マイクロチャネル内埋め込み薄膜センサによる流体温度計測(第 2 報

マイクロチャネル内埋め込み薄膜センサによる流体温度計測(第
報)
­学
正
治田 剛 (京大院) 正
巽 和也(京大)
中部 主敬(京大)
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( 薄膜測温抵抗体
センサ形状と実験条件
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+, 300µm
2.85mm
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150µm
105µm
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Inlet
150µm
Flow
Flow
+, -.
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A B
Flow 1 2
A
3
B
4
A
5
B
6
A
7
Outlet
B
8
+, 4
) 3
7
7
Flow
110µm
本研究では,測温抵抗体の金属として
と
を用いる.前
者は,抵抗係数が温度に対して安定かつ線形性が高く,後者は
薄膜の形成が容易な金属である.薄膜基板は,いずれの場合も
ガラスを用いた. と
の成膜は,それぞれスパッタリング
と真空蒸着法を用い, の場合はガラスとの密着性を高めるた
めに, 膜を間に設けた. と
のセンサ形状の成形には,
ぞれぞれリフト・オフとウェットエッチング法を適用した.
センサ形状を
に示す.
と
に示す形状 と
の場合は, と
それぞれについて製作する.空間分解能
を高めた
と
に示す形状
と
ついては, で製作し
た.これらのセンサの寸法を,
に示す.表中の と
は,それぞれセンサの素線の幅と長さを示す.
と
の各センサを付設したガラス基板では,形状 と
あるいは形状
と
のセンサを,主流方向に
間隔で
交互に配置した.ただし,形状
と
を付設した基板では,
上流から2個目のセンサ は形状 を採用した.実験では,両
基板についてこの部分に一定電圧で通電し,流体加熱用ヒータ
として用いた.
校正実験
製作した薄膜測温抵抗体の抵抗温度係数の校正とセンサの応
答性の評価は,恒温水槽
;
内に沈めた容器
内に密封したセンサと,容器内に挿入した参照用 型熱電対か
ら求まる温度を比較することにより行った.実験では,気体恒
温槽内温度を
℃間隔で変化させ,それに伴う薄膜測温抵抗
体の抵抗変化 を各センサについて測定した.
に,形
状 の
と
センサ,形状
の
センサの場合における,
と の関係を示す.図の縦軸は, を初期温度条件
下の各センサの抵抗値 で規格化した値である.また, は初期温度との差を示す.
では, は に対
して線形に変化する.この時の勾配を抵抗温度係数 ℃ と
して定めた.
3mm
150µm
精度な熱制御と温度管理が重要な課題であり,マイクロチャネ
ル内流れの安価で簡易な局所温度計測法の開発が求められてい
る .そこで本研究では,
製作技術を活用して
と
を材料とした薄膜測温抵抗体と薄膜熱電対,および流体加熱
用薄膜ヒータを製作し,
製マイクロチャネル内の流体温
度を計測することで,各センサの温度計測の性能を評価した.
Flow
300µm
や &' における流れや化学反応では,高
150µm
緒言
300µm
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7
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次に,抵抗温度係数 と薄膜厚さ Æ との関係を
に示
す.なお,Æ は触針式表面形状測定器
;
により測定した. の場合の抵抗温度係数 は,一般的に Æ
が小さいほど減少するが,
でも Æ と との関係は同様の
傾向を示す.一方, センサの場合も,Æ の減少と共に は小
さくなるが,Æ
では,同一膜厚に対する値のばらつき
が顕著となり,再現性の低下が見られた.
マイクロ流路内主流方向温度分布
マイクロ流路内に上記の薄膜測温抵抗体を埋設し,マイクロ流
路内を流れる流体の温度を測定した.マイクロ流路は
製
で,
を雄型として製作した.
