博士論文 日本の生保の新たな健全性指標からみる 中国の今後の健全性監督のあり方 2015 年 1 月 滋賀大学大学院経済学研究科 経済経営リスク専攻 氏 名 王 美 指導教員 久保 英也 指導教員 二上 季代司 指導教員 楠田 浩二 教授 教授 教授 目 次 はじめに ................................................................................................................................. 2 第1章 中国の生命保険市場の現状と先行する日欧の健全性監督 .................................... 5 1.中国の生命保険市場の現状 .......................................................................................... 5 2.ソルベンシーⅡとソルベンシー・マージン基準の導入までの変遷............................ 8 第2章 中国の保険監督およびソルベンシー・マージン規制の歴史と現状.................... 13 1.中国保険業の歴史と保険業監督管理 ......................................................................... 13 2.中国保監会ソルベンシー規制の歴史変動 .................................................................. 15 第3章 2 つの健全性基準の概要と新しい評価モデルの構築 .......................................... 23 1.先行研究 ...................................................................................................................... 24 2.EU のソルベンシーⅡの概要 ..................................................................................... 26 3.日本のソルベンシー・マージン基準 ......................................................................... 33 4.モデル保険会社の構築 ................................................................................................ 34 第4章 資産・負債の統合モデルを用いた健全性評価 ..................................................... 41 1.金利前提 ...................................................................................................................... 42 2.シミュレーション結果 ................................................................................................ 42 3.シミュレーションからの示唆 ..................................................................................... 50 第5章 生命保険会社の経営破綻誘発要因の定量分析 ..................................................... 53 1.はじめに ...................................................................................................................... 53 2.先行研究 ...................................................................................................................... 54 3.モデル保険会社を用いた破綻原因の考察 .................................................................. 56 4.結語 ............................................................................................................................. 67 第6章 中国に適合する健全性監督のあり方 .................................................................... 68 1.中国保険会社の健全性リスクと監督 ......................................................................... 68 2.中国生保会社健全性指標の選択について .................................................................. 70 3.中国生命保険会社の破たん処理のあり方について ................................................... 72 おわりに ............................................................................................................................... 78 参考文献 ............................................................................................................................... 80 付表 1 シミュレーションプログラム ................................................................................ 84 付表 2 中国保険破綻関連法律 ........................................................................................... 92 1 はじめに 保険業は銀行業や証券業などとともに一国の経済発展に重要な役割を果たし、国の内外 へ必要資金の供給や広範なリスクの引き受けである。これを永続的にかつ頑強に行うには、 2000 年の日本での生命保険会社の連続経営破綻や 2008 年のアメリカ AIG 社の経営破綻 の例を見るまでもなく、保険会社の自身のリスク管理とそれを監督する監督機関による健 全性監督、そして市場のチェックなどが重要である。 保険業の健全性監督については、2016 年から欧州で導入が検討されている新しい健全 性指標である「ソルベンシーⅡ」の動静が重要である。同指標は国際会計基準とも符合す る計算方式を有する基準であり、理論的には優れた健全性指標であると言える。保険会計 の原則であった保険負債の評価は「簿価」という概念を根底から覆し、保険負債を金融商 品と同じ方式で「時価」で評価するため、これまで、各国ごとに完結していた保険監督が グローバルに同一基準で行うことも可能となる。 逆に、この新しい健全性指標を各国で異なる保険市場の特性や法制度などの充実度の中 で、どのように自国に持ち込むのかは難題でもある。現行の健全性指標からの移管やそれ を使用した健全性監督をどのように進めるのかなど課題は多い。 日本でも、これに備え金融庁が「全保険会社を対象に経済価値ベースのソルベンシー規 制の導入に係るフィールドテスト」を実施したのに加え、日本アクチュアリー会が「EU・ ソルベンシーⅡにかかる CEIOPS 勧告および日本におけるインプリケーションに関する 調査・研究」などを発刊するなど監督機関や各分野の専門家、そして、保険会社において、 ソルベンシーⅡの導入について様々な検討を行ってきた。 それは本格的な健全性監督が緒についたばかりの中国も同様で、中国保険監督管理委員 会は「中国第 2 世代ソルベンシー監督制度体系構築計画保監発(2012)24 号」を発表し、 EU のソルベンシーⅡと似た新しい健全性指標の作成と利用を検討している。 ただ、日本のように使い慣れた健全性指標と日常監督から破綻処理まで保険会社への規 制や関連する法制を有する先進国とそれが整備途上の国では、先進的なソルベンシーⅡの 活用は異なると考えられる、しかし、そもそも現行の健全性指標とそれに基づく健全性監 督の課題も十分に総括されたと言えず、また。現行制度からソルベンシーⅡに移行を模索 するのであれば、両指標が持つ特性と両指標の差異を的確に把握する必要がある。 一方、法制などが整備された日本でも、2000 年前後に発生した生命保険会社の連続経営 破綻時に保険会社の健全性を測る尺度であるソルベンシー・マージン基準が十分に機能し 2 なかった。健全性指標自体の持つ限界を知ると共に健全性監督や契約者への情報提供に相 対的に優れた指標や指標体系とはどうあるべきかを同時に考える必要がある。 そこで、本稿では、法制度や監督体系などの制度が整備された日本と今後整備が進んで いく中国を取り上げ、①ソルベンシーⅡと現行の健全性指標との指標特性の差を明確にす ると共に、②日本の貴重な経験である生命保険会社の連鎖経営破綻の要因を計量的に把握 することにより、 「中国における健全性指標を軸とした新しい健全性監督のあり方」を提案 したい。 本稿は 6 章からなる。第 1 章の「中国の生命保険市場の現状と先行する日欧の健全性監 督」では、①中国の生命保険市場の概要と今回比較する 2 つの健全指標のルーツである欧 州と日本の健全性監督を概括する。 第 2 章の「中国の保険監督およびソルベンシー・マージン規制の歴史と現状」では中国 における保険監督の歴史や健全性規制を監督運営してきた経緯などをステージごとに詳細 に調査した。 第 3 章の「2 つの健全性基準の概要と新しい評価モデルの構築」では、EU のソルベン シーⅡと日本のソルベンシー・マージン基準の骨格とその中にある定量的評価方法を詳し く紹介する。そしてこの定量的評価を実行できる独自開発した計量モデルの概要について 述べる。具体的には、日欧の 2 つの健全性基準を資産・負債両面に反映できる「保険会社 モデル」を開発し、最大のリスクである金利リスクが両基準に与える影響を検証する。 第 4 章の「資産・負債の統合モデルを用いた健全性評価」では、前章で紹介したモデル 保険会社を用いて金利リスクの静態分析、動態分析および株式リスクを組み入れたリスク 分析を行い、ソルベンシーⅡとソルベンシー・マージン基準の指標特性を明らかにした。 そして、その示唆からこの指標を監督に使用する際の留意点を示した。第 5 章の「生命保 険会社の経営破綻誘発要因の定量分析」では、連続的な経営破綻を生んだ要因は定説化し ているが、定性的な判断が多い。そこで、日本のバブル醸成からバブル清算までの金利の 動きを想定できる理論モデルを作成し、大量に販売された一時払いの保険や解約が経営破 綻に与える影響を計量的に検証する。 その要因の影響度を計量的に把握する。第 6 章の「中国に適合する健全性監督のあり方」 では、第 3 章から 6 章のシミュレーションや中国の中国保険法や企業破綻法から、中国の 特異性を抽出し、それに適合する健全性監督のあり方を提案する。 なお、先行研究の猟集については、章ごとに切り口が異なるため、各章ごとに紹介する 形をとった。 3 本稿の結論を先取りすると、以下の 3 点となる。 (1)ソルベンシーⅡを現行の健全性指標(例えば、日本のソルベンシー・マージン基準) と入れ替え採用すると金利局面により、両指標は逆の健全性シグナルを出す局面があり、 導入には慎重かつ十分な検証がいる。①低金利局面ではソルベンシーⅡとソルベンシー・ マージン基準の健全性水準は共に金利と同方向に変化するが、平均金利、高金利局面では 逆方向に動く、また、②健全性が相対的に悪化する高金利局面では自己資本が重要となる が、自己資本の健全性水準に寄与する度合いは高金利局面では低下する、ことなどが判明 した。そして、③生命保険会社に対する現行のソルベンシー・マージン健全性規制は最大 のリスクである金利リスクの動きを適切に反映できない一方、EU のソルべンシーⅡは正 しい方向は示唆しているものの、その変動が大きすぎるという欠点がある。 このシミュレーション結果から、①現行のソルベンシー・マージン基準からソルベンシ ーⅡに移行する際には、これらの指標特性を十分理解するとともに、資産・負債のデュレ ーション格差の圧縮や予定利率の引き上げ抑制などのリスク管理が重要である。②円滑な 移行が実現するようソルベンシーⅡの指標のリスク係数などを日本に適合できるように、 また、この指標の存在が投資の大きな制約にならないように見直すことも重要となる。 (2)通説となっている定性的判断から導かれた日本の生命保険会社の連続的な経営破 綻の原因には正確性に欠けるものが多い。今回の計量的分析からこれらの説を検証すると、 (ⅰ)破綻の元凶とされた一時払い養老保険の大量販売は、資産と負債の組み合わせ管理 を行う ALM を前提にすれば、通常の年払い保険を販売するよりリスクを軽減でき、より 安全な商品、(ⅱ)もう一つ原因とされる解約による経営破綻への影響は、2000 年前後に 現実に起こった解約率の 5%程度の悪化では経営破綻の決定的な要因とならず、経営破綻 には 10%程度の解約率の悪化が必要、などが今回の計量分析で初めて明らかとなった。 (3)2 つの健全性指標は、時間ラグを持ち変化する。健全性指標の選択は 2 者択一では なく、2 つを組み合わせ、ソルベンシーⅡを健全性の早期警戒指標として、また、ソルベ ンシー・マージン基準を早期是正措置と連動したメインの監督指標として置くことにより、 事前破綻検知能力の向上とより安定的な監督、経営に貢献する。中国においては、日本以 上に貯蓄志向が高い生命保険市場であることからモデルの保険市場への適合性は高いこと から、2 つの健全性指標を組み合わせた日本と同様の指標体系での運用をめざす。ただし、 法整備などの差があるため監督の透明性をより高めるために早期是正措置の中にソルベン シーⅡの早期警戒シグナルを組み込む形が好ましい。 4 第1章 中国の生命保険市場の現状と先行する日欧の健全性監督 1.中国の生命保険市場の現状 中国は、世界の生命保険市場の中で急速にその存在感を高めている。表 1-1 は、中国の 生命保険市場の国際比較を示しているものである。2012 年の世界の生命保険市場はアメ リカ、欧州、アジアで 3 分されその収入保険料が 2.6 兆ドルであり、アジア地域の同収入 は 9,577 億ドルと 10 年前にはほぼ同水準であった 3 地域の中でアジアの成長が目を引く。 1 国別のシェアでは、アメリカが 21.7%、次いで日本が 20.01%と 2 国が突出しているが、 アジアの躍進の原動力である中国の同シェアは既に 5.4%に達し、10 年前の 2.5 倍となっ ている。この水準はドイツ、フランスの保険料収入に匹敵する。 ただ、一人当たり収入保険料は 102.9 ドルと日本の 40 分の 1 に過ぎず、今後、市場が 急成長する可能性が高い。 表 1-1 中国の生命保険市場の国際比較 保険料収入 シェア(対世 名目GDP比 人口1人当たり 界:%) (%) (P:100m$) (ドル) 北米 欧州 アジア 2012 日本 中国 ベトナム 北米 欧州 アジア 2003 日本 中国 ベトナム 619,538 876,444 957,712 524,372 141,208 882 503,759 584,705 522,340 381,335 32,422 331 23.64 33.44 36.54 20.01 5.39 0.03 30.12 34.96 31.23 22.8 1.94 0.02 3.57 3.89 4.09 9.17 1.7 0.63 4.25 4.64 5.74 8.61 2.3 0.87 1776.8 996 229.8 4125.5 102.9 9.8 1565.7 726.9 140.1 3002.9 25.1 4.1 P増加倍 数(現地通 貨対2003: 倍) P増加倍 数(ドル対 2003:倍) 1.01 3.31 2.96 1.23 1.50 1.83 1.38 4.36 2.66 - - - 出所: Swiss Re 社の siguma2013/3 と 2004/3 のデータを基に筆者が作成。 歴史的に見ると、中国は、1979 年の「改革開放」政策の実施を機に急速な経済成長を遂 げ、これに伴い金融業も驚くべきスピードで成長してきた。保険業も図 1-1 にみるように、 成長率はやや減速しているものの、1980 年から 2013 年の保険料収入の 33 年間の平均伸 び率は 31.8%になり、同期間の名目 GDP の同伸び率 16.2%の約 2 倍である。なお、2011 年については、収入保険料が一時的に減少しているように見えるが、これは、中国保険監 5 督管理委員会の会計規定の変更によるもので、実勢としては引き続き増加している1。 図 1-1 中国保険市場の長期推移 出所:中国保険年鑑編集委員会「中国保険年鑑」各年版および中国保険監督管理委員会 HP 公 表資料より筆者作成。 中国の生命保険市場の「成長速度」を知るために、日本が高度成長期に生命保険市場を 急拡大させた 1960 年代から 1970 年代と並べて比較すると、中国の成長は日本の成長ペー スを超えている。図 1-2 は、 中国生命保険市場の成長ペースを日中で比較したものである。 2 国の収入保険料と総資産がほぼ同規模になった時点を始点として作図している。中国の 点線で示した収入保険料と薄い色の棒グラフが日本の同指標の成長ペース(同黒の実線、 濃い色の棒グラフ)を大きく凌駕していることがわかる。 図 1-2 日中生命保険市場の成長ベース(円ベース) 向日葵保险网 2012-05-31 「2011 保费增长谜案:原保费收入内涵大不相同」に伴 う 2011 年初、中国保监会的统计数据开始按照行《关于印发<保险合同相关会计处理 规定〉的通知》による。 1 6 出所:王美「中国生命保険会社の健全性基準における金利リスクの評価度」(2013) 中国の生命保険市場の特徴はこの成長性の高さに加え、日本の死亡保障や医療保障中心 の市場と異なり、貯蓄志向が強い保険が多売されているという点にある。従って、大きな 資産運用リスクを抱え込みやすく、 急成長のひずみの発生しやすい市場であるとも言える。 中国における生命保険会社の経営破綻は、保険業法や契約者保護制度などで保護されてい る日本とは異なり、保険会社の経営破綻は国民に大きな被害と衝撃を与える可能性がある。 一方、万峰(2010)は、「中国の収入保険料は、初年度徴収される保険料の割合が大き い、すなわち、一時払いの保険料の全保険料に占める割合が大きい」としている。また、 中国の生命保険会社の資産運用は、表 1-2 の通り債券と貯金(銀行の定期預金)が全体の 75%を占めることから、金利リスクの管理が適正にできるかどうかが重要なポイントとな る。 表 1-2 中国生命保険会社の資産構成 7 項目 貯金 債権 株式と証券投資基金 その他投資 全資産に対する割合 28.14% 42.93% 9.82% 19.11% 出所:中国保監会「2014 年 1-5 月保険統計データ報告」から筆者作成。 2.ソルベンシーⅡとソルベンシー・マージン基準の導入までの変遷 まず、保険業を監督する管理部門役割は各国により違いがある。EU では、現在、加盟 各国が自国の保険会社の監督管理機能を有している一方、各国は CEIOPS (欧州保険・年 金 監 督 者 会 議 : Committee of European Insurance and Occupational Pensions Supervisor)を創設し、新しい EU 統一の監督管理規制であるソルベンシーⅡ作りの議論を 進めている。 日本では、イギリスと同様に金融庁が銀行、保険、証券の一元的に監督管理機能を有し ており、中国では、中国保険監督管理委員会が保険業の監督管理機能を有している。また、 国 際 的 に は 、 IAIS ( 保 険 監 督 者 国 際 機 構 : International Association of Insurance Supervisors)が①効果的でかつ国際的整合性を有した保険監督の促進や、②世界の金融安 定への貢献、③国際保険監督基準の策定及びその実施の促進、④保険監督者間の協調の促 進、⑤他の金融分野の監督機関との連携を目的とし、活動している。 保険監督は規制に基づきおこなわれるため、その基礎にある法制が重要である。イギリ スにおいては、保険会社の監督も金融サービス市場法(FSMA:Financial Services and Markets Act)に基づいて行われ、保険会社・子会社の業務範囲の規定や資産運用規則およ びソルベンシー・マージン比率規則などの規制に基づき保険会社を監督している。ド イ ツ は、保険監督法(VAG:Versicherungsaufsichtsgesetz)の規定に基づき、連邦金融監 督庁(Ba Fin:Bundesanstalt für Finanzdienstleistungsaufsicht)により保険業に対する監 督が行われている。保険会社業務範囲や、資産運用およびソルベンシー・マージン比率に ついても規則がある。フランスは、保険法典に基づき、健全性監督機構(ACP:Autorité de contrôle prudentiel)による監督が行われている。その中には保険会社の業務範囲規定や、 資産運用およびソルベンシー・マージン比率について規則がある。 一方、日本は、日本保険業法に基づき、金融庁が保険会社の監督を行うが、保険会社の 8 業務範囲の規定や資産運用の制限およびソルベンシー・マージン比率規制などがある。中 国も「中華人民共和国保険法」に基づき、中国保険監督管理委員会が保険会社の監督を行 っていっているが、その内容は次章に譲りたい。 本稿では、3 章以降、2 つの健全性指標について議論することになる。それは、欧州連合 (European Union、以下 EU と呼ぶ)のソルベンシーⅡと日本のソルベンシー・マージ ン規制である。前者は国をまたぎ、また、他の金融機関の健全性指標との親和性を勘案し た新しい指標である。後者は、現行の健全指標の代表的な指標であり、ソルベンシー(リ スクに対応する財源)とリスク量を分母・分子で比較し、その比率を健全性の目途とする ものである。形やリスク係数は異なるもののこのコンセプトは多くの国が採用している。 ここではこの 2 つの指標について過去からの変遷を整理した。EU 統合の準備の一環とし て 1960 年代から、EU では保険業の自由化、統合が進み、同時に、保険会社の財務規制な ど も 同 一 化 を 進 め て き た 。 生 命 保 険 に つ い て は 、 1979 年 に 「 生 命 保 険 第 1 次 指 令 (79/267/EEC)」でソルベンシー・マージン基準が制定され、損害保険については、1973 年の「損害保険第 1 次指令(73/239/EEC)」により、ソルベンシー・マージン基準が導入さ れた。EU の現行のソルベンシー規制の枠組みもこれにより誕生し、その後、 「損害保険第 2 次指令」 (1988 年)、 「生命保険第 2 次指令」 (1990 年)、1992 年に「損害保険第 3 次 指令」および「生命保険第 3 次指令」により、指標の改正とともに EU 全体の「単一免許 制度」の導入やソルベンシー規制の統一などが実現した。 また、EU は 2000 年 10 月にソルベンシー規制に関する改正案について、ソルベンシー 規制に関する課題を「当面実行すべき課題のソルベンシーⅠ」と「長期的に検討すべき課 題のソルベンシーⅡ」に分別し議論を行うことにした。その「ソルベンシーⅠ」は、損保、 生保共、「損害保険ソルベンシー・マージン指令(2002/13/EC)」と「生命保険統合指令 (2002/83/EC)」により設定された現在のソルベンシー規制の枠組みは変えず、ソルベン シーを構成する資本要件だけを厳格化した。 「ソルベンシーⅡ」については、ソルベンシーⅠの枠組みを抜本的に見直すこととし長 い時間をかけて審議され、ようやく 2016 年から導入予定とされている。なお、表 1-3「EU のソルベンシー・マージン規制の歴史流れ」に過去の議論の経緯をまとめた。 表 1-3 EU のソルベンシー・マージン規制の歴史 9 EU域内における共通のソルベンシー規制の枠組が導入されたのは、1973 年7月に最初に採択された損害保険第一次指令(73/239/EEC)において、保 険業の免許制度の確立、保険契約者保護の観点からの保険契約準備金、ソル ベンシー・マージン等の財務要件を規定した。 1992年6月に採択された損害保険第3次指令(92/49/EEC)により、保険約款 及び保険料率が自由化され、事前的監督から事後的に保険会社の財務健全性 を監督するソルベンシー・マージン規制の役割が重要性を増したが、微修正 にとどまった。同3次指令は、ソルベンシー・マージンとなりうる要素の一 部追加等を規定する(24条)とともに、欧州委員会は施行日(1994年7月) から3年以内に見直しの要否を報告することとされた(25条)。その後1997 第 1 段 階 年7月に出された報告書でも、現行制度は、いくつかの弱点はあるが、概ね 1973年から1999年 満足する結果を示しており、維持すべきとの見解であった。 このような中で、欧州単一市場の促進によるEU金融市場の活性化のために 金融サービス行動計画(Financial Services Action Plan)が1999年5月に策 定され、金融のグローバル化等に対応した最先端の健全性規制・監督の戦略 目標の1つとして、ソルベンシー・マージン規制の改正が挙げられた。 1997年の欧州委員会の報告の基礎研究として、EU加盟国の監督当局会議 の作業グループがまとめたミュラー報告書(Muller Report)は、保険会社を 取り巻く様々なリスクを分析し、現行制度の評価及び改善提案を行ったが、 その後の2つの計画の提案にも影響を与えた。 2000年10月 欧州委員会は、既存のソルベンシー・マージン規制の改善を図る短期的計 画(ソルベンシーⅠ)及び保険会社の全体的な財務状況の分析を行使した根 本的な方法の見直しを実行する長期的計画(ソルベンシーⅡ)を提案した。 現在適用されているEUのソルベンシーⅠ(損害保険事業者に係るソルベン シー規制は、1973年の損害保険第一次指令の16条以下の規定、それを改正す る1992年の損害保険第三次指令及び2002年の損害保険ソルベンシー・マー ジン指令の関係規定が組み合わされ適用されている)は、保険引受リスクの み対象としている、わが国とは異なり資産運用リスクや経営管理リスク等は 考慮されていない。すなわち、現行のソルベンシーⅠは、保険契約準備金を 超えて保険金支払等が発生する不測の事態に備えて、これを補完する緩衝 (buffer:以下「バッファー」)として、ソルベンシー・マージンの確保を 保険会社に義務づけると共に、それを確保できない場合の監督当局による是 正措置で構成される。 是 正 措 置 の 発 動 基 準 と な る 必 要 ソ ル ベ ン シ ー・ マー ジン (required solvency margin)は、総収入保険料または総支払保険金の一定割合で計算 され、また、免許取消等の最終的な措置の発動基準となるギャランティ・ ファンド(guarantee fund)は必要ソルベンシー・マージンの3分の1で構成 第 2 段 階 現行のソルベンシー するものとし、保険種目に応じて定められる最低金額が設定される簡素な構 造となっている。 Ⅰ このように、現行のソルベンシー・マージン規制は、加盟国が受け入れや すい規制とするため、最低限度の基準となっていること、また、ソルベン シー規制の見直しが部分的なものにとどまり、抜本的な改正は時間がかかる ことから、加盟国では、独自のソルベンシー規制を導入する動きも進んだ (例えば、イギリスでは、2005年から、内部モデルを用いて保険事業者のリ ス ク 実 態 に 応 じ た 資 本 必 要 額 の 算 出を 求め る個 別資 本十 分性 基準 (Individual Capital Adequacy Standards: 以 下「ICAS」 ) が 導入 され た。また、同時に、法的拘束力は持たせない最低資本要件である強化資本要 件(Enhanced Capital Requirement:ECR)も実施され、保険会社はベン チマーク指標として非公式に監督当局に報告することが求められている。こ のほか、デンマークでは、2001年から、生命保険事業者及び年金事業者向け に、交通信号システム(traffic light system)と呼ばれる一定のシナリオ (市場金利、株価、不動産価格等の一定の低下)に基づくソルベンシー状況 の報告を6カ月ごとに報告する規制が導入された。 10 続き 欧州連合(European Union:以下「EU」)における新しいソルベンシー 規制であるソルベンシーⅡは、現行のソルベンシーⅠに代わって、2013年1 月から導入される予定である。ソルベンシーⅡは、その基本的な構成や原則 等を定めたソルベンシーⅡ枠組指令(2009/138/EC)が2009年11月に採択さ れたが、実務的な詳細規制等を規定する実施措置等は、現在、策定作業中で ある。ソルベンシーⅡの実施は、EUの立法手続の1つであるラムファルシー 手続(Lamufalssy Process:ラムファルシー手続は、EUの金融サービス行動 計画の一環として2001年に証券分野で導入され、保険および銀行分野にも拡 大適用されたものである。手続の名称は、提案をまとめた賢人委員会の議長 の名前に因んだものである(手続の詳細は巻末参考Ⅰの1.2.2を参照)と呼ば れる4段階の手続に従って進められている。 第1段階(レベル1)は、規制の基本的な内容や原則など大枠を規定するソ ルベンシーⅡ枠組指令(Lever 1 Framework Directive:EUの法令である指 令(Directive)は、達成手段・形式は加盟国に委ねるものであり、加盟国は 国内法制化の義務を負う(EUの指令等の法的構造については、巻末参考Ⅰの 1.2.2を参照)である。同枠組指令は、欧州委員会が提案し、2009年4月Ⅱ欧 州議会、同年11月Ⅱ閣僚理事会でそれぞれ採択された。 第 3 段 階 ソルベンシーⅡ 第2段 階 ( レ ベ ル 2 ) は 、 規 制 の 詳 細 規 定 で あ る 実 施 措 置 ( Level 2 Implementing Measures)であり、EUから独立した諮問組織である欧州保 険 職 域 年 金 監 督 者 委 員 会 ( Committee of European Insurance and Occupational Pension Supervisors:以下「CEIOPS」:CEIOPSは、EUの 金融規制監督制度改革の一環として、権限を強化されて2011年1月から欧州 保険 職域 年金 監督 機構 (European Insurance and Occupational Pension Authority:EIOPA)に改組されたが、特に区別が必要な場合を除き、改組 前に検討された事項については、CEIOPSと表記する)の技術的なアドバイ スを得て、欧州委員会が決定することになっている。現時点ではCEIOPSの 実施措置アドバイスが出されている。また、実施措置のうち、資本要件等に 関する事項(定量的要件)は、諸要件の数理統計的妥当性や実務上の問題点 等を検証するために、5回にわたる定量的影響度調査(Quantitative Impact Study:QIS)が実施されている。実施措置は、これらの内容を踏まえ、欧 州委員会で検討段階にあり、2011年末までに決定される予定である。 また、第3段階(レベル3)は、監督実務の統一化を図る監督上のガイダン ス(Level 3 Guidance)等であり、CEIOPS(2011年1月からEIOPA)に よって2012年3月までに策定される予定である。 なお、第4段階(レベル4)は、ソルベンシーⅡの施行後の欧州委員会によ るEU加盟国の実施状況の検証および違反に対する法的措置である。 ソルベンシーⅡは、総収入保険料55万ユーロ未満等の小規模事業者等を除 き、相互扶助団体等共済類似組織を含めて、損害保険会社、生命保険会社、 再保険会社を幅広く対象とし、現時点では2016年から本格導入予定である。 出所:筆者が諸資料から取りまとめ。 なお、EU ソルベンシーⅡ規制の枠組みや具体的な内容については第 3 章で詳細に解説 する。 