第 3 章 開発環境 セットアップ 著:柴田文彦 3-1 Androidアプリ 開発環境の概要 KEYWORD LESSON ここでは、まず開発環境とはどんなものなのかについて簡 単に説明してから、それをPCにインストールする作業の概要 を説明します。 実際のインストール作業は次の節から始めま す。ここではその心の準備をしましょう。 著:柴田文彦 Java コンパイラー Integrated Development Environ ment (IDE) Eclipse Android Studio Java Development Kit (JDK) この節を学ぶとできること Androidアプリケーション開発環境とは何かを知る Andoridのプログラムで利用しているプログラミング言語やツールと いった開発環境についての知識を深めていきます。 Androidアプリケーション開発には何が必要かを知る アプリケーションを開発するにあたって必要な環境やソフトウェアにつ いて、事前に準備するための知識を身につけます。 実際の開発環境インストール手順の概要を把握する 手元のPCに開発環境となるソフトウェアをインストールするまえに、手順 の概要を把握しておきます。 40 3 -1-1 Android アプリ開発環境の構成 Androidアプリ開発環境とは Androidのアプリケーションのプログラムは、基本的に「Java」 というプログラミング 第 3 言語によって記述します。従って、Androidアプリの開発ツールとしては最小限Java 章 のコンパイラーが必要となります。コンパイラーは、人間が書いたプログラムを、コン 開 発 環 境 ピューターが実行できるコードに変換するプログラムのことです。しかし、それだけでは Androidアプリを作成することはできません。 セ ッ ト ア ッ プ Androidアプリとして必要な画像や音声などの「リソース」 を付加したり、Android デバイス上で動作可能な形にパッケージングし、デバイスに転送して動かしたりするた めには、様々なツールが必要となります。そうしたAndroid固有の開発ツールは、An droidアプリ開発環境として公式にサポートされているWindows、OS X、Linux上 で動作するコマンドとして提供されています。Javaのコンパイラーに加えて、 そうしたコマ ンドを組み合わせて使うことで、Androidアプリを作成することができます。 ただし、そうしたツールを1つずつ個別に起動しながらAndroidアプリを作成するの は非常に手間がかかります。通常は、そうした一連のツールの使用を自動化する方 法を利用します。そのための方法にも何通りかありますが、 もっとも有力なのは、 「IDE」 (Integrated Development Environment=統合開発環境) と呼ばれるアプリ ケーションを使うことです。一般的なIDEは、個別の開発ツール群と同様、PCの上で 動作するソフトウェアです。IDEは、個別のツールを適切な順番で組み合わせて利用 しながら、大きな目的であるアプリケーションの作成を自動的に遂行します。 このように、あるソフトウェア (ここではAndroidアプリケーション) の開発に必要な ツール類一式を総称して「開発環境」 と呼びます。そのIDEにも色々な種類がありま す。Androidアプリの開発には、最近まで「Eclipse」 と呼ばれるIDEが主に使われ てきましたが、最近Googleは方針を転換し、新たに「Android Studio」 と呼ばれる IDEを導入しました。この講座ではこのAndroid Studioを使っていきます。 Eclipseは、Android専用のIDEではなく、一般的なJavaアプリケーションや、 C++プログラムの開発などにも使える汎用性の高いものです。EclipseをAndroidア プリの開発用として使うために、さまざまなツール類をプラグイン (コラム参照) としてEcl ipse本体に追加していました。あらかじめプラグインをインストール済みの「ADT Bun dle」 というパッケージも提供されていましたが、 これはEclipseと各種プラグインを1つに まとめたもので、基本的な構造は同じでした。 Android Studioも元を正せば、JetBrains社の「IntelliJ IDEA」 というIDEを ベースにして開発したものです。中身を見れば、InteliJ IDEAに、Android用の各 種プラグインを加えたものとなっています。しかし、Android Studioとして、すべてを含 んだパッケージとして提供されているため、その内部構成は特に意識する必要があり ません。Android Studioは最初からAndroidアプリ開発専用に用意されたIDEと 41 考えてもまったく差し支えありません。今後は、過去の経緯は気にすることなく、Andro idアプリ専用の開発環境としてAndroid Studioを扱っていきましょう。 現在、Android Studioはバージョン1.0.1が、Androidの開発者向けサイ トで無 償で提供されています (図1)。