GREC ニュースレター 2015 年 7 月 GREC、タイ・ミャンマー圏担当チームを再編成(4 月 1 日) 弊社(株式会社 GREC)におきましては、組織再編の観点から、既存のバンコクとヤンゴンの拠点を 2015 年 3 月末日に閉鎖致しました。しかしながら、弊社 GREC としましては、タイ・ミャンマーを重 要な営業地域と位置づけておりますので、新たにタイ・ミャンマー圏担当チームを編成のうえ、今後も 引き続き皆様方のニーズにお応えできるよう鋭意努力してまいります。 暫くは日本または台湾からの出張ベースにはなりますが、現在までに蓄積された知識・技術・経験の ストックを活かし、業務を続けてまいりますので、何卒今後もよろしくお願い申し上げます。 タイは中国に次ぐ日系企業の進出先であり、我が国との経済的な繋がりが強い国となっています。現 在、タイでは国家資格ではないものの不動産鑑定士が業務を行っておりますが、近年は日本国内の親会 社での役員会・株主総会向けの資料、日本国税当局への提出書類、株式・財産相続や連結会計等の関係 で日本向け評価書のニーズも増加しつつあります。 また、ミャンマーには現時点で不動産鑑定士や資産評価士の制度がなく、評価専門家が存在しません。 改革が進むミャンマーでは企業進出が今後加速すると予想され、M&Aや投資事業における不動産・動 産の評価ニーズが急速に高まりつつあります。 弊社は、タイ・ミャンマーでの過去の案件処理実績を今後も活かし、国際評価基準に則った不動産及 び動産の鑑定評価サービスを提供してまいります。 [連絡先:GREC/タイ・ミャンマー圏担当チーム] 電 話 +81-6-6942-5350/+81-6-6766-3606 E-mail [email protected] FAX +81-6-6942-5367 代表担当者 鈴木雅人(日本国不動産鑑定士、MRICS) 主要担当スタッフ 鈴木雅人 飛田 崇 (Masahito Suzuki) (Takashi Tobita) 栃岡研悟 (Kengo Tochioka) 住宅新報社・月刊不動産鑑定に GREC 参加の記事が掲載(2 月 20 日) 住宅新報社出版・発行の月刊不動産鑑定・2015 年 3 月号(2 月 20 日発売)に、GREC 代表の鈴木雅 人が参加した座談会の記事が掲載されました。 座談会記事のタイトルと参加者は以下の通りです。不動産取引市場の国際化、資産評価需要の国際化、 国際財務報告基準 IFRS と国際評価基準 IVS に関する検討、課税や公共用地買収における日本の評価等 技術の輸出、海外案件に対応する姿勢等について意見が交わされています。 ◆鑑定セミナー◆ 不動産鑑定業界における国際化の取り組みと展望 浅野 美穂 大和不動産鑑定 鈴木 雅人 GREC 水谷 賀子 シービーアールイー 山下 誠之 日本不動産研究所 住宅新報社HP:http://www.jutaku-s.com/ 国土交通省、ミャンマーで建設業関連制度セミナーを開催(1 月 21 日) 国土交通省の発表によると、2015 年 1 月 21 日にミャンマーの首都ネピドーにおいて開催された「第 2回日緬建設次官級会合」において、建設産業に関する分科会が開催された。 その中で、日本側は、日系建設企業がミャ ンマーで活動する際の諸課題の早期解決を要 望し、ミャンマー側からは、建設資材輸入許 可制度の現状等について説明が行われた。ま た、同会合に併せて、ミャンマー建設省との 共催で「建設業関連制度セミナー」が実施さ れ、日本側から建設業許可制度等について説 明がなされた。 国土交通省では、アジア新興国における効 率的なインフラ整備等に貢献するとともに、 我が国建設・不動産企業の現地における事業環境を改善する観点から、建設・不動産分野の法制度整備 を支援するため、各種施策を実施している。今回の会合及びセミナーはそれら活動の一つであり、ミャ ンマー・建設省において開催された。セミナーで日本側から発表された内容は、建設業許可制度、公共 工事入札参加資格制度、入札・履行保証及び前払金保証制度、公共用地取得制度である。 ※写真はイメージ図 金融庁、国際会計基準 IFRS 適用に関する調査レポートを発表(4 月 15 日) 金融庁は 2015 年 4 月 15 日、国際会計基準・IFRS の任意適用企業の実態調査・ヒアリングを実施し、 IFRS への移行に際しての課題への対応やメリットなどをとりまとめた「IFRS 適用レポート」を発表し た。 IFRS 適用レポートの公表について・金融庁 http://www.fsa.go.jp/news/26/sonota/20150415-1.html それによると、有効な回答を得た企業 60 社の 90%に当たる 54 社が IFRS 導入のメリットを享受して いると回答している。 メリットの内容としては、「海外子会社等が多 いことから、経営管理に役立つ」との回答が最多 で、「海外子会社が多く、同じ製品を複数の拠点 で製造・販売していることから、業務の効率性を 比較するためには、共通の「モノサシ」で業績の認識・測定がなされないと公正に評価できない」、「こ れまでは、グローバルベースという観点のみならず、事業ごと、地域ごとという観点からも、子会社の コントロールが十分にできていなかった。IFRS を用いて、各事業を縦軸、会計・資金・税務などの機能 を横軸として整理し、上流から下流まで全体を通して経営管理を行うことが重要と考えている」などの 意見が報告されている。他のメリットとしては、「同業他社との比較可能性の向上」や「海外投資家へ の説明の容易さ」などが見られる。 一方、デメリットについては、移行前に想定していなかったデメリットはほとんどないとの回答や、 日本基準から IFRS への組替処理や複数帳簿管理などの負担は想定していたほどではなかった等の回答 がみられるなど、総じて導入メリットが多いという感想が目立つ結果となっている。 本レポートは、金融庁のホームページ(上記アドレス)にて閲覧が可能である。問い合わせ先は金融 庁総務企画局企業開示課。 ※上記グラフは、金融庁「IFRS 適用レポート」より抜粋 国際金融公社 IFC と JICA が協調融資に関する基本協力協定を締結(4 月 18 日) 国際協力機構 JICA の発表によると、2015 年 4 月 18 日、世界銀行グループの一機関である国際金融 公社(International Finance Corporation、IFC)と JICA は、途上国における両機関の民間セクター 向け融資業務における円滑な協働を行うため、基本協力協定(Master Cooperation Agreement)を締結 した。 途上国においては、民間企業の資金やノウハウを活用したインフラ開発、中小企業・インクルーシブ ビジネス支援等に対する旺盛な投資需要があるものの、途上国での民間事業は高いカントリーリスク等 の障壁のため、一般の金融機関からの長期融資が受けにくい状況にある。 その様な状況下で、本協力協定によって顧客利便性の向上が期待されると共に、IFC が有する途上国 の民間企業との緊密な関係を JICA との協調融資において活用することが可能となり、開発効果の高い プロジェクトの円滑な案件実施に寄与するものとなる。 JICA は途上国民間セクター向け投融資業務において多大な支援実績を持つ IFC と協力・連携するこ とで、一般の民間金融機関では対応が困難な開発効果の高い先導的プロジェクトの実現に取り組んでい くとしている。 日本政府、タイ運輸省との鉄道分野に関する協力覚書を調印(5 月 27 日) 国土交通省は、2015 年 5 月 27 日、日本政府及びタイ王国政府との間で、鉄道分野に関する協力覚書 を調印したことを発表した。 調印場所は国土交通大臣室で、日本側は太田国土交通大臣、北川副大臣、和泉総理補佐官、稲葉国際 統括官他、タイ側はプラジン運輸大臣、アーコム運輸副大臣、シーハサック大使他が出席した。覚書の 概要は、以下の通りである。 •バンコク~チェンマイ間高速鉄道に関し、日本の高速鉄道技術(新幹線)の導入を前提として詳細 な事業性調査や事業スキーム等を日タイ間で協議。 •南部経済回廊(カンチャナブリ~バンコク~チャチェンサオ~アランヤプラテート/レムチャバン) について、沿線の鉄道の改良、整備等に関する協力を推進するため、事業性調査等を実施。 •上記路線の他、メーソート~ムクダハン路線、貨物輸送サービス効率化、都市鉄道整備等に関する 協力も推進。 •協力事業の実施を促進するため、人材育成等の技術協力を実施。 高速鉄道線の開業時期は未定であるが、実現すれば台湾新幹線に次ぐ新幹線輸出の事例となる。バン コク~チェンマイ間の路線は約 680kmで、高速鉄道路線の総工事費は日本円で 1 兆円(約 2,800 億バ ーツ)を超える規模になると予測されている。 写真出所:国土交通省 HP より バンコク・住宅取引市場調査レポート(2015 年 6 月更新) ■ 経済概況 タイ国家経済社会開発庁(Office of the National Economic and Social Development Board)の今年 2 月の発表によると、2014 年の GDP 成長率は+0.7%となった。大規模洪水が生じた 2011 年以来の低 い水準である。 これは 2013 年 11 月下旬の反政府デモの勃発から 2014 年 5 月に軍事クーデターが生じるまでの政情 不安の期間で、投資が大きく落ち込み、観光業も著しく低迷したことが主たる要因である(タイ投資委 員会(BOI)の発表によると、2014 年 1~5 月の海外直接投資は前年同期比で△87.5%と大きく落ち込 んだ) 。 5 月 22 日の軍事クーデター以降は、タイの経済は回復傾向にあり、四半期別で見ると第 1 四半期が△ 0.5%であるのに対し、第 2 四半期が+0.4%、第 3 四半期が+0.6%、第 4 四半期は+2.3%と徐々に成 長率は回復しており、通年で+0.7%となった。 但し、政府の治安改善策や原油安などによって投資や消費は回復しているものの、輸出や観光分野の 回復は遅れており、政府予想より年間成長率は低位にとどまる結果となった。 <過去 10 年間のタイ GDP 成長率の推移> 10.0 8.0 6.0 4.0 % 7.8 6.5 6.3 5.1 4.6 2.0 0.0 -2.0 5.0 2.9 2.5 0.1 0.7 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 -4.0 -2.3 年 データ出所:タイ国家経済社会開発庁 前記グラフの通り、タイの過去 10 年間の GDP 成長率は乱高下しており、2009 年はリーマンショッ ク、2011 年は大規模洪水によって経済は低迷している。しかしいずれも次の年は+7.8%、+6.5%と大 きな回復を示しているのも特徴である。 タイの消費者物価指数の推移を示すと次グラフの通りであり、リーマンショック時には若干下落を示 したものの、洪水が生じた 2011 年は+3.8%、及び軍事クーデターが生じた 2014 年(物価指数数値は 速報値)は+1.9%と、経済の低迷にも係わらず緩やかな上昇を示している。 <タイの消費者物価指数の推移> 140.0 130.0 120.0 指数 110.0 100.0 90.0 80.0 89.4 93.4 97.8 100.0 105.4 104.5 108.0 112.1 115.5 118.0 120.2 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 年 データ出所:IMF 発表値(2007 年=100.0)/2014 年はタイ商業省発表値 バンコクはタイ最大の経済都市であり、且つインドシナ半島経済圏の中心都市となっている。そのた め、バンコクの経済情勢は国全体の経済情勢を大きく左右する。2014 年の反政府デモはバンコク中心部 で行われ、その影響は甚大であった。また、2011 年の洪水被害もバンコク都心部にまで及び、いずれも バンコク並びに国全体の景気を押し下げる結果となった。 