一方、日本のソルベンシー・マージン規制を概観する。1996 年の新保険業法の施行に伴 11 い、日本ではソルベンシー・マージン基準の過去からの経緯を見てみよう。1993 年にアメ リカで導入されたリスク対応自己資本基準(RBC:Risk Based Capital)をリスク係数な どについて日本に適合するように修正した指標である。しかしながら、1990 年代の後半か ら 2000 年にかけ破綻した生命保険会社のうち数社が健全性の目途とされる同比率 200% を超えていたため、同基準の信頼性に疑問の声が上がり、金融庁は同基準の部分修正を相 次いで余儀なくされた。 そこで、ソルベンシー・マージン基準の修正に関する検討が 2006 年から開始され、2007 年 4 月 3 日には報告書「ソルベンシー・マージン比率の算出基準等について」、続いて、 2008 年 2 月には「ソルベンシー・マージン比率見直しの骨子(案)」が公表された。それ らは 2010 年 4 月の保険業法施行規則の改正や関連する金融庁告示の改正に反映された。 その内容は、分子のソルベンシーについては算入の厳格化が図られ、また分母のリスクに ついては計測方法の厳格化および精緻化が進められ、基準の厳格化が進んだと言えよう。 この新しい基準によるソルベンシー・マージン比率は 2012 年 3 月期以降、正式に監督上 の基準として採用されている。実際に各社の新基準による健全性水準は旧基準の 6 割程度 まで低下しており、基準の厳格化が明確に読み取れる。 今後、EU のソルベンシーII の枠組指令書にある再保険、グループ・ソルベンシー、グ ループ監督の 3 つの事項については将来日本でも導入される可能性がある。 なお、現行の日本のソルベンシー・マージン規制の具体的な枠組みや内容については第 3 章で詳細に解説する。 表 1-4 1996年~2006年 日本のソルベンシー・マージン規制の主要な動き アメリカのRBC基準に基づくソルベンシー・マージン基準の制定 2007年4月3日 て」の公表 報告書「ソルベンシー・マージン比率の算出基準等につい 2006 年~ 2008 年 2 月 「 ソ ル ベ ン シ ー ・ マ ー ジ ン 比 率 見 直 し の 骨 子 ( 案 ) 」 早期是正措置の導入など 未定 新基準(旧基準のリスク係数を見直しなど)の適用 出所:筆者が諸資料から取りまとめ。 12 第2章 中国の保険監督およびソルベンシー・マージン規制の歴史と現状 1.中国保険業の歴史と保険業監督管理 長らく民間の保険業が廃止の状況にあった中国では、1979 年 2 月に中国人民銀行が中 国人民銀行支行長会議において中国国内の保険業の復活を提案した。これにより、民間保 険市場が歩みを進めることになり、同年 4 月には、国務院が「中国人民銀行支行長会議要 約、 《中国人民银行分行行长会议纪要》」を承認し、中国国内の保険事業を緩やかに回復さ せるという重要な決定を行った。同年 10 月には、中国人民銀行は「国内の保険業の回復と 保険機構の強化に関するお知らせ、 《关于恢复国内保险业务和加强保险机构的通知》」を公 表し、中国国内保険業業務の回復と保険機関の設置について詳しい方針を公表した。その 後、国内の保険業務は全国的に再開された。ただ、この時の保険会社は、中国人民保険公 司の 1 社であり、組織的には中国人民銀行に属し、その監督も中国人民銀行が行うと形で あった。中国人民保険公司の各支店は中国人民保険公司の本店(総行)と中国人民銀行の 所属地の支店(支行)による二重管理の下におかれていた。 保険業務に伴い発生する予想できない損失については、従来は財政補助金により補填さ れたが、この時以降、保険会社自らが損失に対応する財源を保有する形に変わった。 中国人民保険公司は、1980 年末までにチベット自治区を除く全国に支店を配置し、年間 保険料収入は 4.6 億元(=4.6 億元が当時の中国全体の年間保険料収入)であった。 1984 年は 1 月には、中国人民保険公司は中国人民銀行から組織的に分離され、国務院 直属の組織となった。これに伴い、中国人民保険公司の各支店も中国人民銀行の管理は終 了し、中国人民保険公司の本店の監督下で運営されることとなった。 1985 年 3 月には、国務院が発表した「保険事業の管理に関する暫定規則、《保险企业管 理暂行条例》」が出達され、中国人民銀行が保険業の監督管理部門であると明確に規定され た。そして、同行が保険業の監督管理機能を整備し、中国人民銀行「金融管理司下の保険 信用金庫処」が実際に保険業の監督管理を行っていた。 この時の監督対象は、当然中国人民保険公司 1 社のみであり、中国人民銀行の監督は、 チェックと言うより指導的な役割が多かった。 1986 年 2 月以降は、新疆生産建設兵団農業保険会社《新疆生产建设兵团农牧业保险公 司》の設立を皮切りに、新しい保険会社が徐々に設立されるようになり、1991 年からは、 生命保険事業と損害保険事業を分業した保険会社の設立も開始した。当時の保険会社は商 13 業保険業務の引き受けに加え、地方政府の委託を受けた社会保険業務も行っていた。1992 年には外資である American International Assurance(AIA)の上海支社開設が認可され、 中国国内の保険市場は外資の参入がある程度自由化されることとなった。 1992 年 11 月 7 日の第 7 回全国人民代表大会常務委員会の第 28 回会議において、 「中華 人民共和国海商法」 ( 《中华人民共和国海商法》)が承認され、初めて法律的な形で海上保険 に関する法制が整備された。 また、1993 年には中国共産党中央委員会(中共中央)は「社会主義市場経済体制設立に関 するいくつかの問題の決定、 《关于建立社会主义市场经济体制若干问题的决定》」を発表し、 また、国務院は「金融改革に関する決定、《关于金融体制改革的决定》」を発表した。この 中には金融監督管理の強化と金融業に関する分業経営の推進が盛り込まれた。1994 年 5 月 には、中国人民銀行の中に、非銀行金融機関管理司に保険処を設立し、具体的な保険業の 監督管理業務を行うこととした。 この時期の中国人民銀行の保険業に対する監督管理の重点は、曹顺宏(参考文献 43)に よれば、保険商品における保険費用率の審査や保険市場への参入条件の決定などであり、 保険会社の経営活動や健全性監督には至っていないとしている。その中で、資産運用の失 敗で大量な不良資産を保有したり、高すぎる予定利率の設定で逆ザヤ(運用利回りが予定 利率を下回った状況)となったりする保険会社が生まれ監督の重要性が認識された。 これを契機に、1995 年 6 月 30 日の第 8 回全国人民代表大会常務委員会第 14 回会議で 「中華人民共和国保険法、 《中华人民共和国保险法》、以下、 「保険法」と呼ぶ」が承認され、 中国の初めての保険法が同年 10 月 1 日から施行されることとなった2。 「保険法」は同年公表した「中華人民共和国中国人民銀行法、 《中华人民共和国中国人民 银行法》」と共に、中国人民銀行が国の保険業の監督管理機能を担うことを明確に規定して いる。中国人民銀行の保険業監督管理部門の地位が法律により明確化した。また、生命保 険業務と損害保険業務を別会社で行うことも定められたため、同年、中国人民銀行は「保 険司」を設立し、保険業の監督管理を独立的に行うこととなった。ただ、国内の保険会社 2002 年、中国の WTO 加盟の責任により、2002 年 10 月 28 日中国第九回全国人民代表 大会常務委員会の第 13 回会議で「 『中華人民共和国保険法』の修正に関する決定、《关于 修改〈中华人民共和国保险法〉的决定》」が承認され、「保険法」が初めて改正され、 2003 年 1 月 1 日から改正実施された。最新の「保険法」は中国第 11 回全国人民代表大 会常務委員会の第 7 回会議で 2009 年 2 月 28 日に「『中華人民共和国保険法』の改訂ドラ フト、《 〈中华人民共和国保险法〉修订草案》」の承認により改正されたものである。 2 14 の監督は保険司で行うのに対し、外資の保険会社の監督は「外資金融機関管理司」で行う という内外を分離した監督となった。 1998 年には、保険業の発展及び銀行業、証券業、保険業の 3 分野の分業経営の推進と分 業管理原則に則り国務院は同年 11 月 18 日に「中国保険監督管理委員会、以下、保監会と 呼ぶ」を設立させた。 保険業の発展とともに、銀行業と保険業を同じ部門で監督することによる問題点が明ら かになり、保険業を専管管理する「保監会」の設立は中国の保険業の成長にとって大きな プラスとなった。その後、 「保監会」はソルベンシー管理を提案し、それを本格的に推進す ることになった。 2.中国保監会ソルベンシー規制の歴史変動 「保監会」は国務院の直属機関であり、国務院の承認を得て、保険業界の監督を行う組 織である。具体的には、中国の保険に関する法律、法令などにより中国の保険市場の監督 を進め、保険業の法制遵守体制を構築しようとしている。1998 年の設立後、1999 年末か ら各省や自治区、自治体などに関連支部機関を設立し、全国規模の保険監督組織を作りあ げた。2003 年には、国務院は「保監会」を中国国務院の直属副部級機関から直属正部級機 関に変更し、 「保監会」はさらに機構部門やスタッフの編成を加速し、各省や自治区、自治 体などにある支部組織も「保監局」に名前を変更した。 「保監会」には 16 の「職能機構《职 能机构》」と 3 つの「事業単位《事业单位》」がある。中国の各省級部門に 36 の保監局が 設立され、蘇州、煙台、汕頭、温州、唐山市には「保監分局」が設立された。保険監督管 理組織の独立や国務院の中での地位の向上、そして、保険監督組織の強化は、①「保監会」 保険監督能力の向上、②保険会社運営の統一基準化、③保険業の健全性向上、に資するこ ととなった。 保監会が進めるソルベンシー規制については、主に次の 3 つの段階に分けられる。すな わち、 (1)ソルベンシー規制の模索段階、 (2)ソルベンシー規制の形成段階、 (3)第 1 世 代ソルベンシー規制の充実と第 2 世代ソルべンシー基準への変更準備段階、である。 ⅰ.ソルベンシー規制の模索段階(1999-2003) 1999 年から 2003 年は、保監会にとっても、保険業の監督・管理の模索期であり、監督 15 指標や規制の制定は十分とは言えなかった。保険業の監督・管理の中心を保険会社の市場 行為(販売に絡む問題)の管理強化に置き、保険業全体の監督・管理は困難である。 ただ、その中でも保監会は急速に発展する保険市場と販売場面で強引な保険会社違法行 為に対し市場規範となる一連の規制を発表した。2000 年 2 月 18 日には、「配当金がある 保険商品の管理暫定措置」、 「投資リンク型保険の管理暫定措置、保监发[2000]26 号《分红 保险管理暂行办法》 、 《投资连结保险管理暂行办法》」を、2000 年 8 月 1 日には「財産保険 条項と保険料率の管理暫定措置、保监发[2000]149 号《财产保险条款费率管理暂行办法》」 など、保険会社の行為規制を出達し、監督を強化した。 さらに、2001 年 1 月 23 日に、保監会は『中国保険監督管理委員会「保険会社最低ソル ベンシー及び監管指標管理規定(試用)」、以下「管理規定」と呼ぶ、の施行に関するお知 らせ、 《中国保险监督管理委员会关于印发〈保险公司最低偿付能力及监管指标管理规定(试 行) 〉的通知》保监发[2001]53 号』を公表し、保監会は簡易形ではあるものの、ソルベ ンシー監督の具体的な方針を明確にした。 同「管理規定」はソルベンシー監督の方策として、次の 5 点を規定している。 ①最低ソルベンシーという言葉を用い、管理規定の中に初めて「ソルベンシー」の言葉 が登場。 ②ソルベンシー指標の計算には固定したリスク係数を使用する。たとえば、損害保険会 社の最低ソルベンシーの金額は次の 2 つの大きい方である。すなわち、①本会計年度の全 正味収入保険料から営業税など税金を差し引いた値の 1 億元以下部分には 18%、そして 1 億元以上部分には 16%を乗じたもの、②過去 3 年間平均の総合保険金金額の 7 千万元以下 部分の 26%と 7 千万元以上部分の 23%(第 2 章 最低偿付能力及管理第 3 条)である。 生命保険会社の最低ソルベンシーは、長期生命保険ソルベンシーと短期生命保険ソルベ ンシーとの合計としている。長期生命保険は保険期間が 1 年以上の生命保険契約であり、 短期生命保険は保険期間が 1 年及び 1 年未満の生命保険と健康保険などを指している。 長期生命保険のソルベンシーは次の 2 つの数字の合計としている。すなわち、 (ⅰ)一般 の普通の生命保険商品の会計年度末の責任準備金の 4%と投資リンク型生命保険商品会計 年度末の責任準備金の 1%。 (ⅱ)保険期間 3 年以下の定期保険についてはリスク保険金の 0.1%、保険期間 3 年以上 5 年以下の定期保険のリスク保険金の 0.15%、保険期間 5 年以 上(終身保険を含め)の定期保険とほかの保険商品のリスク保険金の 0.3%。なお、リスク 保険金は規定された保険金-年度末準備金で計算される。 16 短期生命保険ソルベンシーは、損害保険会社の最低ソルベンシーの計算方法と同様の方 式で計算される(第 2 章最低偿付能力及管理第 4 条)。 ③保険会社の「ソルベンシー」は、会計年度末の認識された資産と負債の差額(第 2 章 最低偿付能力及管理第 6 条) 。 ④保険会社は毎年 3 月 31 日までにソルベンシーの状況についての報告を行い、計算根 拠を提出し、実際のソルベンシー額が最低ソルベンシーより少ない保険会社に対しては、 保監会はその「状況」により措置をとる(第 2 章 最低偿付能力及管理第 9 条、第 10 条)。 しかし、具体的な「状況」の判断標準は明らかにされていない。 ⑤ソルベンシー監督とともに監督する指標管理規定も「管理規定」に公表された。同指 標管理規定には具体的計算方法と総合点数制(综合评分制)の使用方法(第 5 章 监管指 标的使用)が説明されており、保監会の実際の監督に使用されていたと考えられる。 その後、2001 年 4 月 3 日に保監会は『中国保険監督管理委員会「保険会社最低ソルベ ンシー及び監管指標管理規定」の試用に関する問題のお知らせ、保監発[2001]101 号、 《中 国保险监督管理委员会关于试行〈保险公司最低偿付能力及监管指标管理规定〉有关问题的 通知》保监发[2001]101 号』が発表された。その中で、保監会は各保険会社「管理規定(試 用) 」と「保監発[2001]101 号」の内容により、1998 年から 2000 年の 3 年間に実際ソルベ ンシーおよび監管指标報告の提出を求めた。 この監督と「管理規定(試用)」とにより 2001 年 3 月 1 日からソルベンシーの状況報告 と計算過程の説明文書の提出により中国保監会はソルベンシー監督管理の継続性を保とう とした。さらに、 「保監発[2001]101 号」の最後には、保険会社の「管理規定(試用)」に関 して意見を求める記述があることから、保監会自身がソルベンシー監督について模索する 段階であることがわかる。 ⅱ.ソルベンシー規制の形成段階(2003-2008) 2003 年 3 月 24 日中国保監会は「保険会社ソルベンシー額度及び監管指標管理規定、以 下「保監会令(2003)1 号」と呼ぶ、 《保险公司偿付能力额度及监管指标管理规定》保监会 令(2003)1 号」を 2003 年 1 号指令として発表した。 「保監会令(2003)1 号」は「管理 規定」を基づき修正したものであり、実際のソルベンシーの計算方法は、 「保監会令(2003) 1 号」の実際ソルベンシー額と同じの固定比例計算法を使う。 「保監会令(2003)1 号」は ソルベンシー規制の形成段階として、5 つの特徴をあげている。 17 ①「管理規定」では、最低ソルベンシーと実際ソルベンシーを用いたが、 「保監会令(2003) 1 号」に「最低ソルベンシー額度」と「実際ソルベンシー額度」を初めて使った。これは 中国保監会が意識して「管理規定」区別できるような設定とも考えられる。 ②保険会社の実際ソルベンシー額は会計年度末の認識された資産と認識された負債と の差額(第 2 章 最低偿付能力及管理第七条)であるが、 「保監会令(2003)1 号」の認識 された資産と認識された負債は保監会規定された「編報規則」により計算され、報告する。 「編報規則」は会計制度や財務制度などの影響を受けないと明確に規定された。 ③「管理規定」の監管指標は、最低ソルベンシーおよび管理の部分と独立に表示された が、 「保監会令(2003)1 号」では、これらの監管指標はソルベンシー監管指標(損害保険 11 個、生命保険 12 個)であるとし、ソルベンシー監管体系に含まれた。ソルベンシー監 管の重要性を明確にしたものと考えられる。さらに監管指標の判断基準は「保監会令(2003) 1 号」の添付文書ではなく、本文の一部分として公表し、しかも総合点数制に代わり、各 指標区別に判断し、保険会社の健全性を決定する方法をとった。 ④「ソルベンシー充実率」の計算方法は「実際ソルベンシー額度」を「最低ソルベンシ ー額度」で除し、ソルベンシー充足率の結果が 100%以下になる保険会社をさらに 3 つの グループ(≧70%、≦70%しかも≧30%、≦30%)に分け、保監会が「保監会令(2003) 1 号」に公表した監督措置により 100%以下になる保険会社を管理する。 ⑤ソルベンシー管理に関する報告書、「認識された資産と認識された負債の編集報告の 説明、《偿付能力监管相关报表》、 《认可资产表编报说明》、《认可负债表编报说明》」が添付 されており、中国のソルベンシー管理体制はここに、ほぼ完成されたと考えられる。 「保監会令(2003)1 号」が公表された後、2006 年には、「ソルベンシー報告書および 監管指標報告書サンプル、 《偿付能力报表及监管指标报表表样(2006 年版)》」が公表された。 さらに 2008 年 7 月まで「保険会社ソルベンシー報告書編報規則第 1 号-第 13 号、《保险 公司偿付能力报告编报规则第 1 号-第 13 号》、3「保険会社ソルベンシー報告書編報規則 3 「保険会社ソルベンシー報告書編報規則」 18 問題解答第 1 号-第 6 号、 《保险公司偿付能力报告编报规则问题解答第 1 号-第 6 号》4」 《保险公司偿付能力报告编报规则》实务指南 発表時間 番号 内容 2005年12月14日 第1号 固定资产、土地使用权和计算机软件 2005年12月14日 第2号 货币资金和结构性存款 2005年12月14日 第3号 应收及预付款项 2005年12月14日 第4号 委托投资资产 2005年12月14日 第5号 证券回购 2006年4月18日 第6号 认可负债 2006年4月18日 第7号 投资连结保险 2006年4月18日 第8号 实际资本 2006年4月18日 第9号 综合收益 2007年1月17日 第10号 子公司、合营企业和联营企业 2007年1月17日 第11号 动态偿付能力测试(人寿保险公司) 2007年1月17日 第12号 年度报告的内容与格式 2007年1月17日 第13号 季度报告 2008年4月30日 第14号 保险集团 2009年4月8日 第15号 再保险业务 2010年1月5日 第16号 动态偿付能力测试(财产保险公司) (出所)中国保険監管会HPより筆者整理。 4 「保険会社ソルベンシー報告書編報規則問題解答」 《保险公司偿付能力报告编报规则》问题解答 番号 内容 第1号 部分新增资金运用形式及固定资产评估增值 第2号 次级债、可转换债券、股票和境外外汇投资资产 第3号 自我担保和反担保 第4号 带可赎回条款的次级债 第5号 其他权益投资、其他应收款 第6号 最低偿付能力额度的计算口径、银行借款 第7号 寿险公司动态偿付能力测试的第三方独立审核 第8号 临时报告 第9号 偿付能力报告编报规则与〈企业会计准则解释第2号〉的衔接 无担保企业(公司)债券、不动产、未上市股权和保险资产管 2010年11月30日 第10号 理公司创新试点投资产品 2011年1月7日 第11号 动态偿付能力测试的第三方独立审核 2011年8月22日 第12号 变额年金、农业保险、季度报告预测信息 2011年11月1日 第13号 次级债和股东增资 2013年1月17日 第14号 城乡居民大病保险最低资本 2013年3月28日 第15号 信用风险评估方法和信用评级 2013年3月28日 第16号 基础设施债权投资计划 2013年3月28日 第17号 非保险类金融机构发行的金融产品 2013年3月28日 第18号 未上市企业股权投资基金和股指期货 2013年3月28日 第19号 委托投资和境外投资资产 2014年4月14日 第20号 高现金价值产品最低资本 2013年4月4日 第21号 次级可转换债券 2013年4月9日 第22号 证券投资基金和资产管理产品 2014年6月24日 第23号 历史存量高利率保单资金投资的蓝筹股 発表時間 2003年9月8日 2004年12月28日 2007年4月9日 2007年4月9日 2007年4月9日 2007年4月9日 2008年2月22日 2009年8月11日 2010年1月25日 (出所)中国保険監管会HPより筆者整理。 19 が公表され、これらの規定で、保険会社のソルベンシー報告は制度化され、保監会のソル ベンシー監督が加速度的に進んだ。 ⅲ.第 1 代ソルベンシー規制の充実と第 2 代ソルべンシー基準への変更準備段階(2008 ~) 2007 年 11 月 28 日中国保監会は『 「保険会社ソルベンシー管理規定(意見募集バージョ ン)」に関する意見募集の文、 《关于征求对〈保险公司偿付能力监管规定(征求意见稿)〉意 见的函》保监厅函〔2007〕324 号』を発表し、 「保険会社ソルベンシー管理規定」の内容を 初めて公表した。2008 年 7 月 10 日中国保監会は「保険会社ソルベンシー管理規定、以下 「保監会令(2008)1 号」と呼ぶ、 《保险公司偿付能力管理规定》保监会令(2008)1 号」 を正式に 2008 年 1 号指令として発表した。 「保監会令(2008)1 号」は同年 9 月 1 日から 実施され始めて、現在も保監会ソルベンシー監督管理に実際に応用されている。 「保監会令(2008)1 号」は「保監会令(2003)1 号」と似ている部分、たとえば「关 于实施《保险公司偿付能力管理规定》有关事项的通知(保监发〔2008〕89 号)」による実 際ソルベンシー額度( 「保監会令(2008)1 号」の実際資本)と同じの固定比例計算法を使 用などもあるが、先の「保監会令(2003)1 号」とは次の 5 点が異なっている。 ①「保監会令(2003)1 号」の中の最低ソルベンシー額度と実際ソルベンシー額度を使 ったが、 「保監会令(2008)1 号」に「最低資本」と「実際資本」という言葉に変わり、ソ ルベンシー充足率は実際資本と最低資本との比率である。 ②保監会令(2003)1 号」にはソルベンシー充足率と監管指標の計算方法およびソルベ ンシー不足の保険会社に対する措置を主要な内容としたが、 「保監会令(2008)1 号」は中 心をソルベンシー監督制度において、リスクをベースとした「動態的ソルベンシー監督制 度」を目指している。保険監督部門と保険会社のソルベンシー管理部門の役割を明確し、 保険会社には自主的な内部リスク管理が求められる。最低資本と実際資本の具体的な計算 方法が別の規定「保険会社ソルベンシー報告書編報規則」に規定されている。 ③保監会令(2003)1 号」はソルベンシー監管指標を設けたが、ソルベンシー制度の改 善とともに、これらのソルベンシー監管指標が実際の監督管理中で活用される場面は少な くなり、 「保監会令(2008)1 号」においては、「最終的なソルベンシー監管指標の姿」と いう表現が消えている。 ④保監会令(2003)1 号」ではソルベンシー充足率が 100%以下の保険会社を 3 つのグ 20 ループに分け、異なる監督措置を実施したが、 「保監会令(2008)1 号」ではソルベンシー 充足率が 100%以下の保険会社を「不足類会社」とし、規定された 9 種類の監督管理措置 をとる。さらに、ソルベンシー充足率が 100%以上の保険会社を充足Ⅰ類(≦150%)と充 足Ⅱ類(≧150%)に分け、充足Ⅰ類(≦150%)の保険会社に対し、保監会はソルベンシ ー不足予防計画の提出を要求することができるとした。 ⑤リスク評価をベースになる年度報告、四半期報告、臨時報告からなるソルベンシーの 報告体系。保監会が 2003 年から作った「保監会令(2003)1 号」と「保監会令(2003) 1 号」および関連規定は中国第 2 世代のソルべンシー基準と呼ばれている。それらの資産 と負債の評価はアメリカの会計原則を取り入れたが、最低資本の評価は EU ソルベンシー Ⅰの評価方法と同じである。 2003 年から 2013 年の 10 年間を経て、すべての保険会社が保監会のソルベンシー基準 をクリアすることができた。 「保監会令(2008)1 号」が公表された後、 「保険会社ソルベンシー報告書編報規則第 14 号-第 16 号」、 「保険会社ソルベンシー報告書編報規則問題解答第 7 号-第 23 号」が公表 された。これらの規定で、第 1 代ソルベンシー規制体系は整備され、第 2 代ソルベンシー 規制体系へ繋がっている。 現在、保監会は、第 2 世代ソルべンシー基準(China Risk Oriented Solvency System、以下、C-ROSS と呼ぶ)の検討が進んでいる。2012 年 3 月 29 日、「中国第 2 世代ソルべンシー監督制度体系構築計画保監発(2012)24 号、以下、(2012)24 号と呼 ぶ、 《中国第二代偿付能力监管制度体系建设规划》」が発表された。 「 (2012)24 号」には、第 2 世代の監督体系の目的、全体的な構成、原則、実施ステ ップなどが規定されている。そして、保監会は保険業関連部門の中国第 2 世代ソルべン シー監督制度の構築を急ぐように指示している。 「 (2012)24 号」に規定された C-ROSS の監督制度体系は 3 つの目標を有する。すな わち、①3 年から 5 年間程度の時間をかけ、国際的な基準と整合性をとると同時に中国の 保険業の発展段階に合うソルべンシー監督体系とすること、②保険会社に自らソルべンシ ー管理制度を構築させ、保険業全体のリスク管理と資本管理レベルを改善すること、③ソ ルベンシー監督能力を向上させ、中国保険業全体の国際的な信頼感を向上させること、で ある。 21 また、「 (2012)24 号」に初めて 3 つの監督の柱が提案された。第 1 柱は「資本充足の 要求《资本充足要求》 」 、第 2 の柱は「リスク管理の要求《风险管理要求》」、そして、第 3 柱は「情報開示の要求《信息披露要求》」である。 その後、2013 年 5 月 3 日、 「中国第 2 代ソルべンシー監督制度体系全体的フレームワ ーク(2013)42 号、以下(2013)42 号、《中国第二代偿付能力监管制度体系整体框 架》 」が発表された。 「 (2013)42 号」には、C-ROSS の全体的フレームワークは制度の特徴、監督要素、 監督管理基礎の 3 つの部分からなると規定している。監督要素の第 1 の柱は、「定量的な 資本要求《定量资本要求》」 、第 2 柱として「定性的な監督管理要求《定性监管要求》」、 と第 3 柱として「市場制約メカニズム《市场约束机制》」である。 「 (2013)42 号」に基づき、現在 C-ROSS の具体的な指標などの作成と定量的なチェ ックの検討が進んでいる。 22 第3章 2 つの健全性基準の概要と新しい評価モデルの構築 本章では、EU のソルベンシーⅡと日本のソルベンシー・マージン基準という 2 つの健 全性指標を日本の生命保険業のデータを基礎に検討し、評価する。第1章で述べたように、 ソルベンシーⅡは、理論的には国際的な保険会社の健全性比較を可能とする最新の指標で あり、ソルベンシー・マージン基準は日本のみならず多くの国で使用されている健全性指 標である。 金融の国際化が加速する中で、保険事業も金融業や国の枠を超え多様化、多国籍化して いる。保険監督だけが閉じられた 1 国の中だけで完結する時代は終わり、保険監督にも国 際化が求められている。IAIS(保険監督者国際機構)が資産と負債の時価評価を軸とした リスク管理の枠組みの議論を重ねる中で、EU は、ソルベンシー規制に関する課題は「当 面実行すべき課題のソルベンシーⅠ」と「長期的に検討すべき課題ソルベンシーⅡ」に区 分し、監督の国際化に対応した「ソルベンシーⅡ」への移行を進めるとしてきた。2000 年 に同基準の計画案が提示されて以降、公開意見募集や 5 回にわたる包括的な定量的影響度 調査(Quantitative Impact Study、以下、QIS と呼ぶ)などが実施され、ようやく 2016 年 1 月から同基準の実施が決まった。 また、ソルベンシーII の枠組指令書には、元受保険会社の規制だけでなく、日本にはな い「再保険」 、 「グループ・ソルベンシー」、 「グループ監督」の 3 つの分野も規定している。 ソルベンシーⅡの動きに対し、日本では現行のソルベンシー・マージン基準の改定が 2012 年 3 月に行われたこともあり、欧州の実施状況を見てからとの気分が強い。2 つの健 全性基準は基本コンセプトが大きく異なるため、結果として産出される健全性水準も大き く異なり、少なからず保険会社の経営や監督官庁の監督にも影響が出ると推察される。 日本では、金融庁が全保険会社を対象に 2010 年 6 月から 12 月にかけ、「経済価値ベー スのソルベンシー規制の導入に係るフィールドテスト」5を実施した。その結果は、①時価 の保険負債は現行基準の責任準備金総額より全体ではやや減少(生保全社:273.2 兆円⇒ 259.7 兆円、損保全社 18.9 兆円⇒17.7 兆円、ただし個別企業では増加するケースもある) 5日本の生命保険会社 47 社、損害保険会社 50 社を対象に 2010 年 3 月 31 日を計算基準日とし た経済価値ベースの保険負債の評価を指示したもの。3 つの金利リスクの計測方法により計 算。目的は、定量的な数値の把握ではなく、計算の実施状況や実務上の問題点を探ることに ある。経済価値ベースの負債の計算以外にも内部モデルの状況、統合リスク管理の実施状況 等も含まれている。 23 する、②時価の負債評価に向けた実務的な対応準備は整いつつある、とする一方で、③日 本では終身保険へのニーズが強いこと、超長期国債市場の厚みが薄いことから、ALM (Asset Liability Management、資産負債の統合管理)が円滑に運営できるかは不透明、 ④計算負荷が大きく、また、キャッシュ・フローの計算期間など前提となる諸要素等の合 理性を確保するため規制で定める簡便法などが必要、などの意見が報告されている。 ただ、フィールド調査では 2000 年前後の生命保険会社の連続経営破綻の一因となった 現在と異なる金利局面やイールドカーブの大きな変化に対しどのように時価の負債やリス ク総量などが変化するのかなど健全性指標の「金利の感応度」が判然としない。 そこで、本章と次章で、資産・負債両面をモデル化した「モデル保険会社」を作成し、 2 つの健全性基準について、以下のシミュレーションを行う。①異なる金利局面における 健全性水準の変化、②健全性を引き上げる自己資本の積み増しなどが健全性水準の改善に 与える効果、③現在の低金利局面、平均金利局面、高金利局面と固定して考えるのではな く、金利局面をまたぐなど動態的な金融市場の変化が健全性水準に与える影響、④債券と 株式など 2 資産の資産運用や解約が健全性指標に与える影響等、の 4 つである。本章では、 2 つの健全性指標の構造や内容を詳説する。 本章の構成は、1. 2 つの健全性基準について、基準を包括的に解説した文献やシミュレ ーションモデルの具体的な作成に資する文献の紹介、2. EU のソルベンシーⅡの概要説明、 3. 日本のソルベンシー・マージン基準の概要説明、4. 今回使用するモデル保険会社の構 造とシミュレーションの前提について、説明する。 1.先行研究 (1)先行研究 実務家向けに日本と欧州の健全性基準の概要について解説した文献、資料は数多く存在 し、両指標が誕生した背景や具体的な指標体系・計算手法について説明されている。 日本のソルベンシー・マージン基準の包括的な解説書としては、金融庁(2011-②)に詳 しい。一方、EU のソルベンシーⅡについては、2009 年 3 月に欧州議会でのレベル 1 文書 (指令)の採択を受け、Committee of European Insurance and Occupational Pensions Supervisor(以下、CEIOPS と呼ぶ)が、発行した CEIOPS(2010-②) 「QIS5 Technical Specifications」などガイダンス文書に詳しい。健全性基準を保険会社に適応する際の詳し 24 い計量要件等が詳細に記載されている。 また、日本アクチュアリー会(2010)には議論が煮詰まってきた当時のソルベンシーⅡ の最新事情を包括的に紹介し、また、日本アクチュアリー会(2011)では、同指標の 3 本 柱(定量的要件、リスク管理などの質的要件、当局への報告と一般への開示)に沿った具 体的な対応内容が記載されている。たとえば、第1の柱に符合する QIS5 の QIS4 からの 変更点や第 2 の柱である実際の保険会社の ERM とソルベンシーⅡの兼ね合いなどの報告 がなされている。 損害保険事業総合研究所(2011)の「ソルベンシーⅡ枠組みに関する調査・研究」はソ ルベンシーⅡの基準の背景や構造を包括的にまとめている。