修士論文要旨 論文タイトル:「中国における電気自動車の普及促進要因について」 学籍番号:AM12014 氏 名:李広志 指導教授:安登利幸教授 【論文の構成】 はじめに 第1章 世界自動車産業の将来 第2章 中国自動車産業を巡る外部環境の変化 第3章 現在中国における EV の普及状況と問題点 第4章 中国における電気自動車普及への展望 参考文献 【論文の内容】 1.研究目的 本論では、中国における電気自動車の普及促進要因を明らかにして、電気自動車市場に参入するた めに必要な条件と、破壊的イノベーションの考え方に基づき電気自動車への転換を中国が主導する可 能性を究明する。 2.研究方法 中国における電気自動車への大転換の促進要因を見出すため、本研究では次の手順で考察を行う。 まず、世界が環境とエネルギーセキュリティの要請に対応するため、完成車メーカーが電気自動車開 発に取り組む必要性が高まっている情報を収集する。 次に、排ガスによる都市部の大気汚染の悪化を背景に、PEST 分析で中国自動車産業を巡る外部環 境を分析しながら、その変化を電気自動車の普及と関係づけて論じる。 また、ガソリン車の技術において先進国に遅れをとる中国民族系ブランドメーカーが、ガソリン車 と比較し、モジュール化と新興国へのシフトが進むことで、それほど技術体系の複雑ではない EV で あれば、競争優位にたてる可能性が高いことを論証する。 更に、破壊的イノベーションの考え方に基づき、中国山東省の低速 EV を例に挙げて、EV が破壊 的イノベーションとして成功する可能性を検証する。 3.研究結果 以上のような研究から、世界の自動車産業における電気自動車開発の潮流を受けて、中国政府が石 油調達のリスクや環境悪化などの要因から補助政策を展開しても、個人消費者に受け入れられないと、 容易には普及しないことを確認した。 一方、山東省を初めとして、普及しつつある中国特有の低速 EV の発展が近年注目され、中国政府 にまだ正式に認められていないものの、低性能、低価格、使い勝手が良いという特徴で、破壊的イノ ベーションの兆候が出ていると考えられる。更に、低速 EV は普通の電気自動車と本質的な違いが存 在しないことから、モジュール化と新興国へのシフトが進むことで、将来、中国の電気自動車の普及 点が低速 EV から始まる可能性が大きいと結論付けることができる。 【主要参考文献】. 1.A.T.カーニー(2009)『電気自動車が革新する企業戦略』日経 BP 社. 2.御堀直嗣(2009)『電気自動車が加速する』技術評論社. 3.クレイトン・クリステンセン/マイケル・ライナー(1997),(The innovator's dilemma),Harvard business school press(伊豆原,弓(2001),「イノベーションのジレンマ」翔泳社). 4.クレイトン・クリステンセン/マイケル・ライナー(2003),(The innovator's solution), Harvard business school press(桜井祐子(2006),「イノベーションへの解」翔泳社). 5.小林英夫(2010)『アジア自動車市場の変化と日本企業の課題』社会評論社. 6.国務院発展研究中心産業経済研究部(2010)『汽車藍皮書 中国汽車産業発展報告』. 7.周磊(2011)『中国次世代自動車市場への参入戦略』日経 BP 社. 8.塩地洋(2011)『中国自動車市場のボリュームゾーン』昭和堂. 9.湯之上隆(2012)「自動車の EV 化と日本電機産業への期待」,『Electronic journal』(Focus.日本電機業界),2012 年 5 月号,37 ページ. 10.手塚(2008)『戦略フレームワークの思考法:並列化・時系列化・二次元化で使いこなせる』日本実業出版社. 11.野口悠紀雄(2012)「電気自動車の転換を中国が主導する可能性」,『週刊東洋経済』第 49 回,96 ページ. 12.藤本隆弘(2004)『日本もの造りの哲学』日本経済新聞社. 13.松井大助(2008)『自動車業界大研究』産学社. 14.有田賢太郎(2011)『みずほ新興国における次世代自動車普及見通しと完成車メーカーの今後の方向性』,みずほコ ーポレート銀行産業調査部,VOL、103, 2011 年 10 月. 15.村沢義久(2010)『電気自動車:市場を制する小企業群』毎日新聞社. 16.桃田健史(2009)『エコカー世界戦争の勝者は誰か?市場・技術・政策の最新動向と各社の戦略』ダイヤモンド社. 17.ローランド・ベルガー(2008)『自動車部品産業これから起こる7つの大潮流』日経 BP 社.
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