報告書(PDFファイル、11ページ)

福島市放課後児童クラブのお子さんの
外遊び・屋外活動の状況に関する実情調査の結果報告
2015 年 2 月 14 日
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
福島事務所
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)では、昨年、福島市の 16 の放課後児童クラブの保護
者の方々にご協力いただき、以下の要領で、子どもの外遊びについて、アンケート調査を行いました。
ご回答いただいたアンケートの集計がでましたので、結果をお伝えします。お忙しい中、ご回答いただいた
保護者の皆様、アンケート回収にご協力いただきました指導員の皆様、ありがとうございました。
目的
震災以後の福島市の放課後児童クラブの子どもの外遊びの状況や、放射線や外遊びに
関する保護者の考え方を知る。
実施期間
対象者・
実施方法
2014 年 9 月~11 月 (配布から回収までの期間)
SCJ と NPO 法人いいざかサポーターズクラブの協働事業「冒険遊び場 1 日体験ツアー」に
参加した福島市の 16 の放課後児童クラブに登録する児童の保護者にアンケートを配布・
回収。
回答数
上記児童クラブに子どもを預ける 204 人の保護者
(349 人に配布、回収率 58%)
【アンケート結果全体を通して】
子どもの発達における外遊びの重要性は、ほぼすべての保護者の共通理解となっているようです。一方、
外遊びの制限をしている人と、制限していない人の比率は「3:7」と、判断が分かれました。この点と、84%の
保護者が、「毎時 0.23μsv 以下という条件が満たされれば、外遊びを許容できる」と回答していることを合わせ
て考えると、「毎時 0.23μsv 以下」を目指している国主導の除染の遅れが、子どもたちの日常生活における遊び場
へのアクセスに少なくない影響を与えていると言えそうです。
また、全体として、条件付きで居住地周辺における外遊び制限をなくしている親が増えつつある中、「(車を
使っても)自宅から行ける範囲に安心して子どもを遊ばせることのできる公園や自然はない」とする保護者も
1 割近くおり、放射線に対する様々な姿勢がうかがえます。外遊び制限の緩和傾向が見られる一方、問⑧では、
「安心して子どもを遊ばせることができる公園や自然が学区内にある」とした保護者は 4 人に 1 人しかいません
でした。アンケートに回答いただいた保護者の方々の考えでは、福島市では、自らの意志と力で「安全な遊び
場」に出かけられない環境に置かれている子どもが決して少なくないことがわかりました。「遊びの権利」が
十分に保障されているとは言い難いのが、福島市の放課後児童クラブの子どもたちの現状です。
1
【各質問に対する回答からわかること】
(ア) 子どもの「外遊び・屋外活動」の平均時間は?:「平日・放課後」<「土曜」<「日曜」の順に長くなり、日曜
の平均は約 2 時間。所属する放課後児童クラブにより、平均値の間に 1-2 時間程度の差がある。
(イ) 今の外遊び・屋外活動の時間の妥当?現在、子どもの「外遊び・屋外活動」時間の長さに問題を感じてい
ない保護者は約 4 割。約半数が不足を指摘しており、何らかの対策の必要性を感じている。
(ウ) 外遊びは子ども成長にとって大切?約 9 割の保護者が、児童の健全な成長における「外遊び・屋外活動」
の必要性を「大いに感じる」と認識しており、必要性を感じていない保護者は 1 人もいなかった。
(エ) 外遊びを制限している?「『外遊び・屋外活動』を制限していない」が 7 割、「制限している」が 3 割。「ほと
んど外遊びをさせていない」人は 2%。
(オ) 外遊びを制限しない理由は?制限していない理由で最も多かったのは「外遊びをしないことによる子ども
の発達への影響を感じるから」。
(カ) 外遊びを制限する理由は?一方、制限している理由として、もっとも多かったのは「遊び場・運動スペース
周辺の放射線量が不安だから」。8 割以上の保護者が選択した。
(キ) 制限したら、どんな対策を?「外遊び・屋外活動」を制限している保護者のうち約 3 分の 2 が、対応策とし
て「放射線量の低い地域に出かけて外遊びの機会を増やした」。一方、「事前に現地の放射線量を確認す
る」という人は 5 人に 1 人程度。
(ク) 外遊びをさせる判断材料は?子どもに屋外活動をさせる際に参考にすることとして、4 分の 3 以上の保護
