外国人を採用する場合の留意点

外国人を採用する場合の留意点
最近は、在留外国人が増えており、国内の少子化に伴い今後もますます増加するものと
予想されております。このような理由により、このたび
「出入国管理及び難民認定法及び日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等
の出入国管理に関する特例法の一部を改正する等の法律」が改正され一部を除き本年7月
から施行されます。
そこで、企業の人事・労務担当者に関係の深い主な改正点について、解説します。
改正点1、研修・技能実習制度の見直し
研修・技能実習制度」は、中国、東南アジア等の発展途上国から来た者を日本の企業で
受入、将来自国の経済発展に寄与することを目的として作られた制度です。
研修生とは
企業等で概ね1年以内の期間に日本の産業、職業上の技術、技能、知識
を学ぶために来日した外国人をいいます。
技能実習生とは
研修目的で一定水準の技術等を習得し、かつ、在留状況が良好と認
められる者で、研修を受けた機関と同じ会社で、同一の技術等について雇用関係を結び、
より実践的に技術等を習得しようとする外国人をいいます。
(1)現在の外国人研修、技能実習の制度
研修生は、約1年の研修期間中は「研修」の在留資格になり、まえもって作成さ
れた研修計画に沿って座学(非実務研修)と実務研修を受け、その後、技能検定合格等の
条件をクリアすると、在留資格が「研修」から「特定活動」に変更され、研修生から技能
実習生に移行できます。
技能実習生は同じ受入企業と雇用契約を締結し、始めて労働者として実務活動を行うこ
とが出来ます。
(2)改正後の「技能実習制度」
改正法では、研修生と技能実習生の保護の強化を図るため、次の活動を行うことが
出来る在留資格「技能実習」を新たに設けられます。
①「講習による知識習得活動」及び「雇用契約の基づく技能等習得活動」
イ、海外にある合弁企業等事業上の関係を有する企業の社員を受け入れて行う活
動(企業単独型)
ロ、商工会等の営利を目的としない団体責任及び監理の下で行う活動(団体監理
型)
②①の活動に従事し、技能等を習得した者が雇用契約に基づき習得した技能等を要する
業務に従事するための活動。
これにより、雇用契約に基づく技能等修得活動は、労働基準法、最低賃金法等の労働関
係法令等が適用されるようになります。また、①から②への移行は、在留資格変更手続に
より行うこととなります。
その他以下の事項について、今後関係省令の改正等を行う予定となっております。
・ 受け入れ団体の指導、監督、支援体制の強化、運営の透明化
・ 重大な不正行為を行った場合の受け入れ停止期間の延長
・ 送り出し機関と本人との間の契約内容の確認の強化
改正点2
など
在留資格「留学」と「就学」の一本化
留学生の安定的な在留のため、在留資格「留学」と「就学」の区別をなくし「留学」の
在留資格へと一本化するものです。
従来は、「留学」(大学、短期大学、高等専門学校等の学生)と「就学」(高等学校、
専修学校等の生徒)とで在留資格が分かれていました。
なお、法律の施行後、活動内容に変更がなければ、現在「就学」の在留資格を有する
学生の方が「留学」に変更する必要はありません。
留学生をアルバイトとして雇用するときの注意点
原則として外国人留学生をアルバイトとして雇用することは出来ません。
しかし、本人が、地方入国管理局に申請し、資格外活動の許可を受けた外国人留学生は、
一定の範囲でアルバイトをすることが出来ます。風俗営業は除外されております。
大学等の正規生と専門学校等の学生は1週間につき28時間以内(夏休みなどの長期休
業中は1日につき8時間以内)のアルバイトが認められます。
一方、大学等の聴講生、研究生の場合には、1週間につき14時間以内(夏休みなど
の長期休業中は1日につき8時間以内)までとなっています。
ここで注意を要するのは、留学生からもっと多く働かせて欲しいとの申し出があっても
この時間を超えて働かせることは「不法就労」などに該当することもありますので、注意
してください。
外国人を採用する場合、担当者が確認すべきことは!
では、採用担当者が外国人を面接、採用する際に注意することは何でしょうか?
まず、在留資格と在留期限を確認することです。
確認書類は!
1、 旅券(パスポート)最新の上陸許可証印(又は在留資格更新許可証印等)
2、 外国人登録証又は在留カード
3、 就労資格証明書(外国人本人又は代理人からの申請により入国当局から交付される就
労活動の内容を証明する文書で、本人の希望により交付される文書ですので、就労す
る外国人が必ず所持していなければならないものではありません。提出しないことを
理由として不利益な取り扱いをすることは禁じられております。
)
4、 資格外活動許可書(留学生、アルバイト等)
査証(VISA)と上陸許可の相違点
わが国に上陸しようとする外国人は、まず査証(VISA)を取得します(査証を必
要としない例外規定除く)査証(VISA)を取得した外国人が、その有効期間内に日
本に入国し、入国審査官の審査をパスすると上陸許可証印が旅券(パスポート)に表示
されます。査証はこの時点で使用済みとなり(数次査証を除く)
、その後は上陸許可証印
が日本に在留する外国人にとって、合法的滞在の根拠となります。
ご注意!
不法就労させた場合、こんな罰則があります。
外国人の不法就労が発覚した場合、その外国人本人はもちろん、不法就労をさせた企業
側も罰せられる場合があります。⇒不法就労助長罪
以下の罰金。
(入管法第73条の2)
3年以下の懲役もしくは300万円
留学生等の在留資格はあっても資格外活動許可を取っていない外国人を雇用したり、資
格外活動許可は取っていても許可されている時間以上に働かせたりすることも不法就労助
長罪に該当するため、注意が必要です。
また、平成19年の雇用対策法の改正により、外国人労働者(特別永住者を除く)を雇
い入れる場合や、離職者が出た場合は、在留資格や在留期限等の情報を所轄のハローワー
クへ届け出ることが義務づけられております。
在留資格や在留期限等の情報は外国人登録証明書や旅券(パスポート)で確認すること
になっており、確認や届出の義務を怠ったときは指導や勧告の対象になり、30万円以
下の罰金となります。
その他の改正点
前述した事項が人事・労務担当部署に関係が深い改正点ですが、その他次の事項が今回
改正法による改正事項となっております。
1、 在留カードの交付など新たな在留管理制度の導入。
2、 特別永住者の方に特別永住者証明書の交付。
3、 入国者収容所等視察委員会の設置。
4、 拷問等禁止条約等の送還禁止規定の明文化。
5、 在留期間更新申請等をした者についての在留期間の特例の設置。
6、 上陸拒否の特例の設置。
7、 乗員上陸の許可を受けた者は乗員手帳等の携帯・提示の義務化。
8、 不法就労助長行為等に適確に対処するために退去強制事由等の設置。
編集:リード社会保険労務士法人
醍醐
幸蔵