そして、日本アクチュアリー 会国際基準実務検討部会(2010) 「EU・ソルベンシーⅡにかかる CEIOPS 勧告および日 本におけるインプリケーションに関する調査・研究(中間報告)会報別冊 249 号」は、議 論の過程を紹介しつつ定量要件の基本的な考え方について解説している。実際にシミュレ ーションモデルを組む際に必要な資本コストの考え方などを詳細に紹介している。 以上のように、ソルベンシーⅡ導入の背景や基準自体について調査、解説した文献は多 いものの、今後の健全性指標のあり方の方針が固まらない日本において、新しい健全性基 準が現在使用しているソルベンシー・マージン基準と置き換わった場合、保険業界や保険 監督の影響など喫緊の課題を分析した論文は見当たらない。 (2)先行研究にみる 2 つの研究アプローチ 健全性指標が保険会社にもたらす具体的な影響を知るには従来の 2 つの分析手法が有用 である。 それは、表 3-1 に示したように、日本の金融庁が全保険会社を対象に行った「経済価値 ベースのソルベンシー規制の導入に係るフィールドテスト」などの「影響度調査法」と日 本アクチュアリー会の「生命保険商品におけるリスク・マージン等の算出例」に見られる 「部分モデル法」である。影響度調査法は保険業界の監督管理部門が保険会社に単数もし くは複数の健全性指標の計算方法について、部分的もしくはすべての試算とその結果につ いて、アンケート形式により答えを求める。そして、参加した会社のアンケート結果や諸 データを総合的に分析し、市場環境が変化した時などの健全性指標の市場への影響度を推 定する方法である。 部分モデル法は、一般的に知られている基礎データに基づき、数学的な手法を使い、健 25 全性指標の影響を推定する方法である。 前者の長所は、業界全体の健全性指標の影響を把握しやすく、経営戦略が異なる多様な 保険会社の個別の影響を知ることができる。そしてそれは、保険監督の方法や基準などに 反映する重要な材料を掴むことができる。後者の長所は、保険数理に基づき統一的な方法 により、健全性指標の影響のメカニズムが明らかになる。保険会社の経営層や健全指標を 研究している研究者の検討素材となる。 一方、前者の短所として、保険会社個々の反応は入手できるものの、各社が有する歴史 的経緯や商品・投資戦略の差から生じる現在の商品構成や資産ポートフォリオなど個別性 に対する配慮が十分ではない。個別会社を共通の範疇ごとにグループ化しても、サンプル 数の制約や特殊な事例を共通要素と誤解する可能性もある。この結論に基づき監督部門が 規制を設け、実際の監督を進めた場合には問題が発生する。また、後者の短所としては、 大半が資産側と負債側を分けて試算することが多く、保険会社の本質である資産と負債の 関連性を十分に反映できず、そこに潜む問題点をあぶり出せなくなる点である。 つまり、代表的な 2 つの分析方法は長短それぞれがあり、その目的に応じて使い分ける ことも考えられるが、①属性の明確な保険会社について、②客観的な条件の下で、③資産・ 負債の両サイドをあわせた検証を可能とする手法が必要である。 表 3-1 ① 実証先行研究 影響度調査法 ② 部分モデル法 方 例:金融庁「経済価値ベースのソルベンシ 例:日本アクチュアリー会「生命保険商品 法 ー規制の導入に係るフィールドテスト」 におけるリスク・マージン等の算出例」 資産、負債ごとに、ある種の前提条件を置 特 大まかな一定の基準に基づき、各保険会社 き計算し、環境変化に応じた健全性を評価 徴 がそれぞれの判断で計算し報告する。 する。 出所:筆者が作成。 2.EU のソルベンシーⅡの概要 (1)3 つの柱 ソルベンシーⅡは、IMF 協定第 4 条に基づき、世界銀行・国際通貨基金(International 26 Monetary Fund :IMF ) に よ る 金 融 セ ク タ ー 評 価 プ ロ グ ラ ム ( The Financial Sector Assessment Program:FSAP)の目的に従い、①保険会社の財務健全性の確保、②リスク耐 性の向上、③保険契約者の保護、を図ることを目的としている。総収入保険料 500 万ユー ロ未満の小規模事業者を除き、共済等保険類似団体も含めすべての生命保険会社、損害保 険会社、再保険会社を対象としている。 ただ、European Insurance and Occupational Pensions Authority(以下、EIOPA と呼 ぶ)は、ソルベンシーⅡにおける健全性基準はその 1 構成要素にすぎず、銀行分野におけ るバーゼルⅡの「3 本の柱アプローチ」と同じく、①健全性を担保する定量的資本要件、 ②定性的要件と保険会社監督、 ③保険会社の監督当局への報告と契約者などへの情報開示、 の 3 つからなるとしている。 第 1 の柱の定量的資本要件については、従来の欧州の健全性規制であったソルベンシー I6が損益勘定(保険料収入および保険金支払)を重視したのに対し、ソルベンシーⅡでは 貸借対照表の構成要素を重視するトータル・バランスシート・アプローチ(Total balance sheet approach)方式を採用している。そして、資産および負債については、金融市場と 整合的な方法により評価された「経済価値ベース」 (資産および負債から生じる将来キャッ シュ・フローを現在価値で評価、時価ベース)により評価されるべきとしている。これは 国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards、IFRS)における公正 価値評価の考え方とも調和する。この概念を実務に円滑に取り入れるため、同要件の数理 統計的な妥当性および実務上の問題点等を検証する QIS を 2006 年 5 月以降 5 回実施して いる。 第 2 の柱である「定性的要件と監督」は、①保険会社の経営陣によるリスク管理と内部 統制などのガバナンス体制の構築、②監督機関による保険会社のリスクおよび資本管理等 を検証する審査プロセス(検証と介入)、③ORSA(Own Risk and Solvency Assessment)と 呼ばれる保有リスクとソルベンシーの自己評価、の 3 つからなる。 第 3 の柱である監督当局への報告と一般への情報開示は、市場規律を活用した保険会社 の健全性確保と正確な監督のための情報開示を定めている。健全性確保という目標は示す 6 ソルベンシーⅠは、生命保険統合指令(2002/83/EC)で規定され、責任準備金を越えて保険 金支払いが発生する事態に備えてそのバッファーを準備するという保険の引受リスクにのみ 着目したシンプルな健全性指標である。責任準備金や危険保険金などにリスク係数(前者 4%、後者 0.3%)を乗じた値をリスクとし、会社の純資産をソルベンシーとし、比較するも のである。 27 ものの、具体的な達成取組は保険会社に自主性に委ねるなど「規制」というより「原則」 に近い概念である。 (2)ソルベンシーⅡにおける定量的健全性要件 ソルベンシーⅡの影響度を分析する際に重要な「定量的資本要件」の概要を図 3-1 に示 した。一言でいえば、時価で評価した保険会社の貸借対照表の資産から同じく時価で評価 した負債を差し引いた残りである「自己資本」と計量化された「リスク量」とを比較して 健全性を評価する。 まず、負債である保険契約準備金は現在の保有契約から発生する将来キャッシュ・フロ ーを現在価値で評価した「最良推計値」と同負債を他の保険会社に移転する場合にこの将 来キャッシュ・フローの不確実性を担保するコストである「リスク・マージン」の 2 つか らなる。また、時価で評価した資産からこの保険契約準備金(時価)を差し引いたものが 自己資本である。 図1 ソルベンシーⅡにおける定量的資本要件 図 3-1 ソルベンシーⅡにおける定量的資本要件 資産 負債+自己資本 MCR 自己資本 余剰金(フ リーアセット) ②リスク・ マージン 保険契約準備金 +定量的資本要件 を満たす資産 (時価の資産) ①最良推計値 (現在推計値) s CR 保険契約準 備金(時価 の負債) (注1) MCRはMinimum capital requirementの略。監督当局の最終的な介入のための資本水準。 (注2) SCRはSolvency capital requirementの略。1年99.5%Varに相当する資本水準。 (出所)筆者が梅澤哲徳(2012)等の資料を基礎に作成。 出所:筆者が梅沢哲徳(2012)等の資料を基礎に作成。 一方、リスク概念は 2 つある。 まず、主たるリスクは SCR(Solvency Capital Requirement の略)という基準で評価される。SCR は保険会社が保有するリスクを計量化して、それを 28 1 年間保有して 200 年に 1 回の確率で発生する最大リスク量に対して必要な資本量とされ ている。従って、自己資本がこれを安定的に上回っていれば事業継続の可能性が高いこと を示す。また、もう一つのリスク概念が MCR(Minimum Capital Requirement の略)で ある。自己資本がこれを下回ると事業継続が許されない、いわば最低限必要な資本水準で あり、監督当局の最終的な介入判断を行う際の資本水準と言える。MCR は保険料等の要 素により計算され、SCR の一定範囲内の水準となる。 SCR と MCR を満たす自己資本は、①永続的に利用可能か、②劣後性は十分高いか、と いう 2 つ視点からその「質」を判断される。すなわち、2 つを共に満たす基本自己資本(資 産・負債差額:時価や劣後債務)からなる「ティアⅠ」、そのいずれかを満たさない基本自 己資本と 2 つとも満たさない付随的自己資本(未払い資本金、信用状、保証等)からなる 「ティアⅡ」、そして、それ以外の「ティアⅢ」の 3 分類に仕分けられる。SCR を満たす 自己資本はティアⅠの全額+ティアⅡ・Ⅲの一部分である。QIS5 ではティアⅠが SCR の 50%以上を占めること、またティアⅢは全体の 15%未満とすることとされている。また、 MCR はティアⅠの全額+ティアⅡの一部しか算入できないなど資本の量と質の双方を重 視している。 (3)保険契約準備金の評価 次にソルベンシー・マージン基準とは根本的に異なる負債、すなわち保険契約準備金を 詳しく見てみよう。保険会社の保有契約の売買や移転について流動性の高い取引市場が存 在していれば、本来的には保険契約準備金の評価はその市場で取引価格となる。しかしな がら、実際にこのような流動性の高い市場は存在せず、一定の前提条件による計算が必要 になる。最良推計値とは、評価日時点の情報に基づいて客観的に計算される保険負債の推 定値である。図 3-2 に示した通り、保険会社の保有契約(新規契約については考えない) から発生する解約・失効の過去実績から推計した将来の保険金及び事業費の支払などの支 出と保険料などの収入について各年の将来キャッシュ・フローを予測し、それを評価日時 点のイールドカーブで割り戻し現在価値を求める。ただ、この現在推計値はあくまでも将 来予測による平均キャッシュ・フローに基づくものであり、実際の将来キャッシュ・フロ ーはこれからはずれる不確実性が残る。従って、この保険負債を他の保険会社に移転する と考えた場合には、この不確実性に対するリスクプレミアムを支払う必要があるとしてい る。これが図 3-2 上部のリスク・マージンである。いわば、リスク・マージンは、移転先 29 の保険会社が保険負債を引き取り、同負債に基づく義務のすべてを履行する際のリスク対 価である資本を調達するためのコストの現在価値と言える。 図 3-2図2 保険契約準備金の評価 保険契約準備金の評価 dp cp 将来キャッシュフローの不確実性に対するプレミアム dp bp リスク・マージン ap <現時点> a b <1年後> <2年後> c <3年後> d ・・・ <4年後~> Dp Cp 保険金支払い等将来のキャッシュ・フロー 最良推計値 Bp Ap A B C D ・・・ (注1) 2ケタ目の英数pは、Present Valueを表す。 (出所)損害保険事業総合研究所(2011)を参考に筆者が作成。 出所:損害保険事業総合研究所(2011)を参考に筆者が作成。 (4)リスク総量の計算 次にリスクの評価について詳しく見てみよう。リスクは SCR として表され、その計算 は、 ソルベンシーⅡ枠組み指令第 100 条に示された、①指定されたフォーミュラー方式と、 ②保険会社が独自のリスク評価を行う内部モデル(事前承認が必要)の 2 つの方式がある。 ここでは、今回のシミュレーションでは前者のフォーミュラー方式を用いる。図 3-3 に その概要を表した。SCR は次の 3 つの部分からなり、①基本ソルベンシー資本必要額(Basic Solvency Capital Requirement、以下、BSCR と呼ぶ)、②オペレーショナルリスク、そし て、③保険契約準備金及び繰り延べ税金資産に関わる調整項目、である。 最も重要な BSCR は、例えば市場リスクモジュールの中にある、金利リスクや株式リス クなどの各サブ・モジュールについて 1 年の時間軸の 99.5%VaR(Value at Risk)に相当 30 するリスク量を計算し、順次合算していく。また、各リスク間の相関は行列関数により調 整する。 図 3-3 SCR の構造 図3 SCRの構造 リスク総量(SCR) 基本ソルベンシー資本必要額 BSCR ①市場リスク SCRmkt ②医療保険リス クSCRHealth ③信用リスク ④生命保険リスク SCRlife SCRdef 金利リスク Mktint 死亡リスク Lifemort 株式リスク Mkteq 長寿リスク Lifelong (7) 調整項目 Adj オペレーショナルリスク SCROp (3) ⑤損害保険リスク SCRnl (7) ⑥無形固定資産リス クCRintangible (3) (注) ( )の数字はサブモジュール数。 (出所) EIOPA(2013) “QIS5 Technical Specifications”を基に筆者が作成。 出所:EIOPA(2013)“QIS5Technical Specifications”を基に筆者が作成。 BSCR は、市場リスク、医療保険引受リスク、信用リスク、生命保険引受リスク、損害 保険引受リスク、無形固定リスクの 6 つからなり、その下に( )で示した数のサブ・モ ジュールを有している。例えば、市場リスクのサブモジュールリスクには、金利リスク、 株式リスク、不動産リスク、スプレッドリスク、為替リスク、投資集中リスク、非流動性 リスクの 7 つがある。 今回の試算では、金利変動が両健全性指標に与える影響に特化して分析を進めるため、 市場リスクのサブ・モジュールである金利リスクが BSCR となる。金利リスクの対象は、 資産に加え負債を構成する収入保険料や支払保険金なども含まれる。金利リスクは、金利 の上昇局面と低下局面ごとに表の 3-2 の基準で計算される。 表 3-2 金利リスク計算基準 31 具体的には、計算時の金利カーブに(1+sup)と(1+sdown)を乗じ、金利の期間構造を修 正する。例えば、償却期限が5年の上昇局面のストレス金利指数はsup (5)55%であり、金利リ スクを計算する場合は、上昇局面5年のストレス金利Rup(t)を用い、計算時の5年金利R(5)* (1+sup (5))で算出する。 リスク合計を表す SCR は、この BSCR にオペレーショナルリスク相当額を加えたもの とする。オペレーショナルリスクの計算は QIS5 で以下の通り定められている。 SCROp =min(0.3 × BSCR, Op) + 0.25 × Expul Op=max(Oppreminms , Opprovisions ) Oppreminms = 0.04 × (Earnlife − Earnlife−ul ) + 0.03 × Earnnl + max (0,0.04 × (Earnlife − 1.1 × pEarnlife − (Earnlife−ul − 1.1 × pEarnlife−ul ))) + max(0,0.03 × (Earnnl − 1.1 × pEarnnl )) Opprovisions = 0.0045 × max(0, TPlife − TPlife−ul ) + 0.03 × max(0, TPnl )・・・・式(3-1) ちなみに、Expは過去 12 カ月間事業費を、Earnは過去 12 カ月間の既経過保険料を、TP は保険契約準備金(リスク・マージンを除く)を表す。また、拡張子のlifeは生命保険契約 を、ulは契約者が投資リスクを保有する特別勘定商品を、nlは損害保険契約を表す。 32 3.日本のソルベンシー・マージン基準 (1)ソルベンシー・マージン基準の概要 日本では、1996 年の新保険業法の施行に伴い、ソルベンシー・マージン基準が導入され た。その中、生命保険会社単体のソルベンシー・マージン比率は、保険会社の責任準備金 で対応する通常リスクを超えるリスクについて定量化した「リスク総量」に対し、リスク が発現した場合に対応する財源(以下、ソルベンシー・マージンと呼ぶ)がどの程度ある かを示したものである。分子となるソルベンシー・マージンは、保険会社の貸借対照表に おける、①資本の部の合計、②負債の部の価格変動準備金、危険準備金、一般貸倒引当金、 ③有価証券・不動産などの評価差額(有価証券分×90%:ただし、評価差額がマイナスの場 合は 100%、土地については含み損益×85%:同 100%)、④期限付劣後債務、などからな る。 分母のリスク総量は、指定された計算方式に基づき、①生命保険会社(及び生命保険契 約を有する連結保険子会社等)に係る保険リスク相当額(R1 と表す)、②予定利率リスク相 当額(同 R2)、③資産運用リスク相当額(同 R3) 、④経営管理リスク相当額(同 R4) 、⑤最 低保証リスク相当額(同 R7)、第三分野保険の保険リスク相当額(同 R8)である。各リスク 間の相関を反映するため、以下の式を用いて合計値を算出する。すなわち、 リスク量=√(R1 + R 8 )2 + (R2 + R 3 + R 7 )2 + R 4・・・・式(3-2) そして、ソルベンシー・マージン比率は以下の計算式で計算される。 ソルベンシー・マージン比率= ソルベンシー・マージン 0.5×リスク総量 × 100%・・・・式(3-3) ソルベンシー・マージン比率が 200%を下回る場合、保険会社の支払余力もしくは健全 性に懸念があるとされ、金融庁は当該保険会社の監督・管理を強化することとしている。 新基準が繰り延べ税金資産などのソルベンシー・マージンへの参入抑制やリスク項目の 見直しを行った結果、例えば、業界最大手の日本生命保険相互会社の 2010 年度決算値で みると、予定利率リスク相当額は旧基準の 1,697 億円が新基準では 4,118 億円と 2.4 倍に 増加し、信用リスクなど資産運用リスク相当額も同 9,564 億円から 1 兆 6,495 億円に 1.7 倍増となっている。 より実態に近づいたものと評価できるものの、この指標構造をとる限り、①保険負債の 33 評価は簿価で、資産評価は時価で評価するアンバランス、②予定利率リスクが 1 年間の逆 ザヤの発生期待値という普遍的でない定義、③大規模保険会社の健全性が相対的に低く表 れ、格付会社の保険会社格付けなどと乖離、などいまだ同基準への疑問がやや残る。 (2)今回の試算におけるソルベンシー・マージン比率の計算方法 ソルベンシー・マージン比率の計算は金融庁告示第 23 号(2011‐②)に基づいた。R1 の 保険リスク相当額は、普通死亡リスク(A と表示)、生存保険リスク(同 B)、その他リス ク(同 C)に 3 分されている。 ちなみに、リスク量は A:危険保険金額×リスク係数(0.6/1000)、B:個人年金保険期末 責任準備金額掛けるリスク係数 10/1000 となり、合算保険リスク=√A2 + B 2 + C として 計算する。 予定利率リスク相当額 R2 は、予定利率ごとの責任準備金に同利率の水準に相応する以 下のリスク係数を乗じて計算する。 予定利率が 1.5%以下の場合 0.01、同 1.5%を越え 2.0% 以下の場合 0.2、同 2.0%を超え 2.5%以下の場合 0.8、そして、2.5%越えは 1.0 である。 資産運用リスク相当額 R3 は、今回は国内債券(国債)だけの投資としたため、国内債 券資産残高に 2%のリスク係数を乗じたものとした。 経営管理リスク相当額 R4 は、上記の各リスク相当額の合計額に 2%のリスク係数を乗 じた額とした。 今試算におけるリスク総量は、予定利率リスク、国内債券についての資産運用リスク、 そして、経営管理リスクの合計額となる。一方のソルベンシー・マージンは、イールドカ ーブを用いて再評価した債券時価から責任準備金(簿価の負債)を差し引いた額とした。 4.モデル保険会社の構築 (1)モデル保険会社の概要 シミュレーションに使用する標準モデル保険会社は、商品側と資産運用側から構成され、 両者は共に連動している(保険会社モデルの詳しい構造は付表 1 に示したのでご参考いた だきたい。なお、付表 1 には体系図とモデルを構成する各パーツ部分を掲載している)。経 済・金利の各シナリオにおいて一定の前提において過剰利益がゼロとなる状態をシミュレ ーションの起点とする(モデルの定常状態と呼ぶ)。その前提とは、①人口が定常状態(年 齢別の死亡率は一定、毎年の新契約高も一定)、②単純化のために販売する商品は、10 年 34 満期の養老保険(30 歳加入、10 年払い込み、40 歳満期、保険金 100 万円)のみとする。 ③保険料は、毎年の年始に収納(年払)、もしくは 1 年目の年始に収納(一時払いの場合) し、保険金は被保険者死亡年もしくは契約満了時の年末に支払う。④使用した年齢別死亡 率は厚生労働省の第 21 回生命表(完全生命表)男性の数値である。0 歳から 110 歳(生命 表の最終年齢)の男子の死亡率を基に、毎年年始に 10 万人の新生児が生まれ、この定常状 態にある人口集団の 30%が保険に加入すると想定した。⑤営業開始後 10 年経過時に、年 末の責任準備金額、年始の収入保険料額、そして年末の支払保険金額は一定という定常状 態に入る。 保険料と支払い保険金から責任準備金等を算出するアルゴリズム(簡便化のため一時払 養老保険)は以下の通りである。V は、現価率、dxは、生命表の年齢x歳の者の死亡数、lx は、生命表の年齢x歳の人の生存数、n−1 qxは、生命表の年齢x歳の人が n-1 年生存し、次 の1年内に死亡する確率、n pxは、生命表の年齢x歳の人が n 年生存し、次の1年内に生 存する確率である。また、Ax:nは、養老保険の保険金額 1 で死亡保険金年末支払の場合の 一時払の純保険料である。 v= 1 1+i Ax:n = vq x + v 21| q x + ⋯ ⋯ + v n n−1| qx + v n n px ä x:nは、期間 n 年の有期生命年金の期始払現価で、 ä x:n = 1 + vpx + ⋯ ⋯ + v n−1 n−1 px と表せる。 Px:n は、養老保険で保険金年末支払のときは保険金額 Ax:n ä x:n 1 に対しての年払平準保険料 Px:n = である。 mPx:n は、保険料払込期間 mPx:n m が保険期間 n より小さいときの養老保険の年払平準保険料 A = ä x:n tV(Px:n ) x:m は、保険金額 1 の養老保険に対する年払平準(純)保険料が P である保険の t 年 経過後の責任準備金である。 tV(Px:n ) = Ax+t:n−t −Px:n ä x+t:n−tとなる。計算を簡便化するために、Dx = v x lx Dx+1 + ⋯ ⋯ + Dɷn−1 、Cx = v x+1 dx 、Mx = Cx + Cx+1 + ⋯ ⋯ Cxn−1とすると Ax:n = Mx − Mx+n + Dx+n Dx 35 、Nx = Dx + ä x:n = Px:n = mPx:n Nx −Nx+n Dx Mx − Mx+n + Dx+n Nx − Nx+n = Mx − Mx+n + Dx+n Nx − Nx+m その結果、責任準備金は、次のように表される。 tV(Px:n ) = Nx −Nx+t Mx − Mx+t Px:n − Dx+t Dx+t 一方、資産側については、国債による投資のみを考えた(信用リスクはゼロ、債券のク ーポン受取時期は年末の 1 回のみ)。順イールドカーブの投資環境を前提にモデル保険会 社の投資戦略は以下のように設定した。まず、第 1 年度の契約の収入保険料は 10 年固定 利付債に投資し、次に、①第 1 年末に受取るクーポン(利息)、②第 2 年の年始収入の保険 料、そして第 1 年度の収入保険料と支払保険金の差額、の 3 つは 9 年固定利付債に投資す る(一時払いの場合で第 1 年度の契約の収入保険料と毎年の年末にもらう債権のクーポン を以上のように投資する)。順次この投資を続け、第 10 年度終了時には利息額と債券元本 の合計額と第 10 年の保険金支払額(死亡保険金、満期保険金)が同額になるように保険料 と予定利率を設定した。つまり、資産と負債のデュレーションを可能な限り合わせる投資 戦略を取ることとした。ちなみに、このような投資は資産と負債のデュレーションを最も 近づける基本の資産運用戦略であり、保険会社の長期的な投資戦略を表現できると共に中 立的な投資戦略とも理解できる。現実にも、近年、日本の生命保険会社は債券投資に占め る超長期債券の割合を急増させ、資産と負債のデュレーションを近づけていく戦略を進め ている。1999 年度の同割合 13.4%は 2012 年度には 65.7%まで上昇している。モデル保 険会社はこの傾向を反映している。モデル保険会社の資産運用の概念図は図 3-4 に示した。 図 3-4 シミュレーションモデルにおける資産側の概要 36 図4 シミュレーションモデルにおける資産側の概要 各年の新規 投資分 経過年次 10(10) 1 10(10) 9(9) 10(9) 2 10(10) 10(9) 9(9) 8(8) 9(8) 10(8) 3 ・・・ ・・・ 10(10) 9~10(9) 8~10(8) 7~10(7) 6~10(6) 5~10(5) 4~10(4) 3~10(3) 2~10(2) 9 10(10) 9~10(9) 8~10(8) 7~10(7) 6~10(6) 5~10(5) 4~10(4) 3~10(3) 2~10(2) 1~10(1) 10 10(10) 9~10(9) 8~10(8) 7~10(7) 6~10(6) 5~10(5) 4~10(4) 3~10(3) 2~10(2) 1~10(1) 11 ・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ①定常状態に至るまでの債券ポートフォリオの形成 (注1) 10(9)は、債券の購入時の投資期間が10年で、残存期間が9年であることを示す。 (注2) 健全性基準値の計算は定常状態になった年の年始に行う ②定常状態での債 券ポートフォリオ運営 出所:筆者が作成。 (2)モデル保険会社の基礎前提 (2)-1 金利の想定 今回のシミュレーションの目的は、金利変化が両基準の健全性水準にどのような影響を 与えるかを探ることである。金利の変化が健全性の水準に影響するのは、①ソルベンシー・ マージン基準における予定利率リスクと資産価格、②ソルベンシーⅡにおける(ⅰ)金利 リスク、(ⅱ)資産価格、(ⅲ)負債の最良推計値の算出に際しての現在価値への割戻金利 (リスクフリーレート) 、 (ⅳ)オペレーショナルリスク(負債の値を使用するため)、であ る。 使用する金利の候補としてスワップレートと国債利回りが考えられるが共にメリット、 デメリットを有している。アクチュアリージャーナル(2011)のソルベンシーⅡ特集で議 論されているように、①スワップレートは信用リスクフリーの条件を満たさない、また、 ②1 年から 10 年の金利の内 6 年、8 年、9 年目の金利が公表されておらず人為的な補完が 必要、などの問題がある。そこで、割引国債の期間利回りを利用する。ただし、当該期間 すべての金利が日次で公表されているわけではなく、割引国債の期間構造を菊池健太郎、 新谷幸平(2012)に従い、McCulloch[1971, 1975]の手法に則って計算したものを使用し た。計算期間は 1994 年 9 月から 2013 年 2 月の営業日 3,588 日である。期間 1 年から 10 年の合計 35,880 の各金利を標本とした。 37 ここで想定した金利局面は次の 3 つである。すなわち、ここ 10 年以上日本経済が置か れてきた、①低金利局面、②過去の平均金利局面、③景気が回復する際の高金利局面であ る。①の低金利局面は、日本銀行がゼロ金利政策導入を決めた 1999 年 2 月 15 日の政策決 定会合の翌日から 2013 年 2 月 28 日までの 3,452 日の期間平均金利とした。②の過去の 平均金利は 6 カ月物金利が 2%水準を維持した 1994 年 9 月 1 日から 1995 年 3 月 22 日ま での 136 日の期間平均金利とした。③の高金利局面は、割引国債の期間構造計算した期間 では該当がなく、第 2 次石油ショック後の景気の立ち上がり時期である 1983 年 2 月 1 日 から 1984 年 1 月 31 日までの 285 営業日の平均金利とした。同データはやむなく財務省 公表の利付国債利回り使用した。その結果、使用する金利は表 3-3 に示した通りである。 表 3-3 3 つの金利局面の金利の期間構造(%) 表1 3つの金利局面の金利の期間構造(%) 低金利局面 平均金利局面 高金利局面 計算期間 1999.2.15~ 2013.2.28 1994.9.1~ 1995.3.22 19832.1~ 1984.1.31 データ数 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 予定利率 年払い保険料 3,452日分 0.291 0.406 0.546 0.713 0.871 1.031 1.191 1.352 1.494 1.615 1.18% 94,071円 136日分 2.588 3.002 3.463 3.84 4.183 4.526 4.667 4.667 4.674 4.738 4.38% 78,796円 285日分 6.708 6.815 7.039 7.408 7.653 7.657 7.342 7.578 7.743 7.801 7.53% 66,052円 (出所)筆者が当該期間の平均金利を計算したもの。 出所:筆者が当該期間の平均金利を計算したもの。 この金利構造を用いて計算した低金利局面の年払保険料は 94,071 円、予定利率は 1.18% となる。また、 平均金利局面では同 78,796 円、予定利率は 4.38%、高金利局面では同 66,052 円、7.53%となる。なお、後述するシミュレーションの中では、一時払いの場合の保険料 と予定利率を新しく試算され、動態的なシミュレーションをするときこの 3 つの局面の保 険料と予定利率を組み合わせて利用する。 38 (2)-2 当初持ち込み自己資本 モデル保険会社が会社運営のために、当初に持ち込む自己資本の水準は、日本の生命保 険会社の 2000 年度から 2012 年度までの純資産と負債性資本である危険準備金を合わせ た額の総資産に占める割合を参考にした。すなわち、株式等の評価額の変動から純資産は 変化しているものの、2008 年度から 2012 年度までの 5 年間の年間の純資産の総資産比率 が平均 3.4%、危険準備金の同平均比率が 1.9%で、合わせて 5.3%であった。そこで、当 初持ち込み自己資本の水準は資産の 5%とした。なお、後述するシミュレーションの中で は、この当初持ち込み自己資本 5%を 3%、7%に変えた健全性水準も計測している。 (2)-3 資本コスト率 負債のリスク・マージンを算定する際に使用する資本コスト率の概念も議論が分かれる。 日本アクチュアリー会国際基準実務検討部会(2010)においても、資本構成について CEIOPS は 100%株式資本、CRO フォーラムは 80%株式資本・20%負債としている。そ こで、ここでは複数の方式で計算し、その結果を総合的に判断することとした。 一般に、加重平均資本コスト率(以降、WACC とする)は、 (WACC)=D/(D+E)*Rd(1-Tc)+E/(D+E)*Re と表現される。ここで、D は負債、E は自己 資本、Rd は負債コスト(金利)、Re は自己資本コスト、Tc は実効税率である。ここで、 自己資本コストは次のように表される。Re=Rf(1-Tc)+Be*(Rm-Rf)。ここで、Rf はリスク フリーレート、Rm は株式市場の平均期待リターン、Be は自己資本 β である。①Rf は、6 カ月 TIBOR(1998/1~2013/8)の 0.187%(長期に取れる市場リスクフリーレート)、②Rm は、2%の配当利回り+3%の企業成長率(日本の潜在経済成長率 1.5%の 2 倍と想定)= 5%、③β は、主要な日本の生命保険株式会社の平均 β とした。ここでは、第一生命保険株 式会社、T&D ホールディングス、ソニー生命保険株式会社の 3 社平均値である 1.416667 を使用した。その結果、Re=6.144 となる。 従って、WACC は、①生命保険全社の 2012 年度末の貸借対照表上の負債、資本割合を そのまま採用した場合 2.09%、②株式 100%(CEIOPS の基準)の場合 6.93%、③株式 80%、 20%負債(CRO フォーラムの基準)の場合 6.14%となる。