Windows版は、インストーラーを含む実行ファイルの パッケージとなっているので、 これをダウンロードしてインストールすれば、Javaのコンパイ ラーを除くAndroidアプリ開発環境が一挙に整います。その具体的な方法について は次の節で順を追って詳しく説明します。 図1:Androidの開発者向けサイトの開発ツールをダウンロードするためのページ。サイトのトップページから 「Devel op」 、 「Tools」 のリンクを順にクリックするだけでたどり着くことができる check! プラグイン(Plug-in) プラグインは、略さずに言えば「プラグインソフトウェア」のこ とで、 「アドオンソフトウェア」 と呼ばれることもあります。プラグ インとは、本来 「プラグを差し込む」 という意味で、プラグを差し 込むように簡単に (一定の規格に従って) 追加できるソフトウェア のことです。 Androidアプリ開発用のプラグインとしては、アプリ構築に不 42 可欠なツール以外に、ユーザーインターフェースの設計ツール、 AndroidのSDK(Software Development Kit)の管理ツール、 Androidデバイスがなくても、エミュレータ上でAndroidアプリを 起動できるようにする仮想デバイスの管理ツールなどがありま す。 3 -1- 2 2段階のインストールでアプリ開発環境をつくる Androidアプリ開発環境として、Android Studioを使う前提で、 これまでのとこ ろを整理しておきましょう。Androidアプリ開発に必要となる環境を、 もう一度確認し ます。 第 3 まず言うまでもないことですが、開発環境が動作するベースとなるPCとOSが必要 章 です。この講座では、OSとしてはWindowsを使うことになっています。その上に、ま 開 発 環 境 ずJava言語のコンパイラーが必要となります。これは、Oracle社が提供している 「JDK」 (Java Development Kit) を使います。これについても詳しくは次節で説 セ ッ ト ア ッ プ 明します。JDKをインストールしてから、Android Studioをインストールします。順番 はこの逆ではいけません。Android Studioをインストールする際に、正しくJDKがイ ンストールされているかチェックするからです。 次節からは、順にこの開発環境の構築方法について説明します。 43 3-2 開発環境のインストール LESSON ここでは、前の節で説明したAndroidアプリ開発環境の セットアップを実行する方法について順を追って説明します。 これを済ませれば、その直後からAndroidアプリの開発が 可能となります。さっそく始めましょう。 この節を学ぶとできること Java開発キット(JDK)の入手と インストール アプリケーションのプログラミング言語となるJavaの開発 ツールを入手し、 インストールする方法を解説します。 Android Studioの入手と インストール 開発環境の中心となるソフトウェア「Android Stud io」のダウンロードからインストール、正しく起動するかの チェックまでを行います。 44 著:柴田文彦 KEYWORD Java Development Kit (JDK) Android Studio 3-2-1 Java 開発キットのインストール JDKの入手 JDKのインストーラーは、Oracleのサイトから無償でダウンロードすることができま 第 3 す。ただし、JDKには様々なタイプとバージョンの組み合わせがあり、いったいどれを 章 ダウンロードしてインストールすれば良いのか、迷ってしまうかもしれません。この場合 開 発 環 境 には、新しければ新しいほど良いという原則は通用しないと考えるべきでしょう。 Android開発者サイトのSDKをダウンロードするページからリンクのある「Syst セ ッ ト ア ッ プ em Requirements(システム要件)」には、 「JDK 7」 という指定があります (図 2)。この指示に従えば、JDKのバージョンは7ということで、もう少し細かく言えば、 Java Standard Editionのバージョン7( Java SE 7) を選べば良いことになりま す。 図2:Andoid SDKページにある「System Requirements」の記述。現在のAndorid開発環境に適合したJavaのバー ジョンは7だということがわかる JDK 7をダウンロード可能なOracleのページは、 「JDK 7 ダウンロード」などで 検索すれば簡単に開くことができます (図3)。参考までにURLを示すと、 「http:// www.oracle.com/technetwork/jp/java/javase/downloads/jdk7downloads-1880260.html」 となっています。 45 図3:Oracleの 「Java SE Developmant Kit 7 Download」 のページ。ここから、バージョン7として最新のものをダウ ンロードする このページの中を下にスクロールしていくと、バージョン7として最新の「7u71」をダ ウンロードするコーナーが現れます (図4)。