一般演題(253) 臭化ジスチグミド(ウブレチド®)によるコリン作 動性クリーゼの一症例 1 長崎大学医学部歯学部附属病院救急部 山下 和範1、長谷 敦子1 【症例】患者は 78 歳の男性。 【既往歴】慢性腎機能障害(右腎摘出術後)、排尿 困難、不眠症、HCVキャリア、塵肺 【現病歴】約 1 年前より、不眠を感じるようになり、 様々なかかりつけの病院から同時にゾルピデムの処 方を受け、日中 2∼3 時間置きに内服することもあっ た。本年 7 月不眠をさらに強く感じ、近くの精神科 を受診し、ゾルピデムからリスペリドンの内服に変 更された。変更から 2 日後、38 度台の発熱があり再 び近くの精神科を受診したところ、CPKが 5098IU/l と高値であったため、悪性症候群が疑われ、 精神科入院となり加療された。入院から 6 日目の午 後、発熱と大量の発汗を認め、同日 22:50、意識消 失、自発呼吸停止、血圧測定不可能の状態で発見さ れた。 即座に心肺蘇生が行われ、自発呼吸が再開し、 収縮期血圧が 80mmHg 台となったところで当院救急 部へ搬送された。救急外来到着時、意識レベルはグ ラスゴーコーマスケール E1V1M1であった。瞳孔 は左右差なく橈骨動脈は触知可能であった。酸素 6l/min 投与下で SpO2 が 60%台と低酸素血症を認め、 収縮期血圧も 80mmHg 台であった。直ちに気管挿管 を行い人工呼吸を開始し、中心静脈路を確保し、容 量負荷、ドパミン投与を開始した。救急外来収容時 より、全身の発汗は著しく、また流涙、流涎も持続 して見られた。外来収容時の血液生化学検査で、コ リンエステラーゼが 7IU/l と極めて低い値を呈して いたことと、臭化ジスチグミド内服歴が明らかとな ったことから、臭化ジスチグミドによるコリン作動 性クリーゼが疑われた。この症例について、文献的 考察及び外来投薬管理に対する警鐘的考察を交えて 報告する。
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