2015 年は、MRT 延伸工事など運輸分野のインフラ整備プロジェクト投資といった政府需要の拡大や、 輸出や観光業の回復による景気改善が期待されている。また、ASEAN の経済統合(2015 年末までに、 関税、投資、人の流れを自由化する計画)も控えており、海外からの成長期待も大きい。 ■ 現在の住宅取引市場の動向 タイ銀行が発表した住宅価格指数によると、2014 年の戸建住宅の指数は対前年比で+4.9%、コンド ミニアムの指数は+8.9%となり、上半期で政情不安・クーデターが生じたにも係わらず上昇を記録した。 タイ・コンドミニアム価格指数の推移 2009年1月=100 170.0 160.0 150.0 140.0 130.0 120.0 110.0 100.0 90.0 80.0 Q4/2014 Q3/2014 Q2/2014 Q1/2014 Q4/2013 Q3/2013 Q2/2013 Q1/2013 Q4/2012 Q3/2012 Q2/2012 Q1/2012 Q4/2011 Q3/2011 Q2/2011 Q1/2011 Q4/2010 Q3/2010 Q2/2010 Q1/2010 Q4/2009 Q3/2009 Q2/2009 Q1/2009 Q4/2008 Q3/2008 Q2/2008 Q1/2008 70.0 反政府デモ等の政情不安の中で、住宅の実需は強く、住宅価格指数は消費者物価指数(+1.9%)を上 回る上昇率を示した。土地価格の高騰によって戸建住宅、コンドミニアムともに販売価格が上昇してき ているが、更に不動産価格は上昇するという観測が支配的であること、また MRT(バンコクメトロ)の パープルラインの新設工事、ブルーラインの延伸工事が進行中であり、これら新線整備によって住宅需 要も増加していることにより、市況は安定感が維持されている。 現在、バンコク都心部(Asok~Ekkamai 周辺)のコ ンドミニアム価格は THB80,000~170,000/㎡程度 (THB1≒3.6 円)で取引されており、高級物件になる と格段に価格が上がる(例:Rajadamri 地区の「185 Rajadamri」は THB300,000~380,000/㎡程度) 。 今後も、需要は安定感があり、暫くの間は住宅取引市 場は好調を維持すると予測される。 185 Rajadamri(Raimon Land 社 HP より) ■ 過去25年間の住宅取引市場の動向 タイ銀行は 2008 年から住宅価格指数のデータ発表をしているが、それ以前についてはタイ不動産情 報センター(Real Estate Information Center)が戸建住宅、タウンハウス、土地の価格指数を発表して いた(コンドミニアムのデータはない) 。この2指数が重複する 2008 年~2010 年を比較すると、デー タ源が異なるためうまく一致しないが、重複期間については基準年となっている 2009 年以降について タイ銀行の指数を採用して連結すると、過去 25 年間の戸建住宅価格推移については以下のグラフの通り となる。 タイ・戸建住宅の価格推移 2009年=100 130.0 120.0 110.0 100.0 90.0 80.0 70.0 60.0 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 2000 1999 1998 1997 1996 1995 1994 1993 1992 1991 50.0 タイ銀行及びタイ不動産情報センター発表・住宅価格指数より GREC 社作成 これを見ると、1990 年代には急激に住宅価格が上昇したが、1997 年の通貨危機によって失速、その 後数年間は落ち着いた動きを示している。BRICS を中心として世界経済が活況となる 2000 年代前半~ 中盤に入ってからはタイの住宅価格も再び上昇傾向が顕著となり、リーマンショックによる不況を経て、 大規模洪水が生じた翌年の 2012 年頃から再び価格の伸びが顕著となっている。 以後、この動向をやや詳しく検証する。 【高度経済成長と通貨危機】 前記グラフからは、特に 1991~1997 年にかけての住宅価格の高騰が激しいことが読み取れる。