その中には、様々なプラットフォーム用に、 細かく分かれたバージョンが揃っています。 図4:JDK 7のダウンロードページの中から、その中の最新版 「7u71」 をダウンロードする Windows用にも 「x86」版と 「x64」版の2種類があります。Tech Instituteの 標準開発PCは64ビット版なので、ここでは「Windows x64」の右側にある 「jdk7u71-windows-x64.exe」のリンクをクリックしてダウンロードします。その際には 「Accept License Agreement」のラジオボタンを選択する必要があります。 46 JDKのインストール ダウンロードしたJDKは、 インストーラーの実行ファイルとなっているので、 そのままダ ブルクリックして起動します。インストールの途中には、オプションを設定する 「カスタム セットアップ」の画面が表示されます (図5)。 第 3 章 開 発 環 境 セ ッ ト ア ッ プ 図5:JDKインストールの際に設定可能なオプション。 「開発ツール」 だけをインストールすればいい このまま、 デフォルトの設定でインストールを続行しても構いませんが、Androidアプ リの開発には不要なコンポーネントも多いので、必要なものだけを選んでインストール すると良いでしょう。選択可能な3つのコンポーネントのうち、Androidアプリ開発に 必要なのは「開発ツール」だけです。 「ソースコード」や「パブリックJRE」 といった 他のコンポーネントは、 ディスクのアイコンをクリックして「×」を選び、 オフにしてもかまい ません。 オプションを設定したら 「次(N)>」ボタンをクリックすれば、実際のインストー ルが始まり、 しばらく待てば完了します。 インストールが完了すると、それを知らせるダイアログが表示されますが、そこにはさ らに「次のステップ」 といったボタンもあり、紛らわしくなっています (図6)。 47 図6:JDKのインストールが完了すると表示するダイアログ。 「次のステップ」 は必要ない これはユーザー登録など、とりあえず必要ない操作なので、ここではクリックしない ことにます。 「閉じる」をクリックして、 インストール作業を終了します。 3-2-2 Android Studio のインストール ADT Bundleのダウンロード Android Studioのインストーラーは、すでに示したAndroidの開発者サイトの 「Develop」→「Tools」のページにある 「Download Android Studio」のボタ ンをクリックして入手します。まず「Download」 というページが開き、そこで「Terms and Conditions」、つまりソフトウェアの「約款」 (やっかん) を確認します (図7)。 図7:Android Studioの約款を確認する 48 確認したら、 「I have read and agree with the above terms and cond itions」のチェックボックスをオンにしてから、 「Download Android Studio for Windows」ボタンをクリックします。 Windows版はサイズが800MB以上あるので、インターネット接続環境にもよりま すが、 ダウンロードが完了するまでしばらく待つ必要があるでしょう。 第 3 章 開 発 環 境 Android Studioのインストール インストールしたファイルはインストーラーの実行ファイルになっているので、ダブルク セ ッ ト ア ッ プ リックするなどして起動します。無事起動すると、 「Welcome to the Android St udio Setup」 というダイアログが表示されるので、あとは指示に従って作業を進めま す (図8)。まずは「Next >」ボタンをクリックしましょう。 図8:Android Studioのインストーラーが起動すると表示する 「Welcome to the Android Studio Setup」 ダイアロ グ 次のステップで、 「Verifying your system meets the minimum requir ements」 という段階になりJDK 7が見つからないというダイアログが表示された場 合、JDKが正しくインストールできていないことになります (図9)。もしこのダイアログが 表示されたら、JDKのインストールに戻って確認しましょう。 49 図9:適合するJDK 7が見つからないというダイアログ。これが表示されたらJDKのインストールに戻る JDKも見つかって、 その他のシステム要件にも問題がなければ「Choose Comp onents」 という段階に進みます (図10)。 図10:Android Studioのインストールに関するオプションを設定するステップ ここには、合計4つのコンポーネントについて、インストールするかどうかを決める チェックボックスが表示されています。いちばん上の「Android Studio」は、Andr oid Studio本体で、このチェックは外すことができません。その下の「Android SDK」は、Android Studioを使ってAndroidアプリを開発する際には必須のオ プションです。