者が、「現地の空間放射線量」と回答。土壌や土に含まれる放射性物質についても半数を越える保護者
が選択した。学校や学童クラブで禁止されているかどうかといった外部要因を参考にするとした人は、
少数にとどまった。
(ケ) 放射線量の目安は?屋外遊び場の空間放射線量について、「毎時 0.23μsv 以下であれば、多少不安はあ
るが許容範囲」と 3 分の1強の保護者が回答。一方、「放射線量は気にしていない。不安なく外遊びさせら
れる」という保護者も 3 割弱。全体としてみると、84%の保護者が、「毎時 0.23μsv 以下」という条件が 満
たされれば、外遊びを許容できると回答。反面、「毎時 0.23μsv 以下」であっても外遊びを控えさせたいとい
う保護者も 4%いた。
(コ) 近くに遊び場はある?「比較的安心して子どもを遊ばせることができる公園や自然」が徒歩圏内にあると
回答した保護者は約 4 分の 1。「車や交通機関を使えば日帰りできる範囲にそういった遊び場がある」とい
う人が、全体の約半数。一方、1 割強の人が、「日常自宅から行ける範囲に安心して子どもを遊ばせること
のできる場所はない」と回答した。
(サ) 外遊びができないその他の理由は?放射線以外の要因で、子どもが屋外活動できない理由を問う設問に
対して、もっとも多くの保護者が選んだのが「特にない」というもので約 30%。次いで「魅力的な遊び場や
自然環境が近くにない」(27%)。また、「テレビゲームなど屋内遊具の方が子どもにとって魅力的」「一緒に
遊ぶ友達が近くにいない」「習い事に忙しくて、遊ぶ時間がない」という選択肢にもそれぞれ一定数の回答
があった。
2
① 平日の放課後や休日のお子さんの外遊びや屋外活動の時間はどのくらいですか?
(211 人の子どもについて回答)
活動日
平均屋外活動時間
平日/放課後
約 40 分
がもっとも長いという結果が出ました。学童クラ
約 1 時間 37 分
で、屋外活動時間の平均が 1 時間未満となりま
土曜
曜日別の平均屋外活動時間では、日曜・祝日
ブ毎の傾向を見ていくと、平日は大半のクラブ
した。一方、日曜日には、平均値が 3 時間以上
約 1 時間 56 分
日曜・祝日
となる学童クラブが3つありました。
曜日別の平均屋外活動時間の分布
3
3時間以上
0
0
日曜
土曜
平日
5
2時間~3時間未満
3
0
8
1時間~2時間未満
10
2
0
1時間未満
3
14
0
2
4
6
8
10
12
14
16 児童クラブ数
②現在の外遊びや屋外活動の時間は、お子さんの健やかな成長に十分だと思いますか?
3%
4%
22%
29%
31%
②現在の外遊び・屋外活動の時間が
十分だと思う
11%
「十分である」と感じている保護者が、
やや少ないが、
特に問題ない
やや少ないので、
何らかの対策が必要
まったく足りてない
約 1 割にとどまった一方、「少ない」
「足りていない」と感じている保護者が
半数を超えました。
わからない
その他
3
③お子さんの健やかな成長に「外遊び・屋外活動」は大切だと思いますか?
③ 約 9 割近い大多数の保護者が、
0%
13%
子どもの健やかな成長における外遊
大いに感じる
び・屋外活動の重要性を「大いに感じ
まあまあ感じる
る」と答えました。「あまり感じない」「まっ
あまり感じない
87%
たく感じない」と答えた人は一人もいま
まったく感じない
せんでした。
④ お子さんの成長に「外遊び・屋外活動」が必要と考える理由はなんですか?(複数回答可)
87.7%
運動能力・体力を高めるため
60.8%
自然物を使った遊びが想像力を高めるから
70.6%
多様な自然と触れ合うことが五感を刺激するから
76.5%
仲間との遊びや活動でコミュニケーション力、社会性…
23.0%
普段と異なる自然環境での体験が、忍耐力を養うから
1.0%
その他
0%
10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100%
④ もっとも多い回答は、「運動能力・体力を高めるため」でした。実に 9 割近い保護者が選択しまし
た。それに続くのが「社会性・コミュニケーション能力を高めるから」「自然と触れ合うことが五感を
刺激するから」でした。また「自然物を使った遊びが想像力を高めるから」も 60%を越えました。
一方、「自然環境での体験が忍耐力を養うから」を選んだ人は 2 割強にとどまりました。
⑤ 震災後 3 年半が過ぎた現在、自宅の
ご近所におけるお子さんの外遊び・屋外 活動に関し、保護
者様はどのくらい制限をしていますか?もしくはしていませんか?