また、参考情報として、④CRO 調査に基づく CAPM 方式で計算された生命保険会社の WACC は、グローバル生保で 5.1% (欧州:10..0%)となっている。ここでは、②~④を総合的に勘案し、WACC 資本コスト 率は 6%と想定した。 39 (2)-4 その他 最初のシミュレーションで金利変化が健全性基準に与える影響を限定的に明確にした いため、株式は資産運用の部分に組み込んでいない、解約や事業費の変化、そして死亡率 の安全割増については、シミュレーションモデルに組み込んでいないが、その後のシミュ レーションで株式と解約をモデル保険会社やシミュレーションに組み込むこともある。 また、ソルベンシーⅡの計算において、今回のモデルの対象商品は養老保険のみとした た め 、 前 述 の オ ペ レ ー シ ョ ナ ル リ ス ク を 表 す 前 出 式 ( 1 ) は 、 SCR Op =min(0.3 × BSCR, max(0.04 × Earnlife , 0.0045 × TPlife )) となる。 一方、ソルベンシー・マージン基準の計算において、リスク量を構成する前出の式(2) の①最低保証リスク相当額 R7 に関係する変額保険および変額年金と、②第三分野保険の 保険リスク相当額 R8 に関係する商品は、共に今回は販売を想定しないことから、リスク 量は 0 となる。 40 第4章 資産・負債の統合モデルを用いた健全性評価 本章は前章の表 3-1 で示した部分モデル法を改良し、資産・負債の統合モデルとした「健 全性指標評価モデル」を用いて実証分析を行う。シミュレーションは、日本の長期にわた る経験から、中国の生命保険会社が今後直面する可能性の高いリスクを選択し、対象とす ることにした。まず第 1 に、長期で見た金利局面の大きな変化である。日本の 10 年国債 利回りは、バブル時までは 6~8%であったものが、長期の金融緩和や経済成長率の低下か ら 2000 年代には 2~3%程度まで大きく低下している。この過程で、日本の保険会社は資 産運用利回りが予定利率を下回る「逆ザヤ」という異常な状況に直面し、これを主な原因 として業界全体で 40 社のうち 8 社が経営破綻する事態にみまわれた。中国でもシャドー バンキングの拡大や不動産価格の乱高下が起こり、今後、金融市場の混乱とその収縮政策 から日本と同じような金利局面が発生する可能性がある。従って、静態分析に加え、長期 にわたる(10 年を想定)金利の上昇局面と下降局面を想定する。 第 2 に、第 1 章で見たとおり、中国の生命保険商品は、銀行預金や債券・株式投信など との代替物として利回り(投資収益性)を求められることが多い。この時、保険料の毎月 払いや毎年払いを選択するのではなく、一括して生命保険料を納付する「一時払い契約」 を選択することが多い。一時払い契約は大きな保険料がピンポイントで大量に保険会社に 流入し、保険会社はすぐにその資金を投資に回すため、ドル平均法的な投資が可能な毎年 払い契約などより資産運用リスクが大きいとされる。中国では日本以上にこの傾向が強い と考えらえるため、シミュレーションでは、一時払い契約と毎年払い(以降、年払いと呼 ぶ)区分してシミュレーションし、その差を考察する。 その結果、シミュレーションは、4 つの段階に分かれる。まず、①日本の代表的な 3 つ の金利局面を想定し、それぞれについて、2 つ健全性基準の金利リスクに対する評価(静 態的シミュレーションと呼ぶ)、②日本で生命保険会社の連続的な経営破綻を誘発した金 利の下降局面、上昇局面における動態的な金利リスク評価(動態的シミュレーションと呼 ぶ) 、③一時払い契約と年払い契約の金利リスク評価、④株式投資と解約を織り込んだリス ク評価、である。また、①と②に関してはイールドカーブのシフト(フラット化とスティ ープ化)した場合の健全性の変化なども検証した。 41 1.金利前提 なお、イールドカーブの変化は図 4-1 に示した通り、基準とした金利を 0.5 倍(よりフ ラット化)と 1.5 倍(よりスティープ化)することにより表現している。 図 4-1 金利水準と形状の変化 出所:筆者が作成。 2.シミュレーション結果 (1)静態的シミュレーション結果 表 4-1 に 2 つの健全性基準に基づく健全性水準の計算結果をまとめた。まず、資産は両 基準とも責任準備金と当初自己資本を国債だけに投資したとし、その債券ポートフォリオ を時価評価したものである。負債はソルベンシーⅡでは最良推計値にリスク・マージンを 加えたもの(時価評価)であるのに対し、ソルベンシー・マージン基準では従来の責任準 備金額(簿価評価)である。後者は金利の変化に関わらず負債額は変化しない。なお、前 述の通り、予定利率は、低金利局面が 1.18%、平均金利局面が 4.38%、高金利局面が 7.53% である。この資産から負債を差し引いたのがソルベンシー・マージン(表ではソルベンシ ーと表記)である。 リスクについては、ソルベンシーⅡ基準では BSCR の金利リスクとオペレーショナルリ 42 スクを、ソルベンシー・マージン基準では予定利率リスク、保有債券の価格変動リスク、 そしてオペレーショナルリスクを計算対象とした。そしてソルベンシー額をリスク総額で 除した「ソルベンシー余裕度」が健全性の水準を示す。 「健全性」をリスク総量以上の自己 資本を保有することと定義すれば、ソルベンシー余裕度が 1 より大きく、その水準が高い ほど健全性が高いことを示す。 具体的に現在日本が置かれている低金利局面で基準ケースを見てみよう。ソルベンシー Ⅱにおいては、モデル保険会社の資産額は 5,680 億円、負債は最良推定値 5,275 億円にリ スク・マージン 46 億円を加えた 5,321 億円、資産から負債を引いたソルベンシー額は 359 億円となる。一方、リスク総額は、金利リスク 81 億円にオペレーショナルリスク 24 億円 を加えた 106 億円であり、その結果、ソルベンシー余裕度は 3.40 倍となる。一方、ソルベ ンシー・マージン基準も、時価評価する資産額は同じであるが責任準備金は 5,314 億円、 リスク総額は予定利率が 1.17%と予定利率 1.5%以下のリスク係数 0.01 が適応され、わず か 1 億円と小さい。債券の価格変動リスク 108 億円等を合わせてもリスク総額は 111 億円 であり、ソルベンシー余裕度は 3.30 倍なる。 金利を 0.5 倍しイールドカーブを下方シフトかつフラット化すると、当然ソルベンシー Ⅱの時価計算する負債額は基準ケースより約 200 億円増え、5,531 億円まで膨れる。ただ、 同時に金利リスクとオペレーショナルリスクが減少するため、リスク総額も約 50 億円縮 小する。このため、ソルベンシー余裕度は 4.45 倍に改善する。ソルベンシー・マージン基 準の計算においては、負債額が変化せず、また、リスクの算定も固定のリスク係数かける ため変化が小さく、結局金利低下で資産評価額が増加する分だけ、ソルベンシー余裕度は 4.16 倍に改善する。 逆に、金利水準を 1.5 倍し、イールドカーブを上方かつよりスティープ化した場合には、 ソルベンシーⅡでは割戻金利が上昇するため、負債が小さくなる(基準ケースに比べ約 200 億円減少)一方、資産価値も減少するため、ソルベンシーの増加額は約 100 億にとどまる。 また、金利リスクとオペレーショナルリスクが基準ケースに比べ約 40 億円増加するため、 ソルベンシー余裕度は 3.11 倍に低下する。 ソルベンシー・マージン基準においては、金利上昇で資産価格は下落するものの、負債 の責任準備金額は変わらず、ソルベンシーは逆に 100 億減少し 266 億となる。リスク総額 は大きく変わらないため、ソルベンシー余裕度は 2.44 倍まで低下する。 低金利局面では、ソルベンシー余裕度がソルベンシーⅡ基準においては金利水準の低い 43 順から高い順位に 4.45⇒3.40⇒3.11 倍と変化し、ソルベンシー・マージン基準も 4.16⇒ 3.30⇒2.44 倍と同様の動きを示しているように見える。しかしながら、その構造は、前者 がソルベンシーを増加させながらリスク量も増加するのに対し、後者はソルベンシーが減 少する中でリスクが横ばい(固定的)と大きく異なる。 この構造格差は、平均金利局面で見ると一層鮮明になる。ソルベンシーⅡ基準において は金利が上昇するに伴い資産の減少を越える負債の減少が見られ、ソルベンシー増加する。 リスク増加は緩やかであり、ソルベンシー余裕度は 0.02⇒1.34⇒2.08 倍に変化するのに対 し、ソルベンシー・マージン基準では、固定的なリスク量の中で、負債は一定のため資産 の減少がそのままソルベンシーの減少につながり、ソルベンシー余裕度は、3.23⇒1.60⇒ 0.09 倍と変化し、両基準は全く逆の動きを示す。この動きは高金利局面でも同じで、ソル ベンシー余裕度は、ソルベンシーⅡ基準で同余裕度は-1.17⇒0.62⇒1.63 倍と金利上昇に 伴い改善するのに対し、ソルベンシー・マージン基準では同 2.41⇒0.78⇒-0.63 倍と逆に 低下する動きを示している。 とりわけ、保険会社の経営破綻リスクが高いことを示すマイナスのソルベンシー余裕度 が、ソルベンシーⅡでは 0.5 倍ケースで、ソルベンシー・マージン基準では 1.5 倍ケース で発生することになる。万が一、ソルベンシー・マージンからソルベンシーⅡに基準が無 条件に変更された場合、保険監督と保険会社の経営に混乱が生じる懸念がある。 表 4-1 シミュレーション結果(1)基準ケースとイールドカーブのシフト 44 出所:筆者がシミュレーション結果をまとめたもの。 次に、金利 3 局面における基準金利において、当初持ち込み自己資本が上下 2%変化し た場合にソルベンシー余裕度がどう変わるかを見てみよう。表 4-2 にその結果を示した。 表 4-2 シミュレーション結果(2)当初持ち込み自己資本の大きさが指標に与える影響 45 出所:筆者がシミュレーション結果をまとめたもの。 なお、各金利局面の「基準 5%」のケースはシミュレーション(1)の基準ケースと同じ 値である。このシミュレーションは単純であり、両健全性基準共に資産は時価評価される ため、例えば、自己資本を 3%に圧縮するとその自己資本 2%相当額約 100 億円(低金利 局面)を時価評価した当初資本が減少することになる。金利局面によりその評価額が変化 することになる。 ソルベンシーⅡ基準においては、低金利局面では、基準の 270 億の自己資本は 2%の圧 縮分も含め 162 億へ 108 億円減少する。同じく、平均金利局面では同 101 億円、高金利局 面では 91 億円の減少となる。このため、低金利局面では、3%のソルベンシー余裕度は 2.37 倍と基準ケースの 3.40 倍から 1.03 倍低下するのに対し、平均金利局面では同 0.89 倍の低 下、高金利局面では 0.31 倍の低下とその影響度は小さくなる。この傾向は、ソルベンシ ー・マージン基準でも同様である。 46 低金利局面では、ソルベンシー余裕度が相対的に高く、自己資本の調達意欲は少なく問 題はないものの、資本が重要となる平均金利局面と高金利局面において自己資本によるソ ルベンシー余裕度の引上げ効果は減衰する。 どの金利局面でも資本の重要性に変わりはないものの、資本増強の効果が低い平均金利 局面や高金利局面では、ソルベンシーⅡ基準においては資産と負債のデュレーション格差 を可能な限り圧縮しておくこと、ソルベンシー・マージン基準では予定利率の引き上げ幅 を圧縮する努力が求められる。 (2)動態的シミュレーション結果(金利の上昇下降トレンドと一時払い契約が生むリス ク) この場合のシミュレーション結果は表 4-3 に示した。まず、現行のソルベンシー・マー ジン基準で金利が持続的に上昇していく場合、年払いでは、リスク量は 234.8 憶円、自己 資本は 411.6 憶円でソルベンシー余裕度は 1.75 倍となる。ところが、一時払いでみると予 定利率リスクが倍増し、リスク総量は 441.4 憶円に拡大する。一方、保有している債券の 価値は金利上昇により大きく減少する(時価評価のため)のに対し、負債は本来その逆の 動きになる(負債の減少)はずが、簿価評価であるため減少せず、その差である自己資本 は 117.6 億円のマイナスとなる。支払余裕度も-0.26 倍とマイナスになり、経営破綻が近 いように見える。 金利が持続的に低下していく局面で年払いは、リスク量が 390.2 憶円、自己資本は 343.1 億円と金利の上昇期に比べ、支払余裕度は 0.87 倍に低下する。一方、一時払いの場合、早 めに投資を行うことが債券の価値を押し上げ自己資本は 1258 億円迄増加する。このため、 リスクも増えるものの、支払い余裕度は 2.21 倍に年払いとは逆に上昇する。 次にソルベンシーⅡを見ると年払いでは金利の持続的上昇の場合 4.94 倍の支払余裕度 が金利の持続的低下局面ではマイナス 8.1 倍まで低下する。負債の増大により、自己資本 がマイナス 562 億円迄落ち込んだことになる。 表 4-3 金利局面別、保険料払方法別にみた健全性の変化(動態分析) 47 表3 金利局面別、保険料払方別にみた健全性の変化(動態分析) (単位:億円、倍) 金利局面 リスク ソルベン 債券リスク(資産のみ) シー・マー 予定利率リスク ジン(日本: オペレーショナルリスク 中国旧基 自己資本(ソルベンシー) 準) 支払余裕度(ソルベンシー/リスク:倍) 負債(参考) リスク ソルベン 金利リスク(資産・負債) シーⅡ(E オペレーショナルリスク U:中国新 自己資本(ソルベンシー) 基準) 支払余裕度(ソルベンシー/リスク:倍) 負債(参考) 長期上昇局面 長期低下局面 年払い 一時払い 年払い 一時払い 234.8 441.4 390.2 570 102.8 141.4 99.9 185.4 127.4 291.3 282.7 373.4 4.6 8.7 7.7 11.2 411.6 -117.6 343.1 1258.3 1.75 -0.26 0.87 2.21 4977.9 7568.2 4894.9 8431.7 210.9 155.3 69.3 23 178.8 124.1 53.3 17.7 32.1 31.1 16 5.3 1041.3 504.6 -562 34.6 4.94 3.25 -8.1 1.5 4348.1 6945.9 5800 9655.4 (出所 )筆者のシミュレーションモデルによる計算値。 出所:筆者のシミュレーションモデルによる計算値。 (3)株式や解約を反映したシミュレーションの概要と結果 ⅰ.シミュレーションの概要 これまでの 3 つのシミュレーションは資産、負債に対する金利リスクを中心に評価して きた。4 つ目のシミュレーションは、日本の多くの保険会社が資産に組み込んでいる株式 など価格変動リスクが非常に大きい資産をポートフォリオに含めた場合の健全性水準の変 化を計測しようとするものである。基準ケースは、債券だけで構成したポートフォリオと 同じ資産収益率になるように株式の収益率を設定(この株式の理論的な収益率は計算しえ た予定利率よりやや大きい)したもので、この場合株式のリスク係数が高いため健全性水 準は低下することになる。次に株式の収益率を変動させ、どんな程度の株式収益率がない と健全性水準を維持できないのかを判断する。そして、期末に株価が急落したときの健全 性水準の変化を考察する。 一方、解約が急増した時に保険会社の経営破綻に至るケースが多いことから、解約金額 をモデルに組み込み、その影響を評価することとした。具体的には、①シミュレーション の 1~3 と同じように 3 つの金利局面(低、中、高市場金利局面)を想定し、リスクバッ ファーとなる当初の自己資本も 5%を基本に、②0%、1%、3%、5%、7%、9%の水準に 変化させる、③ポートフォリオにおける株式の割合は、10%と 20%(したがって、債券の 割合は 90%と 80%)とし、株価収益率は、基準ケースに加え 5%、 10%、 15%、 20%、 48 25%の 5 段階で計算した。 一方、解約については、最終 2 年間の新契約高が 2 割減少する、すなわち新契約率を最 終 2 年間については 85%とすることで、解約リスクを織り込んだ。 ⅱ.シミュレーション結果 この場合のシミュレーション結果は表 4-4 に示した。基準ケースは、低金利局面におけ る予定利率は 1.18%、株式の理論収益率は 1.76%となる。このケースのソルベンシーⅡの ソルベンシー余裕度は 3.483、ソルベンシー・マージンの同余裕度は 3.297 となる。 この基準ケースに、債券を 10%減らし、株式を 10%組み入れた場合、ソルベンシーⅡと ソルベンシー・マージンのソルベンシー余裕度はそれぞれ 1.217 と 1.740 と半減する。株 式のリスクウェートの高さがよくわかるが、ソルベンシーⅡの方が日本のソルベンシー・ マージン基準より株式のリスクを高く見積もっている。基準ケースのソルベンシー余裕度 を取り戻すため、株式収益率を 5%、10%、15%、20%、25%に引き上げても(株価収益率 を引き上げると資産時価が上昇し資産から負債を引いた純資産が増加)、ソルベンシーⅡ ではソルベンシー余裕度の改善はわずかである(同収益率を 20%としても同余裕度は 1.73 で基準ケースからわずか 0.5 倍上昇するだけ)。ソルベンシー・マージン基準では、同余裕 度は 2.49 倍に上昇するが、これでも基準ケースの余裕度を大きく下回っている。株式の組 み入れ比率を 20%に倍増させるとソルベンシー余裕度は、ソルベンシーⅡで 0.61、ソル ベンシー・マージン基準で 1.18 まで低下する。 さらに金利がより高い局面を見ると、平均金利局面では両基準とも株式 20%ケースで、 同 0.43 倍、同 0.88 倍まで低下し、高金利局面では、さらに同 0.19 倍、同 0.53 倍まで一 気に低下する。金利が高い局面で、株式を多くポートフォリオに入れることは健全性基準 の上では大きなハンディを負うことになり、それはソルベンシーⅡにおいてとりわけ大き い。 期末に株価が急落するリスクも小さくない。低金利局面で株式を 20%組み込んだケース では、期末に株価が 30%下落した場合には、ソルベンシー・マージン基準では 0.10 倍、 ソルベンシーⅡではソルベンシー余裕度はマイナス 0.15 倍と破綻状況になる。 このように、株式の保有は健全性水準を大きく引き下げるため、それを補うだけの株式 の収益率が要求される。しかしながら、低金利局面かつ株式組み入れ 20%とした場合、株 式の収益率を 20%と高く見積もってもソルベンシー・マージン基準で 2.28 倍、ソルベン 49 シーⅡでは 1.36 倍までしか戻らない。健全性の観点から株式の保有コストを勘案すると かなり高いということになる。 一方、解約が増加した場合に、ソルベンシー余裕度はどのように変化するのであろうか。 低金利局面ではソルベンシーⅡは 2.98 倍(0.5 倍の悪化)、ソルベンシー・マージン基準で 0.92 倍(0.38 倍の悪化)とさほど大きくない。また、その悪化幅は金利が高くなることに つれて小さくなる。 表 4-4 シミュレーション(3):ソルベンシー余裕度の推移 (注)SⅡはソルベンシーⅡを、SM はソルベンシー・マージン基準を、R は収益率を、平 均金利局面と高金利局面の数字は SⅡ、SM を表す。 出所:筆者のシミュレーションモデルによる計算値。 3.シミュレーションからの示唆 ソルベンシーⅡが将来日本の健全性指標に採用される可能性があるにもかかわらず、前 述の金融庁の 2010 年 6 月のフィールドテストからは負債を時価評価した健全性基準への 移行に問題は小さいとのニュアンスが読み取れる。ただ、静態的シミュレーションが示す ように、経済価値ベースで負債を評価するソルベンシーⅡ基準と現行のソルベンシー・マ 50 ージン基準において、健全性水準に大きな齟齬がないのは、現在の低金利局面を前提にし ているからである。平均金利局面や高金利局面においてイールドカーブの変動に対し両基 準が逆の方向に動く指標特性を有している点は留意を要する。 一方で、日本の 1990 年代後半から 2000 年にかけ 7 社の生命保険会社が連続して経営 破綻した。うち多く会社の破綻直前年度のソルベンシー・マージン比率が健全とされる 200%を超えていたことから、同健全性基準に疑問の眼が向けられることとなった。この 時の状況を今回のシミュレーションに当てはめれば、動態的シミュレーション表 4-3 ソル ベンシー・マージン基準における平均金利局面の「基準ケース」から「0.5 倍のケース」へ の移動に相当する。会社の実態は悪化していく中で、健全性を表すソルベンシー余裕度は 1.60 倍から 3.23 倍に改善することを示している。すなわち、健全指標が経営の悪化をむ しろ覆い隠す可能性がある。この時、仮にソルベンシーⅡ基準で評価されていたならば、 健全性余裕度が 1.34 倍から 0.02 倍に大きく下落し、経営の健全性に強い警告を発してい た可能性が高い。このソルベンシーⅡの合理性を生かしつつ、すべての金利局面で合理的 な判断が示せるように、現行のソルベンシー・マージン規制を丁寧に見直していく必要が あろう。 また、シミュレーション(3)に見るように株式をポートフォリオに組み込んだケースの リスクはかなり上昇する。とりわけ、ソルベンシーⅡにおいてその傾向が顕著である。世 界の保険会社が機関投資家として保有する株式は膨大であり、健全性基準の作り方によっ て投資の流れが大きく変化しないような配慮と共に、長期の負債を有する生命保険会社の 特性に鑑み、自己資本の小さい保険会社の株式保有は限定的にするなどの対応が適切であ ろう。 そして、もう 1 つの解約リスクも相当大きいことが明確となった。ソルベンシーⅡにお いて解約率 8%程度(新契約高と同額)でソルベンシー余裕度が基準ケースから 2 倍も低 下することは非常に大きなリスクである。このような解約率の上昇は、連鎖的な経営破綻 が起こる環境下では風評により起こりうる水準でもある。その意味では、ソルベンシーⅡ 派このリスクを的確に捉えているということも言えよう。 ただ一方で、今回のシミュレーションの限界点も明確となった。まず、資産・負債のデ ュレーション格差を付けた場合(現在は残存期間を資産側、負債側とも同じとしている: 完全マッチングの状況)や現在増加している外国債券を明示的に資産に取り込んだ場合の、 ソルベンシーⅡ基準における健全性水準の検証などモデルの改善余地は大きい。また、ソ 51 ルベンシーⅡのどの基準をどこまで変更すればソルベンシー・マージン基準との親和性が 出るのかなど、検討すべき点はいまだ多い。 シミュレーションを更に多様化させる中で、健全性指標の問題点を丁寧に点検し、指標 のパラメータの修正や指標構造そのものを見直すことが重要である。 52 第5章 生命保険会社の経営破綻誘発要因の定量分析 日本のバブル期とその清算過程において 7 社もの生命保険会社の連続破綻が発生した。 この経営破綻に至るプロセスや要因については、多くの先行研究があるものの、複数の要 因が相互に影響することもあり、その主因は定性的に一時払い保険の大量販売や高い予定 利率の設定、解約の増加とされることが多かった。ただ、各要素のインパクトの大きさが 定量的に捕らえられておらず ALM 運用などの有無により結果が異なるなど一様でない状 況が存在する。 そこで、本章では、バブル期からバブル清算期までの金利の動きを想定できる理論モデ ルを作成することにより、一時払いの保険や高予定利率の保険の大量販売や解約が経営破 綻に与える影響等を検証する。 1.はじめに 戦後、日本の生命保険業界は 20 社でスタートし、経済成長とともに保険会社も順調に 業績を伸ばした。大きく成長段階に仕分けると、戦後の復興期(1946 年~1958 年)、高 度成長期(1959 年~1972 年)、安定成長期(1973 年~1984 年)、バブル期(1985 年~ 1990 年)78、バブル清算期と低成長期(1991 年~現在)と分けられるが、業界の最大の 試練は、1990 年代後半のバブル崩壊後の 20 社中 7 社が連続して経営破綻したバブル清 算と低成長期である。経営破綻原因については、多くの要因が指摘されている。①一時払 い養老保険の大量販売、②高い予定利率の設定、③リスクの高い資産運用、④ALM の不 在、⑤解約の増加等である。ただ、その多くは確かに現象としては存在したものの、破綻 への影響度などを計量的に計測した研究は少ない。 そこで、本章では、資産と負債を同時決定する保険会社モデルを用いて、多くの先行研 究で取り上げられた「一時払い養老保険の大量販売」などがバブル期およびバブル清算期 と類似の金利変化に直面した場合に、経営破綻に与えた影響はどの程度であったか、ま た、そもそもそれは主要因であったのかを計量的に計測することとする。 7大塚忠義・ (2014)「生命保険業の健全経営戦略」、6 頁参照。 50 年間を復興期(1946 年 ~58 年)、高度成長期(1959~72 年)、安定成長期(1973~84 年)、バブル期(1985~95 年)の 4 つの時期に分け、日本国内 20 社生命保険会社の主な事業、料率・配当率、監督 官庁の規制方針の変遷およびその影響を分析している。 8ただ、大塚(2014)は戦後から最初の破たんが起きるまでの 53 2.先行研究 バブル清算期の生命保険会社の破綻の原因について、先行研究から総括的な判断を見 ると、茶野(2002)は 1990 年以降のバブル清算期には長期にわたる経済の停滞と金融緩 和政策により長い低金利局面と株価低迷等が発生し、①生命保険会社の投資環境の悪化と ②既存契約の高予定利率から逆ザヤ(資産運用利回りが平均予定利率を下回ること)が、 一部の生命保険会社の経営破綻を誘発したとしている。また、久保(2005)はバブル期 初期の一時払い養老保険など高予定利率の貯蓄商品の積極販売や ALM と乖離した資産ポ ートフォリオの構築などが破綻原因であるとし、その根底には経営判断に基づく誤った販 売戦略や財務戦略があったとした。 一方、武田(2008)は連続的に破綻した 7 社の破綻とその処理過程を整理し、生命保 険会社破綻原因は、①経済的環境の激変を想定していない保険料率の設定、②商品政策の 失敗、③無理な資産運用の 3 つが要因としている。また、植村(2008)は、破綻した中 堅生命保険会社と破綻しなかった中堅生命保険会社を比較する中で、①バブル崩壊後の厳 しい経済環境など外部要因と②経営等の保険会社の内部要因を詳しく検討している。その 結果、外部要因が生保経営に与える影響は小さくないものの、破綻誘発要因はむしろ個別 の経営(内部要因)にあるとした。 そして、大塚(2014)は、バブル期に発生した要因のみでは破綻の連鎖を説明するこ とは困難であるとし、それ以前の生命保険会社が高い成長を謳歌した過程で内包した構造 的な問題が重要な要因であるとした。 さらに、この中から経営の関与が大きいとされる「予定利率と逆ザヤの形成」と「一 時払い養老保険などの販売」の 2 点について更に詳しく先行研究を見てみよう。 (1)予定利率と逆ザヤの形成 茶野(2002)は、日本の生命保険業は 1990 年代以後の長期間に及ぶ持続的な低金利政 策により発生した逆ザヤが保険会社の財務健全性を損壊し、更に逆ザヤが累積する事態が 国民の生命保険業に対する信頼を低下させたとしている。その中で、信用力が相対的に劣 54 る生命保険会社の解約が増加し、これが最大の連鎖破綻の原因であるとした 9。また、外 部要因のインパクトの大きさを観察するため、主要国の 1955 年から 2000 年までの長期 金利推移を考察し、1980 年代後半の日本の公定歩合操作は、地価上昇の抑制を目的とし た急激な引き上げとその後の景気減速に対応した急速な引下げが特徴的であったとした。 この金融政策のオペレーションにより日本の長期金利はピーク水準からの低下幅は極めて 大きく、外部要因のインパクトは相当大きいとしている。加えて、1995 年の保険業法改 正により標準責任準備金制度が導入されるまでは、明示的に予定利率と市場金利との関係 を規定する規制は存在せず、日本の生命保険会社が 1980 年代後半以降におかれてきた状 況は、当時の欧米の生命保険会社より健全性リスクに対して脆弱であったことを明らかに した。そして、このような局面への対応は、既契約の予定利率の変更という手段以外は効 果が限定的であるしている。 武田(2008)も 1997 年から 2001 年にかけて発生した 7 社生命保険会社の経営破たん に共通する破綻要因は、生命保険会社が相対的に安い保険料率(高予定利率)を設定した ことにあるとしている。その結果、新規契約とは別で、契約の大半を占める既契約の安い 保険料率(高予定利率)の改定が進まず、逆ザヤが発生した。これは保険会社の経営判断 に問題があったとしている。 同じ予定利率の設定問題について、茶野は外部の経済・金融要因や監督規制という保 険会社の外部要因が経営破綻に色濃く反映したのに対し、武田はその厳しい外部環境は認 めるにしても、保険会社の経営責任は重いと判断している。一方、大塚(2014)は、 1970 年代から 1990 年代までの生命保険会社予定利率の変化を観察し、保険会社にとっ て予定利率の引き上げは競争上不可避なものであったと考え、また、逆ザヤの発生は、予 定利率の引き下げ時期の遅れや機動性の無さではないとした。 10 (2)高い予定利率の生命保険商品販売の影響 予定利率の設定や引下げに関する問題が、保険会社を取り巻く外部環境や監督規制にあ ったとしても、保険商品の販売そのものは保険会社の固有の問題である。そこで、商品政 策と経営破綻の関係をみると、久保(2005)は経営破綻した 7 社計とそれ以外の会社計 に分け詳細な業績比較を行う中で、①破綻 7 社は 80 年代後半のバブル期に大量の一時払 9茶野努(2002) 「予定利率引き下げ問題と生保業の将来」、9 10 大塚忠義・前掲注 1 20-24 頁参照。 55 頁参照。 い商品を販売し売上高の押上げに奔走した、②その後、解約・失効による流動性リスクが 顕在化した、2 点の特徴をあげている11。 武田(2008)も、1970 年代後半の国民の生命保険に対する貯蓄ニーズに対応した「短 満期」保険の位置付けが経営破綻に直接的、間接的に関連しているとしている。「短満 期」商品の積極的販売は経営を圧迫し、健全性にも影響を与えたとしている。また、大塚 (2014)は、逆ザヤの発生の主因はバブル期に一時払い養老保険および一時払い個人年 金を大量に販売したことにあるが、バブル期の貯蓄性商品販売の重視は、破綻会社などの 一部の会社のみで見られた現象ではなくすべての会社で見られた。貯蓄性商品の販売拡大 による逆ザヤと財務損失の拡大は、中堅生保が有する業界の「横並び体質」から自社の体 力や特性を生かしきれなかったことによるとしている。 以上から、経済・金融等の外部環境、監督規制、バブル期の商品政策、その源にある 経営判断等が逆ザヤの原因と破綻へのプロセスが示されている。ただ、定性的な判断が多 く、各要因の計量的な影響度は不透明である。そこで、次節では、多くの指摘があった商 品政策、とりわけ、「一時払い」養老保険の大量販売が経営破綻にどのような影響を与え たかをモデル保険会社を用いて検証する。 3.モデル保険会社を用いた破綻原因の考察 1.の先行研究から、高予定利率契約や一時払い保険の大量販売が各社の経営破綻に深 く影響している可能性が高い。そこで、その大きさを計量的に評価するため、モデル保険 会社を用いたシミュレーションを行う。 (1)モデル保険会社の特徴 生命保険会社は、保険商品の販売とその結果発生する責任準備金などの資産運用とが連 動しており、それらは分離して計測することには合理性に乏しい。保険商品の保険料や責 任準備金は死亡率、予定利率、事業費率12、そして解約率などに基づき計算される。その責 任準備金は、経営としての投資戦略に基づき資産ポートフォリオを組み、運用される 13。 11 久保英也(2005)「生命保険業の新潮流と将来像」93-96 頁参照。 事業費は本研究の対象ではないため、モデル保険会社に派事業費率を勘案していな い。今後の研究にはこれも反映したい。 13 実務上利益が出るとき含み益という形で計上されているが、本研究では資産の現在価 値(時価)に反映する。 12 56 従って、今回のモデル保険会社は第 3 章、4 章でみたとおり負債側と資産側が連動する構 造としている。 ただ、日本では低価法が採用され資産や負債は簿価評価されている。ただ、日本でも導 入が検討されている欧州のソルベンシーⅡでは資産、負債とも時価評価となっている。こ のモデルは、責任準備金について簿価と時価の双方で計算が可能だが、ここでは、現行の 会計基準に合わせる形で、負債は簿価評価とした。従って、資産は時価、負債は簿価とな り、本来はアンバランスではあるが実際の経営判断はこれで行われているため、この組み 合わせをモデルに採用した。 モデル保険会社の特徴は以下の 2 点である。まず、負債側(保険商品、予定利率、保険 料、解約率など)および資産側(安全資産:債券とリスク資産:株式の投資割合、現価に 使用する金利イールドカーブなど) の前提数値を多様に入れ替えることが可能な点である。 もう 1 つが、資産側と負債側を一体として、時価と簿価の双方で負債額の変化や時価資産 の変化を計算でき、純資産額やリスク総額が一つのモデルで統合的に計算できることから、 生命保険会社の経営破綻過程を長期的かつ時系列で試算することができる点である。 なお、モデル保険会社の詳細については、第 3 章の 4.