あとの2つは不可欠とは言えませんが、あると便利だったり、パフォーマ ンスが向上したりするので、チェックは外さないでおきましょう。結局、すべてのチェッ 50 クをオンにした状態で「Next >」をクリックします。 次に、前のステップで「Android Virtual Device」のチェックをオンにした場合 には、 「Configuration Settings/Emulator Setp」 というダイアログが表示され ます (図11)。 第 3 章 開 発 環 境 セ ッ ト ア ッ プ 図11:Androidデバイスのエミュレーターのメモリー容量を決めるダイアログ これは、開発中のAndroidアプリをPC上で動かしてみることができる仮想デバイス (エミュレーター) が使うメモリ容量を設定するものです。標準では2GBになってい て、通常は十分ですが、必要に応じて大きくした方がよい場合もあるでしょう。いずれ にしても後から変更もできるので、ここではとりあえずデフォルトの2GBのままにしておき ます。 次に進んでしばらくするとAndroid Studioのインストールも完了し、 それを知らせる ダイアログが表示されます (図12)。 51 図12:Android Studioのインストール完了時に表示されるダイアログ その中には「Start Android Studio」 というチェックボックスがあります。 これがオ ンの状態で「Finish」ボタンをクリックすると、今インストールされたばかりのAndro id Studioが自動的に起動します。 その際、Android Studioに含まれるコンポーネント 「Android SDK Tools」の 新バージョンがみつかると、自動的にアップデートが始まります (図13)。 図13:Android Studioを起動する際には自動的に 「Android SDK Tools」 がアップデートされる これにも少し時間がかかりますが、終わるまでしばらく待ちましょう。 最終的にAndroid Studioが起動すると 「Welcome to Andoid Studio」の ダイアログが表示されます (図14)。 52 第 3 章 開 発 環 境 セ ッ ト ア ッ プ 図14:Android Studioを初めて起動した際に表示される 「Welcome to Andoid Studio」 ダイアログ これが正しく表示されれば、Android Studioのインストールもうまくいったことにな ります。 なお、Android Studioとは直接関係ありませんが、Windows 8以降では、 デス クトップの「Start」メニューからアプリケーションが選べなくなったため、インストールし たアプリケーションも、いったん終了すると次に起動する際に手間がかかります。An droid Studioのように使用頻度が高くなることがわかっているアプリケーションは、 起動している間にタスクバーに登録しておくとよいでしょう。起動しているアプリケー ションのタスクバー中のアイコンを右ボタンクリックして、表示されるメニューから 「タス クバーにピン留めする」を選べば完了です (図15)。 図15:自動的に起動したAndro id Studioは、終了する前にタス クバーに登録しておくとよい 53 3-3 開発環境の試運転 LESSON ここでは、前の節でインストールしたAndroidアプリ開発 環境を実際に動かして、簡単なアプリケーションを作成し、 それを動かす手順について説明します。 作成したアプリケー ションは、大きく分けて2通りの方法で動かすことができま す。 この節を学ぶとできること 開発したAndroidアプリの起動、実行 簡単なプログラムを作成して、実行するまでの手順を 学びます。 AVD Managerを使った仮想デバイス の作成方法 実際にAndroid OS上での動作チェックに便利な、 仮想デバイスをPCに作成しておきます。 Androidアプリを仮想デバイス上で起動する方法 作成した仮想デバイスで、簡単なプログラムを実行してみます。 開発用デバイスとして使用する Android携帯の設定方法 手元のAndoridスマートフォンを開発用のデバイスとして利用するための設定 を行います。 Androidアプリを実機上で起動する方法 Androidスマートフォンの実機を用いて、簡単なプログラムを起動してみます。 54 著:柴田文彦 KEYWORD プロジェクト AVD (Android Virtual Device) 開発者向けオプション 3-3-1 プロジェクトの作成 新規Android Studioプロジェクトの作成 Androidのアプリケーションは、開発環境上では1つの「プロジェクト」 として作成 第 3 します。 1つのプロジェクトには、Androidアプリケーションを構成するのに必要なソー 章 スコードなど、すべてのファイル、リソースが含まれています。Android Studioで新 開 発 環 境 規のプロジェクトを作成するには、とりあえずAndroid Studioを起動した直後に表 示される 「Welcome to Android Studio」ダイアログのボタンメニューのいちば セ ッ ト ア ッ プ ん上にある 「Start a new Android Studio project」をクリックすれば良いで しょう。