⑤ 大きくみると、制限していない人
震災前から何も変わらない
(特に制限を設けていない)
2% 2%
13%
27%
当初は制限していたが、
今は震災前の状態に戻した
が約 7 割、制限している人が約 3 割と
いう結果になりました。震災後 4 年が
⑤‐1 へ
過ぎ、空間放射線量の低下とともに、
震災前と同じような外遊びを再開した
少し制限している
子どもたちが多数を占めていることが
56%
分かりました。
一方、「かなり制限している」「外遊び
かなり制限している
⑤‐2、3、4 へ
外遊び/屋外活動をほとんど
させていない
/屋外活動をほとんどさせていない」
を選んだ保護者も 4%おり、外遊びの
許容程度が保護者によって大きく
異なる傾向が見てとれます。
4
⑤-1
制限していない理由はなんですか?(⑤より)
70.0%
65.2%
60.0%
遊び場・運動スペース周辺の放射線量への不
安があまりないから
53.2%
外遊び・屋外活動をしないことによるお子さ
んへの発育・発達への影響を強く感じるから
50.0%
40.0%
お子さんが強く望むから
28.4%
30.0%
20.0%
学校やお子さんが所属する団体などで制限が
なくなったから
14.9%
10.0%
5.7%
その他
0.0%
⑤‐1 「外遊びをしないことによる子どもの発達への影響を感じるから」が 65.2%と多数を占めました。また
「放射線量への不安があまりないから」が 53.2%となり、こちらも半数以上の保護者が選びました。「お子さ
んが強く望むから」を選んだ人も3割近くいました。
⑤-2 制限している理由はなんですか?(複数回答可)
遊び場・運動スペース周辺の放射線量が不安だから
⑤ ‐2 制 限 し て い る 理 由 で
一番多かったのは、圧倒的に
81.0%
外遊び・屋外活動をしないことによるお子さんへの発育・発達
への影響を特に感じないから
お子さんが外遊びに興味がないから
「遊び場・運動スペース周辺の
放射線量が不安だから」でし
た。8割を超す保護者が選択
学校や周囲で制限されているから
しました。「学校や周囲で制限
その他
されているから」と答えた人は
一人もいませんでした。
11.1%
1.6% 3.2% 0.0%
⑤-3 どのように制限していますか?(複数回答可)
6.3%
9.5%
⑤‐3 「場所を選んでいる」とい
う 人 が 81% と大 多 数 でした 。
27.0%
81.0%
その他
活動の種類を限定している
時間を決めている
場所を選んでいる
次に多かったのが「時間を
決めている」で、27%でした。
遊びや活動の種類を限定して
いるという人は 1 割未満でし
た。
5
⑤-4
そのほかにどのような対応策を取られていますか?(複数回答可)
その他
3.2%
テレビゲーム、カードゲームなど、
屋内遊具による遊びの時間を増やした
17.5%
自宅内で体を動かせる遊具やゲームを与え
た
9.5%
室内スポーツを習わせるようになった
20.6%
42.9%
インドアパークなど屋内遊び場にお子さん
を連れて行く機会を増やした
22.2%
外遊びをする際、事前に空間放射線量を確
認するようになった
66.7%
0.0%
20.0%
40.0%
60.0%
80.0%
県内外の放射線量の低い地域に遠出をして
外遊びの機会を増やした
⑤‐4 3 分の2近い回答者が選んだのが、「放射線量の低い地域に出かけて外遊びの機会を増やした」と
いうものでした。続いて多かったのが「屋内遊び場に行く機会を増やした」というものです。反面、「事前に
現地の放射線量を確認する」という人は 5 人に 1 人ほどにとどまりました。
⑥お子さんの外遊びや屋外活動を考える際に、(放射線被ばくに関連して)参考にする、あるいは
気にするものはありますか?(複数回答可)
75.5%
その場所の空間放射線量
54.9%
その場所の土壌や木に含まれる放射性物質の含有量
15.7%
他のお子さんがそこで遊んでいるかどうか
22.1%
学校や学童クラブで禁止・制限されているかどうか
5.4%
その他
