡回しておりまし
での強行採決に 抗議し、廃案を求める声明
たが、それだけでは不足している事がはっ
2015年7月22日
きり認識出来ました。

北九州労働者の健康問題連絡会議
言葉のニュアンス(防止と予防)や自身で
第7回代表幹事会
考えている以上に難しい(深い)ものだと
第26回なくせじん肺・アスベスト全国キャラバン北九州集会2015
ご案内と参加のお願い
日時:10 月14日( 水)18 時30分~20時30分
会場:ウェルとぱた121・122会議室(JR戸畑駅隣)
参加費:資料代として30O円
くプログラム〉
① アスベスト問題~被害の実態と救済の意義を考える(仮題)田村昭彦(九州社医研所長)
② 九州建設アスベスト訴訟控訴審(九建訴訟弁護団)
③ 新日鉄住金コークス肺がん訴訟(勝たせる会)
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