前の節で示した図14のダイアログです。 後からプロジェクトを作成する際には、Android Studioの「File」メニューから 「New Project...」を選択して作成することもできます。 すると、いずれの場合も 「New Project」 というウィザード形式のダイアログが表 示されます (図16)。あとは、指示に従って必要な情報を入力していけば、容易に プロジェクトを作成できるようになっています。 図16:新規プロジェクトを作成する最初のステップ 最初のダイアログで最も重要なのは、 「Application name」欄にアプリケーショ ンの名前を入力することです。デフォルトでは「My Application」 という名前が入 力されています。最初の1回めだけは、これをそのまま採用しても良いでしょう。もちろ ん好きな名前を付けてもかまいません。とはいえ、同じ名前で複数のアプリケーション を作ることはできないので、今後はプロジェクトを作成するたびに、適切な名前を考え る必要があります。 「Company Domain」欄には、このアプリの開発社(者) のドメイン名を入力しま す。これは、アプリを開発する会社、組織、あるいは個人を世界的に唯一の名前で 識別するためのものです。会社であれば、インターネットのウェブサイトのドメイン名を 入力するのが普通です。個人で開発する場合には、自分で作るアプリケーションの 55 中で一貫性があリ、他の開発者と混同する恐れのない文字列であれば、 どのような ものでも良いでしょう。 デフォルトでは、 「PCのアカウント名.example.com」が入力されています。とりあ えずそのままでも構わないのですが、Tech Instituteでは、講座の受講者番号を 入れて、 「ti12345.techinstitute.jp」 とするのを標準とします。この「ti12345」の 部分には、 この講座の受講者番号と対応する文字列を各自指定してください。 こうして入力したアプリケーション名とドメイン名から、パッケージ名が自動的に決ま ります。このパッケージ名は、アプリケーションを構成するJavaプログラムとしてのパッ ケージ名にもなります。プロジェクトの中では、 この文字列からディレクトリ構造が生成 され、ソースコードなどは、そのディレクトリ構造に従って格納されることになります。 パッケージ名はいわゆる 「逆ドメイン記法(reverse domain notation)」で記述 されるので、上で入力したドメイン名は逆から反映されます。 「Project location」欄には、このプロジェクトを保存する場所が表示されていま す。必要なら変更できますが、通常はそのままでよいでしょう。 設定が済んだら 「Next」をクリックして次に進みます。 するとこんどは、このプロジェクトで作成するアプリが動作する環境を設定するダイ アログとなります (図17)。大きな選択肢としては、 「Phone and Tablet」、 「TV」、 「Wear」、 「Glass」の4種類がありますが、この講座では基本的に「Phone and Tablet」のAndroidデバイス向けのアプリを扱います。 図17:アプリが動作する環境としては 「Phone and Tablet」 を選ぶ 「Phone and Tablet」をチェックすると、それに対して「Minimum SDK」を選 択する必要があります。これは、このアプリケーションがサポートする最も古いAPIの バージョンを指定することになります。それによって、そのバージョン以降のAndroid 環境での動作が可能となります。この設定は、このアプリの中では、ここで指定した APIよりも新しいバージョンのAPIは使用できないことを意味します。デフォルトでは 「API 19: Android 4.4 (KitKat)」 という、かなり新しいバージョンが指定されて います。その下の説明には、これを選択すると全Androidデバイスの約24.5%で動 56 作可能になると書いてあります。ここで指定するバージョンを新しくするほど、動作可 能なデバイスの割合は少なくなるのです。逆に古いバージョンを指定するほど対応 デバイスは増えますが、 それだけ使用できるAPIの制限が多くなります。ここは色々検 討して最適のバージョンを選ぶ必要があります。 この欄の右端の「▼」をクリックするとバージョンを選択できます (図18)。ここで 第 3 は、とりあえず、Tech Institute用の開発環境として支給されているAndroid携 章 帯の初期状態のバージョン「4.3 (Jelly Bean)」を選択しておきましょう。 開 発 環 境 セ ッ ト ア ッ プ 図18: 「Minimum SDK」 として 「API 18: Android 4.3 (Jelly Bean)」 を選択する バージョンを選択したら再び「Next」をクリックして次に進みます。 すると 「Add an activity to Mobile」 というダイアログに切り替わります (図 19)。 