に詳細に記載している。 (2)一般的な景気循環の中で「年払い」養老保険の収益 14 伝統的な生命保険商品は一旦契約すれば、その後、予定利率や保険金の変更は行わない (一部の特別勘定商品を除く)。言い換えれば、保険会社が予定利率を上回る資産運用を行 い、それを損なうリスクはすべて保険が引き受ける仕組みである。当該保険契約は長期契 約が多いため、自ずと保険会社は景気循環を受け止め、金利や株価の変化に直面しながら 資産運用リスクを管理している。 そこで、まず景気の 1 循環を構成する景気の拡大局面(金利は上昇)と景気の下降局面 (金利が上昇)について、各々養老保険のみを販売している保険会社の資産額、負債額、 利益額(配当金+内部留保)を計算する。 モデル保険会社は、会社のキャッシュ・フローが定常状態(保険会社がスタートし、収 入と支出が安定している状態、モデルでは設立後 10 年経過後)となった時点で、保険契約 高や各金利局面が示すイールドカーブの下で、責任準備金の残存期間と債券の期間フルマ ッチングする投資を前提に、保険料や予定利率、資産額、負債額などを計算する。 14 この部分は年払い養老保険を例として分析する。 57 想定した金利局面は 3 つである15。これらの前提条件を基に、まず、 「年払い」養老保険 の販売だけを行うモデル保険会社について、3 つの金利局面におけるそれぞれの保険料、 予定利率、資産の現在価値(時価)、責任準備金の簿価価値を計算した結果を表 5-1 に示し た16。 表 5-1 年払い養老保険を販売するモデル保険会社の初期状況 年間保険料 予定利率 資産価値(時 負債価値(簿 (円) (%) 価:億円) 価:億円) 低金利局面 94,072 1.18 5,409 5,314 平均金利局面 78,796 4.38 5,012 4,907 高金利局面 66,052 7.53 4,584 4,540 出所:筆者が計量モデルにより計算。 定常状態では、資産価値と準備金価値はほぼ一致しているが、その後の金利変化に伴い、 既存契約の予定利率はそのままであるのに対し、当該年の新契約から市場金利に合わせて それは変動することから、資産価値、責任準備金価値、そして、利差益が変化する。一般 的に資産の時価は、景気拡大局面(金利上昇)で減少し、景気後退局面(金利低下)で増 加するとされている。ただ、この局面では利差益は、想定を超える解約がない場合には契 約を満期まで保有できることから安定的な利益を確保できる。これが、配当金もしくは内 部留保の財源となる。 ここで、まず、低金利局面から平均金利局面へ 10 年間で変化した場合のシミュレーショ ンを行う。その結果は、表 5-2 に示した17。 景気拡大局面では、保有資産(債券)の価値は金利上昇に伴いゆっくりと毀損していく が、その後低金利時の契約が順次満期となり、順次平均金利局面の契約と入れ替わってい この部分第三章の 4.想定する 3 つの局面を使う。 資産価値が負債価値よりやや大きいのは市場のイールドカーブで計算された資産(時 価)と一定予定利率での計算された負債(簿価)との差が大半である。また、シミュレー ション期間の毎年の保険金の支払いとと保険料の収入は同じとしているため、各年の利差 損益は 0 である。 17 平均金利局面に入り、低金利局面で契約した既契約がすべてなくなるまで 10 年かかる ので、10 年間をシミュレーション期間とした。低金利局面契約の利差益は配当金として 毎年還元もしくは内務留保される(表 3 に累計値として表示)。 15 16 58 く18。この過程の 6 年目までにおいては、低い予定利率契約が高い運用利回りを享受(運 用利回り‐予定利率が拡大)できることから資産価値はむしろ増加する。その後は、低金 利局面で契約した既存契約が大きく減少し時価の資産はやや減少する。 一方、負債は簿価であるため、金利上昇とともに予定利率も上昇するため、責任準備金 額は減少する。このため、金利上昇に伴い、資産から負債を差し引いた純資産はプラスと なる。利差益は、再投資され、すべての資産(債券は平均金利局面でのイールドカーブに 従う債券ポートに変っていく。10 年間の利差益累計は、145 億円のプラスになっている。 表 5-2 景気拡大局面における資産、負債、利益の変化(年払い養老の場合) 表3 景気拡大局面における資産、負債、利益の変化(年払い養老の場合) 定常状態 年度始 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年(年度始) 年初資産時価(億円:A) 5,409 4,819 4,948 5,066 5,169 5,252 5,310 5,337 5,325 5,270 5,166 5,012 年初責任準備金(簿価、億円:B) 5,314 5,314 5,299 5,270 5,232 5,185 5,134 5,080 5,027 4,978 4,937 4,907 純資産(A-B) 95 -495 -350 -204 -63 67 177 257 298 292 229 105 ― 2 7 15 27 42 62 85 113 145 ― 利差益(配当金or内部留保、累積値) 金利局面 商 品 構 成 満期まで1年(古) 同2年 同3年 同4年 同5年 同6年 同7年 同8年 同9年 同10年(新) 低金利局面 低金利局面 平均金利局面 (出所)筆者が計量モデルにより分析。 出所:筆者が計量モデルにより分析。 逆に、景気の後退局面では、表 5-3 に示したように、表 5-2 の景気拡大局面とは逆の動 きが生じる。すなわち、保有資産の価値は金利低下と共に増加するが、低金利局面で契約 した契約が徐々に増加し、運用利回りが低下する。利差益 19は債券の運用利回りの低下と 予定利率の低い新規契約の増加に伴う責任準備金の増加により、10 年間の累計で、135 億 円のマイナスになる。懸念される純資産も 7 年目でマイナス 74 億円となるものの、10 年 末にかけ回復していく。 表 3 の 1 つブロックはすでに資産時価評価されたものとなっている(詳細は王美・久 保(2014)を参考。 ) 19マイナスは利差損を意味する。 18 59 表 5-3 景気後退局面における資産、負債、利益の変化(年払い養老の場合) 表4 景気後退局面における資産、負債、利益の変化(年払い養老の場合) 定常状態 年度始 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年(年度始) 5,012 4,907 105 5,599 4,907 692 5,463 4,922 541 5,344 4,950 393 5,243 4,989 254 5,167 5,036 131 5,118 5,087 31 5,101 5,141 -40 5,120 5,194 -74 5,177 5,243 -66 5,273 5,284 -11 5,409 5,314 95 ― -3 -8 -16 -28 -43 金利局面 -62 -83 -108 -135 ― 年初資産時価(億円:A) 年初責任準備金(簿価:B) 純資産(A-B) 利差益(配当金or内部留保、累積値) 商 品 構 成 満期まで1年(古) 同2年 同3年 同4年 同5年 同6年 同7年 同8年 同9年 同10年(新) 平均金利局面 平均金利局面 低金利局面 (出所)筆者が計量モデルにより分析。 出所:筆者が計量モデルにより分析。 2 つの局面の利差益を比べると、景気の拡大局面の利差益は 145 億円のプラスに対し、 後退局面でのそれは 135 億円のマイナスと1つの景気循環を通してみれば収益のバランス は悪くはない。すなわち、①現行の会計方式(資産:時価、負債:簿価)を前提とし、② 負債の期間にマッチングした債券運用を行い、③新規契約の予定利率を迅速に市場金利に 合わせ変更し、④毎年配当ではなく最終配当を採用、そして、⑤大きな解約が発生しない 場合には、確実に健全性は維持される。 つまり茶野(2002)が指摘する既契約の予定(保証)利率変更以外には外部環境の変化 に対応できないという主張は基本的には正しいものの、上記の 5 つの条件がそろえば、経 営破綻は避けられる可能性が高い。 (3)経営破綻が連続したバブル期とその後の清算期の「年払い」養老保険の損益 次に、バブル期とバブル清算期に特有の金利を想定し、また保険会社が新規契約の予定 利率を迅速に市場金利に合わせ変更した場合に同保険会社の財務収支はどう変化するであ ろうか。バブル期は低金利局面(概して、大規模な金融緩和の後発生)から金利が上昇し、 ピーク後長期間にわたり、低金利局面が持続する。 日本のバブル期を参考に、①景気拡張局面を 5 年(プラザ合意からバブルピークまで約 60 5 年) 、後退局面を 10 年(失われた 10 年と呼ばれている)とし、②また、経営破綻の一要 因となった高予定利率契約の販売高を 2 割増加としたシミュレーション結果を表 5-4 に示 した。ちなみに表 5-4 の( )は販売量の変化を示し、例えば、1.2 倍は販売量が 2 割増 加したことを示す。 当初は金利上昇に伴い資産価格の下落から純資産は負となるが、その後持ち直し、6 年 目でピークとなる。その後減少するが大きなマイナスにはならない。また、利差益も 9 年 目のピークで 100 億円を超え、その後低下するものの、こちらも大きなマイナスには至っ ていない。 表 5-4 バブル期および同清算期における資産、負債、利益の変化(年払い養老保険の場 合) 表5 バブル期および同清算期における資産、負債、利益の変化(年払い養老保険の場合) 年払い 定常状態 0年(年度始) 年初資産時価(億円:A) 5,409 4,819 年初責任準備金(簿価:B) 5,314 5,314 純資産(A-B) 95 -495 利差益(配当金or内部留保、単年度値) 年 (同累積値) 累積 満期まで1年(古) 同2年 同3年 同4年 同5年 同6年 同7年 同8年 同9年 同10年(新) 年払い 年初資産時価(億円:A) 年初責任準備金(簿価:B) 純資産(A-B) 利差益(配当金or内部留保、累積値) (同累積値) 満期まで1年(古) 同2年 同3年 同4年 同5年 同6年 同7年 同8年 同9年 同10年(新) 低金利(1倍) 1年 4,964 5,314 -350 2 2 2年 3年 5,114 5,266 5,318 5,329 -204 -62 5 8 7 15 金利、販売量(対基準:倍) 4年 5,417 5,349 68 12 27 5年 5,561 5,383 179 15 42 6年 6,204 5,433 771 17 59 低金利(1倍) 平均金利(1.2倍) 7年 6,147 5,501 646 18 77 8年 6,069 5,587 482 18 95 9年 5,970 5,693 277 18 113 10年 5,852 5,820 33 -18 95 11年 5,714 5,769 -55 -22 73 12年 5,598 5,697 -100 -26 47 13年 5,507 5,600 -93 -30 17 手金利)1倍) 14年 15年(年度始) 5,444 5,409 5,474 5,314 -30 95 -33 -16 低金利(1倍) 平均金利(1.2倍) 低金利(1倍) (出所)筆者が計量モデルにより分析。 出所:筆者が計量モデルにより分析。 また、その動きを図 5-1 にまとめた。資産評価額は、7 年目まで増加するのに対し、負 債(簿価)は保有契約全体への予定利率の波及に時間がかかるため、資産額(時価)の動 きにラグを持ち変化している。11 年目から一時純資産がマイナスとなるがその額はわずか 61 である。利差益の累積額も 9 年目でピークとなり、その後金利の低下とともに減少する。 図 5-1 バブル期の金利を想定した資産、負債、利差益の動き(単位:億円) 出所:筆者が計量モデルにより分析。 以上の分析から、①金利上昇時に年払い養老保険を大量に販売している場合には純資産 が大きくマイナスになるが、景気の拡大局面では企業業績も良いことから同リスクは顕在 化しない。②金利がピークから低下する局面に移った段階で、純資産がマイナスになる事 態が発現する。それを埋めるために資本が減少するが、利差益を配当しないで内部に留保 すればこれを相殺し、この状態もしのぐことが可能である。③高定利率商品の販売の程度 により、この数字は大きく変動するため、当該保険会社が保有するソルベンシーの多寡に 応じて同商品の販売高をコントロールする必要がある。 (4)解約の経営破綻に与える影響 久保(2005)20は保険会社の経営破綻に至るまでの流れの最後は「風評による流動性リス クの顕在化」と述べ、また、植村(2008)も「不安を感じた契約者による解約などの資金 20 久保英也・前掲注 896 頁参照。 62 流出現象が起きた」としている。高予定利率契約の大量販売による(3)の事態に加え保険 会社の健全性に不安を感じた契約者の解約行動がこれを加速する。 そこで、解約が加速する場合のシミュレーションを行う。解約は保有契約の流出である が、ここではモデル構造の制約から前章と同じく新契約の減少という形で表現した。つま り、解約率の 5%増加を(3)の分析の 6 年以降の新規契約が基準ケースの 8 割となる想定 を置き、シミュレーションを行った。本来は保有契約を減じるべきであるが、現実には低 予定利率の保有契約がまずは解約されるため、新契約で調整してもその差は大きくないと 考えられる。 分析結果は表 5-5 に掲載した。解約に伴い純資産と利差益の減少幅が大きくなる。14 年 目の純資産は解約無しの場合がマイナス 30 億円に対し、解約有りの場合にはマイナス 48 億円と 18 億円の悪化がみられる。 同様に、解約率 10%の増加を新契約の 40%(2013 年度の生命保険会社計とほぼ同じの 新契約:保有契約=1:4)とし計算すると、純資産のマイナス額は 65 億円まで拡大する。 自己資本比率 3%の会社を前提とすると純資産の 3%は約 100 億円であることから、利差 損(33 億円)と併せた金額も約 100 億となり、経営に大きな影響があることがわかる。 表 5-5 解約を反映したバブル期および同清算期における資産、負債、利益の変化(年払 い養老保険の場合) 63 表6 解約を反映したバブル期および同清算期における資産、負債、利益の変化(年払い養老保険の場合) 定常状態 0年(年度始) 年初資産時価(億円:A) 5,409 4,819 年初責任準備金(簿価:B) 5,314 5,314 純資産(A-B) 95 -495 利差益(配当金or内部留保、単年度値) 年 (同累積値) 累積 満期まで1年(古) 同2年 同3年 同4年 同5年 同6年 同7年 同8年 同9年 同10年(新) 低金利(1倍) 2年 3年 5,114 5,266 5,318 5,329 -204 -62 5 8 7 15 金利、販売量(対基準:倍) 4年 5,417 5,349 68 12 27 5年 5,561 5,383 179 15 42 6年 5,521 5,414 107 0 0 13年 4,802 4,909 -108 -30 17 手金利)1倍) 14年 4,560 4,607 -48 -33 -16 低金利(1倍) 平均金利(1.2倍) 7年 年初資産時価(億円:A) 6,090 年初責任準備金(簿価:B) 5,444 純資産(A-B) 646 利差益(配当金or内部留保、累積値) 18 (同累積値) 77 満期まで1年(古) 同2年 同3年 同4年 同5年 同6年 同7年 同8年 同9年 同10年(新) 1年 4,964 5,314 -350 2 2 8年 5,954 5,474 480 18 95 9年 5,778 5,504 274 18 113 10年 11年 5,562 5,306 5,535 5,369 28 -63 -18 -22 95 73 金利、販売量(対基準:倍) 12年 5,051 5,162 -111 -26 47 15年(年度始) 4,328 4,328 0 低金利(1倍) 平均金利(1.2倍) 低金利(0.8倍) (出所)筆者が計量モデルにより分析。 出所:筆者が計量モデルにより分析。 (5)「一時払い」養老保険の影響 久保(2005)21は経営破綻前の 7 社計の業績とその以外の会社計との業績比較を行う中 で 80 年代後半のバブル期に大量の「一時払い」商品を販売し、売上高の押上げを追求して いる点が破綻会社の特徴としている。猪ノ口(2013)22は保険研究所「インシュアランス統 計号」から、1981 年度~94 年度の個人保険新契約における一時払い契約の保険料を表 5-6 のようにまとめ、「この数値の多くは一時払い養老保険と考えて差支えない」としている。 一時払い養老保険が 80 年代後半のバブル期から 1990 年のバブルピークにかけて急増した ことが分かる。この一時払い養老保険は保険会社の経営に少なからず影響を与えた可能性 が高い。 表 5-6 一時払い保険の保険料収入の推移 久保英也・前掲注 893-96 頁参照。 猪ノ口「民間生命保険会社の予定利率の変遷と生保商品動向」共済総研レポート 2013.2 4-13 頁参照。 21 22 64 表7 一次払い保険の保険料収入の推移 単位:億円 収入保険料 収入保険料 収入保険料 1981 1,816 1986 42,750 1991 22,137 1982 4,462 1987 52,703 1992 24,778 1983 6,683 1988 54,838 1993 24,060 1984 13,983 1989 50,139 1994 16,262 1985 27,646 1990 28,003 (出所)猪ノ口(2013)から抜粋。 出所:猪ノ口(2013)から抜粋。 そこで、(3)の保険商品を「年払い」養老保険から「一時払い」養老保険に替え、シミ ュレーションを行った。表 5-7 は、モデル保険会社の販売商品を「年払い」養老保険と「一 時払い」養老保険に分け、資産、負債、利差益の差を見たものである。年払い養老保険に ついては既出の表 5-3 と表 5-4 の数字を再掲載した。 まず、年払い契約のみを販売するモデル保険会社の当初資産は 5,409 億円に対し、一時 払い同値は 9,366 億円と一時払い養老保険を販売することは資産の集積効果が高いことが わかる。経営目標に総資産の増加を掲げた場合、それを達成するには一時払い養老保険の 集中販売が効率的であることを示している。また、理論計算した予定利率の水準も年払い 契約に比して、低金利局面で 0.4%程度、平均金利局面で 0.3%程度高めに設定することが 可能である。すなわち、一時払い養老保険は保険会社にとって魅力ある商品ということに なる。 しかし、リスクの観点から一時払い養老保険を見ると年払いでは景気拡大局面の 10 年 累計利差収入プラス 145 億円と景気後退局面の同収入がマイナス 135 億円と景気 1 循環の 中でほぼバランスしているのに対し、一払い養老保険は、各々20 億円とマイナス 49 億円 とマイナス額が 2.5 倍となっている。また、年始の純資産は、一時払いがマイナス 1,139 億円に対し、年払いはマイナス 495 億円などの一時払い養老保険に特化した場合、純資産 の変動幅が 2 倍以上となる不安定な財務構造を有することとなる。 しかしながら、保険会社の健全性が最も問題になる景気後退期においては、200 億円程 度のプラスの純資産を常に確保し、安定感がある。一時払い養老保険は、保険料全額をす ぐに市場金利で投資できることがリスクを低減しているとも言える。 表 5-7 一時払い契約と年払い契約との比較 65 表8 一払い契約と年払い契約との比較 定常状態 0年(年度始) 景気拡大 年払い 景気拡大 一時払い 景気後退 年払い 景気後退 一時払い 年初資産時価(億円:A) 年初責任準備金(簿価、億円:B) 純資産(A-B) 利差益(配当金or内部留保、累積値) 年初資産時価(億円:A) 年初責任準備金(簿価、億円:B) 純資産(A-B) 利差益(配当金or内部留保、累積値) 年初資産時価(億円:A) 年初責任準備金(簿価:B) 純資産(A-B) 利差益(配当金or内部留保、累積値) 年初資産時価(億円:A) 年初責任準備金(簿価、億円:B) 純資産(A-B) 利差益(配当金or内部留保、累積値) 5,409 5,314 95 9,366 9,152 214 5,012 4,907 105 7,976 7,826 150 4,819 5,314 -495 ― 8,014 9,152 -1,139 5,599 4,907 692 0 9,215 7,826 1,389 1年 3年 5年 7年 9年 10年(年度始) 4,948 5,299 -350 2 8,019 8,932 -913 0 5,463 4,922 541 -3 9,207 8,046 1,161 -1 5,169 5,232 -63 15 8,029 8,541 -513 2 5,243 4,989 254 -16 9,199 8,437 762 -6 5,310 5,134 177 42 8,033 8,225 -191 6 5,118 5,087 31 -43 9,209 8,754 455 -16 5,325 5,027 298 85 8,024 7,992 33 12 5,120 5,194 -74 -83 9,246 8,987 259 -30 5,166 4,937 229 145 7,997 7,855 142 20 5,273 5,284 -11 -135 9,317 9,124 193 -49 5,012 4,907 105 ― 7,976 7,826 150 ― 5,409 5,314 95 0 9,366 9,152 214 ― (注1) 年払いの予定利率は、低金利局面で1.18%、平均金利局面で4.38%、高金利局面で7.58%。 (注2) 一次払いの予定利率は、低金利局面で1.58%、平均金利局面で4.66%、高金利局面で7.71%。 (出所)筆者が計量モデルにより分析。 出所:筆者が計量モデルにより分析。 次に、一時払い養老保険について、バブル期とバブル清算期における資産、負債、利差 益の動きを見てみよう。既出の表 5-4 の通り、金利上昇局面では一時払い養老保険の販売 量が 1.2 倍となる想定である。金利上昇局面においては、保険料を一気に投入した後、金 利が上昇するため、純資産は大きなマイナスとなるが、この段階では経営破綻懸念から発 生する解約の増加は考えにくく(ただ、平常時には利回りの高い金融商品を求めて解約が 増える場合も考えられる)、問題は小さいと考えられる。予定利率が高い分、利差益は年払 いに比べ小さいものの数字は安定している。 このように、一払い養老保険は、負債の期間(正確にはデュレーション)に応じた債券 運用をしている限りにおいて、金利低下時に安定的な純資産の状況となり経営破綻を引き 起こす要因とはならない。 したがって、経営破綻のより大きな要因は、久保(2005)が指摘するように一時払い養 老の大量販売という行為以上に ALM(資産負債の統合管理)の欠如が最大の経営破綻誘発 要因ということになる。すなわち、①保険会社が毎年の市場金利に適合する形で予定利率 を設定、②金利変動以外のキャピタルロスを生む資産である内外の株式や不動産に投資を しない、③負債とデュレーションを合わせた債券投資を実行すれば一時払い養老保険の大 量販売も破綻リスクを高めることにはならないと言える。 66 表 5-8 バブル局面、バブル清算局面における年払いおよび一時払い契約の収益差異 表9バブル局面、バブル清算局面における年払いおよび一時払い契約の収益差異 定常状態 0年(年度始) 年初資産時価(億円:A) 5,409 4,819 景気拡大 年初責任準備金(簿価:B) 5,314 5,314 <年払い> 純資産(A-B) 95 -495 利差益(配当金or内部留保、単年度値) 年 (同累積値) 累積 年初資産時価(億円:A) 9,366 8,014 景気拡大 年初責任準備金(簿価:B) 9,152 9,152 <一時払い> 純資産(A-B) 214 -1,139 利差益(配当金or内部留保、単年度値) (同累積値) 1年 4,964 5,314 -350 2 2 8,146 9,059 -913 0 0 2年 5,114 5,318 -204 5 7 8,285 8,988 -703 1 0 3年 5,266 5,329 -62 8 15 8,429 8,940 -511 2 0 4年 5,417 5,349 68 12 27 8,579 8,917 -339 4 0 5年 5,561 5,383 179 15 42 8,733 8,920 -187 6 1 6年 6,204 5,433 771 17 59 10,170 9,044 1,125 8 1 年払い 7年 年初資産時価(億円:A) 6,147 景気後退 年初責任準備金(簿価:B) 5,501 <年払い> 純資産(A-B) 646 利差益(配当金or内部留保、累積値) 18 (同累積値) 77 年初資産時価(億円:A) 10,171 景気拡大 年初責任準備金(簿価:B) 9,176 <一時払い> 純資産(A-B) 995 利差益(配当金or内部留保、単年度値) 2 (同累積値) 11 9年 5,970 5,693 277 18 113 10,163 9,465 698 3 16 10年 5,852 5,820 33 -18 95 10,153 9,623 529 -1 14 11年 5,714 5,769 -55 -22 73 9,979 9,592 387 -2 12 12年 5,598 5,697 -100 -26 47 9,813 9,531 281 -4 8 13年 5,507 5,600 -93 -30 17 9,654 9,439 215 -5 3 14年 5,444 5,474 -30 -33 -16 9,505 9,313 192 -6 -3 8年 6,069 5,587 482 18 95 10,169 9,317 853 2 13 15年(年度始) 5,409 5,314 95 9,366 9,152 214 (出所)筆者が計量モデルにより分析。 出所:筆者が計量モデルにより分析。 4.結語 1990 年代後半から 2000 年にかけて日本で発生した生命保険会社の連続経営破綻の要因 分析については多くの重要な先行研究があるが、定性的判断を主眼としたものが多く、定 量的にその要因を分析することが求められている。 本章では資産と負債を同時決定する理論モデルを用いた分析により、新たな知見を得た。 すなわち、一時払い養老保険の大量販売が経営破綻を引き起こすというのは一面では正し いが、ALM を的確に運営している場合にはむしろ破綻防止のバッファーとなる可能性が ある。また、解約率の 5%程度(新契約換算 20%の減少)の増加では解約による経営破綻 の誘発効果はさほど大きくないが、解約率が 10%の増加(新契約換算でで 40%の減少) になると、その効果は急激に大きくなることもわかった。 一方で、この理論モデルでは経営破綻要因のすべてを説明することは難しいのも事実で ある。今後、理論モデルの更なる改善に努め、より鋭角的に生命保険会社の保険商品戦略 や投資戦略が経営の健全性に与える影響を明らかにしていきたい。 67 第6章 中国に適合する健全性監督のあり方 1990 年代後半に連鎖的な経営破綻に直面した日本の経験や第 3 章から 5 章の分析で得 た示唆を生かし、中国と日本に適合した健全性指標と監督のあり方を検討してみよう。 1.中国保険会社の健全性リスクと監督 世界の生命保険会社の経営破綻の原因を分析する研究は数多く存在するが、生命保険会 社の経営破綻要因を考察する際には大きく 2 つの視点がある。第 1 は、保険会社の資産運 用の失敗、経営者の判断ミス、商品設計の甘さなどの内的要因とマクロ経済、社会環境の 変化や想定を超える巨大災害の発生などの外的要因という分け方である。第 2 は、規制緩 和に伴う競争の激化がもたらす単発の保険会社の経営破綻と大きなマクロ経済、金融環境 の変化が引き起こす保険会社の連鎖破綻という分類である。 中国においては 1990 年代以降、保険会社の経営破綻は報告されていないが今後、保険 市場の急拡大とともに破綻が発生する可能性は高い。そこで、先進各国における生命保険 会社の経営破綻に至る動きを丁寧に見ることにより、中国における生命保険業の経営破綻 要因をある程度抽出することができる。 まず第1に、監督制度の歴史的考察から生命保険会社の経営破綻要因を考えてみよう。 1990 年代前半までは、監督当局(以下、中国保監会と呼ぶ)による保険会社の監督管理体 系はまだ完成されていなかったため、高めの予定利率の設定がなされた可能性が高い。今 後、金利の長期低下局面を迎えた場合、予定利率と資産運用利回りが逆転する「逆ザヤ」 現象が発生する可能性が高い。この時代には保険契約の価格(予定利率や配当金)は各保 険会社が自由に決めることができた。保険会社は自らの市場占有率の拡大を目的に、短期 間に大量の高利率保険契約を販売した。23その後、1990 年代の後半に、人民銀行(中国の 中央銀行)が数回続けて政策基準金利を引き下げたため、比較的短期の定期預金などに投 資をしていた保険会社は資産運用利回りが急速に低下し大きな損失を被った。中国保監会 は 1999 年 6 月 10 日に「生命保険契約予定利率を調整する緊急お知らせに関する」24によ り、中国人寿保険公司など生命保険会社への予定利率が年複利 2.5%を超えない水準に抑 中国資本証券ネット http://www.ccstock.cn/stock/insurance/2013-0711/A1252943.html 24 「关于调整寿险保单预定利率的紧急通知(保监发[1999]93 号) 。 23 68 えるよう「指令」を出し、無謀な予定利率の引き上げ競争を抑制した。 この規制が実質的に解除されたのは、2010 年 6 月 28 日に中国保監会が発出した「生命 保険予定利率関連事項のお知らせに関する」25であり、これにより、時期を明確にはしな いものの、今後、保険の予定利率の設定を自由化する考えを生命保険会社に伝えた。この 動きを反映して、2013 年 8 月 2 日に、中国保監会は「中国保監会普通型生命保険費率政策 改革をスタート」26により、伝統型の個人生命保険に使用する予定利率の上限 2.5%という 規制を撤廃した。また、養老年金などに用いる法定準備金の評価利率は、最高利率が一般 的な保険より 15%高くなることを認めた。ただ、一方で、法定責任準備金の評価に用いる 予定利率(日本の標準予定利率に相当)は各契約の予定利率と 3.5%との小さい方とするこ とを決めた。 このため、中国では標準責任準備金の利率が高くなりやすい状況が続いている。 また、これに加え、資産運用の規制緩和と自由化が急速に進み資産運用リスクを高めて いる。中国保監会の「2014 年 1~9 月の保険統計データ報告」27によれば、中国の保険会 社の資産別運用状況は、銀行の定期貯金と債券を合わせると全体の約 7 割である。株式や 証券投資基金などへの投資は 1 割程度に抑えられており、長期の固定利率負債を有する生 命保険会社の資産運用としては合理性が高い。しかしながら、中国国務院は、2014 年 8 月 10 日に発出した「現代保険サービス業の加速発展に関する意見」28において、保険業の投 融資や、株式、債券、投資信託により集めた民間資金による中国のインフラ整備や新しい 産業の発展を支援することを呼び掛けている29。保険業を中国の発展に必須の重要な業界 と認める一方、保険業が有する資産運用リスクへの配慮が乏しいように思われる。国策に より動くことの多い中国の保険会社が、リスク過多の投資へ舵を切る可能性は否定できな い。相対的に高い予定利率の設定が可能な状態で株式などのリスク性資産が生命保険会社 25 27 「关于人身保险预定利率有关事项的通知(征求意见稿)(保监厅函〔2010〕308 号)。 「中国保监会启动普通型人身保险费率政策改革」 「2014 年 1-9 月保险统计数据报告」 28 「国务院关于加快发展现代保险服务业的若干意见(国发〔2014〕29 号)」 26 29 原文は「(十三)充分发挥保险资金长期投资的独特优势。在保证安全性、收益性前提 下,创新保险资金运用方式,提高保险资金配置效率。鼓励保险资金利用债权投资计划、股 权投资计划等方式,支持重大基础设施、棚户区改造、城镇化建设等民生工程和国家重大工 程。鼓励保险公司通过投资企业股权、债权、基金、资产支持计划等多种形式,在合理管控 风险的前提下,为科技型企业、小微企业、战略性新兴产业等发展提供资金支持。研究制定 保险资金投资创业投资基金相关政策。」 69 のポートフォリオにおいて増加すれば、保険会社の連鎖破綻リスクは増大する。 2.中国生保会社健全性指標の選択について 中国の保険業界は日本の 1970 年頃の市場シェア至上主義に近い状況にあり、気付かぬ 間にリスクが蓄積し、日本で起こったような風評に端を発した解約の急増により、多数の 保険会社が経営破綻に追い込まれる可能性が残る。個々の保険会社の健全性監督も重要で はあるが、連鎖経営破綻を防止する対応を考える必要がある。 そこでこの章では、 ① 連鎖倒産を惹起する経済金融環境と販売戦略を設定し、その条件下でモデル保険会社 の健全性の変化を観察、 ② 中国の破綻処理関連法の整備状況の考察、 ③ 健全性指標の水準に応じた「早期是正措置」の提案、 ④ 日中の健全指標と健全性監督の今後の方向を検討、 の順で議論を進めていく。 前1.