この 間は国民 1 人当たり GDP がほぼ倍増した高度経済成長期であり、バンコク中心部でオフィス、ホテル、 高級マンションが次々に建てられ、郊外でも住宅建設ラッシュであった。バンコク周辺地域への工場立 地も盛んになるとともに、観光客の増大に伴い、パタヤ、プーケット島、サムイ島等のリゾート地での ホテル建設も増大した。 当時のタイ経済は、国外からの借入金に依存した構造であった。すなわち、米ドルによる資金を金融 機関が短期で海外から借り入れ、それをバーツ建てでタイの国内企業に長期で貸付けるかたちをとって いたが、ドルペッグ制(事実上の固定相場制)を採用していたため、ドル高=バーツ高によって(更に 中国製品の台頭などもあって)輸出競争力は低下し、徐々に過大評価されているバーツに対する信用が 失われ、資金の流出を招くこととなった。結局、中央銀行の外貨準備が底を尽き、米ドルとの実質的な 固定相場制を守れなくなり、1997 年に変動相場制への移行を発表、IMF による支援が開始された(通 貨危機) 。 この通貨危機によって不動産市場は急激に冷え込み、住宅価格や地価は暴落、住宅建設も大きく減少 した。下図はバンコクの住宅供給量の推移を示すグラフであるが、住宅プロジェクト、コンドミニアム 建設が通貨危機後に急激に減少していることが分かる。 バンコク・住宅供給量の推移 90,000 80,000 70,000 60,000 50,000 戸 数 40,000 30,000 20,000 10,000 0 Housing Project Apartment and Condominium Self - Built Housing 出所:タイ銀行発表値 写真 1(撮影:鈴木雅人) 写真 2(撮影提供:高島嘉巳氏) 上の写真は、バンコク中心部で建設が中断されたままになったビル(写真 1)、未入居の大型コンドミ ニアム(写真 2)である(いずれも 1999 年 10 月撮影) 。高島嘉巳氏著のレポート(「バブル崩壊後のバ ンコク」 ・社団法人大阪府不動産鑑定士協会国際委員会編集発行・平成 12 年 3 月)によると、通貨危機 までは実需ではなく投機目的による不動産購入が横行したため、 1998 年の完成済み建物のうちの約 46% が未入居という状況であったとのことである。 結局、タイ政府は低金利融資による企業の資金調達環境の改善、内需拡大といった構造改革、不動産 に関しては不動産譲渡にかかる登録料の時限的引き下げ、外国人による不動産所有制限の緩和等の刺激 策を施した。また、金融再建庁(FRA)を 1997 年 10 月に設立し、不良債権処理を実施した。 2003 年 7 月には IMF からの借入金を完済し、アジア通貨危機は一応の終息を示すこととなった。 【世界的経済好調期からリーマンショック】 2000 年代に入ってからは、米国経済の好調や BRICs の台頭などもあり、世界経済は好調となった。 タイも通貨危機を乗り越え、GDP 成長率は、2002 年に通貨危機前の 1996 年の水準にほぼ戻り、+5.3% のプラス成長を記録した(2003 年で+7.1%、2004 年も+6.3%となっている) 。雇用環境が改善され個 人所得が上昇し、民間投資が増し、景気は好調となった。 不動産に関しては、2001 年に金利の緩和が進められ、徐々に住宅ローンを利用した住宅建設が増加し た。特に戸建住宅の供給回復が顕著で、2003 年には 6 年ぶりにバンコク首都圏域で 30,000 戸以上の供 給となった(前記グラフ「バンコク・住宅供給量の推移」参照)。住宅価格も上昇率が拡大し、戸建住宅 指数で見ると 2004 年は対前年比で+5.4%、2005 年で+8.0%となった。 2007 年秋には、米国サブプライムローン問題を発端とする世界経済の減速が始まり、2008 年 9 月の 米国投資銀行・リーマンブラザーズの破綻(リーマンショック)により、世界的金融危機が発生、タイ の景気も再び冷え込んだ。