図19:Activityのタイプを選択するダイアログでは 「Blank Activity」 を選ぶ これはプロジェクトに追加する 「Activity」 (アクティビティ) のタイプを選択するも のです。ここではまだActivityについては説明しませんが、最も基本的な「Blank Activity」を選んで「Next」をクリックしましょう。 次は、Acitivityの名前などを入力するダイアログになります (図20)。 57 図20:Activityの名前を入力するダイアログの設定は、デフォルトのままとする ここでは、すべての設定をデフォルトのまま変更しないで「Finish」をクリックし、プ ロジェクトの作成を完了させましょう。 3-3-2 エミュレーター上でアプリを起動 とりあえずアプリを起動する 以上の操作に何も問題がなければ、 プロジェクトが無事作成され、Android St udioのプロジェクトウィンドウが開きます (図21)。ただし、 このウィンドウの上には、今 は必要ない別のウィンドウが表示されています。 図21:初めて開いたAndroid Scriptのプロジェクトウィンドウ 58 その1つは、中央に比較的大きく表示されている 「Tip of the Day」です。これ はAndroid Studioの使い方のヒントを与えてくれるものですが、今はとりあえず使い ません。 「Close」をクリックして閉じておきましょう。 もう1つは、 ウィンドウの右上あたりにある 「Help improve Android Studio...」 という付箋状のポップオーバーです。これは、各ユーザーのAndroid Studioの使 第 3 用状況をGoogleに報告して改善に役立てるかどうか、というものです。とりあえず右 章 上の「×」をクリックして閉じておきましょう。 開 発 環 境 そうすると、いよいよAndroid Studioの本体のウィンドウが現れます (図22)。こ の中身についても今はまだ説明しませんが、なにやらAndroid携帯らしいイメージが セ ッ ト ア ッ プ 表示され、 アプリが動作しているようにも見えます。 図22:Androidデバイスのイメージ画面を含むAndroid Studioウィンドウ本体 実は、この画面はこのプロジェクトで作成するアプリの初期画面デザインのイメー ジで、残念ながらここでアプリが動作するわけではありません。 ここでは、このアプリを別ウィンドウで起動するAndroidデバイスのエミュレーター 上で動作させることを目的としてます。そのためには、まずアプリの起動ボタンをクリッ クします。それは、Android Studioのツールバーの中央付近にある緑色の「 ▶ 」ボ タンです (図23)。 図23:ツールバーの「Run 'app'」ボタンをクリック する 59 このアプリがどこでどのように動くかは別として、これでとにかくこのプロジェクトで作 成中のアプリが起動(しようと) します。 仮想デバイスを作成する Android Studioで開発するアプリは、PC上で動作するエミュレーターで起動 して、動作を確認できます。そのエミュレーターのことを「仮想デバイス」、正確には 「Android Virtual Device( 略してAVD)」 と呼んでいます。 前のステップで示したように、とにかくアプリを起動しようとすると、すぐに「Choose Device」 というダイアログが表示されます (図24)。 図24:アプリの起動直後に表示される 「Choose Device」 ダイアログ これは、もしこの開発環境のPCに接続された本物のAndroidデバイスがあれ ば、その中のどれで、あるいは複数のAVDがあれば、そのうちのどれで、アプリを起 動するのかを選択するものです。 最初は何もデバイスが接続されておらず、AVDも作成してないので、 そのままでは アプリの起動を続けることができません。ここでは、まず1つのAVDを作成することか ら始めます。そのためには、 「Android virtual device」欄の右端にある 「...」ボタ ンをクリックします。すると、 「Your Virtual Device」 という大きめのダイアログが表 示されます (図25)。 60 第 3 章 開 発 環 境 セ ッ ト ア ッ プ 図25:AVDを作成するための手順を案内するダイアログの最初の画面 仮想デバイスとしては、携帯電話やタブレットだけでなく、WatchやTVなども作 成できることを暗示した画面になっています。ここでは「Create a virtual devi ce」ボタンをクリックして先に進みます。 すると 「Select Hardware」 というステップになります (図26)。ここでどんな種類 の仮想デバイスを作成するかを選択するのです。 図26:これから作成する仮想デバイスの種類を選択する ここでは、 「Phone」のカテゴリーの中から 「Galaxy Nexus」を選んでみました。 他の機種でもかまいませんが、PCの画面上で動かすことを考えると、 とりあえずはそれ ほど画面サイズが大きくない (解像度が高くない)機種を選んでおいた方が無難で しょう。