で述べたように、予定利率の設定条件や標準責任準備金制度、そして資産運用の 規制緩和などの環境により、個別保険会社の単独破綻や業界全体で連鎖経営破綻が起こる 可能性がある。中国の保険会社は成長力が高いこともあり、リスクに見合う十分なソルベ ンシーを持たせる健全性指標とそれを通じた監督は、日本より中国の方がより必要性が高 いと考えられる。 多くの国では、監督官庁は保険会社の健全性指標の数字を参考に、健全性に課題のある 会社には早期に是正措置をとったり、リスクが特に高い会社には業務の停止命令を出した りする。 健全性指標について、中国では現在、第 2 世代のソルベンシー基準の開発を進めている が、これは、EU のソルベンシーⅡの指標構造と似た構造とされている。ただ、EU ソルベ ンシーⅡ指標は、本稿第 3 章で説明したとおり、資産も負債も時価評価されることから、 指標特性をよく勘案した上での導入と監督による適正な運用が重要となる。 そこで、日本のバブル期とその後の清算期の金利局面の変化(15 年間)と一時払い養老 保険の増加を想定した健全性シミュレーションを行った。中国の生命保険の商品構成は貯 蓄型の養老保険が主であるため、今回の保険会社モデルは日本よりフィットすると考えら 70 れる。 第 5 章の表 5-5 と同じ想定であるが、低金利局面から 5 年かけ低金利局面から平均金利 局面に変化し、その後 10 年間は金利低下局面に戻る。平均金利局面では金利上昇を好機 と捉えた保険会社が一時払い養老保険を拡販し、その販売高は 1.2 倍ととなり、その後の 金利低下局面では、逆に解約率が 5%増加(新契約の 2 割相当の契約を喪失)する想定で ある。このシミュレーションで算出するのは、①ソルベンシーⅡ基準における時価の負債 額(最終推計値+リスク・マージン)とリスク総量を表す SCR とその比較対象としての、 ②ソルベンシー・マージン基準におけるリスク総額である。この 2 指標を用いて、ソルベ ンシー余裕度を算出する。シミュレーション結果は表 6-1 に示した。 6 年目の金利のピークアウトする局面で 2 つの健全指標はまったく異なる動きを行う。 第 4 章に 2.で示した結論と同じ動きである。すなわち、金利の低下局面ではソルベンシ ーⅡでは、負債は時価評価で膨張するため、ソルベンシー余裕度は急低下する。その後も 日本で破綻が発生した金利のピークアウトから 10 年目まで、同指標はマイナスの指標を 出し続ける。ただ、金利の変化でこれだけの同余裕度の水準変化があると監督サイドも保 険会社の経営も指標の動きをリスク管理に生かしにくいと考えられる。 一方、ソルベンシー・マージン基準では、ソルベンシー余裕度は逆に急上昇し、その後 緩やかに低下していくことから、保険会社のリスクの上昇を把握しきれていない。ただ、 数字の動きは緩やかで、リスクがゆっくり高まっていること示すことから、安定感のある 指標として、監督や保険会社の経営には使いやすい。すなわち、ソルベンシーⅡ指標は健 全性リスクの増大を先行的把握し、警告を発する「早期警戒指標」として、ソルベンシー・ マージン基準については「安定的なリスク評価指標」と位置づけることが考えられる。 表 6-1 日本バブル期を想定した環境下での 2 つの健全性指標の動き 71 表6-1 日本のバブル期を想定した環境下での2つの健全性指標の動き 第5章の表6と同じ条件 定常状態 年初資産時価 年初準備金簿価 毎年 配当金 累積(留保) 時価負債(SⅡ) 最優推計 リスクマージン SCR(SⅡ) リスク総額(SM) SⅡ余裕度 SM余裕度 SⅡ余裕度+配当留保 SM余裕度++配当留保 年初資産時価 年初準備金簿価 毎年 配当金 累積(留保) 時価負債(SⅡ) 最優推計 リスクマージン SCR(SⅡ) リスク総額(SM) SⅡ余裕度 SM余裕度 SⅡ余裕度+配当留保 SM余裕度++配当留保 0年(年度 始) 1年 2年 3年 4年 5年 6年 4,964 5,314 2 2 4,474 4,406 68 199 104 2.464 -3.360 2.476 -3.338 5,114 5,318 5 7 4,608 4,536 72 208 112 2.439 -1.822 2.474 -1.756 5,266 5,329 8 15 4,747 4,672 76 217 122 2.394 -0.510 2.465 -0.383 5,417 5,349 12 27 4,894 4,814 79 226 135 2.312 0.502 2.432 0.703 5,561 5,383 15 42 5,047 4,965 82 236 150 2.180 1.188 2.360 1.469 6,185 5,414 17 59 6,209 6,167 43 124 176 -0.199 4.379 0.275 4.714 8年 9年 10年 11年 12年 13年 14年 15年(年 度始) 5,954 5,474 18 95 6,156 6,122 34 108 199 -1.862 2.416 -0.986 2.892 5,778 5,504 18 113 6,093 6,063 30 101 210 -3.114 1.305 -2.001 1.842 5,562 5,535 -18 95 6,007 5,980 27 96 221 -4.645 0.125 -3.656 0.555 5,306 5,369 -22 73 5,700 5,674 26 91 200 -4.323 -0.315 -3.526 0.049 5,051 5,162 -26 47 5,370 5,344 25 88 177 -3.617 -0.625 -3.086 -0.361 4,802 4,909 -30 17 5,017 4,991 26 86 151 -2.496 -0.715 -2.296 -0.600 4,560 4,607 -33 -16 4,643 4,616 27 85 121 -0.975 -0.392 -1.159 -0.520 4,328 4,328 0 0 4,249 4,220 29 85 89 0.924 0.000 0.924 0.000 5,409 5,314 4,819 5,314 5,312 5,275 37 106 111 0.924 0.860 4,347 4,284 64 189 99 2.492 -5.001 7年 6,090 5,444 18 77 6,194 6,156 38 116 188 -0.894 3.445 -0.233 3.853 (出所) 筆者が作成した軽量モデルによるシミュレーション値。 (注) 配当留保は、毎年配当を内部留保し満期時一括配当としたもの。 (注 1)配当留保は、毎年配当を内部留保し満期時一括配当としたもの。 (注 2)余裕度は第 3 章のソルベンシー余裕度を指す。 出所:筆者が作成した計量モデルによるシミュレーション値。 この 2 つの指標は役割分担が可能で、その指標の有効性は、実は中国でも、日本でも同 じである。すなわち、日本と中国共に 2 つの指標をその役割に応じ、共に備えることが重 要である。そして、3 章、4 章、5 章で分析してきたとおりその指標の特性を熟知すること が重要である。健全指標は「早期警戒指標」に EU のソルベンシーⅡに、 「安定的なリスク 指標」にソルベンシー・マージン基準を骨格に位置づけ、各指標の持つリスクウェートな どを両国の保険市場の状況に合わせ変化させるという形が望ましいと考える。 3.中国生命保険会社の破たん処理のあり方について 健全性指標体系としては、日中とも基本構造は同じで 2 つの指標を持ち込むことが望ま しいが、これで健全性監督のすべてが解決するわけではない。健全性監督には、①健全性 72 指標とそれに基づく早期是正措置、②経営破綻生保の認定と破綻処理、③契約者保護制度 (細部は不明だが、中国にも存在する)の運営の 3 つからなる。①は日本のソルベンシー・ マージン規制を構成する早期是正措置を活用することが考えられるので、ここでは、②の 経営破綻生保の認定と破綻処理の流れを両国の保険業法、破産法から見てみよう。 まず、日本の生命保険会社が破綻した場合には「保険業法に基づく手続き」と「金融機 関などの更生手続きの特例などに関する法律(更生特例法)」に基づく会社更生手続」のど ちらかにより更生手続が進められる。 「保険業法に基づく手続」は監督官庁の命令に基づいて進められる手続きである。監督 官庁は、まず破綻保険会社の全部または一部の業務について業務停止を命令し、保険管理 人による業務及び財産の管理を命じる処分を行う。保険管理人は、破綻保険会社の業務及 び財産を調査、査定、管理しながら、保険契約の移転に向けた業務・財産に関する計画を 作成する。その計画は監督官庁の認可を経て、保険契約の移転と継続が図られる。経営破 綻した日本の東邦生命、第百生命、大正生命の破綻はこの行政手続きにより処理を行った 30。表 6-2 に示した通り、この破綻処理に伴い生命保険保護機構から資金援助があった。 一方、 「更生特例法に基づく会社更生手続」は裁判所の監督の下進められる更生手続きで ある。 「更生特例法に基づく会社更生手続」を採用する場合には、まず、事業継続困難と判 断した生命保険会社は、更生手続きの開始を裁判所に申し立てる(保険契約者等の保護に 欠ける事態を招くおそれがあると認められる場合は、監督官庁が申し立てることも可能)。 この申立てを受けた裁判所は、手続を開始すべきと判断した場合、開始決定と同時に更生 管財人を選任する。そして更生管財人は、破綻保険会社の業務・財産を管理、調査、査定 しながら、保険契約の移転等を含む計画を作成し、債権者等の決議を経て、裁判所に計画 の認可を求める。計画が認可された後は、この計画に基づいて保険契約の移転と継続が図 られる。千代田生命、協栄生命、東京生命及び大和生命の破綻時には、この更生特例法に 基づく会社更生手続きにより処理が行われた(同表 6-2)。 最近の事例はすべて更生特例法による手続きとなっている。日本では、裁判所を通じ中 立公正な立場から利害関係のない第三者が債権者と調整しながら破綻処理を進め、その過 程で、監督当局や生命保険協会などが協力するという形がのぞましいとしている。 ただ、中国は司法制度や法制そのものが異なるため、この形がよいのかを慎重に見極め 30 一番早くに破綻した日産生命は既契約管理業務に特化し、再開しなかったため、特別 なケースと扱ってもありうると考えられる。 73 る必要がある。そこで、中国保険法など保険会社の経営破綻の関連法制を少し丁寧に調査 してみる。 表 6-2 日本の生命保険会社の破綻処理 表 6-2 日 本 の 生 命 保 険 会 社 の 破 綻 処 理 日産生命 (相) 手続き 東邦生命 (相) 第百生命 (相) 営業権: 暖簾代 援助額 受皿会社 千代田生命 (相) 協栄生命 (株) 保険業法による手続き H9.4.25業務 H11.6.4業務 H12.5.31業 破綻処理 停止 停止 務停止 の開始日 同日管理命 H11.6.5管理 H12.6.1管理 令 命令 命令 3,029 6,500 3,177 債務超過 資産 負債 大正生命 (株) 18,227 21,256 H9.5末時点 21,900 28,400 H11.9末 13,000 16,176 H12.9末 1,232 2,400 2,000 プルデンシャ ル 3,663 AIGエジソン 責任準備 金等の削 減 無 引下後の 予定利率 2.75% 大和生命 (株) 更生手続き H12.8.28業 務停止 H12.8.29管 理命令 65 H12.10.9開 H12.10.20開 始申立 始申立 H12.10.13開 H12.10.23開 始決定 始決定 5,950 6,895 H13.3.23開 始申立 H13.3.31開 始決定 731 H20.10.10開 始申立 H12.10.17開 始決定 643 1,949 2,592 H20.10.17 1,545 1,910 H12.8末 22,330 28,280 H12.10.13 37,250 44,145 H12.10.23 6,900 7,632 H13.3.31 1,470 70 3,200 3,640 325 32 1,450 267 0 0 マニュライフ 大和生命 AIGスター ジブラルタ 0 T&Dフィナン シャル 277 プルデンシャ ル 92%に削減 (個人年 金、財形保 険は100%) 無 90%に削減 (高予定利 率契約は法 定最大率) 1.75% 2.60% 1.00% 90%に削減 90%(個人年 90%(個人年 90%(個人年 (個人年 金、財形保 金、財形保 金、財形保 金、財形保 険などは 険などは 険などは 険等は 100%) 100%) 100%) 100%) 1.50% (単位:億円) 東京生命 (相) 1.00% 1.00% 1.50% 6.5年間(初 8年間(初年 10年間(初 9年間(初年 10年間(初年 8年間(初年 10.5年間(初 10年間(初 早期解約 年度15%、以 度15%、以降 年度15%、以 度15%、以降 度20%、以降 度15%、以降 年度15%、以 年度20%、以 控除 降毎年2%) 毎年2%) 降毎年2%) 毎年2%) 毎年2%) 毎年2%) 降毎年2%) 降毎年2%) H9.10.1 H12.3.1 H13.4.2 H13.3.31 H13.4.20 H13.4.3 H13.10.19 H21.4.30 救済実施 株式会社化 株式会社化 日 契約移転 契約移転 契約移転 契約移転 営業再開 営業再開 し営業再開 し営業再開 (出所)金融庁(2008)の資料等より作成。 出所:金融庁(2008)の資料等により作成。 (1)中国保険会社破綻の関連法律の考察 ⅰ.中国保険会社破綻の関連法律 中国の保険会社の経営破綻に関する法律は主に「中華人民共和国保険法」31(以下「中国 保険法」)と「中华人民共和国企業破綻法」32(以下「企業破綻法」)である。 「企業破綻法」の第 2 条に「企業法人は期限までに借金を返済できない、しかも全資産 を用いても負債を返済することできない場合、もしくは明らかに返済能力が欠けている場 「中華人民共和国保険法」 (≪中华人民共和国保险法≫)は 2009 年 2 月 28 日に修正 され、同年 10 月 1 日から施行した。 32 「中華人民共和国企業破綻法」 (≪中华人民共和国企业破产法≫)は 2006 年 8 月 27 日通り、2007 年 6 月 1 日から施行した。 31 74 合には本法の規定に基づき負債を清算する。また、企業法人は以上の状況であっても、本 法の規定に基づき企業を再生することができる。」と規定されている。とりわけ、同第 134 条には、 「商業銀行、証券会社、保険会社など金融機関が本法の第 2 条の状況にあたる場合 には、国務院保険監督管理機関は人民法院(裁判所)に同金融機関の再生もしくは破綻清 算を申請することができる。国務院保険監督管理機関は法律に基づき経営リスクが顕在化 した金融機関に対する更生などの措置をとる場合には、人民法院に同金融機関が被告もし くは債務者となる民事訴訟や業務執行を停止することを申請できる。金融機関の経営破綻 の認定や更生を行う場合には、国務院は本法及び他の関連法規に基づき、進めることがで きる。」としている。 また、 「中国保険法」の第 90 条に「保険会社は「中華人民共和国企業破綻法」の第 2 条 に規定された状況に陥った場合、国務院保険監督管理機関の同意を得て、保険会社もしく はその債権者は法律に基づき人民法院に当該保険者の再生、和解もしくは破綻清算を申請 することができる。そして、国務院保険監督管理機関も法律に基づき人民法院に同保険会 社の再生や破綻清算の申請を提出することができる。」と規定されている。第 149 条には 「整理統合した保険会社や後継の保険会社も「企業破綻法」の第 2 条の状況に当たる場合、 国務院保険監督管理機関は法律に基づき人民法院に同保険会社の再生や破綻・清算の申請 を提出することができる。」とも規定されている。 そして「中国保険法」の第 150 条には、「①法律に反し経営免許を剥奪された保険会社 や、②ソルベンシー指標の水準が国務院保険監督管理機関に定めた基準よりかなり低い場 合や、③保険市場秩序を大きなダメージを与え、公共の利益を害する場合には、国務院保 険監督管理機関は免許の取り消し処分や公示を行うことができる。また、法律に基づき清 算チームを結成し、当該保険会社の清算を行う」としている。 なお、中国保険法の体系に深入りすることは論点がずれるためここで論じることは避け るが、付表 2 にその法体系を示している。 以上から、保険会社の経営破綻の認定は、①債務超過、②法令違反、③健全性基準によ る健全性の評価、の 3 つであることがわかる。また、保険会社からの破綻申請や解散につ いては、国務院保険監督管理機関の許可を得ることを前提とし、生命保険業務を有する保 険会社については、新会社の新設及び合併以外の清算はできないと規定している。すなわ ち、保険会社の破綻処理は、裁判所への申請についても、保険監督管理機関しか認めない としている。 75 以上から保険会社、とりわけ生命保険会社の破綻処理は、保険監督機関がそのすべてを 行うことになっている。本来であれば、保険会社の破綻認定基準の明確化が望まれる。特 に、上記の③の健全性指標との関係で破綻認定を行う場合には、基準の客観性と公表がの ぞましい。健全性基準ついて定めた「保険会社ソルベンシー管理規定(2008 年)」や「保 険補償基金管理方法(2008 年)」などにも同指標と監督方法・破綻認定との関係は明確に 規定されていない。 そこで、保険会社が債務超過状況であるかどうかは外部からはうかがい知れないに加え、 日本でも破綻認定に純資産基準という金融庁の資産と負債を査定し、純資産が負の場合破 綻とする規定があることから、債務超過要件については監督官庁が行うことには異議はな い。ただ、健全性基準に基づき判断する部分は、日本の早期是正措置のような公開された 基準が必要となろう。 日本の保険業法などで定められているソルベンシー・マージン比率を基準とした健全性 早期是正措置に本稿第 3 章から 5 章で分析した内容を織り込み、中国に適合する中国版早 期是正措置を表 6-3 に提案した。中国の早期是正措置については、第 2 章の 2.で記述した ように第1次のソルベンシー規制の中で触れられているものの、その細部は公表されてい ない。重要な点は第 2 区分の「監督に伴う措置の内容」の⑨と⑩である。この状況にある 保険会社は高予定率の保険商品の大量販売や無理をした資産運用を抱えている可能性が高 いため、この基準を追加した。 表 6-3 中国におけるソルベンシー・マージン比率に基づく早期是正措置案 76 区分 ソルベンシーマージン 比率 対象外 200%以上 第1区分 100%から200%未満 監督に伴う措置の内容 特になし 経営の健全性を確保するための合理的と認められる改善計画の 提出とその実行命令 次に掲げる保険金等の支払能力の充実に資する措置 第2区分 0%から100%未満 ①支払能力の充実に係る計画の提出、実行 ②配当又は役員賞与の禁止又はその額の抑制 ③社員配当又は契約者配当の禁止又はその額の抑制 ④新規契約の予定利率の変更 ⑤リスクの高い投資行動の抑制 ⑥事業費の抑制 ⑦一部の営業所又は事務所における業務の縮小 ⑧子会社等の株式又は持分の処分 ⑨一括払い商品を中心としたALMの徹底 ⑩ソルベンシーⅡのソルベンシー余裕度による早期警戒 第3区分 0%未満 期限を付した業務の全部又は一部の停止の命令 出所:日本の保険業法第 132 条第 2 項、第 204 条第 2 項、第 230 条第 2 項を参考に筆者 が加筆修正。 すなわち、日本と中国は保険市場の発展段階の差はあるものの、経営破綻が 1 社でとど まらず連鎖的に広がる状況は基本的に同じである。その中で、日本は 1990 年代後半にす でに大きな連鎖破綻を経験しているため、その可能性がやや低いとは言える。また、金融 庁による保険監督も監督基準がかなり明確であり、保険会社の自主的なリスク管理手法を 認めるなど現在の監督体制で大きな問題はない。 しかし、中国では司法制度や保険監督に閉鎖的な部分が見られることから、その透明性 を高める意味からも健全指標と監督が連動した姿が望ましい。そこで、健全性指標は、日 中とも前述のとおり、 「早期警戒指標」として EU のソルベンシーⅡを、 「安定的なリスク 管理指標」にソルベンシー・マージン基準を位置づけ、とりわけ、中国では後者を表 6-3 で示した早期是正措置と連動させ、透明性を高めた監督を行うことが重要である。 77 おわりに 日本で 2000 年前後に起きた生命保険会社の連続 7 社の経営破綻は、日本の国民の 17% に影響が出るほど、そのインパクトは大きかった。これを機に、健全性指標の見直しや破 綻時に契約者を守る契約者保護機構の改廃、そして、保険会社自身のリスク管理手法を重 視する監督スタイルへの移行などがあった。それは、実際に生命保険会社の経営破綻とい う大きなコストを支払った対価をとして得た貴重な経験である。この日本の「連鎖経営破 綻」という教訓と EU で実施が迫る新しい健全性指標であるソルベンシーⅡを組み合わせ ることにより、生命保険市場の急拡大が進む中国をはじめとするアジア諸国の国民を守る 健全性監督の枠組みを進化させることに貢献できる。 ただ、その前提として、現行の健全性指標と新しいソルベンシーⅡの指標特性の差を十 分検証し、その国の市場や監督体制に応じて修正する必要がある。健全性指標には「絶対 的に正しい」ものは存在しない。そのためには、今回示したような資産と負債が連動して 動くシミュレーションモデルによる多様な分析が必要になる。従来見られた資産側だけの モデルや負債側だけのモデルでは、真に経営破綻に至るプロセスが表現できない。また、 通説とされる破綻要因やそこに至る過程も一面では正しいものの、ある種の思いこみや影 響の大きさに曖昧さがあることも多い。 保険監督は、保険市場や金融市場が時事刻々刻変化する中で、保険会社の健全性をモニ ターし続け、異変があった場合には早期にその影響を極小化する手段を講じなければなら ない。この際、医療行為と同じく 100%確実な対処法はないものの、それまでに積み上げ た経験値や計量的なショミレーション結果などを総合的に勘案し対応する必要がある。 今回の資産と負債を統合した保険会社のモデルによるシミュレーションは、その要求に 初歩的ではあるものに応えるものである。それは、今後の日本に対する示唆を示すと同時 に中国などアジア諸国の保険監督に示唆を与えることができる。中国の生命保険市場は、 日本の連続的な経営破綻を生んだ 1990 年代の市場と似ている部分がある。すなわち、保 険会社の市場シェア重視の経営行動、リスク管理概念の不足、規制緩和や自由化の更なる 進展、監督方法の不透明さなどを抱えており、今回の計量分析や保険監督への提案は、中 国の新しい保険監督を考える際の一助となれば幸いである。 ただ、残された課題もある。それは複雑なシミュレーションを多様に行えるようなモデ ル設計としたため、保険会社の経営破綻の因子でありながら、割愛した部分があることで 78 ある。それは第1に、日本の個人年金など長生きリスクへの対応が十分でないことである。 推計には現在の死亡表を用いているがこれが大きく変動する可能性があり、死亡率変化の 可能性をモデルに持ち込むことが重要である。第 2 に、資産運用について、基本的には債 券投資による負債期間とのフルマッチングを前提としたが、現実には資産側のデュレーシ ョンは負債のデュレーションに比べ相当短いと考えられている(ただ、これらは解約や失 効によりバランスが取れているとされている)。また、今回のモデルでは株式の収益率だけ をリスクとして組み込んだが、その分散をどうこのモデルに入れるかは重要な改善ポイン トとなる。第 3 に事業費の構造である。固定費の大きさが業績の下押し要因(新契約の販 売不振、解約の増加、高予定利率契約の増加など)の顕在化時に問題となることは容易に 想像されるが、事業費(費差領域)の構造をモデルに反映する必要があろう。健全性が高 いという意味の中には、自己資本(ソルベンシー)が厚いことやリスク総量が少ないとい うことに加え、収益力が高いという点も加味する必要があるからである。 このような課題を今後一つ一つ解決しつつ、政策決定に資するシミュレーションモデル としての完成形に近づけていくことを目指すと共にその過程で生み出される示唆を現実の 保険会社監督に提言に繋げたいと考えている。 なお、本稿の完成には多くの方々のお力添えやご厚意に浴した。副査をお引き受けいた 滋賀大学大学院経済学研究科教授で証券分野に詳しい二上季代司先生やファイナンスの専 門家でモデルの理論的枠組みに的確にアドバイスいただいた同楠田浩二先生にこの場を借 りてまずお礼を申し上げたい。また、アクチュアリーで数理サポートをいただいた農協共 催研究所の猪口勝徳氏、外部評価委員をお勤めいただき的確なアドバイスをいただいた保 険論に詳しい神戸大学経営学研究科の山﨑尚志准教授にもお世話になった。 そして、何よりも本稿の完成に向け、主査として論文全体を統括いただき、細部から骨 太の理論展開まで多くの丁寧なご指導をいただいた滋賀大学大学院経済学研究科教授の久 保英也氏には格別のお礼をこの場を借りて申し上げたい。 79 参考文献 【主要参考文献】 [1]CEIOPS(2010-①)“QIS 5 Risk-free interest rates-Extrapolation method” Solvency II Calibration Paper、CEIOPS-SEC-40-10、April 2010,pp.1~36. 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[39]中国保险监督管理委员会关于印发《保险公司最低偿付能力及监管指标管理规定(试行)》 的通知 保监发[2001]53 号 http://china.findlaw.cn/fagui/p_1/222355.html。 82 [40]中国保险监督管理委员会关于试行《保险公司最低偿付能力及监管指标管理规定》有关 问题的通知 保监发[2001]101 号 http://www.chinalawedu.com/news/1200/21829/21838/21977/2006/3/ji25951816551113 6002540-0.htm。 [41]中国保険監督管理委員会《保险公司偿付能力额度及监管指标管理规定》保监会令(2003) 1号 http://www.circ.gov.cn/web/site0/tab5224/info19525.htm。 [42]中国保険監督管理委員会《保险公司偿付能力管理规定》保监会令(2008 年第 1 号) http://www.circ.gov.cn/web/site0/tab5224/info76427.htm。 [43]曹顺宏(2009)改革开放三十年中国保险业法制化进程 http://www.china.com.cn/economic/txt/2009-05/25/content_17832459.htm。 [44]万峰(2010.6) 「平稳推动保费结构由趸缴向期缴转变」 http://money.163.com/10/0618/15/69FKB1TS00254IIM.html [45]中国保险监督管理委员会 第二代偿付能力制度建设(2012-2014) http://www.circ.gov.cn/web/site0/tab4566/。 [46]向日葵保险网「2011 保费增长谜案:原保费收入内涵大不相同」(2012.5) http://www.xiangrikui.com/licai/zhuanjia/20120531/227223.html。 [47]吴岚(2012.6) 「中国第二代偿付能力监管体系整体框架」 http://wenku.baidu.com/link?url=LAa0KORk9VTVUiOZI5bAet18too3R62qujnSmdmQb9muXnOG3k9OSpdvQ6PNKK2ZhW -dXicKLdLHOhRc5BxRxFFa10sfDC8o66cTqPRPQu。 [48]中国保監会《中国第二代偿付能力监管制度体系整体框架》答记者问(2013.5) http://www.circ.gov.cn/web/site0/tab5207/info244156.htm。 83 付表 1 シミュレーションプログラム シミュレーションプログラム構造概要は以下のとおりである。 表1 保険会社基礎モジュール(低、平均、高) 表2 保険会社準備金理論流 れいモジュール(低、平均、高) 表5 金利リスク基礎計算 モジュール(低、平均、高) 表3 保険会社準備金実際流 れモジュール(低、平均、高) 表6 金利リスク債券時価 評価基礎計算モジュール (低、平均、高) 表4 保険会社定常状態資産ポートフォ リオ流れいモジュール(低、平均、高) 表12 準備金簿価価値計算モ ジュール(低、平均、高) 表9 保険金キャッシュフローモ ジュール(低、平均、高) 表10 保険料キャッシュフローモ ジュール(低、平均、高) 表7 金利リスク債券時価評価計 算モジュール1(低、平均、高) 表11 SCR計算 モジュール(低、 平均、高) 表13 健全性指標計算モジュール(低、平均、高) 表14 動態分析計算モジュール1 表15-①② 動態分析計算モジュール2 表16 動態分析計算モジュール3 債権現在価値計算① 表17 動態分析計算モジュール3 債権現在価値計算② 表13 健全性指標計算モジュール(動態) 84 表8 金利リスク債券時価 評価計算モジュール2(低、 表1 保険会社基礎モジュール(低金利局面の例) 年次 年齢 死亡率 年初生存者数 年死亡者数 参保人数 支払い人数 収入保険料 年中死亡契約者 年末保険金 年始責任準備金 年末責任準備金 1 30 0.69 100000.00 69.00 100000.00 100000.00 9407186498 69.00 69000000.00 9407186498 9448832481 2 31 0.7 99931.00 69.95 99931.00 99931.00 9400695539 69.95 69951700.00 18849528020 19001281775 3 32 0.73 99861.05 72.90 99861.05 99861.05 9394115052 72.90 72898565.26 28395396828 28656480862 4 33 0.76 99788.15 75.84 99788.15 99788.15 9387257348 75.84 75838993.80 38043738210 38415364229 5 34 0.79 99712.31 78.77 99712.31 99712.31 9380123033 78.77 78772725.49 47795487261 48278878227 6 35 0.83 99633.54 82.70 99633.54 99633.54 9372712736 82.70 82695836.55 57651590962 58246984900 7 36 0.88 99550.84 87.60 99550.84 99550.84 9364933384 87.60 87604741.12 67611918284 68319555264 8 37 0.94 99463.24 93.50 99463.24 99463.24 9356692243 93.50 93495443.19 77676247506 78496368986 9 38 1.03 99369.74 102.35 99369.74 99369.74 9347896952 102.35 102350834.25 87844265938 88775126806 10 39 1.13 99267.39 112.17 99267.39 99267.39 9338268618 112.17 99267391160.34 98113395424 0 11 40 1.23 99155.22 121.96 99155.22 合計 9.375E+10 1E+11 5.31389E+11 4.37639E+11 表2 保険会社準備金理論流れいモジュール(低金利局面の例) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 年始 9407186498 9331695539 9324163352 9314358783 9304284039 9293940010 9282237547 9269087501 9254401509 9235917784 -99267391160 総額 準備金の理論的流れ 年始総投資 年始新投資 9407186498 9407186498 18849528020 9442341522 28395396828 9545868807 38043738210 9648341383 47795487261 9751749051 57651590962 9856103701 67611918284 9960327322 77676247506 10064329222 87844265938 10168018432 98113395424 10269129486 -2.43187E-05 5.31389E+11 98113395424 表3 保険会社準備金実際流れモジュール(低金利局面の例) 年末利子 110645983.3 221705454.9 333982599.7 447465012.2 562163691 678089774.2 795241720.8 913616922.9 1033211703 1153995736 6250118598 