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50µm
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X
180µm
Flow
60µm
150µm
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Pt
300µm
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0 にそれぞれ流路の概略図と寸法を示す. と ,
は,それぞれ流路幅,高さ,長さであり, は水力直径であ
と
4
る.流路の入口と出口では, 型熱電対を挿入して流体の温度
を測定した.各センサ基板は,センサが直接流体に触れるように
の下側から流路と接着させた.またこの時,
に示すセンサ は前述の通り,流路入口から
下流に位置
し,通電により流体加熱用ヒータとして動作する.この時,セ
ンサの初期抵抗値は予め計測され,それを基にセンサ印可電力
が
となるように一定電圧で通電する.
作動流体は純水であり,シリンジとシリンジポンプ 日本光
電
により流路へ圧送した.レイノルズ数 は,
水力直径を基準長さとして と設定した.
に,前述の条件下で
,
,
センサ
をそれぞれ用いて測定した主流方向温度分布を示す.
セン
サの測定値は,他の
センサと比較すると,分布形状は等し
いが,全ての位置でその値は小さい.この原因として,センサ
と引き出し導線間の接触抵抗の影響が考えられる.そこで,別
途, 薄膜と導線間の接触抵抗の温度係数を導出した.その
値により
節の校正実験で得られる抵抗値を補正し, セン
サの抵抗温度係数を新たに算出して測定した流路の温度分布を
に示す.この結果, センサによる測定温度分布は,
センサの結果と良好に一致する.このことから,補正を行え
ば, 薄膜でも
薄膜と比較して同等の計測精度が得られる
可能性を示した.
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薄膜熱電対
センサ形状と実験条件
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56 >6 ) 0+,
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0
本研究では,低磁性体で純金属である
と製作が容易な
を対金属として薄膜熱電対を製作した(以下,
センサと
称す).センサ形状を
に,その
断面図を
に
示す. と
は,幅
,長さ
の面で接触している.
前節の測温抵抗体同様に,
に示す通り,ガラス基板に
は
センサを
間隔で主流方向に設置した.ただし,
図中のセンサ では,
センサを成膜して,通電加熱した.
校正実験
センサの校正実験では,前節で述べた測温抵抗体を用
いて測定したマイクロ流路内の温度分布を参照データとして引
用した.すなわち,
センサを埋設したマイクロ流路につ
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'() 8* 9 )
いて,薄膜測温抵抗体を用いた実験と同条件で実験を行い,そ
れにより求まった熱起電力を測温抵抗体による測定温度と比較
することで,
センサの温度と熱起電力の関係を求めた.
センサ周りの各部の起電力を回路図として整理したものを
に示す.この場合, と
の接合部の起電力として,式
を導出した.ここで,式
で, は恒温槽内部温度,
は
センサ部の温度, ,
はそれぞれ と の見掛
けのゼーベック係数である.
) C
+*,
+*,
+ ,
+*,
) = は,初期温度からの温度差 7 と熱起電力 の関
係を示す.図中の△と▲で示すセンサは,D' 層と 層の
膜厚がそれぞれ異なり,△は D'A356
, 層A*66
,
▲は D'A/66
, 層A*66
である.△と▲の結果を
比較すると,熱起電力は共に 7 に対して線形であるが,その
勾配は膜厚に依存することが分かる.このことから, と 薄
膜を用いた本研究における空間分解能 56 >6 の薄膜熱電
A
¿
½
対はその製作時に,膜厚を考慮する必要があることが分かった.
結論
本研究では,アルミニウムを活用した安価で簡便な温度セン
サとして,空間分解能が
の薄膜測温抵抗体を試作
し,その性能評価を行った.また,白金薄膜により空間分解能が
の測温抵抗体の製作した.これらを,
製
マイクロ流路に埋設し,マイクロ流路内流れの主流方向温度分
布の測定を行うことにより,センサの有効性を示した.また,白
金とアルミニウムの組み合わせで,空間分解能が
の薄膜熱電対を製作し,マイクロ流路用の温度センサとしての
有効性を示した.
3
*56 **6 *56 ( 56 >6 参考文献
+*, E F E G H /C +066/,
055*05>5 +0, & E G H /= +0665, *>==*C6/