平成26年度 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書

平成26年度 日本大学文理学部個人研究費 研究実績報告書
研
究
課
および
報
研究概要
告
の
の
概
結 果
要
研 究
の
考 察
・
反 省
研究発表
学会名
発表テーマ
年月日/場所
研究成果物
テーマ
誌名
巻・号
発行年月日
発行所・者
物理学科・教授
申請者氏名
石川 晃
印
題 走査電子顕微鏡での大気圧下観察における解像度のガス層厚さ依存性
研究目的
研 究
所属・資格
電子線を用いたタンパク分子の運動の計測法の開発を目的として、電子線 1 分子追跡法
(DET)を開発してきた。DET では走査電子顕微鏡(SEM)を用いて、タンパク分子に金ナノ
結晶を標識して Wet Cell に密閉し、タンパク分子の運動に伴う金ナノ結晶の方位変化を電子
後方散乱回折(EBSD)のパターンの変化から動的に解析し、分子自体の運動を 3 次元計測
する方法である。しかし、タンパク分子は電子線照射に大きな損傷を受けるため、電子線が
金ナノ結晶だけを照射し、分子を直接照射しないような試料セッティング方式が必要となる。
そこで、試料を Wet Cell の隔膜に対面する別の膜にセットして金ナノ結晶がタンパク分子を
電子線から遮蔽する方式を採用するが、電子線が Wet Cell 内の大気ガス層を通過する距離が
大きくなるので、その解像度のガス層厚さ依存性を明らかにする。
Wet Cell 内の大気圧ガス層の厚さをコントロールするため、隔膜の下に設置する試料台の下
にバネを置き、隔膜を貼ったグリッドの下面と試料台の間にスペーサーを置いて、スペーサ
ーの厚さを帰ることによって、隔膜と試料との間の距離を可変とする試料ステージを作製し
た。スペーサーは、厚さ 10,20,30,50,100 um の 5 種類を用意し、組み合わせて使用すること
により 10um から 210 um まで 10um 単位で可変とした。解像度計測用の試料として、直径
数十 nm の金粒子を平面状に分布させたものを用い、金粒子のエッジレゾリューション(近
接する最小間隔)を測定した。結果として、ガス層厚さが増すにつれ、像コントラストは低
下するが、解像度の低下は予想よりも少なく、ガス層厚さ 80um 程度までは nm オーダーの
解像度が得られることがわかった。
Wet Cell 内の大気圧ガス層の厚さが数十 um までであれば、nm オーダーの解像度で、金ナ
ノ粒子を観察できることが確認できたことにより、金粒子を標識したタンパク分子を Wet
Cell の隔膜に対面する別の膜にセットして DET 計測を行うことが可能となる見通しが得ら
れた。ただ、今回の金ナノ粒子試料を用いたエッジレゾリューションの計測だけでは、金粒
子のサイズのばらつきや分布のバラツキにより、解像度の違いを精度よく測定することは難
しかったので、エッジレゾリューションだけではなく、画像のフーリエ変換による空間周波
数成分の解析による方法を併用して、高精度の解像度計測を行うことが必要である。
※この欄は,本報告書提出時点で判明している事項についてご記入ください。
学会発表
①日本顕微鏡学会 70 回学術講演会
電子線 1 分子追跡法による 3 次元ピコメートル精度水中動画観察
2014 年 5 月 12 日/千葉
②日本顕微鏡学会 70 回学術講演会
パーキンソン病患者脳の走査電子顕微鏡とエネルギー分散型X線分析装置による元素分析
2014 年 5 月 12 日/千葉
論文
Time-resolved measurement of the three-dimensional motion of gold nanocrystals in water using diffracted electron tracking
Ultramicroscopy,
140
2014