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 準備金の実際の投資流れ 年始 投資期限 期限別投資 年始総投資 9.407E+09 10 9.407E+09 9.407E+09 9.332E+09 9 9.484E+09 1.889E+10 9.324E+09 8 9.618E+09 2.851E+10 9.314E+09 7 9.738E+09 3.825E+10 9.304E+09 6 9.844E+09 4.809E+10 9.294E+09 5 9.935E+09 5.803E+10 9.282E+09 4 1.001E+10 6.804E+10 9.269E+09 3 1.007E+10 7.81E+10 9.254E+09 2 1.011E+10 8.821E+10 9.236E+09 1 1.013E+10 9.834E+10 -9.93E+10 9.834E+10 0 総額 9.834E+10 5.339E+11 年末利子 151926062 293611369 423643683 539623292 641113977 727648297 799018783 853990643 895030716 924511776 6.25E+09 表4 保険会社定常状態資産ポートフォリオ流れいモジュール(低金利局面の例) 標準投資年始cash flow 1年債券 1 9407186498 2 18890808099 3 28508582820 4 38246585286 5 48090492617 6 58025546604 7 68035432448 8 78103538733 9 88211930885 10 98342879385 10130948499 11 98342879385 10130948499 … … … n-8 88935692887 10130948499 n-7 79452071286 10130948499 n-6 69834296565 10130948499 n-5 60096294099 10130948499 n-4 50252386768 10130948499 n-3 40317332781 10130948499 n-2 30307446936 10130948499 n-1 20239340652 10130948499 n 10130948499 10130948499 … … … 定常状態5.33863E+11 10130948499 2年債券 10108392152 10108392152 10108392152 … 10108392152 10108392152 10108392152 10108392152 10108392152 10108392152 10108392152 10108392152 0 … 20216784304 3年債券 10068106285 10068106285 10068106285 10068106285 … 10068106285 10068106285 10068106285 10068106285 10068106285 10068106285 10068106285 0 0 … 30204318854 4年債券 1.001E+10 1.001E+10 1.001E+10 1.001E+10 1.001E+10 … 1.001E+10 1.001E+10 1.001E+10 1.001E+10 1.001E+10 1.001E+10 0 0 0 … 4.004E+10 85 5年債券 9.935E+09 9.935E+09 9.935E+09 9.935E+09 9.935E+09 9.935E+09 … 9.935E+09 9.935E+09 9.935E+09 9.935E+09 9.935E+09 0 0 0 0 … 4.968E+10 6年債券 9.84E+09 9.84E+09 9.84E+09 9.84E+09 9.84E+09 9.84E+09 9.84E+09 … 9.84E+09 9.84E+09 9.84E+09 9.84E+09 0 0 0 0 0 … 5.91E+10 7年債券 8年債券 9年債券 9.738E+09 9.738E+09 9.738E+09 9.738E+09 9.738E+09 9.738E+09 9.738E+09 9.738E+09 … 9.738E+09 9.738E+09 9.738E+09 0 0 0 0 0 0 … 6.817E+10 9.618E+09 9.618E+09 9.618E+09 9.618E+09 9.618E+09 9.618E+09 9.618E+09 9.618E+09 9.618E+09 … 9.618E+09 9.618E+09 0 0 0 0 0 0 0 … 7.694E+10 9.484E+09 9.484E+09 9.484E+09 9.484E+09 9.484E+09 9.484E+09 9.484E+09 9.484E+09 9.484E+09 9.484E+09 … 9.484E+09 0 0 0 0 0 0 0 0 … 8.535E+10 10年債券 9.407E+09 9.407E+09 9.407E+09 9.407E+09 9.407E+09 9.407E+09 9.407E+09 9.407E+09 9.407E+09 9.407E+09 9.407E+09 … 0 0 0 0 0 0 0 0 0 … 9.407E+10 後1年 後2年 後3年 後4年 後5年 後6年 後7年 後8年 後9年 後10年 up 後1年 後2年 後3年 後4年 後5年 後6年 後7年 後8年 後9年 後10年 down 後1年 後2年 後3年 後4年 後5年 後6年 後7年 後8年 後9年 後10年 4年 0.007 100.421 100.610 100.496 100.000 5年 0.009 100.578 100.924 100.964 100.621 100.000 5年 0.009 100.374 100.358 99.928 98.978 97.699 6年 0.010 100.738 101.242 101.439 101.250 100.780 100.000 6年 0.010 100.534 100.675 100.400 99.601 98.467 96.953 6年 0.010 100.958 101.774 102.361 102.674 102.764 102.545 7年 0.012 100.897 101.560 101.914 101.878 101.559 100.926 100.000 7年 0.012 100.693 100.991 100.871 100.223 99.236 97.862 96.190 8年 0.014 101.278 102.415 103.319 103.947 104.347 104.431 104.254 103.746 8年 0.014 100.853 101.310 101.346 100.849 100.009 98.777 97.241 95.343 8年 0.014 101.058 101.881 102.392 102.511 102.343 101.858 101.075 100.000 9年 0.015 100.994 101.591 101.764 101.401 100.691 99.584 98.168 96.383 94.673 9年 0.015 101.200 102.163 102.813 103.069 103.035 102.680 102.023 101.070 100.000 10年 0.016 101.541 102.940 104.105 104.989 105.643 105.976 106.043 105.771 105.259 104.713 10年 0.016 101.115 101.831 102.121 101.872 101.273 100.272 98.958 97.270 95.654 94.000 10年 0.016 101.320 102.403 103.172 103.545 103.625 103.381 102.832 101.982 101.012 100.000 表7 金利リスク債券時価評価計算モジュール1(低金利局面の例) 1年 2年 3年 0.003 0.004 0.005 100.000 100.115 100.254 100.000 100.278 100.000 4年 0.007 100.640 101.139 101.411 101.413 1年 2年 3年 4年 0.003 0.004 0.005 0.007 99.797 99.912 100.051 100.217 99.437 99.715 100.045 98.970 99.462 98.364 1年 2年 3年 0.003 0.004 0.005 100.218 100.333 100.473 100.527 100.806 100.913 5年 0.009 100.798 101.455 101.883 102.040 101.975 7年 0.012 101.117 102.093 102.839 103.308 103.553 103.485 103.159 9年 0.015 101.420 102.698 103.743 104.510 105.047 105.265 105.220 104.839 104.223 86 now up down 99.797303 100.21809 99.437431 100.52668 98.970178 100.91289 98.36395 101.41338 97.698786 101.97534 96.952593 102.5446 96.190069 103.15896 95.342575 103.74642 94.673024 104.22302 93.999563 104.71285 100 100 100 100 100 100 100 100 100 100 0.291% 0.406% 0.546% 0.713% 0.871% 1.031% 1.191% 1.352% 1.494% 1.615% now up down 0.2910% 0.4947% 0.0728% 0.4060% 0.6902% 0.1421% 0.5460% 0.8954% 0.2402% 0.7130% 1.1337% 0.3565% 0.8710% 1.3501% 0.4703% 1.0310% 1.5671% 0.5980% 1.1910% 1.7746% 0.7265% 1.3520% 1.9874% 0.8653% 1.4940% 2.1514% 1.0010% 1.6150% 2.2933% 1.1144% 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 債券利子1年 債券利子2年 債券利子3年 債券利子4年 債券利子5年 債券利子6年 債券利子7年 債券利子8年 債券利子9年 債券利子10年 down up down 0.0007275 0.9950774 0.999273 0.001421 0.9863376 0.997164 0.0024024 0.9736108 0.9928273 0.003565 0.9559098 0.9858662 0.0047034 0.9351476 0.9768112 0.0059798 0.910922 0.9648603 0.0072651 0.884147 0.9505906 0.0086528 0.8543316 0.933397 0.0100098 0.8256626 0.91426 0.0111435 0.7971281 0.895101 up down 0.004947 0.006902 0.0089544 0.0113367 0.0135005 0.0156712 0.0177459 0.0198744 0.0215136 0.022933 -0.75 -0.65 -0.56 -0.5 -0.46 -0.42 -0.39 -0.36 -0.33 -0.31 0.7 0.7 0.64 0.59 0.55 0.52 0.49 0.47 0.44 0.42 0.291% 0.406% 0.546% 0.713% 0.871% 1.031% 1.191% 1.352% 1.494% 1.615% 0.291 0.406 0.546 0.713 0.871 1.031 1.191 1.352 1.494 1.615 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 up now 表5 金利リスク基礎計算モジュール(低金利局面の例) 表6 金利リスク債券時価評価基礎計算モジュール(低金利局面の例) 4年債券 1.01E+10 1.01E+10 1.01E+10 1E+10 5年債券 9.993E+09 1.003E+10 1.003E+10 9.997E+09 9.935E+09 6年債券 9.917E+09 9.966E+09 9.986E+09 9.967E+09 9.921E+09 9.844E+09 4.02E+10 4.998E+10 5.96E+10 4年債券 5年債券 6年債券 7年債券 8年債券 9年債券 10年債券 1.01E+10 1.001E+10 9.938E+09 9.85E+09 9.74E+09 9.62E+09 9.55E+09 1.01E+10 1.008E+10 1.002E+10 9.94E+09 9.85E+09 9.74E+09 9.68E+09 1.02E+10 1.012E+10 1.008E+10 1E+10 9.94E+09 9.84E+09 9.79E+09 1.02E+10 1.014E+10 1.011E+10 1.01E+10 1E+10 9.91E+09 9.88E+09 1.013E+10 1.012E+10 1.01E+10 1E+10 9.96E+09 9.94E+09 1.009E+10 1.01E+10 1E+10 9.98E+09 9.97E+09 1E+10 1E+10 9.98E+09 9.98E+09 9.98E+09 9.94E+09 9.95E+09 9.88E+09 9.9E+09 9.85E+09 4.05E+10 5.049E+10 6.035E+10 7.01E+10 7.96E+10 8.89E+10 9.85E+10 4年債券 5年債券 6年債券 7年債券 8年債券 9年債券 10年債券 1E+10 9.972E+09 9.896E+09 9.81E+09 9.7E+09 9.58E+09 9.51E+09 1E+10 9.971E+09 9.91E+09 9.83E+09 9.74E+09 9.63E+09 9.58E+09 9.96E+09 9.928E+09 9.883E+09 9.82E+09 9.75E+09 9.65E+09 9.61E+09 9.85E+09 9.834E+09 9.805E+09 9.76E+09 9.7E+09 9.62E+09 9.58E+09 9.706E+09 9.693E+09 9.66E+09 9.62E+09 9.55E+09 9.53E+09 9.544E+09 9.53E+09 9.5E+09 9.44E+09 9.43E+09 9.37E+09 9.35E+09 9.31E+09 9.31E+09 9.17E+09 9.14E+09 9.15E+09 8.98E+09 9E+09 8.84E+09 3.98E+10 4.941E+10 5.873E+10 6.78E+10 7.65E+10 8.49E+10 9.35E+10 7年債券 8年債券 9年債券 10年債券 9.83E+09 9.72E+09 9.6E+09 9.53E+09 9.89E+09 9.8E+09 9.69E+09 9.63E+09 9.92E+09 9.85E+09 9.75E+09 9.71E+09 9.92E+09 9.86E+09 9.77E+09 9.74E+09 9.89E+09 9.84E+09 9.77E+09 9.75E+09 9.83E+09 9.8E+09 9.74E+09 9.73E+09 9.74E+09 9.72E+09 9.68E+09 9.67E+09 9.62E+09 9.59E+09 9.59E+09 9.48E+09 9.5E+09 9.41E+09 6.9E+10 7.82E+10 8.71E+10 9.63E+10 表8 金利リスク債券時価評価計算モジュール2(低金利局面の例) 1年債券 2年債券 3年債券 後1年 1.01E+10 1.01E+10 1.01E+10 後2年 1.01E+10 1.01E+10 後3年 1.01E+10 後4年 後5年 後6年 後7年 後8年 後9年 後10年 5.41E+11 1.01E+10 2.02E+10 3.03E+10 up 1年債券 2年債券 3年債券 後1年 1.01E+10 1.01E+10 1.01E+10 後2年 1.01E+10 1E+10 後3年 9.96E+09 後4年 後5年 後6年 後7年 後8年 後9年 後10年 5.31E+11 1.01E+10 2.02E+10 3.01E+10 down 1年債券 2年債券 3年債券 後1年 1.02E+10 1.01E+10 1.01E+10 後2年 1.02E+10 1.01E+10 後3年 1.02E+10 後4年 後5年 後6年 後7年 後8年 後9年 後10年 5.49E+11 1.02E+10 2.03E+10 3.04E+10 87 7年後 8年後 9年後 10年後 9.357E+09 9.348E+09 9.338E+09 9.348E+09 9.338E+09 9.338E+09 6年後 9.365E+09 9.357E+09 9.348E+09 9.338E+09 5年後 9.373E+09 9.365E+09 9.357E+09 9.348E+09 9.338E+09 4年後 9.38E+09 9.373E+09 9.365E+09 9.357E+09 9.348E+09 9.338E+09 3年後 9.387E+09 9.38E+09 9.373E+09 9.365E+09 9.357E+09 9.348E+09 9.338E+09 2年後 9.394E+09 9.387E+09 9.38E+09 9.373E+09 9.365E+09 9.357E+09 9.348E+09 9.338E+09 7.494E+10 6.555E+10 5.616E+10 4.678E+10 3.741E+10 2.804E+10 1.869E+10 9.338E+09 7.434E+10 6.449E+10 5.459E+10 4.48E+10 3.518E+10 2.581E+10 1.678E+10 8.172E+09 存続時点 保険料0時点1年後 1年初 9.407E+09 9.401E+09 2年初 9.401E+09 9.394E+09 3年初 9.394E+09 9.387E+09 4年初 9.387E+09 9.38E+09 5年初 9.38E+09 9.373E+09 6年初 9.373E+09 9.365E+09 7年初 9.365E+09 9.357E+09 8年初 9.357E+09 9.348E+09 9年初 9.348E+09 9.338E+09 10年初 9.338E+09 n年後合計 8.434E+10 時価評価額 4.082E+11 8.41E+10 2年後 3年後 4年後 5年後 6年後 7年後 8年後 9年後 10年後 69951700 72898565 75838994 78772725 82695837 87604741 93495443 102350834 9.927E+10 72898565 75838994 78772725 82695837 87604741 93495443 102350834 9.927E+10 75838994 78772725 82695837 87604741 93495443 102350834 9.927E+10 78772725 82695837 87604741 93495443 102350834 9.927E+10 82695837 87604741 93495443 102350834 9.927E+10 87604741 93495443 102350834 9.927E+10 93495443 102350834 9.927E+10 102350834 9.927E+10 9.927E+10 9.993E+10 9.986E+10 9.979E+10 9.971E+10 9.963E+10 9.955E+10 9.946E+10 9.937E+10 9.927E+10 9.912E+10 9.824E+10 9.699E+10 9.548E+10 9.369E+10 9.163E+10 8.933E+10 8.695E+10 8.457E+10 1年後 69000000 69951700 72898565 75838994 78772725 82695837 87604741 93495443 102350834 9.927E+10 1E+11 9.971E+10 存続時点 保険金 1年初 69000000 2年初 69951700 3年初 72898565 4年初 75838994 5年初 78772725 6年初 82695837 7年初 87604741 8年初 93495443 9年初 102350834 10年初 9.927E+10 n年後合計 時価評価額 9.357E+11 表9 保険金キャッシュフローモジュール(低金利局面の例) 表10 保険料キャッシュフローモジュール(低金利局面の例) 表11 SCR計算モジュール(低金利局面の例) n年後差 現在価値 5.275E+11 現在価値up 5.072E+11 現在価値down5.439E+11 1年後 2年後 3年後 4年後 5年後 6年後 7年後 8年後 9年後 5.267E+11 4.867E+10 5.753E+11 5.275E+11 5.178E+11 4.988E+11 4.705E+11 4.328E+11 3.855E+11 3.285E+11 2.617E+11 1.848E+11 9.769E+10 1.566E+10 1.561E+10 1.558E+10 1.565E+10 2.499E+10 2.479E+10 2.465E+10 2.492E+10 3.431E+10 4.363E+10 5.293E+10 6.223E+10 7.151E+10 8.078E+10 9.003E+10 9.927E+10 3.376E+10 4.241E+10 5.069E+10 5.851E+10 6.582E+10 7.255E+10 7.878E+10 8.457E+10 3.341E+10 4.17E+10 4.95E+10 5.668E+10 6.322E+10 6.901E+10 7.434E+10 7.913E+10 3.407E+10 4.301E+10 5.17E+10 6.004E+10 6.797E+10 7.54E+10 8.231E+10 8.885E+10 9.419E+09 1.878E+10 2.818E+10 3.765E+10 4.722E+10 5.692E+10 6.679E+10 7.686E+10 8.715E+10 9.769E+10 6.238E+09 6.211E+09 6.135E+09 5.981E+09 5.713E+09 5.301E+09 4.714E+09 3.919E+09 2.88E+09 1.578E+09 1.566E+10 2.499E+10 3.431E+10 4.363E+10 5.293E+10 6.223E+10 7.151E+10 8.078E+10 9.003E+10 9.927E+10 1.038E+10 2.489E+10 3.394E+10 4.271E+10 5.113E+10 5.911E+10 6.66E+10 7.353E+10 7.996E+10 8.594E+10 9.996E+09 3.413E+10 4.301E+10 5.157E+10 5.972E+10 6.74E+10 7.452E+10 8.115E+10 8.733E+10 9.429E+09 4.332E+10 5.202E+10 6.034E+10 6.82E+10 7.553E+10 8.237E+10 8.874E+10 8.672E+09 5.247E+10 6.096E+10 6.901E+10 7.655E+10 8.36E+10 9.017E+10 7.725E+09 6.159E+10 6.983E+10 7.759E+10 8.485E+10 9.163E+10 6.583E+09 7.067E+10 7.864E+10 8.611E+10 9.311E+10 5.245E+09 7.97E+10 8.74E+10 9.461E+10 3.704E+09 8.871E+10 9.614E+10 1.958E+09 9.769E+10 620793408 594946042 556566670 505768531 443826773 371427950 289643331 199610320 102783487 3.685E+09 表12 準備金簿価価値計算モジュール(低金利局面の例) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 … n-8 n-7 n-6 n-5 n-4 n-3 n-2 n-1 n … 定常状態 理論準備金視点年始cash flow 1年目加入 2年目加入 3年目加入 4年目加入 5年目加入 6年目加入 7年目加入 8年目加入 9年目加入10年目加入11年目加入 9.407E+09 9.407E+09 1.885E+10 9.442E+09 9.41E+09 2.84E+10 9.546E+09 9.44E+09 9.41E+09 3.804E+10 9.648E+09 9.55E+09 9.44E+09 9.41E+09 4.78E+10 9.752E+09 9.65E+09 9.55E+09 9.44E+09 9.41E+09 5.765E+10 9.856E+09 9.75E+09 9.65E+09 9.55E+09 9.44E+09 9.41E+09 6.761E+10 9.96E+09 9.86E+09 9.75E+09 9.65E+09 9.55E+09 9.44E+09 9.41E+09 7.768E+10 1.006E+10 9.96E+09 9.86E+09 9.75E+09 9.65E+09 9.55E+09 9.44E+09 9.41E+09 8.784E+10 1.017E+10 1.01E+10 9.96E+09 9.86E+09 9.75E+09 9.65E+09 9.55E+09 9.44E+09 9.41E+09 9.811E+10 1.027E+10 1.02E+10 1.01E+10 9.96E+09 9.86E+09 9.75E+09 9.65E+09 9.55E+09 9.44E+09 9.41E+09 9.811E+10 1.03E+10 1.02E+10 1.01E+10 9.96E+09 9.86E+09 9.75E+09 9.65E+09 9.55E+09 9.44E+09 9.407E+09 0 … n…-17年目加入 n-16年目加入 n-15年目加入 n-14年目加入 n -13年目加入 n-12年目加入 n-11年目加入 n-10年目加入n-9年目加入 8.871E+10 1.03E+10 1.02E+10 1.01E+10 9.96E+09 9.86E+09 9.75E+09 9.65E+09 9.55E+09 9.442E+09 7.926E+10 1.03E+10 1.02E+10 1.01E+10 9.96E+09 9.86E+09 9.75E+09 9.65E+09 9.546E+09 6.972E+10 1.03E+10 1.02E+10 1.01E+10 9.96E+09 9.86E+09 9.75E+09 9.648E+09 6.007E+10 1.03E+10 1.02E+10 1.01E+10 9.96E+09 9.86E+09 9.752E+09 5.032E+10 1.03E+10 1.02E+10 1.01E+10 9.96E+09 9.856E+09 4.046E+10 1.03E+10 1.02E+10 1.01E+10 9.96E+09 3.05E+10 1.03E+10 1.02E+10 1.006E+10 2.044E+10 1.03E+10 1.017E+10 1.027E+10 1.027E+10 … … … … … … … … … … … … 5.314E+11 88 n-8年 … 目加入 … … … … … … … … … … … … 0 0 0 0 0 0 0 0 0 … 動態分析計算モジュール 1 表 14 1.345E+10 準備金 461,605,375,627 最優推計+リスクマージン 資産-負債 現在カーブ 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 カーブパタン 1年 low 0.01176 2年 予定利率 94071.9 3年 年保険料 株式投資収益率 0.0176 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 1年 level 0.04376 2年 予定利率 78796 3年 年保険料 株式投資収益率0.05051 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 1年 high 0.07528 2年 予定利率 66051.8 3年 年保険料 株式投資収益率0.07827 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 パターン設定 1年目 low 2年目 low 3年目 low 4年目 low 5年目 low 6年目 low 7年目 low 8年目 low 9年目 low 10年目 low 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 0.00291 0.00406 0.00546 0.00713 0.00871 0.01031 0.01191 0.01352 0.01494 0.01615 0.00291 0.00406 0.00546 0.00713 0.00871 0.01031 0.01191 0.01352 0.01494 0.01615 0.02588 0.03002 0.03463 0.0384 0.04183 0.04526 0.04667 0.04667 0.04674 0.04738 0.0670836 0.0681538 0.0703941 0.0740814 0.0765334 0.0765654 0.0734219 0.0757802 0.0774341 0.07801 up 0.7 0.7 0.64 0.59 0.55 0.52 0.49 0.47 0.44 0.42 安定状態剰余 10年 9年 8年 7年 6年 5年 4年 3年 2年 1年 10年 9年 8年 7年 6年 5年 4年 3年 2年 1年 10年 9年 8年 7年 6年 5年 4年 3年 2年 1年 株式投資収益率 1年目 2年目 3年目 4年目 5年目 6年目 7年目 8年目 9年目 10年目 down -0.75 -0.65 -0.56 -0.5 -0.46 -0.42 -0.39 -0.36 -0.33 -0.31 0.017603 0.017603 0.017603 0.017603 0.017603 0.017603 0.017603 0.017603 0.017603 0.017603 up down 0.00073 0.00142 0.0024 0.00357 0.0047 0.00598 0.00727 0.00865 0.01001 0.01114 保険金 1年末 2年末 3年末 4年末 5年末 6年末 7年末 8年末 9年末 10年末 1年末 2年末 3年末 4年末 5年末 6年末 7年末 8年末 9年末 10年末 1年末 2年末 3年末 4年末 5年末 6年末 7年末 8年末 9年末 10年末 契約数倍数 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 0.6 9.41E+09 9.33E+09 9.32E+09 9.31E+09 9.3E+09 9.29E+09 9.28E+09 9.27E+09 9.25E+09 9.24E+09 7.88E+09 7.81E+09 7.8E+09 7.79E+09 7.78E+09 7.77E+09 7.76E+09 7.75E+09 7.74E+09 7.72E+09 6.61E+09 6.53E+09 6.53E+09 6.52E+09 6.51E+09 6.5E+09 6.49E+09 6.48E+09 6.47E+09 6.45E+09 up 0.004947 0.006902 0.008954 0.011337 0.013501 0.015671 0.017746 0.019874 0.021514 0.022933 69000000 69951700 72898565.26 75838993.8 78772725.49 82695836.55 