2009 年のタイの GDP 成長率は△2.3%で、アジア通貨危機以来の 11 年ぶり のマイナス成長となった。また、同じ時期に、タイでは政治的対立が激しくなり、スワンナプーム国際 空港占拠事件や反政府デモがバンコクで発生し、特に観光業へ影響を与えた。 しかし、アジア通貨危機後の構造改革によって過剰な外資依存が改善されていたことから、通貨危機 ほどの大きな経済の減速はなく、2010 年にはすぐさま GDP 成長率は+7.8%のプラス成長へと回復して いる。 住宅価格も、戸建住宅は 2008 年、2009 年で若干下落したものの、すぐに緩やかな上昇へと戻ってい る。住宅供給も特にコンドミニアムは逆に大きな伸びを示しており、タイ銀行の発表データによると 2008 年はバンコク首都圏域で 30,000 戸を超え、2010 年には 60,000 戸近くまで急増している (13 年ぶりの水準)。 これは MRT、 BTS などの都市交通網の整備や、 個人所得上昇に伴って特に若い 世代の間で都市型ライフスタイ ルが普及し、コンドミニアム需要 が増加してきたことが要因であ ると思料される。 【大規模洪水被害から現在】 2011 年にチャオプラヤー川流域で発生した大規模洪水は、400 人以上の死者を出し、甚大な被害をタ イに与えた。10 月からはバンコク中心部でも冠水が確認され、都市機能は一時期麻痺状態となった。結 局、この年の GDP 成長率は+0.1%と振るわず、高成長であった 2010 年から大きく悪化した。アユタ ヤ周辺の工業地帯が被害に遭ったことから、製造業が低迷、その他観光や建設分野も落ち込んだことが 影響した。 住宅市場を見ると、好調だったコンドミニアムの建設・供給は減速し、供給量は前年の 42%減少とな った。しかしながら、価格については戸建住宅、コンドミニアムともに目立った下落はなく、ほぼ安定 していたと言える。実は被害の大きかったアユタヤ地方の工業地についても、洪水対策が早急に施され るとの観測が強かったことから、明確な地価の下落は生じなかった。都市部の住宅も同じで、洪水被害 に対しては楽観的に捉えられた。 翌年の 2012 年には、大洪水からの復興事業が進み、経済は回復、+6.5%の GDP 成長率を記録した。 落ち込んだコンドミニアムの供給も一気に回復し、年間で約 78,000 戸の新規供給となった。 2012 年の経済を牽引した内需がやや低迷したため、2013 年の GDP 成長率は+2.9%にとどまり、ま た 2014 年は上半期の政情不安が影響して+0.7%の低成長にとどまった。しかし、経済統合も控えた ASEAN 全体の期待感の高まりを背景に、バンコクでの住宅需要は旺盛で、且つ依然として割安感もあ ることから、住宅市場は好調を維持している。 バンコクでは、Terminal 21(2011 年開業)、Central Plaza Grand Rama 9(2011 年開業)、The City Viva(2011 年開業) 、GATEWAY EKAMAI(2012 年開業) 、Rain Hill(2012 年開業)など新たな大型 商業施設が続々とオープンしており、また Thon Buri 地区ではアンカーテナントとして高島屋が入る総 床面積 750,000 ㎡の複合施設「ICONSIAM」 (投資額 500 億バーツ)が 2017 年に開業予定であるなど、 都市化が急速に進んでいる。 ま た、都市交通の MRT 整備工事 も進行中で、 これらの要因が住 宅市場の好調を支えており、 今 後もしばらくは市場の過熱は 続くと予測される。 ICONSIAM イメージ図(出所:株式会社高島屋ホームページ) 株式会社 GREC 〒540-0006 大阪市中央区法円坂 1-2-7 オーシマビル 5F TEL:+81-6-6942-5350 FAX:+81-6-6942-5367 E-mail:[email protected] Web:http://www.grec.co.jp/
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