選んだら 「Next」をクリックします。 次は「System Image」を選ぶステップになります (図27)。 61 図27:作成する仮想デバイスのシステムイメージを選択する System Image(システムイメージ) は、仮想マシンのプログラム本体のようなもの です。実際のAndroidデバイスのように、Androidのバージョンも決まっていて、ど のCPUで動かすかによっても分かれています。ここでは、インストールしたAndroid Studioの開発環境に唯一インストールされている 「Lollipop-21-x86」をそのまま選 ぶことにします。他のものを選ぶと、 そのシステムイメージをダウンロードしてインストール する必要があります。PCが64ビット環境なので、本当は「x86_64」のバージョンを 選んだ方がパフォーマンスが向上するはずです。余裕のある人は、あとで実際に試 してみましょう。システムイメージを選んだら、再び「Next」をクリックします。 最後に表示されるのは、AVDに名前を付けるダイアログです (図28)。デフォル トでは選択したデバイスやバージョンを反映して「Galaxy Nexus API 21」 となっ ています。ここではこれをそのまま採用します。 図28:これまでに設定した仮想デバイスの条件を確認して作成を開始する ほかにも、画面の解像度やシステムイメージをここで変更することも可能ですが、 そ れも含めてその他のオプションは、すべてデフォルトのままとして「Finish」をクリックし ましょう。以上の操作で仮想デバイスが作成できるはずです。 62 作成が完了すると 「Your Virtual Devices」のダイアログには、作成した仮想 デバイスが表示されます (図29)。後で異なる仮想デバイスを追加すれば、このリス トにはそれも追加されます。このダイアログからも、新たな仮想デバイスを追加したり、 不要になったものを削除したりすることが可能です。 第 3 章 開 発 環 境 セ ッ ト ア ッ プ 図29:作成した仮想デバイスが一覧表の1つの項目として表示される 仮想デバイス上でアプリを起動する 仮想デバイスの作成が完了すると、再び「Choose Device」のダイアログに戻り ます。こんどはAVDが選択できるはずです。 「Android virtual device」欄の右 端の「▼」をクリックして、上で作成した「Galaxy Nexus API 21」を選びましょう (図30)。 図30: 「Choose Device」 のダイアログの 「Android virtual device」 欄で、作成したAVDを選択する 63 ここで「OK」をクリックすれば、選択したデバイス上でアプリを起動する、という意 味になります。このダイアログは閉じ、エミュレーターのウィンドウが開いて仮想デバイ スの起動が始まります。 しばらく待つと、設定した条件の仮想デバイスの起動が完了します。最初は中央 に時刻を表示したロック画面となっています (図31)。 図31:仮想デバイスが起動して、ロック画面が表 示された このバージョンのAndroidでは、ロック画面を上にスワイプするとロックを解除する ことができます。ロックを解除すると待機していたアプリが起動します (図32)。 図32:ロック画面を上にスワイプして解除すると いきなりアプリが起動する 64 アプリのタイトルが「My Application」 となっていて、画面の左上に「Hello wo rld!」 と表示されていれば、上で作成したプロジェクトから起動したアプリに間違いあ りません。 第 3 3-3-3 Android の実機で実行 章 開 発 環 境 Androidデバイス事前の準備 セ ッ ト ア ッ プ PC上のAndroid Studioによる開発環境とAndroidデバイスをUSBケーブル で接続して、 アプリを起動して動作を確かめたり、 デバッグしたりすることができます。 そのためには、いくつか事前の準備が必要です。開発環境とは直接関係ないも のも含めて、望ましい準備を以下に挙げておきます。 ・ Androidデバイスを初期化する ・ Androidデバイスをアップデートする ・ AndroidデバイスのWi-fi環境を設定する ・ AndoridデバイスにGoogleアカウントを設定する 次に、Androidデバイスに開発環境からアプリを転送して動作させるために必 須の準備を以下に挙げます。 ・ Androidデバイスをデベロッパーモードにする ・ Androidデバイスの 「USBデバッグ」 を有効にする ・ PCとAndroidデバイスをUSBケーブルで接続する ・ AndroidデバイスのUSBデバッグを許可する Androidデバイス上でアプリを起動する 上に挙げた準備の一部を含めて、Androidデバイス上でアプリを起動する方法 については、本テキストの第4章に記述があります。この章のテキストとしては具体的 な方法は示しませんが、本章に対応する講義では、必要に応じて別途説明します。 65 66
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