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
⑥ 4 分の 3 以上の保護者が子どもに屋外活動をさせる際に参考にするのは、「現地の空間放射線量」
と回答しました。また、土壌や土に含まれる放射性物質についても半数を越える保護者が選択しました。
他の子どもが遊んでいるかどうかや、学校や学童クラブで禁止されているかどうかといった外部要因を
参考にするとした人は、少数にとどまりました。
6
⑦「屋外の遊び場」の空間放射線量について、保護者の皆さまの考えに近いものを選んでください。
放射線量はあまり気にしていない。居住地周辺のほとんどの場所で、不安
なく外遊びをさせられる。
3%
9%
毎時0.23μsv以下であれば、あまり不安なく遊ばせられる
4%
28%
36%
毎時0.23μsv以下であれば、多少不安はあるが許容範囲
毎時0.23μsv以下も不安なので、子どもには外遊びを控えさせたい
20%
わからない
その他
⑦ もっとも多い回答は「毎時 0.23μsv 以下であれば、多少不安はあるが許容範囲」というもので、3 分の
1強が選択しました。一方、「放射線量は気にしていない。不安なく外遊びさせられる」という保護者も 3 割
近くいました。全体としてみると、84%の保護者が、「毎時 0.23μsv 以下」という条件が満たされれば、
外
遊びを許容できると回答。反面、「毎時 0.23μsv 以下」であっても外遊びを控えさせたいという保護者も 4%
いました。また、約 1 割近い保護者が「分からない」と回答しており、放射線に関する情報や知識が、 す
べての保護者には十分に行き届いていない現状も示唆されます。
⑧ 放射線の観点から、比較的安心して子どもたちを遊ばせることができる公園、自然などはありますか。
徒歩圏内、子どもが行ける学区内にある
10%
25%
11%
3%
車や交通機関を使って、日帰りで
気軽にいけるところにある
車や交通機関を使って、1泊すれば
いけるところにある
安心して遊ばせることができる公園等は、
日常自宅から行ける範囲にない
51%
その他
⑧ 約 4 分の1の保護者が徒歩圏内に比較的安心して子どもを遊ばせることができる公園や自然があると
回答しました。もっとも多かったのは、車や交通機関を使えば日帰りできる範囲にそういった遊び場がある
という人で、約半数を占めました。一方で、1 割強の人が、日常生活の中で、自宅から行ける範囲に安心さ
せて遊ばせることができる公園や自然はないと回答しました。それぞれ具体例としては、以下のような回答
がありました。
【徒歩圏内、学区内】 近所の除染された公園、校庭、自宅の庭
【交通手段を使って日帰り】 あづま総合運動公園、十六沼公園、茂庭地区、みちのく杜の湖畔公園など
【宿泊を伴う場所】会津、山形、仙台、新潟の海、県外の実家など
7
⑨放射線量のほかに、お子さんが外遊びや屋外活動が十分にできない要因はありますか。(複数回答可)
35.0%
30.0%
魅力的な遊び場や自然環境が近くにない
28.9%
お子さんが習い事に忙しくて
遊ぶ暇がない
一緒に遊ぶ友たちが近くにいない
27.0%
25.0%
15.0%
テレビゲームなど屋内遊具の方が、
お子さんにとって魅力的である
お子さんが外での遊び方を知らない
19.1%
20.0%
16.7%
13.7%
12.3%
10.8%
10.0%
6.9%
まわりのおとなが遊びを教えられない
特にない
5.0%
その他
0.0%
⑨ 放射線以外の要因で、子どもが屋外活動できない理由を問う設問に対して、もっとも多くの保護者が
選んだのが「特にない」というもので 30%近くが選びました。それに次ぐのが「魅力的な遊び場や自然環境
が近くにない」というもので、約 4 分の1が選びました。また、「テレビゲームなど屋内遊具の方が子どもにと
って魅力的」「一緒に遊ぶ友達が近くにいない」「習い事に忙しくて、遊ぶ時間がない」という選択肢にもそ
れぞれ一定数の回答がありました。
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