87604741.12 93495443.19 102350834.3 99267391160 69000000 69951700 72898565.26 75838993.8 78772725.49 82695836.55 87604741.12 93495443.19 102350834.3 99267391160 69000000 69951700 72898565.26 75838993.8 78772725.49 82695836.55 87604741.12 93495443.19 102350834.3 99267391160 保険料 1年初 2年初 3年初 4年初 5年初 6年初 7年初 8年初 9年初 10年初 1年初 2年初 3年初 4年初 5年初 6年初 7年初 8年初 9年初 10年初 1年初 2年初 3年初 4年初 5年初 6年初 7年初 8年初 9年初 10年初 down 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 7879595745 7874158824 7868646913 7862902801 7856926995 7850720022 7844203925 7837301025 7829933962 7821869130 6605177494 6600619922 6595999488 6591184408 6586175108 6580972030 6575509823 6569723374 6563547834 6556787380 324,562,701,069 318,833,252,959 準備金 1年末 2年末 3年末 4年末 5年末 6年末 7年末 8年末 9年末 10年末 1年末 2年末 3年末 4年末 5年末 6年末 7年末 8年末 9年末 10年末 1年末 2年末 3年末 4年末 5年末 6年末 7年末 8年末 9年末 10年末 9407186498 18849528020 28395396828 38043738210 47795487261 57651590962 67611918284 77676247506 87844265938 98113395424 7879595745 16029583378 24529769164 33393251196 42635702875 52273484295 62322597470 72799670605 83721986228 95105366693 6605177494 13634022475 21186413253 29299571539 38015523049 47379457815 57438906263 68244915291 79852313653 92317878795 89 20.00% 2% 2% 国内株式現在価値*20% 国内公社債現在価値*2% Bマージン 予定利率リスク+資産運用リスク 経営管理リスク Bマージン*2% ソルベンシーマージンBマージン+経営管理リスク 資産運用リスク 0.01 0.2 0.8 1 down 資産 債券100% 債券 株式 リスクマージン 9.357E+11 4.082E+11 5.275E+11 5.409E+11 0 5.409E+11 リスク係数 責任準備金*予定利率リスク係数 20% 2% 0.02 27,312,731,346 25,162,915,671 0 9,167,369,733 686,605,708 35,016,891,112 156% 0.779987328 自己資本 予定利率リスク 株式リスク 債券リスク 経営管理リスク リスク総額 453,337,970,737 現金流での計算結果 19,681,535,346 26,620,042,767 0 26,620,042,767 2,633,027,875 29,253,070,642 -9,571,535,296 0.672802373 予定利率リスク 予定利率の区分 0.0%を超え1.5%以下の部分 1.5%を超え2.0%以下の部分 2.0%を超え2.5%以下の部分 2.5%を超える部分 最優推計 自己資本 interest リスク 株式リスク BSCR SCRop SCR 自己資本-SCR 自己資本/SCR cash flow out cash flow in net out 5.072E+11 net out 変化 -2.03E+10 債券価値 5.311E+11 株式価値 0 資産合計 5.311E+11 資産合計変化 -9.85E+09 資産-負債 資産-負債変化-1.04E+10 cash flow out cash flow in net out 5.439E+11 net out 変化 1.644E+10 債券価値 5.492E+11 株式価値 0 資産合計 5.492E+11 資産合計変化 8.31E+09 資産-負債 資産-負債変化8.131E+09 up 458,368,486,640 458,368,486,640 0 8,267,404,890 ソルベンシー・マージン計算 資産 債券100% 458,368,486,640 債券 458,368,486,640 株式 0 負債 資産負債 準備金 453,974,179,626 表の数値 (年末) 表13 健全性指標計算モジュール(低金利局面の例) balance sheet cash flow out cash flow in net out 債券価値 株式価値 資産合計 now 1年目 low ネット投資額 9407186498 10年 9331695539 9年 9324163352 8年 9314358783 7年 9304284039 6年 9293940010 5年 9282237547 4年 9269087501 3年 9254401509 2年 9235917784 1年 9407186498 10年 9331695539 9年 9324163352 8年 9314358783 7年 9304284039 6年 9293940010 5年 9282237547 4年 9269087501 3年 9254401509 2年 9235917784 1年 9407186498 10年 9331695539 9年 9324163352 8年 9314358783 7年 9304284039 6年 9293940010 5年 9282237547 4年 9269087501 3年 9254401509 2年 9235917784 1年 9407186498 10年 9331695539 9年 9324163352 8年 9314358783 7年 9304284039 6年 9293940010 5年 9282237547 4年 9269087501 3年 9254401509 2年 9235917784 1年 9407186498 10年 9331695539 9年 9324163352 8年 9314358783 7年 9304284039 6年 9293940010 5年 9282237547 4年 9269087501 3年 9254401509 2年 9235917784 1年 0.0162 0.0149 0.0135 0.0119 0.0103 0.0087 0.0162 0.0149 0.0135 0.0119 0.0103 0.0087 0.0071 0.0162 0.0149 0.0135 0.0119 0.0103 0.0087 0.0071 0.0055 9407186498 9483621601 9617774721 9738002466 9843907331 9935053987 9407186498 9483621601 9617774721 9738002466 9843907331 9935053987 10009885844 9407186498 9483621601 9617774721 9738002466 9843907331 9935053987 10009885844 10068106285 投資額 金利 9407186498 0.0162 9483621601 0.0149 9617774721 0.0135 9738002466 0.0119 9843907331 0.0103 9935053987 0.0087 0.0071 10009885844 0.0055 10068106285 0.0041 10108392152 0.0029 10130948499 9407186498 0.0162 9483621601 0.0149 9617774721 0.0135 9738002466 0.0119 9843907331 0.0103 9935053987 0.0087 0.0071 10009885844 0.0055 10068106285 0.0041 10108392152 151926062 141685307 130032314 115979609 101490685 86534320.2 151926062 141685307 130032314 115979609 101490685 86534320.2 71370486.1 151926062 141685307 130032314 115979609 101490685 86534320.2 71370486.1 54971860.3 利子 151926062 141685307 130032314 115979609 101490685 86534320.2 71370486.1 54971860.3 41040072.1 29481060.1 151926062 141685307 130032314 115979609 101490685 86534320.2 71370486.1 54971860.3 41040072.1 保険金 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 保険料 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 準備金 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 6年目 low 7年目 low 8年目 low 9年目 low 10年目 low 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 1年 2年 3年 4年 5年 6年 7年 8年 9年 10年 0.00291 0.00406 0.00546 0.00713 0.00871 0.01031 0.01191 0.01352 0.01494 0.01615 0.00291 0.00406 0.00546 0.00713 0.00871 0.01031 0.01191 0.01352 0.01494 0.01615 0.00291 0.00406 0.00546 0.00713 0.00871 0.01031 0.01191 0.01352 0.01494 0.01615 0.00291 0.00406 0.00546 0.00713 0.00871 0.01031 0.01191 0.01352 0.01494 0.01615 0.00291 0.00406 0.00546 0.00713 0.00871 0.01031 0.01191 0.01352 0.01494 0.01615 10年 9年 8年 7年 6年 5年 4年 3年 2年 1年 10年 9年 8年 7年 6年 5年 4年 3年 2年 1年 10年 9年 8年 7年 6年 5年 4年 3年 2年 1年 10年 9年 8年 7年 6年 5年 4年 3年 2年 1年 10年 9年 8年 7年 6年 5年 4年 3年 2年 1年 9407186498 9331695539 9324163352 9314358783 9304284039 9293940010 9282237547 9269087501 9254401509 9235917784 9407186498 9331695539 9324163352 9314358783 9304284039 9293940010 9282237547 9269087501 9254401509 9235917784 9407186498 9331695539 9324163352 9314358783 9304284039 9293940010 9282237547 9269087501 9254401509 9235917784 9407186498 9331695539 9324163352 9314358783 9304284039 9293940010 9282237547 9269087501 9254401509 9235917784 9407186498 9331695539 9324163352 9314358783 9304284039 9293940010 9282237547 9269087501 9254401509 9235917784 0.0162 0.0149 0.0135 0.0119 0.0162 0.0149 0.0135 0.0119 0.0103 9407186498 9483621601 9617774721 9738002466 9407186498 9483621601 9617774721 9738002466 9843907331 151926062 141685307 130032314 115979609 151926062 141685307 130032314 115979609 101490685 151926062 141685307 151926062 141685307 130032314 9407186498 9483621601 151926062 9407186498 9483621601 9617774721 0.0162 0.0149 9407186498 0.0162 0.0149 0.0135 0.0162 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 7E+07 7E+07 7E+07 8E+07 8E+07 8E+07 9E+07 9E+07 1E+08 1E+11 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 9407186498 9400695539 9394115052 9387257348 9380123033 9372712736 9364933384 9356692243 9347896952 9338268618 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 5.64E+09 1.13E+10 1.7E+10 2.28E+10 2.87E+10 3.46E+10 4.06E+10 4.66E+10 5.27E+10 5.89E+10 90 2年目 low 3年目 low 4年目 low 5年目 low 応用カーブ 0.00291 1年 0.00406 2年 0.00546 3年 0.00713 4年 0.00871 5年 0.01031 6年 0.01191 7年 0.01352 8年 0.01494 9年 0.01615 10年 0.00291 1年 0.00406 2年 0.00546 3年 0.00713 4年 0.00871 5年 0.01031 6年 0.01191 7年 0.01352 8年 0.01494 9年 0.01615 10年 0.00291 1年 0.00406 2年 0.00546 3年 0.00713 4年 0.00871 5年 0.01031 6年 0.01191 7年 0.01352 8年 0.01494 9年 0.01615 10年 0.00291 1年 0.00406 2年 0.00546 3年 0.00713 4年 0.00871 5年 0.01031 6年 0.01191 7年 0.01352 8年 0.01494 9年 0.01615 10年 0.00291 1年 0.00406 2年 0.00546 3年 0.00713 4年 0.00871 5年 0.01031 6年 0.01191 7年 0.01352 8年 0.01494 9年 0.01615 10年 動態分析計算モジュール 2(続き) 表 15-② 動態分析計算モジュール 2 表 15-① 表 16 動態分析計算モジュール 3 1年債券 0年前契約 1年前契約 2年前契約 3年前契約 4年前契約 5年前契約 6年前契約 7年前契約 8年前契約 9年前契約 現在金利up 表 17 3年債券 4年債券 5年債券 1 1 1.0049558 1 1.00278304 1.0061028 1 1.001146663 1.0025426 1.0042078 0.004947 0.006902 0.0089544 0.0113367 1年債券 2年債券 3年債券 4年債券 0年前契約 1年前契約 2年前契約 3年前契約 4年前契約 5年前契約 6年前契約 7年前契約 8年前契約 9年前契約 現在金利down 0年前契約 1年前契約 2年前契約 3年前契約 4年前契約 5年前契約 6年前契約 7年前契約 8年前契約 9年前契約 2年債券 債権現在価値計算① 0.98970178 0.99437431 0.99714559 0.997973027 0.999117366 1.00051047 0.0007275 0.001421 0.0024024 1年債券 2年債券 3年債券 1.002180913 1.005266771 1.003330077 1.0091289 1.00806081 1.00472906 動態分析計算モジュール 3 right now 1年債券 2年債券 0年前契約 1年前契約 2年前契約 3年前契約 4年前契約 5年前契約 6年前契約 7年前契約 8年前契約 6065035291 9年前契約 6078569100 6071989844 3.2456E+11 6078569100 12137025135 up 1年債券 2年債券 0年前契約 1年前契約 2年前契約 3年前契約 4年前契約 5年前契約 6年前契約 7年前契約 8年前契約 6030915280 9年前契約 6066248007 6059682087 3.1865E+11 6066248007 12090597367 down 1年債券 2年債券 0年前契約 1年前契約 2年前契約 3年前契約 4年前契約 5年前契約 6年前契約 7年前契約 8年前契約 6096978445 9年前契約 6091825932 6085232328 3.2955E+11 6091825932 12182210773 3年債券 0.9836395 0.9946234 1.0004513 1.0021723 0.003565 4年債券 6096010226 6089558052 6069431376 18254999654 1 1.00620893 1.00964449 1.00924367 1.00578317 0.0135005 5年債券 0.97698786 0.98978436 0.99927974 1.00357891 1.00374448 0.0047034 5年債券 1.0197534 1.0141338 1.02039788 1.0141149 1.01883224 1.0113937 1.01454699 1.0063978 1.0079767 7年債券 8年債券 9年債券 1 1.009262892 1.015590271 1.018783986 1.019140605 1.015604902 1.008973886 0.0177459 7年債券 1 1.01075172 1.01858368 1.02343413 1.02511081 1.02391834 1.0188054 1.01057921 0.0198744 8年債券 1 1.01069888 1.02023461 1.02680449 1.03035231 1.03069099 1.02813224 1.0216282 1.01199509 0.0215136 9年債券 0.961900686 0.9695259 0.978620634 0.9846738 0.992359709 0.996007 1.002229652 1.003995 1.008710345 1.0067461 1.00991325 1.0053366 1.006928724 0.0059798 0.0072651 6年債券 7年債券 0.95342575 0.97241147 0.98777218 1.00009367 1.00849119 1.01345512 1.01310022 1.0085308 0.0086528 8年債券 0.94673024 0.96383357 0.98168185 0.99584372 1.00691493 1.01401379 1.01763995 1.01591108 1.00994381 0.0100098 9年債券 1.031589647 1.034848227 1.035530095 1.033084609 1.0283863 1.02093337 1.011174371 1.03746417 1.04253915 1.04430923 1.04346774 1.03946762 1.03319319 1.02414652 1.0127832 1.04223016 1.0483943 1.05219647 1.05265372 1.05046865 1.04509735 1.0374328 1.02698048 1.01420217 1 1.0077951 1.0124965 1.0143925 1.0124243 1.0073785 0.0156712 6年債券 1.025446 1.0276417 1.0267412 1.0236093 1.0177402 1.0095755 10年債券 1 1.01011916 1.01981554 1.0283151 1.03380955 1.03624738 1.03544593 1.03172296 1.02403354 1.01320158 0.022933 10年債券 0.93999563 0.95653559 0.9727022 0.98958127 1.00272159 1.01272741 1.01871966 1.0212059 1.01830626 1.01114785 0.0111435 10年債券 1.04712852 1.05259454 1.057708 1.0604256 1.05976416 1.05643421 1.04989452 1.04104543 1.02939533 1.01541129 債権現在価値計算② 4年債券 6005931507 6040863771 6035695610 6057675735 6042584558 6056223277 6031202998 18154762783 24115414672 3年債券 4年債券 5978653608 6023620642 6043947479 18046221729 3年債券 6年債券 5年債券 6年債券 5906344399 5961032392 5952385154 5998044041 5980152791 6018523515 5991351745 6016134197 5979726505 5995506062 5949924529 29989240207 35759885122 5年債券 6年債券 5823856269 5907671456 5900136637 5973639865 5956738883 6008642116 5982366361 6018977915 5983353335 23908931353 29646451485 4年債券 5年債券 6090818191 6090704788 6074361340 6044356529 24300240848 6078783071 6082624818 6073292000 6047747445 6008581741 30291029075 91 7年債券 9年債券 5690172961 5770664833 5751051458 5842801480 5832709429 5805311399 5896922717 5877905000 5842695161 5933892338 5905895320 5862882848 5952552581 5915570900 5864810001 5954636236 5908689543 5850250263 5933977824 5879184480 5813241133 5895234114 5831713934 5758427122 41410017290 46922333439 52238842345 7年債券 8年債券 9年債券 5620194750 5726354070 5717886088 5815822487 5798160779 5882760403 5855828891 5929940487 5893694294 5946189057 5900722634 5937864195 5883284636 35238930699 40669772073 6年債券 7年債券 6056637164 6069606090 6064287399 6045788887 6011123999 5962900799 36210344337 8年債券 6027373517 6046412754 6050396771 6036108281 6008656998 5965111005 5908091109 42042150434 5387058839 5501900461 5484379715 5611460683 5585939544 5700102158 5666523021 5771205384 5729520116 5819664635 5769913828 5848309814 5790547332 5846261800 5780709779 5819893209 5746754948 45918798144 50941347122 8年債券 9年債券 5986858020 6016143993 6026358556 6021502607 5998419233 5962211583 5910006304 5844432397 47765932693 5930469865 5965544914 5987179903 5989781732 5977348306 5946784709 5903172062 5843696544 5770985753 53314963787 10年債券 5644311899 5701427578 5756156974 5804131153 5835143570 5848903418 5844379794 5823366160 5779964677 5718825753 57756610976 10年債券 5305628513 5398985200 5490234613 5585505309 5659673396 5716149385 5749971508 5764004608 5747638129 5707233850 56125024512 10年債券 5910319985 5941171905 5970033877 5985372816 5981639478 5962844187 5925932153 5875985092 5810228304 5731298017 59094825814 付表 2 中国保険破綻関連法律 1.「中華人民共和国保険法」主要内容 第一章 総則 第二章 第一条~第九条 保険契約 第一節 一般規定 第十条~第三十条 第二節 生命保険契約 第三十一条~第四十七条 第三節 損害保険契約 第四十八条~第六十六条 第三章 保険会社 第九十条 第六十七条~第九十四条 「保険会社は「中和人民共和国企業破綻法」の第二条に規定された状況があ る場合、国務院保険監督管理機関の同意を得、保険会社もしくはその債権者は法律に基づ き人民法院に再生、和解もしくは破綻清算を申請することができる。国務院保険監督管理 機関も法律に基づき人民法院に同保険会社の再生や破綻清算の申請を提出することができ る。 」 第九十二条 「生命保険業務を経営している保険会社は法律に基づき取り消しされもし くは破たんした場合、同会社保有している保険契約及び責任準備金はほかの生命保険業務 を経営している保険会社に移転しなければならない。ほかの保険会社と承継契約できない 場合、国務院監督管理機構が指定する生命保険会社から移転する契約を承継する。」 第四章 保険経営規則 第九十七条 第九十五条~第百十六条 「保険会社は資本金の 20%を目途に補償金を用意し、国務院監督管理機構 指定した銀行に貯蓄すること、 会社破たんするときの債務償却することのみしか使えない。」 第百条 「保険会社は保険保障基金を支払わなければならない。…保険保障基金の徴収、 管理と使用の具体的な規定は国務院に規定される。」 第百一条 「保険会社はその業務規模とリスク量に対応するソルベンシーがなければな らない。…」 92 第五章 保険代理人と保険ブローカー 第百十七条~第百三十三条 第六章 保険業監督管理 第百三十四条~第百五十八条 第百四十五条 「保険会社は以下の状況になった場合、国務院監督管理機構はその業務 を引き取ることができる。(一)会社のソルベンシーが大きく足りないとき。(二)同法を 違反し、社会公益利益を損害し、会社ソルベンシーにダメージある可能性があるもしくは 既にある場合。保険会社の債務関係はこの引取りによりかわらないこと。」 第百四十五条 「整理統合、引き継がされた保険会社は「企業破綻法」の第二条の状況 に当たる場合、国務院保険監督管理機関は法律に基づき人民法院に同保険会社の再生や破 綻清算の申請を提出することができる。」 第七章 法律責任 第百五十九条~第百八十一条 第八章 附則 第百八十二条~第百八十七条 93 2. 「中華人民共和国企業破綻法」主要内容 第一章 総則 第一条~第六条 第二条「企業法人は期限になる借金を返済できない、しかも資産は全部負債を返済する こともできない、もしくは明らかに返済能力が欠けている場合、本法の規定に基づき負債 を清算する企業法人は以上の状況である。もしくは明らかに返済能力を失った可能性があ る場合、本法の規定に基づき企業再生することができる。」 第二章 申請と受理 第一節 申請 第七条~第九条 第二節 受理 第十条~第二十一条 第三章 管理人 第二十二条 第二十二条~第二十九条 管理人は人民法院(裁判所)が指定する。 第四章 債務人財産 第三十条~第四十条 第五章 破綻費用と共益債務 第四十一条~第四十三条 第六章 債権申告 第四十四条~第五十八条 第七章 債権者会議 第一節 一般規定 第五十九条~第六十六条 第二節 債権者委員会 第六十七条~第六十九条 第八章 事業再編 第一節 事業再編申請と事業再編時期 第七十条~第七十八条 第二節 事業再編計画の作成と承認 第七十九条~第八十八条 第三節 事業再編計画の実行 第八十九条~第九十四条 第九章 和解 第十章 破綻清算 第九十五条~第百六条 第一節 破綻宣告 第百七条~第百十条 第二節 変価と分配 第百十一条~第百十九条 94 第三節 破産手続きの終了 第百二十条~第百二十四条 第十一条 法律責任 第百二十五条~第百三十一条 第十二章 附則 第百三十二条~第百三十六条 百三十四条「商業銀行、証券会社、保険会社など金融機関は本法の第二条の状況に当た る場合、国務院保険監督管理機関は人民法院に同金融機関の再生もしくは破綻清算の申請 を申し上げることができる。国務院保険監督管理機関は法律に基づき大きな経営リスクが 顕在化した金融機関に対する更生、信託統治など措置をとる場合、人民法院に同金融機関 は被告もしくは債務者となる民事訴訟過程や執行過程の中止申請を提出することができる。 金融機関が破綻を行う場合、国務院は本法及びほかの関連法律に基づき、実施するやり方 を決めることができる。」 95 3.保険保障基金管理方法 第一章 総則 第一条~第六条 第二章 保険保障基金会社 第七条~第十二条 第三章 保険保障基金の調達 第十三条~第十五条 第十五条「…損害保険会社の保険保障基金の残高は会社総資産の 6%、生命保険会社は 1% に達している場合、支払わなくていい。…」 第四章 保険保障基金の使用 第十九条 第十六条~第二十五条 損害保険契約の場合「…(一)保険契約者の損失額は 5 万元以内の部分、保 険保障基金全額補償する; (二)保険契約者は個人である場合、損失額は 5 万元超える部分 に対し、保険保障基金 90%補償する;保険契約者は法人である場合、損失額は 5 万元超え る部分に対し、保険保障基金 80%補償する…」 第二十条 (同「保険法」第九十二条) 「生命保険業務を経営している保険会社は法律に 基づき取り消しされもしくは破たんした場合、同会社保有している保険契約及び責任準備 金はほかの生命保険業務を経営している保険会社に移転しなければならない;ほかの保険 会社と承継契約できない場合、国務院監督管理機構指定する生命保険会社から移転する契 約を承継する。 」 第二十一条 生命保険契約の場合「…(一)保険契約者は個人である場合、保険契約価 値の 90%まで補償する;(二)保険契約者は法人である場合、保険契約価値の 80%まで補 償する…」 第五章 管理と監督 第二十六条~第三十二条 第六章 法律責任 第三十三条~第三十四条 第七章 附則 第三十五条~第三十六条 96
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